村雨と提督の小笠原旅行記   作:fire-cat

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船室はこれです。日除けの白いスクリーンが降りています
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7月28日――旅行第5日目 夕方――

 出航直後からレイが投げ込まれ始める。

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 二人がその様子を見ていると、船が追い付いてくる様子が映った。

「あれ? 船が4隻追いかけて来るよ? あれがお見送り?」

「う~ん。そうなんだけど、数がいつもより少ないな。4隻か……」

 そんな会話をしている二人。

「今日は着発便だから皆観光に行ってるのか」

 そんな声が隣から聞こえる。

「そうか。着発便だと船、こんなに少ないのか」

 いつもは着発便ではない為に見送る船が7~8隻はいるのが当たり前であった男が呟く。

「あ、見て見て。上の方に人が集まってるよ?」

 村雨が指を差す。

「え? 飛び込むのか。この荒れで飛び込むとは思わなかったな。村雨、あの船から飛び込むからカメラ構えていた方が良いぞ?」

 そう言いカメラを構える男。

 

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「うわ~。凄い。飛び込んだ」

 村雨が燥ぐ。

「あ、あの船も」

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 見送る船は二見湾を過ぎた所で停泊した様だった。

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「あ、もう終わりなのね。残念」

「皆飛び込んだからな」

 と、男の目に1隻の船が映る。

「おや。向こうから1隻、すごい勢いで来るな」

 男が指さす方向に目を向ける村雨。

「あ。ホントだ」

「あれは……ドリーム号Ⅲか。観光帰りかな?」

 見覚えのある船影に目を細める男。

 暫く並走した船からスタッフ達が飛び込む姿を写真に収めると、船内へと戻る。

「アイスでも買って戻るか」

 展望デッキでアップルパイとクロワッサン、カクテルのサンセットを購入し、船内ショップに立ち寄り、アイス最中と買い忘れたローゼル塩饅頭を購入する。

「う~む。ローゼル塩饅頭買い忘れていたとは不覚。PASMOとSuicaが使えるから良いもののちょっと心許ないかな」

「大丈夫? 夕食とか朝食も食べるんでしょ?」

 そんな村雨の問いかけに

「多分食事は無理かな。これから荒れるから部屋で大人しくしている心算だし」

「そうなの?」

「多分、一等甲板はすぐに閉鎖されるから今のうちに見ておいた方が良いぞ。っと」

 横揺れが船を襲う。

「あ、確かに揺れるね。じゃあ、ちょっと見て来るね」

「行ってらっしゃい」

 村雨を見送り船室に戻る男。

 

「あれ? ……さすが一等。思ったより揺れはないか」

 部屋に戻ると島の生協で買っていたアルコールや菓子、船内で購入したパイやカクテルをテーブルに並べる。

「さてと、映画でも観る前に写真でも撮っておくか」

 船室の窓にカメラを置き、構える男。

 

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「おっと」

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 揺れるなぁ。と独り言ちる男。

 やがて村雨がただいま。と戻ってくる。

「すごかったよ。カツオドリがばしゃってトビウオ狙って水面に突っ込んでくるの。カツオドリって遠征中もあんまり見ないから、面白かった」

 ほらほらと写真を見せる村雨。

「お、すごいな」

 ソファに座りカメラを見る二人。

「おっとっと」

「意外と揺れるね? 大丈夫?」

 横揺れに身体ごと傾く男を村雨が支える。

「すまん。まあ、そのうち少しは収まるだろ」

 父島を出港して30分もすると男がデッキで予想した通り、海面状況が思わしくないため一等船室前のデッキを封鎖すると船内放送が流れる。

「30分で封鎖か。少しは収まると思ったんだが……外したな。思ったより封鎖が早いな。……こりゃ外部デッキが封鎖されるのも時間の問題かな?」

 男の言葉に、

「多分大丈夫だとは思うけど、どれくらいの揺れで外部デッキって封鎖になるの……?」

 男から凡その目安を聞くと、自分の経験からそこまでの揺れではないと判断する村雨。 

「でも、夕日は無理かも。水平線に雲が湧いているから」

「そうか。あ。そう言えば洗濯物如何した? ドラム缶に突っ込んでいた奴」

「あ。ちょっと出してみる」

 艤装を展開しドラム缶から洗濯物を確認する。

「ん~と、これは乾いてる。これも……これも……あ、これはまだね、これもか。……後は乾いてるかな」

 まだ乾いていない自身と男のスラックスを取り出す。

「これが乾いてなかったみたいね」

「窓辺に置いて置けば乾くだろ。日除けスクリーンを降ろしておけば熱がこもって乾きやすくなるしな」

 窓辺に生乾きのスラックスを並べてスクリーンを降ろす村雨。

「それで、この後どうするの? もうお金もないんでしょ?」

「ああ。だから、することは一つだな」

 そう言うと男が遮光スクリーンを降ろす。

 暗くなる室内。

 スクリーンを降ろしソファーに座った男の手が村雨に向かって伸びる。

「え?」

 男の手が身体に触れ一瞬身を固くする村雨であったが、男の手はその奥にあるリモコンに伸びる。

「さて、何やってるのかな、船内DVDは」

「……」

 無言でクッションを持ち、男に押し付ける。

「ちょっ。いきなり何だ? 待て、クッションを押し付けるな」

 多少のじゃれあいもあったが、揺れを感じながらキン〇コングを鑑賞する二人。

「ん~。昔のキング〇ングと違うのね」

 些か不満げな村雨。

「なんか……派手なんだけど――よね。もう少し――なんだけどね」

 

 聟島列島の北ノ島を過ぎた頃、陽が落ち始める。

 それを船室の窓から眺める二人。

「綺麗……。さっきまで出てた雲もないし、このまま水平線に沈んでくれればいいな」

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 村雨が沈む夕日を見つめる。

「……そうだな」

 見つめているうちに水平線上に雲がかかりはじめる。

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「あ……」

「……」

 残念そうな村雨の肩に手を乗せる男。

「うん。仕方ないよね」

 そう言いながらも、残照を見つめ続ける村雨。

 最後の一筋まで消えたところで視線を船室に戻す。

「夕食はどうするのって、これって買ってきた島寿司?」

「そう。いつも帰りの夕食はこれとカクテルで済ませるんだが……」

「私はこれで良いよ? ステーキとか来るときに食べたし」

 

 夕食を終え、寛いでいる二人。

「なんか揺れが激しくなって来たね」

「ああ。村雨、シャワー浴びて来るか?」

「憲広はどうするの?」

「浴びてくるつもりだが? 村雨も嫌だろ、汗臭いのがいると」

「私は気にしないけど? こんなに揺れてるけど、大丈夫?」

 シャワーを浴びに行こうと男が立ち上がった所に横揺れ。

 バランスを崩した男を村雨が支える。

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「ほら、危ないわよ。今日はこのまま寝ちゃいましょ? 私が面倒見てあげるから、ね?」

「そうするか……転倒でもしたら大事だしな」

 2010年9月の台風の最中での出航を思い出す男。

「済まん。テーブルの上の物を降ろしておいてくれ」

 そう村雨に頼み、男がベッドに横たわる。

「ハイハイ。おやすみなさい」

 

 

「寝たのかしら?」

 村雨が男を覗き込む。

「……ぐっすりね」

 男が時々自分にするように寝ている男の頬を突く村雨。

「……後2日か。……仕方ないわよ、ね」

 村雨が儚げに微笑む。

「でも、出来ればこのまま、繋がっていて欲しい……な」

 村雨の目から雫が一つ、また一つと零れる。

「……明日には話さないとね。穴が消えるかもしれないって。……此方と彼方の強固な繋がり、か。難しいよね」

 目元を拭い、立ち上がるとスイッチを消す。

「おやすみなさい」

 室内が闇に閉ざされる。

 

 寝ていた筈の男の目が開き

「……村雨」

 呟きが真っ暗な部屋に木霊する。

 

 




彼方此方、話数や内容を変更しました。

昼間の写真、同一時間に連続して撮ったんですが、大きさが統一出来ていないので場所と時間が異なっているように見えるかも。

夕方も同一場所からの撮影なんですが……

8/18 修正
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