剣魂    作:トライアル

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新八の誕生日に間に合わせるはずが、諸々の事情で一週間遅れに。
ていうか、銀魂の新訳映画やるってマジですか。かなりびっくりしております。


第百十八訓 社会経験は何歳からでも始めていい

 ある日の万事屋。ホームページを開業して数日が経った頃である。

 ネットでの依頼件数も増えており、仕事も軌道に乗り始めていた時、ホームページに一通の依頼が届く。

「えぇ~何々。最近インターンシップを始めたので、就活生に適しているか実体験してもらえませんか? 中堅企業Jより。なんだこれ」

「要するに万事屋へ体験モニターをしてほしいんじゃない?」

「いや、そうじゃなくて……インターンシップってなんだ?」

「そこからですか!?」

 メールを見た銀時はインターンシップと言う言葉の意味が分からず、ついアスナや新八に聞き返している。それを同じく聞いていたキリトが、銀時へ返答していた。

「銀さん。インターンシップって言うのは、企業が就活生にどんな仕事をするのか、実際に体験してもらう企画なんだ。上手くいけば、そのままその企業に就職することも出来るみたいだよ」

「へぇ~。最近だとそんなのやってんだ」

 聞いてもなお実感が湧かない銀時は、適当にキリトへ返事をする。

 彼の言う通り、インターンシップは就活生にとって、新たな仕事を知るきっかけにもなる企画で、年々実施している企業も増えてきているとのこと。この銀魂の世界でもそれが浸透しつつあり、銀時はマウスを操作して、実際に依頼をしてきた企業のメールをより詳しく拝見していた。

「えっと、警備関係の仕事で、十代の男性がいればお願いしたいですだってよ」

「ということは、パパと新八さんが当てはまるのではないでしょうか」

「え~。お前らだけしか、行けないアルか」

 企業側からは条件として、十代の男子のみに募集を募っている。当然万事屋には新八とキリトしか該当者がいないので、この案件は二人しか参加することが出来ないのだ。

「ものは試しだし、お前らだけで行ってみるか」

「まぁ、僕は別に構いませんけど。キリトさんは?」

「俺も問題は無いかな。警備関係なら、少なくとも専門的な知識も特に必要なさそうだし」

「じゃ、決まりだな。とっとと返信送るか」

 新八やキリトも特に問題は無いと感じて、依頼を前向きに捉えている。二人の返答を聞いたところで、銀時はすかさず依頼主に向けて返信用のメールを打っていた。

 キリトやアスナらが教えてくれたおかげか、彼は最新型のパソコンも徐々に使いこなしている。

「銀さんもだいぶ、文字打つの早くなったよな」

「キリトさん達のおかげなんじゃないですか?」

 銀時の上達ぶりを見て、キリトも内心嬉しく感じていた。教え甲斐があったと感慨深く感じている。

 と銀時が気にせずに、文字を打っていた時であった。

「ん?」

「どうしたの、銀さん?」

「いや、なんでもないぞ」

 彼はメールのある部分に違和感を覚えたが、仲間達には特段言及はしていない。薄っすらとある知り合いを頭に浮かべたものの、きっと気のせいと自分を納得させている。

(まさかとは思うが……まぁ、黙っておくか)

 と気にしていなかったものの……その予感は後に的中することになるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして数日後。インターンシップの当日に、キリトと新八は中堅企業Jの一人と待ち合わせをするべく、地下都市アキバに足を踏み入れていた。アニメやゲームやらの宣伝で一段と町が騒がしくなる中で、二人は飾らない会話を交わしている。

「そういえば、新八と二人っきりなのは、何気に初めてじゃないか?」

「確かにそうですね。ほとんど銀さんやアスナさん達と一緒にいることが多かったですからね」

「まぁ、困ったときは俺がフォローするし、気絡なままで良いと思うぞ」

「そうですね。頼りにしていますよ、キリトさん」

 警備関係ということで若干不安を感じているものの、二人もいれば大丈夫とお互いを安心させていた。

 そう話しているうちに、待ち合わせ場所の店の前に到着。そこで待っていたのは……

「うむ。来たな」

「えっ?」

二人にとっては顔なじみのとある男だった。

「待っていたぞ、新八君にキリト君! 今日はこの俺桂小太郎が、攘夷志士のインターンシップを担当する。よろしく」

((はぁ!?))

 なんと、待ち合わせ相手は攘夷志士の桂小太郎。二人は待ち合わせ相手が彼と判明するや否や、驚嘆とした表情を浮かべている。

「か、桂さん!?」

「どういうことだ……!?」

 想定外の事態に困惑する一方で、桂は二人の反応を気にすることなく、黙々と話を続けていく。

「早速だが、君達にこれをプレゼントしよう。攘夷志士タオルだ。汚れが綺麗さっぱり取れるぞ。ただし、世の中のな! ハハハハ! 攘夷だけに。笑っても良いのだぞ!」

 桂は二人に自作のタオルをプレゼントしようとしたが、反応はまったく返ってこない。

「早速だが、君達にこれをプレゼントしよう。攘夷志士タオルだ。汚れが綺麗さっぱり取れるぞ。ただし、世の中のな! ハハハハ! 攘夷だけに。笑っても良いのだぞ!」

「おい!! 何を二回も同じこと繰り返しているんですか!!」

 聞こえていないと思い、もう一度大声で言うも、新八からは辛辣なツッコミが返ってきている。相変わらず自分のペースで話す桂に、二人は何とも言えない感情を抱いていた。

「というか、桂さん。メールを送って来たのって、アンタなのか?」

 とりあえずキリトは桂へメールの件について聞くと、桂は腕組をしたまま返答する。

「うむ。そうだな。近頃インターンシップとやらが流行っていると聞き、俺も試したくなったのだ。ただ直接的に伝えればドタキャンされる可能性があったから、あえて警備会社を名乗り万事屋へメールを送ったのだ」

「どんだけ回りくどいことしているんですか……」

 どうやら万事屋へ警備会社と称してメールを送ったのも、桂の仕業らしい。彼曰く自身が仕切っている攘夷党でもインターンシップを始め、体験者を募集しようとしたところ、知り合いの新八とキリトに来てもらった方が手っ取り早い為、あえて警備会社と名乗り、彼らを騙す形で召集した様子だ。(なお肝心の銀時は、文面に桂の面影を感じ取っていたが……特に気にしないまま、話を進めてしまっている。)

「銀さんはこのこと、気づいていたのか?」

「あの人のことだし、どちらとも言えませんね……」

 二人は疑うことなく、銀時へこの件を任せてしまったことに、若干の後悔を感じ取ってしまう。だがしかし、来てしまった以上はこのまま話を進めるしか無かった。

「フッ。話の通り、報酬はちゃんと弾むぞ。さらに新八君にはお通殿のグッズを。キリト君には、希少なツインファミコンのカセットをプレゼントするぞ。是非来てくれるな」

 桂は事前に伝えていた報酬に加え、新八とキリトが好きそうなグッズも用意している。前者はさておき、後者は微妙な反応を示していたが……快く準備を進めていた桂に、二人は増々断りづらい空気を感じ取っていく。

「……どうします、キリトさん」

「ここまで来たし、依頼を投げ出すわけにはいかないからな。今日は桂さんについていこう」

 悩んだ挙句、桂のインターンシップを引き受けることにする。たった一日であれば、多少のことは我慢できると二人は腹を括っていた。

 キリトらの了承を聞き、桂は安心した表情を浮かべている。

「良い返事だ。特別にカセットをもう一本追加しようじゃないか」

「いや、ファミコンのカセットは別に良いかな……かさばるし」

 気前よくファミコンのカセットの追加を提案するも、キリトからは素直に断られている。早くも先行きに不安を感じてしまうキリトと新八であった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 桂の説得もあり、気が進まないまま始まった攘夷志士のインターンシップ。新八とキリトは彼に案内されるまま、地下都市アキバを抜けだして、江戸のとある場所に足を進めていた。

「ではまずは、体づくりの基本。鍛錬の見学と行こうではないか」

「鍛錬か」

「そうだ。攘夷志士にとって、己の強さは自分の生死に関わるからな。しっかりとその様子を目に焼き付けてほしい」

 最初に見学するのは、攘夷志士としての鍛錬の様子。日々真選組と衝突する彼らにとっては、欠かすことのない日課なのだ。新八やキリトも桂の言い分には少なからず共感する。

「確かに一理ありますね」

「そうだな。生き残る為には、強くならないといけないからな」

 特にキリトは自身の過去とも照らし合わせているので、桂の言葉の重みを次第に感じ取っていく。この鍛錬ばかりは、真面目な様子が見られると安心しきっていた二人だったが……その期待は意図も簡単に砕かれることとなった。

「せいやー!」

「はー!」

「おー。始まっているな」

「「えっ!?」」

 空き地にたどり着いた彼らが見たものは……なぜかカンフーアクションをする攘夷志士の面々である。

「あらよっと! 来い、クライン!」

「おう! ドラゴン隊長!!」

 もちろんクラインも攘夷志士に混ざって鍛錬をしていたが、その恰好はカンフーのような服を直用していた。しかも、彼の相手は某アクション俳優にそっくりのドラゴン隊長。拳法のような構えを見せて、クラインと対峙している。

「行け、クライン!」

「ドラゴン隊長に負けるなよ!」

 仲間の攘夷志士からも応援の声が上がっていた。場は熱気に包まれて、さながらスポーツの試合のように盛り上がっている。

「うむ。クライン殿もしっかりと鍛えているな」

「じゃねぇだろ!! なんだこれ!? 完全に別の組織になっているじゃないですか!! 刀はどうしたんですか、刀は!!」

「これ本当に鍛錬なんだよな……!?」

 感慨深く感心する桂とは正反対に、新八とキリトは困惑のあまり激しくツッコミを入れてしまう。カンフー姿のクラインら攘夷志士たち、新八らにとっては初対面のドラゴン隊長など、もはやこの光景はツッコミどころしか無い。

 なお、桂はさも当たり前のように二人へ言葉を返している。

「どっからどう見ても鍛錬だろ。クライン殿もやっとドラゴン隊長の実力にたどり着いたのだからな。きっと次の長篇で、新技を決めてくれるだろう」

「ねぇよ! そんな場面!! あの人、自らの強み消しているでしょうが!!」

 クラインの新技に期待を寄せる桂だったが、新八からは元も子もないツッコミが返っていた。刀を得手にするクラインにとって、カンフー系の技は自身の軸がブレているようにも見えるが……。

 一方でキリトは、クラインと戦っていたドラゴン隊長が気になっている。

「てか、ドラゴン隊長って誰なんだ?」

「同じ攘夷志士の仲間だ、キリト君よ。潜入捜査犯として活躍し、時間があれば鍛錬の相手にもなってくれるぞ」

「潜入捜査犯なのか……って、あの人はなんで鼻の部分を異様に手で覆っているんだ?」

「あぁ。彼は鼻が人間にとって一番の弱点と考えているからな。だからああやって、あの大きな鼻を守るために戦っているのだ」

「いや、もっと守るもんあるだろ!! 本当に大丈夫なんですか、あの人!?」

 桂が紹介するも、やはりツッコミどころしか無い男だった。潜入捜査犯にしては明らかに目立つ上、自身の鼻を過度に守る様子は迂闊以外の何物でもない。これにはキリトも苦笑いを浮かべ、新八も感情のままにツッコミを入れている。

 と鍛錬について解説しているうちに、クラインらが新八達の存在に気付き始めていた。

「おっ! 桂さん! キリト! 新八!」

「君達も鍛錬に参加するか!」

 ドラゴン隊長も加わって、二人は清々しい表情でキリトらを鍛錬に誘っていく。刀や剣を使った鍛錬ならともかく、カンフー系となると新八とキリトはあまり気乗りしなかった。

「ほら、行ってみたまえ。きっと楽しいぞ」

「って、急に言われましても」

「あの中に混ざるのは勇気がいるというか……」

 苦々しい表情で拒否するも、桂らはまったく引かない。このまま拮抗した状況が続くと思われていた矢先、

「見つけたぞ! 桂ぁ! クライン!」

思わぬ乱入者が空き地に駆けつけてくる。その正体は真選組の面々。沖田が率いており、彼らは桂やクライン達を確保するべく、奇襲を仕掛けてきたのだ。

「真選組の皆さん!?」

「なんてタイミングの悪い時に……」

 新八やキリトも真選組の乱入は想定外で、思わず慌てふためていてしまう。

 だが一方で、桂やクライン達は日々彼らに追われているせいか、落ち着きつつ真選組へ大きく敵意を剥き出しにしていた。

「不味いぞ、真選組だ!」

「桂さん! ここは」

「あぁ、皆の者行くぞ!」

 桂の指揮で、場にいたクライン、ドラゴン隊長、他の攘夷志士の面々も目が移り変わっていく。真選組に対し敵意を向けて、ただならぬ殺気を皆溢れさせていた。

「まさか、さっきのカンフーアクションで戦うのか?」

「あの鍛錬は無駄じゃなかったのか……!?」

 新八やキリトも彼らの本気を感じ取り、ようやく真面目な桂一派の姿が見られると思った矢先、

「んまい棒! BBQ味!!」

「はぁ!?」

「えっ?」

桂達は一斉に駄菓子であるんまい棒を取り出して、沖田達が怯んでいる隙に……

「くらえ!!」

「ぐっ」

「煙幕か!」

それらを一斉に地面へと叩きつけていた。するとんまい棒から吹き出した粉が煙幕として舞い上がり、沖田ら真選組の視界を大きく遮ってしまう。沖田達の身動きが取れなくなっている隙に、

「逃げるぞ!」

「さぁ、ついてこい!」

桂達は一目散に逃げだしていた。

「ちょ、ちょっと桂さん!?」

「今の攻撃は何!?」

 キリトや新八も慌てて桂達を追いかけていく。

 てっきり真選組と真っ向から対立すると思いきや、奇想天外な逃亡術により、全く理解が追い付いていなかった。ただただ桂に振り回されている気もするが……。

 こうして鍛錬の時間は、有耶無耶のまま終わってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という感じで、鍛錬をするにも細心の注意が必要と言うことだな」

「いや、何もかも頓珍漢すぎて、話が入ってこないんですけど!」

 何食わぬ顔で話を戻す桂に、新八はまたもツッコミを入れている。

 現在は桂、新八、キリトと朝の時と同じメンバーで行動を共にしているが、キリトは逃亡中に別れてしまったクラインを薄っすらと心配していた。

「クラインとドラゴン隊長の方は大丈夫なのか?」

「心配するな。二人を含めて、俺達の仲間は皆図太い。真選組からは逃げ切っているところだろう」

 桂はまったく心配しておらず、むしろとっくに逃げ切っていると確信している。それくらいクラインとドラゴン隊長に、大きな信頼を寄せているのかもしれない。

 そんな一行は空き地を離れて、近くの小さな小屋へ到着。中に入ると、そこには刀を腰に携えた志士たちがまばらに会話を交わす賑やかな光景が目に入っていた。

「さぁ。次に見てもらうのは、作戦会議の場だ」

「こ、この人達は……」

「攘夷党の面々だ。エリザベス、皆をまとめてくれてありがとうな」

[桂さん。お安い御用ですよ]

 桂は早速、近くにいたエリザベスに感謝を伝えている。どうやら今回の会議は、エリザベスが仕切っている様子だ。彼もプラカードを掲げて、桂へ返答する。

「皆の者。よく集まってくれた。今日はインターンシップとして、二人体験者が来ている。なるべく怖がらせぬようにな」

「はい!」

「へい!」

 志士達も桂の存在に気付くと、会話を止めて彼の方に目を向けていた。統率された桂のリーダー性に、キリトは思わず驚きの表情を浮かべている。

「桂さんの組織って、思ったよりも大規模なんだな」

「そりゃ、幕府に目を付けられている一角の組織ですからね」

 キリトの呟きに、新八も小さく補足を加えていた。

 そんな本日の会議だが、エリザベス曰くうまく進んでいない様子である。

「さて、作戦の方はどうなっている?」

[少し意見が対立しております]

「なんだと。なら、聞かせてみろ」

 桂も渋い表情を浮かべて、会議の内容を一行に深掘りしていた。

 いつになく真面目な雰囲気を感じ取り、いよいよふざけていない攘夷党の様子が見られるとキリトと新八は思い始めている。

「桂さんが真面目に仕切っているなんてな」

「曲がりなりにも、組織の長ですかね。普段からずっとふざけているわけじゃ」

 と志士達の会話に耳を傾けようとした時、

「だから蕎麦が良いと言っているだろ!」

「へ?」

彼らの期待はまたしても粉々に砕け散ってしまったのだ。

「料理配達員に化けて、下剤の料理を渡すなら蕎麦が良いと決まっているだろ!」

「バカか! 蕎麦なんてメジャーすぎて、逆に怪しまれるだろう! ここは前回と同じくピザ屋としてリベンジをするべきだ!」

「アレは桂さんとクラインさんが失敗した作戦だろ! そう二度も同じ手を踏むと思うか」

 志士たちが話しているのは、真選組に仕掛ける料理についてである。どうやら料理に下剤を仕込ませて真選組全員に隙を作らせる作戦のようだが、その料理について皆好き勝手に呟いていた。

「あの、桂さん……皆さんで何を話していたんですか?」

「あぁ。実は新しい作戦で、ウーバージョウイとして活動し、真選組を全員下剤で腹痛を起こす作戦を考えていたんだが……やはり対立してしまったか。どうするか」

 真剣そうに今後の展望を読む桂に対して、キリトと新八はあまりの馬鹿馬鹿しさに開いた口が塞がらなかった。そもそも作戦自体に幼稚さが拭いきれないが、割とどうでもいいことで言い争う攘夷党の面々を見ると……もはやかける言葉すら二人は失っている。

「キリトさん。発言を撤回します」

「そうだな……馬鹿馬鹿しくて言葉も出ないよ」

 新八、キリト共に頭を抱えて、少しでも見直そうとしたことを後悔し始めていた。

そんな二人の反応を見て、桂も申し訳なく感じてしまう。

「すまぬな。だがここは俺に任してくれ」

 流石の桂の空気を読み、言い争う志士達を止めようと動き出す。

「いい加減にせぬか、お前ら!!」

 桂が怒号を込めて一喝すると、志士達の会話はぴたりと止まった。

「そばだ、ピザだなんて本質を見失っているぞ!! この様じゃ、作戦も失敗に終わるぞ!」

「か、桂さん……」

 桂の叱責を受け、志士達もようやく自分達が無暗な争いをしていたことに気付いていく。

「桂さんの一言で口論が止まった……」

「これが攘夷党のリーダーの姿……」

 と桂のリーダー性に触れて、改めて彼らを見直そうとした時だった。

「今の時代はタピオカ一択に決まっているだろ! そんなことも分からぬというのか、貴様らは!!」

「いや、分かってないのお前だろ!!」

 またも話は頓珍漢な方へと向いてしまう。桂は先ほどの作戦で、ブームに乗ってタピオカが相応しいと豪語したが、そちらはもう既に流行品としては過ぎ去っている。真面目なトーンでタピオカをアピールする桂に、新八は激しくツッコミを入れていた。

「か、桂さん!? 急に何を言い出すんですか!!」

「俺は最適な料理を提案したまでだ。巷ではタピオカにパンケーキ、食べるラー油なんかも流行っているらしいからな。そっちに下剤を入れた方が、真選組に怪しまれないだろう」

「それ以前の問題だわ! もうどれもとっくにブーム去っているんだわ!!」

 さらに桂は手あたり次第、流行っている食べ物を例に挙げたが、そのどれもがやはりブームの終焉を迎えているものばかりである。本質を見失っていると叱責した桂だったが、その張本人が一番分かっていないのかもしれない。

「やっぱり想像以上に面倒くさいな、桂さんは……」

[キリト。俺にも分かるぜ、その気持ち]

 新八と桂の会話を目の当たりにして、キリトは桂の面倒さを改めて痛感している。以前に銀時と入れ替わった時に桂と同行した時も、彼は同じような想いを感じていた。エリザベスにも同情される始末である。

 とそんな時であった。

「見つけたぞ、桂ぁ!」

 集会場にまたしても真選組が乱入してくる。先ほどの時と同様、沖田とその隊士達が奇襲を仕掛けてきたのだ。

「また真選組が!?」

「しつこいな……ならば、これだ!!」

「まさか、またんまい棒を!?」

 桂達はまたも撤退に向けて動き出していく。先ほど使用したんまい棒を使うと思いきや、

「くらえぇ!! スーパーモンチー大冒険!!」

「まったく別のもんでてきたぁぁぁ!!」

ただのゲームカセットを投げつけるだけであった。志士達は次々と持っていたゲームカセットを真選組に投げつけて、彼らが怯んでいる隙に皆撤退している。

「逃げるぞ」

「って、さっきから目を付けられてないですか!?」

「本当に大丈夫なのか!?」

 さも当たり前のように襲撃へと遭う桂達に、新八やキリトも思わず不安を発してしまう。そんなことなど気にせず、桂とその仲間達は構わずにその場を逃げ続けていた。

 こうして作戦会議の場面も、結局は有耶無耶のまま終わってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 またも桂、新八、キリトの三人で行動する一行は、川沿いの道に到着すると、早速次のプログラムについて桂から話を聞かされていた。

「では、続いて広報活動について説明をしようじゃないか」

「広報活動?」

「宣伝ってことか?」

「そうだ。近頃は電脳空間で動画を投稿するのが流行っていると聞く。そこで俺達も独自のチャンネルを立ち上げたのだ!」

 桂が発表したのは、攘夷活動の宣伝について。現実での活動のみならず、電脳空間を通じた布教活動も必要と考え、彼は見様見真似で動画投稿サイトにてチャンネルを開設したのだ。早速タブレットを通じて、新八とキリトに自身のチャンネルをアピールしていく。

「攘夷公式チャンネル……」

「登録者十一人……」

「こほん。立ち上げたばかりだからな。これから登録者も再生回数も上がっていく予定なのだ」

 当然のことながら、お世辞にも視聴者は少ない。桂はやや恥ずかしく感じつつも、これからに大きな期待を寄せていく。

「まぁ、そうかもしれませんけど、どんな動画を投稿しているんですか?」

「例えばこんな動画だ」

 新八とキリトは、桂がどんな動画を投稿しているのか気になり、彼へ詳しく聞いている。すると桂は、自身の製作した動画を次々と紹介していった。

「なんですか。これは」

「攘夷活動した時に見かけた鳥だ。綺麗だったろ」

「じゃ、これは」

「魚だ」

「これは」

「とんぼだ。クリオネにリスもいるぞ」

「ムツゴロウかてめぇはぁぁぁ!!」

 その想定外な動画の内容に、新八は高らかにツッコミを入れている。桂が投稿した動画は、どれも動物が映りこんでおり、攘夷志士とはまったく関係ないものばかりであった。新八のツッコミも増々激しさを増していく。

「何が公式チャンネルだ! ただの動物観察チャンネルになっているでしょうが!!」

「待て、新八君。幾ら電脳空間とはいえ、幕府の監視の目も光っている。だからこうして、何気ない日常を投稿しているのだ」

「うるせぇよ!! 無編集の動物の映像で、どうやって再生回数増やすんだよ!!」

 桂は自身の身分を考えて、大っぴらに行動できず、攘夷に関する直接的な内容は避けたいと考えているものの、明らかに本質とはズレている。そもそもの広報活動に欠陥があると、新八は強く指摘していた。

 一方でキリトは、桂の投稿した他の動画をあらかた見てみると……一本だけまったく違う動画を発見している。

「アレ、新八。一番再生回数の多い動画、動物系じゃないぞ」

「えっ、何ですか。これ」

 その動画には十万以上も再生されており、動画の表紙を飾るサムネにもポップで明るい字体が使われていた。無編集の動物観察動画と比べると、明らかに異質である。

「あぁ、これはクライン殿が監修した動画だな。編集も彼がやってくれて、現代チックにしてくれたらしい」

「ク、クラインが!?」

 どうやら発案者はクラインらしく、最先端関係に疎い桂の為に、自身が変わって編集や企画を行ったらしい。故に気合が入っていることが、サムネ越しからでもよく分かる。

「ちょっと再生してみましょうよ」

「そうだよな……」

 気になった新八とキリトが動画を再生すると……そこには度肝を抜く光景が映りこんでいた。

 

攘夷三兄弟

 

一番上が桂! 桂! 一番下がクライン! クライン! 間に挟まれエリザベス! エリザベス! 攘夷三兄弟!!

 

 ……あまりにも想定外な内容に、二人はかける言葉を見失ってしまう。所謂替え歌動画であるが、変てこさと受け狙いが見た者に何とも言えない気持ちを与えている。特にキリトは、クラインが発案者だと知った上で視聴しているので、余計にどんな顔をして良いのか分からなかった。

 要するに下回っていたハードルが、余計に下がっていたのだ。

「フッ。これで攘夷の道に進む若者が増えてくれると有難いな」

「いねぇよ、絶対」

「ただのお笑いトリオとしか見られていないぞ。これだと」

 桂は自信満々に動画の手応えを感じていたものの、新八とキリトにとってはそう思っていない。この動画を見て攘夷志士と思える人は……恐らくほぼいないであろう。

 動画関係に関しては、早急な路線変更が必要と二人は感じ取っていた。

「さて、次は……」

 と広報関係のプログラムも終わり、桂が次の話に進めようとした時である。

「ん」

「どうしたんですか、桂さん?」

 桂はふとある嫌な予感を察していた。彼が向いた方には兄弟らしき男子が二人道を歩いていたが、それよりも桂は空に薄っすらと浮かぶ黒い影に注目を寄せている。

「アレはトンビの群れ!?」

「ト、トンビ!?」

「あの子達の持つ食べ物をまさか狙っているというのか!?」

 そう。その正体は獰猛な鳥のトンビであり、群れを成して飛び、兄弟の持つお菓子を狙っていた。兄弟達はトンビの気配に気づいておらず、このままだと襲撃を受けてしまう。

「桂さん!」

「おっ、ちょうど良いところに!」

 桂の元には、離れ離れになっていたクラインとエリザベスが駆けつける。すると桂は、ある作戦を思いつき、全員に向けて話していた。

「良いか。俺達でトンビを追い払うぞ! あの兄弟を守るのだ!」

「わ、分かったぜ!」

[心得た!]

 桂達は自らの手で、トンビの群れを追い払おうと決意。兄弟を守るためにも、全力を注ぐと決意している。クライン、エリザベスは桂の作戦に大きく頷き賛成していた。

「新八君にキリト君も頼めるか」

「わ、分かりました!」

「俺達も協力するよ!」

 新八、キリトも桂の作戦に乗っかっている。今回ばかりは緊急事態と察し、インターンシップを一旦忘れて、兄弟達を守ることに躍起となっていたのだ。

「行くぞ!」

 桂達五人は、兄弟を付け狙うトンビの元まで一気に近づいていく。

 一方で兄弟達も、空から近づく異様な気配にようやく気付き始めていた。

「ねぇ、兄ちゃんあれ」

「あれ? って、なんだ!?」

 彼らが気付いた時にはもう遅く、すぐ後ろには無数のトンビ達が今にも襲い掛かろうとしている。

「ピーヒョロロ!」

「うわぁ!」

「ぎゃ!」

 思わず悲鳴を上げた。その時である。

「はぁぁ!」

「ふっ!」

 兄弟の目の前に新八とキリトが現れ、前者は木刀を。後者は自慢の聖剣と黒い長剣を使って、襲い掛かるトンビを次々と追い払っていく。

「クライン!」

「エリザベスさん! 頼みます!」

 そんな二人の呼びかけで、今度はクラインとエリザベスがトンビに立ち向かった。クラインは赤い羽根、エリザベスは飛行ユニットで飛び上がり、刀やプラカードを用いてトンビを打ち返していく。

「はぁぁ!!」

[侍をナメるな!!]

 二人の活躍で大方トンビを片付けたところで、

「桂さんの番だぞ!」

[いけぇぇ!!]

最後に桂がとどめを繰り出していく。常に携帯している時限爆弾を多数投げつけて、自慢の一刀でみねうちを繰り出す。

「終わりだ!」

 周囲には爆発が舞い上がり、トンビ達は皆致命的なダメージを追っていた。

「ピーヒョロロ……」

 勢いを失ったトンビ達はそのまま撤退。フラフラと飛び、空の方へと戻っている。

 兄弟達に訪れた危機は、五人の侍達によって一瞬の内に過ぎ去ったのだった。

「大丈夫か、君達?」

「怪我とかない?」

「は、はい……」

「良かった~」

 キリトと新八は、すぐに兄弟の状況を確認。怪我も無く無事なことに、二人は思わず安堵の表情を浮かべていた。

 とそこに桂も会話に加わってくる。

「ならば良い。どんな形であれ、人々を守るのも攘夷志士の使命だからな」

「か、桂さん」

「確かに回りくどいことをしているかもしれないが、俺達の大義は失ってはいない。クライン、エリザベス、ドラゴン隊長……皆どんな形であれ、想いは一つなのだからな」

 桂の一言に、クラインとエリザベスも共感していた。変てこなことをしている攘夷党だが、どんな形であれ、人々を守る志は誰一人として忘れていない。

 その意思は、今日一日行動を共にした新八やキリトも痛感していたのだ。

「攘夷志士の大義か」

「確かにそこは変わっていないですよ、今も昔も」

 思わずクスッと笑って、桂達の方に目を向けている。このインターンシップを通して、新八とキリトは改めて攘夷党や桂の良さを再確認出来たのかもしれない。

 そう温かい雰囲気のまま、話が終わろうとした時である。

「あっ! 攘夷三兄弟だ!」

「へ?」

 なんと兄弟は、桂達を見て動画で見た攘夷三兄弟だと気づき始めていた。不意に飛び出た一言に、新八とキリトは驚いている。

「あっ、知ってる! 動画で見たことある」

「でしょ、でしょ! ねぇ、生でやってよ」

 攘夷三兄弟と気付くや否や、動画と同じ替え歌をせがむ兄弟達。彼らの好意的な反応を見て、桂もすかさず対応を変えていた。

「ハハハ、良いぞ。その代わり君達には攘夷志士の見習いとして、インターンシップに参加してもらうぞ。良いな?」

「って、さり気なく勧誘しているじゃねぇよ!!」

「ぶふぉぉぉ!!」

 がめつく兄弟に攘夷志士への勧誘を促している。あまりにも露骨な対応に、新八はツッコミを入れつつ、桂へ飛び蹴りをお見舞いしていた。思いっきり蹴られた彼は、そのまま遠くの壁際まで吹き飛ばされてしまう。

「おい、何やってんだよ新八! 折角の勧誘をよ」

「うるせぇよ! 小さな子供にまで、攘夷思想埋め込まなくても良いんだよ! 折角の良い雰囲気を台無しにするなよ!!」

 新八のツッコミにクラインも苦言を呈すも、彼からは返り討ちのツッコミが返されている。攘夷も知らない無垢な子供に、無理やり勧誘を迫る失礼だと彼は考えていたのだ。そもそもが、ただ動画と同じことをやってほしかっただけなのだが……

「ハハハ。大丈夫かな、あの子達……」

 一方でキリトは苦笑いで、攘夷三兄弟に興味を持った兄弟たちを心配している。桂と同様に変てこなことをしないか、若干の不安を感じていたのだ。

 こうして体験型のインターンシップは終了。新八とキリトにとっては、ただただ疲れる攘夷志士の職業体験であった……。




 意外にも二人っきりの組み合わせが初めてな新八とキリトの職業体験のお話でした。相も変わらず、ヅラに振り回されて可哀そうに……。
 今回のお話では、ドラゴン隊長が初登場! 意外にも桂とエリザべス以外で名前が判明している攘夷党のメンバーですね。
 結局二人はこの一日で何を学んだのだろうか……









次回予告

月詠「吉原の倉庫から見つかった大筒の設計図。是非、主らに協力をお願いしたいんじゃ」

シノン「所謂合体武器ね。ロマン砲とも言うべきかしら」

新八「てか、この設計図。どこかで見たことがあるような……」

ユイ「次回! 昔遊んでいたおもちゃを倉庫から出すと、部品が足りなくてモヤモヤした気持ちになる!」














真面目な話
 先日ですが、銀魂で日輪役を演じた櫻井智さんが病気により亡くなられたと知りました。未だに亡くなられたことが信じられません。日輪役としては良き母親の演技が印象に残っており、それをもう見られなくなるのは寂しい限りです。
 ご冥福をお祈り申し上げます。
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