剣魂    作:トライアル

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 今回から三部に渡って大乱闘をお送りします!!




第八十九訓 集結!王に抗う者たち!

「「「「ハァァァ!!」」」」

 勢いよく声を上げながら、銀時、キリトら三十人の戦士達は、こちらへ突入してくる無数の怪人達に真っ向から立ち向かっていく。襲い掛かる戦闘員を薙ぎ払い、得手を用いて容赦なく攻撃を仕掛けている。アルンの未来を懸けた戦い。皆が負けられない勝負に身を投じていくのだ。培われた経験を基に、戦いはより激しさを増していく!

 

 

 

 

 

 

 

 住宅街を潜り抜けた先にあるのは噴水路。一定の時間になると水が舞い、舗装された通路の窪みに水がしたたかに溜まる。凸凹した道は歩いた人達を立ち止まらせ、見た者に楽しみを与えていた。

 そんな場所で戦うのは四人の精鋭達である。

「あらよっと!」

「ハァ!」

 噴水路を境に左側で怪人達と対峙するのは、坂田銀時とシノン。両者共木刀や弓と言った得手を用いて、こちらに向かう混成の戦闘員軍団(カッシーンやバグスターウイルス、ライオトルーパー、レオソルジャー等)を次々に倒していく。

「行って!」

「ナァ!」

「おっと!」

 一方で右側では、月詠とシリカが戦闘員軍団を蹴散らしている。前者はクナイを手に格闘戦を。後者はダガーを用いて、ピナとのタッグ戦法を。両者共に苦戦することなく、足元の水たまりを弾けさせながら、有利に戦闘を行っていた。

「フッ! そこじゃ!」

 両者をさらに分析してみると、確かな違いが見えてくる。月詠は足蹴りを多用しつつ、衣服に仕込ませていたクナイを余すことなく使用。次々と戦況を変化させていき、自分好みに戦いを進めていた。

「ナー!」

「よくやりました、ピナ! やぁぁ!」

 一方のシリカは、相棒であるピナとのタッグ戦法を遺憾なく発揮。相手の注意を引かせて、その間に彼女自身が戦闘員の大群を一網打尽にしていく。リアルでの戦闘が不慣れながらも、自分が出来ることに全力を尽くしていた。

「どうじゃ! って……何!?」

「月姉さん!? うっ!?」

 と戦闘員を粗方一掃したところで、彼女らにさらなる刺客が襲い掛かる。月詠にはシャムネコをモデルにしたシャムネコヤミー。シリカにはヨロイトカゲをモデルにしたサンゲイザーファンガイアが勝負を仕掛けてきた。

「ミャオーン!!」

「くっ……なんてはしたない怪人じゃ! じゃが、わっちを倒すことは出来ぬぞ!」

 相手に首根っこを掴まれてしまい、月詠はそのまま水たまりへ沈められそうになる。個人の感覚だが、彼女はシャムネコヤミーの奇抜な姿に嫌悪感を抱いていたようだ。

 水が振袖に入り込み、動きを制限されてもなお、月詠はシャムネコヤミーの隙が出来る瞬間を虎視眈々と狙っている。

「ニャ!!」

「今じゃ!」

「オン!?」

 そして密かに手元へ忍ばせておいたクナイを、相手の右手の甲に突き付けていく。ちょうどすっぽりとクナイが入り込み、思わぬ怯みを受けてしまうシャムネコヤミー。つい注意が手に刺さったクナイへ向けられていた時である。

「ハァァァ!!」

「ウッ!? ミャオーン!!」

 月詠は一念発起が如く両手にクナイを持ち、ここぞとばかりに相手の皮膚に向けて、集中的に斬りかかっていた。自身の長身を存分に生かし、体全体を使って軽やかに攻撃している。隙あらば蹴りで追加分の攻撃を与えており、一方的な戦いを展開していく。遂に、

「これでとどめじゃ!!」

「ウゥ……ゴロニャァァァ!!」

とうとう攻撃に耐えられなくなったシャムネコヤミーは、月詠の渾身の一撃を受けて爆発四散してしまう。撃破と同時に辺りには、彼女の体を構成していたセルメダルが飛び散っていく。当然月詠には、このメダルの正体が何なのかさっぱり分かっていない。

「ん? なんじゃ? この灰色のメダルは……?」

 不可思議そうな目つきでセルメダルを凝視しており、つい気になった月詠は数枚ほど所持することにしていた。

 そして時を同じくして、シリカも奇襲してきたサンゲイザーファンガイアと一戦を交えていく。

「ドラァァ!」

「って、ピナ!? に似ている怪人!?」

「ナー?」

 両腕に装着された盾を構えながら、どっしりと態勢を整えていくサンゲイザーファンガイア。さながら威嚇をしているように見えるが、シリカはそれよりも彼の顔つきが気になって仕方がない様子だ。そう。この怪人は若干ではあるが、ピナとの類似点が多くあるのだ。特に頭部はピナが凶悪化したような厳つい顔つきをしており、シリカはおろかピナ本人すらも困惑を与える始末である。

 だが疑問に思っていても、当の怪人は攻撃態勢を緩めることは無い。

「ウゥ!」

「キャ!?」

「ナァ!!」

 相手の隙を突いて瞬時に動き出し、サンゲイザーファンガイアは突進攻撃をシリカらに与えていた。無論避けられるはずもなく、シリカ、ピナ共に思わぬ不意打ちダメージを食らってしまう。

「やってくれましたね……今度はこっちの番です!」

「フッ!」

 反撃と言わんばかりに彼女は、ダガーを用いて怪人の皮膚に攻撃を加えようとする。だがしかし、彼は相手の出方を見て的確に防御姿勢を構えてしまう。

〈カキーン!!〉

「えっ、硬!? こんなに強度があるの!?」

 勢いあまって斬りかかったせいか、ダガーでは盾を壊すことは出来ず、余剰したエネルギーは彼女の全身に降りかかってしまう。思わぬ痛みを感じながらも、目的を見失うことは無く、シリカはすぐに対抗策を閃いていた。

(あっ、そうです! 後ろを狙えば……!)

 その通り。前方で防がれるのであれば、死角となる後方を狙えば良い。勝利を見込んだ彼女はピナと共に、早速実行へ動き出していく。

「ウゥ!」

「させません! よっと!!」

 またも繰り出してきたサンゲイザーファンガイアの突進攻撃を、彼女はギリギリのタイミングで軽やかに回避。小柄な体格を生かして、素早くでんぐり返しをしたことで事なきを得ていた。

「今です! ピナ! バブルブレス!!」

「ナァ!!」

 そして獲物を仕留めるかのように、シリカはピナへ泡攻撃を指示。相手の動きを一定の時間だけ止めるバブルブレスで、この戦いに決着を付けようとした。

「ウグ!?」

「さぁ、終わりですよ! やぁぁぁ!!」

 狙い通りサンゲイザーファンガイアの動きが止まったことで、そのまま彼女は猛攻を仕掛けていく。ダガーで次々に背中へと切り刻み、連撃の最中に蹴りまで加える月詠と同じ戦術で応戦していた。百華として鍛錬を積み重ねた技を、この場で存分に発揮している。

 こうしていよいよ……戦いに決着が付く。

「ハァァァァ!」

「ダラァ! ウググ……!」

 とどめの一刀を加えたことで、サンゲイザーファンガイアは悲痛な断末魔を上げている。バブルブレスの効力が切れた頃にはもう遅く、耐え切れなくなった体は眩い光を放ちながら、欠けたガラスのように周りへと飛び散ってしまう。炎々と燃え盛る爆発をバックに、シリカとピナは凛々しい表情を浮かべながら、勝ち取った勝利をかみしめていた。

「やりましたね! ピナ!」

「ナー!!」

 とその余韻に浸っていた最中、怪人の群れにいた一体フリルドリザードオルフェノクが、剣と盾を用いて襲い掛かろうとしていた。そんな時である。

「仕舞いだ!」

「させるか!」

「何!?」

「つ、月姉さん!?」

 瞬時に月詠がクナイを飛ばし、フリルドリザードオルフェノクに想定外の怯みを与えていく。相手の動きが鈍ったところで、月詠はシリカへクナイを投げ飛ばしている。

「これを使うんじゃ!」

「は、はい!!」

 素直にそれを受け取った彼女は、右手にダガー。左手に受け取ったクナイを握りしめ、月詠から教わった体術で、フリルドリザードオルフェノクへ攻撃を仕掛けていった。

「行きますよ!! やぁぁぁ!!」

「させるか! って!?」

 彼女の猛攻に備えて、盾を構えたフリルドリザードオルフェノクだったが――瞬時にその盾をはたき落とされてしまう。防御姿勢が崩れた彼は、到底シリカの攻撃を防ぎきることが出来ず、成すがままにダメージを受けていく。

「はぁぁ! はぁぁ!」

「くっ……! うるぁぁぁ!!」

 ダガーとクナイ。二つの斬撃を受け続けながらも、最後まで所持していた剣でフリルドリザードオルフェノクは攻撃を仕掛けようとする。けれどもやはり……蓄積されたダメージに耐え切ることが出来ず、彼は後方に倒れこんでしまった。

〈ドカーン!!〉

 オルフェノク特有の青白い炎をあげながら、その灰色の体は本物の灰となり崩れ去ってしまう。

 数多の怪人達による連戦が続いたものの、月詠、シリカ、そしてピナは難なく乗り切ることが出来ていた。

「やったな、シリカよ。一昔前よりも強くなったのう」

「ありがとうございます! これも月姉さんの特訓のおかげです!」

「ナー!」

「どういたしましてじゃ」

 強くなった自分を師匠である月詠に褒められたことで、つい嬉しさを覚えてしまうシリカとピナ。率直な気持ちで礼を交わすと、月詠もフッと笑って軽く言葉を返している。

 共に強さを分かち合った二人は、再び呼吸を整えつつ、加勢してきたマッドネバーの戦闘員軍団を相手取っていく。

「行くぞ」

「もちろんです!」

 確かな絆と共に戦場を駆け抜けていった。

 

 一方でちょうど横隣りで戦闘を行っていた銀時、シノンにも大きな動きが生じていた。

「このやろ! どきやがれ!」

「ウゥ!!」

 周りに蔓延る戦闘員達を一蹴しつつ、銀時は特殊な攻撃を仕掛けているとある怪人に狙いを定めている。その怪人はゲームの敵キャラをモデルにしたソルティバグスターだ。

「フフフ……行くが良い!」

 彼は手下であるバグスターウイルスを中心に、集団戦術で銀時を打ち倒そうとしている。密かに彼を取り囲もうとするも……銀時はこの状況を気負いせずに、高い自信を持ち続けていた。

「やれやれ……だが乗り切るしかねぇな!」

 そう威勢よく呟くと彼は、足元にあったカッシーンの三つ槍を蹴り飛ばし、それを左手へと装備していく。

「ヤァァァ!!」

 そして木刀と共に、力強く周りへ振り回していた。

「ザク!」

「ウル!?」

 当然近くにいた怪人達は否応なしにダメージを受けてしまい、次々に倒されてしまう。近づく暇もなく、ただ一方的にやられていく戦闘員達。軟弱な彼らにとうとう我慢できなくなったのか、ソルティバグスター自らが動き始めている。

「小賢しい真似を! これでも食らうが良い!!」

 彼は左手に装備した装飾品から、光り輝く電流を放出。銀時へと被弾させ、彼の体を痺れさせようとしたが……

「フッ、よっと!」

本人にはすでにその真意を見抜かれていた。銀時は気高くジャンプをして、まだ生き残っているバグスターウイルスらを足場として利用。電流が発射するタイミングで足場を変えていき、ついでにまだ残っている戦闘員達も倒すトリッキーな戦法で対処していた。

「ええい! 何故当たらぬのだ!!」

 自分の思い通りにいかず、つい焦りをちらつかせてしまうソルティバグスター。彼の心の焦燥を察して、銀時は大胆な攻撃を仕掛けていく。

「今だ! はぁぁ!」

「グハァ!? 何!?」

 なんと左手に装備していたカッシーンの三つ槍を、ソルティバグスターの腹部に向けて投げ飛ばしていたのだ。無論この突飛な行動を彼が予見できるはずもなく、三つ槍は上手いこと自身の体に突き刺さってしまう。(怪人なので特に流血する様子は無いのだが)

「このやろ……!!」

 思わぬ攻撃を受けて、ソルティバグスターはつい注意を三つ槍に向けている。自らの手で引き抜こうとした時だ。

「おりゃぁぁぁ!!」

「な……ぐはぁぁぁ!!」

 銀時はとどめと言わんばかりに、彼に突き刺さった三つ槍へ向けて、覇気をまとった飛び蹴りを繰り出していく。三つ槍はソルティバグスターの体を貫通していき、致命的なダメージを与えていた。飛び蹴りを繰り出した後、銀時はそのまま地面へと着地していく。

「おのれぇぇぇ!!」

 と同時にソルティバグスターは断末魔を上げながら爆散。真っ赤に燃える火炎の中からは、「GAMECLEAR!」と銀時の勝利をたたえるメッセージが浮かぶ。これは恐らくこの怪人特有の演出であろう。

「よっしゃ! って、ゲームクリア……この怪人はキリト共に任せた方が良かったか?」

 このメッセージを見て銀時は、勝利への喜びではなく、ゲームに適したキリトやシノンへ倒した方が盛り上がると、変に気を遣った考えを浮かべてしまう。彼は釈然としないまま、次の戦いに挑むのである。

 果敢に銀時が激闘を繰り広げる最中で、近くにいたシノンも積極的な戦いを戦闘員らに向けて仕掛けていく。

「そこよ! はぁ!」

「グル!!」

 大きく飛び上がり弓矢を相手に射ると同時に、彼女は弓の先端を地面へ突き刺していた。

「まだよ! やぁぁ!!」

「ダラァ!?」

「ウグ!?」

 そしてシノンは弓を媒体として、縦横無尽に辺り一面へと蹴りかかる。勢いに乗っかったまま体を振り回す型破りな戦法に、レオソルジャーやライオトルーパーは近づくことも無く翻弄されてしまう。

「さぁ、今よ!」

 そしてその隙にシノンは、弓を地面へ突き刺したまま、とある弓矢を装填していく。その正体は、濃縮した爆薬を詰め込んだ特殊な弓矢である。

「吹き飛べ!!」

 彼女はためらうことなくその弓矢を射ると、爆発のエネルギーを上手いこと利用して、弓矢を引き抜きつつその場から綺麗に撤収していた。周りの戦闘員らが彼女の行方を追う頃にはもう遅く……

〈ド、ド、ドバーン!!〉

放射した弓矢は連鎖するように爆発を何度も繰り返していく。その爆炎に巻き込まれたレオソルジャーやカッシーンらは、なすすべもなく倒されてしまった。辺りに残ったのは戦闘員達の燃えカスのみである。

「ふっ、やったわ!」

 自らが前線に立ち、近距離戦をも取得したシノンならではの突飛な攻撃方法。本人も満足げな表情を浮かべている。

 だがしかし、余韻に浸るのはまだ早い。さらなる刺客が彼女に奇襲を仕掛けていく。

〈キーン〉

「……ん!? フッ!? 何なの……?」

 微かな銃声が聞こえて、シノンは横へと逸れて辺りを警戒していく。先ほどまで自分がいた場所に目を向けると、そこには大きな弾丸が刻み込まれていた。

「異様に大きい弾丸……? まさか銃の怪人!?」

 そう。シノンの予見通り、目の前には狙撃手をモデルにした怪人であるトリガー・ドーパントが近づいていた。

「ゲームスタート……!」

 そう厳かに呟くと、彼は右腕に付けられた大型のライフルをシノンへ向けていく。

「そう簡単にやられないわよ!」

 ライフルからの発射のタイミングを見極めつつ、彼女は早くもこの怪人の攻略方法を見出していた。相手の出方を伺いつつ、こちらから勇猛果敢に距離を縮めていく。

「……発射」

 一方のトリガー・ドーパントも攻撃姿勢を崩すことは無い。シノンへ狙いを定めて、次々に弾丸を解き放っていく。

「ん!?」

そして、一発の弾丸が地面へと着弾。「ゴォォン!」と言う轟音と共に、辺りにはもくもくとした煙が上がっている。

「……死んだな」

 とシノンの敗北を確信したトリガー・ドーパントだったが、

「はぁぁぁぁ!!」

「何!?」

彼女はまだ生きていた。煙をかいくぐっていき、真剣な表情でトリガー・ドーパントへ向けて飛び上がっている。

「させるか!」

 と反射するように彼は、シノンへ向けて近距離から今度こそ銃殺しようとするが……

「それはこっちの台詞よ!!」

シノンもそう易々と無鉄砲には飛び込まない。彼女は弓を構えており、瞬時にトリガー・ドーパントの銃口に向けて弓矢を射ていた。

「発……何!? 防がれた!?」

 弓矢は見事に彼の銃口を防いでおり、銃として機能を丸々と失わせている。力を入れても弾丸を発射できず、むしろ不発した弾が銃内部で熱を帯びて暴発しようとしていた。

 これこそがシノンの密かに練っていた作戦である。

「さぁ、とどめよ! はぁ!」

 こちらの勝利を確信したシノンは、暴発寸前の銃内部へ向けて、追い打ちをかけるように弓矢をまた一矢解き放っていた。

「グハァ!? 貴様ぁぁぁぁ!!」

 この一矢が勝負の決め手となり、トリガー・ドーパントは最後まで攻撃が出来ぬまま爆死。彼の体を構成していたトリガーメモリも砕け散り、シノンは完膚なきまでに彼を叩きのめしていた。銃系統に詳しい彼女だからこそ、成しえた戦い方だったのかもしれない。

「フゥ……あんな怪人。私にとって、どうってことないわ!!」

 一度呼吸を整えていき、しっかりと勝利を感じ取るシノン。このまま次なる戦いへ向かおうとした時である。

「グハァ!!」

「えっ、キャ!?」

 なんと背後から気付かれることなく、次なる怪人が這い寄っていた。その怪人の正体は、超越生命体の一種クラブロード。神に近づこうとする人間を排除する怪人のようだが……

(補足を加えると、恐らく未来の時系列で太陽神ソルスのアバターを借りることを暗示していると思われる。しかしこの時系列では、知らないのも当たり前である)

「離しなさい!! この!!」

 それはさておき、クラブロードの強固な腕に掴まれてしまい、中々解放することが出来ないシノン。絶体絶命の危機に、近くで戦っていたあの男が助け船を出す。

「はぁぁぁ!」

「ウグっ!?」

 クラブロードの隙が出来ている背中に斬りかかるは、木刀を得てにする坂田銀時。文字通りの不意打ちが成功する共に、

「こっちだ!」

「銀さん!」

すかさずシノンを救出している。一度クラブロードから距離を離れて、二人は互いの無事を確認していた。

「おいおい、大丈夫か。怪我とかねぇのかよ」

「平気よ。そんな心配しなくても。ていうか、もっと早く手助けしてくれても良かったんじゃないの?」

「こっちだって、そんな暇は無かったんだよ。分かるだろ? てか、助けたヤツがキリトだったら、お前は首ったけになってただろ」

「うっさいわね」

「痛! 何しやがるんだ! 命の恩人によ!」

「そういう皮肉ばっかり言うから、キリトと違ってかっこよくないのよ! 少しは分かったらどうなの?」

「テメェのかっこいいの基準はどうなってんだよ! 図星突かれて焦ってんじゃねぇよ!」

 互いに軽口を交えながら話していると、いつの間にか険悪な雰囲気と化してしまう。シノンも本音を突かれたことで、反射的に銀時の腹部へ肘を突き付けていく。二人は不機嫌そうな表情を浮かべながら、喧嘩腰な態度を続けてしまう。

 ほんの些細なことから始まった二人の対立だが……その火種は一瞬にして鎮火する。

「ウググ!」

 調子を取り戻したクラブロードが、態勢を立て直して銀時やシノンへ標的を定めていく。それを察した二人は、難なく気持ちを切り替えていた。

「おっと、まずはアイツを倒さねぇとな」

「そうね……さっさと決めるわよ。銀さん!」

「あたぼーよ!」

 共に闘志を確かめ合いつつ、再び武器を構え直していく。幾ら文句を言おうとも、確かな絆を彼らは築いているのだ。

 すると銀時は早速、手に入れたライダーの力を一部だけ解き放っていく。

「じゃ、コイツで決まりだ!」

〈アギト! フレイムパワー!!〉

〈ビルド! 海賊レッシャーパワー!!〉

〈定刻の反逆者! 海賊レッシャー!! イェーイ!!〉

 アルヴドライバーを操作していき、二つの武器をベルトから召喚していた。一つは仮面ライダーアギト(フレイムフォーム)が使用する長剣、フレイムセイバー。もう一つは仮面ライダービルド(海賊レッシャーフォーム)が使用する弓、カイゾクハッシャーである。

「おらよ」

「えっ!? 何よこれ?」

「何って弓矢だよ。適当にイメージしたら出て来たんだ。有難く使えよ」

 と銀時はシノンに適した武器もついでに召喚したのだが……当然彼女は突飛な弓を目にして、困惑してしまう。

「いやいや、待ちなさいよ!! こんな変てこな弓矢、見たことないわよ!!」

「俺に文句言うなって! 一応英雄達の武器だから、お前にも使いこなせるんじゃないのかよ?」

「それとこれとは話が別よ!」

 カイゾクハッシャーを見れば見るほど、疑問が浮かんできて素直に使えない様子だ。船の錨にしか見えないデザインに加えて、弓矢ではなく小型の電車が弓の中心部に装備されている。とてもじゃないが使用するのにためらっていた。

 とまたしても話が揉めていた時である。

「ウゥゥ!!」

「おっと!?」

「キャ!?」

 その雰囲気を無視して、クラブロードが二人に向かって突進をしていた。銀時、シノンはそれぞれ左右に分かれており、攻撃を回避している。各々がライダーの武器を所持しており、シノンがカイゾクハッシャーを手探りで動かした時だった。

〈各駅電車~! 出発!!〉

「ウッ!?」

「えっ!? これで発射するの?」

 突如弓からは音声が鳴り響き、それと同時に光弾が発射されている。どうやら中心部の列車を動かすことで、それに準じた光弾を放つことが出来るようだ。また偶然にもクラブロードに、光弾が当たったようである。

 カイゾクハッシャーの使い方を理解したシノンは、俄然としてやる気を高めていた。

「へぇ~、面白そうじゃないの。ありがとうね、銀さん!」

「別にいいさ。さぁ、とっととこいつをやっつけちまおうぜ」

「そうね!」

 満足げな表情で銀時にお礼を交わすと、彼もフッと笑って返答する。こうしてライダーの武器を借りた二人による、反撃がとうとう始まった。

「行くぞ! オリャァ! とう!!」

「グル!! ウゥゥ!!」

 手始めに銀時がフレイムセイバーで、次々にクラブロードへと斬りかかる。その切れ味は十分にあり、彼の皮膚にはっきりとした傷跡を残していた。

〈急行電車~! 出発!!〉

「フッ!」

「ウグ!?」

〈快速電車~! 出発!!〉

「ヤァ! って、段々グレードが上がっている?」

 さらに追い打ちをかけるが如く、シノンがカイゾクハッシャーを使いこなして、クラブロードの傷を狙って光弾を射ている。弓の電車を引っ張る度に違った音声が流れて、それと同時に威力も上がることに、彼女はつい驚きの声を上げていた。

 完成されたコンビネーションの前に苦戦するクラブロード。彼の動きが鈍った隙に、銀時らはとどめを仕掛けている。

「今よ、銀さん!」

「おう、任せろ!!」

 シノンは掛け声を上げると同時に、カイゾクハッシャーを手前に出して、銀時へ差し向けていく。彼はそのまま近づくと、踏み台としてカイゾクハッシャーを利用。シノンは力一杯に銀時を投げ飛ばし、すかさずカイゾクハッシャーを構え直していく。

〈海賊電車~! 発射!!〉

「やぁ!!」

 電車を動かしつつ彼女は、最高火力である光弾を発射。それはまるで電車のような形をしており、クラブロードへ垂直に被弾している。

「ウゥ!」

 さらなる追加ダメージを負ったところで……

「食らえぇぇぇ!!」

「ン!? ダラァァァ!!」

銀時がフレイムセイバーで彼の体を一刀していた。その剣は一瞬だけ炎をまとっており、攻撃にさらなる拍車をかけている。

 無論この連続攻撃にクラブロードが耐えられることが出来ず……

〈ドガーン!!〉

スッと倒れこみそのまま爆死。銀時とシノンのコンビネーションの前に敗れ去っていた。

「ふぅ……やったな」

「そうね。さっきよりはかっこよかったわよ」

「ったく、もっと素直に言いやがれや」

 戦闘が終了し、シノンは銀時へ感謝しつつイゾクハッシャーを返している。普段通り落ち着いた態度で接するものの、内心ではより強い信頼を寄せていた。両者共にクスっと可笑しさを感じつつ、彼らは次なる戦いに臨む。

「まだ終わってないぞ!」

「次は俺達が相手だ!!」

 周りの戦闘員が倒されたと思えば、今度は一般級の怪人がこちらへと威勢よく近づいていた。妖精猫をモデルにした怪人ケットシーと、サソリをモデルにした怪人のスコーピオンイマジンである。

 両者の気配を察して、二人が再び戦闘態勢を構え直そうとした時だ。

「一気に仕留めましょう! 銀時さんにシノンさん!」

「って、シリカに月姉?」

「いつの間にこっちへ来たんだよ」

「ちと雑魚共は片付いてな。ここは四人で一気に片づけるぞ!」

「ナー!」

「……すまぬ。四人と一匹じゃったな」

 ちょうど戦闘員達を片づけていたシリカ、ピナ、月詠が銀時達に加勢している。共に体力は十分にあり、存分に戦う意思を示していた。

 すると彼女らは、銀時にある要望を促してくる。

「あの……銀時さん! アタシ達にも使わせてください。ライダーさん達の武器を!」

「って、お前も気になっていたのかよ。はいはい、じゃ……ライダー達に後で感謝は言っておけよ」

「はい、もちろんです!!」

 その要望は武器の貸し出しだった。どうやらシリカも、仮面ライダーの力が気になって仕方ない様子である。期待を込めた表情で相談すると、銀時はめんどくさがりつつも素直に応対していく。

〈電王! ソードパワー!!〉

〈カブト! ライダーパワー!!〉

〈W! ルナトリガーパワー!!〉

〈鎧武! イチゴパワー!!〉

 なんと欲張りにも、一気に四体分のライダーの力を解放する。四人それぞれに応じた武器を召喚しており、月詠には鎧武(イチゴアームズ)の使用するイチゴクナイ。シノンにはW(ルナトリガー)の武器である片手銃のトリガーマグナム。シリカにはカブトの専用武器のカブトクナイガン(クナイモード)。そして銀時には、電王(ソードフォーム)のメイン武器デンガッシャー(ソードモード)を手にしていた。まさに大盤振る舞いな光景である。

「……って、随分と変わった武器じゃな」

「でも、さっきよりはシンプルね」

「このまま一気に片づけちゃいましょう!」

「ナー!」

「おうよ。いくぜ、いくぜ、行くぜ!!」

 四人はそれぞれに適した新たな武器をしっかりと握りしめて、こちらに襲い掛かる怪人達へ真っ向から立ち向かう。手始めに月詠とシノンが仕掛けている。

「フッ! セイ!!」

「ウグ!?」

 前者はスコーピオンイマジンに対し、彼の腹部へ集中的な攻撃を与えていた。イチゴクナイを華麗に振るいつつ、敵の動きを見透かして行動している。仕舞いにはスコーピオンイマジンの武器である斧も、月詠の不意打ちによって叩き落とすことに成功していた。

「ハァ! そこよ!」

「何!?」

 一方でシノンはトリガーマグナムを巧みに操り、発射した光弾を着実にケットシーへと被弾させている。相手がどんなに俊敏な動きをしても、移動する位置をすぐに把握。スナイパーとして才を惜しげもなく発揮していた。そして相手の動きが鈍った隙に、次々に光弾を打ち込んでいく。

 そう。月詠とシノンの狙いは、部分的な攻撃を得て、強制的に弱点を植え付けるものだったのだ。

「今じゃ、シリカに銀時!」

「このままとどめを刺しなさい!」

 そして頃合いを見た二人は、即座に後ろでこっそりと控えていた銀時とシリカに役割を仰いでいく。両者はライダーの武器を握りしめたまま、それぞれ標的とした怪人達へ向かい、必殺技を繰り出していた。

「行きます! やぁぁぁ!!」

「ウゥゥ!?」

 早速シリカは素早さを活かした必殺技を、ケットシーへと浴びせている。カブトクナイガンをまるでダガーと同じ手法で扱いながら、次々にシノンが光弾を撃ち込んだ個所へと斬り刻んで行ったのだ。

「フッ! 俺達の必殺技……パートキンテキ!!」

「何を!! って、グッ!?」

 その傍らで銀時も、デンガッシャーを用いた必殺技をスコーピオンイマジンへ繰り出している。適当に名付けた必殺技名であるがそれはさておき、こちらはまず敵の腹部へ向けて一刀した後に、電王の必殺技が如く剣の先端を自由に動かして、追い打ちとも言える追加ダメージを与えていた。その先端の行先は……スコーピオンイマジンの局部である。

「悶絶しやがれぇぇぇぇ!!」

「ギャァァァ!!」

 そして仕舞いには、先端を怪人の局部に突き刺したまま、遠距離から力づくで持ち上げていく。もはやノリと勢いだけで突き進み、持ち上げた後にはそのまま突き放し、地上へ容赦なく叩き落としている。彼だから出来る戦法と言ったところか……。

 仲間達の補佐を基にして、確実的に仕留める四人の作戦。言葉を交わさずとも息の合った手段に……

「「くっ……おのれぇぇ!!」」

二体の怪人達はなすすべもなく倒されてしまった。撃破と同時に怪人側は体を爆破させている。燃え盛る炎を背景に、四人と一匹が再び集結すると、彼らが手にしていた武器はスッといつの間にか消失していた。

「ん? もう消えちまったか」

「でも、とっても助かりました。ありがとうございました、ライダーさん!」

 シリカは銀時の言う通り、しっかりとライダー達に感謝を伝えている。

 一方でシノンと月詠は、銀時なりの必殺技に注目を寄せていた。

「ところで銀さん? あの必殺技は一体何なの?」

「あぁ、アレか? ただのノリと勢いでやってんだよ」

「そんなのであそこまで集中的にやるか?」

「ナー?」

「ちょっとドン引きです」

「仕方ねぇだろ! お前らライダーの事情知らねぇから、そう好き放題言えるんだよ! 良いだろ、別に!」

 どうも銀時のやり方に納得がいかない様子である。ピナまでもが微妙な反応を示しているが、彼本人はすぐに反論していた。中々意見の嚙み合わない四人である。

 そう戦闘終了時にささやかな会話を交わしていた時だった。

「ん? アレは……?」

 銀時はふとある怪人の姿を発見している。それは一度襲撃を仕掛けてきた幹部怪人の一体であるゴ・ガドル・バだ。彼はこちらへ気付くことなく、別の場所へと移動しているようだが……。

「ちょうど良い。おい、お前ら。ちと用事が出来たから、ここはお前らに任せるわ。後は頼んだぞ」

「って、銀時さん!?」

「急にどこへ行くのよ?」

 銀時は反射的にゴ・ガドル・バを追いかけることにしており、適当な理由を付けて仲間達の元から離れていた。特に理由を聞かされていない三人は困惑こそするも、銀時なりの考えがあると後に括っている。

「まぁ、ヤツなりの狙いがあるのじゃろう。ここはわっち達で任せるか」

「そ、そうですね!」

「気を取り直していきましょうか」

「ナナ―!!」

 銀時の代わりに月詠がリーダーシップを取り、シノンらを上手く引っ張っていた。誓いを新たに三人と一匹は新たな敵がいないか、近くを見廻ることにしている。

 こうして噴水路及び水辺での戦いは、一旦幕を閉じたのであった。

 

 

 

 

 

 

 次なる場面はアルン中心街から程なく離れた街路。そこには町民ご用足しの鍛冶屋があり、その隣では武器庫が建てられている。強者が多く足を運ぶエリアであり、通称「ALO星の鉄の町」と非公式ながら称されていた。

 そんな場所で物騒にも刀や斧を交えて怪人軍団に立ち向かうのは、近藤勲、エギル、土方十四郎、クラインの屈強かつ信念を貫く大人の男達である。

「おりゃぁぁ!!」

「そこだ!!」

 こちらも二手に人員を分けており、通路付近では近藤とエギル。

「おらよっと!」

「フッ……ハァ!」

 そして半壊した武器庫付近には、土方とクラインが対処に当たっていた。どの男達も容赦のない一撃で次々に戦闘員を蹴散らし、歯向かう者達を一瞬にして放り去っている。

「チッ! まだこんなにいるのかよ!!」

「俺達が倒したと言っても、所詮は雑魚共だ。まだまだ先は長いってところだな……!」

 土方、クライン共に一度背中合わせとなり、周りにいる敵の人員を把握していく。現在両者は武器庫の中心におり、ちょうど数十名の戦闘員達に囲まれている状況だった。彼らに標的を向けるは、カッシーン、ライオトルーパー、魔化魍忍群、シアゴースト、レイドラグーンと言った戦闘員の大群。並びに彼らを指揮する、三体の一般怪人達である。

「ウゥ……!」

「覚悟しろ……!」

 彼らは武器や腕を、クラインらに向けて威勢よく差し向けていた。一般怪人の正体はイカをモデルにしたミラーモンスター、ウィスクラーケン。タコをモデルにしたオクトパスオルフェノク。トカゲをモデルにしたリザードアンデッドの計三体である。奇しくも三体中二体が軟体動物関係だった。

 とそれはさておき、敵に囲まれている状況下でも二人の心境は一切変わっていない。両者は互いの想いを確かめ合うように、背中越しで話していく。

「なぁよ、土方さん。ちょいと厚かましいが、俺の背中を守ってくれねぇか?」

「文字通り厚かましいな。まぁ、いいぜ。その代わり俺の背中も守ってくれや」

「言ってくれるじゃねぇか。もちろんそのつもりだぜ」

「「だからここでくたばるんじゃねぇよ……!!」」

 そう言葉を交わすと、二人は各々が持つ刀を強く握りしめていた。数時間前に敵対すべき相手と分かったにも関わらず、土方は一切ためらうことなく、クラインとの共同戦線を望んでいる。理屈からか情からは不明ではあるが……恐らく後者であろう。

 一方でクラインも、土方の心情を見越して一時的な共闘を持ちかけていた。正体がバレる前からごく僅かではあるが関わりがあり、彼なりの優しさがあれば大丈夫と心の中では自信があったようである。

 刀に誓って、新たな可能性を見出す二人。戦闘への呼吸を整いつつ……その目を輝かせて、得手を構えていく。

「行くぜ!!」

「おう!!」

 クラインが先走ると共に土方も動き出す。目指すは怪人達のせん滅。容赦のない一刀を繰り出し、二人の侍は自身の本領を発揮していく。

「ヤァ! フッと」

「ウゥ!?」

「ギィ!?」

 手始めに土方はなるべく自身の自由が利く場所へ移動。戦闘員達をおびき寄せた内に、倒しやすい最適な順番を瞬時に逆算。そのまま自信を持って斬りかかっていく。

「そこだ! この……!!」

「アギャ!!」

「ギギ!」

 当然次々と不意を突かれたライオトルーパーやレイドラグーンは、なすすべもなくそのまま傷を刻まれる。土方の瞬時な判断が功を奏したのか、数十体ほどいた戦闘員は瞬く間に壊滅。跡形も無く倒れていってしまった。

「フッ……山は越えたか?」

「まだだ!!」

「おっと!? いつの間に……!」

 目の前の大群を倒しきり、改めて土方は近くにいる怪人を探っていく。すると背後から足音を立てずに、オクトパスオルフェノクが襲い掛かろうとしていた。彼は瞬時に敵意を察して、一度距離を遠ざけていく。そのまま刀で応戦しようとするも、土方の頭にはある事が過ぎっていた。

(いや、待て……! ヤツの頭部はタコの触手か? だとすると……)

 オクトパスオルフェノクの外見を見て、早くも彼の形状がタコと同一であると予見。そこから思い浮かぶは、ヌメヌメした体と伸縮可能な触手。武器を持っていないことから、格闘戦が主力であるとも考えつく。多くの危険的な要因を脳内で整理していた。

 だとすれば、彼が出すべき答えは一つである。

(これなら行けるか? ちょうどブツもあるしな)

 土方はある閃きから、周りに弱点を突くための必要な物が無いか注視していた。その目途が付くと彼はフッと笑い、オクトパスオルフェノクをそこへ引きずりこもうとする。

「何を考えている!? 貴様も倒れるが良い!」

「よっと! そうはいくかよ!!」

 土方の企みなどつゆ知らず、オクトパスオルフェノクは腕を伸縮しながら、彼へ意地でも殴りかかろうとしていた。土方本人は間一髪で攻撃を避けつつ、そのまま起死回生の一手を手にしている。その正体は……鍛冶屋が火を起こすために必要な薪や炭だった。

「よし……これでも食らいな!」

「ハァ? これだけで何をしようと言うのだ?」

 土方はそれらを惜しげもなく、オクトパスオルフェノクへ向けて飛ばしていく。当の怪人側は彼の狙いが分からずに、余裕そうな態度で接していた。第一火を起こせる物が周りに見当たらないので、薪や炭を投げつけられても痛くもかゆくもないのである。

 と余裕そうに振る舞えていたのもここまでの話。土方にはちょうど簡単に火を起こせるものを常備していたのだ。

「こうするんだよ!」

 と作戦がもう悟られないと括り、土方は懐から取り出した……簡易的なライターを、オクトパスオルフェノクへ向けて投げ飛ばしていく。

「ん? ラ、ライター!?」

 ようやく土方の狙いを理解出来たオクトパスオルフェノクは、戸惑いつつも必死に逃げ出そうとする。けれでも時すでに遅く……

〈フッ〉

「ギャァァァ!!」

ライターが火元となり火柱が上がっていた。辛うじてオクトパスオルフェノクは瞬時に逃げ出したものの、軽い火傷状態となり上手く動くことが出来ていない。土方の狙いとはまさに火責め。圧倒的な火炎を用いて、彼に攻撃する隙を与えないようにしている。

(余談だが、脳内ではたこ焼きから連想してこの作戦を思いついていた。誰にも言えない秘密とも言える)

「待っていたぜ……このまま燃え尽きろ! ヤァァァァ!!」

 そして土方はとどめと言わんばかりに、刀を構えて彼へと斬りかかっていく。その一刀が勝負の決め手となっていた。

「お、おのれ……!!」

 そう悔しがるように叫んだ後に……青い炎を上げながら、体を灰にして砕け散っている。一方の土方は斬りかかる最中に、火を付けていた煙草の味を確かめつつ、勝利の余韻へと浸っていた。

「折角火を起こしたってのに、なんかしょっぱいな」

 特別な味がするのかと思いきや、特に自分好みでは無かったらしい。苦い表情のまますぐに口元から取り出して、先ほどの火と共に鎮火しようとした時である。

「ん? スプリンクラーか? えっ? ここ常備していたのかよ」

 なんとちょうど良いタイミングで、天井からスプリンクラーが噴射。薪で燃やした火や土方の煙草もろとも、一瞬にして鎮火してしまう。土方は一応スプリンクラーが設置されていることにも驚きを受けていたが。こうして文字通りヤマを乗り越えた土方は、水に濡れながらクラインの元へ戻っていく。

 そしてちょうど土方がオクトパスオルフェノクと対峙していた時に、クラインもある怪人との激闘を繰り広げていた。

「ったく、ちょこましいぜ! これでも食らいな!!」

「ギィィ!」

「クッ!!」

 手始めに彼は手段で襲い掛かる魔化魍忍群やシアゴーストの大群を一掃。自慢の刀を振り回しつつ、バッサバッサとなぎ倒していく。土方とは異なり無鉄砲に突っ込んでいるものの、着実へ相手を斬りかかる戦法から、戦闘員達は彼の気付かぬままに次々と倒されている。元の世界にいた時と比べて、攘夷志士として培った経験をこの場で発揮。いつの間にして強固となった刀戦術で、怪人達を圧倒していく。

 そしてこちらも戦闘員を大方倒した時だった。

「よっしゃー! これで後は……」

「シュシュウ!!」

「うわぁ!?」

 彼の首根っこを掴み、奇襲を仕掛けていた怪人がいる。その名はウィスクラーケン。特殊な槍を装備しており、あわよくばその武器でクラインを打ち倒そうとしていた。

「シュシュ!!」

「ってコイツ……言葉が通じないのか? 見た目通りのモンスターかよ!」

 奇妙な鳴き声を発することから、クラインはウィスクラーケンをただのモンスターだと把握。無論倒すことに変わりはないのだが……首根っこを掴まれている今、上手く動くことはままならない。

(これじゃどっちにしろ刺されるか……いや、待て!)

 絶体絶命の窮地の中、クラインはふと我に返りある作戦を思いつく。それは床下に散らばる武器の数々を見たのがきっかけであった。

「おっ、そうだ!」

 考えがまとまった彼は、早速実行へ移そうとしている。

「シュシュウ!」

「そうはいくかよ!」

「シュ!?」

 まずは槍を差し向けようとしたウィスクラーケンに、辛うじて動いた足を使って思いっきり邪魔を企てていく。意表が付かれた彼は困惑して体の力が急に緩み、クラインを解放させてしまった。さらには、

「今だ!!」

「シュシ!?」

戸惑っている隙にクラインが刀を用いて、ウィスクラーケンの槍を弾き飛ばす。これにて難関だった問題の一つを突破することが出来た。

「シュ!!」

 武器を理不尽にも飛ばされて、ウィスクラーケンは素直に激高。頭上にある口から、イカ特有の煙幕を放射していく。だがしかし、

「これも対策済みなんだよ!」

「シュ!?」

クラインにはもう通じない。彼は足元にあった盾を装備しており、そのおかげで煙幕を弾き返すことに成功している。煙幕はちょうどウィスクラーケンの頭部に被弾しており、彼の視力を失わせることに成功していた。

「シュ!? シュ!?」

 と彼が戸惑っている隙に、クラインがとうとうとどめを仕掛けていく。

「行けぇぇぇ!」

「シュ!? シュゥゥゥゥ!!」

 彼は真剣な表情のまま、刀を用いてウィスクラーケンへ連続攻撃を与えている。体全体へまんべんなく切り刻み、このまま難なく撃破しようとしていた。

 用いるものを全て使ったクラインなりの作戦。それにハマったウィスクラーケンは……

「ウ……」

唸り声を上げたまま爆死してしまう。一人の侍の前に、彼はなすすべもなく倒されていた。

「よっしゃー! 一体撃破だ! って、雨!?」

 早くも勝利を噛み締めるクラインの前に、唐突な場面の異変が起きている。それは土方が仕掛けた火災にスプリンクラーが反応しているだけであり、事情を知らない彼からすれば何のことだがさっぱり分かっていない。

 と油断している背後に、怪人達で生き残ったリザードアンデッドが奇襲を仕掛けようとした時である。

「ウゥ!」

「ん!?」

「フッ!」

 そこへちょうど良く土方が割り込んできてくれた。

「ハァァ!」

「キュウ!?」

 土方はリザードアンデッドを瞬く間に一掃し、彼を刀だけで弾き飛ばしている。物理的な意味となったが、これで背中を預ける約束は果たされたとも言えるか。

「おい。約束は守ったからな……!」

「フッ、おう! サンキューな、土方さん!」

 ふてぶてしくも律義に事を返す土方と、彼の素直さを受け入れてクスっと笑うクライン。敵対すべき相手にも関わらず、こうも相性がそれほど悪くないのは、互いの年が近いのも関係しているのか?

 とそれはさておき二人は、倉庫内に残ったリザードアンデッドに向けて、最後の攻撃を仕向けていく。

「そんじゃ、とっとと決めるぞ……!」

「おう、任せろ!!」

 軽く言葉を交わした後に二人は、勢いよく走り出す。そして自身の刀を構えたまま……

「「はぁぁぁぁ!!」」

「ウゥ……グハァァァ!!」

リザードアンデッドへ向けて力強く切り裂いていく。互いに全力を込めた一刀。リザードアンデッドも一度右腕に装着された剣で応戦するも……すぐに押し切られていた。

 彼は倒された直後に後ろへ倒れこみ、腹部のバックルがシュと開錠する。他の怪人に比べると、何故か爆発せずに体を残したままだった。

「よっしゃーやったー!! って、なんで体が残ってんだ?」

 一度勝利を喜んだクラインも、これには疑問を覚えてしまう。不思議そうに見つめる中で、土方がある予測を立てていく。

「姿が丸々残る怪人じゃないのか? とりあえず武器庫から出るぞ」

「おっ、おう! そうだな……待ってくれよ、土方さん!」

 てっきりこれまでとは違うタイプの怪人だと悟り、クラインと違って特に不安視することは無かった。それよりも土方は水で冷めた武器庫から脱したいがために、近藤やエギルのいる外部へと移動しようとしていた。クラインも彼の跡を追いかけようとする。

 だが二人はまだ気付いていない――アンデット全体の特性が不死であることにも。

 

 

 

 

 

 

 

「おりゃぁぁ!」

「フッ、ハァァ!!」

 一方でこちらは、武器庫近くの街の通路。穏やかそうな街並みを感じさせるこの場所に、二人の屈強な男達が戦闘員達を次々に倒していく。そう、近藤とエギルの二人だ。

「おい! 確かエギルって言ったか! そっちの怪人共は任しても良いか?」

「もちろん良いぜ……!確か近藤さんか? そういうアンタも、クライン共が来る前に怪人の一掃を頼むぞ!」

「任せておけ! お互い年長者同士……豪快な戦いをしようじゃないか!」

「その考え……乗ったぜ!」

 二人は適度な距離を保ちつつ、自身が相手すべき敵の範囲を割り振っていく。近藤は主に右側を。エギルは左側を対応するようだ。

 近藤の提案した豪快なやり方にエギルも賛同しており、ここからは互いの力を活かした戦闘が始まる。

「行くぞ!!」

 手始めに近藤が刀を構えて、こちらへと向かうカッシーンらを次々に斬りかかっていた。

「おぉぉぉ!!」

「ギィィ!」

「ウグ!?」

 一つ一つの容赦のない一撃の数々を受けていき、戦闘員達は攻撃する暇もなく翻弄されてしまう。多勢で襲い掛かってこようとも、

「ハァァァ!!」

「ギィィ!!」

刀を振り回していきそのまま倒されてしまう。勢いを付けた彼の猛攻には、誰一人として手出し出来ない。本気の近藤として戦いに順次していく。

 そんな彼の前に、次なる刺客が襲い掛かろうとしていた。

「ウゥゥ!」

「おっと、何だ!? 真っ黒い怪人か?」

 彼の隙を突こうとしたのは、ストロングスマッシュ。岩の特性を有しており、頑丈さを武器に戦う厄介な怪人だ。そんなストロングスマッシュは早速、自身の体を用いて近藤を押さえつけようとしている。

「フゥゥ!」

「おっと!?」

 不穏な動きを察して、近藤はすかさずそれを回避した。だがストロングスマッシュもそう簡単には攻撃を諦めない。

「ウゥゥ!!」

「ん!?」

 今度は相手の隙を見て、勢いよく近藤へと突進している。このまま押し倒そうとしたのだが……

「ウゥ!?」

なんと近藤はストロングスマッシュから繰り出された腕を、歯を用いて力づくで食い止めていた。意地でも倒れることは無く、自身が有利なうちに怪人を倒そうと踏ん張りを見せている。

「ッシャァァ!!」

 無我夢中なままストロングスマッシュを投げ飛ばすと同時に、その隙を見て近藤は刀を強く握り直していく。

「悪いが頑丈ってなら……俺の方が上だぁ!」

「グゥゥ!!」

 そう想いの丈を存分に発した後、怯むストロングスマッシュへ向けて次々と自身の刀で切り刻む。

「ハァァ!」

「ウゥ……グルルゥゥゥ!!」

 そしてとどめとして刀を彼の腹部に向けて突き刺すと同時に、ストロングスマッシュの体に火花がバチバチと走る。自身の勝利を確信した近藤は刀を引き抜き、一度場から離れる。

 一方のストロングスマッシュは――緑色の炎を上げながら、無残にも体を散らせていた。異様な踏ん張りを見せた近藤が、一歩上手だったようである。

「ふぅ……厄介な怪人だったな。だが……俺の方が堅かったってことだ!」

 そう意気揚々と勝利について語ると同時に、近藤はそのままエギルの加勢に加わろうとしていた。

 一方のエギルはと言うと、順調に戦闘員の大群を蹴散らしている。

「よっしゃ、行くぞ!!」

「ギィィ!!」

「ウグ!?」

「トゥ!?」

 彼の雄たけびとも言える大声と同じくして、斧を力強く振り回していき、向かい来るライオトルーパーやカッシーンを次々に薙ぎ払っていく。近づこうにもそのまま勢いで倒されるので、戦闘員達の中には彼との戦闘を放棄して、別の戦闘場所へ移動する者も少なくないようだ。

 と思ったよりも戦闘員を一掃したと思えば、二体の重量級の怪人が彼に勝負を仕掛けている。

「次は俺達が相手だ!!」

「覚悟するんだな!!」

「ん!? ほぉ……俺に相応しい相手だな!」

 エギルに標準を定めてきたのは、オリオン座をモデルにした怪人のオリオン・ゾディアーツと、牛をモデルにした怪人のミノタウロス。前者はこん棒と盾。後者は長斧と重量感のある武器を持っており、まさにエギルとも互角に張り合えそうな怪人達である。

 彼らは一度互いを睨みつけると……各々の武器を用いて殴りかかっていた。

「ハァァ!」

「させるか、フッ!」

「どうだ!!」

 最初は互いの武器を振るわせつつ、拮抗とした戦闘を続ける三名。エギルも攻撃と防御の姿勢を入れ替えながら、慎重に相手を倒すべく状況を見定める。

 拮抗とした戦況が続く中で――一足先に動いたのはエギルだった。

「だったらこれだぁぁ!!」

「そうはい――って、何!?」

 彼は手にした斧を怪人達の足元へ向けて攻撃しており、それを予想出来なかったミノタウロスらは転倒してしまう。思わぬ不意打ちを受けて、態勢を立て直そうとした――その時である。エギルが一か八かの攻撃を仕掛けようとしていた。

「まだまだ終わらないぞ! ヤァァァ!!」

「うわぁぁぁ!!」

「えぇぇぇぇ!?」

 なんと彼は、転倒したオリオン・ゾディアーツの両足や体を力づくで持ち上げており、それを武器代わりとして活用しようとする。

「吹っ飛べぇぇぇ!!」

「ぎゃぁぁぁ!!」

「や、やめろぉぉお!!」

 力んだ表情を浮かべながらもエギルは、己の力を限界まで振り絞り、持ち上げたオリオン・ゾディアーツを力づくで振り回していく。予想外の攻撃には怪人側も上手く対処できず、どちら共に物理的にも精神的にもダメージを与えていた。

「おりゃぁぁ!」

 そして成すがままに、オリオン・ゾディアーツを振り下ろしたその時である。

「これでとどめだぁぁぁ!!」

 間髪入れずに彼は自身の斧を持ち直し、二体が混乱している隙にとどめを刺そうとしていた。

「うぉぉぉぉ!!」

 斧の切れ端に力を込めて、相手の体へ当たるように斬りかかっていく。無論振り回し戦法によって、動きが十分にままならない二体の怪人達は……

「「グハァァァ!!」」

エギルが斬り逃げすると同時に爆発。断末魔を上げながら、木っ端微塵に倒されてしまう。剛力で押し切ったものの、やはりエギルにとっては少々無理の生じた戦いだったようだ。

「はぁ……やったか?」

 荒くなった息を整えつつ、彼は周りの状況を分析する。自身の戦った怪人は無事に倒されており、激闘を制したことにエギルは少しだけ安堵を覚えていた。

 だが安心するのはまだ早い。敵はまだ潜んでいるのだ。

「ハァ! そこだ!!」

「何!?」

 目を離した隙にまたも怪人が襲い掛かり、エギルは反射的に斧を構えて、彼からの攻撃を防いでいく。その怪人の名はシンムグルン。玄武をモデルにしたオーバーロードインベスだ。こちらも斧を所持しており、エギルへ容赦なく斬りかかろうとする。

「オリャ!」

 一度体制を立て直すためにエギルは、斧で一勝しシンムグルンとの距離を開けようとしていた。けれども彼の猛攻は終わらない。

「甘いは! フッ!!」

「何!?」

 シンムグルンは背中に装備された甲羅から、蛇を伸ばしてエギルへ差し向けていく。いわば触手のように用いて、彼の体を拘束しようとしたのだが……

「させるか!」

〈キーン!〉

「何!?」

ちょうど良いタイミングで近藤が加勢に入って来てくれた。シンムグルンから発せられた蛇は、彼の刀技によって瞬く間に斬られて、その効力を失っている。颯爽と現れた彼は、早速エギルの無事を確認していた。

「おい、大丈夫か?」

「あぁ、何とかな。あんがとよ、近藤さんよ」

「おっ、覚えてくれてありがとよ! そんじゃ……一緒にあの化け物を倒すか! エギルさん!」

「任せろ!」

 互いの状態を確認出来たところで、エギルと近藤は遂に共闘戦線を結ぶ。協力してシンムグルンを倒すことを決意していた。

「行くぞ!」

 刀や斧を握りしめて、真っ向から立ち向かう二人。シンムグルンも斧を構えつつ、彼らと同じく接近戦に応じていく。

「フッ、ヤァ!」

「トゥ! またか!」

「ハッ! 俺の甲羅はどんな攻撃を当たらねぇよ!!」

 次々と斬りかかろうとするも、シンムグルンはすぐに防御姿勢を構える。そう背中の甲羅を用いて、彼らからの攻撃を無効化していた。これでは倒すのにも時間がかかってしまう……かと思えば近藤はある打開策を閃く。

「あっ、そうだ! おい、アレで行くぞ!」

「アレ……? あぁ、なるほどな!」

 近藤はエギルへ簡略的に仰いでおり、エギルもまた近藤の刀を見て、彼の言いたかったことを理解したらしい。そう考えを一致させた二人は、勇猛果敢にまたもシンムグルンへ真っ向から立ち向かう。

「何度やっても、無駄だ!!」

 とシンムグルンがまたも防御姿勢を構えようとした時である。

「させるか!!」

「こっちもだ!!」

「ハァ!? 何!?」

 なんと近藤とエギルは、自身の持っていた刀や斧をシンムグルンへと投げつけ、彼の上半身へ突き刺していたのだ。これではとても背中を丸めることも出来ず、シンムグルンの注意は突き刺さった刀や斧へ向けられている。これこそが二人の狙いでもあったのだ。

「「はぁぁぁぁぁ!!」」

「なぁ!? ブフォォォ!!」

 シンムグルンが怯んでいる隙に、二人は拳を握りしめて容赦なく彼に殴りかかっている。防御姿勢を整えていない彼にとっては思わぬダメージであり、パンチを受けたと共にそのまま吹き飛ばされてしまう。

 まさに脳筋ならではの痛恨の一撃。シンムグルンもこれには一杯食わされてしまい……

「ギャァァァ!!」

そのまま勢いよく爆発してしまう。それと同時に近藤の刀とエギルの斧は空中を舞い、ちょうど良く彼らの手元へと戻っている。

「おっしゃ! あの化け物も倒せたぜ!」

「アンタの作戦のおかげだな」

「いやいや、エギルさんも中々強かったぜ!」

 両者は戦闘が終わると同時に、互いの健闘を称え合っていた。思わぬ絆が芽生えた瞬間でもある。

 そう会話を交わすうちに、唐突にもクラインと土方が彼らの前に吹き飛ばされてきた。

「うわぁ!?」

「くっ……!?」

「って、トシ!? クラインさんも!?」

「一体何があったんだ!?」

 両者共に何かの攻撃を受けた様子であり、近藤らは土方に何が起きたのか素直に聞いてみる。すると二人が言う間もなく、とある怪人が一行の前に出現していた。

「ムフフ~~あらあら、ゴリマッチョもいるよね! でも……赤のイケオジが良いかしら? アタシと遊ばない~?」

 体をくねくねさせながら、オカマ口調で話したその怪人の名は……ルナ・ドーパント。幻影の力を宿しているが、その性格とは裏腹に性格は乙女。イケメンを求めて戦場を這い回る、ある意味で恐ろしい怪人だった。

「おいおい、こんな欲望剥き出しの怪人をいるのかよ……!」

「あぁ、そうだぜ! こっちの調子が狂うから、かなり厄介だぜ!」

 エギルが恐ろし気に呟くと、クラインも威勢よく答えていく。どうやら土方と共闘してもなお倒せないようで、かなりの強敵として捉えていた。

「あの野郎……急に抱き着いてくるは、腕を伸ばして拘束してくるはで滅茶苦茶だぞ!」

「えぇ? そうなのか!? 嫌だ! 抱き着くなら絶対お妙さんが良い!」

「そういうことを言っているんじゃねぇよ!」

 土方もルナ・ドーパントの実力に恐れを成しており、その情報を聞いた近藤は何故か妙のことを思い出す。思わぬ解釈違いに、土方は激しくツッコミを入れていたが。

 とそれはさておき、厄介なことが起こる前にルナ・ドーパントは倒しておきたい。作戦を練る土方は、一か八かの賭けに動こうとしていた。

「おい、お前。しばらく歯を食いしばれるほど、我慢できるか?」

「急にどうしたんだよ? まぁ、特に俺は問題ないが」

「そうかい……じゃ、行ってこい!!」

「えっ!? ちょ、ちょっと!!」

 一応クラインに確認を取ったところで、彼は無理矢理クラインの背中を強く押している。前方に思わぬ形で出たクラインは、そのままルナ・ドーパントと接触してしまった。

「あらあら~! 自分から来てくれたのね~! イケメンで素直な子は……嫌いじゃないわ!! アタシが抱きしめて、あ・げ・る!」

「ひぇぇぇぇ!! こんなヤツに好かれても、俺は嬉しくねぇって!! おい、土方さん! どういうことだよ!!」

 ルナ・ドーパントはクラインを好意的に見ており、腕を自由に伸ばして、そのままガッチリと掴んで離さない。このまま何をされるのか分からない恐怖に、彼は引きずった表情を浮かべてしまう。土方への信頼が揺らいでいるが……当然これには彼なりの狙いがある。

「いいか? 近藤さん達は左右に分かれて、あの触手をぶった切れ! 俺はこのまま前方から斬りかかり、とどめを刺す!」

「わ、分かった!」

「任せておけ!」

 そう彼は手短に、エギルと近藤の作戦の概要を打ち明けていた。土方の狙いはあえて囮を作ることで、怪人を四方八方から一撃で仕留める。所謂有利な状況を作ることだった。全員分の力が合わせれば倒せると見込んでいる。(因みにクラインを囮にした理由は、ルナ・ドーパントの受けが誰よりも良かったことにあった)

 自身の真意が相手側へ気付かれないうちに、エギルと近藤は土方に指定された場所まで移動。ルナ・ドーパントを取り囲むように包囲網を作っていく。

「あらあら? いつの間にか取り囲まれているわ! 良いわよ~一緒に遊びましょう!」

 と浮かれたような口をするルナ・ドーパントだが、その言動とは裏腹に彼は左右の腕を触手のように伸ばして、クラインと同様にエギルや近藤も捕縛して、彼らの動きを封じようとしている。

「フッ、ハァ!」

「トシ! 自分のタイミングで行けぇ!」

 ところが二人は怯むことなく、斧や刀を用いて次々と襲い掛かる触手を叩き斬っていく。両者共触手の動きを目で追うことが精一杯で、それらを斬り続けることで相手の注意を向けさせている。

 その最中に土方は、がら空きになった正面に一刀を切り刻もうとしていた。

「はぁぁぁ!」

 そして頃合いを見定めながら、彼が勢いのままに斬りかかろうとした時である。

「ん? 邪魔よ!」

「うわぁ!?」

「トシ!?」

 あと一歩手前で気配を悟られてしまい、土方は触手の不意打ちを受けて、そのまま怯まされてしまう。さらには構えていた刀まで落とすなど、一気に窮地へと叩き落とされてしまう。

「悪い子にはお仕置きよ! 最高に締め付けるわ!!」

 ルナ・ドーパントは土方の行動に激高し、クラインと同様に触手で行動を制限しようと企てていく。現在武器を叩き落とされた今、土方にとってはまさに絶体絶命の状態。エギルや近藤も自分のことで手が回らない。

 そんな彼を手助けしたのは……まさかのクラインであった。

「土方さん!! これ使え!!」

「これは……!」

 拘束されながらも必死になって彼に投げつけたのは、クライン自身が持つ刀。それを受け取った彼は、素直に想いを汲み取ってその期待に応えていく。

「おりゃぁっぁぁ!」

「な、何!? そんな!?」

 ルナ・ドーパントの伸ばしてきた触手を、土方はクライン愛用の刀を手にして一刀。即座に切り刻んだ後、彼は大きく飛び上がっていた。

「はぁぁ!」

「ギャァァ! 取れちゃった!!」

 彼が狙うはクラインを拘束する触手であり、勢いよく斬りかかることでそれを解放している。彼が地面へ着地すると共に、偶然にも落ちていた土方の刀を装備していく。意外な形で武器交換が実現している。

「あんがとよ、土方さん!」

「あぁ! 行くぞ、てめぇら!」

「おう!」

「了解!」

 ルナ・ドーパント側が怯む隙に、四人の男達は一気に蹴りを付けようとしていた。目指すは無防備とも言える上半身である。

 一方で妨害されたルナ・ドーパント側は、自暴自棄と化し腕を伸ばして彼らに叩きつけていく。

「この! この!!」

「させるか!」

「行くぞ!」

「「「「はぁ!!」」」」

「キャ!?」

 それらを瞬時に避けつつ四人は、同じタイミングで四方八方からルナ・ドーパントへと斬りかかっていた。この攻撃が致命傷となり、耐え切れなくなった彼は……

「イケオジ達の友情……嫌いじゃないわ!!」

と叫び声を上げながら爆死している。他の怪人に比べると個性的であり、撃破しても近藤らには疑問が浮かぶばかりだった。

「結局何だったんだ、あの怪人は」

「モチーフもまったく分かんなかったな」

 特に外見のモチーフが未だに分かっていない。

 一方でクラインと土方は、互いに借りた武器を返却している。

「ったく、無茶苦茶やるぜ。土方さんはよぉ!」

「俺はただ最適な手段を選んだだけだ。ほら、刀返すぞ」

「おう。どうだったよ、刀の使い心地は?」

「まぁまぁだ。可もなく不可もなくだな」

「そういうことじゃなくてさ、もっと言うことあるだろう!」

「うるせぇ。ごたごた言っていると、この場で確保すんぞ」

「いやいや、それだけは勘弁を!」

 その最中に会話を交わすも、調子に乗ったクラインが馴れ馴れしく土方へ話しかける。少しばかり不満に思った土方は、温存させていた海保をチラつかせて彼を脅していた。

 立て続けに起きた戦闘が一旦終了し、気持ちを落ち着かせる四人。だが安心するのはまだ早い。怪人達を倒そうとも、まだ戦闘員の大群が残されているのだ。

「穏やかに話す時間はまだまだのようだな……」

「ったく、先が見えねぇな!」

「よしっ! この調子で倒そうぜ!」

「同じくだ」

 四人は再び戦闘態勢へと入り、刀や斧を構えていく。そしてこちらへと突撃する戦闘員の大群に真っ向から立ち向かうのだ。

 だが彼らは気付いていない。土方とクラインの倒したリザードアンデットが、息を吹き返していることに。

「……ウゥゥ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 続けての戦闘場面は、アルンの街中にポツンと佇む聖なる教会。とある宗派が祈りを捧げる場所であり、こじんまりとした内部にはパイプオルガンや聖杯など儀式に必要な物品やオブジェが大方揃っている。

 そんな神聖な場所も、今ではマッドネバーの襲撃を受けて建物が半壊。無残にも変わり果てたこの教会で……四人の精鋭達が戦闘員達と一戦を交えていた。

「フッ! セイヤ!」

[これでどうだ!!]

「ギィィ!!」

 教会内部の中心に戦闘を行うは、テッチとエリザベス。前者は盾とこん棒を用いて力一杯に戦い、対してエリザベスは黄色い口元にガトリングを装備して周りに乱射。初対面ではあるが、無口な性格者同士。意外にも息の合ったコンビネーションを披露していく。

「おい、アンタ! 中々面白い戦い方をするな!」

[そういうお前もな。後ろは任せてたぞ]

「オーケー、オーケー。任しておきな!」

 テッチはエリザベスの戦い方並びに、彼なりのコミュニケーション方法に驚きつつも、スッと彼なりのやり方に順応していく。互いに約束を交わしつつ、確かな信頼関係を築いていたのだ。

「行くぞ!」

[行くぞ!]

 こうして彼らは再び戦闘員の大群を蹴散らしていく。

 一方で教会の入り口付近では、たまとリズベットが同じく多数の戦闘員と交戦していた。

「ヤァァァ!!」

「ウゥゥ!?」

「ヒィ!?」

 たまは手にした箒から、盛大に豪快な火炎を放出。周りにいるライオトルーパーやワーム(サナギ体)を次々と消し炭に変えていく。火炎放射器や格闘戦を交えて、自身に有利な状況を作り上げていく。

「よっと! この!! しつこい!!」

「グル!?」

 一方でリズベットは、攻守に優れた戦い方を展開している。左手に丸い盾、右手に打撃武器であるメイスを手にしながら、次々と襲い掛かるライオトルーパーやグールと言った戦闘員の大群を確実に倒していく。攻撃と防御の態勢を見極めながら、戦場と化した教会を駆け抜けていった。

 ここでリズベットは大群を蹴散らす切り札を繰り出してきた。

「フッ、いけぇぇぇ!!」

「ギィィ!!」

「グルル!!」

 彼女は左腕に装備した盾を、ブーメランの如く戦闘員らの方へ投げ飛ばしていく。この盾は特殊な糸で左腕のアクセサリーと繋がっており、すぐにリズベットの手元へと戻る仕様なのだ。(補足を加えると百華にて教わった技で、原典にこの技は登場していない)

 投げ飛ばした盾のおかげで、散らばっていた戦闘員達が無理矢理集まったところで……

「今よ! ハァァ!!」

「……ダラァァァ!!」

「ギィィ!!」

リズベットがメイスでとどめを刺していく。大群を集結させて一気に仕留める。百華で教わった手法をこの戦いで発揮していた。戦闘面でも彼女が大いに成長した証である。

「ふぅ……どんなもんよ!」

 とこの戦い方を自身でも自画自賛して、満足げな表情を浮かべた時だった。

「さえせるか!」

「ヒャッハー!!」

「何!? フッ!?」

 油断している隙を見て、三体の怪人が彼女に襲撃を仕掛けていく。リズベットは敵意を察して、すぐに防御姿勢を構えて事なきを得ていた。

 リズベットへ襲い掛かって来た怪人は、オクラの特性を持つオクラオルフェノク。ツタ植物をモデルにしたアイビーイマジン。鉄の力を持つアイアンロイミュードの計三体である。上から斧、両手鎌、手甲を装備しており、それらをリズベットへ差し向けていく。積極的な接近戦で、じわじわ体力を削ろうとしていた。

「フッ!」

「この……!」

「食らえ!」

「ウゥ……!」

 最初こそ瞬時に攻守を使い分けて上手く戦えていたリズベットだったが、次第にその動きに鈍さが生じてしまう。怪人達はその隙を上手く突いており、狙い通り彼女を疲弊させることに成功している。

「さぁ、仕上げだ! ウッと!?」

「ん、うわぁ!? しまった……!」

 そしてここでアイビーイマジンが、一種の作戦を仕向けていく。両手からムチ状のツタを長く飛ばし、リズベットの体を拘束してしまったのだ。彼の思うままに体を持ち上げられてしまい、リズベットの自由は徐々に失われてしまう。

「動けない……こんなところで!!」

 彼女は苦悶の表情を浮かべながら、必死にこの拘束を解こうと必死になっていた。そんな努力を嘲笑うかのように、三体の怪人は増々リズベットを痛めつけようとする。

「今だ! あの小娘を徹底的に痛めつけてやれ!!」

 と集団的に攻撃を仕掛けようとした時だった。

「させません!」

「ん? うわぁぁぁ!?」

「何!?」

「キャ!?」

 拘束されたリズベットを助けるべく、近くで戦闘していたたまが彼女に加勢する。箒から火炎を放射し、アイビーイマジンのツタを丸々燃やしてしまったのだ。

 だがそれと同時にリズベットを拘束していたツタも効力を失い、そのまま垂直に降下してしまう。そんな彼女を――たまがお姫様抱っこするように受け止めていたのだ。

「大丈夫でしたか? リズベット様」

「た、たまさん……って、この抱っこは色々誤解を生みそうだから離してって!」

「そうですか?」

 状況が次第に分かると、リズベットはつい顔を赤くしてしまい、たまへ降ろすように催促してしまう。たま本人は何故照れているのか分かっていないものの、すぐに要件を飲んで地上に降ろしていた。

 一方で思わぬ邪魔が入った怪人軍団にも、加勢が入ってくる。

「チッ! 折角の獲物を……!」

「おい、集まれ! 奴らを意地でも捻り潰せ!」

 とオクラオルフェノクらは、近くにいた戦闘員達や一部の怪人へ指示。数十名ほどすぐに現れると、颯爽とリズベットとたまに向かって襲い掛かってくる。

 だがしかし、

「「フッ!!」」

そこへ二人の男達が動き出す。彼らは盾を用いて戦闘員の動きを止め、

「「ヤァァ!!」」

「ウゥゥゥ!!」

そのまま押し返してしまったのだ。

「何だと!?」

 力づくでねじ伏せる男達に、愕然とする怪人達。その正体はもちろん、同じく教会内で戦闘していたテッチとエリザベスだった。

「大丈夫でしたか、お嬢さん?」

「って、アンタは確かこの世界のテッチ?」

[俺もいることも忘れるなよ]

「エリザベス様まで」

 どうやら二人も大方戦闘員を片づけたようであり、次なる敵を探すべくリズベットらに加勢するようだ。

「フッ、どうやらやる気みたいだな!」

「俺達が相手になってやる!!」

 そんなテッチらの闘志を見越して、戦闘員に紛れていた怪人達も動き出す。斧をモデルにした斧眼魔と飛行能力を持つフライングスマッシュである。

「さぁ、行くぞ! エリザベスさん!」

[お前も遅れるなよ! テッチ!]

「って、ちょっと二人共!?」

「これは……意外なコンビですね」

 勝負を挑んでいた怪人の姿を見るや否や、テッチとエリザベスもさらなる闘志を燃やしていく。こん棒や盾、プラカードと言った武器を握りしめて、怪人や戦闘員と存分に張り合うのだった。

 珍しき共闘にたまは少しばかり興味を示す一方、リズベットはエリザベスの戦い方へ大いに唖然としてしまう。

「フッ、ヤァ!」

「くはぁ!?」

 標的を斧眼魔に定めつつも、テッチは周りに蔓延る戦闘員にも敵意を向けている。彼は自身の大柄な体格を生かして、主に盾で押し切る戦法を駆使していた。集団戦にてその真価を発揮しており、彼の周りには倒されたライオトルーパーや屑ヤミーが無数に転がる。

[貴様をこちらへ引き寄せてやる!!]

 一方でフライングスマッシュと対峙するエリザベスは、黄色い口元から何故か掃除機の先端を登場させる。

〈ヒュイィィィン!!〉

「ん? うわぁぁぁ!!」

 それを起動すると同時に、なんとフライングスマッシュをいとも簡単に吸い寄せてしまったのだ。そう。エリザベスの戦法は何をするか分からないトリッキーさにある。周りを戦闘員が取り囲もうとも、

[しつこいな!]

今度は目元を鋭くさせてそこから細長いビームを射出してきた。

「うわぁぁ!!」

 そのビームに当たったものは次々と倒れていき、そのまま動かなくなってしまう。まさに未知なる存在。フライングスマッシュも密かに恐れおののいてしまう。

 若干恐怖を覚えているのは、リズベットもだが……。

「いや……何アレ?」

「何ってエリザベス様なりの戦い方でしょうか?」

「いや、なんでたまさんは冷静に振る舞えてんのよ!! 口から掃除機は出るし、目からビームは出るし、一体何なのよ! あの生物は!!」

「気にしたら負けですよ」

「そうかもしれないけれども!!」

 表情を取り乱しながら自身の想いの丈を吐露するが、たまは無表情のまま冷静に対処していく。カラクリ人形かつエリザベスのことも大方理解している節はあるが、それに至っては実に落ち着き過ぎだ。気になることが多すぎて仕方ないリズベットだったが……たまに諭された通り、一旦は気にしないことにする。今は目の前の怪人の対処が先だからだ。

「フッ。戦闘員共は奴等に任せるか」

「俺達と戦え! 小娘どもよ!!」

 そう言うと三人は、意気揚々と武器を構え直していく。意地でも自身の獲物を倒したいご様子だ。

 易々と煽りを入れられてもなお、二人は冷静さを保っていく。そして彼らが望む通りに戦うことを決意していた。

「ねぇ、たまさん? 一緒に戦ってくれる?」

「もちろんです、リズベット様。アナタのことは私がお守りしますから……!」

「奇遇ね……アタシもアンタのことを守るわ! 絶対に容赦しないんだから!」

 リズベットが持ち掛けた共闘に、たまは素直に応じていく。両者共互いを守ることで、戦う意思を強く高めていた。二人が協力するのは実に数日ぶりである。

「行くわよ!」

「はい!」

 こうしてリズベットの掛け声と共に、敵味方両方が動き出す。リズベットは果敢にもオクラオルフェノクとアイアンロイミュードの二体を相手にしており、対してたまはアイビーイマジンを相手にしていた。

「ファハ!」

「フッ!?」

「ん!? 体は柔らかいのですね……!」

 たまはひとまず接近戦で箒をぶつけようとするも、アイビーイマジンの体質のせいで中々物理的なダメージを与えることが出来ない。ならば火炎攻撃……と使いたいところだが、技を見透かされている以上は不必要には打てない。

 それらの状況を鑑みて、たまは大胆な行動をとっていく。

「ならば……やぁ!!」

「おっと? 急にどうした? ご乱心か?」

 彼女は教会にて残っていた五人掛けの椅子を持ち上げ、それをアイビーイマジンへ向けてぶつけようとしている。けれでもアイビーイマジンの両手鎌により、瞬く間に投げられた椅子は粉砕されてしまった。にも関わらずたまは、何度も何度も椅子も持ち上げてはアイビーイマジンへと投げている。怪人側にとっては彼女の狙いがつかめず、ただの悪あがきだと括っていたが。

「ハァ? 幾らやろうとも俺には通じないぜ!」

 と余裕そうな態度を取り続けるアイビーイマジンだが、彼はまだ気付いていない。椅子を投げるたび、たまとの距離が近づいていることに。

「おっと? これも俺には効かねぇよ!」

 彼がちょうど十個目の椅子を破壊した時である。

「その時を待っていましたよ!!」

「何だと!?」

 なんとたまは至近距離から、アイビーイマジンへ攻撃を仕掛けようとしていた。すでに箒は火炎をまとっており、沸々と火の粉を散らしている。彼女の狙いはゼロ距離から、アイビーイマジンへ攻撃を仕掛けることにあったのだ。当然そんな攻撃を防ぎきることも出来ず……

「はぁぁあぁ!!」

「ウゥ!? ……ギャァァァ!!」

 アイビーイマジンはそのまま体中に火が燃え移り、そのまま爆破してしまう。植物型の怪人故に火に弱いのが弱点だったようだ。たまの機転の効いた作戦が見事に功を奏している。

「ふぅ……雑草処理は完了しましたね」

 意外な強敵並びに、リズベットを苦しめた敵を倒せたことにたまは思わず安堵の表情を浮かべていた。

 一方でリズベットの方も、悔しさをバネに戦っているためか、数分前よりもその実力を遺憾なく発揮している。

「フッ! ハァ!」

「ウグ!?」

「そこよ!」

「ん!?」

 彼女はメイスを巧みに使用しており、先端の突起を用いた突き攻撃と、横部分の平たい個所を用いた打撃攻撃を使い分けて、根気を持ちながら戦闘を行っていた。やはり集団で狙われたことには、度し難い怒りを覚えているようである。

 そんなリズベットもたまと同様に、機転を活かして戦いを有利に進めていた。

「うぅ……食らえ!」

 分が悪くなったオクラオルフェノクは、隠し持っていた粘着性のあるネットを投げ飛ばして、リズベットの動きを封じ込もうとする。だがしかし、

「そうはいくか!!」

リズベットは瞬時に盾を投げ飛ばして、ネットを真っ向から打破しようとした。盾は勢いよく回りつつその威力を増していき……彼女の狙い通りにネットを破くことに成功している。

「何だと!?」

 これにはオクラオルフェノクも思わず驚嘆としてしまう。だが驚くのはまだ早い。リズベットはアクセサリーから繋がった糸を利用して、瞬時に大きく飛翔していく。彼女が降り立った先は、なんと投げ飛ばした盾の上部である。

「このまま行くわよ! やぁぁぁ!!」

 リズベットは盾が向かうままにメイスを構えていき、そのままオクラオルフェノクへ突っ込もうとしていた。

 ようやくその狙いを悟れたオクラオルフェノクだが……時すでに遅い。

「はぁぁぁ!!」

「何だと……!?」

 勢いよく向かってきた盾は、彼の下半身に必中。さらに同じくして、リズベットの構えたメイスも首元へ見事に当たっていた。

 不意打ちとも言える二つの個所の攻撃に、オクラオルフェノクの堅固な皮膚を耐え切ることが出来ず……

「うわぁぁぁ!!」

断末魔を上げながらそのまま青い炎を上げて灰となってしまった。全てはリズベットを甘く見たところが敗因であろう。

 一方の彼女は、一応の屈辱を果たしたことについ達成感を覚えていた。

「よっしゃ! 女をバカにすると恐ろしいのよ!」

 その表情も随分と生き生きしている。よっぽど嬉しいのであろう。

 一方でテッチとエリザベス側にも、ようやく決着が付こうとしていた。

「はぁぁぁ!」

「うぅぅ!! くうう!!」

[消し炭としてやる!!]

「何!? ぎっぁぁぁ!!」

 テッチは撃破までのダメージ蓄積を鑑みて、力強くこん棒を振り下ろしている。その読みは見事に当たり、斧眼魔はそのまま爆死してしまった。

 一方のエリザベスは口元からバズーカを装備し、フライングスマッシュが動けないうちに恐らく威力の高い砲弾を放ってそのまま爆発に巻き込ませている。テッチとは異なり、こちらは完全に脳筋ではあるのだが。

「やったな、エリザベスさん!」

[俺にかかればお茶の子再々だ]

「これが強者の余裕か……」

 エリザベスの余裕ともとれる態度に、増々尊敬を感じていくテッチ。意外なところでその縁を深めている……。

 そんな彼らがリズベットらの加勢に戻ろうとした時だった。

「ウゥゥ!!」

「何!?」

[また新たな敵襲か!?]

 彼らへ奇襲を仕掛けるか如く、アンデッドの一体ディアーアンデッドが七支刀を振るって攻撃を仕掛ける。電流をも操っており、二人へ未知なる脅威を感じさせていた。さらにはもう一体敵兵が現れる。

「そこだ!!」

「何!?」

[地面からだと!?]

 地中を移動しながら攻撃を仕掛けてきたのは、地霊をモデルにした怪人のノーム。頭部をドリルのようにして自由自在に地面を移動し、その厄介さを惜しげもなく披露していた。

 新たな二体の怪人達に手を煩わせながらも、エリザベスらは撃破の為にまたも戦いへ身を投じていく。

 その一方で、リズベットの元にはたまが再び駆けつけていた。

「リズベット様!」

「たまさん! こっちは片づけたわよ!」

「こちらもです。さぁ、残るはあの怪人のみですね」

「協力して倒しちゃいましょう!」

「そうですね!」

 彼女達は残された怪人であるアイアンロイミュードに目を付けている。この勢いのまま彼をも倒そうとしていた。

「おのれ……!」

 一方で怪人側のアイアンロイミュードは、自身の窮地につい弱音を口にしてしまう。味方の増援も無いまま、単身で張り合おうとした――そんな時である。

「俺に任せろ!!」

 何とも絶妙なタイミングで、新たな怪人がこの戦場に割り込んできていた。援軍として駆けつけたのは、アイスエイジ・ドーパント。氷河期をモデルにした怪人であり、氷を自在に操ることが出来る。彼は手先から冷気を解き放ち、リズベットやたまへそれらを吹きかけていた。

「えっ!? 何!?」

「吹雪ですか……?」

 氷をまとった冷気に押されてしまい、つい後退してしまう二人。新たな怪人が氷属性だと分かるや否や、両者共その厄介性を酷く痛感している。

「雪男!?」

「氷を操る怪人のようですね」

 リズベットはアイスエイジ・ドーパントの奇抜な姿に仰天していたが。それはさておき、怪人側が増えたことで気を引き締めるたまら。このままでは一体ずつ相手にしなければいけないからだ。

「おっと。俺に加勢してくれるのか?」

「そうだな。共に分からせてやろうじゃないか」

「真に強いのはどっちなのかな!」

 一方でアイスエイジ・ドーパントは余裕綽々のまま、アイアンロイミュードとの共闘を締結させる。新たな仲間に彼は心強く感じていた。

 瞬く間に変わり始める戦場。リズベットやたまは、判断を見定めながら慎重に応じる。

「どうする? たまさん?」

「リズベット様は紫の怪人を相手にしてください。私はあの氷の怪人を」

 と考えられる手段を模索し始めていた時だった。

「ギャァァ!!」

「えっ?」

「これは?」

 ふと足元を見ると、そこから大穴を開けてとある怪人が飛び出てくる。それはエリザベスやテッチと対峙していたノームであり、彼は口元にドリルを装備したエリザベスへ追いかけられていたようで……

[とどめだ!!]

「うわぁあ!!」

そのまま追いつかれてドリルで粉砕されてしまう。空中で起きた爆発を背景にして、エリザベスは無事着地。満足げな表情を浮かべながら、プラカードを掲げていた。

[やっとヤツを仕留めたぜ!]

「エリザベス様?」

「ちょっとアンタ!? 何やってんのよ!?」

 思わぬ瞬間を目にして、ついエリザベスへ駆け寄っていく二人。特にリズベットは若干取り乱したまま、彼に話しかけていた。

 するとエリザベスに続いて、テッチも駆け寄ってくる。

「いやー、まさかエリザベスさんがここまで芸達者とは思わなかったよ」

「なるほど。いわば臨機応変に対応されていたということですね」

[あぁ、そうだ。ちなみにもう一体の怪人は、風を起こして遠くへ吹き飛ばしておいたぞ]

「いやいや、ツッコミどころありすぎでしょ! なんで二人共、妙に納得しているのよ! ていうか、なんでさも当たり前のように吹き飛ばしてんの! 他の仲間に迷惑じゃないの、ソレ?」

[まぁ、大丈夫だろう]

 彼らは二人で戦った状況を簡略的に話すが、やはりリズベットにとっては色々と信じ難いのである。仕舞いには対峙した怪人の一体(恐らくディアーアンデッド)を吹き飛ばすなどと、彼にしか出来ない芸当をも明かしていた。何故か理解するテッチやたまとは異なり、リズベットはただひたすらにツッコミを入れてしまう。四人の温度差が浮き彫りとなった瞬間でもあった。

 とそれはさておき、事態はまだ戦いが続いている最中。彼女達が話している最中でも、怪人達はその攻撃の手を一切緩めない。

「何をごちゃごちゃ話している!!」

「お前達も氷漬けとなるのだな! フゥゥぅ!!」

 そう大声を上げながら彼らは、渾身の技を繰り出していく。アイアンロイミュードは足場にあった瓦礫を投げつけ、同時にアイスエイジ・ドーパントは冷気攻撃で彼らを氷漬けにしようとする。

「やったな!」

 辺り一面が氷に覆われていき、先走って勝利を確信した怪人側だったが……

「「はぁぁぁ!!」」

「何!? うぐ!?」

「おい!?」

四人はしぶとくも生き残っている。瓦礫や冷気と言った攻撃は、リズベットとテッチの盾によって強固に防がれており、ダメージを何一つ受けていない。そのまま二人は突進していき、前者はアイアンロイミュード。後者はアイスエイジ・ドーパントに勝負を仕掛けていく。

「エリザベスさん!」

「たまさん! 頼んだわよ!」

 ある程度彼らの動きを防ぎ切ったところで、二人は待機していた仲間を仰いでいく。テッチにはエリザベス。リズベットにはたまが加勢に加わっていた。

「了解しました……発射!」

「うぎぃぃぃ!!」

 たまはすぐに箒から、溜めに溜めた膨大な火炎を一気に放出。アイアンロイミュードの全身にぶつけていく。

[氷には爆弾だ! 食らえ!!]

「ア、 ババ!?」

 一方でエリザベスは、口元からバズーカを固定すると、そのまま火炎弾を数発アイスエイジ・ドーパントへ発射していた。彼の冷気攻撃よりも先に火炎弾をぶつけており、次第に対処しきれなくなった彼は防戦一方となってしまう。

 仲間の補佐も加わり、遂にとどめを刺す時が来た。もちろんその役目は、接近戦を展開するテッチとリズベットが果たしていく。

「「ヤァァァ!!」」

 二人は自身の得意とするこん棒やメイスをしっかりと握りしめて、勢いよく前進。

「「ウギッァァァ!!」」

 標的に定めた二体の怪人の隙を突いて、容赦なく斬りかかっていく。全員が一丸となって奮闘したこの作戦。決めつけであったが、効力は十分にあり――

〈ドァァァァン!!〉

そのまま勢いよく爆死してしまった。燃え盛る爆発を背景に、四人の精鋭達は長き戦いが一旦幕を締めたことに一段落している。

「よっしゃ!」

「終わった……?」

 それでもまだ実感は湧かないようで、つい困惑を口にするメンバーもいたのだが。

[俺の補佐のおかげだな]

「おうよ、エリザベスさん!」

 エリザベスとテッチは早速、互いの健闘を称え合い固い握手を交わしている。初対面ではあったが、それを感じさせないくらい息の合ったコンビネーションを披露していた。

「お疲れさまでした、リズベット様。とても強くて、かっこよかったですよ」

 一方でたまは穏やかな表情を浮かべながら、リズベットをスッと激励する。その言葉を素直に受け止めて、彼女は思わず照れてしまう。

「たまさん……ふぅ。あんがと!」

「どういたしまして」

 反応の困ったリズベットは、ふと屈託のない笑顔を浮かべて言葉を返している。たまもリズベットの素直な気持ちを察して、優しい微笑みを浮かべていた。こちらも戦闘を通じて、より互いの仲が深まった様子である。

 このまま気を抜きたいところだが……現実はそう上手くはいかない。

「ギィィ!」

「うぃぃ!」

 彼らの目の前には、またも無数の戦闘員が結集。こちらへと大群を成して突撃している。

[おっと、まだいやがるのか!]

「鬱陶しい奴らだな!」

 テッチやエリザベスが敵の気配にいち早く気付き、リズベットやたまにもそれを呼び掛けていた。

「みんな! ここは協力して、奴らを撃退しよう! ねぇ?」

「もちろんです。共に力を合わせましょう!」

 するとリズベットは、自分から自信良くリーダーシップをとっていく。チームの士気を高めており、仲間達は素直に彼女を承諾していた。そのまま武器を構え直していき、

「「「ハァァ!!」」」

[かかってこいやぁ!]

戦闘員の大群に真っ向から立ち向かっていく。気が休まるのもまだまだ先のようだ……。




対戦表1

坂田銀時・シノン・月詠・シリカVSクラブロード・フリルドリザードオルフェノク・スコーピオンイマジン・サンゲイザーファンガイア・トリガードーパント・シャムネコヤミー・ケットシー・ソルティバグスター
戦闘場所:噴水と水溜めのある広場

土方十四郎・クライン・近藤勲・エギルVSウィスクラーケン・オクトパスオルフェノク・リザードアンデッド・ルナドーパント・オリオンゾディアーツ・ミノタウロス・シンムグルン・ストロングスマッシュ
戦闘場所:街の通路+多くの武器が飾られている工房の保管庫

たま・リズベット・エリザベス・テッチVSオクラオルフェノク・ディアーアンデッド・アイビーイマジン・アイスエイジドーパント・ノーム・アイアンロイミュード・斧眼魔・フライングスマッシュ
戦闘場所:半壊した教会






 どうでしたか? 怪人軍団との戦いは! 今回は夢幻解放篇時の最終決戦時と違って、戦わせたい敵キャラが多くいて、この分量でもまだ半分も進んでいない事実……ストーリーは進まないものの、なるべく早めに投稿しようと思うので、どうか気長にお待ちください。

と言っている最中、次回投稿が来週には間に合いそうにはない件。

 味方サイドも人員多いので、致し方ないのです……

 と言うわけで、僕的オススメシーンをピックアップ!

月詠とシリカの短剣コンビの共闘
カイゾクハッシャーを使用するシノン
銀さんなりの俺の必殺技(金〇狙い)

土方とクラインの歪な共闘
おおよそ230kgの怪人を持ち上げるエギル
近藤とエギルの剛烈パンチ
ルナ・ドーパントの存在感

何かと氷関係に縁のあるリズベット
やりたい放題のエリザベス
テッチとエリザベスの相性の良さ
意外と接近戦もいけるたま

 こんな感じでしょうか?


 結構な分量ではありますが、それでも書いていて楽しいので特に苦ではないのです。後は読者さんが読みやすいように調整するだけなのです……これが意外と難しい。

 さてさて。次回予告は無いので、次回に活躍するメンバーを紹介するところで今回は終わります!!

キリト/リーファ/ジュン/ノリ/ユイ/神楽/沖田総悟/柳生九兵衛/定春/長谷川泰三/猿飛あやめ

 さぁ、この中からどんな組み合わせが出来るのでしょうか! ちなみにアスナ、ユウキ、高杉は次々回です。もう少々お待ちください
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