剣魂    作:トライアル

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 今回の話、本当は料理回にするはずでしたが……上手くまとまらなかったので、路線変更致しました。なので前回の予告とは違うかもしれません。

教えて、銀八先生―!

銀八「はい、ペンネーム。レコンを剣魂に出させろさんからの質問。ユイちゃんって8月1日が誕生日ですよね? だとしたら、なんでその回をやらなかったんですか? 時系列を見ても8月はとっくに終えていますよね? ぜひ答えてください。はい、よーく見つけてくれましたね。ずばりお答えしましょう。完全に忘れていました。ていうか投稿者が、SAOキャラの誕生日全般を知ったのは最近だから許してやってくれ。数年前までは未設定のキャラもいたから、こっちもこっちで驚いてんだよ。ちなみにユイと誕生日が同じ銀魂のキャラクターはデルデらしいでぞ。誰って? 土方が禁煙する時に登場した神楽と同じ声のキャラだよ。分からなくなったら調べろよ。と言うわけで無関係だが、妖国動乱篇でALOキャラでありながら出番を貰えなかったレコン。いや、長田! なんで出番を貰えなかったのか考えながら、廊下に立ってなさい」


第百一訓 なんでもかんでも説明書通りにはいかない!

「それじゃお使い宜しくね」

「任してください! 私と銀時さんで探してきますよ!」

 そう日輪から一言声をかけられると、ユイは満面の笑みで返答してきた。

 現在彼らはひのやの入り口前におり、日輪、リーファ、シノンの三人は、お使いへと出向く銀時、ユイに再度買い物の中身を確認している。

「普通の塩じゃなくて、最強塩だからね! 伯方星特有の」

「間違って買ってこないでよね! そうじゃないとあのパエリアは完成しないから」

「もう分かったから! そんな入念に言うなよ。てか、そっちも分かっているよな? 買い物行く代わりに、俺の分のケーキを増量するって約束」

「勿論覚えているわよ。甘さマシマシにしてあげるね!」

「なら大丈夫だ! 任しておけ」

 銀時は改めて日輪に約束の内容を確認。彼好みの甘さたっぷりのケーキを作ることで了承している。糖分を求める彼の甘党ぶりに、日輪の横にいたリーファやシノンは何とも言えない表情を浮かべていた。

「本当単純なんだから」

「相変わらずいつも通りね。銀さんは……」

 数か月経とうとも、印象はまったく変わっていない。

 とそれはさておき、ユイは銀時の乗るスクーターへと乗車。ヘルメットを着用して、

「行ってきます!」

「うん! 気を付けていってらっしゃい」

そのままお使いへと出発していた。目指すは伯方星生産の最強塩。吉原には流通していない特殊な塩を、江戸中を駆け抜けて探すという。

 ユイらを見送ったリーファ、シノンは、二人の今後をやや心配していた。

「行っちゃった」

「ねぇ、あの二人に任して大丈夫なのかしら? やっぱり私達が代わりに行ってきた方が」

「良いのよ。どっちにしろ人手は助かっていたから、料理よりも買い物の方に任せたかったからね。それに銀さんとユイちゃんって良いコンビじゃない? きっと買ってきてくれるわよ」

「そうかな……?」

 日輪につい不安をこぼすも、彼女は一切動じていない。むしろ二人へ大きな期待を抱いている。

 若干の温度差を感じながらも、彼女らはすぐにパーティーの料理作りに戻っていた。

 

 

 

 

 

 

 キリトらがレプリカ剣を取りに行っていた時、銀時、ユイの二人は日輪に頼まれて、パーティー料理の手伝いに駆り出される予定だった。しかし着いた矢先に調味料が足りないことに気付き、ユイが自ら名乗りを上げて二人揃ってお使いに行くこととなった。銀時は当初乗り気では無かったものの、日輪との約束を得てどうにか了承している。それでもまだ納得のいかない様子だが。

 場面は吉原から江戸へ。江戸の住宅付近を走行するシーンから始まる。

「なんだよ~。今日誕生日だぞ、俺。なんでお使いに駆り出されているんだよ」

「文句を言わないでください、銀時さん! 日輪さんからたっぷりお礼もあるので、良いじゃないですか」

「んなこと言われても、こちとら調子が出ねぇよ。あーあ、なんで普通の塩じゃダメなんだよ」

 一応誕生日パーティーの主役にも関わらず、働かされてつい不満を呟く銀時。そんな彼をユイが優しく宥めていく。未だに気持ちが変わらない中で、ユイはふと話題を変えてきた。

「そういえば銀時さんって、今度何歳になるんですか?」

「何歳って〇〇歳だよ」

「はい? えっ!?」

「どうした、聞こえなかったか?」

「いや、〇〇歳ってなんですか!? 以前二十七歳と聞いていたので、二十八歳ではないのですか?」

「お前んは分からねぇと思うけど、この世界はサザエさん方式だから年は取らないんだよ。だから〇〇歳なの。分かったか?」

「いや、まったく分からないです……」

 年齢を聞きたかったものの、理解不能な常識で返されて、消化不良のまま話が終わってしまう。銀魂特有の年を取らない設定(所謂サザエさん方式)にいまいち理解を示せなかったユイであった。

 しばらく近場の商店まで走り続ける中で、銀時はユイにある質問を投げかけていく。

「ところで折角だ。聞いていいか?」

「はい、なんでしょうか?」

「この世界での生活って、お前にとってはどうだ?」

 やや真剣そうな表情で聞いたのは生活云々。思えばこの世界に彼等が来てから早三ヶ月弱。情報収集も呼び掛けているものの、未だに有力な情報は見つかっていない。それでもこの世界で生活を続けるユイらに、銀時は密かに気にかけているのだ。

 素直な優しさを受け止めて、ユイは満面の笑みで元気よく返答する。

「私は楽しんでいますよ! 現実世界でもパパやママ達と一緒に過ごせますし、万事屋での生活も刺激的で飽きないですから!」

「そうかい……なら一安心だな」

 彼女の一言に銀時もすんなりと納得していた。ユイ自身も多少の不安はあるものの、それでも銀時らと過ごす生活は楽しんでいる。この気持ちに嘘偽りは無いのだ。互いの希望を確かめながら、彼らは気持ちを買い物へと戻していく。

 するとユイがあることに気付いていた。

「ところで銀時さん」

「あんだ?」

「行く店もう通り過ぎてますよ」

「おっとぉぉぉ!?」

 もうすでに目的地を通り過ぎていたのだ。急な出来事に銀時はつい急ブレーキを踏んでしまう。

「もうちょっと早く言えや!」

「でも黄昏ていたので、言うのにためらっちゃったんです!」

「どこで天然発揮してんだ。お前は……」

 ちゃっかりな一面を見せて、無邪気な笑顔を浮かばせるユイ。一方の銀時はツッコミを入れながらも、タジタジとした反応を示す。

 こうしたやり取りを交えつつ、一行は気を取り直してとある一軒のスーパーに足を運ばせていく。

 

 

 

 

 

 

 

「おい、これで何件目だ?」

「えっと、スーパーが三店。小売店が五店。コンビニが六店ですね!」

「俺達ゃ食玩探し回っている親子じゃねぇんだぞ! 一向に見当たらないじゃねぇか!」

 最強塩を探して一時間半。二人は早くも息詰まっていた。合計で十四店舗も周ったものの、手掛かりすら一切見つかっていない。パーティー開始の時間を逆算すると、もうそろそろ見つけないと間に合わない。徐々に焦りを覚え始める銀時だったが、ユイはマイペースにも時間を気にしていなかった。

「大丈夫ですよ! 日輪さんが見つかるって言ったんですから、きっと手に入れますって!」

「だとしても雲行き不安定だぞ。あーあ、何時ぞやのケーキ探しに行った時と同じ展開じゃねぇか」

 過去に体験したキリトとのケーキ探しを照らし合わせつつ、今後の展開を予測する銀時。同じく余計な時間がかかると察している。この嫌な予感が当たらなければ良いが……。

 と一行は次なるコンビニへと到着し、その店で最強塩を探そうとした時だった。

「ん? あっ! 晴太さん! 月詠さーん!」

「おっ? ユイちゃんじゃん!」

 なんと偶然にも、別件で外出していた月詠と晴太にばったりと遭遇している。ユイを見るや否や、晴太はやや照れ気味に挨拶していた。四人は一旦合流して、お互いの状況を話していく。

「なんじゃ。お主も買い物か?」

「お前の恩人からな。そういうお前らはどうしたんだよ」

「パーティーグッズの買い出しじゃ。日輪に頼まれてな」

「ぴったりのものをトンキホーテで買ってきたから!」

「そうだったんですか」

 どうやら月詠達も買い出しに行っていたようで、手にしていた袋からは余興で使えそうなゲームやら仮装グッズが詰まっていた。これも日輪からのお使いの一つらしい。

 一方で銀時らも、ひとまず月詠らに最強塩の情報を聞き出すことにする。

「それでお主らは何を探しているんじゃ?」

「最強塩って商品探してんだが、お前等知らないか?」

「最強塩? 月詠姉。もしかして……」

「さっきいたところにあったな」

「本当ですか!?」

「おいおい、マジかよ。どの店だ?」

 予想とは裏腹に、彼女達は最強塩の在処を知っているらしい。急に事態が好転して、銀時らのテンションは急に高まっている。興奮を抑えられぬまま、月詠らに売っていた店を聞き出していく。

「トンキホーテ。○○支店じゃな」

「トンキホーテにあったんですか!」

「あの店かよ……。まぁいいや。とにかく見つかったら向かうまでだ!」

 販売場所はまさかのトンキホーテ。あやめの一件やユイのお使いでもお世話になった店と同じ場所である。灯台下暗しのように、近場で売っていたことに拍子抜けしてしまう銀時。それでも事態が好転したことには手ごたえを感じていた。

「行きましょう、銀時さん!」

「任せろ! この買い物に終止符を打ってやる!!」

「ゴーです! お二人共、ありがとうございました!!」

 落ち着くことも出来ずに、銀時、ユイの二人はすぐにスクーターへと乗り込み発車。北上しながら、トンキホーテまで突き進んでいく。

「い、行っちゃった……」

「どれだけ焦っていたんじゃ、奴らは」

 途端に去ってしまった銀時らの姿を見て、つい言葉に詰まってしまう月詠ら。見切り発車する様子から、相当な執念を二人から感じ取っていた。

 こうして頼りになるアドバイスをした月詠らだったが……ふと晴太はある大事なことを思い出してしまう。

「あっ!?」

「どうしたのじゃ、晴太?」

「大切なこと言うの忘れてた……」

「あっ。そういえば最強塩は、目玉商品じゃったな」

 彼らの言う通り、最強塩は今日トンキホーテの目玉商品なのである。この言葉が指し示す意味は。銀時、ユイの二人は何一つ気付かぬまま、必死になってトンキホーテまで突き進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

「着いた――って、えっ!?」

「どうしたんですか、銀時さん? ん!?」

 数分かけて、ようやくトンキホーテ前まで到着。意気揚々と店内へ入ろうとした銀時だったが……見慣れない光景につい体を固めてしまう。ユイも同じ方角を見ると、そこには異様な光景が広がっていた。

「なんだこの殺気……!」

「トンキホーテが人でごった返しています……?」

 そう。トンキホーテ前には多くの買い物客が集まっていた。屈強な男達や、買い物かごを持った主婦。どこかで見たことある天人と多様な人物が集結している。そのどれもが、皆集中力を研ぎ澄ましているのだ。トンキホーテ前ではあまり見かけない光景である。

「凄い密ですね……」

「まさか転売ヤーの連中か? 規制はどうなってんだ、規制はよ!」 

 二人の中でも様々な憶測が飛び、イベント参加者、転売ヤーの集団、不良達の喧嘩など想像力を豊かに膨らませていた。(残念ながら、そのどれもが外れなのだが……)

 しばらく様子を伺っていた時、銀時らはとある知り合いと遭遇する。

「おっ、万事屋! お前等も来たのか」

 聞き覚えのある威勢の良い声。その正体は真選組の局長、近藤勲であった。

「誰かと思えばゴリランダー近藤じゃねぇか」

「いや、せめてゴリラにして! ていうか、詳しくない読者には伝わっていないよ、そのネタ!? 本当に大丈夫?」

 出会い頭に銀時は、近藤ととあるゲームモンスターを組み合わせた造語で話しかける。普段通りのいい加減さに、近藤は反射的にツッコミを入れてしまう。

 それはさておき、ユイは彼がトンキホーテに来た理由を聞くことにする。

「ところでゴリラさんは、なんでトンキホーテにいるのですか?」

「ユイちゃんまで言うの!? ……まぁ、それは置いといて。一言で表すならば、ずばり! 戦いへ勝つために来たんだ!」

「はぁ? 戦い?」

 凛とした表情に一変させて、彼が明かしたのは勝利への意気込み。意味深な一言に、銀時らはつい首を傾げてしまう。

「なんだ、お前等。最強塩を求めて、ここにやってきたんじゃないのか?」

「おい、なんでお前がそれを」

「やっぱりな! だってチラシに書いてあっただろ。本日の限定品として」

 そう言って彼は持っていたチラシを見せてきた。そこには紛れもなく、限定品として最強塩がでかでかとアピールされている。

「ほ、本当だ……」

「まさか広告商品だったなんて」

 このチラシをきっかけにして、二人はようやくトンキホーテに集まった人々の熱意を理解した。彼らも最強塩を求めるライバルであり、決して油断してはならない相手なのだと。

「この機会にと思ったな。どうにか手に入れて――」

「どうせお妙にプレゼントするだろ」

「えっ……なんで分かった!?」

「お前が行動する理由の九割なんて、もう妙絡みしかないだろ」

「はい。そうだと思います」

 日頃の行いからまたしても妙絡みと推測する銀時とユイ。もはや近藤にとっては通常運転であり、むしろ安心感を覚えている。

 異様な熱気に両者共固唾を飲む中で、二人は近藤以外の知り合いを発見している。

「ん? 見てください、銀時さん! あの人って」

「はい? って、お前等!?」

 後ろを振り向いてきたその正体は服部全蔵。青い忍者服がトレードマークだったようで、ユイはすぐに気付いていた。

 一方の全蔵は、銀時らを見ると段々嫌な予感を察し始めていく。

「おいおい、どうした? そんな嫌そうな顔をして」

「いや……絶対ロクなことないだろ。お前等と会ったら」

「はっきり言ってくれるじゃねぇーかよ。今までのことはたまたまだろ?」

「たまたまで済まないこともあったはずだが……」

 話しかけられるや否や重いため息を吐く全蔵。銀時とのろくでもない思い出を浮かべるうちに、今回も先行きが不安になってしまう。

 と全蔵の反応はさておき、ユイは気になったことを彼に聞いている。

「忍者さんも最強塩目当てで来たんですか?」

「最強塩? あぁ、そうだが。別にこれと言ってやる気じゃないが、中々お目にかかれないから、手に入れようって考えだな」

「なんだよ。ただの野次馬じゃねぇか。だったら俺達の代わりに行って来いよ」

「誰がやるか。そこの嬢ちゃんならともかく、お前に頼まれるなら速攻で断るぜ」

 全蔵も最強塩が目的だったが、どちらかと言うと消極的だった。銀時は冗談半分で全蔵に事を丸投げしようとしたが、肝心の彼からは反射的に断られている。

 すると彼はとある悪知恵を思いついていた。

「おい、ユイ。思いっきりアイツにお願いしてこい! またとないチャンスだぞ」

「えぇ……上手くいきますか?」

「何事も挑戦だ。大丈夫だよ。あのフリーターは案外ガキに弱いからな」

「おーい。全部筒抜けだぞ」

 ユイに話しかけて、彼女から同情を誘う作戦だったが、全蔵には全てを見透かされている。ユイ自身も乗り気では無かった為、どちらにしても叶うことは無かった。

 近藤、全蔵と見知ったかに次々と会う中、さらに二人はある知り合いを発見する。

「ん? 銀時様?」

「えっ? たまか?」

 話しかけてきた正体は、スナックお登勢に所属するたま。買い物かごを持っている姿から、彼女も買い出しに来ていることが分かる。

「たまさん! 来ていたんですね!!」

「はい。買い物へとやって来たもので。最強塩が安く手に入るとのことで」

 淡々とユイに向けて説明するたま。どうやら彼女も目玉商品である最強塩目当てでトンキホーテを訪れていた。

「何だよ。お前も最強塩目当てで来ていたのかよ」

「そうですね。どうかされましたか?」

「まぁ、俺達もなんだが……おい。ここはよぉ、俺達の分も買ってきてくれねぇかよ。こんな客数じゃ購入するのも至難の業だろ? ここは互いに協力しようぜ」

 たまの目的を確認すると同時に、銀時はまたしても協力を持ち掛ける。ただの下請けとして自分だけ楽しようと言う魂胆なのだが……。

 無論たまには、彼の真意が見破られていた。

「了解しました。では仲介手数料として、高級オイルを要求しますね」

「はぁ? おい、ちょっと待て! 金かかるのかよ!」

「当然です。お登勢様にも言われましたから。銀時様への甘えは皆無だと。なのでどうしてもと言うなら、等価交換でお願いしますね」

「ふざけんな! あのババア! 余計な入れ知恵入れやがって……!」

 何一つ表情を変えないまま、自身の条件を投げ返すたま。等価交換を持ち掛けられて、銀時はつい頭を抱えてしまった。これもお登勢から得た銀時への対処法らしい……。

 結局たまへの依頼は白紙となり、二人だけでこの難所を攻略しなければならなくなった。

「中々厳しいですね。銀時さん」

「厳しいも何もタイミングが悪いんだよ……どうすんだ。こんな人数じゃ力づくで奪うしか方法はねぇぞ」

 当然ながら動けるのは銀時とユイの二人。こんな人混みで目的の物を手に入れるには運も絡んできてしまう。ここで手に入れなければ、また最強塩探しに奔走しなければならない。

 折角巡って来た好機を、こんなところで見捨てるわけにはいかない。確実に手に入れるため、懸命に考えを巡らせていく二人。開場時間が差し迫る中、ユイはふと店前に貼られた店内図に目を向けている。

「どうした、ユイ? 何見てんだ?」

「フロアマップですよ。入り口前に飾られている」

「フロアマップ? そんなんで何か思いつくのかよ?」

 何一つしっくり来ていない銀時とは異なり、ユイはフロアマップからある道筋を思いついていた。しばらく考えを煮詰める中で、彼女の遂に勝機を確信した。

「そうだ! 銀時さん! 思いつきました!」

「はぁ? 何をだ?」

「とっておきの作戦ですよ! えっと、ひそひそ――」

 咄嗟に彼女は銀時へ小声で耳打ちしている。ユイの立てた作戦に銀時も納得しており、彼も同じく勝機に確証を得ていた。こうして二人の中だけで、独自の道筋が立てられていく。

 

 

 

 

 

 

 それから間もなくして……タイムセールの時間が差し迫っていた。

「それではお待たせ致しました。タイムセール、後十秒で始まります!」

 メガホンを持った店員の呼びかけによって、皆が真剣な顔つきに変わる。老若男女問わず、皆がお得な最強塩目掛けて一直線に目つきを鋭くさせていた。そして、

「3……2……1……はい、開場です」

「どけぇぇ!」

「いけぇ!!」

「いったぁぁ!」

とうとう競争が始まってしまう。全員がほぼフライング状態で、もはやそこにルールなんてものは存在しない。所謂無法地帯で行われるは早い者勝ちの奪い合い。当然遅れた者から脱落していく。

「避けろ! 俺は最強塩を手に……お妙さんの元へ帰らなくちゃいけないんだ!」

 道中で転んでしまい人混みに押される近藤。息巻いていた姿はもうどこにもない。

「はぁ! こんなのちょろ……ん? グハァァァ!?」

 一方近くまで辿り着いたは良いが、中々目的の物を手に入れられない全蔵。最初こそ自慢の速さで距離を離していたのだが、客達の執念により距離を縮められて、後一歩のところで手が届かずにいる。

「ふぅ~。間に合いました」

 男性陣が苦戦する中で、たまはただ一人人混みの中を描き分けて手に入れていた。何も気にかけないまま、そのままレジへと向かっている。

 そして……あっという間にタイムセールは終了した。売り場近くにいるのは、力尽きた近藤と全蔵のみである。参加者はほぼ撤退していた。

「はぁ……はぁ。無くなってやがる」

「一瞬で終わっちまうとは」

 改めて陳列棚を見て、失意に暮れる近藤と全蔵。全力を尽くしたものの一歩及ばず、悔いの残る結果を残してしまった。

 共に溜まらずため息を吐く中で、彼らはある事を思い出す。

「そういえば万事屋は?」

「アレ? いねぇな」

 それは同じ志を持っていた銀時の存在。気が付いた時には、彼の姿は見当たらなかったのだが……

「おい。避けろ、テメェら」

「ん? はぁ!?」

「下にいたのかよ!」

なんと奇遇にも二人の真下に彼はいた。スッと立ち上がって、服に付いた汚れを払う銀時。だがしかし、体のあちこちに靴跡があり、近藤らに押し倒される前から被害を受けていたことが伺える。

 痛みをひしひしと感じながらも、銀時は普及することなく呟く。

「ったく、酷い目にあったな」

「いや、全身靴跡だらけじゃねえか!」

「よくそれだけで済んだな」

 たった一言で済ます銀時の態度に、ついツッコミを入れる近藤と全蔵。負け姿と言い悲壮感と言い、同じく最強塩を手にそびれたと、この時の二人は思っていたが……

「まぁ、良いじゃねぇか。最強塩も手に入ったんだしさ」

「はぁ? どこにあるんだよ?」

本人からは思わぬ一言が飛び出してきた。彼の手元には肝心の最強塩が見当たらず、てっきりでまかせを発しているかと思いきや……急に売り場のテーブルにかけられた布がバサッと動く。

「ここですよ! はい!」

 その正体はユイだった。彼女は満面の笑みで、嬉々として最強塩を一行に見せびらかしている。

「えっ!?」

「万事屋のがきんちょ……?」

 想定外の出来事に、驚嘆とする近藤と全蔵。彼らが驚くのを尻目に、ユイと銀時はさも当たり前のように会話を交わしていく。

「おぉ。流石だぞ、ユイ。しっかりキャッチしたな」

「はい! 誰にも見つからなかったんですよ!」

「そうか、そうか。やっぱりお前の作戦で正解だったな」

 ユイの立ててくれた作戦に対して、素直に感謝を伝える銀時。目的の物が手に入ったからか、いつもよりも優しそうな笑みが印象的である。つられてユイも無邪気な笑顔を浮かべていく。

 二人の幸せそうな雰囲気とは対照的に、近藤らは銀時達の立てた作戦が気になって仕方がなかった。

「って、万事屋! ずっとユイちゃんは隠れていたのか?」

「そうだよ。こいつの作戦でな」

「ちょっとでも手に入れる確率を上げるためですよ! それに銀時さんなら、こんな人混みでも耐えられると思ったので」

 さり気なく銀時遣いの粗さを露わにするユイ。

 そんなことはさておき、テーブルの下に隠れる作戦は、彼女からのとっておきの作戦であった。人混みの中で密かに潜り込み、銀時がわざと床下に落として確実に入手する。一風捻った作戦は、二人にしか出来ないことでもあった。

「まるで兄妹みたいですね」

「ん? たまか」

 と説明している間に、もうすでに最強塩を購入したたまが話しかけてくる。

「後付けにはなりますが、私は二人ならきっと手に入れると思いましたよ」

「そ、そうなんですか?」

「はい。だって息ぴったりだったじゃないですか」

 どうやら彼女はタイムセールが始まる前から、こうなることを予想していたらしい。二人ならではの化学反応を信じて、あえて協力を断ったのかもしれない……。

「まぁ。今回だけだ。私生活ではそう簡単にはいかねぇよ」

「って、銀時さんってば。もうちょっと素直になってくださいよ! パパやママのように!」

「分かった、分かったから! だから背中押すなっての!」

 最後にはまたしても皮肉を呟く銀時に、ユイは反抗するように彼の背中を押す。じゃれ合っている様子は、まさに兄妹のような間柄を感じさせる一幕である。仲睦まじい二人の絆が発揮された出来事だったのかもしれない。

「一本取られたな」

「今日はアイツらの作戦勝ちってところか」

 説得力のある二人の光景に、つい感心してしまう近藤と全蔵。ユイの無邪気さも相まって、今回ばかりは素直に万事屋を称えていく。

「とにかく! 早く買いに行きましょう!」

「そうだな。このままレジ行くか」

 そして見事に最強塩を掴み取った銀時とユイは、このままレジまで向かおうとする。高揚感を高めたまま向かおうとした時だった。

「あっ、いた! 銀さん!」

「ん? お前等? なんでここにいるんだよ」

 突然彼らの元に、リーファ、シノンの二人が急いで駆け寄って来ている。息を荒くしながら、二人は銀時らに話しかけていく。

「月姉達に言われて急いで来たのよ!」

「最強塩は……?」

「この通り、しっかり手に入れましたよ!」

「労力かかったからな。なぁ、しっかりとケーキ増量してんだろうな?」

 銀時らはてっきり心配して駆け寄ってきたと思い込んで、共に余裕の表情を見せてきた。ちゃっかり増量の件も普及する中、リーファらは何故か気まずそうな表情を浮かべている。

「そのことなんだけど……」

「どうした? まさか今度はケーキの材料足りないって言うんじゃないだろうな?」

 二人の心情が読み解けない中、覚悟してシノンが大事なことを吐露していく。

「そうじゃなくて……最強塩のストック。探してみたらあったの」

「……へ?」

「えっ?」

「そう……だから買わなくても良かったんだけど……」

「もう遅かったね」

 目線を外しながら明かしたことは、最強塩が実はまだあったこと。つまり苦労して手に入れなくとも、大丈夫だったと言うのだ。

 拍子抜けも甚だしいこの結末。完全に後の祭りであり、さっきまで高揚感に浸っていた銀時らも、こればっかりはテンションが下がってしまう。購入前だったのが唯一の救いか。

「ぎ、銀時さん……?」

 反応に困ったユイが苦笑いで話しかける中、彼は大きなため息を吐いてふと近藤らの方に目を向けていた。

「お前等、いるか?」

「えっ!?」

 疲れた表情のまま、全蔵ら二人に最強塩を押し付けようとする。無論二人も突飛な方向展開に、ついていけない様子であった。受け取ろうにも気まずさが勝るからである。

 こうして結局は、ストックを確保したとのことで、銀時らが塩を購入することに決まった。流石の近藤らも譲り受けることは出来なかったのだろう。最強塩を購入した銀時らは、そのままひのやまで戻ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 そしてそれぞれの一日が過ぎ去り数時間後。とうとうパーティー参加者が皆集まり、今にも誕生会が始まろうとしていた。

「ってことがあったから、お前等ありがた~くパエリア食っとけよ」

「何を偉そうにしているアルか。銀ちゃんは何も調理していないアル」

「うるせぇ! こっちの苦労も考えろってんだよ!」

 一段と息巻く銀時に対して、冷めた口調でツッコミを入れる神楽。そもそも料理自体は日輪が作っているので、神楽の方にも分があると思うのだが……。

 と野暮なやり取りはさておき、このパーティーの参加者は主役のアスナ、シリカ、キリト、銀時。新八、神楽、定春、ユイ、ピナ、リズベット、リーファ、シノン、妙、九兵衛、あやめ、月詠、日輪、晴太、長谷川、エギル、桂、クライン、エリザベスの仲間達。坂本、陸奥の飛び入り参加者など、かなり広範囲に渡っている。

 全員が開始を今か今かと待ちわびる中、キリトは銀時にそっと気になっていることを話しかけていた。

「それで銀さん。その……あの三人にはいつ触れるんだ?」

「アイツらか? まだ放置で良いだろ」

「「んなことないだろ!!」」

 それは桂とクラインのことだったが……彼らは事前にスタバっていたのだが、なんと服装はそれぞれ銀時、キリトを模した服装に変わっている。要するにただの主役食いであり、最初こそどうツッコミを入れるか悩んだ一行だったが、結局は彼らを放置することにしたのだ。とうとう我慢が出来ずに自分達から話しかけて今に至る。

「おい、銀時! 折角の親友が誕生日会に来ているのに、無視とはどういう神経しているんだ!」

「じゃ、まずテメェの恰好から説明しろ! なんで俺と同じ着物着ているんだよ! 確実に成りすましていただろ!」

 悪びれることなく注意を加える桂だが、銀時の恰好をしていては説得力に欠けてしまう。銀時も激しくツッコミで返していく。

「そんなことはねぇぜ! これは俺達なりのリスペクトだよ! 折角思い出しながら、昨日一日かけて作ったのに……!」

「……労力の無駄じゃない?」

「攘夷活動しろ、アンタら」

 一方のクラインも言い訳を述べるが、アスナや新八からは辛辣な言葉が投げられていた。とてもじゃないが、国家を変えようとする侍集団には似つかわしくない行動である。

 二人に続いてエリザベスも変装しており、お手製の被り物でピナに擬態していた。隠れているのは頭部だけで、他はバレバレなのだが……。

「エリザベスさんに至っては、ピナ風の被り物をしているだけっていう」

「ナ……」

[今日限りは君の弟だ。遠慮はするな]

「圧が凄いので、勘弁しておきます~」

 苦笑いでシリカは、エリザベスのことを受け流す。見た目のインパクトが強く、とてもじゃないが弟には思えなかったからだ。

 とパーティーを前に一波乱を起こした攘夷組である。

「アハハハ! これで全員揃ったかぜよ?」

「ワシらが仕切るわけじゃないきに。じゃが、もうそろそろ初めてよさそうか」

 空気を読まずに開始を急かす坂本に対して、陸奥は冷静にツッコミを入れていく。場がようやく一段落したところで、新八が咄嗟に音頭を取っていた。

「じゃ、皆さん! 行きましょう!」

「銀さん! キリトさん!」

「アッスー! シッリー!」

「「「誕生日おめでとう!!」」」」

 遂に始まったてんびん座だけの誕生会。近しい四人の生誕を仲間達が盛大に祝う。元の世界では中々起きなかった光景に、全員が喜びに満ち溢れていく。

「いやぁ~やっと祝えたか」

「ここまでの道のりが長く感じたわね」

「現に投稿まで二ヶ月経ってんだけどな」

「……どういうこと?」

 ふと呟いた銀時のメタ発言に、アスナは意味が分からずに聞き直してしまう。説明しても分からない為、銀時は適当にはぐらかしていく。

「誕生日会はシノンの時以来か」

「皆さんと一緒に祝われる日が来るなんて」

「こういうのもたまには良いんじゃないか?」

「そうですね!」

 同じく主役扱いをされて、若干照れを覚えるシリカ。キリトに後押しされて、急に自信が付いていた。今日起こった出来事も話題にしつつ、皆が誕生日会を楽しむ。

「アハハ! さぁ、宴じゃ! 飲んで食ってを繰り返すぜよ! 金時の為にもな!」

「だから銀時だって言ってんだろ! ていうか、お前が仕切るな! ほぼ初対面なんだから、挨拶の一つでも入れておけ!」

「そんな固いこと言うな、金時……アレ? 金時が二人おる!?」

「今更騙されるな! お前の横にいるヤツはヅラだ!」

 酒を飲んでいないにも関わらず陽気な態度を続ける辰馬。桂の変装も見破れず、早くも勘違いしてしまう。銀時もすかさずツッコミを入れていた。

「もうシリカとはマブダチじゃからな」

「そ、そんなことないですよ!」

「へぇ~。陸奥さんとそんなことがあったんだ」

「もっと聞かせてくれないか?」

 一方で陸奥はシリカの親友を自称。彼女やアスナ、キリトらからも気にかけられて、主役達を差し置いて次々と話しかけられていく。坂本よりも場に馴染んでいた。

 こうして多くの仲間達を集めて開かれた誕生会は、和気あいあいと夜遅くまで続いたのであった……。




今回の登場キャラクター
坂田銀時
ユイ

服部全蔵
近藤勲
たま

月詠
晴太

日輪
リーファ
シノン

キリト
アスナ
シリカ
ピナ
志村新八
神楽
定春
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まずは皆さま、お久しぶりです。完全に間が空いてしまいました。元々誕生日会を描く予定だったのに、気付いたらその日付を過ぎ去ろうとして……時の流れって怖。

ここ一か月実は別作品を製作していまして、今後ネットに上げるか今考え中ではあります。忙しくてロクに宣伝していないという……。

さてさてお話の方ですが、銀さんとユイの友情を感じられたお話でしたね。ユイが年を離れた人とここまで仲が良いのは結構珍しいことかもしれません。SAO内だと限られていますからね。今更ですが、アスナ、シリカ、キリト、銀さん。誕生日おめでとう!

現実だとSAOの映画公開が迫っていますが、行く日が結局当日にならなさそうなのが心配。予定が空き次第映画館へ行きたいと思います。

今年ももう後3ヶ月弱。投稿頻度を上げて、来年の最初には次の長篇に入りたいですね~。それではまた!





次回予告

アスナ「とうとう季節は秋真っただ中。それなのに私はノースリーブ。ユイちゃんは半そでワンピースなんて……ここは冬着を購入しないと!」

銀時「つーか、またトンキーホーテ行くんじゃないだろうな!?」

アスナ「次回! オシャレなんて自分が着たいものを着たらいいんだよ!」
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