剣魂    作:トライアル

127 / 159
 入れ替わり篇の三訓目です。本当はこの回で終わる予定でしたが、諸々の事情でもう一話分伸びます。なので、タイトルが早速ネタ切れになりました笑


第百十二訓 私が夜兎族で、アナタがウンディーネで

「おいぃ、お前らどうしたんだ? 将ちゃんが待っているぞ」

「フッ、カラオケと言うのは実に楽しいところだな。休憩が終わったら、また歌うぞ」

(しょ、将軍かよぉぉぉぉぉぉぉ!!)

 キリトと入れ替わった銀時が、カラオケ店にて出会ったのは、まさかの天下の将軍様こと徳川茂茂。彼の凛とした佇まいは眩い金色のように輝き、銀時(キリト)も思わず眩しさを感じて目をくらませてしまう。

 そしてお決まりのセリフを心の中で言い放っている。

(なんでこのタイミングで将軍が出てくるんだよ! なんで入れ替わり篇と並行して、カラオケにやってきてんだよ! つーか、将軍様のせいで百十二訓に内容はみ出しているじゃねぇか! 何をしゃしゃり出てきてんだよ!!)

 彼は戸惑った表情で、思っていたことを心の中で発散させていた。メタ的な理由を含めて、将軍の登場を予想できず、ただただ文句をぶつけている。

 そんな内心で荒れ狂う銀時(キリト)に対し、茂茂はそんなことに気付かないまま、初対面のキリトに視線を向けていた。

「ん? 君は一体何者なのだ?」

「あ、お、俺はだな……」

 軽く挨拶を済まして、その場をすぐに立ち去ろうとした時である。

「あっ、将軍様! こいつはキリト君と言ってな。最近かぶき町で知り合った俺の友達なんだよ」

(何をでまかせ言ってんだ! ゴリラ! キリトとお前がいつ友達になったよ!)

 近藤が銀時(キリト)に覆いかぶさる形で、勝手に彼を紹介した。友達と快く宣言する近藤に、銀時(キリト)は内心で大きくツッコミを入れている。キリト本人がどう思っているかは分からないが、少なくとも銀時はそう思ってはいない。

 さらに近藤に続いて、土方や沖田も各々好きに言っていく。

「友達か……まぁ、形式上はそれで良いかもな」

「黒剣さんとは何度かお世話になっていてねぇ。とっつあんとは前に会った、デカ乳でお兄ちゃん好き好き症候群の金髪ブラコン女の兄貴でもあるんですよ」

(お前らも賛同するな! つーか、リーファのこと、まだそんな呼び方しているんのか、このドS!!)

 どちらもキリトとは友達と言う認識らしい。しかも沖田は松平に、リーファの兄として紹介している。銀時(キリト)にとっては、リーファの呼び方が酷いことにもツッコミを入れていた。

 だがしかし、ここにいる近藤や土方らがキリトの中身が銀時だと一切気付いていない。すると茂茂は、キリトの方に目を向けて、彼に興味を向け始めていた。

「キリト君か……同じ兄として君には興味がある。もしよければ、余とも友達になってもらえるか?」

(なります! なりますから、早く帰らせて!!)

 羨望の眼差しを向ける彼に、銀時(キリト)は大きく頷いて了承している。もはや一切先のことは考えておらず、一刻も早くこの場から立ち去ろうと必死になっていた。表情も段々と悪くなっていく。

「も、もちろんだぜ。それじゃ俺は元の場所に……」

 と苦笑いのまま、このまま立ち去ろうとした時。

「待ってくれ! 少しの時間で良いから……余のカラオケボックスに来ないか?」

(将軍んんんんん!! そんな寂しそうな目で見るなよ! 余計に帰りづらくなるだろ!)

 茂茂は銀時(キリト)を引き留めていた。近藤らの言った友達という響きに憧れを覚え、キリトをとも是非仲良くなりたいと本気で思い始めている。実際はキリトではなく、何度も会ったことのある銀時なのだが……。

 一方で銀時(キリト)は、この断りにくい状況にただ困惑していた。

「お~。将ちゃんの目に留まるとは、キリトォは中々に幸運だな。どうだ、来てくれるよな? 来てくれないとどうなるか分かるよな?」

(もはやただの脅迫じゃねぇか!! 完全に俺を引き寄せようとしているじゃん!)

 茂茂の横にいた松平も、キリトに興味を持ち始めている。彼をカラオケに誘うも、ほぼ脅迫のような姿勢に銀時(キリト)は内心でツッコミを入れていた。

 中々自分の思い通りに行かず、やきもきとする銀時(キリト)。適当な理由を付けて場を離れようと画策していたが……ここでふと彼はある嫌な予感を察していく。

(いや、待てよ。こいつらがいるってことは、もしクラインと鉢合わせした場合……余計に不味いことに!!)

 それはクラインの件についてだ。現在彼は攘夷志士として、幕府から指名手配中の身。もしこの場に現れようものなら、逃げ場はなく即真選組に捕獲されるのが関の山だろう。彼にとってはより面倒な状況になる為……銀時(キリト)は咄嗟に覚悟を決めていた。

「わ、分かった!! 少しの時間だけ、将ちゃんと付き合おうじゃねぇか!」

 そう。面倒くささを承知で、茂茂からの誘いを引き受けている。

「おっ、良いのかキリト君!?」

「あぁ。だって俺達友達だもんな」

 急な態度の変化に、驚嘆とする近藤ら真選組の面々。乗り気じゃなかった銀時(キリト)の意図がいまいち読み取れずにいた。

 一方で茂茂は、銀時(キリト)を誘い出すことに成功し、冷静ながらも喜びの表情へと変わっている。

「友達……ありがとう、キリト君。さぁ、来てくれ」

 彼にとっては銀時(キリト)の友達呼びが、この上なく嬉しかった様子だ。

「まぁ、将軍のお願いを受けてくれたこと感謝するぜ」

「ありがとうございやす。後で黒剣さんには、何かしらの商品券渡しておきやすね」

 土方も沖田も、銀時(キリト)へさり気なく感謝を伝えている。茂茂の気を損ねなかっただけでも、円滑に場が進むので、二人は銀時(キリト)のことを救世主のように思っていた。巻き込まれた本人は、溜まったもんじゃないのだが……。

(な、なんでこんなことに……!)

 思えばカルピスを補充した後に、そのままカラオケボックスへ戻れば良かったと後悔している。だが、どんなに悔いてももう受け入れたものは仕方ない。銀時(キリト)は苦悶の表情を浮かべながら、茂茂や真選組のいたカラオケボックスに連行されてしまった。

 そしてその様子を陰ながら見ていた者がいる。

「う、嘘でしょ……」

 それは新八であった。余りにも銀時(キリト)の帰りが遅いので、様子を見に行ったところ、ちょうど彼が真選組らに連行される一場面を見てしまう。事情は全て把握しているわけではないが、茂茂の姿も見えたので、恐らく彼絡みだと推察している。

 そして彼は急いで自分のいたカラオケボックスに戻り、クラインに事の顛末を話していた。

「た、大変ですクラインさん!!」

「どうしたんだ、そんなに慌てて。まさかキリトが不良に絡まれたとかじゃないよな?」

「将軍様とばったり会って、別のカラオケボックスに連れていかれました!」

「なんだと!?」

 呑気に次の曲を選んでいたクラインだったが、新八の話を聞き表情が一変。青ざめた表情を浮かべながら、キリトのことをかなり心配していた。

「しょ、将軍様と会うなんて……!?」

「キ、キリトさんが可哀そうですよね……」

 過去にも彼は潜入捜査中に偶然茂茂と遭遇し、諸々の理由で彼をマヨネーズまみれにしたことがある。故にその強大なプレッシャーを痛いほど理解しており、キリトが手痛い目に遭っていないか心底気になってしまう。新八にもそのプレッシャーは何度も経験しているので、銀時のことが気がかりで仕方なかった。

(大丈夫かよ、キリト……)

(大丈夫かな、銀さん)

 二人は互いに違う相手の無事を祈っている。

 

 一方で銀時(キリト)は、早速異様な雰囲気のカラオケボックスにぶち込まれていた。

(どういう状況だぁぁ、これ!! 真選組と将軍様のカラオケに、何で俺が付き合わされているんだよ!! 明らかに場違いだろうが!)

 内心では見た目とは裏腹な、激しいツッコミを繰り出している。現在はクロスシートに腰をかけており、彼の目の前には近藤、土方、沖田の三人。そして右側に松平、左側に茂茂が座っている。警察庁長官と征夷大将軍にサンドイッチされた彼は、思わず下を向いて黙り込んでしまった。

(落ち着け……とりあえず適当に済まして、さっさと終わらせよう。流石に何時間もかからないだろ)

 今はこの地獄のようなカラオケが早く終わることを切に願っている。平常心を保ちつつ、チャンスを静かに伺うと彼は決心していた。

「ほんじゃ、このリクエスト曲からいきまっせ」

 すると沖田は、専用のパネルを操作して曲を入れる。画面に映ったのは子供が好む優しいアニメーション。その映像をバックに、もりのくまさんが流れ始めようとしていた。

「ハハハ! 誰だよ、もりのくまさんなんてリクエストしたやつ! 可愛いセンスしているよな! ゴリラか? マヨか? ドSか?」

 可愛らしい選曲に、思わず大笑いしてしまう銀時(キリト)。てっきり沖田か誰かの悪ふざけで入れた曲かと思いきや……

「一緒に歌うぞ」

(将軍かよぉぉぉぉぉぉぉ!)

茂茂からのリクエストだった。

(何を童謡リクエストしてんだよ!! しかも、デュエットってどういう意味だよ!!)

 しかも茂茂はふざける様子もなく、本気でこの曲を歌う様子である。しかも銀時(キリト)にもマイクを渡しており、デュエットとしてもりのくまさんを歌おうとしていた。

「将軍家は代々、もりのくまさんが十八番だ」

(知らねぇよ!! そんなもん十八番にしとくなよ!!)

 本格的に歌う前に、わざわざ特異な楽曲と宣言している。銀時(キリト)も次から次へと、内心でツッコミを入れ続けていた。

 そんなことをしているうちに、もりのくまさんの音楽がようやく流れ始める。

「ある日~ 森の中」

「くまさんに~ 出会った」

「フフフフーン フフフフ」

(十八番じゃ無かったのかよ!? 早速鼻息で誤魔化しているじゃねーか!!)

 と意気揚々と言ったものの、茂茂が歌ったのはごく一部のみ。他は全て鼻歌で誤魔化していた。緊張して歌えなかったのか、はたまた曲の歌詞を忘れたのか……。

 そんな急な無茶にも何とか対応し、銀時(キリト)は茂茂とのデュエットを歌い切った。

「流石、将ちゃんだぁ。キリトも中々にやるじゃねぇか」

「あ、ありがとよ……」

 問答無用で先ほどの歌を褒める松平。茂茂、銀時(キリト)共々頑張ったと讃えている。

 とちょうどその時。

「お待たせしました。こちらカップリングドリンクです!」

 カラオケ屋の女性定員が部屋に入り、注文したドリンクを置いていった。そのドリンクはドリンクバーには無かったミックスジュースで、コップも大きく、二人で飲めるハート型のストローも付けられている。所謂カップルが頼みそうな映えを重視したドリンクなのだが……このむさ苦しい男だらけの空間にはやや不向きなドリンクだった。

「おいおい。間違いじゃないのか。これカップル専用だろ? 誰が……」

 と銀時(キリト)が店員側の不備と思い始めた時である。

「一緒に飲むぞ」

(将軍かよぉぉぉぉぉぉぉ!)

 またしても将軍からのリクエストだと判明した。

(おい、バカ殿! このむさ苦しい男だらけの空間に、なんてもん頼んでやがるんだぁ!)

 銀時(キリト)はあまりにも場違いなドリンクを注文する茂茂に、さらに内心で激しくツッコミを入れる。一方で茂茂には、なにやら理由があるようで……。

「べ、別に、キリト君の為ではないぞ。余はこのドリンクが飲みたかっただけだからな」

(やめろよ、なんか勘違いされるだろ!! 将軍とキリトのBLカップリングなんか、誰が得をするんだよ!!)

ただ単にミックスジュースが飲みたかった安直な理由であった。茂茂の頬を赤らめるその姿は、子供っぽく思われていないか少し恥ずかしがるお茶目な光景だったのだが……銀時(キリト)側からすれば、ただ好意があって照れているようにしか見えない。仕舞いには茂茂とキリトの、どこに需要があるか分からないBL展開を想像してしまう。

 とりあえずは茂茂の言われた通り、ミックスジュースを頂こうとした時である。急にカラオケボックスに、備え付けの電話から着信が鳴り響く。近藤がその電話に応対した。

「はい、もしもし」

「お時間が五分前となりますが、如何致しますか?」

 電話の相手は店員さんから。どうやらカラオケボックスの利用時間が迫っているので、延長か退出かの二択を茂茂らに迫って来た。

「とっつあんに将軍様。そろそろ時間だってよ」

「そういえば、この後はGGO星の大統領とリモート会議だったな」

「確かにそうですねぇ」

「なんだよー。このまま盛り上がってきたのによぉ」

 土方や沖田はこの後の茂茂の予定を確認。どうやら公務に戻るようで、時間も差し迫っているという。急に現実へ直面し、松平は残念そうな表情を浮かべていた。

(おい、これはチャンスだぞ! あいつらが帰れば、新八とクラインの元にも戻れるんだよ。早く退出と言え……!)

 一方で銀時(キリト)は、これを絶好の機会と察し。すぐにでも皆がカラオケボックスに出るようにと心の中で願っていたのだが……

「いや、三十分延長で頼む」

(延長かよぉぉぉぉぉぉぉ!!)

当の茂茂は公務に戻る気なんて毛頭無かった。

「次の会議はリモート会議のはず。なら、ここからでも出来るはずだ」

(聞いたことねぇよ! カラオケボックスでリモート会議するお上なんてよぉ!)

「それに……今度はキリト君の歌声が聞きたいな!」

(おい! 俺にマイクを向けるな! 意地でも歌わさせる気か!!)

 彼は相当キリトのことを気に入っており、仕事よりも優先させている。茂茂は楽しんでいる表情を浮かべながら、無自覚に銀時(キリト)へマイクを渡した。彼の歌を心底楽しみにしている。

(も、もう勘弁してくれぇぇぇぇ!!)

 そして巻き込まれてしまった銀時(キリト)側は、心の中で激しくやりきれない想いを吐露していく。茂茂や真選組とのカラオケはまだまだ続きそうであった。

 こうして銀時(キリト)は、その後も数十分にかけて、幾度も歌を歌ったり聞かされたりするのである。彼がクライン達のいるカラオケボックスに戻って来た頃には、既に二時間が経過していたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 キリト(銀時)が桂と会い、銀時(キリト)がクラインと会っていた最中、神楽(アスナ)とアスナ(神楽)とユイの三人は、特訓の約束をしていたシリカやリズベットらと会う為に、地下都市吉原へとやって来ていた。

「ふぅ~。シッリー達との特訓、とっても楽しみネ!」

「そうね。みんなまた強くなっているだろうし、神楽ちゃんと一緒なら、面白い戦いになりそうよね!」

 共に本日の目的である仲間との特訓に意気込みを見せて、声高らかに期待を寄せている。この日の二人は共にリーファやシノンらから特訓の誘いを受けており、日々百華や柳生家などから鍛錬を受けている彼女達の自分自身の実力を図りたいことが目的だそう。なんともタイミングが悪い時に入れ替わってしまったが……どんなに考えても仕方がないので、アスナ(神楽)や神楽(アスナ)はなるべく正体がバレないように、隠し通そうと決めている。

「ということで、神楽さんは語尾にアルを付けないこと! ママはアルを付けて、可愛らしく言うことがポイントですよ!」

「わ、分かったアルよ! ユイちゃん!」

「任せるネ。ユイ!」

 ユイはシリカ達と会う前に、神楽(アスナ)とアスナ(神楽)に語尾の件について厳重に注意した。特に神楽はアルを付けるのが口癖なので、ちゃんと互いに消したり付けたり出来るか彼女は確認している

(神楽ちゃんみたいに、少しお茶目に言わないと。アルを付けるのも、中々至難の業ね)

(アッスーの足を引っ張らないように頑張るネ! 間違えた。頑張るわ、アル!)

 自分の口調をなるべく似せようと少し不安になるアスナ(神楽)と、自信満々にアスナになりきろうとする神楽(アスナ)。正反対のように見えるが、仲間達が混乱しないように、互いの雰囲気や口調を意識しつつ頑張ろうとしている。

 そんな期待と不安が半々に渦巻く三人は、女子達の下宿先である喫茶店、ひのやの前へと到着していた。

「おっ、ようやく来たか」

「アスナさん、ユイちゃん! 神楽ちゃんもこっち!!」

 店の前では晴太と月詠の二人が待っている。晴太は元気そうに手を振り、神楽達へ挨拶していた。

「久しぶりですね、晴太さん!」

「う、うん! ユイちゃんも元気だった?」

「はい、もちろんです!」

 晴太は照れた表情のまま、ユイと接している。久しぶりに彼女と話せて、晴太自身は気持ちを舞い上がらせていた。

 そんな中で、神楽(アスナ)も晴太に話しかける。

「おっす! 元気してたか、晴太!」

「えっ? アスナさん……?」

 のはずが、いつもとは違うアスナの雰囲気に彼は少し違和感を覚えてしまった。

「じゃ、なかった! こんにちはア……晴太!」

「どうしたの、アスナさん? 少し変じゃなかった?」

「全然変じゃないアルよ! アッスーはいつものアッスーアルからナ!」

「そ、そう! 神楽ちゃんの真似をしたくなっただけなのよネ」

 咄嗟にアスナ(神楽)がフォローを入れて、即興で誤魔化す。神楽(アスナ)はやはり言い方に慣れておらず、必死に語尾のアルを隠すことに必死となっていた。

(早々に危なっかしいですね……)

 ユイも少し困ったような表情で、今後の先行きを心配している。

 そして彼女も同じく、晴太や月詠にフォローを入れていた。

「まぁ、気まぐれで晴太さんをからかったんだと思いますよ。銀時さんだったら、こう言うはずです! こんなことでいちいち動揺するから、オメェもまだまだ大人になれねぇよ。ってな感じで!」

「そっか……オイラもまだまだだったんだな」

 ユイは銀時の声真似をしつつ、晴太に深読みさせないように説得する。彼女の言った通り、晴太はただ神楽にからかわれたと思い始めていた。

(よしっ! これで皆さんを手助け出来ました!)

 手助けが上手くいき、つい笑顔を浮かべるユイ。

 だが一方で、

(ユイちゃん……銀さんに影響されて、そんな乱暴な言葉遣いしないでよ~! 指摘しちゃうでしょ!)

アスナ(神楽)はユイの言葉遣いに不安を覚えていた。幾ら声真似とはいえ、銀時の荒い言葉は真似してほしくないと思っている。故に彼女へ注意したいが……現在は神楽と入れ替わっているので、すぐに注意することが出来なかった。アスナ(神楽)は苦い表情を浮かべながら、気持ちを必死に抑え込んでいる。

「アッスーが必死に我慢しているアル」

 なお、神楽(アスナ)はアスナ(神楽)の気持ちにしっかりと気付いていた。

 そんなやり取りがありつつも、晴太と月詠は特に二人を疑うことなく、ユイらに話しかけていく。

「さて、早速じゃが、空き地では既にシノン達が準備しておる。わっちについてきてくれるかのう?」

「分かったアル!」

「宜しくお願い……します!」

 神楽(アスナ)も語尾をしっかりと封じつつ、普段のアスナのような上品さを意識して、月詠に返答した。彼女の案内で、シノン達の元へと向かう。

 はずだったのだが、月詠はふと晴太にあることを話していた。

「そういえば、晴太。最近やってるズンボラ語の宿題はもうやったのか?」

「げっ! 忘れてた……! 他の宿題もまだ手を付けてないし……」

「何をやっておるんじゃ……仕方ない。神楽、前と同じく晴太に教えてくれぬか?」

「えっ!?」

 なんと、晴太の宿題によって事態は思わぬ方向に向かってしまう。

 彼が寺子屋で習っているとある星の言語の宿題をやり忘れており、月詠は神楽に宿題の手助けを求めてきていた。無論、今の彼女はアスナの人格が入った神楽。国語や数学はともかく、ズンボラ語なんて言語、元いた世界でも学んでなどいない。入れ替わった事情を知らない晴太や月詠にとっては普段と同じように接しているが、当事者の神楽(アスナ)、アスナ(神楽)、ユイは狐につままれたような表情で顔が青ざめていた。

「つ、ツッキー! 特訓の方が先じゃないアルか……?」

「いや、神楽ならほんの数分ほどで終わるじゃろ。少し遅れるが、主にしか頼めないんじゃ。任せても良いか?」

「お願い! 神楽ちゃん! また力を貸してくれない?」

 特訓よりも先に宿題の手伝いを頼まれ、アスナ(神楽)は増々苦い表情を浮かべてしまう。自身が天人であるが故に、彼女を頼り切っているのは分かるのだが……入れ替わっている今は話がまったく別なのだ。

(不味い! 不味い! ズンボラ語なんて、私まったく分からないよ! 神楽ちゃんに助けを求めたいけど、ここで任したら余計に不自然だし……!)

 窮地に追い込まれたアスナ(神楽)は、どうするべきか悩みに悩んでいる。もしこのまま晴太の宿題の手伝いをしても、何も出来ないのは火を見るより明らかであった。

(どうするネ、アッスー……)

 神楽(アスナ)も不安そうに彼女を見ている。

「えっと、実は……」

 もう思い切って、入れ替わったことを素直に話そうとした……その時であった。

「良いですよ!」

「えっ、ユイちゃん!?」

「私もズンボラ語を学んでいるので、二人がかりで教えても良いですか?」

「本当!? 助かるよ、本当にありがとう!」

 咄嗟にユイがアスナ(神楽)に助け舟を出している。ユイも晴太の宿題を手伝うと声をかけて、アスナ(神楽)をフォローしていた。もちろん晴太は、手伝える相手が増えて素直に嬉しく思っている。

 するとユイはアスナ(神楽)の耳元で、こっそり立てた作戦を伝えていく。

「ママ。私が解読しますから、その間晴太さんに他の宿題を教えて時間を稼いでください」

「本当に良いの、ユイちゃん?」

「大丈夫です。私に任してください!」

「……ありがとう、ユイちゃん」

 そう。ユイはぶっつけ本番で、ズンボラ語の解読を試みていた。アスナ(神楽)が晴太の他の宿題の手伝いをしているうちに、ズンボラ語を教科書から読み解くらしい。頼りになる彼女の作戦を聞いて、アスナ(神楽)は素直に感謝を伝えていた。

 因みに一連の光景を見て、神楽(アスナ)も一安心している。

「ふぅ~。なんとかなりそうネ」

「ん? どうした、アスナ?」

「いいや。なんでもないわ! ついでだし、私も晴太の宿題を手伝っても良い?」

「心遣いは有難いが、シノンやリーファを待たせては申し訳ないからな。ここはあの二人に任して、主はわっちと来てもらえるか?」

「わ、分かったわ……」

 ついでにユイや神楽(アスナ)の手伝いを提案するも、月詠からシノン達の方を優先すべきと諭されてしまった。彼女は思わず残念がった表情を浮かべている。

「では、わっち達は先に行っておる。宿題が終わったら、すぐに来るんじゃ」

「分かったよ、月詠姉!」

「了解しました!」

 こうして、思わぬ形で分かれてしまった一行。アスナ(神楽)とユイは、晴太の宿題の手伝いを。神楽(アスナ)は、月詠に連れられ先行でシノン達のいる空き地へ。不安な気持ちを残したまま、それぞれの場所へ歩みを進めている。

(大丈夫かな、神楽ちゃん)

(大丈夫アルか、アッスー)

(私がなんとかしないとです!)

 アスナ(神楽)、神楽(アスナ)、ユイとそれぞれが心の中で想いを吐露していた。

 

 

 

 

 

 

 

 ひのやの一角にある晴太の部屋に集まるユイとアスナ(神楽)。晴太は机に置かれていた数枚の宿題を、彼女達へ見せてきた。

「えっと……ズンボラ語の宿題は」

 肝心のズンボラ語の宿題を探していた時である。

「ねぇ、晴太! その前に、他の宿題を終わらせないアルか?」

「えっ!? 神楽ちゃんが……?」

「うん。最近アッスーから国語や数学も学んでいるから、きっと大丈夫アルよ!」

 アスナ(神楽)は自信満々に、ズンボラ語以外の宿題を手伝うと豪語していた。先ほどチラッと見た宿題を見て、自分の得意分野だと確信。ユイの作戦通り、この宿題で時間を稼ごうという魂胆である。

(さっきの宿題通りなら、私のいた世界と変わらないはず! 後は晴太君が乗ってくれるかどうか……)

 既に宿題の内容も把握済みであり、アスナからすれば小中学校で学ぶ範囲だと理解していた。元の世界でも成績は優秀だった彼女にとっては、簡単な問題である。後は晴太が了承してくれることを望んでいるが……

「えー、本当に大丈夫なの?」

本人はまだ半信半疑だった。

「だ、大丈夫アルよ! 私を信じるアルヨ、晴太!」

「そうですよ! 今のマ……神楽さんは、とっても勉強しているんですから! この間だって、やっと……えっと、島根県と鳥取県の区別が付けるようになったんですから!」

(ユイちゃん……もっとマシな例え方は無かったの?)

 ユイも必死になって後押しするも、咄嗟に出た例え方がなんとも反応に困るものである。

 アスナ(神楽)も思わず心の中でツッコミを入れていた。

 なお、肝心の晴太にはユイの想いがやっと伝わった様子である。

「分かったよ。それじゃ、神楽ちゃんに他の宿題も教わろうかな~」

 そしてすんなりと了承してくれた。

「よしっ! ありがとうネ晴太。でも、その代わり……やるからには、ビシバシ教えるからね!」

「お、おう」

 事が思い通りに進み、アスナ(神楽)はより一層気合を入れている。彼女のただならぬやる気の高さを目の当たりにして、晴太も思わず圧倒されてしまう。

(今の内です!)

 そしてその隙にユイは、晴太の宿題の横に置いてあったズンボラ語の教科書を発見。それをすぐに熟読し、宿題が解けるようにと入念に読み込んでいた。

 

 

 

 

 

 それから数分が経った頃である。

「はい、この通り」

「すげぇ……分かりやすい! どうしちゃったの、神楽ちゃん! 見違えるくらい、教え方上手くなってない!?」

「そりゃ、アッスーに色々と教わっているからナ! 晴太も覚えが早くて安心したアルよ」

 アスナ(神楽)のおかげで、ズンボラ語以外の宿題があっという間に片付いていた。彼女の予想通り、国語や数学はほぼ自分のいた世界の内容とまったく変わっていなかったので、アスナ(神楽)は難なく晴太に解き方や必勝法を含めて、勉強を教えている。

 晴太も普段とは違う神楽の知的さに触れて、眩い表情で彼女やアスナを尊敬していた。

「凄いんだな、アスナさんって!」

「でしょ! もっと褒めても……じゃなかった! アッスーにも、その言葉しっかり伝えておくからナ!」

 一瞬油断して自分の素が出てしまうも、すぐにアスナ(神楽)は訂正する。晴太も数分前と比べて、特に彼女の語尾を気にしなくなっていた。

(危ない、危ない! 危うく口を滑らせるところだった)

 褒められたことが自分の気を緩ませたと内心で自覚している。気持ちを切り替えて、アスナ(神楽)は一度深呼吸していた。

「それじゃ、本題のズンボラ語を……」

 と晴太がズンボラ語についても、アスナ(神楽)に聞こうとした時である。

「解けました!」

「えっ!?」

「ユイちゃん! よしっ!」

 タイミングが良く、ユイがズンボラ語の解読に成功。アスナ(神楽)と晴太の間に割って入って、晴太へズンボラ語を教えようと積極的に近づいてくる。

「神楽さん! ここからは私の出番です! 任してください」

「わ、分かったアル!」

(流石、ユイちゃん! 助かったわ)

 ユイの言う通り、アスナ(神楽)は彼女を頼り切ることにした。有言実行な彼女の姿を見て、アスナ(神楽)は一層の頼もしさを感じ取っている。

 それは異なる意味で晴太も同じく感じていた。

「ユイちゃんも凄いな……いくら勉強しているとはいえ、ズンボラ語なんてとっても難しいのに」

「いえ、コツさえ掴めば晴太さんでも解けますよ! これは……」

 ユイの頭の良さに羨望の眼差しを向ける晴太。そんな彼が目線を向ける中でユイは、すいすいと宿題にあったズンボラ語の解読を進めていく。

「こう訳すんですよ! ジャッキーの鼻ってやっぱり大きくない?」

「えっ?」

「これが答えです!」

「へ?」

 と解読したは良いものの、肝心の意味が理解できずに、ポカンと口を開ける晴太とアスナ(神楽)。ユイの自信満々な態度とは対照的に、二人の頭の中には困惑で埋めつくされてしまう。

(ど、どんな時に使うの!? その言葉!! ユイちゃん、満面の笑みで回答しているけど、それ分かって答えているの!? どっちなの!?)

 そしてアスナ(神楽)は、心の中で大きくツッコミを入れていた。本当は声に出して言いたかったが、空気を読んで内心でそっと我慢している。

 すると、晴太がその言語訳の意味について聞いてきた。

「ジャッキー……って、誰?」

「それは分かりません! でも、マイクやアリスみたいに、英語の教科書に出てきそうな人の名前じゃないでしょうか?」

(それでもジャッキーは癖が強いと思うけど……)

 ユイは特に気にしておらず、名前に関してもごくありふれたものと考えている。名前よりも鼻の大きさが話題に上がる時点で、それを実際に使う場面が限られているとアスナ(神楽)は思っていたが……。晴太は無理やりにでも納得していた。

「そっか。じゃ、こっちの例文は?」

「こちらは、ジャッキーは最近映画で鼻を負傷したですね!」

「じゃ、こっちは?」

「こっちの文は、ジャッキーの鼻は意地でも守り抜きますです!」

(さっきから、ジャッキーと鼻しか話してないじゃないの!! 何この外来語!! こんなの寺子屋で学んでいるの!? 大丈夫!?)

 他の例文も試しに聞いてみると、ほぼ全ての文がジャッキーか鼻に関する話題しか上がってこない。何の不思議にも思っていないユイは、にこやかな表情を浮かべるも、アスナは内心でより激しくツッコミを入れている。ただし、実際に態度には出さないようにと、細心の注意を払ってグッと我慢していた。

(ここは我慢するのよ、私。神楽ちゃんなら、この文でも何も違和感なんて覚えていないんだから)

 あくまでも神楽の体裁を守りつつ、二人の会話に入り込んでいく。

「さ、流石アルナ、ユイ! 私が教えた甲斐があるネ!」

「はいです! 難しく考えずに出来たら解けたので、きっと晴太さんにも出来ると思いますよ」

「なるほどな。文体が長くても、ここまで簡略的に訳するなら、オイラにも出来るかも」

「そうだと思いますよ! ここを解読するコツは……」

 するとユイはそのまま、晴太にズンボラ語の解読のコツを彼へ教えていく。二人の勉強をする模様を目の当たりにして、アスナ(神楽)は彼女に任せて良いと思い始めていた。

(でも、私の出る幕はもう無さそうね。後はユイちゃんに任せましょうか)

 助けてくれたユイには後で盛大にお礼すると決めて、彼女は一旦部屋を出ることにする。

「ユイ、晴太。私、厠行ってくるアルよ」

「了解です!」

 アスナ(神楽)が部屋を出たことにより、場には晴太とユイの二人しかいない。ユイは引き続き晴太にズンボラ語について教える中、ふと彼からこんな提案を交わされる。

「ねぇ、ユイちゃん。もし良ければさ、今度寺子屋に行ってみない?」

「寺子屋ですか?」

「うん。いずみちゃんもいるし、ユイちゃんの友達ももっと増えるかもしれないよ」

 それは寺子屋への誘いだった。彼も寺子屋には通い始めたばかりで、この学び舎を通して友達も増えたことから、ユイにもぴったりだと思い、寺子屋へ誘っている。

 晴太からの誘いに、ユイは少しだけ難色を示していた。

「ちょっと悩みますね……」

「えっ、なんで?」

「もし新しい友達が出来ても、急に元の世界へ戻ることになって、いなくなったら申し訳ないじゃないですか。余計に別れが惜しくなるっていうか。もしかしたら、もう二度とこの世界へ来れないかもしれないですし……」

 そう。ユイは、友達が出来てもすぐに別れが来るかもしれないことを恐れている。元々の彼女は人間ではなく、仮想世界内に存在する人工知能の一つ。この銀魂の世界へ来たことで奇跡的に人間の体を手に入れたが、元の世界へ戻ったら、また元通りになると薄っすら察している。先行きが見えない未来の中で、彼女は心の奥底で遠慮がちになっていた。

 そんな複雑な表情を浮かべるユイに、晴太は自身の想いを伝えていく。

「そんなことないと思うよ」

「晴太さん?」

「オイラの姉ちゃん達も同じ気持ちだと思うよ。でも、例え別れが来ても、すぐにまたこの世界に来れば良いじゃん。方法なら、きっと何かしらあると思うからさ」

「でも、私は」

「ユイちゃんが何者であろうと関係ないって! 一回、銀さんに相談してみたらどう? 万事屋って交友関係広いし、きっと解決策が見つかると思うからさ」

 そう言って晴太は、クスッと笑っていた。最初から遠慮して諦めるよりも、試行錯誤して方法を探すべきと彼は伝えたかったのである。きっと大丈夫。別れが来ても、絶対またこの世界と繋がり行き来することが出来る。そんな未来を彼は信じていたのだ。

 晴太の理想や考え方に触れて、ユイの心境にも少しだけ変化が訪れている。

「フフ」

「ユイちゃん?」

「そうですよね。きっと、別れが来てもまた会えますよね!」

「そうそう。信じるなら、希望的な観測が良いじゃん。大丈夫だよ、絶対」

 晴太につられて、ユイも笑みを浮かべていた。彼の言った通り、信じるなら希望的で明るい未来が来ることを望んでいる。その為にも、彼女はある行動を起こすと決めたのだ。

「あっ、でも。寺子屋は一回考えさせてください。万事屋の仕事もあるので、予定を整理してからでも良いですか?」

「もちろん良いよ。って、寺子屋に来てくれるの?」

「はいです! 一日だけでも良いなら是非!」

 そしてユイは、寺子屋に一日だけ見学することも決めている。いつになるかは未定だが、必ず晴太やいずみちゃん達と学び舎で会うと決意していた。

(帰ったら、この事をパパや銀時さんに話してみましょう。寺子屋のこと……元の世界とこの世界を繋ぐことも)

 ユイの心は今、盛大なやる気に満ち溢れている。やることを整理しつつ、早速今日のことをみんなへ相談する模様だ。

 こうしてアスナ(神楽)の知らないうちに、ユイのやりたいことが着々と進んでいた。

 

 

 

 

 

 

 一方でアスナ(神楽)は用を済ませた後、晴太の部屋へ戻る間際に、日輪とばったり会っている。

「アレ? 日輪さん?」

「あら、神楽ちゃん。どうしたの? 月詠と一緒じゃなかったの?」

「いや、晴太の宿題を手伝っていたアルよ。日輪さんは?」

「ピナちゃんのお世話よ。シリカちゃんが用事でいない時や一緒に行けない時は、私や晴太が面倒を見ているのよ」

 日輪は台所にいて、シリカの代わりにピナを寝かしつけていたのだ。彼女曰く、シリカが不在の時は、彼女や晴太がピナのお世話をしているらしい。

「今は眠っているみたい」

「ぐっすりアルナ」

 ピナは現在、日輪のひざ元で体を丸くして眠っていた。幸せそうな寝顔を見て、二人共一安心している。

「そういえば、ほうじ茶煎れたけど、神楽ちゃんは飲む?」

「あっ、飲むアル! 温かいうちに頂くネ!」

 すると日輪からの提案で、彼女の煎れたほうじ茶を頂くことになった。アスナ(神楽)はやけどしないように、ゆっくりとほうじ茶の入った湯のみを味わうように飲んでいく。

「どう、美味しい?」

「そうネ! 飲みやすくて良いアルナ」

「良かったわ。シノンちゃんも気に入ってくれていてね。結構評判良いのよ」

 以前にもこのほうじ茶は、シノンが悩んでいた時に差し入れたことがあり、それ以降女子達が一休みする時は、これで一息つくのが定番になっている模様だ。

 アスナ(神楽)もほうじ茶を飲みつつ休んでいると、彼女はふと思ったことを日輪へ聞いてくる。

「あの、日輪さん?」

「どうしたの?」

「……シッリーやリズ、リッフーにシッノーって好きアルか?」

 下宿している自身の仲間をどう思っているか聞いてみると、

「もちろんよ。みんないい子ちゃんで働き者だし、この家も賑やかになっているし、とっても頼りになっているのよ」

「そうアルか。みんな日輪さんのお役に立てていると凄く嬉しいアル」

日輪から率直な一言が返ってきていた。彼女もまたシノン達のことを気に入っており、日々頼ったり頼られたりしているとのこと。その一言が聞けただけでも、アスナ(神楽)にとっては一安心であった。

 すると、日輪からも同じような質問が返ってくる。

「神楽ちゃんは、アスナちゃんやみんなのことは好き?」

「も、もちろんアル! アッスーにはいっつもお世話になっているからナ! 腹を割って話す仲アル!」

 入れ替わったことがバレないようにと、神楽になりきって返答するアスナ(神楽)。何気なく言った一言だが、日輪にはアスナ(神楽)の言った腹を割って話すという一言に、深々と共感をしていた。

「腹を割って話すね……」

「どうしたアルか?」

「いや、こっちの話よ。詳しくは言えないんだけど、最近シリカちゃんやシノンちゃん達と二人っきりで話すことが多いのよ」

「えっ、そうアルか?」

 日輪の返答を聞き、純粋に驚くアスナ(神楽)。どうやらここ最近、下宿している女子達と二人っきりでよく話すことがあるらしい。

「どんなことを話すアル?」

「そうね……過去の事とか。自分の抱えている事とか。不安に思っている事とか。まぁ、一言で言うなら悩み相談みたいなものね」

 内緒にしている箇所もあり詳しいことは一切明かさなかったが、日輪と二人っきりで話す内容は、だいぶ多岐にわたっているとのこと。

(過去の事って……きっとあのことよね)

 アスナ(神楽)は内心で察しが付いていた。SAOでの出来事、過去の自分の辛い思い出。それに元の世界へ戻れないことへの不安感……きっとそんな、誰にもぶつけられない気持ちを、日輪と話して打ち消そうと四人は思っているのかもしれない。

 さらに日輪は、四人が内に秘めている目標についても話していく。

「それでねみんな、自分の弱さと向き合って、その上でもっと強くなりたいと思っているの。大切な友達や仲間達を守れるようにって。きっと神楽ちゃんやアスナちゃん、ユイちゃんのことを含めていると思っているわ」

「リズ達の目標ってことアルナ」

「そう。今日の特訓だって、神楽ちゃんやアスナちゃんにどれくらい戦えるか張り切っていたんだから。だから、彼女達の期待に応えていってね」

 そう。四人の中にも、この世界で大きな目標が出来たのだ。大切なものや人を守れるくらい強く優しくなること。今回の特訓も、そんな四人の大切な目標が関係しているのだ。

 日輪から思わぬ形で聞いたシリカ達の覚悟に触れて、アスナ(神楽)も強く決心する。

「もちろんアル。私に任せるネ!」

「フフ。頼もしいわね、神楽ちゃんは」

 全力でその決意を後押しすると決めていた。アスナ(神楽)の元気の良い返事に、日輪もフッと素直に喜んでいた。

(みんなは強くなっていると思うわ。だって、あの時の戦いだって自分の限界を超えられたじゃない。私も……負けてられないって!)

 アスナ(神楽)も仲間達が強くなったことを、十分に理解している。数か月前に起きたマッドネバーとの戦いが、その証拠だ。一度敗北した相手に、努力だけでみんな打ち勝ったのだから。元の世界でいた時とは、比べ物にならないくらい強くなっていると感じている。

 だからこそ、その期待を十分に果たすべきと考えていた。

「ありがとうアル、日輪さん。私、行ってくるネ!」

「うん、行ってらっしゃい!」

 こうして日輪との話を得て、決意を新たにしたアスナ(神楽)は台所を跡にした。外に向かうと、ちょうど宿題を終えた晴太とユイと合流する。

「あっ、ユイ! 晴太! 行くアルよ!」

「はいです!」

「月詠姉たちの元へゴー!」

 宿題に数十分かかってしまったが、彼女達はやっと月詠らのいる空き地へと、向かっていったのだ。





 将軍様は平常運転でしたね。兄繋がりでキリト君のことを大変気に入った様子です。中身は銀さんですが……。
 そしてユイちゃんと晴太君の間でも、話は進みましたね。寺子屋のこと、そして例え元の世界へ戻ってもこの世界へ来れる方法を、キリトや銀さんに相談するそうで……。
 さぁ、次回はいよいよラストです!






次回予告

銀時(キリト)「すまん。タイトルが思いつかん! どうする?」

新八「そんなこと言われても、すぐには思いつかないですよ!」

神楽(アスナ)「新八とユイのタイトルで良いんじゃないアルか?」

ユイ「でも私は、新八さんと入れ替わってないですよ」

アスナ(神楽)「もう時間がないわよ!」

キリト(銀時)「だったらもうこれしかない!」

キリト(銀時)「次回! 俺が侍で、アイツが妖精で!」

新八「だいぶ簡素的になったぁぁぁ!!」

神楽(アスナ)「どっちも当てはまるクラはどうするネ」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。