剣魂    作:トライアル

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いよいよ久しぶりの長篇である刀唱時代篇がスタート!
記念すべき一話目から衝撃の展開の連続でございます。
是非ご覧ください。


第八章 刀唱時代篇
第百二十八訓 ボクがアナタを生き返らせる


 キリト達が現在いる銀魂の世界。元の世界へ帰還する為に、彼らは日々を過ごす中で、別の世界に送り込んだ元凶サイコギルドの足取りを掴むべく、情報収集を続けていた。

 その一方でキリト達の元いたSAOが存在する世界線では、本来の歴史とは異なる事態が起き始めていた。

「い、今のは……」

 一人の青年は、急に目の前が真っ暗になり、見たことも無い光景が脳内に入り込んできていた。

 最新の現実拡張装置オーグマーを使い、次々とSAOの生還者を襲う光景。信頼している教授に裏切られて、AR内のモンスターに襲われる光景。どれも自分にとっては、身に覚えのないことばかりであった。

 彼の名はエイジこと後沢鋭二。ノーチラスと呼ばれたSAOの生還者で、本来の歴史であれば、オーディナル・スケール編にて徹大教授と結託し、ユナをAIとして蘇生させる計画に加担していたのだが……。

「どういうことだ……アレが僕の未来だというのか」

 彼にとっても、何が起きたのかさっぱり分かっていない。頭を抱えたまま、未だに状況を読み込めずにいると……一人の男が彼に話しかけてきた。

「その通り。アレはお前の未来だ」

「何者だ!」

 エイジが振り返るとそこには、見たことも無い怪人が立っている。昆虫のような意匠を残し、全身が銀色一色に染まっていた。

 そう。その正体はサイコギルドの幹部怪人シャドームーンである。

「フッ、我が名はシャドームーン。サイコギルドの幹部と言ったところか」

「サイコギルド……? なんだそれは?」

「次元間を行き来し、世界へ復讐する組織とでも言っておこうか」

「復讐? 一体何を言いたいんだ?」

 意味深な返答を聞き、エイジは増々警戒心を露わにしていた。最初こそ特撮番組で見るような精巧な着ぐるみを使ったいたずらと彼自身は思っていたのだが……シャドームーンの雰囲気を察するに、単なる冷やかしで無いことを次第に理解していく。

 表情も険しくなる一方で、シャドームーンは飄々とした態度であることを伝えている。

「ならば単刀直入に言おう。エイジ。未来を変えたければ、俺はお前に力を与えてやろう。そしてサイコギルドの一員として、スカウトしようじゃないか」

「スカウトだと……?」

「お前も見ただろう。信頼する者から裏切られる光景を。結局もお前はユナという女を生き返らせる為の人柱にさせられるのだよ」

「それは……」

 シャドームーンの目的。それはエイジをサイコギルドに引き抜くことであった。彼の辿ることになる未来を見せた上で、それを理由に強気な態度で誘い込んでいる。

 一方でエイジは、彼との会話で先ほど見た記憶の断片が、シャドームーンによる仕業だと確信。信じていた者への裏切りが、エイジの脳裏に色濃く残っていた。

「俺はお前のような恨みの大きい人間を探していたんだ。お前ならばきっと役に立つ」

「恨み……いや、仮にそうだとしてアンタの言う力ってのはなんなんだ?」

 会話の中でエイジは、シャドームーンの口走った力の在処について聞いている。スカウトと言うからには、何か手厚い見返りがあると彼は密かに勘繰っていた。

 するとシャドームーンは高笑いしながら、素直に返答する。

「ハハハ! 勘のいい男よ。良いだろう。お前にこれらをプレゼントしよう」

「うっ!? これは……」

 一瞬放たれた強い光。それが収まると、エイジの足元には複数のアイテムが置かれていた。黄色と黒、そして禍々しい藍色のパーツが付けられたベルト。複数のドラゴンが描かれた大きめの本と紫色の剣。真ん中にLEDパネルの付いた赤と銀色のベルト。これこそがシャドームーンがエイジの為に用意した自分を変える力の一端である。

「ベルトに剣?」

「一つずつ紹介しよう。まずはエデンドライバー。かつて楽園を作ろうとした男の力を奪い、真の世界を作り出そうとした男のベルトだ。使用すればお前は仮面ライダールシファーに変身し、槍型の武器を駆使することが出来るぞ」

「仮面ライダー……?」

「この世界には存在しない別世界のテクノロジーの名称だ。俺は幾つもの変身アイテムを保有している。最もお前に与えたものは、全てダークライダーと呼ばれる類だがな」

 淡々とシャドームーンは仮面ライダーもといダークライダーの力を紹介していた。彼が今手に持っているのは、エデンドライバー。仮面ライダーエデン及び仮面ライダールシファーに変身する為のアイテムである。エイジ自身もベルトを手に取り、シャドームーンの言い放った理由を慎重に読み解いていく。

「他にも闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)とジャオウドラゴンワンダーライドブックを使って変身する仮面ライダーカリバー ジャオウドラゴン。デモンズドライバーを使って変身する仮面ライダーデモンズを用意している。前者は剣術、後者は格闘術が大幅に向上する」

 引き続きシャドームーンは他のアイテムについても解説。強力な力を行使できるアイテムの数々に、エイジは段々とその力に魅力を感じていた。

「一応言っておこう。俺はお前に大きな期待を寄せている。だからこそ多数の変身アイテムをプレゼントしてやろう。サイコギルドに入ることを約束してくれるならば……」

 強大な力の数々を見せつけた上で、シャドームーンは再度エイジをサイコギルドに誘っている。その期待の大きさは、多くの変身アイテムからも見ても本気であることに間違いない。

 エイジも段々とその真意を理解していたが……禁断の力を前にして、彼の心には大きな理性が働いていた。

「どうした? まだ迷っているのか?」

「そんな上手い話があるわけないだろ……!」

 エイジは冷静な判断の元、シャドームーンのスカウトを危険視している。幾ら自分が魅入られたとは、あまりにも話が出来過ぎていたからだ。

 彼の心に大きな躊躇いが渦巻く中で、シャドームーンは最後の一手に踏み出ている。

「仕方ない。ならばこれで手を打とう」

 そう言って彼は指を鳴らすと、唐突に出てきた時空のひずみから、ある人物を出現させていた。

「……ユナ!?」

 その正体は、エイジが追い求めていた相手のユナである。本来の時間軸の彼女は、SAO内にて、ある一件により命を落としていた。その為エイジは、ふと現れたユナを見て大いに困惑してしまう。

「ユナ! どういうことだ!? そのヘッドホンは?」

 取り乱しながらも、エイジはユナに話しかけている。ただよく見ると不自然な点が多くあった。透き通るような白く長い髪と赤い目。それに加え、耳の代わりに白いヘッドホンのようなものが付けられ、白と青を基調にした女性用のスーツとタイトスカートを着用し、ヒールが特徴的なショートブーツを履いている。その姿はまるで社長秘書のようなきっちりとした佇まいであった。それでもエイジはユナへ必死に呼びかけるも、返ってきた言葉は……

「誰ですか?」

「えっ?」

「誰なのですか、アナタは?」

初対面のような振る舞いである。想像とは違った再会を目の当たりにして、エイジは思わず放心状態になってしまった。

 するとシャドームーンは、ユナに一声をかけている。

「ユナよ。彼はエイジだ。君の中にあるこの世界の記憶を覗くと良い」

「エイジ……そうですか。検索しました。彼はSAOサバイバーにして、今後開催されるオーディナルスケールの上位ランカー、エイジ様ですね」

 まるで機械的な立ち振る舞いで、ぎこちなく話すユナ。そんな彼女の態度に、エイジは増々動揺してしまう。

「どういうことだ!? 何のつもりだ!」

「落ち着け。今の彼女はヒューマギアだ。本物のユナではない」

「ヒューマギア?」

 シャドームーンに強く問いかけるも、聞きなれない単語を耳にして、首を傾げるエイジ。するとユナも丁寧に会話へ参加する。

「そうです。私はあらゆる記憶を保管する為に生まれました。現在はこの世界の過去と未来の記憶。アルタナと呼ばれる物質が存在する平行世界の記憶。そして令和と言う時代で活躍する戦士達の記憶の三つを保持しております」

「つまり……お前とは違う世界で生まれた人工知能搭載の人型ロボットだ」

「ロボットなのか……?」

 信じられない出来事だが、エイジは受け入れるしかもう選択肢は無かった。

 二人の言う通り、現在のユナはヒューマギアと呼ばれるロボット。別の世界で活躍する人類の叡智を結集したロボットで、ユナの格好も元の世界で活躍した秘書型ヒューマギアをモデルにしている。

 シャドームーンは本来の用途で数多の記憶を保管する為に彼女を用意したのだが……ユナに似せたのにはある理由があった。

「そうだ。ただの道具として用意したのだが……お前をスカウトするに当たって、容姿を少し変更したんだよ。そっちの方がお前も喜ぶと思ってな」

「道具って……ふざけるな! この僕をどこまで愚弄するか!!」

 無神経なシャドームーンの一言に、彼は大きく激高する。自分を引き抜く為だけに、ヒューマギアをユナへ似せたのは、エイジにとっても自身の気持ちを踏みにじる度し難い行為であった。

 思わずシャドームーンに詰め寄り、怒りをぶつけていく。

「落ち着け」

「落ち着けるか! アンタのような奴に僕は利用されないぞ!!

「悪かった。だがここで打ち切って良いのか? このユナは人間に戻れるかもしれないというのに」

「もう何を言ったって……今なんて言った?」

「人間に戻れるかもしれないと言ったのだ」

 交渉を決裂しようとしたエイジだったが、シャドームーンの返答を聞き、態度を一変させている。怒りが徐々に収まると、シャドームーンはさらなる提案を交わしてきた。

「今の我々はユナが持つ記憶のうち、令和の記憶を求めている。記憶を集めたは良いが、上手く抜け出せなくてな。それさえ引き抜けば、彼女は元の人間に戻れるかもしれない」

「それは……本当のことなのか?」

「あぁ、そうさ。我々の組織に入るなら、ユナを託すことを約束しよう。その代わり、あることをやってもらうぞ」

 またとない好機を聞き、信念が揺らいでいくエイジ。本当にうまくいくか確証は無いが、例え断っても徹大に裏切れる未来が目に見えている。自分が本物のユナと一緒にいたいなら、シャドームーンの案に乗ることが最善と彼は思い始めていた。

 一方でシャドームーンは交渉の手応えを感じ、仮面の中でそっとほくそ笑んでいる。

「それで……どうやったらその令和の記憶を取り出せるんだ?」

「何ぃ、簡単さ。重村徹大教授が隠し持つICチップを入れればいい」

「教授のICチップ……!?」

「やはり知らされていなかったようだな。所謂ユナのデータが全て詰まったマスターキーのようなものだ。そいつさえ手に入れば、ユナは完全体となり、本物に近づく。そうすれば令和の記憶も取り除ける。後はお前の好きにすれば良い」

 自分も知らされていなかった情報に、驚きを示すエイジ。徹大の持つICチップを奪うことが、彼にとっての重要な役目だとシャドームーンは教え込んでいる。

 師弟関係にある二人の信頼関係を引き裂くような作戦だが……元々徹大から裏切られることを知ると、自然とエイジの中には心で踏ん切りが付いていた。

「本当に約束を守るのか?」

「あぁ、約束しよう。ICチップさえ奪えばな。徹大教授ともっとも距離の近いお前ならば、出来るはずだ。その為にも、まずはそのダークライダーの力を使いこなせ。時間はいくらかかっても良い。準備が出来たら、すぐに襲撃をかけろ。それがお前への任務だ」

「……分かった。アンタの案に乗るよ。約束を守ってくれるならな」

 二人は互いの目を見て、嘘偽りないことを確認している。エイジは半信半疑でシャドームーンのことを信じ、彼の言う通りサイコギルドに入ることを決心していた。一方でシャドームーンは、事が上手く運び愉悦感に浸っている。

「あぁ、約束しよう。期待しているぞ。エイジ」

 そう言うと彼は、その場をゆっくりと去っていく。

 残されたのはシャドームーンが用意したダークライダーへの変身アイテムと、ずっと黙っていたヒューマギアのユナである。

「エイジ様。もし広い場所が必要でしたら、私にお声がけください。サイコギルドのアジトまでご案内いたします」

「あぁ、ありがとう」

 ユナは丁寧にも、エイジへ協力する姿勢を伝えていた。無表情のまま話す彼女の姿に、エイジ自身はどこか物足りなさを感じ取っている。その上で彼は、強い決意を固めていた。

(ユナを生き返らせるなら、またとないチャンスだ。例え相手が得体の知らない奴でも、僕は……!)

 例え違う未来を歩んだとしても、必ず理想を実現する決意である。ダークライダーの力も自分のものにして、ユナを普通の人間に戻すと誓っていた。その強い覚悟のまま、彼はもう前に進むしか選択肢が残っていないのである。決して後戻りできない選択肢を選んだのだ。

(この人、アイツの言うことを本気にしている。捨て石にされるかもしれないのに……本物のユナさんは生き返ることなんて望んでいないのに)

 一方でユナは、表では無表情かつ初対面のように振舞っていたものの、その内心ではエイジへ心配を向けている。サイコギルドが信用ならない組織なのも薄々理解しており、彼を都合の良い道具になりかねないと思っていた。その上で絶命してしまったユナの気持ちも理解しており、その心の内では複雑な心境に苛まれてく。

 この日をきっかけにエイジは、本来辿るはずだった未来とは異なる道を歩むことになる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから彼は、サイコギルドのアジトとされる洞窟に好きな時間へ転移。シャドームーンの言い放った徹大教授が隠し持つICチップを奪取すべく、彼の与えてくれたダークライダーの力を行使し、徐々にその力を慣らしていく。

 シャドームーンの用意したユナとも交流を続けていたが、やはり本人でない為かどこか彼女とは溝が生じている。それでも彼は自分の目指す理想を叶うべく、黙々とダークライダーとしての力を身に着けていった。

 その最中で彼は銀魂の世界に一度訪れ、万事屋として活躍するキリト、アスナ、ユイの様子を伺うも、結局は出会うことなく去っている。なお銀魂の世界のことや現在のキリト達のことは、多くの記憶を所持するユナからその一部を聞いていた。

 

 そして……とうとう計画を実行に移す時が訪れてしまう。

「失礼します」

「入れ」

 彼は徹大のいる東都工業大学の研究室を訪問。丁重にドアをノックし、そそくさと部屋に入ってきた。

 なお、徹大はパソコンとずっと向き合い、電子工学の最新の研究資料をまとめている。

「何の用だ?」

「教授。単刀直入に聞きます。今回の計画……僕も利用する予定ですよね?」

 エイジは包み隠さず、徹大へ確信を突く質問を投げかけた。すると徹大のパソコンを打つ手が止まる。

「なんだ。藪から棒に」

「とぼけるな! 僕は見たんだ……アンタが僕を裏切り、ユナの復活の為に僕の記憶をも利用することところを!」

 冷静を装う徹大に向かい、エイジは激高しながら彼の真の狙いを探っていた。言うならばこれはエイジなりの温情であり、もし本当に申し訳なく思っているならば、事を穏便に済ませたいと考えていたのだが……

「答えろ!」

その期待は意図も簡単に崩れ去ってしまう。

「話はそれだけか」

「えっ……?」

「仮にそうだとしても、私と君が結んだ計画に変わりはない。ユナが生き返るなら、君も満足だろう。そんなくだらない夢物語を語るくらいなら、パワードスーツの練習でもしておけ」

 徹大は結局エイジと顔を合わせないまま、研究を再開していた。彼はまったく動揺せず、エイジの主張もどこか他人事のように片付けている。

 その冷徹な態度を目の当たりにして、エイジにはある覚悟が生まれていた。どんな手を使ってでも、彼の隠し持つICチップを手に入れると。

「だったら……」

 すると彼は、シャドームーンから託されたアイテムの一つ、闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)を手に取る。剣を強く握りしめると、闇のオーラを刀身にまとい、それを徹大のパソコンに目掛けて解き放っていく。

〈シャーン!〉

「おい、何をする!!」

 突然放たれた衝撃波により、徹大のパソコンはヒビが入り、まったく動かなくなってしまった。不意の出来事に徹大は激怒し、そのままエイジの方に顔を振り向かせる。

 すると……彼は異様な光景に気を引かせてしまった。

「なんだ……その本と剣は?」

 エイジは睨みを利かせながら、見たことも無い剣を徹大に向けて差し向けている。彼の右手には金色と紫色のギザギザした片手剣が装備され、また左手には禍々しいドラゴンが描かれた紫色の本を装備していた。腰回りにも四角いベルトが付けられており、徹大は異様な殺気を本能的に察している。

 一方のエイジは怯むことなく、徹大へ対して敵対意識を差し向けていた。

「アンタがその気なら、僕にも手立てがある。僕は僕自身のやり方で、ユナを生き返らせる!!」

 するとエイジは左手に握りしめた本を開き、変身への準備を進めていく。

〈邪道を極めた暗闇を纏い、数多の竜が秘めた力を開放する!!〉

 本が開かれると、男性の声で詠唱が鳴り響く。この本はジャオウドラゴンワンダーライドブック。仮面ライダーカリバーに変身する為に必要な本のアイテムである。

 エイジはこの本を片手剣の闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)に読み込ませ、ベルト(邪剣カリバードライバー)に装填した。

〈ジャオウリード!!〉

「何をする気だ? これ以上近づけば……!」

 異様な殺気を感じ取り、エイジに向かって静止を試みる徹大。さっきまでの冷静さはとうに失われ、今は自身の命が危険なことを誰よりも理解していた。

 だが……どんなに止めようとも、エイジの覚悟は揺らがない。

「やってみろ。今の僕は昔の僕じゃない……仮面ライダーの力を得たからな!」

「仮面……ライダー……?」

 聞きなれない単語に、疑問を呟く徹大。何が起きているか分からない中で、その答えはすぐに明らかとなった。

「変身!!」

〈闇黒剣月闇!!〉

 エイジはベルトの上部に付けられたボタンを、闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)を使って勢いよく押し込む。すると本が開閉し、中から五つのドラゴンの仕掛け絵が飛び出ていた。と同時に彼の姿はみるみると変わっていく。

〈jump out the book! Open it and burst! The fear of the darkness!! You make right a just no matter dark joke! Fnry in the dark!! ジャオウドラゴン!! 誰も逃れられない……!〉

 本から流れる変身音声と共に、エイジは暗黒と邪竜の力を身にまとっていく。全身を紫色の特殊なスーツで包まれ、肩から上半身にかけては四つのドラゴンをイメージした金色の装飾が装着される。最後に一匹の竜が噛みつくような仮面が頭部に装着され、背中からは紫色のマントを羽織っていく。

 この動作を持って彼は変身していた。ダークライダーの一人である仮面ライダーカリバー ジャオウドラゴンへと。SAOの世界で初めての仮面ライダーが誕生してしまった。

「仮面ライダーカリバー……ジャオウドラゴン!」

 自信良く徹大へ向かって名乗るカリバー。

 一方で徹大本人は、今現実で起こっていることをまったく理解していない。教え子が得体の知れない戦士に変貌したからである。その表情も驚きに満ち溢れていた。

「どういうことだ? その姿は一体なんなんだ!!」

「僕の理想を叶える為の姿だ! さぁ、隠し持っているICチップを渡せ!」

「チップ?」

「とぼけるな。知っているんだぞ。ユナのデータが全て詰まったマスターチップとやらを。さぁ、早くしろ!」

 カリバーは徹大に闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)を差し出したまま、ICチップの在処について聞いている。幾ら変身したとはいえ、まだ手荒な真似はしたくないと、彼は内心で思っていた。変身したのもいわば脅しであり、本来の力を発揮することは毛頭考えていなかったのだが……

「そうだ……くらえ!」

「何!?」

土壇場で徹大はカリバーに目くらましを食らっていた。彼は机にあった懐中電灯を使ってカリバーを怯ませると、咄嗟に机の中にあったICチップを取り出し、急いで研究室を抜け出している。

 一方で徹大を取り逃したカリバーだが、彼はまだICチップのことを諦めていない。

「逃げたか。まぁ、良い」

 カリバーも研究所を抜け出して、徹大の逃げそうな場所を予測して追いかけていく。

 その徹大本人はと言うと、大学内の地下駐車場まで逃げており、自身の車に乗り込んでこの場から逃げ出そうと画策していた。

「このデータだけは絶対に渡すものか……!」

 ユナのマスターチップを大切に握りしめており、意地でも守り抜くことを心に決めている。そしていざ車を走らせようとした時であった。

〈ジャアクリード! ジャアクイーグル!!〉

「はぁ!!」

 彼の目の前に、突如としてカリバーが立ちはだかる。カリバーは赤い本(ストームイーグルワンダーライドブック)を闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)に読み込ませ、剣の先端から発生した無数の羽を徹大の車へぶつけていた。

「何!? タイヤが……!?」

 羽は瞬く間にタイヤを傷つけ、四本すべてのタイヤをパンクさせてしまう。これではいくらエンジンをかけようとも、車が動くはずがない。

 窮地に追い込まれた徹大は、最終手段へと打って出ている。

「ならば……!」

 彼はオーグマーを起動し、地下駐車場一体にAR空間を展開した。するとカリバーの目の前には、炎を吐くドラゴンのモンスターが出現する。AR内のモンスターを使い、意地でもカリバーを追い払おうと徹大は考えていた。

「AR内のモンスターか。まぁ、良い。すぐに仕留めてやる」

 カリバーはまったく恐れることなく、虎視眈々とドラゴンへ狙いを定めていく。

〈ジャアクリード! ジャアクケルベロス!!〉

 続いてカリバーは黄色い本(ケルベロスワンダーライドブック)を闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)へ読み込ませる。すると剣の先端から、ケルベロスと同じ三つ首の狼のエネルギー体が解き放たれる。それはドラゴンへ向かって突進し爆散。爆発の中でドラゴンの体に麻痺のような痺れが生じていた。

「今だ!」

 好機と捉えたカリバーは、真っ先に必殺技を発動させていく。ベルトからジャオウドラゴンワンダーライドブックを抜き取り、闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)へその本を読みこませていた。

〈必殺リード! ジャオウドラゴン!!〉

 闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)を構えて、ドラゴンへ向けて狙いを定めるカリバー。一瞬の隙も見逃さず、持ち手にあったスイッチを押し、彼は必殺技を発動していた。

〈月闇(くらやみ)必殺撃!! 習得一閃!!〉

 闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)から四体の邪竜のエネルギー体が出現。カリバーがドラゴンに差し向けると、四体の邪竜はドラゴンの体へまとわりつく。すると邪竜は鎖へと変化し、ドラゴンの行動を拘束してしまった。そして、

「はぁぁぁぁ!!」

カリバーは勢いよくドラゴンに斬りかかっていく。闇のエネルギーをまとった刀身を受け、ドラゴンの体力は見る見るうちに削られていき……そのまま粒子となり消滅してしまった。

「な、なんだと!?」

 ドラゴンを瞬殺したカリバーに、大きく動揺する徹大。もはや人離れしたエイジの力に、ただならぬ恐れを感じ取っている。

 逃げるタイミングを逃し、カリバーの様子を伺っていた時であった。

〈ジャアクリード! ジャアクピーターパン!!〉

 カリバーはすぐに青い本(ピーターファンタジスタ)を闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)に読み込ませて、剣の先端にフックのようなエネルギー体を出現させる。それを徹大へ向けて差し向けると、

「何!?」

彼の懐からユナのデータが詰まったICチップを引き抜いてしまう。咄嗟の行動に困惑する徹大だが、時すでに遅く……

「これはもらっておくぞ」

ICチップはカリバーの手に渡ってしまった。彼は捨て台詞を吐き、その場を跡にしようとする。

「返せ! それは私の……!」

「近づくな!! これ以上近づくなら、例えアンタでも切り刻む! 命を無駄にしたくなければな……!」

 諦めずICチップを取り返そうとする徹大に、カリバーは背を向けたまま一喝。脅しとも言える圧力で、彼の行動をけん制していた。

 これが二人の決定的な絶交となった瞬間である。

「さらばだ。教授……」

 そう呟き、カリバーはその場を去ってしまった。地下駐車場には失意にくれた徹大だけとなり、彼は地面に崩れ落ち項垂れてしまう。

「な、なんてことだ……」

 教え子の裏切り。並びに命よりも大切にしていたデータを奪われ、彼は立ち直れずにいる。命を奪われなかっただけでも救いだが、それでも徹大にとっては失うものが大きかった。

 未知なる力を目の当たりにして、何も出来なかった自分をただ無暗に責め続けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場面は変わり、こちらは銀魂の世界のどこかにある洞穴。森林に囲まれ、人もまったく訪れない大自然の地に、ある組織が密かにアジトを作っていた。そう。その正体はキリト達をこの世界に送った元凶、サイコギルドである。

「ふっ、アンカーよ。ご苦労だった。無事にエイジが任務を遂行したらしいぞ」

「って、付き添いなら、私も行くべきじゃなかったの?」

「そこは適材適所だ。それにお前とて、あの世界には憎しみしかないのだろう?」

「そ、そうだけど……」

 シャドームーンはもう一人のメンバーであるアンカーに、エイジの件について話していた。元々新参者であるエイジの付き添いとして指名されたアンカーだったが、同行してやったことは精々特訓としての相手のみ。予想とは異なる展開に、少しだけ不満を覚えている。

「流石は俺の見込んだ男だ。あの世界で二番目のダークライダーなのだからな」

 一方のシャドームーンは、エイジの上達ぶりに増々愉悦感に浸っていた。ただしそれは彼を仲間としてではなく、一道具としての評価である。そして二番目という言葉通り、エイジと同じくダークライダーのベルトを託した人物がいるらしい。その人物こそが、サイコギルド並びにシャドームーンの本命だとアンカーは内心で探っていた。

(結局一番期待しているのは、別にいるじゃん。エイジってやつもその件については知らないみたいだし……可哀そう)

 なおエイジ自身ももう一人のダークライダーの件は知らせておらず、アンカーはエイジの扱いについて心配している。自身もシャドームーンに対しての疑念が深まる中で、彼ならばやりかねないという謎の説得感が彼女には生まれていた。

 すると、エイジがサイコギルドのアジトへと戻ってくる。

「戻ったぞ」

「おぉ、ご苦労だった。そしてよくぞやってくれた」

「大したことはない。ダークライダーの力も十分に発揮できたからな」

 エイジは既に変身を解除しており、その表情は達成感に満ちていた。彼は奪取したICチップをシャドームーンやアンカーに見せている。その光景を見たユナは、どこか複雑そうな表情を浮かべていた。

「へぇ~。やるじゃん。流石シャドームーンが見込んだ男」

 アンカーも素直にエイジを褒めるが、事前に知らされていたこともあり、棒読み気味に声をかけている。なおエイジ本人はまったく気にすることなく、彼は早速ユナの件について切り出していた。

「これも全てユナの為だ。やることは果たした。約束は守ってもらうぞ」

「あぁ。もちろんだ。それではまず、ユナに詰まった令和の記憶を引き出してもらおうか」

 とうとう待ちに待った機会が訪れて、エイジは確信を得た表情に変わっている。

シャドームーンが言ったユナを人間に戻す方法。それを信じ彼は、ダークライダーへの変身という茨の道を歩むことになった。その苦労に見合う未来が今にも訪れようとして……彼もすんなりと覚悟を決めていく。

「ようやくだ。ヒューマギアから人間に戻してやるからな」

 神妙な表情となり、エイジは少しずつユナに近づいている。今手にしているICチップを入れ込み、令和の記憶を引き抜けば彼女を人間に戻せると信じて……。

 一呼吸を置いてから、彼はユナの耳に当てられたヘッドホン状のパーツに狙いを付けて、ICチップを入れ込もうとした――その時であった。

「はぁ!」

「うっ!?」

 ユナは近づいてくるエイジに、不意打ちも言えるビンタを浴びせていた。

「えっ?」

「ほぅう……」

 想定外の彼女の行動に驚くアンカー。一方でシャドームーンは、興味深そうに二人の会話に注目している。

「ユナ? どういうつもりだ……?」

「そのままの意味です。こんなことをして、天国のユナさんが本当に喜ぶと思っているんですか! 罪を重ねたアナタに、会いたいと思うんですか!」

 ユナは今まで黙っていた感情を、エイジに向けてぶつけていた。自分が偽物の存在でありながら、オリジナルの気持ちや思いを尊重している。その上で強奪と言う手段を選ばないエイジのやり方に、彼女は大きく怒っていたのだ。

「いや……これも全てユナの為だ! ICチップさえ入れれば、本物のユナに……!」

 一方でエイジも引くに引けない状況の中、ユナの反論を一蹴している。忠告すらも聞き入れてもらえず、己の願望を通そうとするエイジにユナは飽き飽きしており、

「……残念ですが、アナタの思う通りにはならないです」

彼女はやむを得ない行動に打って出ていた。

〈音銃剣錫音!(おんじゅうけんすずね)〉

〈プレーメンのロックバンド!!〉

 ユナは令和の記憶の一部を具現化し、かつて別の世界で活躍した音の剣士(仮面ライダースラッシュ)の力を召喚。ビビッドなピンク色が特徴的な銃であり聖剣の音銃剣錫音(おんじゅうけんすずね)と、音楽の物語が詰まった紫色の本(プレーメンのロックバンド)を手にしていた。

〈錫音! 音読撃! イェーイ!!〉

 そしてユナはエイジの変身したカリバーと同様に、本(プレーメンのロックバンド)を読みこませて放つ必殺技「ガンズ・アンド・ミュージック」を発動。

「はぁぁ!!」

「何!?」

 エイジ、アンカー、シャドームーンの周りを楽譜と音符のエネルギー体が囲い、次々と小さな爆発を起こしている。彼らがこの必殺技へ戸惑っているうちに、

「さよならです」

ユナは急いでアジトから脱出しようとしていた。

「えっ、逃げたよ!」

「何だと!?」

「追いかけろ!」

 脱出に気付き、エイジらは急いでユナの足取りを追いかけようとする。

 その一方でユナは、またしても令和の記憶の一部を解放していた。

「こういう時は……」

〈ケミーライザー!!〉

 今度はオレンジと黒色のガントレット型の武器(ケミーライザー)を召喚。カードの差込口があり、彼女はある一枚のカードを入れていた。

〈ケミーライズ! ゴルドダッシュ!!〉

 それは7と言う数字とバイクのようなモンスターが描かれたカード。ケミーと呼ばれる生命体の力を宿すケミーカードであり、ケミーライザーに入れるとカードの通りにケミーの一体であるゴルドダッシュが出現した。

「力を貸して。ゴルドダッシュ!」

「ダッシュ! ダッシュ!」

 ゴルドダッシュはユナの想いへ答えるように鳴き声を発すると、彼女を乗せて森林から人里へと移動していく。エイジらの追手を振り切るように、どんな悪路でもスピードを落とすことなく森の中を駆け抜けていった。

 その甲斐もあっては、エイジらは瞬く間にユナの行方を見失ってしまう。

「くっ……まさか人里の方まで!」

 エイジは勘を鋭くさせて、ユナが逃げそうな場所まで先回りをする。

 その一方でアンカーとシャドームーンは、一旦ユナの捜索を中断させていた。

「我々は一旦引き上げよう。エイジのことだ。きっと死に物狂いで、ユナを見つけ出すだろう」

「そうかもだけど……私達はどうするの?」

「待機だな。だがアンカーよ。いざという時はエイジを助けてやれ。昭和と平成の記憶を使い、幾らでも怪人を作り出しておけ」

「分かったよ」

 シャドームーン側はユナの捜索には深く関与せず、エイジとは別行動を取ると決めている。なおアンカーには宣言通りにエイジの付き添いとして、いざという時の補佐を命じていた。アンカーも渋々シャドームーンの作戦に応じていく。

(今はこの人の言う通りにしておこう……そうじゃないと私の復讐が果たせないもの)

 アンカーにも自分なりの事情があり、今は自身の気持ちをそっと抑え込んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方で人里まで降りてきたユナは、ここまで連れてきてくれたゴルドダッシュへ感謝の言葉を伝えていた。

「ここまで来ればもう安心……ありがとうゴルドダッシュ」

「ダッシュ! ダッシュ!」

 ヘッドライトに光を灯して、元気よく返事するゴルドダッシュ。するとゴルドダッシュは元いたカードに戻っている。

「よしっと。って、う!?」

 だが次の瞬間、ユナはふとバランスを崩し、倒れかけてしまった。胸を強く抑え込みどこか苦しそうな表情を浮かべている。

「……あまりこの力は、使わない方が良いのかも」

 原因は不明だが、ユナは令和の記憶の使用したことが関係していると察していた。強力な力故に、あまり強く頼らないことを決めている。呼吸を整えて、ユナは自身を落ち着かせていた。

「さて、この後どうすれば……」

 とサイコギルドから逃げ出したのは良いが、正直に言うとこの後の計画はまったく目途が立っていない。彼女を知る者は当然この世界にはおらず、そもそも誰を頼って良いのか分からない状況であった。道行く人に尋ねようにも、サイコギルドの厄介事へ巻き込む可能性があり、あまり表立った行動へ出られずにいる。

 右往左往しどう行動するべきか戸惑い続ける中で、ユナの元に声をかける者達がいた。

「ん? どうかしたの、お嬢さん?」

「どこかに迷ったのか?」

「えっとアナタ方は……」

 声をかけてきたのは、若い女性と年を取った男性である。女性はオレンジ色のショートヘアー。花をあしらった和服と、腰には刀を携えていた。一方で男性は褐色の肌と白髪、さらには老体でありながら鍛え抜かれたがっしりとした体格が特徴的である。彼もまた刀を腰に携えている。

 そう。この二人は、かつて銀時ら万事屋とも邂逅したとある親子なのだ。

「私は泥水平子です! そして横にいるのが愛してやまないじろちょん!」

「じろちょんは止めんか。俺は泥水次郎長。今は娘のぴらりんと共に放浪の旅をしている」

「泥水次郎長……」

 聞いたことのある名前に、すぐ脳内で検索をかけるユナ。彼らの正体は泥水親子。この世界で起きたかぶき町の騒動にて活躍した二人で、一時はすれ違いを起こしていたが、騒動終了後に和解。今は故郷のかぶき町を離れて、共に旅を続けていたのだ。

 偶然にも森林に近いこの町、空川町に訪れていた二人。無論ユナにとっても、次郎長らとの出会いは想像にすらしていなかった。

「なるほど、理解出来ました」

 ユナも自身に保管されていたデータを読み解き、泥水親子の活躍を知ることになる。

「えっと何が理解できたの?」

「いえ、こちらの話です。折り入ってお願いがあります。どうか、助けてください!」

「って、急にどうしたの!?」

「何か訳アリのようだな、お嬢ちゃん」

 急に頭を下げたユナの行動に、思わず困惑してしまう二人。ひとまずは彼女の話を聞き出すことにする。

 そして二人はユナの話から、彼女が置かれている現状を理解していた。

「なるほど。突飛な話だが、お嬢ちゃんの言いたいことはよく分かった」

「要するに大切な人の暴走を止めてほしいんでしょ?」

「その通りです。とても私の力だけじゃ難しく……誰か力を貸してくれる人が必要なんです!」

 ユナの話を断片的に聞き、彼女に同情する次郎長ら。自我を持ったが故に悩み苦しむ様子には、共にいたたまれない気持ちを感じ取る。ユナ自身も一人でエイジを止めるには難しいと感じて、次郎長らに協力を要請していた。

「力か……」

「じろちょん! 私達でユナさんの力になるってのはどう?」

「そうだな。ちょいと一肌脱ごうじゃないか」

 次郎長らはすんなりとユナの願いに応じている。出会ったのも縁と彼らは考えており、早速彼女へ協力体制を取っていた。

「お二方……ありがとうございます!」

「大したことでは無い。でも今はそれよりも、目の前の邪魔者から片付けないとな」

 次郎長らへ感謝を伝えたユナだったが、余韻に浸る間もなく新たな脅威が迫っている。

 そう。ユナを追いかけていたエイジが、やっと追いついてしまったのだ。

「逃げても無駄だ。ユナ、令和の記憶を取り除かせてもらうぞ」

 エイジは鋭い目つきのまま、ユナへ狙いを定めていく。意地でも彼女を人間に戻すべく、躍起となってきた。

 一方で次郎長は、目の前の男がユナの言っていたエイジだとすぐに確信している。

「なるほど。あんちゃんがお嬢さんの大切な人ってかい。どうやら周りが見えていないようだな」

 次郎長はすぐにエイジの様子を把握。ユナの言っていた暴走と言う一言も当てはまり、即座に彼は臨戦態勢を取っていく。

「平子。ユナを連れて逃げろ。そうだな……万事屋まで案内してやれ」

「兄貴の場所ですね、了解です!」

 次郎長は平子へユナを連れて逃げるよう指示。彼女もすぐに了承し、ユナの手を握りその場から逃げ出そうとしている。

「この場は任せたよ、じろちょん! さぁ、ユナさん。こっちへ!」

「は、はい……」

 ユナも言われるがままに、平子と行動を共にしていた。

 一方でエイジは、ユナらを追いかけようとするも、まずは目の前にいる次郎長を退けることが先決と考えていた。

「誰だか知らんが、僕の計画を邪魔するなら、例え爺さんでも容赦しないぞ!」

「ハハ。生きのいい若造だな。腕が鳴るぜ……ちょいと俺と遊ぼうじゃねぇか」

「強がりを言うのも今の内だぞ!」

 敵対意識を剥き出しにするエイジに対し、次郎長は余裕そうな表情で笑っている。彼は腰に携えた刀の持ち手に手を添えて、今にも鞘から引き抜こうとしていた。

 強者としての素振りを見せる次郎長の姿を見て、エイジは若干調子が上がらずに、苦手意識を持っている。それでも自身の目的のために、邪魔者は排除すると強く心に誓っていた。

〈デモンズドライバー!!〉

〈スパイダー!〉

 続いてエイジは、シャドームーンからもらったアイテムの一つ、デモンズドライバーを腹部に巻いている。変身に必要なスタンプ型のアイテム、スパイダーバイスタンプを手に、それをデモンズドライバーの上部に押印していた。

〈Deal……〉

「はぁ……!」

 気合を込めてポーズを決めていると、彼の右肩近くに銀色の蜘蛛がどこからともなく出現する。

「わが命を懸けて、ユナを連れ戻す! 変身!」

〈Decide up!〉

 変身の掛け声と同時にエイジは、スパイダーバイスタンプをデモンズドライバーのLEDパネル部分に押印した。すると銀色の蜘蛛から吐き出た糸がエイジの全身を包み込み、特殊な戦闘スーツを形成。蜘蛛の糸を模したアーマーが右肩より展開され、彼をまた新たなダークライダーへ変化させている。

〈Deep! Drop! Danger!! 仮面、ライダー……デモンズ!!〉

 変身音と同時にデモンズへの変身が完了。顔を覆うマスクに付けられた青い複眼が煌びやかに発光していた。

 変身完了後に、エイジはすぐにファイティングポーズを構える。

「面白いな……!」

 一方で次郎長は、エイジが未知なる戦士に変身しても、まったく怯んでいない。娘の平子とした約束を果たす為にも、闘志を沸々と燃やしていた。

「さっさと退いてもらうぞ!」

「かかってきな、あんちゃんよ」

 互いに相手へ睨みつけ、そのまま突進する二人。譲れない想いを高ぶらせて、デモンズと次郎長は衝突していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな修羅場が繰り広げられている中で、かぶき町の万事屋銀ちゃんでは、何一つ変わらない日常を皆が過ごしていた。

「あれ? 銀さん、またこのカメラ持ってきたの?」

「そう。こいつを使えば馬券やら宝くじの未来が分かるかもと思ったが、何度やってもうまくいかなくてな」

「当然でしょ。そんなやましい理由で使うなんて、源外さんにも失礼なんじゃないの?」

「まったくだよ、銀さん」

 銀時の甘い考え方に、キリトやアスナは苦い表情で文句をぶつけていた。

 この日の万事屋は、以前に源外から借りた特殊なカメラをまた借りてきている。銀時はこれを利用して、ギャンブルに使おうとしたが……まったく上手くいかず困り果てていた。

 アスナが家計簿を握るようになってからは思う通りにギャンブル系も出来なくなっていたので、彼は効率的に稼げる方法を考えていたのである。あさましい考えであることに変わりは無いのだが……。

「懐かしいですね、このカメラ」

「確か前は、過去やら未来やら別の時間軸が写ったんでしたっけ?」

「クラの女装姿が写って散々だったアルナ」

 新八やユイ、神楽も例のカメラを見て懐かしんでいる。以前は写った人物の過去や未来の姿、別の時間軸の姿が写ったりと、あらゆるハプニングが起きてあたふたしていたことを思い起こしていた。

「でもどういう原理なんだ、このカメラって」

「さぁ? 細かいことは気にするなよ」

「ハハ。それもそっか」

 キリトも摩訶不思議なカメラの原理を気になっていたが、銀時の一言で気にしなくなる。そもそも別の時間軸も含まれると、本来あり得ない過去や未来も存在する可能性もあるので、もはやなんでもありだと彼は思っていた。

 とキリトは手にしていたカメラを、そのまま机に戻そうとした時である。

「おっと?」

「おいおい。不意に撮るなよ」

「ごめんって……アレ? 銀さんの写真じゃないよ」

「えっ?」

 キリトは手を滑らせて、カメラのシャッターを押していた。てっきり銀時にレンズが向けられていたと思ったが、写っていたのはキリトの方である。皆が現像された写真に注目すると、またしても不可思議な光景を目の当たりにした。

「これ……キリトさんじゃないですか?」

「前撮った時の子供時代のキッリ―ネ!」

 そう。写っていたのは、以前にも現像された子供の時のキリト。本人はあまり身に覚えが無く、結局は思い出せないまま自然に忘れ去れていたが……このタイミングでその話題が再燃している。

 ただし、今回ばかりは少しだけ訳が違っていた。

「ねぇ、横に写っている二人って誰?」

「金髪の外国人でしょうか?」

 アスナとユイは、早速キリトの横に並んでいる二人の男女に注目している。どちらも写真に写るキリトと同じくらいの背丈の子供で、男子は青い上着と灰色のズボンを着用。暗みのある金髪と緑色の透き通った目が特徴的であった。一方で女子はエプロンの付いた青と白色のワンピースを着用。明るめな金髪で、長い髪を束ねている。

 二人共キリトと一緒に笑っており、てっきり彼の小学生時代の思い出の一枚かと思っていたが……

「えっ……俺全然知らないんだが」

「はぁ?」

「少なくとも会ったことは無いよ。この二人は」

キリト本人はまったく身に覚えが無かった、想定外の一言に、場にいた全員が驚いてしまう。

「おいおい。お前の林間学校の写真じゃなかったかよ?」

「違うって、銀さん」

「前の写真も、パパ全然知らないって言っていましたよね」

「あぁ。でも二回連続となると、とても偶然には思えないよ」

 よく見ると写真に写っている子供時代のキリトも、前回に写った写真と同じ服装で、増々関連性が疑われている。

 どんなに記憶を呼び起こしても、見つからない二人の男女。皆がその謎に困惑する中で、新八やアスナはある仮説を立てていた。

「もしかして、クラインさんの時と同じで、別の時間軸のキリトさんなんじゃないですか?」

「あっ、そっか。前に夢の世界で出会った気弱なキリト君も、確か別の時間軸のキリト君だったわよね?」

「ってことは、このキッリ―も別の世界の可能性があるってことアルナ」

 二人は過去の経験から、並行世界で生きるキリトと予想。以前にも千佐の一件で彼女を救い出すべく夢の世界で入った時にも、まったく違う時間軸から来たキリト、アスナ、銀時と遭遇したことがあった。

 故にアスナらは仮説には、皆が共感し納得した表情を浮かべている。

「別の世界の俺か……」

 そう聞くとキリト本人も納得していた。同時に別の時間軸の自分には、子供の時から親し気な友人が二人もいることに、彼は安心と羨ましさの二つの気持ちを感じ取っている。

 そんな中で、銀時にもある閃きが浮かんでいた。

「あっ。俺分かっちゃったかも」

「えっ、銀ちゃん。何が分かったアルか?」

「あぁ。こいつはな……ずばり! 子役の道を選んだキリトだろ!」

「えっ?」

「子役?」

 突飛な銀時の予想に、思わず首を傾げる一同。皆が困惑した表情を浮かべる中で、銀時は自信満々に理由を述べていく。

「なんで子役って決めつけたんだ?」

「だってこの二人、ル〇―とアク〇だろ。金髪だし。きっと誰かが作った推しの〇とSAOのクロスオーバー作品の一場面だって。きっと」

「んなわけないだろ!! 適当にもほどがあるだろうが!! 第一の目の形と作画から違うでしょうが!!」

 その確証も無い根拠を聞き、新八は強めにツッコミを入れている。銀時は写真に写った世界観が、まったく別の作品と予想。芸能界をテーマにした作品の為、キリトの子役時代と彼は考えていた。

 無論銀時の荒唐無稽な予想に、仲間達は皆反応を困らせている。

「子役時代のパパ……それはそれでありかもですね!」

「いやいや。俺からすると、とても想像できないんだが」

「キッリ―。道が一つ違えば、そういう未来もあったかもしれないアルよ。目指せ、〇なりかずきアル!」

 なお、ユイと神楽は悪乗りして、銀時の案に乗っかっていた。妄想を膨らませる二人に、キリトはつい手を焼いてしまっている。

「子役時代かはさておき、この写真は少し気になるわね……」

 一方のアスナは、銀時は別の観点で写真の真実を探ろうとしていた。別の時間軸よりも、彼女は本来いた世界の過去か未来の光景だと直感だと思い始めている。過去はキリトから否定はあったが、本人が覚えていない可能性も否定しきれていない。

 と考えを巡らせる中で、アスナはふと万事屋にあるパソコンに目を移すと、

「ん? メール?」

ある一通のメールが届いていることに気付く。メールを開くと、その内容にアスナは思わず驚愕していた。

「みんな! ちょっと来て!」

「どうした、急に」

「山崎さんからメールが届いていたの」

「えっ、山崎さんから!?」

「どんなメールだったんですか?」

 メールの相手は、真選組の監察山崎退からである。思わぬ人物からのメールに、新八やユイもメールへ釘付けになっていく。

「取り調べが終わった報告みたい。サイコギルドに関係している夜兎と辰羅達の」

「それって……」

「あのダークライダーの変身者達アルか!」

「そうね。とりあえず開いてみるわね」

 そのメール内容は、取り調べに関する進展であった。以前万事屋とも敵対したことのあるALO星の秘密組織マッドネバーの外部構成員として雇われていた天人達。彼らはマッドネバーより提供された技術で別世界の戦士、ダークライダーに変身した経緯があり、騒動収束後に真選組へ連行されていたのだ。サイコギルドとも関連性が疑われる中で、土方から情報が集まれば提供すると伝えられていたが……まさかのタイミングに皆驚きを示している。

 アスナはそのメールの内容を、早速深掘りしていた……。




 久々の長篇は如何だったでしょうか? エイジやユナを中心に、大きな陰謀が渦巻き始めたと思います。
 今回の注目ポイントは、エイジが変身するダークライダー。予告ではルシファーのみでしたが、なんとカリバーやデモンズにも変身可能に。三種類も別の姿に変身できるのか中々ズルい気がしますが、その分体への負担も大きいので、逆にエイジのユナを蘇らせたい本気度を示すのかもしれません。
 他にも過去に作成した夢幻解放篇や妖国動乱篇ともつながる箇所があって、古くから見ている方にも懐かしい要素が多くあったのではないでしょうか。
 まだまだ始まったばかりですが、今回もライダー未視聴の方でも分かりやすく作ってまいりますので、どうか宜しくお願いします!

 なお、来週はもしかすると本編の更新が遅れるかもしれません。








次回予告

ユナ「私にはアナタ達の未来が見えるのです」

ユナが見せる未来!?

新八「おい! ロー〇製薬ってなんだよ!?」

神楽「やからしたのはまさ……」

新八「あぁぁぁぁ!! これ以上はダメだから!!」

動き出す未来――

源外「俺にもちと難しいかもしれん」

銀時「そう心配するなよ」

キリト「俺達も協力するからさ」

刀唱時代篇二 アナタはワタシが止めてみせる。







教えて! 銀八先生!!

銀八「はーい。アニメ化記念で今回もおたよりを紹介していきまーす。ペンネーム エイジは黒スーツが絶対似合うさんからの質問。本作のオリジナルキャラのアンカーって、登場当初は不気味でサイコパスっぽいキャラでしたが、最近は冷めていてテンションが低いようにも見えます。何かあったのでしょうか? ずばりお答えしましょう。気のせいです。と言いたいところだが、強いて言うなら付き合いが長くなるうちに現実とのギャップに気付き始めたと言った方が正しいか。お前らもよくあるだろ? 期待して会った人ややったことが理想とは違うけど、時間を費やしているから引くに引けない感じの。今のアンカーはそんなもんだよ。テンションが高いうちはサイコパスのような振る舞いだが、現実に直面すると素の口調になる。そういう子なんです。アンカーは。彼女のやりたいことが明らかになるのはこの長篇の中盤からだから、それが分かったら見る目が変わるかもな。因みに作っているうちに性格にテコ入れしたとかは無いからね。というわけで、今回のお話で初登場した重村徹大教授! もう長篇での出番は無いので、研究室に戻りなさ―い」
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