人工知能搭載人型ロボのヒューマギアが、本来存在することのない世界線に現れた。三つの記憶を宿すユナは、果たして大切な人の暴走を止めることが出来るのだろうか。
「はぁ!」
「ふっ!」
デモンズから繰り広げられるインファイトのような格闘戦術に対して、次郎長は瞬時に動きを見切って確実な一太刀をデモンズに浴びせている。
ダークライダーのベルトを手に入れたエイジは、サイコギルドから逃げ出したユナを追いかけて、アジトから人里の方まで降りて来ていた。その道中にユナの味方となった泥水次郎長と相対することになり、彼はダークライダーの一体であるデモンズへと変身。飛躍的に向上した格闘戦術を使って次郎長をねじ伏せようとするも、彼のずば抜けた身体能力と熟練された剣術に圧倒。変身した身でありながら、次郎長と互角の戦いを繰り広げている。
「おのれ……なら!」
防戦一方のデモンズは、ここで奥の手を使うことにした。最強生物の力を宿すバイスタンプの一種を手に取り、デモンズ固有の能力であるゲノミクスを発動させる。
〈ADD……!〉
〈スコーピオン!〉
〈Dominate up!〉
〈スコーピオン! ゲノミクス!!〉
デモンズドライバーを操作し、サソリの意匠が表面に刻まれたスコーピオンバイスタンプをベルトのLEDパネルに押印。するとデモンズの尻尾に、サソリに似た禍々しい尻尾が装備される。
「はぁぁ!!」
デモンズは力任せのままに、その尻尾を振り回し、次郎長へ攻撃を仕掛けていく。奇々怪々な技で、相手へ確実な一撃を与えようとしたが……
「はぁぁぁ!」
「な、何!?」
次郎長は何一つびくともしていない。静かに刀を構えると、迫る尻尾目掛けて強く斬りかかっていく。すると尻尾が瞬く間に崩れ去り、デモンズのゲノミクス装備を一瞬にして破壊していた。
「ふっ!」
不意の追撃に怯んでしまったデモンズに向かって、次郎長は勢いよく近づき刀を差し向けていく。彼は大きく睨みを利かせながら、デモンズに向かって一言投げかける。
「もう終わりか、あんちゃんよ。思ったよりも強いが、大きく迷いがあるな。こんなんじゃ俺には勝てねぇよ」
「くっ……」
迷いと言う言葉にデモンズは大きく反応していた。次郎長の言う通り、自分の進んだ道が本当にこれで良かったのか正直確証は得ていない。未知なる力を使いこなし、本来の未来とは違う道を歩んだはずなのに……彼の心の中には小さな違和感が密かに漂っている。と同時に次郎長の人並外れた戦闘力には手も足も出せず、デモンズことエイジには大きな悔しさが生まれていた。
勝利と言う糸口が見つからず、次に取るべき行動が分からなくなった中で……デモンズに思わぬ助けが舞い込んでくる。
「ん? なんだこの音?」
次郎長はふと耳を澄ますと、辺りから奇妙な笛の音が聞こえていた。耳の痛くなるような不協和音に警戒心を尖らせていると……
「ウゥゥ!」
「イー!!」
突如現れた紫色の霧の中から無数の怪人達が出現している。黒と骸骨模様の衣装で統一されたショッカー戦闘員、忍者のような佇まいで小刀を構えるダスタード、金色に覆われた鎧を纏って槍を手にするカッシーン。そして狼の荒々しさを兼ね備えたショッカー怪人、狼男が複数いる戦闘員達の指揮を執っていた。
そう。かつて別の世界で暗躍した怪人達が、二人を囲むように突如として出現している。
「なんだ。こいつら……」
「まさか……」
急に現れた怪人達に困惑する次郎長。一方でデモンズは、この怪人達を見て密かに心当たりがあった。その予感はすぐに確信へと切り替わる。
「行きなさい。ユナの元に」
「やっぱりアンカーか」
「アンカー……?」
二人の目に前に、大型の槍を持った少女が姿を現す。彼女の名はアンカー。サイコギルドに属する一員で、シャドームーンの命令の元デモンズことエイジのサポートをするために、彼へ加勢してきたのだ。この怪人達の召喚もアンカーの仕業である。
知り合いと遭遇し一安心するデモンズだったが、次郎長は見慣れない少女の存在により警戒心を強めていた。
「私の力で怪人達を呼び起こしたの。この爺さんの相手は良いから、アンタはユナを追いかけなさい」
「わ、分かった。恩に着る!」
アンカーは淡々とした口調で、デモンズをこの場から逃がそうとしている。アンカーの意思を察したデモンズは、またも別のスタンプを取り出し、ゲノミクスを使ってこの戦場からの脱出を試みていた。
〈ADD……!〉
〈コンドル!〉
〈Dominate up!〉
〈コンドル! ゲノミクス!!〉
デモンズドライバーを操作し、ハゲワシの意匠が表面に刻まれたコンドルバイスタンプをベルトのLEDパネルに押印。するとデモンズの背中には、コンドルのような翼が装備された。
「はぁぁ!」
「おい、待て!」
勝負を逃げ出したデモンズに対し、次郎長は怒号を飛ばしながら行方を追おうとするも、
「おっと。行かせないよ。こいつらが相手になるからさ」
行く道をアンカーによって阻まれてしまう。アンカーはにやりと笑いながら、周辺に蔓延る怪人達に指示していた。
「さぁ、あの人をコテンパンにしな!」
「イー!」
「ウゥゥ!!」
アンカーの宣言通り、無数の戦闘員並びに狼男が次郎長目掛けて突撃していく。数による戦法でねじ伏せようと、彼女は考えていたのだ。
「やれやれ。こちとら早く娘と会わなくなちゃいけなくてな……」
一方で次郎長は、襲い掛かろうとする戦闘員達を目の当たりにしてもなお、まったく余裕を崩さない。それどころか、
「はぁぁぁ!!」
「イー!!」
「な、何!?」
むしろ気持ちを高ぶらせていた。襲撃を仕掛けた戦闘員達を、刀の斬撃のみで退けさせる。次々と吹き飛ばされる戦闘員達を見て、アンカーも思わず目を丸くしていた。
「打ち取れるものなら打ち取ってみろ……! 元かぶき町四天王が一人、泥水次郎長の首を取りたくばな……!」
「何を……行け! やれ!!」
次郎長はアンカーらに挑発とも言える煽りを発していく。それに乗ったアンカーは、無我夢中で怪人らに指示していた。めげずに襲い掛かろうとする戦闘員達に対し、次郎長はフッと小さく笑い、真っ向から立ち向かう。
「楽しくなってきたじゃねぇか!!」
たった一人の戦が今始まろうとしていた。
一方で平子と逃げることになったユナは、村を抜けてかぶき町方面に向かう道を走り続けていた。
「あの、平子様。本当にかぶき町まで行くのですか?」
「うん! ここからなら駅も近いから、そのままひとっとびだよ!」
平子は次郎長の託通り、かぶき町までの最短ルートを突き進む。この道中を真っすぐ突き進むと駅があり、そこから乗車して目的地まで向かおうとしたが……ここでユナがふと歩みを止めている。
「あれ? どうしたの、ユナさん?」
「すいません。かなり時間がかかって申し訳無いので、こちらを使用させてください」
「なにこれ? 本?」
ユナは懐からある本を取り出し、それを平子へ見せてきた。茶色くトリックアートのような表紙が特徴的なこちらの本の正体はブックゲートと呼ばれるもの。ユナが令和の記憶から具現化したアイテムの一つであり、早速その効果を平子へ向けて見せつけていた。
「例えば……アレが良いですね」
ユナが見つけたのは、ポツンと置かれていた公衆電話。その扉の持ち手に手をかけて、早速ブックゲートを起動させていた。
〈ブックゲート! オープンゲート!〉
すると公衆電話の扉に異変が起きて、その戸を開くと扉の向こう側には既にかぶき町の景色が広がっている。そう。このブックゲートの効果は、離れた場所へ瞬時に行けるいわば瞬間移動を兼ね備えた本だったのだ。
「おぉ! なにこれ!? もしかして魔法!?」
「いえ。別の世界に存在する未知なるテクノロジーです」
「テクノロジー?」
「詳しいことは後で説明します。さぁ、追手が来る前に入りましょう」
「そ、そうだね。行こう!」
未知なる能力を目にして、興奮を抑えきれない平子。興味津々にユナへ詳しく聞いてみるも、冷静に諭されてしまう。ユナの言う通り、今は追手から逃れることが先決であり、二人は公衆電話を介して一気にかぶき町まで逃亡していた。
なお、この事についてエイジはまったく知る由もない。
そして……万事屋では真選組の山崎退から、サイコギルドに関するメールが届いていた。銀時、キリト、新八、神楽、ユイもパソコン前に集まり、アスナがカーソルを動かしながら順に山崎からのメールを読み解いていく。
「旦那方へ。ウチで取り調べを行っていたマッドネバーの構成員について、情報がまとまってきたので、この場を借りて報告させて頂きます。まずおさらいするとマッドネバーで雇われていたのは夜兎の野卦(のけ)と亜由伽(あゆか)。辰羅の唖海(あかい)と宇緒(うお)の計四名。いずれも春雨と関りは深かったようですが、そこまで大きな影響力は無かったとのことです。彼らはマッドネバーの掲げるALO星の国家転覆に賛同し、それに必要な兵器のデータを集めていたそうです。その過程で出会ったのがサイコギルド。銀色の怪人であるシャドームーンと言う男と、槍を持った少女アンカーの二人と接触。遭遇先はこの星の空川町の山奥とのこと。彼らが手に入れた兵器の欠片を手に入れて、オベイロンがそれを復元。その力を悪用して、ダークライダーなる戦士に変身。その後の展開は旦那方も分かっているので割愛させて頂きます。サイコギルドの目的は詳しくは分からないのですが、強いて言うなら恨みを晴らすこと。それをよく強調していたと聞いています。さらにここだけの情報ですが、オベイロンの開発したダークライダーのアイテムを一部サイコギルドに譲渡としたと最近の取り調べで聞きました。近藤さん達も苦戦した相手がさらに増えるのは、正直状況としては不味いと俺も思っています。とにかく奴らは次元間を行き来するという得体の知れない奴らなので、旦那方も十分気を付けて調査してください。それとこれは俺からですが、投稿者にもっと出番を増や――」
「はーい。もう読まなくて良いから」
「いや、流石に酷くないですか!?」
「良いんだよ。どうせ出番って言葉が連呼してメールに並んでいるんだろ。先は見えてんだよ。もうそんな尺ねぇんだよ」
「って、まだ始まったばかりでしょうが!」
山崎からのメールを、銀時は途中で打ち切っていた。彼はこの後の展開を察しており、山崎特有のゲシュタルト崩壊が待ち構えていると予想。尺の都合にして、この後のメールの内容を有耶無耶にしている。新八からは案の定ツッコミを入れられていたが……。
だが山崎及び真選組からの情報提供は、皆にとって大変有益な情報ばかりである。
「意外と有益な情報だったな」
「そうね。ここまで取り調べが進んでいたなんて」
「チンピラ警察もたまには役に立つってことアルナ」
キリト、アスナ、神楽と思ったことを呟く。揃って取り調べが大いに進んでいることには、皆有難く感じていた。
とここで、ユイが山崎からのメールの内容を改めて振り返っている。
「では一回整理しましょうか。サイコギルドの構成員は、現状分かっている範囲でも二人。私達をこの世界へ送ったアンカーと言う少女。この方は千佐さんの情報からも名前が判明していましたね。そしてクラインさん達をこの世界へ送った銀色の怪人が、恐らくシャドームーンと言う名前だと思います」
「これは初めて聞く情報だな」
現状判明しているサイコギルドのメンバーをおさらい。アンカーと言う名前は千佐の一件で知っていたが、シャドームーンと言う名前は今回が初めてである。銀時も興味深く反応していた。
「この二人が主に動いているってことよね?」
「ギルドというからには、まだいそうな気もしなくは無いが……」
アスナやキリトは、他にもサイコギルドのメンバーがいないか勘繰っている。表立って動いているのは二人だが、その裏にいる別動隊や首領格など、さらなる協力者がいることを彼らは予測していた。
その一方で新八と神楽は、山崎のメールに書かれたある部分に注目している。
「ちょっと待ってください。空川町って……」
「あっ! 前に行ったことある場所アルヨ!」
それはサイコギルドとマッドネバーの面々が接触した場所だ。空川町は以前に銀時らがサイコギルドの手がかりがあるとみて向かった場所で、当時はただの勘違いで終わり、何一つ成果は得られなかったが……思い返すと浮かぶ不自然な点を皆思い起こしている。
「確かあそこでフィリアって女の子と出会ったよな」
「そうね……あの時はサイコギルドに関することはまったく掴めなかったけど、まさかニアミスだったなんて」
銀時の呟きにアスナが返答した。空川町は不意の事故で地球に来てしまったALO星の住人フィリアと遭遇した場所でもある。彼女と遭遇後にマッドネバーとの戦いに巻き込まれ、次元遺跡になる時空の狭間に移動したのが当時の出来事であった。彼女らとの出会いは偶然によるものと思っていたが……メールの証言通りなら、空川町にマッドネバーが訪れた理由について納得がいく。まさかの共通点には、皆驚きを隠しきれていなかった。
さらに気になることは、サイコギルドがマッドネバーに語った組織の目的である。
「それにもう一つ気になるのが、彼らの目的が恨みを晴らすことって……」
「意味深な一言ですよね。でもそれが目的だったとしても、キリトさん達をこの世界へ送り込んだことと、サイコホールを介して兵力を集めていることへの結びがいまいち掴みづらいというか……」
ユイや新八は、特にその目的に注目を寄せていた。キリトやアスナ達をこの世界へ送ったこと、別の世界から兵力を集めていること。現状判明している二つの行動理由についてもまったく当てはまらず、サイコギルドに関する謎は増々深まるばかりである。そのフワッとした目的には、銀時も思わず苦い反応を示していた。
「そんな抽象的な中二臭いセリフ吐くより、もっとストレートに言えば良いのによ。世界征服だとか人類の粛清とかよ」
「確かにそこを紐解かない限りは、難しそうよね……」
アスナも銀時の意見には少なからず共感。情報がまとまりつつある今だからこそ、組織の目的や行動理由を深掘りすることが先決と彼女は考えている。
と山崎の情報筋により明らかになった、サイコギルドの新たなる情報。まだ確証的なものが浮かびづらい中で、この貴重な情報は一行にとって大きな一歩となっていた。
「よしっ! みんな。こうなったらもう一回、空川町に行こうか」
「おっ、良い考えアル。キッリ―! こっちからカチコミして、相手を驚かせるネ!」
キリトは思い付きで再度空川町へ行くことを提案。神楽も彼の考えに賛同し、新たな手掛かりを見つけることに熱意を燃やしていた。皆の興味も空川町へと向き始める中で……万事屋にふと来訪者がやって来ている。
〈ピンポーン!〉
「ん? このタイミングでお客さんか?」
「新八。行ってこいアル」
「いや、なんで命令形?」
「早く行けヨ」
「まったく。人使いが荒いんだから……」
玄関先のチャイムの音が鳴り、神楽は新八を向かわせていた。面倒に感じつつも、彼は普段通りに応対しようとする。
「はーい、どちら様……って!?」
と玄関を開けた瞬間に、新八は驚きの反応を示した。それはかつての知り合いが、何の前触れも無く姿を現したからである。
「どうした、新八?」
「誰か知り合いでも来たのか?」
新八の反応が気になり、銀時やキリトらも玄関先へと向かう。すると銀時や神楽の二人は、意外な客人の登場に、新八と同様に驚きを示していた。
「久しぶりです! 兄貴!」
「お前は……!」
そう。万事屋を訪れたのは、ブックゲートで瞬時にかぶき町まで移動した平子とユナの二人である。
「えっと、この人も万事屋の知り合いなの?」
「そうですね。彼女は泥水平子さん。色々あった仲で……今は父親と一緒に放浪の旅に出たはずですけど……」
「色々あってまた来ちゃいました!」
新八は平子のことを、初対面であるキリト、アスナ、ユイの三人に説明。一言では表せない深いつながりだと、三人は新八の説明で察していた。ただ彼女の無邪気な素振りから、悪い人では無いと……ユイらは素直に信じている。
一方でそんな平子は、もう一人別の女性を連れて来ていた。
「ということは、こちらの女性の方も銀時さんの知り合いですか?」
「いいや、こいつらは知らねぇよ」
「一体誰アルか?」
無論銀時らにとっても初対面であり、一行の注目は平子の知り合いに向けられている。特徴的なヘッドホンと近未来のような恰好、白い髪などから、一行は一言では言い表せないミステリアスな雰囲気を感じ取っていた。
「えっと、兄貴。紹介しますね。この人は――」
「ユナです。折り入ってあなた方に相談しに来ました」
「相談?」
平子がユナを紹介しようとした途端、被さる形でユナがキリトらに話しかけていく。気さくな平子の雰囲気とは異なり、ユナの切羽詰まった様子から、キリトらはただ事では無いと密かに察している。
ひとまずは二人を万事屋の居間に移動させて、詳しく話を聞くことにした。
「へぇ~。万事屋にも新メンバーが増えたんだ」
「そうそう。どいつも働き者で依頼もさくさく来て助かってんだよ」
「確かに。兄貴よりも頼りになりそうだよねー!」
「おい」
平子は自分の知らない間に、万事屋に入ったキリト、アスナ、ユイの三人に興味を示している。銀時の性格や態度を踏まえた上で、きっと彼らも苦労しているに違いないと薄っすら理解していた。
そんな親しみやすく話す平子の姿に、アスナらも好印象を持っている。
「平子さんって、結構気さくな方よね」
「なんだか親しみやすいというか」
「いやいや、これでも極道の娘だから、侮れないアルよ」
「そうなんですか!?」
神楽の一言には、ユイも思わず大きく驚いていた。平子についても気になることは多々あったが……今は彼女の隣にいる謎の少女ユナに、皆の興味が向けられている。
「それで平子さん。こちらのユナさんについては……」
「あっ、そうだった! 実はこの子アジトから逃げ出して、ある人を救いたい為に、私達に助けを求めて来たんだよね」
「アジト?」
「えっと確か……」
平子が簡易的に説明しようとした時、ユナがそっと補足を加えていく。
「サイコギルドです」
「そうそう。サイコギルドって名前の組織だよ!」
その一言を聞くと、皆の表情は急に固まってしまった。
「えっ……サイコギルド?」
「はい。そうです」
聞き間違いではない確かな一言。まさに今彼らの追っている組織の手がかりが判明し、銀時らの態度は一変してしまった。
「はぁぁっぁあ!!」
「えぇぇぇ!!」
「ど、どうしたの! いきなり!?」
「いや、平子! これは大手柄アルよ!」
「私達が探し求めていた組織でもあるんですよ、サイコギルドって!」
「そうなの!?」
銀時と新八はあまりの急展開に大きく発狂。神楽やユイも興奮気味に平子へ返答し、場は一種の混乱状態に陥っていた。
「サイコギルドの関係者……!?」
「この子が……!?」
無論キリトやアスナも例外ではない。彼らにとってもユナの発言は想定外であった。
「おい、どういうことだ! 急展開過ぎてついていけねぇよ!」
「一体アナタは一体何者なんですか!?」
銀時と新八は食い気味にユナへ詳しく聞いている。なお、ユナは彼らの大袈裟な反応を目の当たりにしても、まったく表情を変えずに接していた。
「では、一から説明します。私はサイコギルドの集めた記憶を保管する為に生まれた人型ロボット。別世界のヒューマギアと呼ばれる技術で動いています」
「ヒューマギア? 記憶?」
「例えば……あなた方のことは全て分かります。坂田銀時様、桐ケ谷和人様、志村新八様、結城明日奈様、神楽様、ユイ様、定春様。本来は交わることの無かった二組が、この世界では万事屋として活躍していることも」
ユナは無表情のまま、簡潔に自分の生まれた理由について説明。自身に保存された記憶を読み解き、銀時やキリトらの名前や現在の状況についても、スラスラと話していた。
「本当に俺達のことが分かるのか……」
「はい。私にはこの世界、和人様達がいた世界、そして令和という時代で活躍する戦士たちのいる世界の三つの記憶を保有しております」
「記憶の保有?」
「はい。百聞は一見に如かずですので、こちらの映像をご覧になってください」
聞きなれない単語にアスナが聞き返すと、ユナは意味深な一言を呟く。すると彼女は令和の記憶を具現化し、この状況にぴったりの仲間を呼び出していた。
〈スマホーン!〉
「スマスマ!」
「えっ!? なんか出てきた!?」
テーブルに出現したのは、黄色いスマートフォンのような物体。機械のような四角い手足が短く生えており、その姿はまるで生物のようである。そう。彼女が呼び出したのは、人口生命体ケミーの一体であるスマホーンであった。
「可愛い~! 何この生物?」
「スマホーンと呼ばれる別世界の人口生命体です」
「人口生命体? ポケモ〇やデジ〇ンじゃないのか!?」
「銀さん。ふざけている場合じゃないでしょ」
平子はスマホーンに興味津々で近づく一方、銀時は自由にも思っていたことを発していく。彼の予想は的外れであり、新八は冷めたツッコミを繰り出している。
「お~。まさかキッリ―のいた世界って、スマホが生物のようになっているアルか?」
「いや……流石に違うと思うが」
一方で神楽も盛大に誤解をしており、てっきりスマホーンをキリトのいた世界のデバイスと認識していた。流石に間違いなのでキリトがそっと訂正している。
いずれにしても皆の注目がスマホーンに移り変わった中で、ユナはスマホーンに優しく指示していた。
「スマホーン。あの映像を流してあげて」
「スマスマ!!」
元気よく鳴き声を発すると、スマホーンは目からホロのようなモニターを空中へと映し出す。皆がモニターに目を向ける中、そこに映ったのは……
「アレ? キリトじゃね?」
「お、俺!?」
キリトの姿である。映像では一風変わった服を着用し、地下駐車場にて何者かと剣を交え一騎打ちする光景が写っていた。無論キリト本人には見覚えのない光景で、幾ら自分が写っていてもまったく心当たりが無い。
「この映像は一体……」
「これはアナタ達が本来辿る予定だった未来の映像です」
「未来?」
「そうです。もしサイコギルドの介入が無ければ、アナタ達はオーディナルスケールと呼ばれるARゲームに参加し、そこである陰謀に巻き込まれる予定でした。ですが……その未来は今変わりつつあります」
「未来が変わる……?」
ユナは映像の真相について淡々と説明。この映像はキリト達が辿る予定だった未来と分かり、キリト、アスナ、ユイは大きく驚嘆としていた。また、未来が変わりつつあるというユナのセリフにも若干の違和感を覚えている。
一方で銀時は、キリトと一騎打ちする相手にも注目していた。
「おいおい。このキリトと戦っている男は誰なんだよ?」
「彼の名はエイジ様。SAOの生還者で、オーディナルスケールの上位ランカー。後に和人様と敵対する青年です」
「エイジか……」
名前を聞いても、キリト本人はまったく身に覚えが無い。だがSAOの生還者であれば、どこかですれ違った可能性があると彼は察していた。
一行はエイジがキリトと互角に戦いを繰り広げていることに、注目を寄せている。
「おー! キッリ―と互角に立ち回っているネ!」
「彼も相当な強さを持っていそうですね」
神楽や新八もエイジの強さには素直に脱帽していた。
一方でアスナは、ユナが最初に言っていたあることをエイジに当てはめている。
「ちょっと待って。ユナさんはさっきある人を救いたいって言っていたけど……その人ってまさか」
「そうですね。明日奈様の言う通りです。エイジ様はサイコギルドの誘いに乗り、自らの運命を変えてしまったのです」
深刻そうな表情で飛び出たユナの一言に、一同は皆大きく驚く。エイジが自らサイコギルドに加担したことは、正直信じがたい事実であった。
「なんだと……」
「なんでそんな誘いに乗っかったんだ?」
銀時が反射的に質問すると、ユナはすぐに返答する。
「私を人間に戻す為ですね……」
「ん? どういうことですか?」
「私のオリジナルである重村悠那様もSAOに閉じ込められ、そこで命を落としています。エイジ様はヒューマギアとして生まれた私を人間に戻す約束をサイコギルドと交わし、彼らの言いなりになっているのです」
彼女は自身のオリジナルが既に亡くなっていることも銀時らに打ち明かしていた。エイジがサイコギルドに加担したのも、ユナを自らの手で生き返らせる為と判明。大切な人とまた会いたい為という大義名分があるものの……万事屋側からすると、エイジがサイコギルドにその気持ちを利用されているようにも聞こえていた。
「言いなりって………」
「ったく、要するにパシリじゃねぇか!」
「そんなこと言ったって、次から次へと無理難題を押し付けられて、自滅するのがオチあるよ!」
「まったく! 兄貴達の言う通りですよ!!」
「ヤクザ側にいた人が言うと妙に説得感が……」
キリト、銀時、神楽、平子と思ったことをそのまま発する。特に平子は立場上利用する側の立ち位置も分かっているので。その説得力のある一言に新八は納得していた。
するとキリトは、ユナへ彼女自身の目的について確認を取っている。
「なるほどな。つまりサイコギルドに利用されているエイジって人を救いたい為、君は逃げて来たんだ」
「そうですね。そこで平子様と出会って、どうにかかぶき町までやって来たのです……」
その一言を聞き、彼は安心していた。ユナのエイジを思う気持ちは紛れもない事実であり、決して裏の無い行動理由だとキリトは察している。それはキリトのみならず、仲間達も皆同じ気持ちを持ち合わせていた。
「まさか私達の世界にいた人を仲間に迎い入れるなんて……」
「増々何を目的に動いているか分からなくなってきますね」
と同時にアスナやユイは、サイコギルドの不可解な行動に疑問を浮かべている。一人の人間の運命を変える行為はこれまでに例がなく、数分前にまとめた内容と照らし合わせて、彼らの一貫性のない行動はより謎が深まるばかりであった。
とここで、銀時はふと思ったことをユナに聞いている。
「そういえば、俺達の世界の記憶もお前は持っているのか?」
「そうですね。アナタ達の過去や未来の記憶も出来る限り網羅しております。例えば、こんな映像も」
「スマスマ!!」
それはSAOの世界の記憶のみならず、銀魂の世界の記憶もユナが把握しているのかという素朴な疑問だった。当然ユナはこの世界の記憶も保管されており、スマホーンに指示してその一部分を映像に映し出している。
「あっ、こいつは……」
「えっ? 銀さんなのか?」
「隣にいる方は……」
映ったのは、銀時と老人が背中合わせで辰羅の大群を薙ぎ払う光景であった。キリトやアスナは老人の正体に目を向けていると、平子が早速返答する。
「あっ、この人はじろちょんですよ!」
「そうそう。平子さんのお父さんの……って、平子さん!? じろちょん!?」
「うん。じろちょんってば、一緒に旅している時に私のわがままも聞いてくれて、この間なんかぺろぺろキャンディプレゼントしてくれたんですよ~!」
老人の正体が自身の父親だと明かした平子だったが、その特徴的なニックネームに銀時、新八、神楽の三人は驚かされていた。このニックネーム呼びは以前出会った時には無かったもので、同時に次郎長が知らず知らずのうちに娘には甘い性格となっていることが、三人にとっては信じがたい事実となっている。
「まぁ。とっても可愛らしい方なんですね!」
「いや、あの次郎長さんが親バカになるのは……信じがたいというか」
「想像が付きづらいアル」
ユイは素直に、平子と次郎長の関係性を微笑ましく思っていた。なお新八や神楽は、未だに次郎長の親バカぶりが受け入れられずにいる。
「平子さんのお父様ってことね」
「そうだな。アイツは泥水次郎長。かぶき町四天王の元一人で、一時俺ら万事屋と敵対していたガングロ親父だ。確かこれは裏で手引きしていた辰羅の大群と一騎打ちしていた時だな」
一方で銀時は、アスナやキリトらに次郎長について軽く紹介。軽口を交えたものの、相当な実力者であることを三人に伝えていた。
映像では次郎長の剣術裁きが辰羅の大群にさく裂する一方で、銀時も次々と敵を薙ぎ払っていく。普段とはより一層異なる銀時の戦いぶりに、アスナやキリトは若干の違和感を持ち始めていた。
「ちょっとキリト君。この銀さん、結構凛々しくない?」
「かっこよすぎる気もするが」
「おーい、全部聞こえてんぞ」
やはり普段の気だるげな性格ともギャップを彼らは大きく感じている。
なお、こちらの映像は銀魂の世界における「かぶき町四天王篇」の一場面。銀時らにとっても大切なモノを守るために戦った戦いであり、経験者である銀時、新八、神楽は少し感慨深く感じていた。
「でも懐かしいですよね、この思い出」
「まさかこのタイミングで振り返れるとは思わなかったアルよ」
「本当に二つの世界の記憶を保管しているんですね」
と同時に、ユナに保管されたあらゆる記憶についても説得力が付いている。さらにユナは、銀時らの知らないある記憶も披露していく。
「それだけではありません。他にも私はこんな記憶を保持しています」
「スマスマ!」
スマホーンに指示すると、次に映ったのはあるヒーローの戦う場面である。
「これは……」
「仮面ライダー?」
ユイらの言う通り、この映像は別の世界にて存在する戦士、仮面ライダーの戦闘シーン。黄色いバッタを模した戦士が、カマキリのような怪人と激闘を繰り広げている場面だった。
「ん? 兄貴達は知っているの?」
「いや、なんか変な遺跡に飛ばされて、そこで仮面ライダーって別世界の戦士のことは知ったんだが」
「このライダーは見たこと無いわね」
平子が詳しく聞くも、銀時やアスナからは確証を得ない返答が返ってくる。彼らもあらゆる仮面ライダーについては知っているものの、今写っている黄色いライダーについてはまったく存じていなかった。
するとユナが、その黄色いライダーについて補足を加えていく。
「彼の名はゼロワン。平成以降に生まれた令和と言う時代で生きる第一号のライダーです」
「令和のライダー?」
「恐らくアナタ方が遺跡で見たのは、平成と言う時代で戦うライダー。仮面ライダーには他にも昭和、令和といった時代によって、多種多様なライダーが存在しているのです」
ユナは仮面ライダーにも、時代によって区別があることを説明。銀時達の見た平成ライダーとは違い、この黄色いライダーことゼロワンは令和で戦う仮面ライダーだと伝えていた。
「そしてこのゼロワンの世界では、ヒューマギアと呼ばれるロボットが、人々の生活を支えております。私のモデルもこの世界に存在する秘書型ヒューマギアを参考にしています」
「だから恰好が似ているんですね」
ユナはさらに、自身の現在の姿がゼロワンの世界に存在する技術だと自負。ゼロワンの隣にもイズと呼ばれる秘書型のヒューマギアがおり、ユナはそのイズをモデルに作られたとユナ自身は解釈していた。
続けて彼女は、ゼロワン以外にも存在する令和の仮面ライダーを簡単に紹介していく。
「ゼロワンの他にも本の力で戦うセイバー。最強生物の力で戦うリバイとバイス。多種多様な装備を持つギーツ。ケミーと呼ばれる人工生命と共に戦うガッチャード。お菓子の力で戦うガヴ。夢の世界の魔物に立ち向かうゼッツなど、今でも令和の仮面ライダーはどこかの別世界で生まれ続けているのです」
「まさか仮面ライダーにも、まだ別の戦士がいたなんてな」
「本当マルチバースって、知らないことばかりなんですね」
まだまだ新たな戦士が誕生し続けていると知り、キリトやユイはその壮大さに圧倒されている。彼らもまた平成の戦士達と同じく、自由と平和のために戦う誇り高き戦士達と皆痛感していた。
すると銀時は、ここまであらゆる映像を流してくれたスマホーンの出生について、ユナに聞いている。
「そのスマホーンってのも、ライダーの仲間なのか?」
「はい。これはガッチャードの世界にある記憶を具現化したものです。私は令和にある記憶の一部を使って、このように力を行使できるようです」
「スマスマ!」
スマホーンも元気よく返事した。だが銀時にとっては、鳴き声からあることを連想させている。
「なんかそういう番組があったような……」
「って、銀さん。それはもう終わりましたよ。大体スマホーンとスマッ〇なんて、何の関係性も無いじゃないですか?」
昔にやっていた某バラエティ番組を思い出したものの、無論スマホーンとは何の関係も無い。こじつけのようなボケに、新八は呆れ気味にツッコミを入れていた。
だがちょうどその時である。
「スマスマ!」
スマホーンがまた新しい映像を、流し始めていた。そこに映っていたのは……
「ロート! ロート! ロート! ロート! ロート! ロート! ロート製〇!!」
「ん?」
「えっ?」
コミカルな音楽と共に流れる製薬会社のCM。そして、
「さぁ、今回も豪華ゲストをお出迎え! ビストロスマッ〇!」
「あっ。どうやらスマップスマッ〇の記憶も、私の中に入っていたようですね」
「なんでだぁぁぁ!! なんで急にスマップスマ〇プが流れているの!! おい、投稿者! 完全に鳴き声から無理やり連想したでしょうがあぁぁ!!」
銀時の言った某バラエティ番組が急に流れ始めていた。某五人組アイドルグループがシェフとウェーターに扮し、豪華ゲストを料理とトークで盛り上げる名物企画が流れ始めていく。明らかにこれまでとは違う映像に、一同は困惑し、新八は激しくツッコミを入れていた。
「落ち着けよ、新八。ユナにだって把握していない記憶があったんだよ。それがスマ〇プスマップ。当たり前の話だろ?」
「そうだよー。それにこの回、面白そうアルよ。ウサインボル〇がゲストで出ているアルよ」
「なんでその回、チョイスしたんだよ! つーか、興味持つな! 興味を!」
銀時や神楽は独自に解釈して新八を説得するも、あまりの無理やりさに収まる気配はまるで無い。むしろ純粋に番組を楽しもうとしていた。
「えっとこれは……」
「何かのバラエティ番組?」
「ユナさんの記憶に入っていたんですか?」
一方でただただ困惑しているキリト、アスナ、ユイは、ユナへこの映像が流れた原因を聞いているも……本人にもどうやら分からない様子である。
「分かりません……私にもこんな記憶が入っていたなんて。〇マップは元々六人だったはずでは!?」
「いや、アンタもツッコミを入れるところそこですか?」
急に自分の知らない映像が流れたこと、並びにスマッ〇が六人では無く五人なことにも、ユナは困惑をより強めていく。後者は今気にすることでもない気もするが……
しかし平子は、ユナの把握してない記憶があることから、さらなる手がかりに繋がるとポジティブに捉えていた。
「でもこれは良い手掛かりになるかもしれせんよ! スマホーン、他に記憶は無いの?」
「スマスマ!」
彼女はスマホーンに指示すると、新たな映像が移り変わる。すると次は「ぷっ〇マ」という番組が流れ始めていた。
「今日はね、春の木更津にやってきました! 非常に気持ちいいです。え~ツヨシがやらかしましてね……」
「おい、なんてもん再放送してんだ! もう忘れさせてあげて! 全裸ででんぐり返ししていた件は、忘れさせてあげて!」
映ったのはスマッ〇のメンバーでは無く、タレントのユースケ・サンタ〇リア。今日のロケ地を軽く紹介すると、番組上の相方である草〇剛が不祥事を起こしたことに軽く触れていた。これは〇彅が深夜に公園で泥酔して全裸となった事件が関係しており、逮捕されて番組に出られなくなったことを間接的に視聴者に伝えているシーンである。幾らスマ〇プ繋がりとはいえ、先ほどの番組とは異なる温度差に、新八は反射的にツッコミを入れていた。
「いや、やらかしたのはツヨシじゃなくて、中居正……」
「うわぁぁぁ! ダメだから! それ以上言ったら、洒落にならないから!!」
神楽の余計な一言にも、新八は大焦りしてツッコミを入れる。こちらは笑い話に出来ない不祥事の為、もはや触れることすら禁句であった。
と話は大いに逸れてしまったものの、ユナの生まれた経緯や彼女の目的が分かり、平子が万事屋を頼ろうとした理由についても彼らは理解している。
「まぁ、要するに。お前は多種多様な世界の記憶を保管する為に生まれて来たんだろ?」
「それを使って、サイコギルドは何をしていたんですか?」
「そうよね。お願い、ユナさん。サイコギルドの本当の目的って、一体何なの?」
ユイやアスナは、ユナへ確信を突く質問を投げかけてきた。彼女達が一番に気になっていたサイコギルドの真の目的。今までの不可解な行動には果たして何か理由があるのか。万事屋の面々は息を飲んで、その返答に注目を寄せていた。
だがしかし、
「アレ?」
「ユナさん?」
ユナからの反応は一切ない。彼女は顔をうつむかせており、まったく上がろうとしていなかった。すると、
「スリープモードに移行します。スー、スー」
「スマ~」
彼女は急に眼を閉じてゆっくりと眠り始めてしまう。さらにスマホーンもカードへと戻り、こちらも休んでいる。
つまり……肝心な場面でユナは強制的に眠ってしまっていた。
「寝てるみたいです」
「おい! 古典的な思わせぶりで、もったいぶるんじゃねぇよ!!」
あまりのタイミングの悪さに、銀時は強めのツッコミを繰り出す。しかしスリープモードと宣言した以上、一定の時間になるまで起きないと皆察し始めていた。
「でも、どうしますか? ユナさんが起きないことには、何も分かりませんよ」
「源外さんに相談してみたらどうだ?」
「そうだな。しゃねぇけど、行くか」
ユイやキリトはカラクリ技師の源外に頼ることを提案。ヒューマギアも最新テクノロジーによるロボットと分かった以上、機械分野に詳しい源外に頼ることが得策と考えていた。
銀時も二人の案に賛成し、一行は万事屋から源外のいるカラクリ堂へ移動することとなる。なお、眠っているユナは定春の上に乗せて移動させた。
場面は変わって、こちらはかぶき町にあるからくり堂。銀時ら七人と一匹は彼の元を訪ねて、現在休息を取っているユナの状態に異常が無いか彼に見てもらっていた。
「こいつは凄いな。未知なるテクノロジーがバンバン出てきやがる。これが別の世界のカラクリってやつか」
「おい、爺さん。ユナは一体全体いつ起きるんだよ?」
「心配するな。力を使い過ぎて、エネルギーを自力で回復している途中だ。充電が済めば、自然と起きるわい」
「そうかよ」
源外はユナの外装部分だけで現在の状況を確認しており、彼女が一種の充電状態だと結論付けている。同時にユナの未知なるテクノロジーに、好奇心を高ぶらせていた。
「早く起きると良いですね」
「そうね。サイコギルドについて、聞きたいこともたくさんあるし」
ユイやアスナはユナの状態に問題が無く一安心している。彼女からサイコギルドの話が聞けることを心待ちにしていた。
すると、たまも万事屋側の会話に入り込んでくる。
「これが別世界のカラクリですか」
「たまさん。もしかして、似たような仲間が増えて嬉しいんですか?」
「いいえ。キャラが被るようであれば排除。又はまったく別のものに再改造しようかと」
「えっ……流石にボケですよね。たまさん……」
「さぁ」
たまもユナに興味を持っていると思いきや、いきなり物騒なことを言い始めていた。その冗談か本気か分からない素振りに、新八は困惑しながらツッコミを入れている。
皆がユナの再起動を待ち続ける中で、キリトはからくり堂で起きていたもう一つの出来事にようやく触れ始めていた。
「あの……源外さん」
「ん? どうした?」
「あそこにいる三人は……話しかけて良いのか?」
キリトが指を指した方角には……失意にくれるクラインを慰める桂とエリザベスの姿が見えている。
「チクショー! つくづく俺って奴は甘いのか……!」
「立派な決断だと思うぞ、クライン殿! だが少し、ストライクゾーンを広めた方が良い気が」
[俺なら0歳から100歳までなら可だ]
「って、それほぼ全てじゃねぇか! そもそもエリザベスさんと違って、俺は厳選して女性を選んでいるんだよ!」
[なんだとゴラァ!]
「落ち着け、二人共!」
仕舞いにはエリザベスへ八つ当たりをするクライン。一触即発な二人に対し、桂はそっと宥めていく。
何故かからくり堂にいた桂、クライン、エリザベスの三人。何やら訳がありそうな展開であったが、銀時らは彼らの姿を見るだけで厄介だと認識していた。
「……なんでヅラクラがいるアルか」
「フラれたんだとよ、たまに」
「あぁ。アレまだ続いていたんだ……」
落ち込んでいたクラインの原因が分かるも、むしろ数か月前の出来事がまだ続いていることにキリトらは驚いてしまう。事の発端は山崎とクラインがたまを懸けて決闘をしたことから始まり、結局は勝敗が付かないまま進展は無かったのだが……どうやらクライン側が折れて失恋した様子である。
「なんか今更感があるというか……」
「えっ? これ、触れなきゃ駄目なの?」
アスナや銀時も微妙な表情で自由に呟く。前者はクラインに気を遣っているが、後者は間違いなくどうでも良いと思っていた。
面倒に感じていた万事屋側だったが、ここで桂側はようやく銀時達の存在に気付き始めている。
「銀時ぃ! 貴様も慰めたらどうなんだ! 我が戦友のクライン殿の失恋だぞ! 一緒に愚痴を聞いてやるべきじゃないのか!!」
「うるせぇよ。つーか、こいつの失恋話何度目だよ。もう聞き飽きたよ。そもそも成就するわけねぇだろ!」
「なんだと! もう一度言ってみろ!」
適当にあしらう銀時の一言を聞くと、クラインは激高。早くも一触即発の雰囲気に変わり始めてしまう。
「ちょっと。落ち着けって二人共」
「ど、どうしましょう……」
二人の対立に心配そうな表情を浮かべるキリトとユイ。しかし神楽や新八は特に気にしていなかった。
「知らん。このまま放っておいた方が良いアル」
「そうですね。じゃ、僕らはユナさんが起きるのを待って……アレ?」
桂らを軽く受け流そうとした時、さっきまで近くにいたはずの平子がいないことに彼は気付き始めている。段々と嫌な予感を察し始める中で、その予感は見事に的中することとなった。
「ストップ!!」
「えっ?」
そう。平子は何の前触れもなく、口論する銀時とクラインの間に割って入り込んでいる。すると彼女は満面の笑みを浮かべながら、
「喧嘩は止めてください、兄貴達。さもなくば……お前たちの頭に真っ赤なお花が咲きますよ」
ストレートに銀時らへ脅しを仕掛けてきた。
「ひ、ひぃぃぃ!」
[勘弁を]
「な、なんて小娘だ!!」
彼女の不気味な笑顔と言動に、クライン、エリザベス、桂の三人は思わず体が震えてしまう。文字通り平子へ血祭りにされると思い込み、揃って彼女に恐怖心を感じていた。
「仲良しが一番です!」
「仲良しって言うか脅しだろ」
喧嘩が収まり満足げな表情を浮かべる平子だったが、その強引なやり方には銀時も小言でボソッとツッコミを入れている。
極道の娘の片鱗が見え始めていたが、ユイだけは平子の言っていた言葉の意味をまったく分かっていなかった。
「真っ赤なお花ってなんですか?」
「えっと、それは……」
「きっと血……花吹雪アルよ」
「花吹雪? なんだか必殺技名みたいですね」
「強ち間違っていないような……」
返答に困るアスナ、神楽、新八の三人。苦し紛れに神楽が花吹雪と例えるものの、ユイ自身はあまりピンときていなかった。意味を理解するには流石に刺激が強すぎるので、一行はどうにかはぐらかしている。
「平子さんってば……」
「相変わらずの素振り。あまりにも変わっていなくて、安心感を覚えます」
「いや、俺は不安の方が強いんだが……」
キリトも平子の対応には苦い表情を浮かべていた。一方でたまは面識があるからか、前に会った時と変わらない平子の性格にむしろ安心感を覚えている。
と桂達が首を突っ込んだことで、場は少々騒がしくなっていたが、その騒ぎのせいかユナはふと何の前触れもなく再起動していた。
「ん?」
「おっ、起きたな。充電が完了したみたいだな」
「充電? ……なるほど。力を使い果たして、眠っていたのですね」
ユナはすぐに自分の身に起きたことを把握。銀時らの行動も即座に予測している。すると彼女は、源外へ現在の状況を聞いていた。
「ところで皆さんは何をされているのですか?」
「何ぃ、あの男の失恋で一悶着起きていただけよ。そんな大したことではないわい」
「失恋ですか」
騒ぎの原因を聞くと、ユナは妙に納得したような表情を浮かべている。見れば見るほど当事者であるクラインの悲運さを感じ取り、彼女にとっては少し可哀そうに見えていた。その心の中では無意識に同情が生まれ、ユナはふとある決意を固めていく。
そしてクラインの元までそっと近づいていった。
「大丈夫ですか、壷井様?」
「ん? なんで俺の苗字知っているんだ!?」
「それは些細なことですよ。もしよろしければ、私の歌でアナタを元気づけさせてもらえませんか? きっと悲しみも吹き飛ばせると思いますよ」
ユナは自らの提案として、歌でクラインを励まそうとする。自身のオリジナルを思い起こし、その歌唱力と優しさで彼の助けになりたいと考えていた。
一方でそれを聞いたクラインは、細かい事情はさておき、ユナの優しさに大きく感激している。
「おー!! 天使だ!! 俺に天使が舞い降りてきたぜ!!」
「やったな、クライン殿! 新しい運命の出会いではないか!」
[俺からも祝福する]
彼は大いに浮かれ切っており、同時に桂やエリザベスも同じくらいテンションが上がっていた。単純そうな彼らの反応に、銀時やキリトは微妙な反応を示している。
「おい、ちょっとユナ。良いのか、こいつらを調子づかして」
「無理して励まさなくても良いと思うけど」
「いえ、心配は無用です。私のオリジナルである悠那様も、抜群の歌唱力と優しさで聞く者を癒していたと記憶しております。いわばこれは、私のお節介ですので皆さんはお気になさらず」
二人から止められようとも、ユナはまったく止めるつもりは無かった。単純にクラインを励ましたい思いで、彼女は自らの意思で行動している。
「ユナさん……」
「皆さんも聞いてみてください。きっと元気が出てくると思いますよ」
その優しさに触れて、ユイらは思っていた。きっと元の世界で生きていた悠那も、同じく優しくてお節介な性格だったのだと。その思いを引き継ぐかのように、今ユナは自慢の歌を一同の前に披露していく。
「では……。シェイク! シェイク! 不気味な胸騒ぎ!! チョーベリベリ最高! ヒッピ ハッピ シェイク!!」
「いや、またスマ〇プかいぃぃぃ!!」
のはずが、歌いだされたのは〇マップの「SHAKE」。またしても繰り出されたス〇ップネタに、新八は大きくツッコミを入れて歌を止めさせてしまった。
「ユ、ユナさん!? なんでこの曲、チョイスしたの!?」
「いや、無条件で元気が出るかと思いまして。いけませんでしたか?」
「いや、僕にとってはただの大ボケにしか聞こえませんでしたよ!!」
ユナはボケをかますつもりも無く、純粋に元気が出る曲としてこの歌を選んでいる。故に新八のツッコミがいまいち理解できず、ただ首を傾げてしまう。あくまでも確信的にこの歌を選んだわけでは無さそうであった。
「落ち着けよ、新八。ユナの行為を無駄にする気か?」
「そうだよー。良いチョイスアルよ。定春も踊り出したアルネ」
「ワン!」
「えっ? これ僕が先走っただけなんですか……!?」
銀時、神楽、定春も特に違和感は覚えておらず、新八をそっと説得させている。大ボケのつもりが現在の空気感だと、新八の考えすぎと意見がまとまりつつあった。
流石に分が悪く、新八は一歩引いてしまう。
「まぁ、歌ならなんでも良いと思うからさ」
「ユナさんの歌いたい歌で良いんじゃないかしら」
「気を取り直して、宜しくお願いします!」
「分かりました」
キリト、アスナ、ユイの三人は、ユナへ再度歌を勧めている。自分の表現したいことをやるべきと彼らは彼女に伝えていた。
その言葉の通りユナは息を整えて、再度歌う準備を整える。そして、
「では、行きます」
ようやっと彼女は自分の今歌いたいものを一同に披露していた。
「手に入れるよきっと……!」
その曲名は「longing」。本編のオーディナルスケールでも披露されたユナを代表する曲である。本来辿るはずだった未来を思い起こしつつ、ユナはその綺麗な歌声を一同に披露していた。
皆がその歌に魅了され、静かに聞き入っていた……その時である。
〈ドーン!!〉
突如からくり堂前にて、何かが空から衝突する音が聞こえてきた。ユナも歌うのを止めてしまい、一同は外の方に注目を向けている。
そこにいたのはなんと……
「探したぞ、ユナ!」
「……エイジ様ですか」
デモンズへの変身を解除したエイジだった。彼は空中からユナを捜索し、偶然にも聞いた彼女の歌を聞きつけて、かぶき町へと降り立っている。その執念深さに、ユナは思わず怪訝な表情を浮かべてしまう。
遂に万事屋の前へ姿を現したエイジ。いよいよ彼との正面衝突が勃発する……
激化していく物語! 万事屋もエイジやサイコギルドの騒動に巻き込まれていきます……。
そしてアンカーの能力も明らかになりました。記憶の球と武器の笛付きの槍を使い、昭和や平成の時代に出現した怪人達を出現させることが出来ます。なお今回登場する怪人達は、SAOの映画「オーディナル・スケール」に登場したモンスターをモチーフにしております。意外な怪人が出現すると思いますので、そちらも是非楽しみにしていてください。
ユナの能力も発揮される中で、いよいよキリト達は自分達の未来の一場面を見てしまいました。まだアリシゼーション編まで彼らは見ておりませんが、果たしてどうなることやら。なお、スマップスマッ〇、〇っすまは、スマホーンの鳴き声から無理やりねじ込みました笑 なぜあの場面で映ったのかは不明ですね。
遂にエイジも銀時やキリトらの目の前に出現! 万事屋や桂一派と衝突することになります……。
次回予告
「この僕の覚悟がお前たちに分かるのか!!」
暴走するエイジ/ルシファー!
「仕方ありません。こうなったら、またこの力を」
新たなる令和の力?
「ふっ、待たせたな」
「アンタは……!」
そして現れる――かつての強敵!
刀唱時代篇三 大侠客、江戸に再び