剣魂    作:トライアル

144 / 159
 約六話分まで続いたハロウィンイベント篇もいよいよ終幕です!
 そして時間も出来たので、なんと! 最後にあのキャラクター達もサプライズ登場します。最後まで楽しんでいってください。



第百二十七.五訓 人を欺いてこそ真の仮装(延長戦)

「アレ? 神楽さん?」

「あっ、ユイにみんな!」

 茂茂の着替え用の服を購入して、公園に戻ろうとした神楽だったが、その帰り道に彼女はユイや晴太達とばったり遭遇していた。彼らがお菓子の詰まった袋を抱えているのを見ると、神楽はユイらがハロウィンを楽しんでいることに気付き、微笑ましさを感じている。

 だが同時に、彼女はある知り合いを発見していた。

「か、神楽さん……?」

「そよちゃん!? 一緒に回っていたアルか?」

 そう。将軍の妹君である徳川そよである。そよとの再会は神楽にとっても想定外のようで、神楽は大きく動揺していた。

 しかし今の彼女は、晴太とユイ以外には偽名を使っているので、聞きなれない名前にいずみ達は疑問を浮かべている。

「そよ? ペルソナちゃんじゃなくて?」

「一体どういうことだ?」

「えっとニックネーム! ニックネーム! 神楽ちゃんの時は、また違う呼び方になっているんだよ!」

 晴太は慌てて理由を考えて、いずみらに弁明していた。

 そんな理由など知らない神楽は、なんとなく雰囲気を察し、ユイとそよに小声で同行していた理由を聞いている。

「一体どういうことアルか?」

「実はいずみさん達に、そよさんの正体は内緒にしているんです」

「そうです。私自身は兄上様の忘れ物を届けに、このハロウィンイベントに訪れたんですよ。まぁ、本音を言うと、ユイさん達と一緒に回りたかった気持ちもありますけどね!」

 ユイやそよの話を聞き、やっと神楽は二人の真意について理解した。そよの目的にユイらが親切に協力しているとのこと。茂茂を探していると聞いて、神楽もすかさず彼女達へ協力することにしている。

「分かったアル。そよちゃん、将軍様ならもう場所は分かっているヨ」

「本当ですか!?」

「おうネ。私についてくるヨロシ!」

 茂茂の行方が分かり、思わず安堵の表情を浮かべるそよ。神楽のご厚意に甘えて、彼女の跡を追いかけることにした。

「皆さん。こっちです! 晴太さん達も行きましょう!」

「み、みんな!?」

「ちょっと!? どこに行くの!?」

 急な展開に困惑しつつも、晴太達は流れのままに神楽達の跡を追いかけていく。何が起きているのかさっぱり分からぬまま、ひたすらに彼らは走り続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 一方でドラッグストア「松尾と清志」に到着したリーファ達は、入り口前にてまたしてもあの男と再会している。

「ん? どうしたんでい、お前ら」

「お、沖田さん!?」

 それは数分前に出会ったはずの沖田、ジュン、ノリの三人の警備班だった。偶然の遭遇に皆が驚くも、やはりリーファだけは苦い表情を浮かべている。

「また沖田さん?」

「なんでい。不服ですかい」

 いつまで経っても苦手意識は拭いきれない様子であった。

 そんなことはさておき、ジュンやノリはシリカらにドラッグストア前にいる訳を聞いている。

「ところでみんなはどうして薬屋に?」

「いや、実はキリトさんが鼻血を出したらしくて、絆創膏を買いに来たんですよ」

「なんか多目的用の厠の壁が壊れていて、銀さん達が不自然に見えないように守っていたのよね」

「えっ? そうなの?」

 シリカやリズベットの返答を聞くも、状況の不可解さにジュンらはさらに困惑していた。特殊な状況には沖田も引っかかっており、さらに詳しい事情をシノンやリーファらに聞いている。

「ん? なんで多目的用の厠にずっといたんですかい?」

「それは……アレ? そういえばなんで?」

「そもそもなんであの場所にずっといたんだっけ?」

 彼女達も改めて振り返ると、この不可解な状況に段々と違和感を覚え始めていた。

「ナァ~」

 なおピナだけは冷静に捉えており、キリトの為に周りが見えなくなっていた彼女達には、つい渋い表情を浮かべている。

 聞けば聞くほど謎の深まるキリトの現状だが、沖田だけはどこか滑稽に面白おかしく感じ取っていた。

「こいつは予想外でしたが、随分と面白いことになってやすね」

「いや、面白くはないだろ」

「アンタはアンタでどういう感性しているのよ」

 淡々とマイペースに語る彼に、ジュンとノリは率直にツッコミを入れている。今日だけで沖田の恐ろしさを、二人は嫌と言う程理解していた。

 と沖田やリーファらが話を交わす傍らで、彼はある集団を見つけている。

「ん? 姫様?」

「姫様!?」

 沖田が発見したのは、どこかへと駆けるそよやユイ、神楽の集団。彼女達は沖田らに一切気付くことなく、走り続けていた。

「今のって……」

「てか、なんで姫様が晴太君達といるの!?」

 神楽、晴太、そよと言った接点の見つからない者同士の集まりは、皆にとっての大きな衝撃を与えている。特にリーファは一度そよとも会ったことがあるので、彼女の立場上、増々ユイや神楽と一緒にいる理由がよく分からずにいた。(そよも神楽やユイとは接点があるが、この時のリーファはまったくそのことについては存じていない)

「しゃあねぇ。とりあえず追いかけるか」

「ちょっと待ってって、沖田さん!」

「置いて行かないでくださいよ!」

 そよの行方を気にしていた沖田は、率先して彼女達の跡を追いかけることにする。つられてジュンやシリカらも、沖田と共についていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

〈ガシャーン!!〉

「あっ!?」

「おぃぃぃぃ!!」

 そして銀時らのいる公園側でも、大きな動きがあった。なんと偶然にも休暇中だったユージーン将軍と再会したものの、彼が振るった大剣が、不運にもキリトや茂茂のいる多目用の厠の壁にぶつかってしまう。本当は周りに飛ぶハチを追い払おうとしたものの……勢いの余った結果、空振りとなってしまった。

「よし! ハチは追い払ったぞ!」

「じゃねぇだろ! 後ろ見ろ、後ろ!」

「後ろ? えっ、どういうことだ!?」

「そのまんまだよ! アンタがぶち壊したんだよ!」

 一仕事を終えて満更でも無い表情を浮かべるユージーンに、銀時と新八は大袈裟な反応で彼にツッコミを入れ続ける。ユージーンも後ろを振り向き、ようやく事態を察していた。

「す、凄い威力……」

「あの剣って、僕らが思っている相当重いらしいからね……」

 あまりの力技に内心ドン引きするアスナとユウキ。共に苦い表情を浮かべている。

 だがしかし、本当に不味い状況はここからであった。

「おや? 誰かいるぞ!」

(あー!! 不味いです、銀さん!!)

(おいおい! 将軍に将軍の将軍を見られてしまうぞ!!)

 そう。現在多目的用の厠にいるキリトと茂茂の方である。何を隠そう茂茂は上半身しか服を着ておらず、無論不審者と間違われても可笑しくない恰好だ。もしユージーンに見られようものなら……赤っ恥も良いところであろう。

 そんな窮地に追い込まれた二人。もうダメかもしれないと銀特やユウキが思い始めた時であった。

「やぁ。久しぶり、みんな」

「えっ?」

 そこにいたのは隊士服を着たキリト一人である。茂茂の姿は一切見られず、新八やアスナらは思わず困惑してしまう。

「おっ、キリトじゃないか。やっぱりお前も万事屋と一緒に行動していたのか?」

「そうそう。でも少しお腹を壊して、厠に籠っていたんだよな」

 ユージーンは素直にキリトとの再会を喜んでいる。キリト自身も冷静に対応する中で、銀時らの注目はさっきまでいた茂茂に向けられていた。

(おい、どこに行ったんだよ! 将軍は……)

(いや、見てください! 銀さん!)

 必死に目で行方を追う中で、新八はようやく彼を発見する。現在茂茂は前かがみになり、キリトの後ろに隠れていた。キリトの動きに合わせて、自身も体勢を変えており、ユージーンへバレないように振舞っている。

(あんなところにいるのか……)

(将軍様、頑張ってますよ! さぁ、いち早くユージーンさんとキリトさんを離れさせないと!)

 正体がバレないうちに新八は、ユージーンの興味を別の方に差し向けようとしていた。その隙に厠から移動させて、別の安全な場所に退避しようと決めている。新八の意思をくみ取り、銀時、アスナ、ユウキ、キリトも阿吽の呼吸で察していた。このまま隠密に進めようとした……その時である。

〈ピッ!〉

「えっ?」

 なんと、さっきまでまったく開かなかったドアが、途端に動き出していた。何者かが外側のボタンを押したようで、ゆっくりとドアが開いていく。そこに立っていたのは……かぶき町を彷徨う有名なホームレス、武蔵っぽい人である。

「ん?」

 武蔵っぽい人は厠に入ろうとした瞬間に、その異様な光景を見て愕然としていた。厠の穴は空いており、中にいるのは全裸の成人男性。当然茂茂本人だとまったく認識せず。そして……

「ぎゃぁぁぁ!! 不審者!!」

訳も分からずに彼は大きく叫び声を上げていた。

「お、おい! 落ち着け!」

「これには深い訳があって……!」

 喚き叫ぶ武蔵っぽい人を落ち着かせる銀時や新八。訪れた最悪の事態に皆が慌てふためく中、さらなる悪い連鎖が起きようとしていた。

 

「この声は……」

[叫び声だ。行くぞ、テッチ君]

「はい、終さん!!」

 それは付近をパトロールしていた終、テッチ、山崎、タルケンの警備班である。終とテッチは公園から聞こえる叫び声に気付き、急いで現場に向かっていた。

「どうしたんですか、二人共!」

「と、とにかく追いかけよう!」

 終達の急な行動に驚くタルケンと山崎。見逃さないように彼らもその跡を追いかける。

 

「だから落ち着けアンタ! 不審者じゃねぇって言っているだろ!」

「じゃ、アレは馬鹿には見えない服だって言いたいのか!」

「もうそれで良いよ! 頭のいい奴しか見えないんだよ! 当然アナタは見えるよな!」

「はぁ!? ふざけおって!!」

 武蔵っぽい人を説得しようとするも、最終的には煽りあいになり、口喧嘩に乗っかってしまう銀時。

 一方で今まで意図的に見ないようにしていたものの、茂茂の全裸姿が公になり、アスナとユウキはつい後ろを向いて意地でも見ないように目線を避けていた。

「ねぇ、キリト君! 新八君! なんでも良いから早く隠して!」

「そうじゃないと僕ら振り返れないから!」

 顔を真っ赤にして、異様に彼女達は恥ずかしがっている。

「分かってますから! とりあえずキリトさん! 真選組の上着で将軍様の将軍を隠しましょう!」

「で、でもこれって借り物だから……そんな使い方したら」

「切腹されるよりはマシですから!」

 新八は最終手段として、隊士服の上着をズボン替わりにすると提案。キリトは借り物故に彼の提案にためらいを覚えていたが……事は一刻を争う為、意地でもその考えを通そうとしていた。

「な、何が起きているんだ……?」

 もちろん事の状況を知らないユージーンは、まったく状況を読み取れていない。ただ一人困惑するしかなかった。

 と皆が右往左往に混乱する中で、被害を最小限に抑えようとしていた時である。

「見つけた!!」

「へ!?」

 その場に乱入してきたのは、テッチと終のコンビ。二人は勢いよく飛び上がり、不審者らしき男に狙いを定めると……

「「はぁぁぁ!!」」

「ん!?」

渾身の飛び蹴りを男……いや、茂茂に浴びせていた。二人のキックにより吹き飛ばされた彼は、そのまま公園の茂みに放り込まれてしまう。茂茂は白目を剥いたまま、そのまま気絶してしまった。

「やったな、終さん!」

[あぁ。テッチもな]

「じゃねぇだろ!! なんてことしてくれたんですか、アンタら!!」

「将軍! 大丈夫か!!」

 不審者を撃退し、達成感を覚えるテッチと終だったが、銀時らからすれば余計なお節介であり、ツッコミを入れつつ茂茂の行方を心配している。

 トラブルが相次ぎ、なんとか茂茂の姿だけは隠そうとした銀時らだったが……最終的には不審者扱いされ、理不尽な攻撃を受ける悲惨な末路を辿ってしまっていた。

「えっ? 何が起きたの……?」

「恐らく終さん達が不審者と間違えただけだと思う……」

「えー! ちょっと、何しているの!!」

 困惑するアスナやユウキに、キリトが苦い表情で現状を伝えている。勘違いしたテッチの行動には、ユウキもつい彼に文句をぶつけていた。

 そして同じタイミングで神楽やユイらも現場に駆け付けるも、正直何が起きているのかさっぱり分かっていない。

「え……何が起きたアルか?」

「どういうことでしょうか?」

 彼女達も状況を理解するには、まだまだ時間がかかりそうではあった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄上様! しっかりしてください、兄上様!」

「ん? そよ? どうしてここに?」

「良かったです……やっと目覚めてくれて」

 気絶していた茂茂に呼びかけていたそよは、やっと彼が正気に戻り一安心していた。何が起きているか分からない茂茂であったが、着用しているズボンや下着が新しくなっていることから、随分と時間が経ったと推測している。

 彼の考え通り、茂茂の気絶からおおよそ一時間が経過していた。その間に銀時らが身支度を整えて、ハロウィンイベントの会場本部まで移動させている。

 故に周りには多くの関係者がおり、銀時、キリト、新八、アスナ、神楽、ユウキのハロウィンを共に巡った者。ユイ、定春、晴太、いずみ、いずみ兄のそよと一緒に巡った者。近藤、土方、フレイヤ、シウネーの本部にて待機していた者。沖田、ジュン、ノリ、山崎、タルケン、テッチ、終の会場を警備していた者。シリカ、ピナ、リズベット、リーファ、シノン、ユージーンのたまたま遭遇して付いてきた者など、茂茂とそよの周りには、二十六人と二匹の関係者が集結していた。

[す、すまない]

「もうしわけありませんでした! 将軍様!」

 第一声に声およびスケッチブックを上げたのは、終とテッチ。彼らは茂茂を不審者として攻撃してしまったことを、深く反省していた。

「まぁまぁ、二人もこう言っているわけだし、許してあげたらどうだ?」

「いや、アンタは何様なんだよ」

 つられて銀時は軽いノリで茂茂に接する。あからさまな態度には、新八もついツッコミを入れていた。

「でも良かった~将軍様が無事で」

「一時は冷や冷やしたよ~」

「お疲れ様だったアルナ、二人共」

 茂茂の無事を確認出来て、一安心するアスナとユウキ。自分の知らない間に大きな苦労をしていた二人に、神楽は元気よく二人を労っていく。

「つまりキリト達が将軍様の護衛に当たっていたの?」

「ちょっと沖田さん! お兄ちゃん達、仕事だったじゃん! 隊士服も仮装じゃなかったし!!」

 一方でシノンやリーファら女子達は、ここでキリトらの事情を把握。沖田の証言とはまるで異なり、リーファは彼に大声で文句をぶつけていく。

「あれれ。そいつは俺も驚きでさぁ」

「絶対分かっていたでしょ」

「流石沖田さんです……」

 なお当の本人はまったく悪びれていない。せせら笑いを浮かべながら聞き流す沖田の姿に、リズベットやシリカは思わず呆れかえっていた。

「俺の予感が当たる結果になるとは……」

「土方さんは随分と勘の鋭い方なんですね。流石真選組の副長です!」

「あのシウネーさん!? 今このタイミングで言うことじゃないよね、それ!?」

 一方で土方は、自身の予想通りの展開になったことへ憤りを感じている。なお、シウネーは呑気にも土方を褒め称えており、そのおっとりとした姿勢に近藤もついツッコミを入れてしまう。

「えっ? 本当に将軍の妹だったのか?」

「びっくりだよ……晴太君達は知っていたの?」

「ま、まさか! オイラだってびっくりしているよ!」

「わ、私も同じです!!」

 いずみといずみ兄はそよの正体を知り、素直に驚いていた。ただ純粋にもユイと晴太とそよの関係性には気付いておらず、二人のことはまったく疑っていない。晴太とユイは空気を読んで、いずみ達の話に合わせていた。

「すまない姫様。まさかこのような事態になるとは知らず……」

「いえいえ。私の方でも情報共有できず、申し訳ありませんでした。お忍びとは聞いておりましたが、まさかトラブルが起きていたなんて」

 手助けどころか余計な手間を増やしてしまい、ユージーンはフレイヤへ謝罪している。ただフレイヤ自身も、茂茂側にトラブルが起きていたことは、まったく想像していなかった様子だ。

「こうも本部に十数人にも集まるなんて」

「圧迫感が凄いですね……」

「てか律義に全員集まらなくてもいいのでは?」

「まぁ良いんじゃない。少し狭いけど」

 ジュンやタルケンは、狭い本部に密集する人混みを見て、つい圧迫感を覚えている。山崎は本音を呟くものの、ノリが彼をそっと宥めていた。

 そんな各々のやり取りが交わされる中で、そよは茂茂にようやくあるものを渡している。

「あっ、兄上様! 今更ですが忘れ物を届けに来ました?」

「忘れ物?」

「これです! お忍びの際に必要なものですよ」

 そう言ってそよが渡してきたのは、茶色い紙袋だった。大切に包まれており、これを渡す為だけにそよは城を抜け出したのである。

「そうか……迷惑をかけたな」

「お気になさらず。兄上様のフォローも立派な妹の務めですから!」

 そよの気遣いを感じ取り、飾り毛の無い感謝を伝える茂茂。兄に褒められて、思わず誇りに思っているそよ。互いを思い合う兄妹の絆を目の当たりにして、周りにいた友人達もほっと温かい気持ちに浸っていく。

「良かったですね、そよさん」

「同じくネ! そよちゃんとっても嬉しそうアル!」

 そよの目的が叶って、彼女とも縁の深いユイと神楽は小声でそっと喜んでいた。

「良いよね。お兄ちゃんを思う妹って」

「理想的な兄妹像よね……」

「まぁ、どっちもお転婆だけどな」

 ユウキとアスナの二人も、茂茂とそよの関係性を羨ましく思っている。銀時だけは皮肉を呟いたものの、彼らの関係性は素直に肯定していた。

「将軍様……良かったな」

「そよさんとも合流出来ましたし」

 キリトも茂茂らの想いをくみ取っている。今日一日護衛の立場にいたものの、彼の感性や気持ちは社交的で慈愛に溢れているとキリトは考えていた。無論新八も同じような気持ちを持っている。

 その場に同行していたリーファや近藤らも茂茂らを優しく見守る中で、注目はそよの持ってきた茂茂の忘れ物に向けられていた。茂茂は早速袋を開けて、中に入っていたあるものを取り出している。その正体は……

「こ、これは!」

「えっ?」

多数の変装グッズであった。黒いサングラスと人の口がプリントされたマスク、茶色くまるで汚物が付いたようなちょんまげのカツラに、何故か白いブリーフパンツまで入っている。

 この明らかに癖の強いものしか入っていない変装グッズに、場にいた全員は皆ドン引きしていた。

「兄上様にとって必要なものかと思い、片っ端から持ってきちゃいました」

「そうか……ありがとうそよ。では、皆の者。余はこれに着替えて、またハロウィン巡りを……!」

「却下だ!」

「おい! こんな姿で外を出歩けるかよ!!」

 そよの無邪気さを過信して、茂茂だけは有難く感じている。変装グッズを早速着用しようと試みるも、銀時や新八からは激しい口調で却下されていた。変装して身を隠すどころか余計に悪目立ちすると思い、茂茂へ説得を試みている。

「へ、変装なんだアレ……」

「妹さんも個性的すぎない……?」

「子供らしいっちゃ子供らしいけど……」

 当然ユウキ、アスナ、キリトの三人も、そよのセンスにやや引き気味であった。キリトだけは子供らしい無垢な性格だと信じていたが……それでも苦い表情を浮かべる始末である。

「お兄さん思いのそよさんらしい気遣いですね!」

「そうアルナ!」

 一方でユイと神楽は、そよの行為をまったく不思議に思っていない。素直に彼女の優しさを一緒になって褒め称えていた。他の者達は大なり小なり心を引かせていたが……

 

 こうしてハロウィンイベントは大盛況のまま無事に終了。終わり際には、茂茂とそよも一緒になって、また少しだけお忍びでイベント会場を巡ったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして……その翌日には早くもユウキやフレイヤ一行は、地球での外遊を終えて、故郷であるALO星へと帰還することに。

「じゃあね、ユッキー!」

「二日間ありがとう、アッスー! また地球に来るからね」

「うん。いつでも待っているから!」

 ターミナル内にて宇宙船の出発間際に、ユウキとアスナの二人は固い握手を交わし、互いの別れを惜しんでいた。離れていてもいつかまた会えると二人は信じている。遠隔で通話する日も既に決めていて、今後も交流を深めていくと決めていた。

「じゃ、またね!」

 そう言ってユウキは、急いで宇宙船に乗り込んでいく。アスナはその宇宙船がワープするまで、根気強くユウキらに向かって手を振っていた。

 宇宙船は程なくして消え、ALO星に向かって出発している。

「どうだ。終わったか?」

「ちょうど出発したところよ」

 と同時に彼女らを見守っていた、銀時やキリトら万事屋の面々が駆けつけてきた。アスナのすっきりとした表情を見て、仲間達も彼女の想いに共感している。

「それにしても楽しい二日間でしたね」

「そうアル! ハロウィンイベントもなんだかんだで楽しかったからナ!」

「ハプニングもあって大変だったけどな」

「またユッキーさん達に会えると良いですね!」

 新八や神楽、キリトらも激動の二日間をしみじみと振り返っていた。かぶき町の観光もハロウィンイベントの護衛も、今では大切な思い出として心に残している。大変なこともあったが、それでも皆にとっては忘れられない思い出となったのだ。

「会えるさ。きっとな」

 銀時の呟きにアスナはすぐに応えている。

「うんうん! 銀さんの言う通りよ。さぁ、万事屋に戻りましょうか!」

「ワン!」

 見送りを済ました一行は、そのまま自分達の住処である万事屋へ戻ることにした。ターミナルを跡にして、また明日から始まる万事屋の仕事に向けて一息入れていく。ありふれた日常の中に、彼らはまた身を投じていくのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ――そんな彼らの姿を、物陰からそっと見ている者達がいる。

「ユナ。彼らのことを教えてくれ」

「はい。銀髪の男は坂田銀時。かつてこの世界で起きた攘夷戦争の生き残り。白夜叉と呼ばれ、今もなおその強さは健在のようです。赤い髪の少女は神楽。宇宙最恐戦闘民族の夜兎の血を継ぐ者。所謂宇宙人です。眼鏡の青年が志村新八。ごく普通の人間ですが、戦闘能力はずば抜けており、SAOサバイバーの上位者とも互角と言っていいでしょう。そして白く大きい犬は定春。狗神と呼ばれた神聖なる生物で、ある条件を満たすと本来の力を発揮するとのことです」

「ありがとう。それだけで十分だ」

 白髪の女性が茶髪の男性に向けて、万事屋及び銀時らの解説を淡々と伝えていた。男性は不機嫌そうな表情で、銀時やキリトらに視線を向けている。

「万事屋……それが今のアイツらの居場所ってことか」

「その情報を知って、アナタはどうされるんですか?」

「どうもしないさ。今の僕に彼らは眼中にない。ただ様子を見に来ただけさ」

「そうですか」

 男性は特に情報を気にする素振りは見せなかったが、それでも視線はまったく変わっていない。強がりのような態度を目の当たりにして、女性は心配そうに男性を眺めていた。

「さぁ、行くぞ。サイコギルドの元に」

「はい……」

 そして特に行動を起こさず、彼らは元いた在処に戻ろうとしている。気乗りしないまま女性は、内心でそっと呟いていた。

(ユナさんの蘇生……そんなこと、あの子は絶対に望んでいないのに)

 自分が本物とは明らかに違うこと。その上で今男性の成そうとしている目的が間違っていることを自覚していた。女性……いや、ヒューマギアと言うロボットとして生まれたユナは、自身のオリジナルともっとも親交の深かった男性エイジの行く末を心配している。

〈エデンドライバー!〉

 するとエイジはとあるデバイスを腹部に装着。四角いアイテムを展開して、それをデバイスに装填している。

〈ルシファー!〉

「……変身!」

〈プログライズ! アーク!!〉

〈The creator who charges forward believing in paradise! OVER THE EDEN!!〉

 エイジの姿はみるみると変わっていき、骸骨のような幻影に包まれると、全身を特殊な黒と灰色のスーツに覆われていく。頭部も仮面で覆われたことで変身が完了。かつてこことは別の世界で暗躍した戦士、仮面ライダールシファーに彼は変身していた。

「待っていろ、ユナ。すぐに人間に戻してやるからな……」

 そう呟き、彼は槍状の武器であるサウザンドジャッカーを強く握りしめる。

 

 別世界の力を得た努力家の青年は、もうじき訪れる未来を変えるべく、煮詰めていた想いを暴走させていく……。




 これにてハロウィンイベント篇は終幕! 三話構成がまさか六話分まで伸びることになるとは……自分としても想定外でした。実は今回のお話、終わり方が正直定まっていなかったので、無事に着地出来てこちらとしても一安心しております。
 特に悩んだのはそよから渡された忘れ物。本当は真面目なものを渡す予定だったのですが、雰囲気的にグダグダにした方が良いと思い、途中で修正致しました。あの後も一応ハロウィンは巡ったそうです。二週遅いですが、ハッピーハロウィンということで!

 そして尺に余裕が出来たので、ユウキの見送りシーンも追加! きっとまたアスナと会えると思います! (メタ的な話を言うと次々回長篇の架創決戦篇の予告でユウキが写っているので、確定で出てきます)
 さらに最後には、次回長篇の重要人物エイジとユナも登場! 厳密に言うとエイジはSAO世界から来た本人、ユナはオリジナルを基に作られた別人と言うややこしさがありますが……なぜ彼女は銀さん達のことを知っていたのでしょうか。それも次回の長篇で明かされると思います!

 そんなこんなで休止期間も含め、三年前に開始した秋晴の日常回篇も今回で終了。とは言いつつも、書ききれなかったお話は次回の長篇終了後に「秋晴の日常回篇 延長戦」として行う予定なので、こちらも是非お楽しみにしてください。


 さぁさぁ長くなりましたが、いよいよ次回は新長篇! エイジ、ユナ、泥水親子を中心に、サイコギルドの真の目的が明らかになる刀唱時代篇が開始致します! こちらも最後まで見逃さずにご覧ください!!





次回予告

アンカー「令和の記憶を集めてくれたらいいから」

??「おめでとう。今日から君がこの世界で初めての仮面ライダーだ」

エイジ「仮面……ライダー?」

ユナ「この力でどこかに逃げないと……」

刀唱時代篇一 ボクがアナタを生き返らせる

未来が少しずつ変わり始めていく……!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。