村雨と提督の小笠原旅行記   作:fire-cat

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8月中に終わらなかった……


7月30日――旅行第7日目 午前――

「夕立、どうだ? 空間の高さは。相変わらずか?」

 緋色の瞳の艦娘が穴の中に降り立つ。

「うん。……あれ? 昨日より速度がすごく落ちたっぽい。昨日まで300mmづつ高くなっていたけど、昨日とは30mmしか高くなってないの。なんかあったっぽい」 

 その声を受け長門が夕立に上がるように声をかける。

「……急に速度が落ちた原因は何だ? まあいい。それより大淀、村雨は戻れそうだな。高さの速度が落ちた原因は村雨に聞けばよかろう」

「ええ。村雨ちゃん、戻れそうで良かった。あ、縄梯子か三連梯子用意しておかないと」

 穴から出た夕立を迎えた姉二人が事情を聴き不安そうな眼差しを穴に向ける。

「村雨、何かされちゃったのかな?」

「村雨の事だから大丈夫だとは思うけど、心配だね。戻ってきたら色々と聞いた方が良いかもね」

 

***************************

 

「……朝、か」

 薄明りの部屋でカフェオレ色の髪が揺れる。

「そっか……私」

 唇を押え、昨夜の事を振り返る。

 サイドチェストに置かれているイヤリングとネックレスを見つめ口元が緩む村雨。

(良かった……提督、ううん、憲広さんと絆ができた。これなら鎮守府とこっちも繋がったと思うけど。でも、何となくだけど……鎮守府に戻ったら、まだ駄目そうな気もするのよね)

 隣のベッドで眠っている男の姿が目に映りふと悪戯気を起こす。

「良く寝てるね」

 鼻を軽く摘む。

「提督、起きてよ……」

 起こす気もない微かな声でそう呟く。

 身をよじる男。

「起きないよね」

 そう呟き、ベッドを離れドレッサーの前に行くと緋色の右目に左目と同じヘーゼルブラウンのカラーコンタクトを入れる。

 鏡を見て確認する村雨。頬の涙の跡を見つけ、拭う。

「うん。今日も村雨は元気」

 

 大欠伸と共に起き上がる男。その視線の先にニコニコと頬杖をついて自分を見つめる村雨の姿が映る。

「おはよう。早いな……」

「おはよ。何か早く目覚めちゃったんだ。良い朝だから、かしら。昨日は提督の想いも貰ったしね」

 そう言ってネックレスとイヤリングに手を添える村雨。

 その仕草に、照れ笑いをしながらも

「そうか。……うん? もうカラコン入れたのか」

 と素っ気ない応えを返す。

「ん。……せっかくのホテルよ? ちょっと散歩行って見ない?」

 そんな誘いに男が

「良いね。おが丸見ながらボードウォークでもぶらつくか」

 と応えを返す。

「じゃ、早く着替えてね」

 

 ロビーを出て中央広場へ足を延ばす。

「いつ見ても、このマストってでかいよなぁ」

「来るときに見えたんだけど……あ、あった。あそこ、上の方に船乗りがいるんだけど、アレって何の意味あるのかな?」

「さぁ? というか、見えん。どこ?」

 男がかがみ、視線を村雨に合わせる。

「ほら、アレ。上から――」

「ああ、見えた。見えたけど……意味なんてあるのかね。見栄えとか雰囲気じゃないのかな?」

 そうだよね。と首をかしげる二人。

  

「う~ん。風が気持ちいい。今日も暑くなるって天気予報では言ってたけど、まだ涼しいね」

 ベンチに腰掛けながら伸びをする村雨。

「そうだな……」

 周囲を足早に通り過ぎる人を横目にボードウォーク手前で購入したブラックコーヒーを開ける男。

「飲むか?」

 村雨に同じものを手渡し、

「今日も36度越えだからな。あ、そうそう、今日は午前中には帰るからな? 午後から免許更新に行くから」

 今日の予定を告げる。

「そうなの? それじゃ朝食食べたら早めにチェックアウトしないとね」

 対岸に見えるお台場と球体を見ながら

「あそこもいつか行けると良いな」

 そんな村雨の呟きに

(仕事で何度も中に入ったとは言えんよな……)

 無言の男。

 

 ホテルに戻りレストランを訪れる2人。

 バイキング形式の朝食を窓際の席で楽しみ部屋に戻る。身支度を整えているうちに時計が9時を示す。

「あ、もう9時ね。……そろそろ出るの?」

「そうだな……。まぁ、平日だけどもう山手線も大丈夫だろ」

「あ、そうね。今日は平日だったんだ」

 ホテルをチェックアウトした二人。

「芝離宮公園、寄ってくの?」

 村雨が男を見つめる

「う~ん。寄りたいのは山々なんだが、済まん。また今度で良いか?」

「……うん。良いよ」

 表情を一瞬曇らせるもすぐに笑顔で男に返事を返す。

(……一瞬表情が曇ったな。……昨夜のあれだけだと繋ぎとめるには一手足りなかったのか? ……あれ以上の繋がりとなると――しかないのか? そう言った理由ではごめんこうむりたいんだが)

 腕を引く村雨を見遣り、気付かれないように溜息を吐く。

 何度か路線を乗り換える2人。

 

「やっと着いた~」

 村雨が男の腕を放す。

「ん? どうした? 入らないのか?」

 そんな村雨の様子に疑問を持つ男。

「いいから。私、玄関で待ってるからちゃんと開けてね?」

 まあいいかと男がガスと水道の元栓を開け勝手口から家に入る。

 ブレーカーを上げて、玄関に。

 玄関の扉を開けると笑顔の村雨が、

「ただいま」

 男がその言葉を聞き相好を崩す。

「おかえり」

 

 




29日、30日の写真はありません。リアルじゃカメラはトランクに入れちゃって宅急便で自宅行きでしたから。タブレットも携帯も充電器がトランクの中だったんで、殆ど起動していませんでした……。
ええ、隅田川の花火大会が延期していたのなんて忘れてましたよ。


一話じゃ終わらなかった……後二話、かな。
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