剣魂    作:トライアル

118 / 159
SV楽しい~。


第百三訓 旅に厄介者は付き物

 さぁ、本日も始まりました。ふらふら途中下車の旅。今回旅する一般ゲストは、普段江戸の治安を守る特殊部隊のお三方です!

「真選組局長の近藤勲だ!」

「副長の土方十四郎だ」

「一番隊隊長の沖田総悟でっせ。そして」

「はーい! 今回旅のマドンナに選ばれたリーファって言います。一生懸命頑張るので、よろしくお願いします!」

 黒と緑の配色がとても綺麗ですね~。真選組に加えて、どうやら縁の深い天人女性が旅に加わるみたいです。

 それでは、一日の珍道中を宜しくお願いします~。

 

 

 

 

 

 

「はい、カット!  じゃ、このままバスに乗り込むので、その場で待機していてください」

 スタッフの掛け声により、ようやく気を抜かす近藤ら四人。現在彼らは大江戸バスターミナル付近におり、そこでテレビスタッフに囲まれながら旅番組の撮影を行っていた。

「いやぁ~。にしても、作り笑顔が一段と上手いっすね。普段から愛想よくすれば良いのに、ブラコン女」

「誰がアンタなんかに振る舞うのよ! 大体その態度が気にくわないのよ!」

「残念ですねぇ。それが俺なんで」

「はぁ!?」

「まぁまぁ、落ち着け二人共! 折角のロケなんだし、ここは一回因縁を忘れて楽しもうじゃないか!」

 撮影が一旦中断すると同時に、沖田、リーファ共に本音を交えた口喧嘩が始まってしまう。あまりの険悪さに、たまらず近藤が駆けつける始末である。

「おいおい。本当にこの先、上手くいくのかよ」

 相変わらずの仲の悪さを間近に、つい憤りを感じてしまう土方。撮影は始まったばかりであり、正直二人のいがみ合いがこれで終わるとは思えない。表情にも不安が滲み出る始末である。

 果たして真選組の身に何が起きたのか? 時系列は昨日にまで遡る……。

 

 

 

 

 

 

 とある日の真選組屯所。いつもと変わらぬ日々を送っていた真選組の元に、とある知り合いから一通の手紙が届けられる。

「何? 真選組に番組の出演依頼だと?」

「そうでっせ。路線バスで巡る散歩番組に呼ばれましてね」

「あのゲストだけで旅する番組にか。一体何故俺達に……?」

「さぁ。本来のゲストが欠席なり逮捕したから、依頼が来たんじゃないですかい?」

「縁起の悪いこと言うなよ」

 この手紙をきっかけにして、悩みを膨らませる近藤、土方、沖田の三人。手狭な部屋で密談を繰り広げていた。

 手紙を送って来た相手は大江戸放送局。以前にも、真選組密着24時などを担当したテレビ局である。色々揉めごとはあったものの、まさかの旅番組の出演オファーに驚きを隠せない近藤や土方。対して沖田は淡々と話を勧めていく。

「さて、どうしやすか。まぁまぁウチも好感度が悪くなってきているんで、以前のお通ちゃんコラボみたいにイメージアップを図りやすかい?」

「イメージダウンをしてるやつが言うことか……まぁ、俺は別に良いが。近藤さんはどうなんだよ?」

 沖田に小さくツッコミを入れる土方だったが、出演には渋々了承。土方も僅かには世間体を気にしている様子である。沖田はただ面白そうだからという理由で参加したい様だが。

 一方の近藤はと言うと、

「俺も大丈夫だが、一つだけ条件があるぞ」

「条件? 何かあったのか?」

「そうだ! この手紙に書かれている旅のマドンナに、お妙さんを連れてきてもらおうか」

「マドンナ?」

途端に条件を突き付けている。彼の言ったマドンナと言うのは、手紙の最後の部分。どうやら出演者をもう一人募集しているようで、真選組の三人に加えて紅一点の女子が望ましいとのこと。

 真選組側が決められるので、近藤は意気揚々と片思い相手の妙を指名していた。実現するかは分からずじまいなのだが。

「おい、近藤さん。流石に無理だろ。諦めろ」

「いや、最後まで分からないだろ! 番組出演と聞けば、お妙さんも目の色を変えて、来てくれるかもしれないだろ!」

「どっからその自信は湧くんだよ」

 土方から悟られてもなお、謎の自信で言い切る近藤。無意識に距離も近づかされており、意地っ張りな態度を続けている。

 対応に困った土方が頭を抱えながら、近藤の説得を続けようとした時だった。

「近藤さぁん。残念ながら拒否されました」

「へ?」

「ゴリラはバスじゃなくて、旭山動物園号に乗車してろって言われやした」

 携帯電話を持った沖田から、唐突にも出演拒否を伝えられている。どうやら沖田が直接妙に聞いたらしく、ありのままに思ったことを話していた。

 あまりにもあっけない結果に、近藤のテンションは急激に下がり、目も点に変わる。

「えっ? 無理なの?」

「いい加減諦めろ」

 現実を突きつけられて呆然とする近藤に、土方は容赦のない一言をかけた。彼が落ち着きを取り戻すには、まだまだ時間がかかりそうである。

「しかしどうすんだよ。マドンナって言っても、ロクなのが見当たらねぇぞ」

「最悪ザキを女装化させて、女って誤魔化しても良いですが……ちょうど良いヤツを見つけやしたぜ。今」

「何? 本当か、総悟」

「えぇ。じゃ、とっとと捕まえてきやすね」

 落ち込み続ける近藤を尻目に、マドンナ探しについて話す土方と沖田。無論真選組屯所には女子が居ないので、この時点で見つけ出すには難しい。さらに見知ったかの女子達は、一癖も二癖もある者たちばかりなので、とてもじゃないが頼りにはならない。

 最悪女装した山崎で通そうとも考えたが……沖田にはある妙案が浮かんでいた。彼は間髪入れずに、バズーカを手に外へ駆けだし、大空に向けて標準を定めていく。

 するとそこには、

「はぁ……今日の占い最下位だったし、朝からドンよりした気分なんだけど」

低速飛行で浮遊するリーファの姿が。彼女は柳生家の道場に向かう最中、今日の朝に見た占いの結果を異様に気にしていた。不運なことが起きるのではないかと、戦々恐々と気持ちを身構えている。

「こう憂鬱だと、悪いことが起きて欲しくないけど……ん? ぎゃぁぁぁあ!!」

 ため息を吐いて、ふと真横を向いた時であった。彼女の目に入って来たのは、こちらへ襲い掛かる黒色の網。見事に体へ絡みつき、瞬く間に身動きが取れない状態となっていた。

 もちろんこのトラップを仕掛けてきたのは、あの男しかいない。

「とったどー」

 そう。バズーカから網を放出した沖田総悟である。

「な、なにやってんだ!! 総悟ぉぉぉぉ!?」

 あまりにも身勝手な暴挙に、土方のツッコミも激しさを増す。それでも沖田は何食わぬ顔で接しており、申し訳ない気持ちがまったく湧いていなかった。土方と口論が巻き起こる一方で、リーファは状況を未だに分からず、網から必死に逃げ出そうとする。

「ちょ、誰!? 私を捕まえたのは!!」

「あぁ~俺でっせ。ちょいと黙っていてもらいやすか?」

「はぁ!? そっちから仕掛けてきて、何を言ってんのよ! 良いから出しなさい!!」

 沖田の声を聴くや否や、彼の怒りを滲ませるリーファ。何度も沖田の横暴に付き合わされている経験から、怒りの限界値がとっくに振り切れている。

 そんな最中、

「局長! ALO星から家出した男子の目撃情報が出ていて……」

タイミング悪く山崎が報告の為に部屋へ入って来た。彼は長らく行方が分かっていない天人の調査報告を、近藤らに向けてするつもりだったが――

「えっ?」

「お妙さん……来れないのか」

「うるせぇ。ブラコン。とっとと言うこと聞いてくだせぇよ」

「だったら網から出しなさいよ!」

「ていうか、この網! 首絞め用って書いているじゃねぇか! まさか俺か!? 標的は俺かよ!?」

現場は怒号が飛び交うカオスな光景に。山崎も報告どころではないと悟り、そっと扉を閉めて、何事も無かったかのように去っている。

 こうして旅のマドンナ決めは大いに難航したのだが、ある条件をきっかけにして、リーファは渋々承諾することになったのだ。

 

 

 

 

 

 

 場面は現在へと戻る。着々と撮影準備が進む一方、リーファは沖田に対して、昨日提案してくれたある条件のことを、念のために確認している。

「ねぇ、本当なの? お兄ちゃんの女装姿の写真をくれるって」

「もちろんでさぁ。まぁ、撮影が終わった時に渡しやすから」

 そう言うと沖田は、懐にしまってあった数枚の写真をリーファにちらつかせた。

 その正体は、なんとキリトの女装姿の写真。これは以前行われたかぶき町フレンドラリーで密かに撮られた写真で、彼の困惑する姿があられもなく残されている。

 どういう経緯で手に入れたかは分からないが、恐らく沖田はかまっ娘の面々を通じて、密かに入手したのだろう。

 その姿は意外にも可愛く、貴重な写真とのことで、リーファはまんまと彼の条件に乗せられてしまったのである。

「やっぱり可愛い……!」

「なんでい。お前そんな趣味あったんですかい?」

「ち、違うから! お兄ちゃんに変な噂が広まらないように、妹として尻ぬぐいしているだけよ!」

「いやぁ~。本音と建前が一丁前ですねぇ」

 沖田に煽られ続けるリーファだったが、本当のことなので上手く言い返すことは出来なかった。沖田も彼女の本音を見透かしており、写真を渡すまでまんまと遊ぶつもりである。

「おい、総悟にリーファ君! もう出発するぞ」

「とっとと来やがれ。早く終わって、ドラマの再放送に間に合わせるぞ」

「はいはい。じゃ、行きやしょうぜ」

「わ、分かっているから!」

 と二人が話している間にも、バスが到着。近藤、土方に呼び掛けられて、沖田らは急いで仲間達の元に向かう。

 こうしてリーファは、半ば強制的に真選組のイメージアップの為に巻き込まれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ~最初に真選組がやって来たのは、かぶき町。こちらのバス停からは住宅街が広がり、何やら珍しい店がわんさか構えているんだとか」

 別録りしているナレーションと共に、一行が降り立った場所はスナックお登勢近くのバス停。ここはかぶき町でも物静かな場所であり、個人商店がちらほらと見受けられる。

 無論真選組が訪れたのは、毎度おなじみのスナックお登勢であった。

「毎度お馴染み、スナックお登勢でさぁ」

「よりにもよってここかよ……」

 折角の撮影にも関わらず、変わり映えのしない場所に降り立ち、頭を抱える土方。何よりも銀時らと遭遇するのではないかと、内心冷や冷やしていた。

「ってことは、お兄ちゃんやアスナさんがいるのかな?」

「まさか万事屋へ行くのか? それはご勘弁ですねぇ」

「てか、目的はスナックお登勢だろうが」

 思いつき気味に呟くリーファに、沖田がそっと訂正を加える。沖田も今回ばかりは万事屋に邪魔されたくないようだ。主にリーファをいじる目的で……。

 そう店の前で、ぶつぶつと話していた時である。

「おい。店の前で騒いでいるヤツはどいつだい?」

「って、お前等は……」

 騒ぎを聞きつけたお登勢、キャサリン、たま、エギルの四人が、わざわざ店の戸を開いて、様子を見に来ていた。ここでようやく両者が目を合わせている。

「み、皆さん?」

「全員集合ってか。ん? まだ店ってやっていないのか?」

 近藤が問いかけると、たまがすぐに返答した。

「はい。スナックお登勢は本日も夕方から営業していますよ」

「いやいや、昼からやってなかったか?」

「ソレハタダノ勘違イデスネ」

 ついでにキャサリンも事を返す。

 どうやらスナックお登勢の営業時間は、夕方から夜のみだという。普段なら何事もなく引き下がれるのだが、今回ばかりはテレビロケが絡むため、簡単に諦めることは出来ないのだ。

「おいおい、どうすんだ。このままだと取れ高が皆無になるぞ」

「どうしゃしよう。俺が計画した「ブラコンを酔っぱらわせよう作戦」が、このままじゃお蔵入りになっちまいやすよ」

「って、沖田さん!? 何やらかそうとしていたの!? 警察が未成年飲酒を勧めるとか、イメージアップもへったくれもないでしょ!!」

 沖田の溢した計画に、盛大なツッコミを入れるリーファ。凶悪どころか、国の治安を守る警察らしからぬ暴挙に、彼女のツッコミもさらに激しさを増していく。

 と真選組が揉め始める一方で、たまらは徐々に真選組の背後に付いていたカメラマンやスタッフの存在に気付き始める。

「お登勢様。まさか真選組の方々は、テレビ番組のロケをしているのではないでしょうか」

「へぇー意外だね。それでウチの店を訪れたわけかい」

「だとしたら、何か持て成した方が良いんじゃないか? ウチの宣伝にもなるしな」

「ダッタラ試作品ノ料理ヲ、食ベサセルノハ?」

「そうだ。それにしよう」

 映りを気にしていたお登勢らは、宣伝も兼ねてちょうど作っていた新メニューの試食を思いつく。リーファらが言い争う間に、たまは新メニューの料理を真選組に向けて披露していた。

「真選組の皆さん、リーファ様。こちらを試してみてください」

「ん? 何だこの赤い串?」

「ALO星で仕入れた特殊なスパイスを用いた、特辛焼き鳥です」

「って、たまさん!? さり気なくとんでもないこと言わなかった!?」

 彼女が持って来たのは、明らかに危険な匂いが漂う焼き鳥。まんべんなく赤い粉が降りかかっており、見た目からも抵抗心を感じさせる。

 たまは平然とした表情で渡してきたが、真選組の面々は嫌な予感を察して、皆が渋い表情を浮かべてしまう。

「よりにもよって、辛い料理か……」

「土方さんならマヨネーズかけてペロリですよねぇ」

「誰がやるか! 明らかに危険だろ!!」

 沖田のいらぬ一言に、土方は反射的にツッコミを入れる。さり気なく土方へ試食係をやらせるつもりだったが、すぐに計画はバレてしまう。

「あの……たまさん。ご厚意は嬉しいけど、流石にこれは厳しいんじゃ」

「そうでしょうか。エギル様も食べましたが、あまりの美味しさに先ほどまで倒れこんでいましたよ」

「それ絶対辛くて気絶している方でしょ! 従業員からも被害が出ているってば!!」

 一方のリーファは慎重に焼き鳥の試食を回避しようとするも、たまは一切表情を変えずに試食を勧めていく。どうやらエギルも試しに食べた様子だが、美味しい……というよりはあまりの辛さに気絶したみたいだ。

 リーファのツッコミもさらに激しさを増していく。

「まだヒリヒリするな」

「大丈夫かい」

 疲れた表情で辛さが残っていないか確認するエギル。まだ取れていないようで、隣にいたお登勢からは心配される始末である。

 こう拒否を続けるうちにも、カメラは止まらずに撮影を続けていた。映りを気にするお登勢らに対し、辛いことは避けたいリーファら。なんだか旅番組よりは、芸人お約束のバラエティ番組っぽく雰囲気が変わっている。

「試作品なんだし、気張らずにここはスルーで……」

 とリーファが力押しで、試食を止めようとした時だった。

「ったく、情けないですねぇ。ここは俺がいただきやすよ」

「お、沖田さん?」

 後ろから這い寄るように、沖田が話に割り込む。一向に進展しない状況に痺れを切らしたのか、彼が試食役を名乗り出ていた。

「平気なの? めちゃくちゃ辛そうだよ!」

「大丈夫でさぁ。ここでたくましさを見せないと、イメージアップも遠のくんでねぇ」

 何気に心配しているリーファに対して、覚悟の決まった表情を見せる沖田。真選組のイメージアップの為にも、キツイことにも体を張る姿に、リーファも思わず見直そうとした時だ。

「いっけねー。手が滑った」

「へ? ……ギャァァァ!!」

 そんな期待は一瞬にして砕け散った。

 沖田は焼き鳥を手にすると、脱力感のある呟きと同時に、リーファの口元に無理矢理押し込む。当然この事態を予測出来ていなかったリーファは、なすがままに焼き鳥を口にしてしまい、あまりの辛さに叫び声を上げてしまう。その後も沖田のせいで無理矢理食べさせられてしまい、結局彼女だけが被害を受ける形となった。

「やっちゃったね」

「マジかよ……」

 受け狙いでやったとはいえ、本当に激辛焼き鳥を食べたことに、お登勢やエギルらはドン引き。思わず言葉に詰まってしまう。

 こうしてスナックお登勢で起きたハプニングは、全てカメラに収まってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ~。さっきのハプニングは良かったね! この調子でどんどんやっちゃって!」

「あぁ……」

「了解しやした」

 次のバス停まで移動中、テレビディレクターに先ほどの撮れ高を聞かされる近藤ら四人。沖田が一人で行った横暴だったが、彼は何事も無かったかのように当たり前に事を返す。

「ところでお前、大丈夫かよ」

「大丈夫なわけないでしょうが!! そこのドSにまたいじめられたんだけど!!」

「人聞きの悪いこと言うなよ。俺は番組を盛り上げるためにやってんですぜ」

「余計だわ!」

 リーファは未だに激辛焼き鳥の後遺症が残り、口の中ではヒリヒリ感に悩まされている。沖田からの謝りもなく、彼への不信感は募るばかりであった。

 一触即発な雰囲気に、近藤らが話に割って宥めようとした時である。

「それじゃ撮影しまーす! よーい」

 突然カメラマンが撮影を指示。この険悪な雰囲気をカメラに収めようとしたところ……

「いやぁ~。中々に辛かったですねぇ」

「本当! 辛党派にも大満足のお店でした~!」

 沖田、リーファ共に態度を急変させていた。沖田は一段と馴れ馴れしく。一方のリーファは、にこにことした笑顔を振る舞う。それから二人は距離を縮めながら、店の印象やら宣伝を露骨に始めていく。目は頑として笑っていなかったが。

「なんだこの変わり様」

「トシ。リーファ君も映りを気にしているんだよ」

「だとしても早すぎだろ」

 所謂気を遣ったのように思われるが、それにしても変わり身は早い。二人の性格は違えど、根本の部分は似ていると近藤、土方は密かに感じていた。

 場の空気を読みながら、一行は次なるバス停へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

「続けてやって来たのは大通〇番地。甘味処が集まる、女子達注目のスポットです!」

 次に真選組の面々がやって来たのは、かぶき町近くのとある大通。ここでは甘味処(スイーツ店)が集い、若者からも最近注目されているとのこと。

 早速四人は、近くで撮影出来そうなお店を選別していく。

「この近くにあるのは……」

「確か前に言った団子一筋の店があったな」

「おっ! そこにしやしようぜ」

 近藤らが目に付けたのは、目の前にある団子屋。ここはかつて閉業する寸前まで追い込まれたが、とある番組をきっかけに経営が持ち直されたお店なのだ。以前にも近藤が訪れたらしく、全員がこの団子屋へ興味を持ち始めている。

「すいませーん。いるか?」

 のれんをくぐり抜けて、全員が店内へ入った時だった。

「なんだ? 今親父は大量注文で忙し――はぁ?」

「お、お前!?」

 なんと彼らは、思いもしない見知ったかに遭遇していた。目にしたのは、割烹着姿の坂田銀時。真選組にとっては会いたくもない相手である。

「なんでてめぇがここにいるんだよ!」

「それはこっちの台詞だ。なんだよ、こんなにモブを連れてぞろぞろと。レイドバトルでもする気か、コノヤロー」

「んなわけないだろ! つーか、ロケ中だって分かれや!」

 その証拠に、土方は銀時を見るや否や機嫌を悪くする。両者共喧嘩腰のまま接しており、相変わらずの罵倒合戦が始まってしまう。

「あの人は知り合いなんですか?」

「知り合いというか……会いたくなかった人というか」

 状況を飲み込めず、テレビスタッフの一人が近藤に話しかける。近藤本人も銀時らとの関係は複雑だと理解している為、思ったままのことをテレビスタッフに返していく。

「へぇ~。これは面白いことになりやしたねぇ」

「そんな呑気なこと言っている場合!? 早く止めないと喧嘩が……」

 一方の沖田は不謹慎にも、この状況を面白がっていた。笑いを堪える姿をよそに、リーファは心配して、喧嘩寸前の二人を止めようと試みる。

 すると、

「どうしたんだ銀さん?」

「何か迷惑なお客さんでも来たの?」

「あぁ! リッフーに税金ドロボーがいるアルよ!」

「随分と変わった組み合わせですね」

銀時だけではなく、キリト、アスナ、神楽、ユイ、新八ら万事屋の面々も次々に入り口前まで駆けつけてきた。

「お兄ちゃんにアスナさんまで!?」

「万事屋全員集合かよ」

 薄々感じていた予感が当たり、改めて驚きの声を上げるリーファ。一方で真選組の面々は、揃いも揃った万事屋に土方と同じく嫌な予感を察し始めた。

「てか、みんなはここで何をやっているんだ?」

 ひとまず近藤が、団子屋に万事屋がいる訳を聞いてみる。

「何って、団子屋の手伝いですよ。今日の夜開催される近くの結婚式場で、団子を四百個作らなくちゃいけないんですよ」

「どんな結婚式だ」

 新八からの返答に、土方はボソッとツッコミを入れた。どうやら万事屋は、団子屋の大量発生の手伝いに駆り出されているらしい。どれも結婚式に仕入れる団子らしい。

「というわけだから、テメェらの相手をしている暇はねぇんだよ。ほら、帰った。帰った」

「いや、待てや! こちとら手ぶらで帰るわけにはいかないんだよ!」

「そうそう! テレビカメラもあるし」

「旦那ぁ。一本くらい分けてくれやせんかねぇ」

「カメラ……? あぁ、そういうことか」

 任された仕事を優先的に考えて、真選組を追っ払おうとした銀時だったが、リーファらの一言で彼はようやくテレビカメラの存在を改めて知る。

 取れ高を意識始めた銀時は、ここである妙案を思いつく。

「じゃ、しょうがねぇ。ここはクイズに正解したら、団子を食わしてやるよ」

「クイズだぁ!? 素直に渡せや、天パ!」

「番組を盛り上げる為にもイベントは必要だろ? 良いからとっとと答えやがれや」

 なんと意外にもクイズ形式で団子の試食を決めることに。雰囲気もバラエティ寄りに変わっている。

 気が進まない土方らだったが、空気を読んで銀時からのクイズを受けて立つことに。彼らしい意地悪な問題が無いことを祈るが……。

「それじゃ問題はこれだ。ダックの正式名称を答えやがれ」

「ダックって誰だよ」

「それはテメェらで考えろ」

 クイズの内容は実にシンプル。正式名称を答えるようだが、そもそもダックが何なのか、真選組やリーファらは分かっていない。

「普通に考えたら、某夢の国のキャラクターじゃないの?」

「そうですねぇ。てか、お前の世界にも存在してたんでい?」

「えっ? この世界にもいるの!?」

 リーファは素直にも某世界的に有名なキャラクターを思い浮かべていた。沖田らにも通じていることが、今日一番の衝撃である。

「じゃ、もう確定だな。正解はドナルドダッ……」

「待て。ヤツは正式名称を答えろと言った。ってことは、そう簡単な問題じゃないはずだ」

 先走って土方が答えようとしたところ、近藤から食い気味に止められてしまう。彼の言う通り、クイズの出題者は銀時。素直に正解を出さないのは目に見えている。だからこそ、予測の予測まで考えなければならないのだ。

「となると?」

「おい、リーファ。お前のいた世界では、ダックの本当の名前はなんだった?」

「えっと……確か間に、フォントルロイだったはず。これで合っているかは、分からないけど!」

 リーファは持てる知識を武器に閃き、ドナルドダッ〇の本名を思い出す。果たしてこの名称で合っているのか。

「なら、そいつで行くぞ。おい! 正解はドナルド・フォントルロイ・ダッ〇だ!」

「本当に良いのか?」

「あぁ、二言はねぇ!」

 迷いなく言い切った土方。銀時のにやにやした顔つきにイラつきを覚えながらも、リーファから託された答えを信じ切る。

 すると銀時はキリトに話しかけてきた。

「おい、キリト。お前が答えを発表しろ」

「俺か? えっと確か……モンタギューだったか?」

「へ?」

「はぁ!?」

 正解発表を伝えたキリトだったが、予想外の返答に驚きを隠しきれない一行。少なくとも某夢の国のキャラクターでは無さそうだ。

「お前等分かってねぇな。正解はモンタギューだ。ダックって言ったら、緑色の機関車に決まっているだろ」

「いや、初めて聞いたわ! モンタギューって誰だよ!! つーかお前、最初から答えさせる気無かっただろ!!」

「ダックって聞いて、某夢の国を連想するのが間違いなんだよ! 少しは深読みしろ」

「うるせぇ! どこまでひねくれてんだよ、てめぇは! その腐れ切った根性を、叩き直してやる……!!」

「あんだとごらぁ!!」

 銀時からの正解発表に、盛大なブーイングを上げる土方。意地悪を通り越した盛大な勘違いには納得がいかず、あまりのひねくれぶりに激昂を上げる。今回も二人の喧嘩は一向に収まりそうにはない。

「どういうことなの、お兄ちゃん?」

「いや、俺も最近知ったんだが、あの機関車の本名ってモンタギューって言うらしいな」

「機関車……? 夢の国のキャラクターじゃないの!?」

「えっ? 同じ名前のキャラがいるのか?」

 一方でリーファは、キリトに答えの真相を突き止めていた。どうやらキリトは本気で誤解していたらしく、認識の違いを彼女は間近で痛感している。むしろ夢の国のキャラクターが思いつかない方が衝撃的だったが。

「私は知っているけどね」

「たまたまキリが知らなかっただけアル」

「運が悪いというか。タイミングが悪いというか」

 アスナ、神楽、新八と往々に苦笑いをしながら声を上げている。何気に仲間達もリーファと同じ衝撃を感じていた。

「こんなのズルいぞ! 不戦勝で団子は頂こうか!」

「そうでっせ。流石の俺もここまでやる……」

 そして近藤や沖田もクイズの結果には納得がいかない。銀時にケチを付けながら、団子をさり気なくたかろうとした時である。

「ん? どうした総悟?」

「いや、気のせいですねぇ」

 近藤は沖田の急に澄ました表情が気になっていた。沖田はなんでもないと括っていたが、当の本人は薄々と嫌な予感を察し始めていく。

(今の気配は……)

 テレビスタッフではない人物が近くにいる? 果たして沖田が気付いた気配は……?




 思ったよりも早く作成できたので、11月中に投稿出来ました!
 今回は真選組の旅番組。と言っても行き当たりばったりのゆるーい旅ですが笑

 お話もいつもよりはテンポよく進めていて、コンパクトにまとめました。それにしても、真選組のイメージアップに付き合わされるリーファが可哀そう。不憫な目しか合っていないし。

 そして謎の人影の正体は、次号明かされます。

 後は余談ですが、当初の予定ではリーファだけ初の真選組女性隊員として、基本は真選組に所属で考えていました。しかし女子一人をあの屯所にぶち込むのは鬼畜だの、女子メンで揃った方が楽しいだの、色々考えた結果今の形になりました。逆に三期終了以降ならアリスが入ってそう……。

 さて、次回は12月公開予定。同人イベントもあるので、併せて頑張ります~。






次回予告

リーファ「何か追いかけている人いない?」

沖田「ファンなんじゃないですかい?」

近藤「何!? 俺の真似事をしているヤツがいるのか!」

土方「近藤さん。少しは自重しろ」

リーファ「次回! 旅にハプニングは付き物!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。