・デレ側のプロダクション名は明記していません。
最初のレッスンの日、早めに着替えてレッスンルームに入っていた未央と志保はトレーナーがやってくるのを待っていた。
もちろん、最初ということもあって二人のプロデューサーもいる。
「いやあ、やっぱり最初のレッスンとなると緊張するね」
プロデューサーとも特に会話をする様子がない志保を見て、未央は緊張しているのだろうと感じたようだ。
人も場所も慣れているはずの自分も意識してしまうと伝えることで緊張を和らげようという意図だろうか。
「そうですね、でも逆に緊張感がないのもプロとしてどうかとは思います」
「中々に手厳しいですな、しほりん。でもまあ、緊張との付き合い方って人それぞれだしね。見て分かる人と見ても分からない人がいるわけで。未央ちゃんだってこう見えて超緊張してるんですよっ!」
そう言って未央は笑ってみせた、注意してよく見てみると指先が微かに震えている。
しかし、志保も自分の緊張と向き合うことでいっぱいなのか気づいている様子はない。
「……たしかに本田さんの言う通りだとは思いますが、緊張しているようには見えませんね」
「そりゃまあ、自分たちの普段使ってる場所だしね。しほりんより緊張してたらまずいじゃん?」
「たしかに、私より緊張されてしまっては色々と困りますね」
「でしょ~? とりあえず、ホームの私から言える大事なことは……トレーナーさんはめちゃくちゃ厳しいしめちゃくちゃ怖いけど、良い人だから安心していいよっ」
「ほう? 本田は私のことをずっとそう見ていたのか」
ちょうど未央がトレーナーのことを話し始めたとき、タイミング良くレッスンルームに入ってきたその本人は背後に仁王立ちして耳を傾けていた。もちろん、その表情は未央の言う通り眉間にしわを寄せた怖いものとなっている。
噂をすればなんとやら、である。来ると分かっているのに姿が見えないからとうかつなことを言うべきではないのだ。
「え!? い、いやあ……ほらっ、でもトレーナーさんが厳しくないとパフォーマンスの出来に影響が出ちゃいますし、ねっ?」
「その通りだな、では今後本田には完璧なパフォーマンスに仕上げてもらうために、より厳しく指導していくことにしよう」
「ひええ~、お手柔らかにお願いします……」
いまだ腕を組んで背後に仁王立ちのトレーナーのお言葉に未央はがっくりと肩を落とす。
悪く言っていたわけではないのだが、厳しいだの怖いだのと表現するのは良くなかった。
もっとも、未央の反応を見て少し口角が上がっているので怒っているというわけではなさそうだ。
「さて、挨拶が遅れてしまったな。私は今回のレッスンを担当させてもらうことになっているトレーナーの青木聖だ、よろしく頼む」
「765プロダクション所属の北沢志保です、よろしくお願いします」
二人が挨拶を済ませると志保のプロデューサーも近づき名刺を差し出した。
「同じく、765プロダクション所属のプロデューサーです。志保のこと、よろしくお願いします」
「私に名刺を? ふふっ、マメなプロデューサーだな」
「もしかしたら、連絡が必要になることもあるかもしれませんから」
報連相が大事といっても、連絡先が分からないのでは意味がないということだ。
もっとも、直接連絡が来るような状況が良いものとは考えにくいので、何事もないのが一番だろう。
「なるほど、まあこれもちょっとした縁だと捉えておこう」
「全員集まったことですし、すぐにレッスンを始めませんか? 時間は限られているんですから」
トレーナーもやってきたということで少し早いがレッスンを始めたい、志保はそう切り出した。
今回のようなケースでは一緒にレッスンをできる時間はいつも以上に貴重なので当然の意見ではあるだろう。
「そう逸るな、まずは準備運動からだ。ストレッチで各々の柔軟性も見極められるからな」
「分かりました、ではよろしくお願いします」
「お願いしますっ!」
二人は立ち上がるとトレーナーに一礼をする、期間も短く厳しい内容となるレッスンの始まりである。