朝――激しい雨音とともに目が覚める。
隣のベッドで寝ている村雨を起こさないようにカーテンの隙間から外を覗くと土砂降りの光景が飛び込んできた。
「あちゃー。中止かな、これは」
男が呟き、ふと隣を見ると髪を解いた村雨がすやすやと枕を抱え横向きに眠っている。その顔にかかる髪をそっと梳くと、悪戯心を起こした男が携帯でその寝顔を写す。
保存した写真を見て、後で見せてやろうと満足げに頷くと、村雨を起こさないようにそっと部屋の玄関から外へ出る。
階段を降り、外へ出ると風も強く大粒の雨が降っている。
「台風の直撃は未だだったよな。これも台風の所為かな」
そんなことを呟きながら暫く空を見上げていると、人の気配が近づく。
「あ、憲広。お早う。起きたら部屋に居ないんだもん。どこ行っちゃったかと思った」
「ああ、村雨か。お早う。何、村雨が可愛い寝顔でぐっすり寝てたんでな、起こさないように出てきた」
「もう。そんなことばかり言って。……やっぱり夕立が来なくて良かった」
そう呟くと傍の男と同じように空を見上げる。
雲が立ち込め雨が止む気配はない。
「お祭り中止かな?」
「どうだろうな。中止だとは思うんだが……」
二人で空を見上げ、
「戻るか。これ以上いると濡れ鼠になっちまう」
朝食は和食。
食後のコーヒーまで終えた二人が部屋に戻る。
「何時から開始だっけ?」
「昨日MARUHIで聞いた時は9時開始だと」
「えっと、今が7時半だから、そろそろ着替えて準備しておかないとね」
「バスは8時13分だから、準備するか」
「じゃ、着替えてくるね。覗いちゃダメだからね」
「誰が娘の着替え、覗くか! さっさと着替えて来い」
「はーい(未だ娘扱いか。でも、もうちょっとかな)」
村雨が着替えを持って浴室に入ると、男が溜息を吐く。
「全く。次から次へと。……いつまで持つかな」
浴室からノックの音が聞こえる。
「どうした? 何かあったか?」
そう問いかけると、中に入って。と促す声。疑問に思いながらも扉を開けると
「じゃ〜ん。本邦初公開。村雨の生水着姿だよ……って、無言でドア閉めないで」
羽織っていたバスタオルを広げながら宣う村雨に頭痛を覚え無言でドアを閉める男。
「頭痛い。村雨、お前はいつからアホの娘になったんだ? それとも俺の理性をガリガリ削って楽しんでるのか?」
「えー。だって最後は海に入るんでしょう? だったら最初から水着を着ておこうかなって。ダメ?」
「まあ良いか。早く着替えてな。俺も着替えるんだから」
「じゃあゆっくり着替えようかな?」
「ここで着替えてやる……」
「ヤバっ。間に合うか?」
時間間際になり階段を駆け下りる二人の姿があった。