「いよいよ明日に迫ったALO星との合同ハロウィンイベント! かぶき町でも早速、イベントに向けて盛大に準備が進められています!」
万事屋のテレビにて流れていたニュース番組では、結野アナが準備中のハロウィンイベントの現場を紹介していた。
十月も終盤に差し掛かろうとしたこの日。江戸のかぶき町では、ALO星と共同で進めていたハロウィンイベントが間近に迫っている。屋台が並び、子供達には無料でお菓子がもらえる盛大なイベントで、ALO星の天人とも交流を深める一大イベントのようだ。
「ハロウィンイベントか。もうそんな時期か」
「今年はALO星と合同でやるみたいですから、かなり気合が入っているそうですよ」
「とは言っても、たかがハロウィンだろ。あっちの星はどうか知らんが、こっちは毎年乱痴気騒ぎが頻発するからな。勘弁してほしいよ」
この世界でのハロウィンイベントに新鮮味を感じるキリトに、新八が補足を加えていた。共にどんな祭りが行われるか内心楽しみにしているが、銀時だけは冷めた目で皮肉を呟いている。かぶき町では輩や素行の悪い者も集まっているので、トラブルも多発すると彼は考えていたのだ。銀時の主張に、キリトと新八も少しばかり共感している。
そんな男子達が会話を交わす最中で、アスナは忙しなく身だしなみを整えていた。
「ねぇ、神楽ちゃん! 私、寝ぐせとかついていないよね!?」
「大丈夫アルよ」
「ユイちゃん! ママから変な匂いとかしないよね!?」
「はい! とっても綺麗な匂いですよ!」
「ワン!」
「定春も問題ないと言っていますよ!」
神楽やユイ、定春にも入念に見た目を確認しており、彼女は一段と清潔さを気にしている。あまりの焦り具合に、場にいた全員がアスナのことを心配していた。
「ほんでもって、アイツはなんで急いでいるわけ?」
「ユッキーさんと会えるからじゃないですか」
「ユッキー……あぁ、あいつか」
「前々から会いたがっていたもんな」
銀時はアスナの忙しない行動が分かり、一人で納得している。
彼女が今回再会する相手は、ALO星にいる騎士団のユウキ。とある一件から交流を深めることになった、この世界で生きるユウキである。日々チャットでやり取りをしていたが、ハロウィンイベントに伴い、地球に来訪する情報を数日前より知らされていた。久々にユウキやその仲間達と出会えることに、アスナは特に気持ちを高ぶらせており、前日からまったく落ち着きが無いのである。
「良い、みんな! ユッキー達がこの地球に来るんだから、恥じないように振舞ってよね! 特に銀さんは一段と気を付けて!」
準備を進める傍らで、アスナは仲間達にもユウキらと会う時に粗相が無いようにと、入念に注意を加えていた。
「分かっているアルよ、アッスー!」
「はいはい。つーか、あいつらって姫様の護衛に着くから、そもそも会える時間なんてあるのかよ?」
「そこは万が一余裕が出来るかもしれないでしょ! ユッキーなんて、当日にならないと分からないって言っていたし」
銀時の元も子もない発言には、アスナもすかさず反論している。彼の言う通り、ユウキらスリーピングナイツは今回公務として地球に訪れるので、遊ぶどころか話す時間すら無いのかもしれない。それでもアスナは僅かな可能性に懸けて、隙あらばユウキらをもてなそうと考えていたのだ。
「では、そろそろ時間なので、ターミナルに行きましょうか」
「そうですね。まずは出迎えからですね」
気付けば宇宙船の到着時間が目前に迫り、ユイと新八は仲間達にターミナルへ向かうようにと促す。六人と一匹は万事屋を跡にして、宇宙船が発着する江戸のターミナルへと足を進めたのであった。
江戸の中心部にある銀色の塔。多くのエネルギーが集まるこの密集地に、江戸と宇宙を繋ぐ巨大な交通ターミナルが作られていた。ここを介して、日に何百本も宇宙船が発着しているのである。
因みにキリト、アスナ、ユイは、以前ALO星から地球へ戻る時に、こちらのターミナルを降りており、今回訪れるのは二回目なのだ。
「さてと、ターミナルに到着したネ!」
「いつ見ても、とっても広いですね!」
ユイは改めて見慣れないものが揃うターミナルに、若干テンションを上げている。自動的に掃除を行うカラクリや、見慣れない未知の天人や宇宙ペットなど、彼女の好奇心を高ぶらせるものばかりであった。
「ユイにとっては初めて見るものばかりだもんな」
「って、お前も同じじゃないのか?」
「いやいや。ここって俺達の世界で言う空港みたいなものだから、割と新鮮味はそんなに無いんだよな」
しかしキリトはターミナルを自身の世界にあった空港と同等に捉えており、ユイと比べるとそこまで驚きは少ない。彼の達観ぶりを目の当たりにして、銀時は思わず鼻で笑っていた。
「えっと、それでユッキー達の船はどこに到着するの?」
「えっと、あったネ! 222番出口アルよ!」
「このまままっすぐで問題無さそうですね」
ターミナルに到着してから一段落する間もなく、一行は早速ALO星の宇宙船が到着する搭乗口まで移動する。神楽の見た電光掲示板の通りであれば、222番出口で問題は無いのだが……すると、出口に近づくたびに人だかりができ始めていた。
「す、すごい人混みですね」
「まるでハリウッドスターの出待ちじゃねぇか」
「ワフ……」
想像以上の人の多さに、ユイや銀時、定春は気を引かせている。他の仲間達も同じ想いであり、同時に中々前へと進めずに皆四苦八苦してしまう。
「どうする? このままだと一番前まで行けないぞ」
「こうなったら、力づくでいくネ!」
「止めなって神楽ちゃん! 警備員の人に追い返されちゃうよ」
神楽は無理やりにでも最前列へ行こうとしており、新八からすかさず止められている。それでもこの人混みの中をかき分けるのは至難の業であり、皆ためらって足踏みしていた時であった。
「何の騒ぎだ……って、お前ら!」
「ひ、土方さん!?」
騒ぎを聞きつけて様子を見に来た警備員……ではなく、土方が万事屋とばったり遭遇している。さらに彼へと続き、沖田と近藤も声をかけにきていた。
「あれ? 旦那方ですかい」
「お前らもフレイア王女の出待ちに来たのか?」
「そうだけど……本命はユッキーなのよ!」
アスナがそう返答すると、土方もユウキらスリーピングナイツの面々を頭に思い浮かばせていた。
「ユッキー? あぁ、あのスリーピングナイツの奴らか」
「そういえば、青剣さんとは仲良しでしたっけ?」
「って、青剣って私のこと?」
「はい」
沖田の適当に付けたネックネームに、アスナは不満そうな表情を浮かべている。安直な例え方に納得がいかない様子だった。
と犬猿の仲とも言える真選組と出会った万事屋は、やや喧嘩腰に無茶な要求をぶつけていく。
「おい、ゴリラ! どうにか私達を前まで誘導しろアル!」
「そうだぞ。同じALO星で共闘した仲だろ。ここで恩を払えよ、コノヤロー」
特に神楽と銀時は、厚かましさを余すことなく露わにしている。
「そんな図々しい恩、払いたくねぇよ! そもそも決まりで、一般人を誘導するわけにはいかねぇんだよ」
「そうでっせ。だから大人しく後方で黙っていてくだせぇよ」
無論土方と沖田は、万事屋の要求を最初から跳ね返していた。個人的な因縁はさておき、一般人を特別扱いすることは出来ず、公平な態度で銀時らを落ち着かせている。
「ったく、お役所仕事はよぉ……!」
「そもそも頼む側の態度で問題外な気が……」
捨てセリフを吐く銀時に、新八は苦笑いでツッコミを入れていく。
どんなに嘆いても最前列に進むことが出来ず、そもそもユウキらとも話せない可能性が出てきていた。
「でも、どうしましょうか? このままではユッキーさん達に出会えないまま、終わってしまいますよ」
「次に行く場所で先回りするしかないのか?」
ユイやキリトは早速ターミナルでの再会を諦めかけており、別の場所で出会えないか模索している。一番楽しみにしていたアスナも「はぁー」と大きくため息を吐き、再会が遠のくことに嘆いていた。
万事屋内でユウキとの再会が諦めムードに漂っていた時、ふと近藤の携帯電話にある着信が入る。
「ん? 電話?」
電話の相手は、近藤の上司とも言える警察庁長官の松平片栗虎であった。
「はい。あっ、とっつぁん! えっ……フレイア王女からの伝言? そ、そんなこと言ったの!?」
近藤は松平からの伝言を聞くと、想定外な内容に大きく驚嘆している。
一方でユイは、近藤の言っていた松平について興味を向けていた。
「とっつぁんって誰ですか?」
「多分警察庁の偉い人だよ。真選組の上司っていうか」
「へぇ~。そうですね」
新八が丁寧に教えてくれて、ユイも大きく頷いている。
一方で近藤は松平との会話を終えると、そそくさと万事屋の元まで近づいていた。
「お、おい万事屋。最前列まで案内するぞ」
「えっ!?」
それは思いもよらない提案である。近藤は態度を変えて、万事屋の要求通りに彼らを最前列まで案内しようとしていた。
あまりの急展開に、万事屋はおろか土方や沖田まで驚いている。
「どうしたんだよ、近藤さん。とっつぁんはなんて言ったんだ?」
「いや、フレイア王女からの伝言でな。なんでも万事屋又はアスナさんがもし来ていたら、絶対前の列に誘導しろとお達しがあったようで……」
「マジですかい。こいつらをわざわざ案内しなくちゃいけないんですかい?」
近藤から理由を聞き、土方と沖田はともになんとも言えない表情を浮かべていた。理屈は分かるが、銀時や神楽には尽くしたくない気持ちが二人には芽生えている。
松平からの電話は、フレイアの託を伝えるもので、万事屋の面々を優遇させるものであった。恐らくはユウキとアスナの関係性を見越したフレイアの粋な計らいなのかもしれないが……巻き込まれた真選組側は皆複雑な表情を浮かべている。
一方で要求が偶然にも叶った万事屋側は、皆歓喜に浸っていた。
「やったネ! 最前列へ行けるアルよ!」
「まさか王女様から、名指しで通してもらえるなんて」
「いずれにしてもラッキーですよ!」
「ワフ~!」
神楽、新八、ユイ、定春と大小喜びの声を上げている。
一方でキリトとアスナは、フレイアの協力を受け入れてくれた真選組にも密かに感謝していた。
「今回ばかりは、真選組にも感謝しないとな」
「そうね。銀さん、これ以上は余計なことは言わないでよね」
「分かっているよ。ただのチンピラ集団でも役に立つんですねーと」
「てめぇ! わざと言っているんだろ!!」
銀時だけはどうしても文句を言いたかった様子だったが……。キリトやアスナが苦笑いをしている隙に、土方は反射的にツッコミを入れていた。
こうして奇跡的にも、万事屋は222番出口前の最前列まで移動。真選組も警備を強化する中で、いよいよALO星からの宇宙船が到着しようとする。
「見てください、この人だかりを! 現在私はターミナルの222番出口におります。ここでは明日に控えたハロウィンイベントに向けて、ALO星よりフレイア王女と彼女の護衛隊スリーピングナイツが、専用の宇宙船に乗って到着する模様です!」
出口前では早速花野アナが、テレビの中継スタッフと共に現場の状況を伝えていた。彼女が事細かにALO星やハロウィンイベントについて解説していると、
「き、来ました! ようやくです。ようやく地球にやってきました!」
出口前から見える窓より、一隻の宇宙船がゆっくりと到着している。そこから宇宙船の出口が開き、七人の妖精達が出てきていた。
「こんにちは、皆さん!」
「見てください! フレイア王女です! 今回のハロウィンイベントの為に、ALO星よりやってきました! 護衛隊であるスリーピングナイツと共に、数日間ハロウィンイベントの視察や幕府との会談も行う予定です!!」
フレイアを見るや否や、花野アナはテンションを上げて、さらなる補足を解説していた。無事に地球へと到着したフレイアは護衛隊のスリーピングナイツの面々を連れて、宇宙船を降りて通り道である222番出口へと進む。訪れた地球の観衆達に手を振りつつ、そそくさと駆けつけてきた花野アナや報道陣のインタビューにもおおらかに答えていく。
「今回の外遊について、意気込みを教えてください!」
「明日のハロウィンイベントで期待することは!?」
「はいはい、順番に答えますから落ち着いてください」
食い気味に質問をする記者にも優しい言葉をかけて、フレイアはしっかりと一人一人の質問に対応していた。気配りを続ける彼女の姿を見て、ユウキらスリーピングナイツの面々は少しばかり心配している。
「全員分の質問に答えるってなったら、一時間はかかりそうだね」
「まぁ、良いじゃないですか。姫様も久しぶりの外交で気合が入っているのですから」
「そうそう。ついこの間までは、マッドネバー関連の後処理で、全然他の星とか行けなかったわけだし。今日一日は姫様の気が済むまで、僕達で護衛しておこうぜ」
シウネーやジュンは、フレイアの意向をくみ取って仲間達に補足していた。
彼らの言う通り、ALO星はつい最近までオベイロン率いるマッドネバーの再生怪人軍団の残した傷跡や被害が色濃く残っており、銀時やキリトらが地球に戻った後も、復旧や対策、騒ぎを起こした者達への処罰と、自国のことで手一杯だったのである。それもようやく落ち着き、他の星に赴く機会も増えたので、イベントを間近に控えた地球へと訪れることになったのだ。ユウキ達もフレイアの楽しそうな笑顔が見えて、一安心している。
その一方でユウキは、辺りを見渡すと早速約束した相手の姿を発見していた。
「あっ、アッスー!」
「ユッキー!」
最前列から見えたアスナを見かけると、真っ先に元気よく声をかけていく。アスナも大きく手を振って、彼女に笑顔で返していた。
「えっと……」
「行ってきな。ここはアタシ達で護衛するから」
「大切なお友達なのですよね」
「遠慮せず行ってきてください!」
護衛を優先しようとするユウキに、ノリ、テッチ、タルケンら仲間達はアスナと合流することをユウキへ勧めてきた。彼女達も同じくユウキとアスナの仲を理解しており、彼女達の再会を後押ししていたのである。
五人の気遣いに触れて、ユウキも素直に彼らへ甘えることにした。
「みんな……ありがとう!」
彼女は護衛を仲間達へ任せることにして、アスナらのいる万事屋の元まで駆け出していく。
「アッスー! 久しぶり!」
「ユッキー! こっちこそ!」
久しぶりの再会に思わず抱き合う二人。長らく画面越しに通話をしていた二人にとって、面と向かっての再会は悲願でもあったのだ。互いの元気そうな姿が見られて、一安心している。もちろんそれは万事屋も同じ想いである。
「アッスーがとても喜んでいるネ!」
「それはユッキーさんも同じですよ!」
特に神楽とユイは、二人の再会を心の底から祝福していた。
「まぁ、再会がすんなり済んで良いんじゃねぇの」
「そうだな。アスナにとっても、ユッキーは特別な友達だしな」
「ここは皆さん、茶々を入れずに見守りましょう」
「ワン!」
銀時、キリト、新八、定春もアスナとユウキの再会を優しい目で見守っている。キリトは元の世界で生きていたユウキの姿も思い浮かべており、別人ではあるが改めて、この世界で生きるユウキと出会えたことをどこか運命的に感じ取っていた。
そんな中でアスナとユウキは顔を合わせて、互いに会話を交わす。
「ユッキー。ようこそ、地球へ!」
「うん! 初めての地球だから、とっても楽しみにしているよ!」
ユウキにとって地球を訪れるのは今回が初めてで、彼女は自分の率直な気持ちをアスナに明かしていた。色々と楽しみにしているユウキだったが……今回は公務で来ているため、そちらを優先させなくてはいけないのである。
「ただごめん。今日は姫様の護衛で一日埋まっているから、ゆっくり話せるとしたら、明日以降になっちゃうかな」
「そっか……みんな仕事で来ているものね」
今日一日のスケジュールを知ると、アスナは残念そうな表情を浮かべていた。あくまでもユウキは真選組と同じ公的機関に属しているので、そちらでの任務が優先的なのである。アスナもその事情は汲み取っていたものの、いざ現実を見ると理想的にはいかず、少しばかりもやもやした気持ちを抱えていた。
そんな時である。
「いいえ。変更になりました」
「えっ?」
「シウネー?」
シウネーが嬉しそうな表情で、二人に向かって話しかけてきた。状況が変わったと察し、キリトら万事屋の面々も駆けつけてくる。
「変更って、どういうことだ?」
「どうやら姫様が、今日の護衛は真選組に任せるって決めたみたいでさ」
「そうアルか!?」
ジュンもアスナや神楽達に補足を加えていく。彼の言う通り、今回スリーピングナイツの任務であったフレイアの護衛は、今日一日だけ真選組が代わりに担当することになったようだ。なおこの意向を伝えたのはフレイア本人であり、近藤らは彼女の突飛な提案にかなり困惑している。
「ちょっと姫様!? その話、初耳なんだが……」
「そうでしたか? 松平さんには事前に伝えておいたはずですよ。まさか……報連相がしっかり機能してないんですか?」
「いやいや、そんなことはないですから! なぁ、トシ! 総悟!」
「お、おう」
フレイアはさも事前に伝えたように振舞って、自身のわがままを無理やり通そうと考えていた。この提案は当然ながら先ほどフレイアとスリーピングナイツ内で決まった模様で、フレイア自身がユウキとアスナの再会に感動して、彼女達の話せる時間が必要と考えた所謂フレイアなりの優しさだったのである。巻き込まれた真選組側はたまったもんじゃないが……。
「ったく、あの姫様。完全に俺達に仕事なすりつけただろ」
「きっとスリーピングナイツと旦那方を抱き合わせる為でしょうね。まぁ、俺は良いですが、問題は次でさぁ」
「次?」
土方も沖田もとばっちりを受けて文句を呟く中で、沖田は一番の問題はある対応と考えている。それは、
「今回のフレイア王女の護衛、真選組が担当するのですよね!?」
「護衛についての意気込みを教えてください」
「これもイメージアップの狙いがあるのでしょうか?」
報道陣の対応であった。フレイアの護衛役が真選組に変わることで、彼らの注目は一気に真選組へと向けられている。
さらに花野アナは、勝手に実況まで始めていた。
「これは驚きました。今日一日、フレイア王女を護衛するのは、真選組とのことです。過去に一日警察署長を行った寺門通氏には、テロリストに誘拐される失態を起こした彼らですが、果たして今回はフレイア王女を守りきることが出来るのでしょうか!!」
「ちょっと!! 何どさくさに紛れて、過去の事件を紹介しているの! 紛れもない黒歴史なんですけど!!」
過去に起きた真選組内での出来事を赤裸々に紹介しており、近藤からツッコミを入れられてしまう。花野アナが伝えたことは事実だが、あまりにもタイミングが悪い。近藤らが報道陣の対応にあたふたとしている中で、
「今のうちに、ここから立ち去りましょう!」
「い、今しかチャンスは無いと思います!」
「そうですね!」
テッチとタルケンはその隙にターミナルから出ることを提案。ユイも賛同して万事屋とスリーピングナイツの計十二人と一匹は、気づかれないようにその場を跡にしていた。
「ありがとう! フレイア王女!!」
ある程度遠くまで行ったところで、ユウキは自身を気遣ってくれたフレイアに感謝を伝えている。
こうしてフレイアの護衛役が真選組に切り替わり、ユウキらもといスリーピングナイツの面々は、思ってもいなかった地球での観光を万事屋と共に回ることになったのだ。
「無事に逃げ出したわけだけど、本当に良いのか?」
「良いんですよ。姫様の決めたことですし」
「そうそう! 姫様の言うことは絶対なんだから!」
心配を呟く銀時に、シウネーとノリが返答する。共にフレイアが決めたなら大丈夫と、彼女への信頼を露わにしていた。
ターミナルを出た一行は、現在江戸方面に向かって歩みを進めている。スリーピングナイツの面々は初めての地球の光景に、若干テンションを上げていた。
「それにしても、江戸ってとっても広いね。コンクリートジャングルって言われているのも納得の街並みだよ」
「ユッキーのいた街とはかなり印象が異なるよな」
ユウキの感想にキリトが返答する。スリーピングナイツにとっては、自身の星とは異なる文明や建物に皆新鮮味を感じていたのだ。
と皆が江戸の街並みを見渡す中で、アスナはユウキらに行きたい場所や興味のあるものについて聞いている。
「ねぇ、みんなはどこに行きたいか決まってるの?」
「そういえば、まだフワッとしか」
「では、皆さんが一番気になる場所を従順に回るのは如何でしょうか?」
「良い考えアル! 時間もあるし、全員分見回れるネ!」
ユイの提案に、皆一致して賛成していた。折角出来た自由時間を無駄にしない為にも、順々に六人の行きたい場所を巡るとのこと。そう決まると、率先して声を上げたのはジュンとタルケンである。
「はいはい! じゃ、俺達から良いか?」
「わ、私も! 新八さんにお願いがあるんです!」
「えっ、僕?」
二人は新八に話しかけて、あるお願いを彼に交わしてきた。それを聞くと新八はテンションを上げて、全員をある場所へと案内したのである。
ジュンとタルケンが希望したのは、新八の所属するある団体の見学であった……。
〈放送コードがなんぼのもんじゃい~!!〉
「ふゅー、ふゅー!!」
かぶき町のある空き地では、青い法被を着た男達が、ラジカセから流れる寺門通の曲に合わせて、オタ芸を練習していた。
彼らの正体は寺門通親衛隊。長らくアイドルの寺門通を支えてきたファングループである。統率された動きと過剰とも言える決まりが特徴的で、数あるアイドルの応援団の中でも一際異彩を放っているのだ。
「よぉし、良い調子だぞ! このまま来月のライブで、お通ちゃんを応援するぞ!!」
「おぉぉ!!」
その軍団を一時的に仕切るは高屋八兵衛。新八の親友で出っ歯と金髪のリーゼントが特徴的な男子だ。彼は隊長補佐として、今回オタ芸の練習を仕切っている。
とそんなむさ苦しい集団に、本丸のリーダーが駆けつけてきた。
「お前ら、ちゃんとやってるか!!」
「あっ、新ちゃん!」
声をかけてきたのは、この親衛隊のリーダー志村新八。彼も同じく法被に着替えており、普段の万事屋の姿とは異なり、顔つきも鋭く凛々しく変わっている。また、親衛隊の隊員達も新八を見ると、整列して彼の方に顔を向けていた。
そんな新八の後ろを、万事屋とスリーピングナイツが様子を見ている。
「すっげ! これがリアルの寺門通親衛隊なんだ!」
「アイドルの応援団としての鏡ですよね!」
特にジュンとタルケンは寺門通のファンであり、同じ志を持つ応援団を間近で見られて、思わず感激している。
だが一方で……相変わらずの暑苦しさに銀時、神楽、定春は冷めた目で見ており、キリト、アスナ、ユイ、ユウキ、シウネー、テッチ、ノリは新八の隠されたリーダー性に戸惑いを覚えていた。
「新八さんがまるで別人に……」
「お通ちゃんのファンなのは知っていたが、まさかここまでガチだったとは……」
特にユイとキリトは、普段見かける新八とは印象もまるで異なっており、意外性と共に困惑をより強く感じていた。
「アッスー。新八君って、あんなキャラだったっけ?」
「いや、私も初めて見るわね……」
「お通が絡むといつもあんな感じだぞ」
「ただのイキリメガネアルよ」
「ワフ」
ユウキも困惑して思わずアスナへ聞くも、その彼女も新八の隠された性格に思わず愕然としている。銀時や神楽、定春は嫌でも見慣れた光景の為、まったく驚いていなかった。
「これは……意外ですね」
「間近で見ると迫力が凄い」
「二人が圧倒されるのも納得です」
ジュン、ノリ、シウネーも思ったことを口にしている。
皆が寺門通親衛隊のオタ芸と新八のお通への情熱に驚かされる中で、新八自身は変わらずにいつも通り軍団を仕切っていた。
「おい、貴様ら! 今日はALO星から、見学者が来ている! お通ちゃんのファンであるジュン君とタルケンさんだ!! 決して粗相が無いように振舞えよ!!」
「「「うっす!!」」」
新八は気合を入れて、軍団にジュンとタルケンについて紹介。すると彼らは早速、軍団へ向けて話しかけてきた。
「初めまして! いやぁ~皆さんのオタ芸、凄かったよ!」
「わ、私感激しました! 特にアナタの動きが素晴らしかったです!」
「お、俺が?」
特にタルケンはタカチンの激しい動きに感激しており、思わず彼に握手を求めている。
「良かったな、タカチン。タルケンさんも喜んでいるぞ」
「あぁ、とにかく嬉しいぜ!」
タカチンも満更でも無い表情を浮かべていた。
一方でALO星と聞き、少しだけ動揺している者がいる。それは黄色い髪に眼鏡をかけた中年、軍曹と呼ばれている寺門通親衛隊の中でも古参の男性だった。
「ALO星か……」
「ん? どうした軍曹?」
「いや、なんでも……あっ!」
新八がその異変に気付くと、軍曹は懐に隠していたとある写真を不意に落としてしまう。その写真には小柄で銀色の髪の女の子と、細身で赤色の髪の女の子が写っている。共に耳がとんがっていることから、恐らくALO星の天人のようだが……新八はこの写真を見た瞬間に大きな怒りを露わにしていた。
「貴様……なんだこの写真は!」
「えっと、ALO星のアイドルセブンちゃんとそのお姉ちゃんのレイン……ぐはぁっぁ!!」
説明の途中で彼は軍曹の鼻の穴に指を突っ込んで、そのまま持ち上げてしまう。そして恒例の尋問が始まった。
「軍曹!! 寺門通親衛隊隊規!! 第十四条を言ってみろ!!」
「た、隊員たるもの、お通ちゃん以外のアイドルは決して崇拝することなかれ!」
「その通りだ! 軍曹! 貴様はその規律を破った! よって、鼻フックデストロイヤーの刑に処す!!」
そう。新八は軍曹が決まりを破ったことに激高し、彼に問答無用で処罰を繰り出すと決めたのである。寺門通親衛隊にはこのような決まりがいくつもあり、隊員が破ろうものなら新八による処罰が待っているのだ。
徹底した粛清を目の当たりにして、ジュンとタルケンは思わず圧倒されている。
「これが噂の鼻フックデストロイヤー!」
「迫力がありますね!」
二人は親衛隊のお通への情熱に感心していたのだが……他の仲間達はと言うと、
「ん!?」
「はい?」
「えっ……本当に新八君なの?」
「残念ながら本当アル」
「良かったよ。お前らがまともな感性持ってくれて」
やはり困惑の方が強い。銀時、神楽、定春はいつもと同じ流れで飽き飽きとしているが、アスナやユウキ達は展開が早すぎて、全然理解が追い付いていない。そもそも他のアイドルの写真を持っていただけで粛清対象による親衛隊の雰囲気に、思わず恐怖すら感じていた。
「くらえぇぇ!!」
「ひゃぁぁぁ!!」
そして瞬く間に、軍曹は新八によって吹き飛ばされてしまう。勢いよく飛んで行った彼は、路地の境目に差し掛かると、
「ぐはぁ!?」
「うぐ!!」
「えっ?」
とある通行人と衝突してしまった。その正体はというと、
「ク、クライン!?」
「おい、大丈夫アルか! 髭!」
まさかのクラインである。思わぬ知り合いとの遭遇に、万事屋とスリーピングナイツは急いで現場まで駆けつけていた。
ユイが二人の容態について確認している。
「どっちも気絶していますよ」
「おい、新八……流石にやり過ぎだぞ」
「は、はい……」
ともに気絶しているのみだが、一歩間違えれば大事故につながりかねなかった為、銀時は手短に新八へ注意を加えていた。なお、新八自身もやり過ぎたと内心反省している。
とそんな事故現場に、クラインの同志である桂とエリザベスも駆けつけてきた。
「おい、銀時! これはどういうことだ! 新手の必殺技か!」
「か、桂さんまでいたの!?」
「その前にクラインのこと、心配したらどうなんだ?」
「ハハハ! 心配は無用だ。クライン殿は我がドラゴン隊長の特訓で、防御が格段に上がったからな。これしき数秒後には起きるぞ」
桂はクラインの頑丈さに期待し、すぐに起き上がることに期待していたが……数秒経っても彼は気絶したままである。
「アレ? クライン殿?」
「さっさと声かけろよ」
銀時は呆れ気味に桂へ小言を呟いていた。
思わぬ形で攘夷党も遭遇した一行だったが、そんな中でテッチはエリザベスを見るとその顔色を変えている。
「エリザベスさん!?」
「へ?」
そう。テッチにとってエリザベスは、以前共に戦った戦友であり、可能ならまた会いたいと思っていたのだ。テッチは咄嗟にエリザベスの手を握ると、エリザベス側もプラカードを掲げて彼と会話を交わす。
「会いたかった! あの時は本当にありがとうございました」
[テッチか。こんなところで会えるとはな]
[我が同胞に会えてうれしいぞ。寡黙なカリスマ同士、仲良くしていこう!]
「もちろんです!」
共に無口でチームのサポーターとして活躍しているからこそ、互いに深く共感しているのかもしれない。彼らの再会を目の当たりにして、アスナやユウキらは驚いた表情で二人を見守っていた。
「テッチのやりたいことって、もしかして」
「エリザベスさんとの再会みたいだったね」
特にユウキは自身の仲間でありながら、意外な共通点を見て大いに驚いている。
その一方で桂も、ようやくスリーピングナイツの面々に気付き始めていた。
「おい、銀時。こいつらは……」
「やっと気づいたか。用あって地球に来ていて」
と銀時が軽く解説しようとした時である。
「こほん。俺のことを覚えているか、シウネー殿」
「へ?」
「ん?」
桂は近くにいたシウネーに話しかけて、平常心を保ちながら彼女へ話しかけてきた。
「ALO星での戦いの時、共に戦った桂小太郎だ。まさかこのような場で再会出来るとは、実に運命的だな」
「桂さん。こちらも覚えていますよ。とってもお強い方だと認識しております」
桂は照れ気味にシウネーと会話しており、無意識にかっこつけている。そんな桂の可笑しな素振りに気付くことなく、シウネーは変わらずに彼と会話を交わしていた。
「えっと、これは……」
「ただの人妻好きの難ありコミュニケーションアルよ」
「えっ!? でもシウネーって、まだ結婚してないよ!」
神楽の補足に、ユウキは思わず強めのツッコミを入れていた。桂の人妻に対する想いが分かったものの、シウネーに食いつく理由がいまいちよく分からないと思っている。それはジュンやノリ、タルケンも同じ想いであった。
「だろ……って、まだってことは」
「彼氏ならいるけど」
「そうなのか!?」
そのついでにユウキは、シウネーに付き合っている彼氏がいることも明かしている。幸いにも桂には聞かれていなかったが……キリトやアスナは念入りにユウキらに注意を加えていた。
「あの……桂さんには黙っておいた方が良いぞ」
「余計に拗らせちゃうかもしれないし」
「わ、分かった」
二人も桂が人妻並びに寝取られ系に興味を持っていることを十分に知っており、その上でシウネーに彼氏がいるとなれば……余計に取り乱すのは想像に難くなかった。ユウキらもキリト達の苦労をくみ取って、桂へ余計なことを言わないように決めている。
「ALO星にも、そばというものはあるのか?」
「そばですか? 何かの歌の名前でしょうか?」
[この地球にはな。俺の他に無口なプロフェッショナルがいるのだ]
「へぇ~。是非会ってみたいですね」
そんなことはつゆ知らず、桂はシウネーと。エリザベスはテッチと会話を交わしている。話が終わるのはまだまだ先のようだ。一方でクラインと軍曹は……未だに気絶している。
こうして思わぬ形で始まったスリーピングナイツと万事屋の江戸観光。メンバーがそれぞれが行きたい場所、会いたい人の向かう中で、次はシウネーが一番に行きたかった場所へ向かうことに……。
その一方で近藤、土方、沖田の真選組は、スリーピングナイツに代わってフレイアに同行。現在は警察庁を訪問していた。
彼女の警護に勤しんでいたが、予定とは異なる事態に土方は不満を口にしている。
「ったく、お転婆な姫様のせいで、とんでもない目にあったぜ」
「きっとそよ姫も、将来はフレイア王女と同じ雰囲気になりやすよ」
「ありえそうだからやめてくれ……」
沖田の小言には土方も大いに共感してしまった。フレイアを未来のそよ姫と照らし合わせたが、妙に皆しっくりと来ている。
一方でフレイアは、次なる予定について聞いていた。
「さて、次の予定はなんですか?」
「えっと、次は……警察庁長官へのご挨拶。吉原での視察が入っていて」
と近藤が予定を確認していた時である。ふとまたしても、彼の携帯電話に着信が入った。
「って、またとっつぁんか」
「松平さんですね。一旦電話に出ても大丈夫ですよ」
「は、はい」
相手は先ほどと同じく松平から。それを聞いたフレイアは、近藤に松平との連絡を優先させている。近藤は申し訳なさそうに会釈して、松平との通話に応じた。
「おい、とっつぁん! こっちはフレイア王女の護衛で忙しく……」
「おぉぃ、近藤ぅ。急だがキリトの連絡先について知っているかぁ?」
「はぁ、キリト君に何の用があるんだよ」
「実はよぉ、将ちゃんがまた会いたいと言っていてな。ハロウィンイベントもあるし、仮装してキリトと回りたいそうだ。アイツも強いと聞いているからな。思い切ってキリトォに護衛を頼めないかと」
「えっ……キリト君に護衛の依頼を!?」
松平は近藤の現在の状況を一切無視して、自身の要求を彼にぶつけてきた。その内容はキリトへの護衛の依頼であり、以前にカラオケ店で出会ったキリトを将軍こと茂茂が気にいり、ハロウィンイベントの護衛として彼を名指しした模様である。(あの時に出会ったキリトは、正確には銀時の人格が入った入れ替わり後のキリトなのだが……茂茂はそのことについてまったく気付いていない)
その上で松平は早急に近藤へ連絡し、キリトの住所について事細かに聞いてきたのだ。
「おいおい、何考えているんだ。将軍様は」
「アレ? 意外と面白い展開じゃないですかい」
「そう思っているのはお前だけだよ」
嫌な予感を察する土方に対して、沖田は不謹慎にもこの状況を面白がっている。フレイア王女を護衛する傍らで、真選組もまた将軍のわがままに振り回されようとしていた。
将軍をきっかけに、ハロウィンイベントは一筋縄ではいかない波乱が巻き起ころうとしている……。
ユウキ達スリーピングナイツがいよいよ地球へ外遊! フレイアの粋な計らいで、万事屋と共に江戸観光を満喫中です。
実はターミナルのシーンはもう少し縮める予定でしたが、折角ユウキと再会出来るならと想定よりも二倍くらい文字数が多くなりました。なので今回のお話、入れ替わり篇と同様にまた一話分伸びそうです……。
あと意外にも高屋八兵衛ことタカチン及び寺門通親衛隊が剣魂初登場! キリトやアスナも意外と、新八の親衛隊の時の姿は初めて見るそうです。あまりの厳しさにドン引きしていましたが……
そして次回は観光の後半と、出来ればハロウィンイベント当日の模様をお届けしたいですね。
次回予告
ユウキ「僕はアッスーの万事屋に行ってみたいかな」
アスナ「もちろん良いわよ。ごちそうも作るから!」
シウネー「皆さん、明日の警備ですが、何故か万事屋も参加することになっていますよ」
銀時「はぁ、なんで!?」
ユイ「パパを気に入ったある方からの指名だそうですよ」
神楽「誰アルか?」
茂茂「余だ。親友のキリト君に護衛をお願いしたいのだ」
銀時、新八「「しょ、将軍かよぉぉぉぉ!!」」
ユウキ「次回! モデルルームって、買うつもりが無くてもワクワクするよね!」
キリト「将軍と俺が親友……?」
神楽「きっと入れ替わりの時に、銀ちゃんが会った時あるよ」
キリト「あぁ、そっちか」