村雨と提督の小笠原旅行記   作:fire-cat

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プロローグ4で、時間切れかな。もう少し入れたかったけど、まあ良いか。


プロローグ4

 ――どこからともなく漂ってくる香りに目を覚ました男が寝ぼけ眼で階段を下る。

「……何だ、この香り」

 匂いの元を辿り台所へ。そこには――。

「あ、おはようございます。提督。御飯はもう少しでできますから少しお待ちください。エプロンお借りしました」

 カフェオレ色の髪を持つエプロン姿の娘がコンロの前でお玉をかき混ぜていた。

「……いかん、疲れているな。飯作ってもらう夢見るとは」

 そう呟き階段を上がる男に

「提督? 寝ちゃだめですよ」

 お玉を持ちながらコトンと首を傾げるカフェオレ色の髪を持つ娘。

「……本気で医者行ってくるか。夢と現実が曖昧になってる……」

「ひっどーい。現実ですってば、現実」

 ガスを止めベットに潜り込もうとする男を追いかける。

「はいはい。……変な夢だ。寝なおすか」

 その声を無視し頭から布団をかぶり、そのまま二度寝に入る。

「んもう。せっかく用意したのに。こうなったら根競べなんだから」

 

 男が暫くして目を覚ます。

「おはようございます、提督」

 自分を覗き込むカフェオレ色の髪を持つ娘が目に映る。

「……まだ寝ぼけてるのか」

 男は呟くと再び眠りかけるが、そうはさせじと娘が揺さぶる。

「起きてください。提督、提督ってば。……あんまり聞き分けが悪いとご近所中に聞こえるように叫びますよ!」

 その声に

「……俺の妄想や夢じゃないのか。……で、嬢ちゃん、飯作っていた様だから空き巣とかじゃないと思うんだが、そんなコスプレして目的はなんだ? 現金ならないぞ、まじで」

 そう言いながらベットから抜け出す男。同時に枕元に常備している二尺の六角鉄棒を寝巻にしている作務衣の懐にしまい込む。

「……だから、私は!」

 そう言えば自己紹介していなかった。と気が付く。

「私は村雨です。白露型三番艦の」

「もう少し、まともな嘘つこうな。嬢ちゃん」

「もう、どうしたら信じてくれるんですか、提督」

「いや、信じるもなにも……」

 男に悪戯心が沸く。

「ん~信じて欲しいなら、自己紹介してくれないか? ゲームの村雨の台詞通りに」

「もう……。それで信じてもらえるなら」

 軽く咳ばらいをし

「はいは~い、お待たせ! ……そう? ごめんなさい! でも、これから村雨のうんといいとこ、見せたげるっ! ――提督」

「ほう。よく似ているなぁ」

 そう言いながらも、確りと一昨日に改装したばかりの改二の台詞と自分の提督名を出されたことに男は若干の驚きを隠せないでいた。

(……この提督名は艦これ以外で使ってないんだが。この嬢ちゃん、どこで調べたんだ?)

「この台詞で合ってますよね、一昨日改二になりましたから。それと、これで信じてもらえました? ……まだ駄目ですか」

 男からは未だ不審の念が感じ取られる。

「ん~ あ、そうだ。この手紙読んでもらえますか?」

 大淀から託された封筒の存在を思い出し手渡す。

「……嬢ちゃんが我が家に侵入してきた理由でも書かれているのかな?」

 左手で封筒を受け取る男。

 男が手紙を読みふけ――。

「……ありえん。ありえんが、これは……」

 頭を何度も振り――大きな溜息を吐く。

「……確かめたいんだが、本当に艦これの村雨だと言うのか?」

「ですから!」

 自称村雨の抗議を遮るように

「幾つか質問するが、良いか? ……村雨の鎮守府はどこにある? 鎮守府のドックと艦隊の数は? 初期艦は? ケッコンカッコカリを結んだ艦娘は誰と誰で、その順番は? 村雨が所属している艦隊名は?」

 その問いに一つづつ答える『村雨』。当然どれも男の記憶通りである。そして最後に――。

「えっと、私が所属している艦隊の名前は……五十鈴さんが旗艦の爆乳水雷戦隊です。……もういいですよね?」

 自身が属している艦隊名は小声で頬を染めながらも答える自称村雨。

「……全部あっているな。さすがに認めるとするか。……彼方此方で読むSSと同じ現象が起きるとは未だ信じたくないが」

「やっと認めてくれましたか。……提督って頑固なんですね」

「直ぐに信じる方がどうかしているだろ。普通は、異世界に繋がるのはお話の中だけだ」

「はぁ。まあ良いです、取り敢えず信じて貰えたなら。それより、朝食、には遅すぎますね。とにかく食事にしましょう」

 

 娘が作った茶粥、じゃが芋・コンニャク、豆腐・豚肉を具にした御御御付、大根おろしを添えただし巻き卵と香の物の早い昼食または遅い朝食(ブランチ)を済ませ、改めて『村雨』が来訪した事情を尋ねる。

 そこでも一悶着あったが、業を煮やした娘が強硬手段に訴え、穴から大淀を称する黒髪の娘と夕張を称する緑髪(染めたのか?)の娘を呼び出し、渋る男を穴に押し込んで謎の空間で話し合いを持つ。男が穴の淵から秘かに、大淀を称する娘が言う『艦これ世界』を眺め、艦娘と称するピンク色の髪と赤い目の少女(夕立)達に見つかりかけたり娘達が男を録画した映像を見せたりと2時間に渡り話し合いを行った結果、男がようやく納得をした。

「……やっと納得していただけましたか、提督」

 黒髪の娘――大淀がやや呆れながら疲れたような声を出す。

「まぁ、これだけ色々と見せられたり、妖精(?)達に触れあったり、装備を触ったりすればな……。序でに言うと、この部屋というか空間から変な電波も出てなかったしな」

 そう言って内ポケットより盗聴器発見器を取り出す男。

「へぇ。そんな小さなもので発見できるんですか?」

 緑髪(元々の色だった)の娘――夕張が興味津々の様子で覗き込む。

「まぁな。こいつは海外から個人的に輸入した品だよ。盗聴電波識別機能と実際に盗聴されている音声を傍受することができて、電波を発しない隠しカメラの位置も特定してくれる代物さ。……夕張、近い」

 男が自分の胸を親指で叩いた意味に気付き、自身の胸元を抑えながら頬を赤く染め離れる夕張。

「そんなに興味あるなら、こいつをあげるから色々弄ってみたらどうだ。同じものは持ってるから遠慮しなくていい」

 男の「あげる」という言葉に表情を一瞬輝かせ、慌てて否定するが、次の「同じものは持っている」という言葉で遠慮なく貰う事にした夕張。

 ご機嫌で引き上げる夕張や大淀を若干呆れた視線で見送りつつ、カフェオレ色の髪の娘――村雨が問いかける。

「良いんですか? 提督。結構高いですよね、あれ」

「まぁな。本体価格6万ちょいと言ったところか。……ゲームだって思っていたから色々無茶もできたんだが、色々話したり鎮守府の様子を実際に見たりするとな。何かしてやれないかなって思ってな、あれがなんかの役に立つならいいさ。もう中破進軍とかオリョクルとか無理かもな

 最後は聞き取れなかったが何を思ったのかは想像がつき、そんなことを話す男を甘いと思いつつ悪い気はしない村雨であった。

 

「ところで提督、この部屋の旅行鞄とかがあるのは、どこか旅行にでも行かれるのですか?」

「ん? 来週の火曜日から6日間の小笠原旅行にな。それと、その取って付けたような改まった言葉遣い何とかならないのか? 艦これでの口調と違うと違和感がある」

「せっかく提督とお話しするから改めてみたのに。わかりました、いつも通りにしますね。それと6日間も旅行なの? ……どうしよう。私7月31日には戻るから、提督1週間もいないのね。でも良いかっ……それじゃぁ留守は私に任せて、楽しんでくださいね」

「は? 新聞とか止めてるから、ここに居てもつまらんぞ? 近所の目もあるから、一人では残せないからな。出直してきたらどうだ?」

「うん。……そうしたいのはやまやまなんだけど、日程とか考えるとダメなのよね。8月中旬には大本営から大規模作戦が告知され……あっ、何でもない、忘れて」

 内緒にするように言われていた事を口にしかけた事に気付き慌てて口をふさぐ村雨

「ふ~む。ダメなのか。……一緒に行ければ良いんだが、もう追加申込できないからなぁ。来るのが判っていれば二人分で申し込んでたんだが」

 村雨が口にしかけた大規模作戦の事には触れない男。

「……提督、私、どこか宿に泊まりますから、心配しなくても良いですよ?」

「金はあるのか?」

「大丈夫ですよ。お金も55000コインありますし」

「はぁっ? ちょっと待て。コインって、ちょっと見せろ。ここじゃ使えないかも知れん」

 村雨が差しだす財布の中身を確認し天を見上げる男。

「提督? どうしたの?」

「村雨。……もう一回大淀か夕張か明石に連絡とってくれ、至急だ」

 溜息を吐き、村雨に大淀たちへの連絡を頼む男。

 

「どうしました、提督?」

 大淀たちが先程の空間――艦これの世界と男の世界の間に出来た空間――に集まったところで男が口を開く。

「村雨にコインを持たせたのは誰だ?」

「え? 私ですけど、何か問題が?」

 大淀が首を傾げる。

「こっちじゃコインなんて使えないことは知らなかったのか?」

 大きな溜息が漏れる。

「え? 提督は結構コインを集めていらっしゃったのでてっきり何らかの方法で使えるのかと」

「……それは、模様替え用の家具を購入するためだ。執務室の家具が替わっていただろ?」

「ああ、その為でしたか。いつの間にかお風呂になってたり、気が付いたら布団が敷かれてたりしているなって思ってたんですよ」

「……大淀、君はこっちの世界の読み物ではしっかり者に書かれていることが多いのに。……事実は小説よりも奇なりというやつか」

「失礼ですね。……村雨の生活費どうしましょう?」

「せめてこっちの貨幣に似ていれば、何とかなったかも知れんが……あれじゃどうにもならん」

「あれ? 提督にお世話していただければ良いんじゃ……?」

「済まんが、24日から6日程旅行で留守だ。村雨が何処かに泊まるというから金があるのか聞いたらコインがあると言われてな。さすがに給料日前で旅行となると色々と物入りで村雨に渡せる金がない」

「我々も提督の世界のお金なんてありませんし……」

「……旅行先に村雨を連れていければいいんだが、申し込んだのは一人分だからな。部屋は宿も船も2人部屋なんだが、費用を振り込んでしまったから追加申込は無理なんだ。旅行会社の申込書もデータで保管だからすり替えもできん」

「……困りましたね。……ん? 追加じゃなければいいんですか?」

「まぁな。部屋数が増えるわけでもないから追加じゃなければそんなに影響はないだろうな。……あ、当然同室なのは村雨が嫌がらなければの話だ」

「私は別に構いませんけど、提督、良いんですか?」

「構わないが……大淀、何か方法があるのか?」

「ええ。……ちょっとコレを」

 大淀の仕草から方法を察する男。

「できるなら構わないが……下手を打たないでくれよ?」

 その言葉を最後に互いに元の世界に戻る。

 

「大淀、手があるの?」

 鎮守府に戻った大淀に夕張が尋ねる。

「ええ。……あっちの大本営経由で提督が申し込んだ旅行社の情報を書き換えます。此方もあちらも電子網だけは同じ方式で良かったですね」

 大淀が目の前の機器を操作しながら、夕張に応えを返す。

 

「なかなか……難しいですね。コインは、似たような名前の仮想通貨と呼ばれているものに代えられましたが……向こうの大本営には入れるんですけど、そこからが……」

 それから4日後、食堂で進捗状況を明石達に聞かれた大淀が目の下に隈を作りながら答える。

「でも、もう少しで入れそうです。銀行の方もパスワードの方式が判りましたので、今晩中には、ね」

 

「……見つけましたよ。……ここを……こうして……ここを書き換えて……良し、終わり。此方も……ここのログとこのログとこのファイルを消して……向こうの大本営に入った記録を削除……良し……あ、どこか障害を起こしてしまいましたか? ……このファイルとパッチファイルを削除してっと。終わりましたよ。提督に連絡を取ってください」

 心配げに見守る夕張達ににっこりと笑い――そのまま倒れ込む。

「大淀!?」

 慌てて駆け寄る明石達。

「後、村雨ちゃんにこ…渡し…下さ……」

 メモ書きを手にしたまま大淀が意識を失ったかのように静かになる。 

 慌てて二人が大淀の顔に耳を近づけると寝息が微かに聞こえてくる。

「……寝ているだけみたいね」

「良かった」

「じゃあ村雨ちゃんに連絡してきますね」

 メモを手に部屋から出る夕張。それを見送り――。

「お疲れさま。大淀」

 優しく毛布を掛ける明石。

 

「提督、大淀さんが無事書き換え終了させたって」

 連休明けから旅行準備を男と一緒に進めていた村雨がホッとした様子で男に声をかける。

「そうか、間に合ったか。良かったな、村雨」

「ええ。……良かった」

 連休明けから一緒に過ごしているうちに幾分距離を詰めた二人だった。

「あ、そうだ。村雨、旅行中はその提督呼びは禁止だ。変人扱いはされたくない」

「え? いきなり何? 提督でなかったらなんて呼ぶの? パパ?」

「パパ呼びは絶対にやめろ。間違いなくとっ捕まる」

「もう、面倒ね。じゃあ、人前ではお父さんで良い? 二人の時は……提督って本当の名前なんだっけ?」

「おいおい。今頃か? ……金指。金指憲広だ」

「ん~。じゃあ、憲広って呼ぶね。……ノリでも良い?」

 小さく舌を出し悪戯気に宣言する村雨であった。

 

 




 まぁ、仕事から帰った提督を三つ指ついてもお出迎えとか、二人で艦これプレイ中の様子とかの村雨との距離が縮まるやり取りはいいかなと。
 提督の名前は明日にでも書きます。
 因みに提督がケッコンカッコカリをしたのは飛龍だけです。『誰と誰で、その順番は?』と聞いているのは引っかけです。

7/23 提督の名前書きました。清和天皇の裔を称する伊豆の名族、金指氏から借りてます。
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