剣魂    作:トライアル

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皆さま、本当にお久しぶりです。
こちらに投稿するのを、すっかり忘れておりました……


第百四訓 旅にハプニングは付き物

 旅番組のロケが始まって、早くも数時間が経とうとしていた。

 朝から続いていた撮影は順調に進み、銀時らと遭遇した後もかぶき町の有名な場所を四人は訪れている。

 行く先々で沖田の嫌がらせを受けるリーファだったが、段々と撮影自体が楽しくなり、そんなことはもうすっかり気にしなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 番組のロケは終盤に差し掛かっており、バスはいよいよ最後の地点である銭湯屋付近のバス停に向かっている。

「あぁ~疲れた」

「何ぃ、気を抜いているんでい。もうそろそろカメラが回る時間でっせ」

「いや、一体誰のせいで疲れ果てていると思っているのよ! 沖田さんがいちいちちょっかいをかけるから、こっちが思わぬ痛手を負っちゃうのに!」

 他人事のように呟く沖田の態度が我慢できず、つい怒気を上げてしまうリーファ。疲れた表情から一変。一瞬にして眉間にしわを寄せるほど怒りを覚えてしまう。

「そうですかい? お前が気にしすぎているだけじゃないんでさぁ?」

「アンタねぇ! いい加減にしなさいよ。そもそも事の始まりは、勝手に私を――」

 沖田の何食わぬ態度に増々怒りを募らせるリーファ。またしても起きた一触即発の危機。見かねた土方と近藤が彼らを止めようとした時である。

「それではカメラ回します~! よーい!」

 空気を読まずにテレビスタッフが撮影を指示。すると、

「にしても次は銭湯ね! 沖田さんは楽しみなの?」

「まぁ、人並みには。俺もよく通っているんでねぇ」

「へぇ~。沖田さん御用達の銭湯なんですね」

「でっさ」

二人の喧嘩は途端に跡形もなく消えていた。リーファは笑顔を振りまき、沖田は落ち着いた様子で応対する。傍から見ればただの別人であった。

 今日一日彼らのテレビ映りを意識した姿勢に、近藤、土方両者共に開いた口が塞がらない。

「おい、アイツ増々テレビ慣れしてねぇか」

「変わり身の早さは一級品だな……将来は女優になれるんじゃないか?」

「いや、それは言い過ぎだ」

 近藤も思わず大袈裟な表現で評してしまう始末である。そんな二人も空気を読みながら、沖田らの会話に自然と合流するのであった。

 場は和気あいあいとした雰囲気。何の不安も無いように思えるが……実はリーファ以外の三人は、密かにある口合わせを行っていた。

 

 

 

 

 

 

 ……それはリーファが一人でトイレ休憩をしていた時だった。カメラが回っていない中、沖田は土方らに自身の感じた違和感を明かしている。

「あぁ? 誰かに付けられている?」

「そうでっせ。団子屋付近から、妙な気配を感じていましたねぇ。きっと俺達を付け狙っているんでしょう」

「おい、総悟。それって本当なのか? 何かの見間違いじゃないのか?」

「俺もそう思いやしたが、さっき行った店に足跡らしきものを見かけたんで、可能性としては高く思いますがね」

 突然の彼の証言に思わず耳を疑ってしまう二人。いつもの冷やかしかと思ったが、沖田のただならぬ雰囲気から恐らく本当のことだと察している。

 沖田曰く自分らに尾行している者がいるらしく、今もなおついてきているとのこと。証言が気になって仕方ない土方らは、さらに沖田から情報を深堀りしていく。

「その尾行犯ってのは、どんな特徴があるんだ?」

「断言は出来やせんが、恐らく透明人間ですねぇ」

「透明? 本気で言っているのか?」

「根拠ならありやすよ。さっき俺達の立ち寄った神社で、勝手に物が動いたでしょう」

「あぁ~。あのことか。でも何かの間違いじゃなかったか?」

「風のせいだったとしても、あそこまで不自然な動きはしねぇと思いますがねぇ」

 彼からの情報を頼りに、透明人間の正体を突き止めようとする近藤ら。沖田の話を聞くうちに、増々その疑惑が強まっていく。

「どうするトシ。仮にこの仮説が本当だとするなら、俺らやリーファちゃん達に危害があるかもしれんぞ」

「厄介なことになったな。スタッフに言ったところで、まともに取り扱ってくれるか」

 共に頭を抱える中で、ふと沖田が声を上げる。

「近藤さん、土方さん。ここは一つ手があるんで、俺に任せてもらっても良いですかい?」

「総悟。何か手があるのか?」

「ありまっせ。とっておきのが。既に銭湯屋にも連絡はしているんでぇ」

「……連絡?」

「お前何か変なこと企んでねぇか?」

「さぁ。想像にお任せしやす」

 どうやら沖田には、尾行犯を特定する手立てを既に思いついているという。独自に動く沖田に嫌な予感を感じていたが、二人は沖田を信じて一任することに。一方の沖田本人は、少しばかり不敵な笑みを浮かべていたのだが……。

 

 

 

 

 

 

 場面は現在へと戻る。

「透明人間なんざ、なんでこのタイミングで現れるんだよ」

「俺達を狙っているのか。はたまたリーファちゃんを狙っているのか」

「どっちにしても厄介なことこの上ねぇよ」

 土方や近藤はボソッと小声で、今回の一件について憂いていた。ロケ番組の撮影という普段とは違う環境で尾行されるとなると、そう易々と表立った動きができない。さらに尾行犯の目的が、真選組かリーファなのかも現状は分かっていない。テレビスタッフを含めてパニックが起きないように、慎重に進めていく方向である。

 そんな中、真選組に乗ったバスにとある部外者が近づいていた。

「ん? なんですか、アレは?」

「アレ……って!?」

「はぁ!?」

 テレビスタッフが気付き、彼が指を指した方角には――トラックの荷台から睨みを利かす桂、エリザベス、クラインの攘夷志士達が乗り込んでいる。あまりにも突飛な展開に、一行の理解は追いついていない。

「おい、どういうことだ! これも演出か!?」

「知るか! おい、総悟! まさか追いかけてきたのって」

「いいや、違いますねぇ。あの三バカトリオじゃないでさぁ」

 てっきり尾行していた犯人の正体かと思いきや、沖田曰くまったくの別件らしい。それでも安心できない状況なのだが。

「見つけたぞ、真選組!」

「よくも俺を指名手配にしやがったな! 絶対許さないからな!!」

[復讐じゃぁぁ!!]

 一方の桂らは意気揚々と憎悪を滾らせている。特にクラインは最近指名手配されたばかりであり、異様に声を荒げていた。バレたのは自身の落ち度が原因ではあるが。

「おい、あいつ。もう遠慮なく攘夷志士になりやがったな」

「ある種のロマンチストですねぇ」

「クラインさん、何やってんの……」

 完全に攘夷志士とした化したクラインの姿を目の当たりにして、一応知り合いであるリーファは頭を抱えてしまう。かつてのパーティーメンバーが、元の世界へ戻れずに、この世界で牢屋に入れられている様子が、想像に難くなかったからだ。呆れを通り越して、もはや声すら上がらない。

 そんなことはさておき、近藤はあることに気が付く。

「おい、みんな! 次のバス停で止まるぞ!」

「へ?」

 桂達に気を取られている隙に、目的地である銭湯前のバス停へもうすぐ辿り着こうとしていた。当然一般客も乗っているので、必ずバス停に止まらなくてはならない。

「開いたな」

「よしっ、今だ!」

 バスの扉が開くと、桂達はトラックの荷台から降りて、一目散に近藤らの乗るバスまで突撃していく。彼らにしては珍しい真選組との正面衝突を起こそうとしているのか……?

「おい、てめぇら! 桂一派が乱入するぞ! 早く戦闘態勢に――」

 異変に気付いた土方は、仲間達へ速やかに戦闘態勢を指示。リーファも思わずつられて剣を構えようとした――その時である。

「くらえぇぇ!!」

 迫力のある剣幕で桂らが襲来。彼らが起こした行動は、

(デデーン! 全員アウト―!!)

「……はい?」

「「さらば!」」

[ケツバットにしばかれろ!!]

全員の予想を大いに下回るものだった。彼らは特殊なブザーを鳴らして、某大晦日で行われる特別番組の演出さながらの行動をとった後、何事も無かったかのように去ってしまう。

 もしかすると真選組が、〇ってはいけないのロケに参加していると誤解したのかもしれない。強制的に例の音を鳴らして、真選組の面々をケツバットさせるのが今回の目的だろうか。やることをやって満足げな桂達だったが、対照的に土方らは桂達の行動をまるっきり理解出来ていなかった。

「な、何しに来たんだ!! アイツらァァァ!!」

「番組思いっきり間違えてやすけどね」

「……バカなの?」

 バスの中には盛大なツッコミが無常に鳴り響く……

 

 

 

 

 

 

「さぁさぁ、最後に真選組一行が訪れたのは銭湯! 地元民からも愛される町情緒溢れる憩いの場です!」

 別撮りのナレーターの進行が終わりに近づく中で、最後の目的地となったのはかぶき町にある一軒の銭湯。古風な雰囲気が漂う昔ながらの銭湯で、真選組の面々も密かに通いつつある穴場スポットでもある。

「懐かしいですねぇ。ここあの屁恕絽一家と会った場所ですよ」

「思い出したくもねぇよ。苦労以外の何者も残ってねぇわ」

 沖田の呟きに反射的へツッコミを入れる土方。彼の言う通り、この銭湯は前に屁恕絽一家と遭遇した場所。リーファ以外の三人にとっては悪夢のような出来事である。当然こんなことが今日に限ってまた起きるとは思いたくもない。

「何があったの?」

「突き詰めるな、リーファ君。女の子には関係の無い話だ!」

「だから何があったの……」

 テンションの下がる近藤らの姿が気になり、思わず聞いてみたリーファだが、結局は分からずじまい。ただなんとなく男湯でくだらない騒動に巻き込まれたと予測する。大方合っているようなものだが……。

 すると沖田はリーファに対して、唐突にもある忠告を伝えている。

「おい、ブラコン」

「な、何? まさか風呂覗くとか言うつもりじゃないでしょうね!?」

「んな真似、警察がするかよ。それよりお前に一つだけ忠告しておきやす」

「忠告?」

「何か違和感を覚えたら鏡を叩け。些細なことでもな」

 てっきりまたからかわれると思ったリーファだが、沖田の神妙な表情を目にしてある違和感を覚えてしまう。この言葉だけはおふざけに聞こえないのだ。

 リーファなりの直感に、何か嫌な予感を察し始める。

「鏡? さてはドッキリでも仕掛けているつもり?」

「さぁな。だが俺は忠告しておきやしたから。まぁ、お気楽に行きやしょうや」

「ちょ、ちょっと!?」

 そうぶっきらぼうに言い残すと、沖田らは何も言い残さずに男湯へ直行。結局事の真相は聞けぬ時舞いであった。

「本当に危ないの……? いやいや、沖田さんのことだからアレも演技じゃないの? でも……」

 素直に信じたくとも、沖田のことだから無暗には信じられない。小さな悩みを抱えたまま、彼女はたった一人で女湯へ足を踏み入れていく。ちなみに風呂場の撮影に関しては男性陣が中心となるらしく、リーファは後回しとなる様子だ。

 そんな一人となったリーファの跡を付けるように、謎の存在が誰にも気づかれぬまま、密かに女湯へと入るのだった……。

 

 

 

 

「いやぁ~最高の湯加減だな!」

「屁恕絽一家が居なくて良かったですねぇ」

「そう二度も起こるかよ、あんなこと」

 湯船につかりながら、ロケそっちのけで雑談に勤しむ三人。気分も安らぎ、至福の一時を過ごしていた。

「近藤さんは全裸の方が良いんじゃないですかい?」

「いやいや、流石に全国ネットだから。俺だって抵抗するさ」

「じゃ、ローカルなら良いのかよ」

「かもな! ハハ!」

 他愛のない一声に、皆がクスッと笑ってしまう。ロケと言うことで、全員が腰にバスタオルを巻いたまま銭湯に入っていた。

「はいカット! まだ湯船には入っていてくださいね!」

 ここで撮影が一旦中断。先ほどまで撮った録画データを、テレビスタッフ側は適宜確認している。

 その最中で、真選組の面々は例の話題を再開させた。

「ところで総悟。結局尾行犯ってのは、リーファが狙いだったのか?」

「恐らくでっせ。なんせアイツ、気配を消したまま女湯に入りやしたからねぇ」

「なんだと! 俺でさえ中々出来ないことを……!」

「近藤さん。こんなこと撮影中に言ったら、一気に炎上もんですよ」

 沖田の推測通り、尾行犯はリーファを狙っていた。彼らが男湯の入り口へ入った直後に、リーファの入った女湯の入り口から不自然な風の流れを確認。これで沖田は確証が持てたらしい。近藤だけは私怨をただ呟いていただけなのだが……。

 撮影班も入っていない為、現在のリーファは丸腰状態……かに思われたが、沖田には既に秘策を用意していた。

「でも安心してください。予め仕掛けは置いときやしたから」

「仕掛け?」

「とびっきりのヤツでさぁ。流石のブラコンも気付くはずですけどねぇ」

 先ほどまで飄々としていた沖田の表情は、そう言った途端に変貌。不敵な笑みを浮かべて、その秘策が発動しないか今か今かと待っていた。

 一方のリーファはというと、

「ふぅ~疲れがとれる」

一人銭湯の湯に浸かっていた。テレビスタッフと銭湯側から、バスタオルを巻く許可は頂いているので、遠慮なく上半身に巻いて入浴。いつ撮影班が来ても良いように、気遣いしていた。それでも今は、沖田のいたずらを気にすることなく、至福のひと時を過ごしている。その表情は幸せそうににんまりと笑っていた。

「さて、そろそろ来るかな。ん?」

 テレビスタッフが来る予感がして、気持ちを入れ替えようとした時である。

(えっ? 今湯船に何か入っていなかった……?)

 明らかに感じた何者かの気配。最初は気のせいかと思いきや、不自然な湯船の動きを彼女は確認。ここでようやく異変に気付き始めた。

(何かいる……そうだ! 沖田さんに伝えないと!)

 内心で恐怖を感じた彼女は、すかさず沖田の忠告を思い出す。湯船から上がり、男湯側の壁に向かって強くノックしていた。

〈コンコン〉

「おっ、リーファ君じゃないのか?」

「黒でしたか。それじゃ」

「おい、総悟。そのリモコンはどっから出した?」

「些細な事ですよ。んじゃ、ポチっとな」

 リーファからの合図を察した沖田は、自身の近くにあった防水加工用のリモコンを取り出す。そのリモコンを操作してボタンを押すと、女湯側に設置したある仕掛けが動き出した。

〈ギャァァァ!!〉

「へ!? 誰!?」

 叫び声が聞こえてリーファが後ろを振り向くと……そこには一台のドローンが飛んでいた。ドローンから飛び出した網が、透明化していた何者かを捕まえ、そこからさらに強く締め付けられていく。異様な光景だが、リーファはようやく自分が何者かから狙われていることに気付くのであった。

「今、女湯から声がしなかったか!?」

「心配ないでさぁ。尾行犯は今頃、特殊ドローンの餌食を受けてやすから」

「いつの間にそんなの設置したんだよ……」

「なぁに。ここのババアに事情話したら、すんなり引き受けてくれやしたよ。ついでに男湯にも設置してやすから、使いやすか?」

「誰にだよ! まさか俺か!? 俺に使う気じゃないだろうな!!」

 そう。ドローンを仕掛けたのは、紛れもない沖田本人である。彼は事前に銭湯側に事情を話し、男湯、女湯の両方に仕掛けを設置しておいたのだ。用意周到な沖田の作戦に、近藤、土方は若干気が引けている。仕掛けた張本人は、何食わぬ顔で飄々と語っていたが。

「そ、それよりも! リーファ君の元に向かうぞ!」

「だな!」

 尾行犯がようやく尻尾を出したことで、近藤ら三人は腰にタオルを巻いたまま、叫び声の聞こえた女湯へと駆け出す。とりあえずはリーファの無事を一目散に確認することに。

「おーい、ブラコン大丈夫か? のぼせてないか?」

「そっちじゃねぇだろ! それより尾行犯の方に集中しろ!」

 軽口を叩きながら女湯へ入ると、そこにはリーファと網に捕まった透明人間しかいない。幸いにも他の客はいない様子だ。

 リーファも沖田らを見かけると、すぐに話しかけてくる。

「お、沖田さん! 何かが湯船に入ってきて……」

「やっぱり。正体を見せやがれ、変質者!!」

 そのまま彼は網を掴んで、勢いよく透明人間に向かって蹴りかかった。すると、ようやく尾行犯の姿が露わとなる。

「ぷはぁぁ~」

 気の抜けた声を上げて、倒れこむ尾行犯。その容姿は緑色のマッシュヘアーで、背丈は小さめ。民族風の衣装を着た幼さの残る男子だった。耳もとんがっており、地球人ではないことは明らか。近藤、土方、沖田らは睨みを利かせながら、尾行犯の様子をじっと眺めていた。

 一方でリーファはというと、

「ん? ぇぇえ!?」

大袈裟に驚嘆としていた。なぜならば、尾行犯の正体が知り合いにそっくりだからである。

「レ、レコン……!?」

「はい? なんで僕の名前知っているの!?」

 そう。彼は銀魂世界で生きるレコンだったのだ。元の世界ではリーファのゲーム仲間で、キリトらの窮地も救ったことのある勇敢な性格の持ち主なのだが……この世界の彼は、なぜかストーカーまがいのことをしている。予想だにしなかった遭遇に、リーファは本人なのか他人の空似なのか、この時はまったく想像が付いていなかった。

 一方で土方らは、レコンと聞いた瞬間にある件について思い出している。

「レコン? なんか聞いたことあるな」

「あっ! 山崎の言っていたALO星の家出少年のことじゃないか!」

「おいおい。こんなところで結びつくのかよ」

 近藤の一言により、レコンがALO星の家出少年だとようやく結び付けていた。山崎の情報で数日前から目撃情報があり、真選組の一部の隊士も捜査に乗り出そうとしたところである。まさかこのロケ中に遭遇するとは、誰も思っていなかったところだが……。

 そんな中で沖田はリーファに近づき、落ち着かせながらレコンとの関係性について探っている。

「というかブラコン。お前こいつのこと知っているのか?」

「知っているも何も、元の世界で一緒にした……いや、待って。もしかして、この世界のレコンなの?」

「あーあ、そのパターンですかい」

 リーファ本人も段々と冷静さを取り戻すと、目の前にいるレコンが本人ではなく、この世界の住人側だと予測している。ユウキといいシウネーといい、この例はALO星で散々見かけてきたことだ。沖田もすぐに理解する。

 その一方、名指しされたレコンは、自分の内情をベラベラと話し始めていく。

「言っている意味がよく分からないけど、僕はALO星の天人だよ!」

「じゃ、本人とは違うのね……じゃなくて! なんで私に尾行していたのよ!!」

「それは……告白のタイミングを伺っていたからだよ!!」

「はい?」

 別人であることが明かされたのと同時に、彼はリーファを追っていた理由を明かした。告白という斜め上の展開に、リーファや沖田らは言葉に詰まってしまう。

 彼は場の雰囲気に関係なく、告白までに至った経緯を明かしていた。

「僕は見たんだ! 君、いやリーファさんが数多の怪人たちをばっさばっさとなぎ倒すところを! 鏡に囚われていた僕にとっては、まさに君は希望に見えたんだ! そして僕は君に惚れたんだ!」

「あん時の戦いか」

「そこでこのブラコンを知ったってことですかい」

 どうやらレコンはALO星で起きたクーデターに巻き込まれていた様子で、アルンで怪人の襲撃に遭遇し、鏡の世界へ他の住人もろとも捕まっていたとのこと。囚われの身となった中で、鏡の先に見えたリーファが、マッドネバーの怪人達を次々と倒す姿を見て、勇気づけられたと語る。そこで彼女に惚れたらしい。

「残念ながらパーティーには行けなかったけど、リーファさんが地球で過ごしていることは知ったんだ! それで家出をして、無理やり地球まで来て、君たちをずっと尾行していたんだ! いつでも告白できるようにね!」

 リーファにどうしてもお礼と告白をしたかったようで、諦めきれず家出をしてまでこの地球にやってきていた。言葉の口調や仕草から自信満々さが見てとれて、狡猾さや卑しさよりも少々の馬鹿さ加減を皆感じ取っている。

「それってストーカーだろ」

「アンタが言うな」

 普段妙を尾行している近藤ですら正論を言う始末だ。土方にボソッと突っ込みを入れられてしまう。

 するとレコンは、急に口調を変えてくる。

「なのに……見れたのは、君がそこの沖田って人といちゃつくところだけ。もしかしてリーファさんって、この人と付き合っているの!?」

 どうやらリーファにずっとちょっかいをかける沖田が気がかりだったようで、二人の関係性が気になって尾行していたとのこと。てっきりが二人が恋仲になっていると勝手に誤解していた。リーファにとっては、ただのとばっちりでしか無いのだが……。

「いや、沖田さんとは……」

 と彼女が本当のことを言おうとした時である。

「そうですねぇ。一応俺の婚約者でさぁ」

「えっ!?」

「はぁ!?」

 沖田はリーファに近づき、レコンへ向かって堂々と婚約者宣言を言い放つ。突拍子もない一言に、リーファとレコンは同時に驚嘆。近藤と土方は苦い顔をして、沖田の様子を静かに伺っていた。

「大体姿を消したまま女湯に入るなんざ、告白以前に常識が無いんじゃないですかい」

「それは……折角の機会だし、リーファさんの裸を見たかったんだよ!」

「はいはい。それが動機ですかい。なんなら建造物侵入罪で現行犯逮捕でさぁ」

「えっ!? そ、それだけは勘弁を……!」

「いやぁ~、でも俺警察なんでね。江戸の風紀を乱す奴は、問答無用で粛清対象なんでさぁ」

「ひぃ!!」

 沖田の正体が警察と聞くと、レコンの顔色は段々と青ざめていく。ここでようやく自分に勝ち目がないと悟ったようだ。

「じゃ、二度と俺の女に近づくなよ。とっとと諦めて、別の女のケツ追いかけろやぁ」

「は、はい!! も、申し訳ございませんでした!!」

 沖田は余裕ぶった表情のまま、レコンをけん制。分が悪くなった彼は、素直に土下座して今までの所業を謝罪する。彼の突飛な作戦が、尾行事件と行方不明者の保護の二つの案件を解決していた。

「近藤さん、土方さん。とりあえず、ロケが終わったら事情聴取でさぁ」

「そうだな。洗いざらい吐いてもらおうじゃねぇか」

「まったくだ。男の風上にも置けないぞ!」

「だからアンタが言うなよ」

 沖田のパフォーマンスが終わると、近藤と土方はレコンを一旦確保し、更衣室まで移動させる。出来心で尾行していたものの、事情を聴いてから今後の処罰について決める方針だ。ALO星への強制送還は確実であろう。

 一方でリーファは、窮地を救ってくれた沖田にありのままの感謝を伝えている。

「あの、沖田さん」

「なんでい」

「ありがとう、沖田さん……私のこと、守ってくれて。結構かっこよかったよ」

 嘘とはいえ、自分のことを守ってくれた沖田にはかっこよさを感じていた。彼なりの正義があると感じ、改めて見直している。リーファの純粋な気持ちに、沖田は顔色を変えずに淡々と事を返す。

「別にテメェの為にやったわけじゃないんでねぇ。あの男をとっちめたかっただけでさぁ」

「またまた~。沖田さんってば」

 軽口を叩きつつも、リーファは沖田の真意を見抜いている。長い付き合いから、彼の素直じゃない一面は図らずも分かりつつあった。今はただ沖田への感謝で心がいっぱいになっている。

 珍しくも良い雰囲気が続く中で、沖田はあることをリーファへ予め伝えていた。

「あっ、それともう一つ」

「何よ。なんかまたあるの?」

「今の一部始終、撮影されてやすよ」

「えっ?」

 と沖田に言われて左を向くと……そこにはテレビスタッフが複数人いた。カメラマンもおり、先ほどのレコンとの一件が丸々撮影されていたことを、二人は知ることとなる。

「カット!! 良いね、最後は密着24時風になったけど、全然よかったよ! これで撮影は終了かな?」

 スタッフの一人が撮影終了を指示し、リーファや沖田らには撮れ高があったことを威勢よく伝えていた。撮影されていたと知り、リーファは段々と悪寒を感じるようになる。

「まさか……さっきの会話全て撮られていたの!?」

「さぁね。すべては放送日で分かるんじゃないですかい」

「……ちょっと、スタッフさん!! 今の無し! お願い、カットして!!」

 沖田の嘘の婚約者宣言、並びに屈託のない感謝を伝えるシーンも撮られていたとなると、リーファは恥ずかしくて仕方が無かった。何より関係ない人からすれば、意図しない誤解を与えかねないからである。リーファは必死にテレビスタッフを説得する中で、沖田はその様子を少しばかり面白がっている。

「やっぱ面白い女でさぁ」

 やはりリーファの反応が面白くて仕方ない。

 こうしてロケは無事にすべての予定を終了した。

 

 

 

 

 

 

 ――そしてこの様子は包み隠さず、全国ネットの番組に放映されることとなる。

 勿論吉原のひのやでも。

「そうですねぇ。一応俺の婚約者でさぁ」

「えっ!?」

「はぁ!?」

「なんと、真選組の沖田さん! 旅のマドンナを守るために、尾行犯へ咄嗟にジョークを言ったぁぁぁ!! 嘘だが説得力がある!!」

 ナレーター付きで念の為冗談(テロップで※結婚の予定はありません。マドンナを守る為の冗談です)と伝えられたものの、知らない人からすれば婚約者と勘違いされなくもない。この一場面を見て、何気なくテレビを見ていたシリカ、リズベット、シノンはみな顔を苦くしていた。

「リーファ……これって」

「消して! もう良いから!!」

 例のシーンを見ると途端にリーファ本人が取り乱して、無理矢理テレビを消してしまった。

「まさかあのシーンも映るなんてね……」

「アタシ達は事情を知っているから大丈夫ですが……」

「他の人から見れば、恋仲に見えるかもね……」

 リズベット、シノン、シリカとみなリーファの心中を察していく。散々ロケで連れまわされた上に、例のシーンが放送されたとなると、この仕打ちは不幸と言わざるをえない。普段はちょっとしたことでもからかうリズベットでさえ、空気を読んで何も言えない始末だ。

 そんな中でリーファ本人はというと、

「あれ? リーファさんは?」

「布団にくるまって、奇声を上げているわよ」

掛け布団にくるまって、ぶつけようもない嘆きを大声で発散させている。

「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「ありゃ、三日は続きそうね……」

「あんなリーファさん、見たことないです……」

 今はただそっとしておくしかないと、察したシリカら三人であった。

 

 

 

 

 一方で同じの番組を見ていた万事屋の反応はというと、

「おのれ、あのドS! リッフーになんてことしているアルか!!」

「訂正テロップが入ったとは言え、スグにとってはトラウマになるかもな……」

リーファへの同情が上がっている。神楽は沖田の行動に怒りを見せ、キリトは自身の妹がロケで不憫な目に遭い、いたたまれない気持ちを感じている。

「なんであの場面、カットしとかねぇんだよ」

「まったくです」

 銀時や新八もキリトと同じ気持ちである。

「リーファちゃんが心配ね……」

「でしたら、明日励ましに行きませんか?」

「そうね。行きましょうか」

 アスナやユイはリーファの事が心配になり、明日彼女へ会うことを決めていた。銀時やキリトも賛成し、万事屋総出で彼女の見舞いへ行くことに。

 

 

 

 

 その一方で真選組はと言うと、皆反応がまばらである。

「いやぁ~。これでイメージアップ改善に繋がるか?」

 イメージアップへの手応えにやや不安視する近藤と、

「やっすい三文芝居でしたね」

ところどころ自分の分かりやすい演技を自画自賛する沖田。

「お前が言うなよ。でもまぁ思ったよりは良かったんじゃないか。あとで、リーファからどやされそうだけどな……」

手応えは十分に感じていた土方。だが三人共、この番組を見たリーファの反応が想像に難くなく、彼女の心境を心配していた。

「おい、総悟。後で詫びでも入れておけよ」

「へいへい。分かっていやすよ」

 近藤からの指示に、沖田は軽口で返答。適当に返答していると思いきや、次にはしっかりと詫びの連絡を入れていた。さらに仲間達からの励ましもあり、リーファは無事に立ち直ったはずである……!

「もうロケなんてこりごりよ!!」

「何を某ギャグマンガ風に言っているんですかい」




余談1

テレビロケ篇後半では、なんとレコンが登場! あくまでも銀魂世界の別人ではありますが。
彼の登場には一応伏線を張っていて、前の話の山崎の証言が該当します。

そんなレコンの目的はリーファへの告白。妖国動乱篇の戦いを通じて一目惚れしたみたいです。まぁ、沖田の虚言によってさらなる勘違いが起きちゃいましたが……。

ちなみに一番好きなシーンは、近藤がストーカーじゃないかと呟く場面です笑 確か本編でもあったはず。(真選組の初夢篇だったはず)

リーファを守るためとはいえ、タイミング悪く沖田の嘘が撮影されて、テレビで放映される始末……リーファは泣いていい。




余談2

 久しぶりの剣魂は如何でしたでしょうか。調べたらなんと約2年ぶりの投稿になります。
えっとですね……何が起きたかというと、

旅に出かけておりました。

というより、旅が趣味になりました。
 皆さんが知らないうちに鉄道や旅が好きになりまして、こちらでまったく更新出来ていなかったというわけです。
 それと仕事が想像よりも忙しかったことも関係しておりますが……

 ただ、剣魂の更新を忘れていたわけではなく、ちょこちょこ進めておりましたが、どうにも筆が進まず、ようやく書きかけの物語を終えたわけです。

 この秋晴の日常回篇で書きたいこともまとまってきたので、今後も無理なく続けていく所存です。今後ともよろしくお願い致します。

※ハーメルンの方ではお伝えしておりませんでしたが、四十七~五十一訓のかぶき町フレンドラリー篇を作り直すことになりました。ただハーメルンだと仕様の都合上、同じ話を投稿することは出来なさそうなので、元々投稿してあるデータを上書きする形となりそうです。既存の話は見れなくなりますが、ご了承ください。

 さて、今回の次回予告は二本立て。次の日常回(大体5月ごろを目途)と次回長篇のイメージ予告となります。最後までご覧ください。

次回予告

銀時「おーい、キリトに新八。聞いてくれ」

キリト「どうしたんだ、銀さん。そんなに縮こまって」

新八「そうですよ。まさかエロサイト見てパソコンが壊れたわけじゃないですよね?」

銀時「エロ動画見たら、壊れて固まった……」

キリト、新八「「はぁ!?」」

アスナ「次回! 履歴は必ず消しておけ!」

神楽「銀ちゃんがアッスーにボコボコにされる話アル!」

ユイ「楽しみに待ってくださいね!」

銀時「誰かぁ! 助けてくれぇ!!」

新八「つーか、復帰一発目がこの話で良いのかよ!!」

※作り直すかぶき町フレンドラリー篇の次に投稿するので、投稿はまだまだ先となります。




剣魂! 二大長篇 製作決定!!

キリト「お前は……!?」

???「変身!」

明かされるサイコギルドの真の目的!

アンカー「私はあんな世界、大嫌いだよ!!」

???「俺は知っちまったんだよ! あの世界の未来を!」

???「俺は俺自身のやり方で、アイツを生き返らせるんだ!」

源外「俺にも分かるぜ。思い人を失った苦しみはな」

クライン「俺はぁ、この世界で真の侍道を学んだんだ!」

??「兄貴―!」

???「お前の声……アイツと似ているな」

新八「キリトさんもアスナさんもユイちゃんも……僕らにとって大切な仲間だ!」

銀時「剣ならあるぜ。ここにな……!」

剣魂 刀唱時代篇

登場確定キャラ
坂田銀時、キリト、志村新八、アスナ、神楽、ユイ、桂小太郎、クライン、たま、平賀源外




坂本「GGO星で死神の仮面が暴れるとはな」

陸奥「目撃例があったそうじゃ。死神の仲間……もしや、おまんの兄貴か?」

神楽「神威!?」

アスナ「神楽ちゃんのお兄さんなの!?」

暗躍する最恐の組織を追え!

桂「目指すはGGO星だ!」

エギル「本当に地球を離れたんだな……」

神威「どう? お兄ちゃん同士、戦うかい?」

キリト「これ以上……俺の仲間を悪く言うな!」

ユウキ「助っ人参上!!」

ユイ「私も立派な万事屋の一員ですから!」

銀時「てめぇか! デスガンって野郎は!!」

剣魂 架創決戦篇

登場確定キャラ
坂田銀時、キリト、志村新八、アスナ、神楽、ユイ、定春、桂小太郎、シリカ、ピナ、エリザベス、リズベット、坂本辰馬、リーファ、陸奥、シノン、神威、クライン、阿伏兎、エギル、星海坊主、ユウキ

物語は折り返し地点へ―― 2025年 秋又は冬頃投稿予定!
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