剣魂    作:トライアル

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次の長篇でもしかしたら大活躍するかも……なクラインのメイン回です。


第百六訓 写真写りは拘り過ぎると永遠に撮り続ける

「この顔にピンと来たら110番」

「攘夷志士クライン。壷井遼太郎って書いているアル」

「本当に指名手配犯になってる」

 あくる日の万事屋。この日、万事屋の元に桂とクラインが訪問。彼らは最近幕府から指名手配されたクラインの手配書を、キリトらに見せつけていた。クラインが監視カメラに映った写真が貼られ、運良くも画質が悪く、顔ははっきり見ないと分からないほどぼやけている。

「いざ実物を見ると、なんとも言えないわね……」

「風林火山の面々が見たら、なんて思うのやら……」

 SAOで共に戦ってきたアスナやキリトからすれば、何とも反応に困る始末だった。かつての仲間が別の世界とはいえ、指名手配扱い。穏健派攘夷志士とはいえ、元の世界で例えればテロリストにも等しい。すべては桂小太郎と出会ったことが事の始まりなのだが……きっかけを作った本人は誇らしげな表情を浮かべていた。

「フッ、どうだ。銀時。クライン殿も覚悟を決めて、立派な攘夷志士の顔になっただろ」

「親の顔に泥を塗ったの間違いだろ」

 銀時の辛辣なツッコミが飛ぶが、彼は特に気にしていない。一方で新八は、今後のクラインの進展について気になっていた。

「どうするんですか、桂さん。もし仮にクラインさんが真選組に逮捕されたら、元の世界へ戻れなくなる可能性もあるんですよ」

「心配ないネ、新八。どうせこいつが欠けたって、SAOの未来が変わるわけじゃないアル。悪の組織を追って海外に行ったってすれば、不在の理由がつくネ」

「いや、クラインさんの本業、トラック運転手だから。そもそもあの世界、アミュスフィアさえあれば、どこにいても集まれるだろうが!」

「じゃ、幕府の牢屋からアミュスフィア使えば良いアル」

「この世界にはアミュスフィアねぇんだよ! そもそもなんで逮捕される前提で話してんだよ!!」

 新八はクラインが逮捕されて、本家のSAOに今後出られなくなる可能性を心配している。神楽からは適当な理由付けを提案されるが、理想とは言い難かった。

 そんな中でユイは、クライン自身の気持ちを探ろうとする。

「クラインさん自身はこのこと、どう思っているんですか?」

「俺か。俺は……」

 彼は一旦言葉に詰まったが、すぐに決意を声にしていた。

「名誉の負傷だと思っているぜ!」

 勢いよく立ち上がり、悪びれることなく前を向くクライン。その堂々とした態度に、銀時やキリトらは気が引けてしまう。

「侍の道に弊害があるなら、どんな困難だって払いのけて見せる! 何ぃ、真選組に捕まらなきゃいい話だろ!」

「よくぞ言ったクライン殿。見違えるほどに立派な攘夷志士になってきたな」

「はい、桂さん!」

 まさかの逃げ切りを宣言し、隣で聞いていた桂からは強く称賛されていた。攘夷志士という茨の道を選んだことに、彼は何一つ後悔なんてしていない。

「クライン……お前」

「バカ同士惹かれあった末路アル」

 クラインの旧友であるキリトは、彼の桂の心酔ぶりに改めて反応に困り、神楽は二人の馬鹿さ加減がお似合いと桂達を下に見ていた。

 指名手配されたにも関わらず何一つ変わらないクラインの前向きな姿に、万事屋一行はもう呆れすら感じていない。すると桂は、銀時らへようやく話の本筋について話し出す。

「そこでだ、銀時。本題として依頼があるのだが」

「なんだよ、ここまで前振りだったのかよ」

 銀時が野暮にツッコミを入れると、桂は渡した指名手配書の写真について指を指してきた。

「現在のクライン殿の指名手配書の写真がな、ややぼやけていてな」

「これは監視カメラの画質かしら」

「そうだ。そこで写真を撮り直したいと思って、協力してくれないだろうか」

「いや、撮り直すって何!? 画質悪いままなら、良い意味で目立たないと思いますけど」

 突飛な提案に、新八も思わずツッコミを入れている。どうやらクラインと桂は、指定手配書の画質に不満があり、写真の撮り直しを希望していた。一応補足を入れておくが、二人は現在逃亡中の身。幕府から目を付けられている以上、写真の画質が悪い方が、クラインの逃亡も有利になるはずなのだが……本人と桂はまったく納得していない。

「それでは不公平だろ。クライン殿も真選組と真っ向から対立する意思を示したんだ。小細工無しで立ち向かうのが筋ではないか」

「そもそも、折角ならもっとかっこよく撮るだろ!」

「アンタら、指名手配書を宣材写真と勘違いしていませんか!!」

 二人の独特な考え方に、またしても新八はツッコミを入れていく。真選組及び幕府との真剣勝負を希望しているようだが、クラインの言い分からはただ見た目をかっこよく見せたいから伝わらない。一応もう一度言うが、彼は今逃亡中の身。にも拘わらず、画質や写真の写りについて気にし過ぎていた。

 これにはキリトも頭を抱えて、疲れたような表情を浮かべている。

「頭が痛くなってきた……」

「分かるぜ、キリト。お前らが来る前から、このヅラの頓珍漢ぶりに何度も付き合わされてきたからな」

 キリトの微妙な気持ちに銀時も同情した。ただでさえ面倒くさく感じる桂と、その意思をほぼ引き継いでいるクラインが合わせれば、頭が痛くなるのも無理はない。

 依然として二人は引き下がらないので、銀時は渋々新しい写真を撮ることで、すぐに二人を追い払おうことにする。

「しゃあね。適当に終わらせて、とっとと追い出すか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数分後。銀時は一旦外出し、ものの数十分で万事屋へ戻ってきていた。

「おーい、持ってきたぞ」

 彼は古びたインスタントカメラを手にしている。このカメラがカラクリ技師である源外から借りてきた代物だ。どうやらこれで、クラインの指名手配書の写真を撮る様子である。

「これが源外さんの持っていたカメラですか?」

 ユイが聞くと、銀時が返答した。

「そう。ただ調子が悪くて、過去とか未来とか別の時間軸とか、写る写真が安定しないそうだ」

「なんですか、ソレ。余計時間かかっちゃうじゃないですか」

 変てこなカメラの仕様に、新八も口を挟む。普通のカメラというわけではなく、あらゆる時間軸の一場面を切り抜ける特殊なカメラのようだ。これには場にいた全員が、不可思議そうな表情で、カメラに注目を向けていく。

「例えばほれ」

 すると銀時は、新八に向けてパシャリと一枚写真を撮った。すると、下のプリンターからすぐに写真が出てきて、真っ黒な場面から徐々に新八の姿が浮き出ている。

「あぁ、やっぱり。新八の子供の時が写っちまった」

「本当だ」

 写っていたのは、新八の子供の頃の写真。場面は道場で稽古に励む様子だ。どうやら源外の言う通り、写真に写した相手のあらゆる時間軸を映し出すものらしい。

「新八さんの子供の頃、可愛いですね!」

「今と印象、ほとんど変わってないわね」

 初めて新八の幼少期を目にして、ユイやアスナらは新鮮味を感じている。

「眼鏡をかける前だから、抜け殻も同然アルよ」

「ちょっと神楽ちゃん、余計なこと言わないでよ」

 そんな二人に、神楽が茶々を入れてきた。新八のツッコミとは裏腹に、二人は思わず頷いてしまう。

「ついでにキリトも撮ってやろうか」

「いや、俺は良いって」

 調子に乗った銀時は、新八に続きキリトの写真も撮ろうと企む。本人は気乗りしなかったが、彼が油断しているうちにパシャリと一枚分撮っていた。

「ほら、見ろ。なんか元気そうな少年時代が出てきたぞ」

「銀さんってば!」

 無理やり撮られたことに、やや不満を上げるキリト。そう言っているうちに、キリトの子供の時と思われる写真が鮮明に写し出されていた。

「これがパパの子供の頃なんですね!」

「へぇー、結構良いじゃないですか」

 ユイや新八もマジマジと写真を眺めている。子供らしい元気いっぱいで笑顔を振りまくキリトの姿が写っていたのだが……キリト本人はどこかこの写真に違和感を覚えていた。

「アレ?」

「どうしたアルか、キッリ―?」

「こんな服、俺持ってたっけ?」

 写真を見ても、どの場面かまったく分かっていないのである。見覚えの無い半袖の黒Tシャツと森の中での光景。近くには何故か斧も置かれている。小さい頃の記憶の為、朧気なのは確かだが、それでもキリトにはこの写真を見ても、どんな場面だったかさっぱり分からない。写っているのは自分の子供の頃の姿のはずなのに。

「えっ? でもこの写真って、昔のキリト君なのよね?」

 アスナが不思議そうに聞いても、キリトの浮かない表情に変わりはない。

「だけど、こんな森の中で撮った記憶無いんだけどな」

「お前の記憶違いだろ。キャンプとか林間学校の写真とかじゃないのか?」

「そうかな……行ったっけ」

 写真を見れば見るほど、どんな時だったか思い出せない。妙な違和感を覚えつつも、キリト本人は一旦このお話を打ち切らせる。

 すると、アスナが銀時にある提案をしてきた。

「ねぇ、銀さん。私も使ってみていい?」

「ん、何するんだよ」

「神楽ちゃんの子供の頃の姿、見てみたいから撮ってみて良い?」

「おうネ! 可愛く撮ってネ、アッスー」

 神楽の子供の時の写真が見たい為、源外のカメラを使いたいらしい。銀時は「おらよ」とアスナにカメラを渡して、彼女はすかさず神楽の写真を撮影する。

「さて、どんな可愛い……えっ!?」

 どんな姿が浮き出てくるかワクワクしていたアスナだったが、現像された写真は神楽の子供時代の写真では無かった。その姿に彼女は衝撃を受けている。

「どうしたんだ、アスナ?」

「何が写ったんですか?」

 キリトやユイも神楽の写真を目にすると、アスナと同じく驚きの表情を浮かべていた。写真に写っていたのは……神楽の成長した姿。所謂五年後の姿である。

「これって、大人になった神楽ちゃん!?」

 その容姿は今の神楽の面影を残しつつも、大人びた表情。赤髪のロングヘアーに白いチャイナ服風の衣装、さらにさしている傘も大きくなっていた。体格も大人の女性に成長しており、現在とは見違えるくらい成長している。

「ざっとアスナと同じくくらいの年代じゃねぇ?」

「おぉー、私に相応しい進化アルナ!」

「こんなに神楽ちゃん、大人っぽくなっちゃうの……?」

「想像もつかない進化だな……」

 あまりの変わりように、キリト、アスナ、ユイの三人は大きく衝撃を受けていた。神楽だけは妙に納得した表情を浮かべているが。

「見た感じだと、ママよりも身長が高くなっていますね」

「身長先越されちゃうんだ……じゃ」

 ユイの推測によって、神楽とアスナの身長差が逆転することを知り、増々写真を眺めるアスナ。仕舞いにはこんな妄想を考え始めていた。

「今まで私を守ってくれてありがとう、アスナ」

「神楽ちゃん……!」

「今度は私が貴方を守る番よ!」

 成長した神楽に抱きしめられて、優しく感謝される光景が脳裏に写っている。この妄想により、アスナは段々と顔を真っ赤にしていた。

「うわぁぁぁ!! そんな未来がもう目前に迫っているなんて!!」

 一人恥ずかしがる様子は、仲間からも心配されている。

「何を赤面しているんだ、アイツ」

「神楽の成長を喜んでいるんじゃないのか?」

「ありがとうネ、アッスー!」

 彼女の描いた妄想を知らない銀時やキリトらにとっては、何が起きているのかさっぱり分かっていなかった。

 と特殊なカメラを試し撮りしていたが、ここまでは前置き。本命はクラインの新たな指名手配書を撮ることである。

「おい、銀時。そろそろクライン殿の写真を撮ってもらおうではないか」

「そうだぜ! こっちが本命なんだからな!」

「分かっているよ、ほら壁際に並びやがれ」

 桂らの催促を聞き流しつつ、銀時はクラインを万事屋の壁際へ誘導。クライン自身も表情を整えながら、撮影に応じていた。

「行くぞ、チーズ」

 やる気のない銀時の掛け声でまずは一枚を撮影。すると現像された、ピントのずれたクラインの写真。いわば失敗作であるが、写っているのは現在のクラインである。

「あぁ、ブレちゃった」

「これじゃ、監視カメラの時と画質が変わらないな」

「写真撮るのって、意外と難しいんですね」

 キリトや新八も写真を見ながら呟いていた。簡単にいかない写真撮影に、ややもどかしさを感じている。

「もう一回お願いしようか」

「分かっているよ、なんでお前はずっと保護者ヅラなんだよ」

「保護者じゃない同志だ!」

「はいはい」

 桂からも撮り直しを要求され、銀時は渋々クラインをもう一度撮影。すると、次に出てきた写真は……

「あれ? 今度はスーツ姿になりましたよ」

「耳もとんがっていないネ! もしかして、こいつがクラインのリアルの姿アルか?」

クラインではなく壷井遼太郎の写真である。スーツを着て、今よりも若々しい表情から、この写真が就活時の証明写真だとアスナらは予想していた。

「これ履歴書の時じゃないの、今の会社入った時の」

「あぁ、そういうことか。どうする、この写真にするか?」

「いいや! 現実の姿じゃなく、このままで頼むぜ!」

 上手く撮影できたが、クラインが求めるのは現在の写真。再度撮り直しを要求し、また一枚分撮影した。

「今度はネクタイを頭に付けた泥酔姿と」

「飲み会帰りのおっさんになったアル」

 次に現像されたのは、クラインが酔っ払う姿の写真。ネクタイを頭に付けて、顔も酔いが回っているように見える。撮影が失敗したかのように見えるが、ここで新八があることに気付く。

「というより、先ほどの写真とつながってませんか?」

 そう。前に撮った写真と、地続きになっているのではないかと考えていた。

「なんで写真撮る度に物語が進んでいるだよ」

「うむ。気になるな。もう一度撮ってみよう」

 桂も本来の目的そっちのけで、写真の続きが気になっている。皆に言われるまま、銀時は再度クラインを撮影した。

「今度は絶望した顔になったわ」

「何かとんでもないことがあったのでしょうか?」

 次はよろけたスーツのまま、頭を抱えて暗い表情を浮かべるクラインの姿が写っていた。先ほどとは違うシリアスな雰囲気に、アスナやユイは悪い予感を察していく。

「まさかお前! 飲酒運転したんじゃ……!?」

「んなわけないだろ! こちとら無事故無違反のまま、免許更新してんだからな!」

 キリトも思い付きで思ったことを発するも、クラインは即刻否定。少なくとも交通事故由来ではないと推察出来る。

「もう一枚撮ってみるか」

 写真の続きが気になる一行は、再度クラインを撮影。次に浮かび上がってきた写真は……皆の想像を遥かに超えていた。

「はぁ!?」

「なんでだぁあぁあ!! なんで急におかまになった!?」

 なんとクラインの女装した姿が写真に写っていた。真っ赤なドレスを着て、赤く口紅まで塗っている。脈略も無い急激な変化に、銀時や新八のツッコミも止まらなかった。

「さっきの写真との間に何があったんだよ!! どんでん返しにもほどがあるだろ!」

「つーか、なんで顎鬚は残しているんだよ!! 口紅と合わさって、少し恐怖心すら感じるよ!!」

 見れば見るほど、似合わない女装に皆苦い表情を浮かべてしまう。

 一方でこの写真を見たキリト、アスナ、神楽、ユイの四人は、衝撃が大きく皆気分を悪くしている。

「これがクラインの女装姿……ウッ!」

「気分が悪くなってきたわ……」

「さっき食ったカレーうどんが出てきそうアル……!」

「衝撃的すぎてめまいが……」

「見ただけで吐き気催すとか、ただの殺戮兵器じゃねぇか!」

 クラインと付き合いの長いキリトやアスナからしてみれば、想像もしていなかった女装姿はインパクトが抜群だったのだろう。悪い意味で。

 なお、当の本人はこの写真に怒りを募らせている。

「俺のおかま姿!? ふざけるな!! 俺は一度たりとも女装したことなんてねぇぞ!」

 クラインは真っ向から女装の経験を否定。だとすると、この写真は過去ではなく、未来の写真だと新八は捉えていた。

「ひょっとしてこれ、クラインさんの未来じゃないんですか?」

「マジアルか! こんなおっさん臭さの残るおかまになるかもしれないアルか!」

 いち可能性の話だが、わずかでもその可能性があることに、クライン本人は若干の悪寒を感じてしまう。

 一方の桂は、まったく別の観点から衝撃を受けていた。

「これがクライン殿の女装か……」

「桂さん!? なんで急に写真を見つめるんですか!」

「……俺の女装姿とそん色無いな。さらなる潜入捜査を任せても良いかもしれない」

「遜色しかねぇよ! 何納得したような表情してんだよ! ムカつくんだけど!!」

 自身の女装とは異なる雰囲気から、このおかま姿で潜入捜査を任せるべきと強く納得していた。クラインからは首を振られて、強く否定しているのだが……。新八のツッコミも強く交わされる。

 駆け巡ったクラインの女装ショック。そもそもなんで、こんな写真が出てきたのか、皆推察していく。

「つーか、何があってこんなおかま姿になったんだよ」

「確か前の写真が絶望した顔、その前が酔っ払った時の顔ですよね?」

「ひょっとして、誰かと一線を越えたか?」

「はぁ!? それは誰だよ!」

 その前に撮った写真が絶望に打ちひしがれた顔だったので、この写真がきっかけで女装に走ったのかもしれない。所謂人間関係のいざこざだと銀時は考えている。

「お前が女装しているってことは……男なんじゃないのか?」

「じゃ、エギ―アルか」

「おい、神楽ちゃん! 変な想像させるなよ! 俺はそんな気持ち、金輪際無いからな!」

 神楽の呟きに、クラインは再度真っ向から強く否定。クラインとエギルのBLのような関係を思い起こし、それを聞いて余計に気分を悪くする者もいた。

 指名手配書の写真からだいぶ話題が逸れてしまったので、すかさず写真撮影に話題を戻していく。

「とりあえず、もう一枚撮ってみましょうよ」

「そうだな。何か進展があるかもしれないし」

 気を取り直して、再度クラインの写真を撮影。次に現像されたのは、

「あれ? 誰かいる?」

「なんかさっきと服装変わらないけど、誰かの影が映っているネ」

おかま姿のクラインが誰かと会う光景である。人影だけが写っており、その正体はまったく分からない。

「この流れだとお客さんか?」

「つーか、なんでおかまバーで働いている前提で話すんだよ! 俺はそんなの行く気も無いからな!」

 キリトの推測に、クラインは再度否定。これ以上変な誤解が広まらないように、彼は必死になっていた。

 とりあえず状況が分からないので、再度彼を撮影する。

「次は……乙女みたいな写真だな」

 またも女装した姿が現像されたものの、今度の写真は嬉しそうな表情を浮かべている。この様子からアスナや銀時は、クラインの恋が成就したと勝手に推測していた。

「告白がうまくいったんじゃないの?」

「ってことは、いよいよクラインの想い人が見れるってことか?」

 写真で追うこと数枚。ついにクラインの人生を狂わせることになった男が見られると、皆次の写真に注目を寄せていた。

 銀時が再度写真を撮って、みなその写真が現像されるのを待つ。

「おい、見えたか?」

 撮られる側だったクラインは急に怖気づき、一旦はキリト達の反応を待つことにする。

 果たしてクラインの未来には、どんな写真が写っていたのだろうか……

「「「「「「「えっ!?」」」」」」」

 現像された写真を見て、大きな衝撃を受ける銀時、キリト、新八、アスナ、神楽、ユイ、桂の七人。その写真に写っていたのは……ウエディングドレス姿のクラインと、スーツを着た桂小太郎だった。

 つまり、二人の恋が成就し、結婚にまで至る未来の光景だったのである。

「おいおい。何が写ったんだよ?」

 この写真の状況を知らないクラインは、恐れながらも皆に近づく。桂へ話しかけて、写真を確認しようとした時だった。

「なぁ、桂さ――」

「あぁぁぁっぁあ!!」

「えぇぇえぇ!?」

 桂は咄嗟に銀時の持っていた先ほどの写真を奪い、叫び声を上げながらそれをビリビリに破いていた。桂らしからぬ取り乱した行動に、クラインは驚嘆してしまう。そして桂はそのまま、クラインの両肩を掴み、思いのたけをぶつけていた。

「クライン殿……世の中、知らなくても良いことはたくさんあるぞ!」

「何を見たんだよ! 俺の未来、そんなに衝撃的だったのかよ!」

「心配するな。きっと……きっと、お前を好きになる素敵な女性が現れるに違いない!」

「だから誰なんだよ! さっきの写真の結末、教えてくれって!!」

「教えられるか! あんなおぞましいもの!!」

 桂自身も想定外の未来を知らされ、はんば混乱状態になっている。それでもクラインには絶対に知らせない一心で、肝心な部分をはぐらかしていた。クラインからしてみれば、桂のご乱心にまったく付いていけていない。

 一方で銀時やキリトら万事屋の面々は、互いに取り囲んで、秘密の打ち合わせをしていた。

「おい、テメェら。絶対言うなよ、クラインに!」

「言うわけないでしょ! あんな衝撃的な写真!」

 必死に戒厳令を敷く銀時と、青ざめたままツッコミを入れるアスナ。六人にとってもあの結婚式のような写真は衝撃的で、意地でもクラインへ伝えないことで気持ちを一致させていた。

「あれって……別の時間軸で良いんだよな?」

「多分。まぁ、もしかしたらキリトさん達のいた世界にも、似ている人いるかもしれませんからね。あの人に……」

 苦い表情のまま念のため再確認するキリトと新八。今まで見てきた写真は、あくまでも可能性のある未来。確定的ではないだけで、その未来要素図は外れることを再度確認していた。そうでないとキリトらは、今度クラインの前でどんな顔をしていいのか、正直分からない為である。

 一方でユイは神楽が近くにいないことに気付き始めた。

「あれ? 神楽さんは?」

「気持ち悪くなってトイレ行ったぞ」

 そう。神楽にとってはだいぶ刺激的な写真を見て、気を悪くしてトイレに駆け込んでいる。

「ゲロォォォォ!」

 密かに彼女の嘔吐音が聞こえていた。

「そんなショックだったのね……」

「神楽さんの気持ちも分かりますけどね……」

 神楽の体調をつい心配するアスナとユイである。

 

 こうして源外の作ったカメラをきっかけに、写真撮影は難航。トラブルがあったものの、希望通りの写真を撮るまでに夕方まで時間がかかるのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日。銀時は桂達に頼まれて、クラインの新たな指名手配書の写真を、差出人不明のまま、飛脚(キリト達の世界でいう郵便局)に渡して、無事に真選組へ送る手続きを済ましていた。

「おーし、送ったぞ」

「ありがとうな、銀さん」

「もうこんなこと勘弁してくれよ。昨日だけでどんだけ精神削れたと思ってんだよ」

「まったくだよ。でもこれで、指名手配書の写真って変わるのかな?」

「知らね。どうせ面倒くさくなって、ポイ捨てされるだけだろ」

 銀時の冗談に、クスッと笑ってしまうキリト。昨日の苦労を考えると、ついつい彼は共感してしまう。

 面倒事も片付けて、ひと段落した万事屋一行。今日の仕事は無く、存分に羽を伸ばして一休み出来ると、皆が思っていたその時だった。

「さて……アレ?」

「どうしたんですか、銀時さん?」

 銀時はテーブルに置いてあった、赤い印の付いた封筒を発見。その中身を確認すると、なんと真選組に送る予定だったクラインの写真が封入されていた。

「捨てる用の写真って、こっちじゃなかったか?」

「いや、テーブルに置いていた封筒よ」

「分かりやすく黄色のペンで書いておきましたよ!」

「黄色?」

 アスナやユイの一言により、銀時の予感は確信に変わってしまう。余った写真は一式捨てる予定だったのだが、裏面には黄色の棒線印が付けられている。現在万事屋にあるのは赤色の棒線印の封筒。つまり彼は、捨てる写真と真選組に送る写真の封筒を、丸々間違ってしまったことなる。

「ちょっと待て……」

「えっ、まさか!?」

「真選組に送ったのって……!?」

 彼らが後悔してももう遅い。万事屋の送った封筒は、しっかりと真選組の屯所までもう届いていたのだから……!

 

 

 

 

 

 そんな真選組の屯所には、一つの封筒が届いていた。

「副長!! 宛先不明で封筒届いてましたよ」

「なんだよ。こんな忙しい時に」

 山崎が届いた封筒を、土方にしっかりと渡している。彼が封筒を開けると、そこには手紙と複数枚の写真が入っていた。

「写真をこれにすり替えておけ。誰だ? こんな挑発的な手紙送った野郎は……」

 不機嫌そうな表情のまま、彼は同封していた写真を眺めている。

「うっ!?」

「副長?」

 そして土方は見てしまったのだ。クラインの女装姿の写真を。

「山崎……厠行ってくる」

「えっ!?」

 気分を悪くした土方は、口を押えながら厠(トイレ)へと移動。ただならぬ感情の変化に、山崎は強い違和感を覚えてしまう。

「どうしたんだ、副長。さては、この封筒にとんでもない情報が……!?」

 土方が気を悪くする分、何か良からぬ悲報が入っていると予測していたが……山崎が見たのは悲報ではなく、悪質な写真の数々だった。

「えっ……ブオォォォ!!」

 土方と同じく気分を悪くして、たまらず嘔吐してしまう山崎。それを見かけた他の隊士達が次々と写真を見て、屯所は混乱状態に陥ってしまった。

 こうして屯所では、桂一派の起こしたとされる心理的なテロ行為により、廊下には嘔吐物が散乱。隊士達は一層、桂とクラインへの恨みを募らせるのであった。




 久しぶりの桂、クラインのメイン回です。攘夷志士として幕府に目を付けられたクライン。果たして彼は無事に元の世界へ戻ることが出来るでしょうか?








次回予告

ユウキ「次回は僕とアッスーのチャット模様をお届けするよ!」

銀時「どうやらお前に相談したいことがあるらしいぞ」

アスナ「どうしたの、ユッキー?」

ユウキ「実は僕……告白されたんだ!」

アスナ「えっ!?」

キリト「次回! 既読なんていちいち気にするな!」








おまけ

・源外のカメラで銀さんを撮影

 場面は桂達が万事屋を跡にした時だった。
「じゃ、撮るわね」
「おう」
 アスナがカメラを持って銀時を撮影する。彼の幼少期や過去の姿が写れば良いと、期待して写真の現像を待っていると……写っていたのは銀時のとある過去の姿であった。
「えっ? 何これ?」
「銀時さんが女の子になってます……!?」
 あまりの変貌ぶりに驚くアスナ、ユイ、キリトの三人。現像された写真は銀時の女体化した姿であり、服装は変わらずとも、体つきや髪型、顔つきも大幅に変化している。
 なお、当の本人はこのことをよく覚えていた。
「あぁ、これ女体化した時か」
「女体化!? そんなことがあったのか?」
「そうですね。確か変な宗教の仕業で、かぶき町中の性別が入れ替わった時があったんですよ」
「どんな事件ですか!?」
 さも当たり前のように発する新八らだが、キリトやユイにとってはツッコミどころが満載で、まったく理解出来ていない。
 そんな衝撃的な写真を見て、アスナは女体化した銀時の胸のサイズに若干不満を感じていた。
「銀さんのクセに、性転換したら胸大きいのなんかムカつく」
「そこかよ怒るとこ。つーか声も女に変わったが、その時は確かアスナと似た声になっていたな」
「えー!? なんで私が銀さんの声になるのよ!」
「仕方ないだろ。担当声優同じなんだから」
「何よ、担当声優って! 意味わかんないだけど!!」
 銀時の軽口を理解できずに、ツッコミを入れるアスナ。所謂中の人ネタで、銀時の女性版とアスナの声は、同じ方が担当されているのだが……裏話を知らない彼女にとっては、何のことだかさっぱり分かっていなかった。
 そんな小競り合いを繰り返す二人に対し、キリトにもある出来事が思い浮かんでいる。
「なんか似たような経験あるな。俺も」
「えっ? キリの世界にも、性転換騒動が起きたアルか?」
「いや、違う。GGOってゲームにログインした時、アバターが少し女の子っぽかったんだよな。確かその時は、黒髪ロングの女子っぽい男子のアバターだったかな」
「じゃ、ヅラアルか」
「違うよ、神楽」
 GGO編で手に入れたアバターの件を話すも、神楽からは同じ黒髪ロングの桂小太郎の印象しか湧いてこない。そんな勘違いする彼女を、キリトはそっと訂正していた。
 桂達が帰宅後も、カメラの件で一悶着が起きている。
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