・デレ側のプロダクション名は明記していません。
最初のレッスンから数日がたち、二人はフェスへ向けて練習を重ねている。
揃って練習できる時間をどれだけ整えられるかというのは難しいところがあるだろうが、進捗はどうなのだろうか。
「1,2,3,4,5,6,7,8。……北沢、また遅れているぞ」
「はぁ……はぁ……すみません」
どうやら志保はまだテンポについていけない部分があるようで、悔しそうな表情を見せている。
そんな彼女を心配そうに見ている未央は今のところ順調といった様子、志保が躓いているということは恐らく現在練習しているのは未央の曲なのだろう。
「とりあえず、一旦今のところまでを集中的に――」
「いえ、最後まで通しでお願いします。振り付け自体は覚えているので一度動きを確認したいです」
「……ふむ、そうだな。たしかに遅れているだけで動きに間違いはなかった。では、一旦通しで踊って振り付けを間違って記憶していないか確認をしよう。その中で更なる修正点も見えてくるだろうしな」
「ありがとうございます」
どうやら志保は事前に映像かなにかで振り付けを頭に入れてきているようだ。
もっとも、体が追いついていないようだが。
本当に間違いなく記憶しているのならば、思うように体が動かないのはもどかしいことだろう。
「本田、自分の曲だからといって気を抜くんじゃないぞ。同じ振り付けを客観的に見ることで得られるものもあるだろうからな」
「も、もちろんです! 未央ちゃんはいつでも全力ですよっ!」
トレーナーは未央の意識が志保に向きすぎていることも察していたようだ。
指摘されたことで未央も気持ちを切り替えられたように見える。
そのまま、二人は厳しい指導の中ひたむきにレッスンを続けた。
「今日はここまでだ、各自課題と修正を忘れないように。次回はスケジュール通りの内容となる、レッスンまでに確認をしておくこと」
「はい」
「はいっ!」
二人の返事を聞くとトレーナーは頷き、少しだけ笑顔を見せた。
「では、ケガのないようにな」
「「ありがとうございました」」
トレーナーが出て行きレッスンが終わると、着替えに行く前に未央は志保に話しかけた。
「しほりん、この後ちょっと残って練習とかどうかな? 一緒にいるときに確認しておきたいこととかあるし」
「……すみません、用事があるので」
スマートフォンを取り出し時間、あるいはプロデューサーからの連絡を確認した志保はそう答えた。
弟の迎えがあるのだろう。
「そっか、じゃあカフェに一緒に行く?」
事前に聞いていたこともあり、弟の迎えがあるのだと察した未央は誘い方を変えた。
1人で待つよりはこちらの方がいいだろうとの判断のようだ。
「いえ、1人で問題ありません。そもそも、フェス以外にも仕事があるわけですから、貴重な時間をわざわざ私に使おうとしないでください」
「えっと……」
「今回限りの関係なんです、あまり世話を焼いてもしょうがないと思いますが」
「そう……かな」
「失礼します」
志保はそのまま背中を向け行ってしまった、未央は追うことはせずただ見送っている。
色々な思いが絡み合っているような複雑な表情だ。
「世話焼きってつもりじゃないんだけど、ああ言われちゃうと動けないなぁ」
心配しているということも少なからずあるだろうが、やはり一番は仲良くなりたいのだろう。
しかし、当の志保があまり乗り気ではない以上踏み込みづらいようだ。
「うーん、しばし暗中模索といきますか」
もう少し積極的に行くべきか、志保が嫌がるかもしれないので引くべきか。
違う事務所ということもあってどこか気を使ってしまうようなので、未央は少し考えてみることにしたらしい。
腕を組み難しい顔をしながら未央は着替えに向かった。