2019/03/23追記:タグを整理。【大淀・明石・夕張=技師長】を外しました。
2019/03/23追記:タグを整理。【7/25から本編開始】を外しました。
2019/03/23追記:タグを整理。【こういう場合、提督ってオリ主だよね】を外しました。
2019/03/24追記:小笠原DAY――中編―― 投稿。
2019/05/03追記:小笠原DAY――後編―― 投稿&小笠原DAYに写真追加。
小笠原DAY 完結。
小笠原DAY――前半――
「うわ~。前に乗った時と全然違うのね~」
乗客が少なくガラガラの車内を見渡す村雨。
「土曜の山手線なんてこんなものだ。時間も早いしな」
「それにしても、小笠原DAYに行くのに乗る車両が小笠原ラッピングだなんてついてるわよね」
「全くだ。まぁここ最近は目に付くようになっていたけどな。特に秋口あたりから。返還50周年でなんか人気でたのかな?」
そう考えるとラッピング車両に乗る確率は元々高かったのかもしれんな。と内心思う男。
村雨と男が出かける先は、初夏に訪れた竹芝ターミナル。
「へ~。小笠原DAYなんてあるのか」
そのイベントに男が気付いたのは偶然だった。
「初めて知ったな、こんなイベントがあったのか。12月15日か。土曜日だから行けるっちゃ行けるな」
興味を持った男が昨年のイベントを漁るとフラや歌、物品販売が行われることを知った。
「農産物販売するのか……。ふむ。コーヒー結局また来なかったからなぁ。……ここで買えるかな?」
男が7月に小笠原で申し込んだコーヒーは結局届かなかったが、ここ数年届いたことがないので「やっぱりな」という気持ちしかなかった。
だが、このイベントを知ると、ひょっとするとここなら買えるか? と僅かではあるが期待感が湧いてきた。
「村雨が剥れているからなぁ……」
埼玉の小江戸で秋に行われている祭りに名取と一緒に出掛けてから機嫌が悪くなっている指輪を贈った艦娘の顔を思い浮かべる男。
「コーヒーが来なかったのにも怒っていたし……一緒に出掛けるかな」
その日の夜に村雨を呼び出しこの話をすると機嫌を直した様子の村雨に男がホッとした表情を見せる。
「だって私以外の娘と一緒にいるところ向こうの知り合いに見られたら大変でしょ?」
とは、ご機嫌な様子の村雨の言葉であった。
「ここに来るのも久しぶりね。あ、大分工事進んでいるんだ」
駅を出て竹芝桟橋に向かう途中、手を翳して上を見上げる村雨。
「2020年かぁ、完成するの。あれが完成すると信号とか待たないで行けるのね。楽しみだなぁ」
男を振り返り笑顔を向ける村雨だったが、ぶるっと身体を震わせると男の腕にしがみ付く。
「寒いんですけどぉ。こんなに寒いなんて知らなかったよ」
そんな村雨の様子に苦笑する男。
「もうちょっとだ。中に入れば少しは暖かくなるから、それまでは」
そう言いながら自分のコートを村雨にかける。
「良いの?」
かけられたコートを握りしめながら男を見上げる村雨。
「コート以外にも防寒対策はしてるから大丈夫だよ」
そんな男の言葉に
「ありがと……憲広」
礼を言う村雨。
首都高の高架下を渡り歩くこと10分弱。
「到着っと」
「相変わらずマストが大きいな」
男が持ち歩いている懐中時計を確認すると午前10時50分を周った所だった。
「さてっと。かなり早かったけど……」
「ねえ……結構人がいるんだけど、皆イベントに来た人かな?」
周囲を見回す村雨。
「さすがにそれはないと思うけど……。あ、受付あるな。ちょっと様子見て来る」
受付らしい場所を確認した男が様子を窺う。
(何だ、どこかのイベントか)
レストラン船【ヴァンテアン】の名前を確認した男。村雨の下に戻ると
「他のイベントだな。よく考えたら小笠原DAYの会場は夏に行った第二待合所だから此処に受付はないな」
そう言い村雨の肩を抱き奥の第二待合所に向かう。
「えっと……」
待合所を除くと設営された舞台でトランペットやマイクチェックの音が響いていた。他にも主催の小笠原村観光局の他に小笠原海運やツーリスト各社や東京ヴァンテアンクルーズのブースが準備の最中であった。
「まだまだ準備中だな」
「そうね。……出る?」
「ん? ……中には入れるようだから写真でも見るか」
「うん」
中に入りブースの準備を妨げないように硫黄島のパネル展示を眺める。
(村雨、大丈夫だろうな……?)
旅行時の様に泣き出していないか横目で村雨を確認する男。
真剣な眼差しでパネルを見つめる村雨であったが特に変わった様子はなかった。
暫くパネルや入口脇に展示していたすみだ水族館の水槽を見てから会場を後にする二人。
「こりゃ暫くかかるな。少し早いけど昼食摂っておくか」
「ちょっと早くない?」
時計を見る村雨。
「未だ11時半だよ?」
「1時頃には結構並んでいると思うんだ。昼食の時間も考えると早めに摂っておきたいんだ」
「う~ん。そういうなら、そうしよっか」
第一待合所隣の【東京愛らんど】に入る二人。
「あ、カレンダーがある。ねっ?」
「はいはい。そんな風に上目遣いで見なくてもちゃんと買うから」
見上げる村雨の視線に苦笑で返す男。
「カレンダーの他には……。ふむ、パッションリキュールも買うか。後は……小笠原のじゃないけど赤イカの塩辛も買っておくか」
「ね、漁師のよくばり沖漬けだって。これも買わない?」
「ん? 主材料は……赤イカ・スルメイカ・金目鯛・目鯛か。面白そうだな。これも買うか」
その言葉に軽くガッツポーズをする村雨。その仕草に目を細めながら村雨の頭を撫でる男。
「あ、またぁ」
「おっと。ついつい撫でちまうなぁ、ごめんごめん」
頬を膨らませる村雨。その頬を突きながら男が謝罪する。
「むぅ。反省の色がない。ここは奢ってね」
「はいはい」
「さて、何頼むかなっと。……うん、ムロアジメンチバーガーと島唐辛子のチーズドッグに東京島パッションフルーツサ」
「メッ。昼間っからお酒はダメ」
「はいはい。小笠原パッションフルーツソーダにしておくよ」
そんなやり取りを聞いていた店員がクスクスと笑い声を漏らす。
「ん~と。私はムロアジメンチのカレーライスと小笠原パッションフルーツソーダにする」
注文を終えた二人が店員の席でお待ちくださいとの声を受けて適当な席に座る。
「まだガラガラだね」
「ま、早いからな。これが暫くすると混んで来るんだ」
壁にかかっている写真を見ながら小笠原での思い出を話す二人。
「おまたせしました」
そんな声とともに注文した品が届く。
「わぁ、美味しそう。……でも、お父さん、それじゃ足りないんじゃないの?」
男が頼んだバーガーとチーズドッグを見て村雨が首を傾げる。
「ん? まぁ試食コーナーとかあるらしいからな。それに腹減ったらここに来ればいいしな」
「それもそっか」
チーズドッグを食べている男の額に薄らと汗が浮かぶ。それを見た村雨が
「ねっ。汗かいているけどそんなに辛いの?」
「ん? 思ったよりは辛いな。さすが島唐辛子」
「ちょっと頂戴?」
「ん? 別に構わんが……大丈夫か?」
「少し位なら大丈夫」
口を開ける村雨。
「……まぁ良いか」
その口に唐辛子を乗せたチーズドッグを入れる男。すぐに
「辛っ! これ辛っ!」
村雨の悲鳴が上がる。
「やっぱりな」
慌ててソーダを含む村雨。
「これ、すっごく辛い」
「だから大丈夫かって聞いたんだ……」
真っ赤に顔を染める村雨に、やや呆れたような口調の男が席を立ち水を持ってくる。
「ほら。暫く氷を含んでなさい」
コップに入っている氷を含ませる。
「落ち着いたか?」
首を振り村雨が頷く。
「本当に辛いの駄目なんだな、村雨」
「うん……ある程度は大丈夫なんだけどね。ごめんなさい」
「いや、謝られるもんでもないけどな。そう言えば島唐辛子のチリコンカンもダメだったな」
そんな話をしながら食事を終える二人。
「お、もう12時か」
「ヒトフタマルマル。そろそろ行く?」
「そうだな。土産物見てそこのコンビニ回ってから行くか。誰か早い人が並んでいる頃だろうしな」
土産物を見て大島ゴジラカレーを買い、コンビニで小笠原パッションフルーツと小笠原島レモン壜チューハイを見つけ買った二人。
奥の第二待合所に向かうと大分ブースも揃ってきたがまだまだ慌ただしさが見受けられた。
「あ、そう言えば村雨。そのPASMO、残金どの位だった?」
村雨が手にしているPASMOを見て男が確認する。
村雨のPASMOは旅行時に男が村雨用に購入してある程度の額をチャージをしていたものであったが、流石に残額がどの程度であったかは覚えていなかった。
「え? ……帰りの交通費位なら」
「上のファミで、もう少しチャージしていた方が良いな。会場は電子マネー以外使えないから」
「え? そうなの?」
「ああ。会場内でチャージは出来るようだけど、先にある程度入れていた方が良い。俺のは1万入っているけど……一緒に行くか?」
「うん」
上階にあるファミでチャージを終えて戻る二人。
「……しっかし、どっちに並べばいいんだろうな? 聞いてみるか」
入口が二ヶ所あるが案内表示も出ていない為、どこに並ぶのかわからない二人。
男が忙しなく歩き回っているスタッフに声をかけ、場所を確認する。
指示された場所を見ると数名の男女が並んでいた。
「こっちか……」
「もう並んでいるんだね」
二人が列に並ぶ。
「何時ぐらいから並んでいるんですか?」
先に並んでいた人達の会話を聞いていると先頭の女性は朝8時位には並んでいたらしい。
「早いですねぇ」
男が思わず声を零すと
「そうなのよ。まだ誰も居なくて――」
会話が始まる。それを契機に周囲の人達と会話が盛り上がりはじめる。
話を聞いていると人気の商品がある程度わかってくる。
「Tシャツは先に買っていた方が良いんですね?」
「うん、大人気みたいね。ほら、船に知り合いがいるけどもうかなり売れているみたいよ?」
「そうなんですね……買えるかな?」
「先頭だから。ほら、受付したら真っすぐブースに行けば大丈夫」
村雨が女性から情報を仕入れる。その傍らで
「何、コーヒー狙いなの? コーヒーは今回はないらしいよ。蜂蜜はあるらしいから狙うならそっちにした方が良いって」
「ありゃ、コーヒーやっぱりダメですか。ん~ラムはどうですかね?」
「あ、深海ラム? 結構作っているからね。余裕があったらで良いんじゃない? 島に来ればよっぽどのことがない限り買えるよ」
同じように男も情報を仕入れていた。
12時半を回るとスタッフが列の整理を始める。
「ここから三列に分かれるので、後ろの人達にも声をかけてください」
列の先頭でボードを張りはじめるスタッフ。
列から
「えっと……島民と元島民が青か。リピーターが黄色で未だ行ってない人が赤と。……抽選かな?」
そんな声が上がる。
「お楽しみです」
笑顔のスタッフ。
「もう少しお待ちください」
男がふと後ろを振り返ると既にかなりの人数が並んでいた。
村雨の肩を突く男。
男を振り返る村雨に
「後ろ見てみ。凄い列だ。早く来て良かったよ」
「ホントだ。未だ13時前なのにもうこんなにいるんだね。最初は今頃来る予定だったのよね? 今頃だったら大変だったね。早く来てよかった」
開場まで、後100分。
列はまだまだ伸びていた――。