※2025年3月20日 誤字脱字を修正
マッドネバーからアルンを守り切った万事屋一行は、現在全員が協力して街の片づけを手伝っている。皆があくせくして働き続ける中で、キリトらの元には別の場所で手伝いしていた定春と合流。彼の案内の元、とある場所まで移動していた。
「あっ、こちらです! 皆さん!」
「姫様!?」
「まさか私達を呼んだのって……」
世界樹内にある案内所まで移動すると、そこにはフレイアが一行の到着を今かと待ちわびている。不意の再会に、ユウキや神楽らも思わず驚いてしまう。どうやら定春を介して万事屋一行を呼んだのは彼女らしい。
フレイアは一行の反応を吟味しつつも、優しくキリトらへ話しかけていく。
「お待ちしておりました。案内ありがとうございますね、定春さん」
「ワン!」
「って、いつの間にか定春を手懐けている……?」
「只者じゃないですね、姫様は……」
途端に彼女が定春の頭を撫でると、彼はまんざらでもない表情を浮かべている。あまりにも心地よさを感じて、つい心を許してしまったのだろうか。あまりの懐き具合の早さには、新八やユイも困惑めいた感情を露わにしていた。
そんな反応など気にすることなく、フレイアは話を続ける。
「さて……急な呼びかけに答えてくださり、ありがとうございました」
「いやいや、姫様のご用とあらば僕はいつだって駆けつけるから!」
「そうですね……って、アレ? 万事屋さんはもう一方いませんでしたか?」
「そ、それは……」
感謝の言葉と同時に彼女は、周りへ銀時がいないことに気付く。すかさずアスナが、銀時不在の件を答えようとした時だ。
「痛てて……俺ならここにいんよ」
「うわぁ!? びっくりしたアル!!」
「ぎ、銀さん……いつの間に?」
彼らのすぐ後ろには、銀時が重苦しい表情で立ちすくむ。先ほどまでオーマジオウの念動力により、体全体を拘束されていたはずだが……いつの間にか解放されたようだ。それでも痛みはまだ残っており、まるで二日酔いをしたみたいにげっそりしている。
「な、何があったのですか……?」
心配気味にフレイアが問いかけると、銀時は元気を失った声で再び返答した。
「何ィ……大したことねぇよ。ただ魔王のお仕置きを受けていた――ブロォォォ!!」
「えっ!?」
「ちょっと! 何やってんのよ!!」
「アンタ、最後の最後で何を吐いているですか!!」
すると何の前触れもなく銀時は、顔をうつむかせた後に周りへ構うことなく、口から激しく嘔吐している。その勢いはすさまじく、あまりの変貌ぶりにキリト、アスナ、ユイ、ユウキ、フレイアの五人はドン引き。新八は久しぶりに激しいツッコミを繰り出す。そして神楽は違った形で思わぬ影響を被ってしまった。
「うわぁ、気持ち悪――ブロォォォ!!」
「いや、なんで神楽ちゃんまで吐くの!! そんな兆候無かったでしょ!!」
「ブロォ! きっと食当たりネ……今日の朝飲んだコーヒーがきっと原因アル」
「絶対違うでしょ! 原因はすぐ横にいるバカのせいだから!」
匂いに影響されてか、神楽も銀時と同じで容赦なく嘔吐してしまう。新八に心配されてもなお、神楽の嘔吐は一切止む気配は無かった。さらには彼女の仲間達にまで、一抹の不安を与えることになる。
「コーヒー!? 私、飲んじゃいましたよ……」
「それを言うなら僕もだよ! まさか僕まで嘔吐しちゃうの!?」
「落ち着けって、みんな! かく言う俺も飲んだけど、全然気持ち悪くはないぞ」
「超迷惑かけているんですけど! 姫様やユッキーさんまで心配かけてどうするの!?」
銀時や神楽の吐き様や証言から、フレイアやユウキも同じような目に合うのではないかと焦燥に駆られていた。キリトまで反射的に説得へと加わり、事態は思わぬ方向へと傾いている。
「おい、ここで合っているか」
「騎士団の伝手を辿って、俺達に何の用だよ?」
「あの……私達まで呼ばれたけど」
「一体何の用かしら?」
一方でちょうど同じ時間、万事屋と同じくフレイアに呼ばれた真選組とシリカ、リズベット、リーファ、シノン、フィリアの女子達が現場に到着していた。一行は揃って何の用で呼ばれたのか分からず、早々に近くへいた仲間達へ問いかけようとしたが……
「「ブロォォ!!」」
「だからせめて、トイレに移動しろって!」
「ごめん、キリト君……しばらく地べたに座らせて」
「アスナ!? おい、大丈夫か!?」
「無理しちゃ、ダメだって! アッスー!!」
明らかにバツが悪い。目の前にて広がるは、嘔吐をきっかけに混乱する万事屋やユウキの慌てふためく姿。銀時や神楽は依然としてうつむいたまま、さらにはその匂いに悪寒を覚えたアスナが気分を悪くする始末。
傍から見ればカオスな光景がそこに広がっていた。
((((何が起きてんの……!?))))
理由を知らないシリカやリズベット女子らは、内心で大いに困惑。苦い表情を浮かべたまま、今はただ立ちすくむしかない。
「ありゃ、旦那のせいですねぇ」
「間違いないな」
一方の真選組はすぐに銀時の仕業だと断言。長い付き合いからすでに確証を得ている。もしかすると、消去法で選んだのかもしれないが……
こうしてフレイアの呼び出した仲間達が集結したものの、場が収束するにはまだまだ時間がかかりそうだ。
「部屋は変えてもらいましたが……本当に大丈夫ですか?」
「平気ネ。でも吐いた分お腹が空いたから、せめてハッピーターンを食べたいアル……」
「厚かましいにもほどがあるだろ」
部屋を変えて早々、厚顔無恥な態度をとる神楽にツッコミを入れる新八。ここに至るまでの苦労を考えると、粛々と怒りがこみあげている。
「元はと言えば銀さんが悪いんだからね! あんな簡単な掃除、力を借りなくてもやれるでしょ?」
「うるせぇな……何事もノリとテンションが大事って言うだろ」
「銀時さんはそのセンスがずれているんですよ!」
「ユイの言う通りのような……」
「勝手に賛同するな、テメェら」
一方でアスナが入念に注意を加えるも、銀時はたらたらと否定。言い訳を羅列するも、ユイによってすぐ論破されてしまう。これにはキリトも納得していた。
「って、もうその話は良いから!」
「そうだぞ! 今は姫様の話が先決じゃねぇか」
そんな話をまだダラダラと続けているうちに、近藤やリズベットが万事屋一行を一喝。さっさと要件に進むよう促していく。
「分かったから」
グダグダと続いていた無駄話もようやく落ち着き、話題はいよいよフレイアの一件に移り変わろうとしていた。
「それじゃ、姫様。みんなも集まったことだし、例の話をよろしく!」
「やっとですね……では、皆さん。改めてアルンを救ってくださりありがとうございました。アナタ達の協力が無ければ、きっと今頃あの男が好き放題していたことでしょう」
ユウキが声をかけると同時に、フレイアは改まって銀時やキリトらに話しかける。まずはマッドネバー壊滅へ協力してくれたことへ感謝を伝えていた。
「だな。俺達だけじゃなくて、力を貸してくれたライダー達にも感謝を伝えておけよ」
「はい、もちろんですよ」
「アンタがそれを言うのか」
気をよくして銀時が言葉を発するも、先ほどまでの所業を鑑みるとあまりに都合が良い。新八もついツッコミを入れている。
そんな軽口はさておき、一行はフレイアの話に自然と注目を寄せていく。
「さて、皆さんを集めたのは他でもありません。アナタ方にマッドネバーの処遇について、お伝えしたいので。つい先ほどその対応が全て終わりましたので」
「えっ? そうなの?」
「随分と対応が早いな。一日も経っていないぞ」
彼女の口から語られたのは、マッドネバーの対処について。組織を壊滅させてから早一日で、関係者の対応を全て終わらせたと言う。あまりにも手早い対応には、リーファや土方を始め仲間達は大いに驚かされていた。フレイアを始め、王族関係者が本気を出していると見て間違いないだろう。
「それくらい、姫様達が怒っているってことさ!」
「まぁ、気持ちは痛いほど分かるけどね」
ユウキの強い気持ちにフィリアもすかさず納得していく。自身の故郷を無茶苦茶にした相手ならば、怒らない方が無理だろう。
「その通りです。では、皆さんに内訳をお話ししますね」
話はとんとん拍子のように進められていき、フレイアは詳しい処遇について一行へ簡略的に伝えていく。
「まずはマッドネバーの構成員について。彼らは襲撃前には、もう鏡の世界に囚われていたと報告が上がっています」
「えっ? 仲間なのに幽閉していたの?」
「そのようですね。利用するだけ利用して、反撃する可能性がある者は排除したと思われます」
「今更だが、自分勝手な野郎だな」
マッドネバーに賛同していた妖精達だが、彼らはこの戦いが始まる前からすでに鏡の世界に閉じ込められていたという。所謂オベイロンの策略であり、あまりの自分勝手さにはシノンや土方も苦言を呈していた。
「構成員については随時調査を進めていますが、テロに加担した罪で全員にそれなりの罰は与える予定です」
「これは……妥当だと思います」
「そうアル。仮にもオベイロンに協力した奴らネ。しっかりと反省するヨロシ」
構成員に関しても何かしらの罰は与える様子で、これにはシリカや神楽らも納得している。例え幽閉されていたとしても、国家転覆に加担した面々。反省の念も込めて、罰は与えるのは当然だろう。
「次はダークライダーの変身者についてですね。夜兎である野卦と亜由伽、辰羅である唖海と宇緒の計四名は、真選組へ引き渡すことになりました」
「えっ? 近藤さん達が引き取るか?」
「まぁな。こいつらはベルトを手にする前から、宇宙中で暴れまわっていたならず者でさぁ。余罪や加担した他の夜兎や辰羅もいるかもしれないんで、一旦預かることにしたんすよ」
「こいつらだけはALO星の部外者だからな。明日には別の便で地球へ送ることになったんだよ」
フレイアに続き、沖田と土方が続けざまに声を上げる。変身者に関しては余罪を追及するために、真選組がその対処を任せられたという。スムーズに他の星々の公安にも引き渡す予定となっているが、もう一つ彼らにはある狙いがあったのだ。
「それにあの夜兎共を追及すれば、キリト君達が追っているサイコギルドにも近づけるかもしれんからな」
「確かにそうですね……」
「意外とアタシ達のことを考えてくれているのね」
「意外とは余計だよ」
珍しい気の利かせ方に驚きを覚えるユイやリズベットら。キリト達を始め、やはり驚きを隠せない様子である。彼らをこの世界へ送った張本人、マッドネバー。図らずとも野卦達とは大いに関係があり、真選組の面々は彼らを問い詰めてその正体を具体的に暴こうとしているのだ。
「おいおい、どういう風の吹き回しだよ。まさか後で金でも請求するんじゃあるまいな?」
「んなわけねぇだろ……仕事のついでに問い詰めるだけだ。ボケがぁ」
異様な優しさに違和感を覚えて、つい疑ってしまう銀時。嫌そうな表情が鼻に付き、土方は苛々しながらも静かに事を呟く。
と夜兎達の対応が話終わると、最後にフレイアはマッドネバーの総帥……オベイロンらについて話していく。
「では、最後に組織の長であったオベイロン。そして内通者であったシグルドの判決についてお伝えしますね」
「あぁ、あの二人か」
「二人に関しては、より一層重い罰が下っているからね……」
ユウキが苦笑いで目線を横に向ける様子から、オベイロンやシグルドの判決は相当なものと見て間違いないだろう。皆が息を飲みつつ、二人の行く末に注目を寄せていく。
「シグルドに関しては情報の流布、度重なるスパイ活動が発覚したため、シルフ領の投獄所でしばらく働かせることにしました。そしてオベイロンについては……反省の色が全くなく自分勝手、構成の余地など見えず、より一層重い最下層での牢屋に閉じ込めることにしました。まったく色々と大変でしたよ」
彼女の口から語れた二人の刑罰。シグルドはまだ優しい方であり、オベイロンに関しては慈悲もない決断である。補足を入れると、星やアルンを混乱に陥れ、非人道的な技術で人々を苦しめ続けた時点で、もうその未来は決まっていたのかもしれない。このフレイアの決断に一行の反応はというと、
「妥当だな」
「当然アル」
「だと思った!」
「仮にもテロリストだからね。それくらい厳罰化しないと!」
「結局元の世界のアイツと、同じ末路を辿ったのか……」
概ね肯定的であった。シグルドに関してはあまり反応が無く、むしろヘイトを買い続けたオベイロンに各々が反応を示していく。特にキリトにとっては、元の世界で対立した須郷とその末路を照らし合わせており、両者共最後まで改心することが無かったことに憤りを覚えていた。別人とはいえ、やはり根本の部分は変わらないのかもしれない。
とそれからも話は続いたが、後は被害状況や修復にかかる点などを簡潔にまとめていた。教会と言った大きく破損した建物は除き、八割方は今日一日で修繕が終わるらしく、これも銀時らが手伝ってくれたおかげらしい。
「いやぁ~照れるな」
「って、アンタは途中から何もやっていなかったでしょうが」
気をよくした銀時に、新八が本音を込めたツッコミで返していたが。
とそれはさておき、真面目な話が一通り終わると、フレイアは顔色を変えて今度は明るい話題を挙げていく。
「さて……! 話すべき内容は大方終えましたし、後は今日の夜の予定をお話しますね」
「今日の夜って……何かありましたか?」
ユイが問い直すと、フレイアは一息ついてから返答していた。
「祝賀会ですよ。言い直すならば……打ち上げですね!」
「祝賀会……? 打ち上げ……?」
「急にか」
明らかになったのは、片付けが終わった後に開催される祝賀会と言う名の打ち上げ。アルンの片付け具合を見て、フレイアが急遽思いついたイベントのようだ。突飛な提案にユウキ以外の全員が、つい反応を困ってしまう。対するフレイアはだいぶノリノリであるが。
「そうですよ! なんたって民達全員で祝えるのですから。復興を祝った大事な祭りにしたいのです」
「……でも、いくらなんでも早すぎじゃないかしら?」
「まぁ、ウチの姫様は何事も迅速だから。そんな珍しいことじゃないんだよ」
「そうなんだ……」
ユウキ曰く、この手早い対応はこの星ならではのこと。本人らは何一つ不自然に思っていなかった。
と最初こそ戸惑っていた万事屋一行であったが、徐々にこのフレイアの提案に納得していく。
「でもまぁ、良いんじゃないのか。たまにはよ」
「そうだな。色々と疲れたし。こうやって新たな平和を祝うのも良いかもな」
銀時、キリト両者が好意的に発すると、仲間達も静かに賛同している。
「じゃ、夜の祭りに向けてラストスパート! このまま片付けも頑張っちゃおう!」
「「「オー!!」」」
ユウキが勢いよく腕を上げて、つられて仲間達も声を上げていく。新しく出来た楽しみに向かって、一行は中断していた掃除にまた取り組む。もちろん自分達の力で。
「また魔王にどやされたら、溜まったもんじゃないからな」
「だからそんなことで頼るなって」
掃除や片づけへ取り組むうちに、時刻はすっかり夕方から夜に差し掛かっていく。フレイアの読み通り、アルン全体の清掃は民や万事屋達のおかげでほぼすべてが片づいている。大きな被害を受けた建物も、復建に向けてその見通しが立て始められていた。
そんな一日の苦労を労うが如く、急遽開催されることになった復興のお祭り。世界樹真下の広場にて 王族関係者、騎士団、アルンの民達、各地の領主、そして銀時やキリトらいつもの面々が集結していく。
場面が喜々とした雰囲気に染め上がろうとする中で、フレイアが中心部にて登壇。騎士団に守られながらも、開催の挨拶を交わしていく。
「それでは、皆さん! 今日一日お疲れさまでした。皆さんの協力のおかげで、アルンはここまで復元することが出来たのです。まだまだ直すべき場所はありますが、今後完全に戻るよう頑張りましょう! では新たな平和を願って……この祝賀会を開催します!」
「おぉぉ!」
「おめでとう!」
「お疲れ!」
「まだ頑張ろうぜ!」
彼女の言葉と同時に、次々と発せられる感謝の言葉。種族も所属も関係なく、この祭りに参加している全員が互いの頑張りを称え合っていた。これこそがフレイアの臨んだ平和への一歩なのかもしれない。民達の嬉しそうな光景に、彼女はそっと微笑みを浮かべている。
と祭りならではの料理やドリンク、お酒類をたしなみながら、銀時達も各々が存分にこの祭りを楽しんでいく。
「あんだよぉ。アタシの酒が飲めねぇってのか?」
「いえ、そんなつもりじゃ」
「遠慮はするなしぃ~。さっさと主も飲めやぁ、ゴラァ」
「だ、誰か助けて……!」
左右を酒好きのノリ、酒乱の月詠に取り囲まれて必死に助けを求めるタルケン。身の危険を感じていたが、傍から見ればただの酒の席。誰の目にも心配がられることなく、彼はただ酒の酔いに飲み込まれてしまう。
「お妙さん!! ぜひ俺とこの祭りを楽しみま――」
「ゴリラは動物園に戻りやがれぇ!!」
「グハァァ!!」
開催早々に近づいてきた近藤に対して、ストレートなパンチを繰り出す妙。あまりにも乱雑な扱いだったが、横にいたシウネーは妙の度胸を大いに称えていた。
「なんたる根性……これが地球の乙女なのですか!」
「そうね。貴方にもきっちり教えてあげるわよ」
「はいです!」
「いや、待ってくれ……」
褒められて気持ちをよくした妙は、シウネーを連れて二人で酒を飲もうと企てている。喜ぶシウネーを尻目に、近藤はただ立ち上がれずに嘆くしかなかった。
「はぁ!」
「おうネ!」
「ウグッ!?」
「何!?」
一方でたまと神楽は、腕相撲を申し込んできたテッチやエギルと交戦。長く続いた力勝負も、二人の踏ん張りによって勝敗を喫していた。勝者は紛れもなく、たまと神楽である。
「いや~相変わらず強いわね、二人共」
「もちろんアル! この私がむさい男共に負けるはずがないネ!」
「私はカラクリですので、あまりこういった勝負は好まないのですが……エギル様やテッチ様の気持ちを考慮して、本気で行かせてもらいました」
「いや、アンタらが本気を出したまずいから……」
カラクリ故に生真面目な態度をとるたまに、リズベットは苦笑いを浮かべたままツッコミを入れている。二人の底力を事前に知っている分、その恐ろしさについ気を引かせていた。
一方でエギルとテッチは、顔を合わせつつ共にまだ諦めていない様子である。
「まだ、やれるか?」
「もちろん! 今度こそ二人に勝つぞ!」
「俺もだ! さぁ、来い!」
「おっ! また受けてたつアル!」
「お任せください」
「ちょっと二人共! あまり困らせないようにしなさいよ!」
互いに気持ちを鼓舞しながら、踏ん張りを見せつけていく。どうやら自分が納得するまで、まだまだ諦めないとのこと。二人の強気な想いを汲み取って、神楽やたまは再び腕相撲へと挑む。そんな四人の光景を、リズベットはまた見守るのであった。
「ほーら、美味しいですか?」
「ナー!」
「ワフフ!」
そしてこちらは、ペットたちに餌を与えているシリカ。細かく刻んだフーズを、ピナと定春に与えている。両者共まんざらでもない笑顔を見せつけていた。
「あら、シリカちゃん。ピナ達に餌を与えているのかしら?」
「アスナさん! そうですよ。ピナだけじゃなくて、定春もじゃれついてきているんですよ」
「ワフフ~」
場にはアスナも駆けつけており、彼女は定春とじゃれ合うシリカの姿に驚く。日々ピナと接するシリカだからこそ、動物とのふれあいにも長けているのだ。
とそこに、もう一体のペットが近づいている。
[だったら俺にもくれ]
「ん? うわぁ!? びっくりした!?」
「エリザベス……?」
唐突に現れたのは、桂のペットであり相棒のエリザベス。彼はシリカに向けて餌を求めていたが、その意志として口から人間の片腕が差し出されている。中の人を彷彿とさせる一場面だが、傍から見ればただの恐怖映像でしかない。
「腕? どういうこと?」
「私にも分からないわ……どうなっているの?」
両者共心からドン引きしており、どう反応すべきか悩んでいる。定春やピナも不思議そうに顔を傾げており、しばらく摩訶不思議な雰囲気が場に流れ込んでいく。
「どぅ? 楽しんでいる? って、うわぁ!? 何これ?」
「マヨネーズかけてんだよ。どいつもこいつも少なめに盛りやがって」
土方へと話しかけたアリシャであったが、彼女は土方の作る土方スペシャル(別名、犬の餌)につい驚いてしまう。皿に盛られた料理を覆いつくすほどの大量のマヨネーズ。未知なる光景を目にして、少なからず興味を持っている。
すると場にシノンも話に割り込んできた。
「この人重度のマヨラーなのよ。大盛にしないと気が済まないみたいで」
「へぇー、そうなんだ。でもなんか……良い感じかも!」
「へ?」
きっとドン引きしていると思って話しかけたシノンだったが、アリシャの好意的な反応にはつい言葉を詰まらせてしまう。どうやら彼女は、土方スペシャルにただなるぬ興味を持ち始めている。
「おっ、分かってくれるじゃねぇか。お前もかけてみるか?」
「うん! 興味が湧いたし、やってみるよ!」
「……噓でしょ。こんな偶然があるのね……」
事態を上手く飲み込めずに戸惑うシノンを尻目に、アリシャは土方のマヨネーズ作法を学んでいた。あらゆる衝撃が降り注いだ一場面である。
「地球の侍とは、随分面白い奴らだったな。どうだ? 我がシルフの配下として所属してみないか?」
「いいや、俺は興味ねぇしパスで。それよりここに置いてある料理、なんで小豆ないんだよ。宇治銀時丼、作れねぇじゃねぇかよ」
興味深そうに銀時をシルフへ勧誘するサクヤだったが、銀時本人は食べることに集中していた。土方の時と異なり、近くには好物である小豆やそれに似た食材も無いので、大変困っている。銀時のマイペースさに驚くサクヤだったが、そんな彼女の元にあやめが怒り散らしながら話しかけてきた。
「ちょっとアンタ! 色仕掛けを使って、銀さんを誘うの止めてもらえるかしら!」
「ん? どうしたんだ、君は? まさかこの侍の彼女さんか?」
「そうよ! 私は銀さんと切っても切れない恋仲――」
「ただのストーカーがしゃしゃり出るなよ!」
「グハァ!?」
意気揚々と彼女宣言をしたあやめだったが、すぐに銀時から激しいツッコミが繰り出されてしまう。誤解が生まれる前に止められて銀時は一安心していたが、あやめはまたしても否定されて内心で小さく嘆いていく。
「ストーカーとは?」
「気にするな。こいつの別称だよ」
サクヤからすれば二人の関係は未知数であったが、少なくとも友達以上恋人未満と把握している。これが合っているのかは、些か疑問ではあるが。
「おい、ユウキ君!」
「ん? 君は確か九兵衛さんだっけ?」
「そうだ! 僕と……僕っ娘を懸けて勝負しろ!」
「……はい?」
町人達と会話を楽しんでいたユウキの元に、突然勝負を持ち込んだのは九兵衛。彼女は僕っ娘に相応しい者を決めるため、ユウキと戦いたいようだ。申し込まれた側にとっては、迷惑この上ないが。
「えっと、九兵衛さん? つまりは僕と戦いたいってことかな?」
「そうだ! 真の僕っ娘がどちらなのか、白黒付けようじゃないか!」
「……普通の勝負なら良いけど、僕っ娘云々は違うかな? だって、そんな珍しいものじゃないでしょ?」
真っ当な勝負を望む九兵衛だったが、対してユウキは苦笑いで本音を口にしている。志が大いに異なり、温度差が鮮明に滲み出ていた。
異様な執着心を見せる九兵衛の姿に、近くで見ていたユージーンもつい感心している。
「フハハ! 随分と血気盛んなお嬢さんだな。俺と勝負してみるか?」
と彼が九兵衛の肩に手をかけた時だ。
「うわぁぁぁ!! 僕にさわるなぁぁあ!!」
「ぐはぁぁぁ!?」
反射的に彼女がユージーンの腕を掴み、力づくのまま投げ飛ばしてしまう。無抵抗だったユージーンは、そのまま近くの壁まで叩き潰されていた。
「す、凄」
一部始終を見ていたユウキも、これにはつい言葉を失ってしまう。
「ほーれ、料理盛ったんで食べやすかい?」
「いいや! だって沖田さんが優しくするの、どう考えたって裏があるんだもの!」
そしてこちらは、リーファへと話しかける沖田の場面。どうやら彼が盛った料理をリーファへ譲ろうとしたが、案の定信頼が無いために彼女は疑っている。
すると彼らの元にユイが駆けつけてきた。
「どうしたんですか、リーファさん?」
「あっ、ユイちゃん! 何か沖田さんが急に優しくしてきたのよ。これって裏があると思うわない?」
「確かに怪しいです」
リーファの気持ちはユイも重々承知しており、二人揃って沖田を睨みつけていく。不利な雰囲気を察してか、沖田は不満そうな表情で自分から動いている。
「そんなに俺って信用無いんですかね。試しに食べてみやしたが、何もないでっせ」
試しに自分から食事を口にして、手を一切加えていないことをアピールしていた。彼の行動には、リーファらも素直に信じ込もうとする。
「一回信じてみてはどうでしょうか?」
「そんなに言うなら……」
迷いはあったものの、そこまで変な仕込みは無いと括り、リーファは思い切って皿にあった料理を口にしていた。すると瞬く間に、
「うっ! くはあぁ!?」
「リーファさん!?」
口の中が経験したこともない辛さで満たされてしまう。無論これは沖田が仕込んだことで、リーファを誘導するが如くすでに策を打っていたのだ。ただただからかうためだけに。
「ありゃ……結局騙されちゃいましたね」
「沖田さん……って!!」
「今回は裏が無いと思ったのに……」
激高したリーファは周到に沖田を追いかけ、肝心の本人は何食わぬ顔で人ごみの中に紛れていく。ユイは苦い表情で事の顛末を嘆いていたが。戦いが終わってもなお、二人の印象に変わりは無かった。
「アレ? 何やってんだ」
祭りを楽しむ中新八が目にしたのは、桂とクラインがジュンと仲良く交流する光景。珍しい光景を不思議がりながら、彼らの会話にそっと耳を傾けている。
「ハハハ! 君の活躍ぶりは重々に知りえたよ」
「おっ! 分かっているな、二人共!」
「本物の侍が言うんだから間違いないぞ! ところでどうだ? お前も攘夷志士にならないか?」
「攘夷志士……? それも侍の名前か?」
てっきり互いの戦いを健闘していると思いきや、途中から勧誘へと話題がすり替わっていた。突飛な会話の変更にジュンは気付いていないが、近くで聞いていた新八は桂達の真意をしっかりと見抜いている。
「って、アンタら何を勧誘しているんですか!!」
すかさずにツッコミを入れに割り込み、ジュンへ桂達の真意を話したのであった。
「へぇー、そうなのか。期間は短かったけど、フィリアも変わっていったんだ」
「そうだね。私のトレジャー趣味に共感できる人も出来たし、いざという時に備えて戦闘の実力も高めていたからね。まぁ、実践だと全ては上手くいっていなかったけどね!」
そしてこちらは、フィリアに起きた話を適宜聞いているキリト。次元遺跡からALO星に帰還した後、フィリアは自分の出来ることを精一杯取り組んでいたという。新たな仲間と交流を交わしたり、自身に足りない戦闘力を補ったりと充実した日々を過ごしていたという。本人は謙遜としているが、キリトはフィリアの努力を素直に称えている。
すると二人の会話に、近くを通りすがったフレイアが話しかけてきた。
「アナタにも随分と助けられました。本当にありがとうございました」
「ん? ひ、姫様!?」
「い、いつの間に……?」
予想だにしない人との接触に、つい声を上げてしまうフィリア。自身の立場上、こんな機会はそうそう訪れるはずがない。本人が何を言うべきか戸惑っていると、フレイアはそっと優しく話しかけている。
「盗み聞きして大変申し訳なかったですが、アナタも大変苦労されているのですね」
「い、いや~他の人達に比べたら、私の悩みなんて小さいものですから」
「そんなことはありませんよ。何か困りごとがあれば、私達にお申し付けください。出来る限りのサポートはしますから」
「姫様……! ありがとうございます!」
あまりにも心強い言葉を聞き入れ、つい頼もしく感じているフィリア。思わずフレイアの両手を握り、盛大に感謝を伝えている。一方のフレイアも民の喜ぶ姿に、安堵の表情を浮かべていた。
「こんなにも人に寄り添える姫様なら、ALO星も大丈夫だろうな」
横で様子を見ていたキリトも、フレイアの優しさに一安心している。彼女ならばこの星も任せられると、しみじみと理解していた。
こうして新たな交流を深めつつ、祭りはゆったりと進められていく。
祭りも順調に進んでいき、いよいよ佳境へと差し掛かろうとした頃。ユウキとアスナは広場の外れにおり、夜の空を眺めながら自身の過去の話に花を咲かせていた。
「それでさ、どっかの星の皇子が放ったモンスターが砂漠で暴れまわって、みんなと協力してやっつけたんだよね。思えばあれが、僕達の始まりだったかもしれないね~」
「そんなことがあったのね。ねぇ、ひょっとしてその皇子ってハタ皇子?」
「そう! って、なんで知っているの!?」
「私も会ったことがあるからね。あの人、他の星でも迷惑なことしていたのね」
「何年経っても、同じことしているんだねぇ~」
意外な共通点を知り、ついクスっと笑ってしまう二人。可笑しさを感じて、つい場は和んでいる。話している話題は日常的な出来事、これまでに自身が戦った経験、仲間との友情や滑稽な話と、思いつく限りのことを次々と語っていく。
時間を忘れるほど会話を交わすユウキとアスナ。ある話が一段落したと同時に、ユウキが込み入った話をアスナへ打ち明けていく。
「ねぇ、アッスー。ちょっといいかな?」
「ん? どうしたの、ユッキー?」
「大した話じゃないけど、改めて僕と友達になってくれるかな? もっとアッスーのことを知りたいからさ!」
照れくさい表情のままユウキは、改めてアスナに友達として情を結ぼうとしている。戦いもあって有耶無耶となっていたが、ユウキは当初アスナに本当の自分をさらけ出すことに抵抗を覚えていた。事前にアスナが知るユウキ(SAO)の話を聞いていたからである。
そんなユウキの一言を聞き、アスナはきっぱりとした表情で事を返していく。
「そう改まらなくても、私達はもう友達よ。ユッキーはユッキーって、しっかり見ているんだから。地球に戻ったとしても、交流をもっと深めましょう。ユッキー!」
「アッスー……ありがとう! それじゃさぁ、手紙でやり取りしようよ! あっ、そうだ。折角だし、アッスーの知っているユウキの話も聞きたいな!」
「はいはい、そう急かさないの。一つずつゆっくり話しましょうよ」
「うん、うん!」
アスナから友人として認められて、つい嬉しさを態度に表すユウキ。浮かれた彼女は無邪気さを振る舞いながら、突発的に思いついたことを話していく。アスナはそんなユウキの姿に既視感を覚えつつ、彼女との会話を楽しむのである。
例え離れようとも、積極的な交流を続けていく。奇跡的に巡り合った縁を、二人は今後とも大事にしようと考えていた。
そんな微笑ましい光景に、銀時、キリト、新八、神楽、ユイ、定春の万事屋の面々も、遠目からしかと見守っている。
「なんだか順調そうで安心しましたね」
「そうアル。アッスーも、この世界のユッキーともっと仲良くなれそうネ!」
新八、神楽も元気そうなアスナの姿が見れて何よりだと感じていた。一行が温かく見守る中で、ユイとキリトは銀時にある決意を伝えている。
「あっ、そうです! 銀時さん! 一つよろしいでしょうか?」
「なんだよ。急に改まって」
「大した事じゃないよ。このアルヴドライバーの件だよ」
そう言ってキリトが見せてきたのは、戦いにて散々お世話になったアルヴドライバー。二人は今後の運用方法について、アスナやユウキと相談してある一つの結論を導いていた。
「俺やアスナ達と勝手に決めたんだが……これは俺達で管理した方が良いと思うんだ」
「元をたどればマッドネバーが開発した兵器かもしれませんが、同時に私達を救ってくれた大切な代物だと私は思っています。だからこそ、今後いざという時に備えて、大切に保管した方が良いと思うんですよ。ユッキーさんやフレイアさんも勧めてくれましたから!」
それは簡潔にまとめると、所有者を万事屋が管理すること。いつの未来かは分からぬが、このライダー達の力が必要になる日はあるとキリトらは見込んでいる。すでにユウキ達とは話も付けており、後は銀時らの反応次第であった。
この結論に銀時ら三人も概ね納得している。
「なるほどな……まぁ、良いんじゃないか。俺は別に構わないぜ」
「僕も同じですね」
「私もアル! どうせ普段じゃ使えないし、やっても銀ちゃんみたくボコボコにされるのがオチネ!」
「あんだとゴラァ? アレはただ運が悪かっただけだよ」
神楽のからかいには、銀時も反射的に言い訳をぶつけていたが。
万事屋の好意的な反応には、ユイやキリトも一安心している。
「とりあえず、了承を貰えてよかったですね。パパ!」
「そうだな。随分と長い回り道になったけど、きっと俺達の最終的な目標には繋がっているはず……だよな」
「絶対繋がると思いますよ!」
この経験も最終的な目的に繋がればいい。この星で経験したことや出会いは、きっと今後対立するであろうサイコギルドとの戦いにも役立つと、二人は密かに感じ取っていた。
しみじみと物思いに更ける中で、突然万事屋一行を発見したユウキが元気よく声をかけてくる。
「あっ、みんな! 折角だからこっち来て! アッスーとユウキの武勇伝が聞けるみたいだよ!」
「って、ユッキー! 変にハードル上げないでって!」
「おぉ! それはマジアルか!」
「素直に聞こうじゃねぇか」
「だな。二人共! 俺達も話に混ぜてくれよ!」
「ワン!」
彼女の謳い文句に惹かれていき、万事屋一行は揃って二人の元へと駆け寄っていた。一行は仲睦まじく、過去の思い出話を次々と披露していく。
こうしてALO星で繰り広げられた戦いは、この日をもって終結したのであった。新たに紡がれた絆をしっかりと胸に刻み、万事屋達は次の日には、帰還用の船で元いた地球へと戻っていたのだ……。
ALO星にて盛大な祭りが開催されている一方で、地球にある山の奥ではあの組織が秘密裏に話し合いを行っている。
「平成の記憶は全てこの玉に抑え込んだ。平成に続き二つ目だな……アンカーよ。試しにお前の笛の音色を聴かせてみろ」
「分かったよ」
その正体はもちろんサイコギルド。彼らはとある計画を遂行させるために、誰にも気づかれることなく着々と準備を進めている。
現在一行が所持しているのは二つの濁った玉。前回呼び起こしたショッカー関連の騒動で生成した昭和の記憶が詰まった玉と、今回の暗躍で作り出した平成の記憶が詰まった玉の二種。今後の計画に必要な代物であり、シャドームーンは試しにアンカーへ演奏を持ち掛けている。
するとアンカーは彼の指示に従い、彼女の武器でもある特殊な三つ槍を口元に近づけていた。この槍は管楽器としても使用可能であり、アンカーはフルートを奏でるが如く手慣れた手つきで音色を奏でていく。
〈キィィィ! キィィ!〉
何とも言えない不協和音。聞く者に恐怖を与える邪悪な音が辺り一面に響き渡っていた。すると玉は何の前触れもなく霧を放出し、その中から数十体の人影が出現する。
「イィィィ!」
「ギィィ!」
「ウゥゥ!!」
人影の正体はなんと戦闘員の大群。ショッカー戦闘員、コンバットロイド、ライオトルーパーにカッシーン。かつて銀時やキリト達が、夢の中やALO星で撃退したはずの怪人達が呼び出されていた。これも実はシャドームーンが生成した玉と、アンカーの奏でた音色が大いに関係している。
「フッ、見事だ。お前の恨みを込めた音色さえあれば、きっと我が組織の計画は成功するだろうな」
「……これが玉の力なの?」
アンカー自身も初めて玉の真の力に触れたようで、思わず驚きの表情を浮かべていた。彼女の力を抜けると同時に、召喚した怪人達はまた霧の中へと姿を消している。構成員など見当たらなかったサイコギルドだったが、玉を介して幾らでも戦力が拡充出来たとなると、その脅威はさらに増したと言えるだろう。
するとシャドームーンは、一時的に協力したマッドネバーの末路についてアンカーへ教えている。
「どうやら案の定、奴らはしくじったらしいな。所詮あんな器の小ささでは、やられるのが目に見えていただろうに。さて、我らは次なる作戦に向かうぞ」
私情を挟みつつも、次なる計画に気持ちを切り替えるシャドームーン。アンカーへと仰いでいた――その時である。
「ねぇさ! いい加減に教えてくれない?」
「ん? どうした、そんな気を立たせて」
彼女は真剣そうな表情で、強気にシャドームーンへと問いかけた。今まで教えられなかったことを、この場で白黒はっきり付けようとしている。
「アンタが恨みだの怨念だのにこだわっているのはよくわかったよ! でも、本当にこんなんで私の願いは叶えられるの!? アンタが悠長にしているうちに、あの万事屋って奴らは英雄達の力を手にしたんだよ! もうちょっと危機感を持ったらどうなの!? これじゃ私の世界は……いつ復讐することが出来るのさ!」
やや感情的になりながらもアンカーが吐露したのは、じれったく続くサイコギルドの計画。自身が強く渇望する願い……SAOの世界全体に復讐するための見通しが未だに見えてこず、アンカー自身がやきもきしているという。さらには追い打ちをかけるが如く、対抗勢力であろう万事屋が英雄(すなわち平成仮面ライダー)の力を手に入れたとならば、焦っても仕方のないことではある。
と事態の手詰まり感に焦るアンカーだが、シャドームーンは一切態度を変えないまま彼女に返答していく。
「何を焦っている。いずれ勝利するのは我々の方だ。英雄の力を手に入れようが、奴らは太刀打ちできるはずがない。俺は何度も言っているぞ……ノロイドさえ復活すれば、お前が望む復讐も叶えれるとな」
その自信は孤高のように高く、しっかりと最後まで言い切っていた。サイコギルドにとって重要なのは、やはりノロイドの復活。この存在を再興することが出来れば、世界そのものを相手にすることが可能だという。
シャドームーンの説得もあってか、アンカーは徐々に心を落ち着かせていた。
「そのためにもお前の音色がこの先の計画でも重要だ。姉をSAOで失った悲しみ、彼女を蔑み否定した無知な連中、お前はただ誰かを憎むだけで良い。その恨みの力が、ノロイドにとって最高の養分となるのだからな!」
再度彼はこの計画にアンカーが必要だと訴えかけている。詳しくはまだわからずじまいであるが、アンカーにもただなるぬ過去が関係している様子だ。これまでの人生で感じてきた恨み辛み。底知れぬ闇の深さに価値を見出して、シャドームーンはアンカーをサイコギルドに誘い込んだという。歪な関係は出会って早々から始まっていたのか。
続けざまにシャドームーンは、アンカーに向かって次なる計画を討ち明かす。
「さて、残す力は令和のみ。それにそろそろ奴らが芽を出す頃だろう」
「奴ら……って、誰のこと?」
「お前には言っていなかったな。ノロイドを復活……いや肉体を得るためには、次元に干渉するほどのズレが必要だ。要するに本来二つの世界が歩む未来を、少しばかり変える必要がある。そのための布石を、前々から打っているのだよ」
「布石ってなんなのさ?」
「何ぃ、特殊な力を与えたり、本来出会うはずが無かった者を出合わせたりとかだ。ちょうどいい機会だ。アンカーよ。お前にはその付き人になってもらおうか」
急な提案を耳にして、アンカーは若干嫌そうな表情を浮かべていた。
とそれはさておき、サイコギルドの次なる計画は主に二つ。一つは未だ獲得していない令和の力の獲得。もう一つはノロイドの復活に必要な歴史のズレを作ること。所謂歴史改変に似たことを企んでおり、それに必要な手もすでに打っているという。
そう彼が告げると同時に、アジトにて一人の男が入り込んできている。
「ここが所謂異世界ってところか。本当に俺のいた世界と違うのか?」
「って、アンタは……?」
突然の来客に驚きを隠しきれないアンカー。その正体は新たなサイコギルドの構成員か、はたまたシャドームーンの用意した布石か。ただ唯一分かるのは、男はダークライダーに変身するためのベルトを所持していること。そしてアンカーと同じく、時代の被害者でもあること。
果たして彼の正体、目的とは。万事屋が知らぬうちに、サイコギルドの作戦も最終局面へと突入している……。
あとがき
ここまで応援してくださり、本当にありがとうございました! 遂に長かった長篇を終わらせることが出来ました!! 通算約一年半……本当に長かったです。
まず本来の予定では次元遺跡篇と合わせても二十訓弱で終わらせようと構想を練っていましたが、思ったよりも描きたい描写がどんどんと増えてしまい、結果ここまで長引いてしまいました。やっぱり予定通りに進めるのは難しいです……!
それでは折角の機会なので、この小説の総括を行います。
まずは僕的にグッと来た点から。まず書いていて一番楽しかったバトルシーン。魑魅魍魎とした怪人軍団に敢然と立ち向かう銀時やキリト達。彼らをかっこよく魅力的、ちょっとお茶目さや個性を際立たせた戦闘シーンは、自信を持ってよかった点だと思います! さらには銀魂世界で生きるユウキやスリーピングナイツの登場。本物のユウキらとは違いますが、アスナとの出会いは丁寧に作れたと思います。アスナも新しい友人として友情を築き始めたので、今後は準レギュの立ち位置になりそうです! どれくらい出番があるのかと言うと、辰馬や陸奥と同じ頻度? 要するにそんな簡単には出せ無さそう。それでも今度は日常回で再登場させたいです。
そして微妙だった点は、長引いてしまったこと。所謂こだわりを詰め込み過ぎたことで、展開が長引いたのは欠点だと思います。人数が多い分、その調整を上手くできなかったです。振り返ると、怪人の総数は少なくした方が良かったと思います。それに加えて本筋の話が進まなかったこと。サイコギルド云々は別の長篇に回されたため、今回の長篇は盛大に回り道した感じが否めません。
……まぁ、二次創作なのでそこまで深刻には考えていないですが!
良い点や悪い点をひっくるめて、無事にグランドフィナーレを迎えた次元遺跡篇および妖国動乱篇。キリト達はALO星の頼もしい味方と縁を結んで、また地球の日常へと戻っていきます。先ほどもお伝えしましたが、ユウキやシウネー、ユージーンやフィリア達も今後の単発回で再登場する予定です! アレ? そういえば最後まで登場しなかったALO関連のキャラがいたような……落ち込むなレコン。日常回には出してやるからな、多分。
そして気になる方に向けて、サイコギルドの次なる出番を。今度は今年中に投稿されるだろう中篇に彼らが登場する予定です。ずっと暗躍していたアンカーの目的や詳しい事情が、とうとう分かるかもしれません! さらにサイコギルドが用意した歴史を変えるやもしれない男の正体とは……。ぜひ楽しみにしてください。(中篇と位置付けているのは、そこまで登場キャラが少ないから。銀魂の死神篇、SAOのキャリバー編のような短さを予定しています。絶対3話じゃ収まらないけど笑)
さぁさぁ、次回から季節は秋へ! 衣替えや新設備、見知ったの誕生日も交えたドタバタ日常回が帰ってきます。ぜひ今後とも応援のほどをよろしくお願いします!
※次回の投稿とついでに、NGシーンや出番表、小ネタ一覧系を投稿する予定です!
次回予告
銀時「ようやく普通の次回予告に戻れるな」
神楽「あんな堅苦しい予告、もうやりたくないネ!」
ユイ「って、皆さん! 地球に戻ったら、早速不思議なことが起きたみたいですよ!」
新八「そんな浦島太郎じゃあるまし。もしかして今度はRXとコラボとか?」
アスナ「洞爺湖仙人って人が会いに来ているみたい」
キリト「ついでにエクスキャリバー師匠もいるみたいだが」
銀時「えっ? 日常回初っ端からアイツら出てくるのかよ!」
次回! 長篇明けの日常回は連休明けの仕事並みにめんどくさい
テロップ風
長篇お疲れさまでした! 次回からまた始まりますね、日常回!
次の長篇まで場繋ぎです。ところでエクスキャリバー師匠って誰?