それとお知らせです。ハロウィンイベント篇が想定よりも二訓ほど伸びそうなので、タイトルを一部変更致しました。
「すまいる……?」
「そうです、ここが私の行きたかった場所なんですよ!」
万事屋とスリーピングナイツの江戸観光。続いて訪れたのは、かぶき町の繁華街にある風俗店、すまいるである。所謂キャバクラのようなお店で、この店に一番行きたがっていたのは意外にもシウネーであった。
「あの、シウネーさん。なんでこのお店に?」
「実は私の憧れている人が働いていて……」
「憧れ?」
「まさか……」
ユイがシウネーに来た理由を聞くと、彼女は照れながら返答する。テッチ同様に会いたい人がいるとのことだが、新八は薄っすらとその正体について察し始めていた。
すると、店内から一人の女性が声をかけに来る。
「あら。みんな揃ってどうしたの」
「あっ、姉御アル!」
来たのは新八の姉でお馴染みの志村妙。キャバクラでも働く彼女は、開店に向けて忙しなく準備をしている途中だった。
するとシウネーは目の色を変えて、妙に話しかけてくる。
「妙さん!」
「えっ!?」
「シウネー……?」
あまりの変貌ぶりに皆が驚く中で、彼女は妙の両手を掴み、再会を大いに喜んでいた。
「お久しぶりです! 覚えていますか?」
「あら、あなたはシウネーさんね。わざわざ来てくれたの?」
「はい! 地球へ来たら、絶対お妙さんに会おうと思っていたんです!」
妙もシウネーの事を思い出し、彼女へ優しく話しかけていく。なお肝心のシウネー本人は、妙と話す度にテンションが上がり、彼女への憧れを包み隠さず露わにしていた。
大人しく真面目そうなシウネーの珍しい反応を目の当たりにして、万事屋やスリーピングナイツの面々は、思わず気を引かせてしまう。
「おい、おたくの仲間。なんであそこまでお妙に心酔してんだよ」
銀時の呟きに、ユウキが咄嗟に返答した。
「一緒に戦った所謂戦友だと思うけど、まさかあそこまで尊敬していたなんて……」
「意外過ぎて言葉に詰まっちゃうわね……」
アスナもシウネーの豹変ぶりには、困惑をより深めている。元の世界で出会ったシウネーとも照らし合わせると、そのギャップをより鮮明に彼女は感じ取っていた。
「凛々しくて頼りになるとは思うけど……」
「少し粗暴と言うか……」
「勢いがありすぎるというか……」
ジュン、タルケン、ノリも思ったことをそのまま呟く。彼らはマッドネバーの策略で地球へ意図せず飛ばされた際、偶然にも妙と遭遇し、そこで彼女の豪快な性格を嫌と言う程体験していた。その恐ろしさは今もなお脳裏に焼き付き、シウネーとの反応の差を大いに感じ取っている。
「共感しかないな」
「キリトさん。僕も同じくです」
キリトや新八も概ね同じ気持ちのようだ。
そんな反応などつゆ知らず、シウネーと妙の会話は今もなお続いている。
「あっ、でもごめんなさいね。折角来てくれたのは嬉しいけど、まだお店の準備が終わっていないのよ」
「そ、そうなのですね……」
しかし妙にはまだ開店準備が残っており、折角盛り上がって来た会話も、中途半端なところで区切られてしまう。事情故に仕方のないことだが、シウネーはしょんぼりとした表情を浮かべていた。
すると妙は、シウネーにとある提案を促す。
「あっ、そうだわ。再会の記念に、シウネーさんに私お手製の料理をプレゼントするわ!」
「えっ、良いんですか!」
「もちろん。珍しく上手くいったから、食べてもらいたいもの」
再会を祝し、自作料理のプレゼントをシウネーへと勧めてきた。それを聞いた彼女は目を輝かせて、早速同意している。妙なりの優しさにより一層心を惹かれたシウネーであったが、対照的に銀時やジュンらは料理と聞いた瞬間に、心をドン引きさせていた。
「ま、待て!!」
「み、皆さん!?」
そしてとうとう我慢できずに、一同は揃ってシウネーへ必死に説得する。妙の料理がとんでもない劇物だと。
「おい、お前! 正気かよ!」
「ど、どういうことですか!?」
「お妙さんの料理はなぁ! ストレートに言うと生物兵器なんだよ!」
「食べたら命は無いですよ!」
「ワ、ワフ!!」
銀時、ジュン、テッチ、さらには定春までもが、焦った表情でシウネーに警告を促した。共に妙の料理の犠牲者又はその恐ろしさを間近で見てきた者故の感想であり、彼女までもがその料理の犠牲となれば目も当てられないのである。
最悪の場合、記憶障害や数時間の気絶も考えられる中で、仲間達は必死にシウネーへ思いとどまるように促してきた。
「そ、そんなに凄い出来なの……」
「残念ながら、皆さんの反応通りです」
「ただじゃ済まないというか……」
「ユッキー……お妙さんの料理って、もはや料理じゃないからね」
その実態を知らないユウキは、仲間達の反応からただ事じゃないと察する。新八やキリト、アスナも補足を加えており、増々妙の料理の恐ろしさを感じ取っていた。
「さっさと断った方が良いアルよ!」
「そうですよ! じゃないと命が……!」
と神楽やユイもシウネーを説得しようとした……ちょうどその時である。
「はい、どうぞ! お手製の卵焼きよ」
「で、でたぁぁあ!!」
妙は一連の流れに気付くことなく、マイペースにも弁当箱に詰まった卵焼き……とは言い難い黒い物体を、シウネーに見せてきた。
これこそが妙の料理である通称ダークマター。過去に多くの人間に被害を与えてきた劇物である。
「これは……変わった料理ですね」
「料理じゃないって! どう見てもヤバい物体だって!」
この期に及んでもなお、妙の料理の危険さにまったく気づかないシウネー。あまりの鈍感ぶりに、ユウキは思わずツッコミを入れてしまった。
「さぁさぁ、遠慮せずに」
「分かりました。頂きます!」
「あっ、ちょっと待って!」
仲間達の警告を一切気にすることなく、とうとうシウネーは妙へ勧められるままにダークマターを食べてしまう。
肝心の味はというと……
「美味しいです!」
「へ……」
「はぁ!?」
「はい!?」
まさかの好意的な反応である。シウネーは妙のダークマターを気に入り、ボリボリとその味を深く噛み締めていた。
「変わった味ですが、美味しいです。これが地球の卵焼きなんですね!」
「あらそう。気に入ってくれて嬉しいわ」
「はい!」
妙もシウネーの反応を嬉しく思っており、思わず満更でも無い笑顔を見せている。
彼女達の想定外な展開に、仲間達はただただ唖然とするしか無かった。
「おぃぃぃぃ! どうなってんだぁ、お前の仲間! あの料理食って、美味しいって言う感性何!?」
「ぎ、銀さん! 落ち着いてください!! 僕だって驚いているんですから!!」
銀時は取り乱しながらユウキらへツッコミを入れるも、新八から止められてしまう。彼からすれば妙の料理を食べて美味しいと言った人間は誰一人もおらず、その事実を受け止められずにいたのだ。
「アイツ、本当に人間かよ!」
「いや、シウネーさんは元々妖精で天人でしょうが!」
「そっか。って、それでも納得できるかコノヤロー!!」
今もなお取り乱しており、その度に新八が落ち着かせている。
また銀時程ではないものの、神楽ら仲間達もこの展開には大きな衝撃を受けていた。
「す、凄いアルナ。シウネーって……」
「知り会った時から、食べ物の好き嫌いがほとんど無かったけど、まさかこれほどだったとは……」
「いや、好き嫌いの問題なのかな……お妙さんの料理って」
しみじみとシウネーの食の好みについて振り返るユウキに、アスナは戸惑いながらツッコミを入れている。
無論ユイもアスナと同じくらい、この状況に戸惑っていた。
「お、お妙さんの料理を攻略しちゃうなんて……」
「皆さんから見ても、衝撃的なのですか?」
「まぁ……なんか末恐ろしく感じるな。この世界のシウネーさん……」
タルケンからの問いに、キリトは苦笑いで返答する。同時にこの世界のシウネーの底知れなさに、恐ろしさすら感じ取っていた。
一行にとっては、今回の観光で一番の衝撃を感じている。当事者のシウネーを除いて……。
「本当に大丈夫、シウネー?」
「何がですか?」
「大丈夫なら良いけど……」
ユウキはシウネーのお腹の具合を心配するも、彼女は依然として元気なままである。特に問題が無いのであれば大丈夫なのだが……それでもユウキは必然的に不安が尽きないのであった。
そんな一行はすまいるを跡にすると、かぶき町の中心街へと歩みを進めている。残るはユウキとノリの行きたい場所や出会いたい人のみとなった。
「あとはユッキーさんとノリさんの行きたい場所や会いたい人になりますね」
「二人はもう決まっているの?」
ユイやアスナが二人に聞くと、ユウキらはすぐに返答する。
「僕はもう決まっているよ。ノリは?」
「アタシは……どうかな。会いたい人がいるけど、どこにいるか分からないし」
ユウキは既に決まっているものの、ノリは少しだけ気乗りしていなかった。彼女には会いたい人がいるようだが、所在が不明な様子で、どこに行けば良いのか分からないのである。
「それって誰なんだ?」
「猿飛さん。前に一緒に戦ってくれたから、改めてお礼がしたくて。ただ調べてもどこにいるのか分からなくてね……」
ノリの会いたい相手は、猿飛あやめだった。地球で出会った時やALO星の戦いでの共闘などを通じて、彼女はあやめのことをもっと知りたいと思っている。
そんな彼女の想いをくみ取ると、早速ユイや銀時が行動に移していた。
「なら、大丈夫です。あやめさんの居場所なら分かりますから!」
「えっ、分かるの!?」
「まぁな。ほらよっと!」
すると銀時は自身の木刀を投げ飛ばして、電柱のある部分にぶつけていく。すると、
「ふぎぁぁ!」
「さ、猿飛さん!」
電柱の裏に隠れていたあやめが何の前触れも無く現れていた。銀時やキリトら万事屋は、普段通りに彼女のストーカー行為と認識していたが……その事情を知らないユウキやノリら六人は、何が起きたのかさっぱり分からずにいる。
「こ、こんな近くにいたの?」
「どういうこと?」
彼女達の困惑を気にすることなく、銀時はあやめへ普段通り乱雑にあしらっていく。
「ほら、起きろ、ストーカー! お前に珍しい客人だぞ、盛大にもてなせよ」
「ま、待って銀さん! 私はたまたま銀さん達を見かけて、ずっとついてきたのよ!」
「そんなのいつものことだろ。ほら、あそこのノリってやつと話して来いよ」
彼はノリの想いを伝えた上で、彼女と話すように促していた。当然あやめも電柱に隠れていた時にノリの件を知っているので、あやめは早速ノリの元まで近づいていく。
「あら、私に用なんて珍しいわね! 確かノリちゃんだったかしら。何か用?」
少し強気な態度でノリに話しかけるあやめ。
するとノリは、あやめに一番伝えたかったことをぶつけてきた。
「猿飛さん! あの時は見られなかったけど、アタシ……忍術ってものを間近で見たくて!」
「に、忍術?」
「魔法みたいに現実じゃあり得ないことが出来るんでしょ? そういうものに興味があってさ! 是非お願いして良い?」
そう。ノリが興味を持っていたのは、あやめの忍術についてだ。実は地球の忍者と言うものに彼女は興味を持ち、忍者でもあるあやめの技を間近で見たいと考えている。
「そういえば猿飛さんの得意技って、まだ私達も見たこと無いですね」
「忍者らしい素早い動きなら、銀さんのストーカーの時によく見ているもんな……」
忍術と言われると、ユイやキリト、アスナも途端に興味を持ち始めていた。言われてみると、あやめの純粋な運動能力は日々のストーカー行為で知っているものの、忍術に関しては一切皆無である。故にどんな技が披露されるか、皆気になっていた。
「わ、分かったわ! 今、見せてあげるからね」
とあやめも意気揚々と、ノリの頼みを了承する。忍術と言うからにはとっておきの技を彼女は披露しようとしたが……一瞬だけ体が固まってしまった。
「アレ?」
「さっちゃん?」
「ワフ?」
不穏な雰囲気を感じ取る新八、神楽、定春。咄嗟に出来ないとなると、かなり訳アリな技を使うのでは無いかと、彼らは思い始めている。
「おい、どうした。持っているだろ、一つくらい」
「急かさないでよ! じゃ、いくわよ!」
「おっ! とうとう!」
「猿飛さんの忍術って、どんなのだろ?」
銀時に急かされる形で、あやめはいよいよ自慢の忍術を披露していく。キリトやユウキらも大いに期待を感じて、あやめの方にじっと目を向ける中で……遂にその時が訪れていた。
「くらいなさい……秘儀! 納豆武器奪い!!」
「なんか懐かしいもんが出てきたぁぁ!!」
と彼女が取り出したのは、大量の納豆。自身の好物である納豆を時として武器に使用することもあり、彼女は鞭のように納豆を放出させていた。
そんな納豆の大群はノリの所持していたハンマーに付着し、簡単にそれを引っ張り上げてしまう。
「アタシの武器が!」
「ハハハ! これでアナタのハンマーは私のものよ! これを使って、銀さんを強制的に気絶……!」
「するのはお前じゃぼけけぇぇ!!」
「ぶほぉぉ!!」
仕舞いには悪役のような振る舞いをするあやめに、銀時へ蹴りを入れる形でツッコミをぶつけていた。彼女に膝をつかせつつ、一連の行動について文句をぶつけていく。
「てんめぇ! 人様の武器を納豆まみれにするとか、どんなもてなし方だよ!」
「そもそも忍術でもなんでもないだろ!!」
あまりのグダグダさに、新八もツッコミに加わっていた。
するとあやめは、即座に反論している。
「仕方ないでしょ!! 新技なんか出しても、読者はポカンとするだけでしょ!」
「だからって、納豆はもっとあり得ないだろ!」
「そんなことはないわよ! 納豆は私のアイデンティティーなんだから!」
「そもそも途中から、ほぼ使って無かっただろ!!」
痛いところを突かれてしまい、あやめは銀時側の勢いに押されつつあった。彼女が主張するほど、納豆関係の技は披露しておらず、あやめ自身にも自覚がある様子である。
忍術……とは異なりそうなあやめの技を目の当たりにして、皆反応に困りかけていた。
「変わった忍術だったね……」
「そもそも忍術なのかアレは?」
「ただの出オチアルよ」
困惑するユウキやキリトに、神楽は辛辣な一言を投げかけている。二人から見ても、先ほどのあやめの技が忍術だとは到底思えなかった。
「何やってんよ、あやめさん……」
「どう言葉にしたらいいのか詰まりますね……」
アスナはあやめの行動に呆れかえり、シウネーは言葉に詰まって何とも言えない表情を浮かべている。それはジュン、テッチ、タルケンも同じ想いであった。
「つーか、お前は大丈夫か? 武器が納豆まみれになったけど……」
そして銀時は、肝心のノリにも様子を伺っている。てっきり自身の武器を台無しにされて、ショックを受けているかと思いきや……
「す……」
「す?」
「すっごい良かったよ!」
むしろその逆。感激といったプラスな感情をノリは抱いていたのだ。
「へ?」
「えっ?」
「はい?」
彼女の想定外とも言える反応に、仲間達も思わず驚きの声を上げている。
一方でノリは、あやめに率直な気持ちをぶつけていた。
「ハンマーを一瞬で納豆まみれにして、自由自在に操るって忍術でしょ! いやぁ、期待以上だったよ、猿飛さん!」
「おーい、なんか勘違いしてんぞ。そもそも忍術じゃないし、どさくさに紛れて奪おうともしていたし」
「フフ。流石は騎士団、いやスリーピングナイツの一員ね。私の真意についても見抜くなんて。御庭番衆ともためが張れるわよ」
「んなわけないだろ、馬鹿垂れ」
逐一銀時が二人にツッコミを入れている。
いずれにしてもノリは、先ほどの納豆攻撃を忍術と信じており、間近で見られたことにだいぶ興奮していた。あやめもその場の雰囲気に合わせて、自身で虚勢を張っている。想定外の連続によって、意外にも場は上手くまとまりつつあったのだ。
「これは丸く収まったってことで良いんでしょうか?」
「まぁ、良いんじゃないアルか。多分」
ユイの疑問に神楽が返事する。妙に納得のいかないところもあるが、ノリ自身が満足なら問題無いと彼女は考えていた。
「ノリはさっきのような奇抜な技を見るのが好きだからね」
「でも、本人が満足しているなら良いんじゃない?」
「そうだな。それよりもまずはあの納豆を取り除かないと……」
ユウキ、アスナ、キリトも概ねユイと同じ気持ちである。一行の注意はノリの気持ちよりも、彼女の持つ納豆まみれのハンマーに向けられていた。一刻も早い対処が必要と思われる。
「まぁ。ノリさんも変わった趣向をお持ちなんですね」
「シウネーさん……アナタにだけは言われたくないと思いますよ」
一方でシウネーも思ったことをそのまま呟いたが、新八からツッコミを入れられていた。先ほどの妙の一件を含めると、彼女も変わった趣向を持っても可笑しくないからである……。
その後は無事にノリのハンマーについていた納豆も取り除かれて、あやめとの再会は無事に幕を下ろしたのであった。
ジュン、タルケン、テッチ、シウネー、ノリと各々がやりたいこと、会いたい人との再会を叶え、順調に進んでいる万事屋とスリーピングナイツの江戸観光。最後にいよいよユウキの番が来ていた。
「では、次はユッキーさんの番ですね」
「あっ! 私、知っているアルよ! ユッキーはダウンタ〇ンに会いたがっているに違いないネ」
「そっちも嬉しいけど、僕はもっと現実的に考えているよ」
神楽は先走って、ユウキが好きな芸能人の浜〇および〇ウンタウンのいるテレビ局を連想していたが……残念ながらその予想は外れである。ユウキも苦笑いで一蹴していた。
「現実的な場所って、どこなんだ?」
「そこは着くまでのお楽しみ! 場所ならアッスーの方が分かっているし」
再度キリトがユウキへ目的地について詳しく聞くと、彼女は返答を後回しにしている。どうやらアスナには事前に伝えているようだが……
「一体どこなんでしょうか?」
「適当にカラオケとかじゃないのか?」
「ちょっと銀さん。投げやりすぎですよ」
新八や銀時もその目的地について気になり始めている中で、一行はようやくその場所に辿り着いていた。
「みんな、着いたわよ」
「えっ? ここって……!?」
アスナが紹介した場所は……万事屋の本拠地である。つまり銀時やキリトらの住処だったのだ。
「万事屋!?」
「そう! 今の状態で来るのは初めてだし、何よりみんなどんな所に住んでいるか、少し気になっていたんだよね~」
ユウキはテンションを上げて、万事屋へ来た理由をつらつらと伝えている。彼女もマッドネバーとの戦いの際に、意図せずに万事屋を訪れたことがあるが、その時はあるアイテムにより兎にされた状態だった。元の姿に戻り、改めてアスナ達の住処へ遊びに来たかったのである。
「ユッキーってば、本当にウチなんかで良いの? 時間も限られているわけだし」
「良いんだって、アッスー! 友達の家に行って遊ぶ方が、僕にとって一番楽しいことなんだし!」
アスナはユウキが少し無理をして万事屋へ来ていると思っていたが、彼女のはつらつとした笑顔と紛れもない気持ちを知って、その心配を払拭させていた。ユウキの言った友達の家に行って遊ぶことが、アスナにとってもあまり経験のないことなので、間近で言われて嬉しい気持ちを感じている。
「そうだぜ。友達の家に行って、おやつをたかる! タダで食えるなんて、天国みたいなもんだろ?」
「生クリームたっぷりのケーキなんか、一番食べ甲斐がアルネ」
「おい、ムードぶち壊すな。つーか、お前らは今回出迎える側だろうが」
銀時や神楽の茶々に、新八は冷めた態度でツッコミを入れていた。遊ぶことよりも食い意地の方しか感じられず、他の仲間達は皆何とも言えない表情を浮かべている。
「と、とりあえずウチに入りましょうか!」
「そ、そうだな!」
気まずくならないうちにユイやキリトが気遣って、ユウキらを万事屋へと案内。中に入って、居間の方まで彼らを誘導していた。
「へぇ~、ここが万事屋の本拠地」
「中々落ち着ける場所ですね」
「ワン!」
室内へと入り早速思ったことを呟くタルケンやテッチに、定春が神楽らに代わって返事。揃って室内の色合いや家具の位置など、高く評価していた。
「ここではみんな揃って暮らしているのか?」
「新八以外はナ。こいつは実家から通っているアル」
「なので五人が普段は暮らしていますね」
ジュンも気になったことを聞くと、神楽や新八が答えを返してくれた。五人の共同生活と知ると、シウネーやノリはみんなが窮屈に寝てないか少し心配になっている。
「五人もいたら、寝る場所もぎゅうぎゅうではないでしょうか?」
「いいや、神楽は押し入れで寝て、俺は寝室の隅。ほんでキリト達は左側を丸々ってわけだ」
「やっぱり詰めているんだね」
銀時が補足を加えるも、それでも心配は拭いきれない様子であった。
「ウナギの寝床ってのは、こういう時に使うのかな……?」
「あの、ユッキー? そんなにウチ狭くないからね」
「いざという時は、ソファーで寝ても俺は大丈夫だし」
「ちょっとキリト君! それは私が許さないからダメだって!」
仕舞いにはユウキが深読みをし、キリトも遠慮の一言を呟いてしまう。二人に対してアスナは感情的にツッコミを入れてしまった。特にキリトに対しては、普段の添い寝から離れてしまうことに、かなりの不安をぶつけている。
そんな万事屋の普段の生活も垣間見えたところで、一行はひとまず居間にて休憩。
なおアスナは折角来てくれたユウキらの為に、台所で簡単なケーキを一から作っていた。
「アッスー、何か手伝うことある?」
「ううん、大丈夫よ。もうすぐ出来るから居間で待っていてね」
「いいや! 折角だから、ケーキ作り見ていていい? 気になるし!」
ユウキもアスナのケーキ作りが気になり台所に入るも、彼女は問題なく作っていた。そのケーキを作っている様子を、好奇心旺盛に眺めている。ユウキの無邪気な一面を見て、アスナも思わずクスッと笑っていた。
「ユッキーってば、可愛いんだから」
「えっ、そう?」
「うん。良い意味で子供らしいってこと」
アスナの一言に、ユウキは思わず嬉しさを感じている。
そんな二人だけの落ち着いた雰囲気が流れる中で、アスナはユウキにとある本音を伝えていく。
「ねぇ、ユッキー?」
「どうしたの。アッスー?」
「改めてありがとう。私のいた世界のユウキのことを知った上でも、私と友達でいてくれて」
それは自分の率直な気持ちだった。ユウキは意図しない形で、アスナと別の世界のユウキの件を知っている。ユウキと自分が瓜二つなこと、別世界のユウキが死んでしまったことも……アスナ側の事情をくみ取った上で、ユウキは彼女との交友関係を続けているのだ。(なおユッキーと呼ばれているのは、別世界で生きたユウキと区別する為である)
しんみりとした雰囲気に変わる中で、ユウキもまたアスナに自身の気持ちを伝えている。
「当然だって! むしろ話してくれた方が良かったし。アッスーにとって、別世界の僕がどれだけ大切な存在か分かったんだしさ」
最初こそ驚いていた彼女だったが、アスナの本心が分かった分、むしろ互いの心境が知れて良かったとユウキは捉えていたのだ。
「その上で……僕からもありがとう。アッスーが名付けてくれたユッキーってあだ名、とっても気に入っているから! だから、これからも宜しく!」
「ユッキー……私からも宜しくね!」
ユウキから差し出された手を、アスナは反射的に握りしめていく。ただケーキ作りの途中だった為、互いの手にクリームが付着してしまう。思わず可笑しく感じてしまい、またしても二人はクスッと笑っていた。
仲間達が居間で休憩する中で、二人は互いの気持ちを改めて吐露している。
こうしてケーキが完成すると、全員分に切り分けて、アスナが煎れた紅茶と共に皆一息付いていた。
「ふぅ~。やっぱり友達の家に来たら、ショートケーキに限るぜ」
「友達の家じゃないって言ってんだろ。アンタの家でしょうが」
銀時の適当な返事に、新八は手早くツッコミを入れている。小言を呟いたが、彼はアスナの作ったケーキを高く評価していた。
「やっぱりアッスーのケーキは美味しいアルよ!」
「うんうん! 美味だからおかわり、いやもう一ホール作ってほしいな!」
「同じくネ!」
「って、無茶言わないでよね、二人共」
特に神楽とユウキは食べ進めるのが早く、無理を承知でアスナにおかわりを求めている。二人のおねだりに困惑を感じながらも、美味しくケーキを食べてくれて、アスナは嬉しく思っていた。
「満更でも無さそうな表情してますね」
「そりゃ、ユッキーもケーキを気に入ってくれたからな」
「あんなに美味しそうに食べる姿、久しぶりに見ましたよ」
ユイやキリトもアスナの幸せそうな表情が見られて、一安心している。シウネーらもユウキの笑顔が見られて、同じく安心していた。
互いに一仲間として、二人の動向を見守っている。
こうして休憩も一段落して、万事屋とスリーピングナイツの江戸観光もいよいよ終わりが近づこうとしていた。
「よしっ。じゃ、そろそろ……万事屋の皆さん! 今日はありがとう! 僕らのオフの時間に付き合ってくれて」
「いやいや、こちらこそ楽しかったよ」
「ワン!」
ユウキらの感謝のお礼に、キリトや定春が返答する。互いに有意義な時間を過ごせて、より深く交流できたと感じていた。
「明日のハロウィンイベントの警備も頑張れよな」
「言われなくても分かっているよ!」
銀時の励ましに、ジュンが勢いよく返答する。
「因みに皆さんはハロウィンイベントに行かれるのですか?」
「はい。私は友達と行きますよ!」
「私らはまぁ適当な時間に見に行くアルよ」
「ってことは、また明日も会えるかもね!」
テッチもノリもまたキリトら万事屋と出会える可能性が見えて、嬉しく感じていた。なお万事屋側としてはユイが友達と同行、神楽ら五人は好きな時間に祭りへ赴く予定である。
「では、明日はしっかりと警備しないといけないですね!」
「そうだね。みんなが安心してハロウィンを楽しめる為にもね!」
ユイらが安心してハロウィンを楽しむ為にも、シウネーやノリは一層明日の仕事に向けて気を引き締めていた。徹底して護衛や警備に徹すると決意している。
「では、明日も宜しくお願いしますね」
「みんなとまた出会えること、楽しみにしているわ!」
新八やアスナもユウキらの仕事を応援していた。彼らとならばまた明日どこかの会場で出会えると信じている。ユウキら六人はすっきりした表情で、万事屋に返していた。
こうして万事屋とスリーピングナイツの江戸観光は無事に終了。みんなが明日のハロウィンイベントに向けて意気込んでいた……その時である。
「おぉい、こんなところにいたのか?」
「ん?」
玄関先より特徴的な男性の声が聞こえてきていた。皆が聞いたことのある声に注意を向ける中で、一人の男性が万事屋の居間にそそくさと入り込んでいる。
「よぉ。スリーピングナイツの皆。休暇中に失礼するぞ」
「ま、松平長官!!」
やって来たのは、警察庁長官の松平片栗虎。真選組や見廻組などの警察組織の責任者だ。
無論ユウキらスリーピングナイツも何度かやり取りがあった為、彼に対し礼儀正しく姿勢を整えている。
「おいおい、なんであのおっさん来ているんだよ」
「僕らじゃなく、ユッキーさん達に用事があるみたいですけどね」
「それにしても、急すぎるアルよ」
一方で銀時、新八、神楽、定春も見たことのある顔に恐れおののいていた。
しかしキリト、アスナ、ユイの三人だけは、松平とは今回が初めての遭遇となり、手探りに彼の雰囲気を感じ取っていく。
「あの人が松平さん……」
「警察のトップってことよね」
「でもなんで、そんな人がここに来たんだ……?」
威厳ある風格に三人も思わず怯んでいたが、何よりも万事屋へ来た理由がいまいち分かっていなかった。恐らくはユウキらに用があると思われるが……。
すると松平は、全員に向かってあることを伝えている。
「何ぃ、楽にしてろ。今回は明日の警護の班の振り分けが決まったから、伝えに来たんだ」
「班の振り分け?」
「そぉだ。テロ対策も兼ねて、真選組とスリーピングナイツで、各エリアに班分けすることになったからな。口頭で伝えるから、よく覚えておけよ」
彼の要件は、明日の仕事内容の発表だった。ハロウィンイベントの警護に当たり、真選組とスリーピングナイツのメンバーを分散して、各エリアの見張りや要人警備に当てるという。皆が注意深く松平の話を聞く中で、彼は早速割り振られた班を発表していた。
「フレイア王女の警護、近藤、土方、シウネーの三名。北東エリアの警備、沖田、ジュン、ノリの三名。南西エリアの警備、テッチ、タルケン、斉藤の三名。将軍の警備、ユウキとキリトら万事屋。以上だ」
班ごとにそれぞれ三名以上が当てられて、皆自分の役割を再度振り返っている。
「私は王女様の護衛ですね」
「沖田さんと一緒かー」
「斉藤さんって方と一緒だそうですよ」
「一体誰なんでしょうか?」
シウネーらが色々と振り返る中、ユウキと万事屋だけは松平の発表に異議を唱えていた。
「ちょっと待って! 僕は将軍の護衛なの?」
「そうだ。因みに変更は不可だからな」
「いや、僕は大丈夫なんだけど……万事屋って言わなかった?」
そう。ユウキや銀時らはしっかりと聞こえていたのである。将軍の護衛役に万事屋も含まれていることを。
「おい、おっさん! どういうことだ、それ!」
「なんで私達も含まれているアルか!!」
我慢できなくなった銀時や神楽が文句をぶつけると、松平は渋い顔のまま懐に入れていたある手紙を取り出した。
「それはなぁ、将ちゃん直々の指名だから。これを読んでみろ?」
「これ?」
その手紙をキリトにぶつけると、彼は手紙を開いて、将軍こと茂茂が書いた手紙を読み始めていく。
「万事屋のキリト君。久しぶりです。カラオケの時は、余のお願いに答えてくれてありがとう。そなたの歌も中々に上手だった。ところで風の噂で聞いたことだが、キリト君も中々の実力者と最近知った。仲間と共にテロリストを壊滅させたと。そんな親愛なる君の強さがあれば、警備を任せても良いと余は思っている。今回のハロウィンイベント、余はお忍びで楽しみたいのだ。警護を宜しく。将ちゃんより」
それはキリトへの想いを綴った手紙だった。どうやらカラオケ店で初めて会って以降、彼のことを気にかけており、今回直々にキリトら万事屋に警護をお願いした様子である。
「えっと、これは……」
なお肝心の本人は、どう反応して良いか困惑していた。なぜならカラオケ店で出会った時のキリトは、銀時と入れ替わった時だったので、彼は何一つ将軍に思い入れが無いのである。銀時から話は聞いていたが、いざこの事実に直面すると、キリトは何とも言えない表情を浮かべてしまう。
一方で、
「って、将軍自らの指名かよぉぉ!!」
銀時らはこの手紙をきっかけに思いっきり取り乱していた。
「ちょっと銀さん! どうするんですか!! もとはと言えばアンタが!」
「うるせぇ! そもそもその話、長官の前で言うなよ! 将ちゃんどんだけキリトのこと気に入ってんだよ! もう訳わかんねぇよ!!」
新八が銀時を落ち着かせるものの、やはり彼は冷静になろうとしない。銀時自体も将軍こと茂茂が異様にキリトへ気にかけている事実を知って、大いに困惑していたのだ。キリトに文句をぶつけようにも、今回の原因が自分にある為、どこにもぶつけようが無いのである。
一方でユウキやユイは、事情を知らないままキリトと茂茂に繋がりに驚きを示していた。
「キリトってば、凄くない!?」
「そうですよ! 将軍様からのお墨付きですよ!」
「あぁ、それはそうなんだが……あの時の俺は俺じゃないというか」
「どういうこと?」
勘違いしている二人に、キリトは小声で事情を説明している。
「ユ、ユッキーと将軍の護衛!?」
「意外すぎるアルナ」
「また将軍様の件で巻き込まれなきゃいけないの……?」
そしてアスナと神楽も困惑を口にしていた。特にアスナは以前に茂茂の新メニュー作りに、真選組と共に巻き込まれた経緯があり、また茂茂に振り回されることに辟易していたのである。
「以上だ。それじゃ、明日な」
「おい、待てや!! こんだけの大役だから、依頼料とかあるよな! 聞いているのか!」
なお松平は、すべての要件を伝えると、すぐに万事屋を去ってしまう。銀時の静止を無視しして、そのまま玄関から出て行ってしまった。
「ど、どうするんだ、これ!」
「どうするも何もやりきるしか」
「落ち着いて、銀さん! 僕が護衛のいろはについて、しっかり教えるから大丈夫だよ!」
「ユッキーさん。有難いんですけど、そういう問題じゃない気が……」
突然振られた仕事に困惑する銀時に、ユウキは優しくも手助けしようとしている。なお新八からは、本質からずれているとツッコミを入れられていた。
一方でアスナらは、茂茂からの手紙を再度確認している。
「親愛なる君か……」
「キッリ―が将軍に気に入られている証拠ネ!」
「それにしては、一方通行な気もするけど……」
アスナ曰く、茂茂がキリトを気に入る理由がいまいちよく分かっていなかった。それも全てキリトではなく、入れ替わった銀時が原因のようにも見えなく無いのだが……。
「万事屋も警備に参加するのか?」
「大丈夫なんでしょうか?」
「大丈夫ですよ、きっと」
「そうです! 彼らも強いんですから。それにユウキもついているんですし!」
「でも、将軍の護衛はアタシでもプレッシャー感じるな」
一連の話を聞いていたジュン、タルケン、テッチ、シウネー、ノリも思い思いに呟いている。不安に感じるもの、万事屋やユウキなら乗り越えられるもの、将軍のプレッシャーを激しく感じるものなど、その反応は多種多様であった。
いずれにしても、急な仕事を振られた万事屋が不憫で仕方ないと感じている。
こうして万事屋とスリーピングナイツは、思わぬ形で明日も行動を共にすることになったのだ……
「楽しみにしているぞ、キリト君」
なお、茂茂は今からでもキリトと出会えることを楽しみにしている。
今回は江戸観光後半戦をお届けしました。
観光ではシウネー、ノリ、ユウキの順に行きたい場所や会いたい人の元へ訪問。まさかのシウネーがダークマターの耐性があるなんて……それにしても劇物だと命が無いだの生物兵器だの、みんな好き放題言ってますね笑 さっちゃんの納豆ネタも懐かしいネタではないでしょうか。
それとユウキらが万事屋の住処を訪れるシーンは、SAO原作のマザロザ編で22層のログハウスを訪れるシーンをオマージュしております。
そんなこんなで次回からハロウィンイベント当日! 銀時、キリト、新八、アスナ、神楽、ユウキの六人が、まさかの将軍の護衛に着きます。どうなることやら……。
次回予告
新八「ちょっとぉぉぉ! なんで僕らまで警護に参加しているの!!」
銀時「しかも将軍だぞ! どうすんだよ、キリト!」
キリト「いや、アレは入れ替わった時の銀さんだから、俺のせいじゃないぞ」
ユウキ「とにかく頑張ろう、アッスー! みんな!」
アスナ「ハハ。大丈夫かな……」
神楽「次回! 仮装だからって、なんでもいいわけじゃない!」
ユイ「私は晴太君達とトリックオアトリートです!!」