剣魂    作:トライアル

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タッセル「皆さん。ボンヌレクチュール! 僕はタッセル。最近あるアニメの影響で、僕のことを思い出した人が多いらしいね。ってそれよりも大変なの! 闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)の模造品を、エイジって青年が手にしたみたいなの! 他にもいろんな仮面ライダーの力を持っていて、彼は自分の運命を変えようとしている。そんな強い覚悟のエイジの前に立ちはだかるのは、侍と大侠客……その戦いの様子を今、覗いてみましょう!」

ということでセイバー風あらすじ紹介でした。今後も色んなパターンが見れるかも。
PS 昨晩、北海道東北付近で大きな地震がありましたが自分は無事です。



第百三十訓 大侠客、江戸に再び。

「探したぞ、ユナ!」

「……エイジ様ですか」

 ユナを追いかけて、からくり堂までたどり着いたエイジ。彼は変身を解除して、静かにユナの方へ睨みを利かせている。

 一方でユナは怪訝な表情に変わり、エイジに対し思いっきり警戒していた。キリト、アスナ、ユイの三人もユナと同じ気持ちである。

「エイジ……」

「とうとう来たのか……」

 彼らはユナとスマホーンにより、未来の一部分を把握していた。エイジの持つ底知れぬ強さは、大きな脅威になると考えている。

「あの人……じろちょんが足止めしていたはずじゃ……」

 一方で平子もまた、エイジとの再会に驚きを示していた。何よりも足止めしていたはずの次郎長の姿が見えず、彼女は薄っすらと不安そうな表情を浮かべている。

 なお、クラインはまったく事情を知らない為、キリトらに情報を求めて来ていた。

「あの……アイツって、キリトの知り合いか?」

「いいや。俺達が未来で敵対する相手だ」

「未来!? そうなのか……って、なんで知っているんだ?」

「私達も色々と事情がありまして」

 想定外の返答に彼は大きく驚く。思わずユイがクラインへ手短に説明しようとした時である。

「どうやらお前達も、ユナから情報を聞いたようだな」

 言葉が被さるようにエイジが、キリトらに声をかけて来ていた。

「その通り。本来の未来なら、僕とお前達は敵対する。だがその未来では、僕の願いが叶うことは無い……」

「願い……それって、ユナさんを生き返らせることか?」

「そうだ。今ユナに詰まっている令和の記憶さえ取り除けば、サイコギルドはユナを人間に戻すと約束してくれた。その為に僕は……どんな要求も呑んできた。言われるがままに、任務をこなした。今ここで引き下がるわけにはいかないんだ! さぁ、ユナをこっちに渡してもらおうか?」

 エイジは迷いを振り切るような表情で、強い覚悟を示していく。自身の望む未来の為に、彼は躍起となっていた。

「おいおい。まるで闇バイトに乗せられた被害者みたいだな」

「そんなことして、ユナが本当に喜ぶと思うアルか!」

 一方でずっと黙っていた銀時や神楽は、つい我慢できずにエイジへ容赦のない文句をぶつけている。皮肉を交えた一言だが、エイジ本人はまったく気にしていない。

「所詮君達には到底分かり合えない話だ。白夜叉……いや、坂田銀時には関係のない話なのだからな」

「って、俺のことまで知っているのかよ?」

「あぁ、そうさ。ユナから教えてもらった。他には、恒道館ビームサーベ流の継承者、志村新八! 宇宙最恐戦闘民族、夜兎の生き残り神楽! 狂乱の貴公子と異名を持つ攘夷志士桂小太郎! 謎の生物エリザベス! 君達のことは、既に全て調査済みだ」

 エイジは丁寧にも、初対面である銀時らにも挑発。ユナから教えてもらった情報を基に、彼らの異名や血筋をスラスラと読み上げていた。

[いや、俺だけ雑じゃね?]

 なお、エリザベスだけは謎の生物しか情報が伝わっていなかった様子である。あまりの簡素さに、エリザベスはプラカードを掲げてセルフでツッコミを入れていた。

「とにかくだ。僕の目的はユナを連れ戻すこと。彼女さえ引き渡せば、すぐに立ち去る。さぁ、とっとと渡してもらおうか!」

 しびれを切らしたエイジは、要件を述べた後、ユナを引き渡すようにとキリトらへ迫る。あくまでも目的はユナを連れ戻すことであり、それさえ叶えれば後はどうでも良いと彼自身は考えていた。切羽詰まった表情でユナに迫っている。

「嫌です。何度も言っているじゃないですか! アナタはサイコギルドに利用されているだけだと! 私を人間にしたって、ユナさんが戻ってくるわけじゃないのですよ!」

 しかし、ユナはエイジの要求を断固拒否。エイジに再度サイコギルドの危険性を訴えかけて、その場から一切動かなかった。

 そんなユナの気持ちに同調するように、アスナ、クライン、キリトの三人も加勢していく。

「ユナさんの言う通りよ。幾ら自分の未来の為とはいえ、少し強引よ!」

「黙って聞いてりゃ、レディーのエスコートも知らねぇのか、アンタは!」

「ユナが否定する限り、俺達は彼女の味方だ。絶対にアンタへ渡すか!」

 各々が感じたことをエイジにぶつけていたが、無論それは桂や銀時、平子らも同じ想いである。

「同感だ。俺もキリト殿やクライン殿側に付くとしよう」

「ったく、女々しい野郎はとっとと失せろってんだよ」

「これ以上近づくなら、本当に真っ赤なお花を咲かせますよ~!」

 彼らもまたエイジに対して、敵意を剥き出しにしていた。

「ちっ……英雄はどんな時でも、僕の邪魔をするのか!」

 ユナへ同調する者が増え、やや部が悪くなってしまうエイジ。本来の未来と同様に、キリトと戦う運命にあることには、ただならぬ因果を感じ取っていた。

 窮地に追い込まれたエイジであったが、ここで彼はある提案をキリトらへ交わしている。

「良いだろう。じゃ、一つ戦いで決めようじゃないか」

「戦い?」

「僕が勝ったらユナを連れ帰る。ただし僕が負けたら、今回は潔く立ち去る。それで文句はないだろう?」

「……本当にその約束を守るんだな?」

「あぁ、約束する」

 それはユナを懸けた決闘の申し出であった。エイジが勝てば目的通りに連れ戻し、負ければこの場は潔く見逃すと条件を付けている。この提案にキリトは若干彼の真意を疑ったものの……直感から彼の言葉を信じることにした。

「分かった。俺はそれで問題ないけど、ユナさんは?」

「私も大丈夫です。皆さんは?」

「おう! 大丈夫だぜ!」

「異論はないアル!」

 ユナもすんなり了承すると、次々にクラインら仲間達も賛同。皆白黒勝敗を付けて、決着を付けることに納得している。

「決まりだな。じゃ、近くの広い場所で決着を付けようか」

 するとエイジは一足先にからくり堂を離れて、決闘に適した場所まで移動した。場に彼がいなかったところで、ユナはキリトらに向かって深々と謝罪する。

「皆さん……ごめんなさい! 何の準備も無いまま、決闘に巻き込んでしまって……」

 彼女は事前の準備も進まないまま、戦いへと巻き込んだことを申し訳なく思っていた。

「ユナさん。心配はしなくて良いよ。絶対に勝ってくるから」

「そうです! パパやママ、銀時さん達がいれば絶対大丈夫ですよ!」

 しかし、ユナの事情を分かっているキリトらは、まったく気にしていない。ユナの願い通りに、エイジの目を覚まさせると彼らは決めている。

「だな。あんなヒョロガキに、俺達が負けるかっての」

「売られた喧嘩は買うべきだからな。どんな手を使ってこようとも、俺の刀は折れぬぞ」

「皆さん……ありがとうございます!」

 銀時や桂らも、ユナに向けて意気込みをかけていた。彼らもユナを守ることで、気持ちを一致させていた。

 こうして銀時、キリト、新八、アスナ、神楽、平子、桂、エリザベス、クラインの計九人が、エイジと決闘を繰り広げることになる。ユナはユイと定春でしっかりと護衛していく。

「んー」

「源外様。どうかされましたか?」

「いや……あの男。ちょっと似ているな」

「誰にですか?」

「いや、やっぱり気のせいか」

 一方で源外は、エイジについてどこか親近感を覚えていた。意味深に呟くも、一旦は気のせいとして自身の中で処理している。果たして彼は何を頭に思い浮かべたのであろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場面は変わり、こちらはからくり堂近くにある空き地。以前に銀時とキリト、神楽とアスナが腕試しで決闘をした場所である。おおよそ校舎一つ分の体育館程のスペースで、エイジと銀時、キリトらはユナを懸けた決闘を始めようとしていた。

「本当に全員を相手取るだな?」

「あぁ。いちいち一人ずつ戦うより、効率的にお前達をやっつけられるからな」

 エイジは名指しで、一斉に全員と戦うことを宣言する。自分の強さによっぽどの自信があるのか、その表情はかなりの自信に満ち溢れていた。

 無意識に強さをアピールするエイジに対し、神楽やクラインはあまり彼を好ましく思っていない。

「あの男……いちいち言動がムカつくアル!」

「そうだよな! なんかむずがゆくなるよな!」

「アレ……二人が珍しく意見を一致させている……?」

 二人揃って、意見を一致させていた。あまりの珍しさに、新八も驚いてしまう。

 一方でそんなエイジと相対するのは、銀時、キリト、新八、アスナ、神楽、桂、クライン、エリザベス、平子の九人。皆揃って、木刀や剣、刀を既に構えており、戦闘態勢を各々整えている。

「テメェが良いなら文句はねぇが、やるからには容赦ねぇぞ」

「そうね……ユナさんの為に、真っ向から行くわよ!」

 銀時やアスナに同調して、仲間達も同じく武器をエイジへ向けて差し向けていた。全てはエイジの野望を止める為、ユナの願いを答える為に皆戦いを決意している。

「皆さん……」

「ワフ……」

 近くで見守るユイ、定春、ユナも、全員の戦いの行く末をそっと見守っていた。

「ふっ……こちらとて、手を抜くつもりは無い。僕が授かった力の一端を、お前達にも見せてやる!」

 するとエイジは、静かに心の中で覚悟を決めると、懐から取り出したあるデバイスを腹部に装着していた。

〈エデンドライバー!!〉

「何!?」

「アレは……」

 その既視感のアイテムに、一同は驚嘆としてしまう。かつて自分達が苦戦を強いられたダークライダーと似たベルトを、エイジは惜しげもなくキリトらに披露していた。

〈ルシファー!!〉

 エイジはそのままもう一つのアイテムであるエデンプログライズキーを開錠。エデンドライバーのレバーを操作し、左側のスロット部分にそれを差し込む。

「……変身!」

〈プログライズ! アーク!!〉

〈The creator who charges forward believing in paradise! OVER THE EDEN!!〉

 変身という掛け声と共に、エイジの体は変化。骸骨のような幻影に包まれると、全身を特殊な黒と灰色のスーツに覆われていく。頭部にも仮面が装着され、手には槍型の武器であるサウザンドジャッカーが装備された。

 そう。彼はサイコギルドから得た力を使い、ダークライダーの一体である仮面ライダールシファーへと変身を遂げたのである。

「変身した……!?」

「嘘だろ……」

「お前、ダークライダーだったのか!」

 突然の出来事に戸惑う桂、クライン、銀時ら。エイジのダークライダー化は、彼らにとっても想定外だった様子である。

「その力……サイコギルドから受け取ったのか?」

 キリトが警戒しながら返答すると、エイジことルシファーはすぐに返答した。

「あぁ、そうさ。これこそが僕の運命を変える力……この力を使って、僕はお前達を超えて見せる!!」

 彼は開き直った態度となり、武器であるサウザンドジャッカーを握りしめて、キリトらへ向かい突撃していく。

「はぁぁぁ!!」

「フッ!?」

「くっ!」

 ひとまずは槍を振り回し、無我夢中で九人に向かって攻撃。特に攻める対象を決めておらず、攻撃していた相手を次々と彼は蹴散らしていた。

「はぁぁ!」

「ふっ!」

「遅い!」

 距離を縮めて攻撃を仕掛ける新八、桂、クライン、エリザベスに対しても、ルシファーは即座に受け流す。

「ホワチャ―!」

「はぁぁ!」

「よっ!」

 隙を見て、アスナ、神楽、平子の三人が三方向から攻撃を仕掛けてようとも、

「はっ!!」

「何!?」

ルシファーは軽い身のこなしでその攻撃をかわしていく。

 そのまま一旦身を引き、アスナらとの距離を縮めようとしたが、

「そこだ!」

「覚悟しろ!」

「くっ……ちっ! しくじったか!」

 死角から迫るキリトと銀時に気付くことが出来ず、彼は二人の斬撃を受けてしまう。全員相手取ることを豪語したものの、やはり多勢に無勢の状態。そこで彼は、ある秘策を早速使用していた。

「ならば!」

〈ジャックライズ!!〉

 手にしたサウザンドジャッカーのレバーを強く引っ張り、武器に詰まったデータを解き放つ技「ジャッキングブレイク」を発動。

「はぁぁ!」

 すると槍から無数のエネルギー体が解き放たれ、ルシファーの周りに集まり、徐々に動物のようなモデルを形成していった。

「あっ、アレは!」

[動物がたくさん!?]

 異変に気付き、新八とエリザベスは仲間達に警戒を呼び掛ける。

 ルシファーが呼び出したのは、サウザンドジャッカー内に保管されていたライダモデルの複製。これはあらゆる動物のデータを疑似的に再現した、いわば特殊なエネルギー体なのだ。ルシファーと同等の体格をしており、その種類は銀時らの数に合わさるように九体も複製されている。左からピンク色のハヤブサ、紫色のサソリ、青色の狼、オレンジ色のチーター、金色のマンモス、黄色の蜂、水色の白熊、紺色の鮫、赤色の虎が、息を荒くしながら待機していた。

「僕のとっておきの技だ。さぁ、お前達に倒せるかな……?」

 するとルシファーは、ライダモデル達を指示。銀時やキリトらへ襲い掛かるように命令していた。

「くそっ! 厄介なモン、召喚しやがって!」

「みんな! 気を付けろ!」

 新たなる敵の登場に、面倒さを感じる銀時。キリトは即座に仲間へ指示して、警戒するように呼び掛けていた。

 こうして彼らはルシファーを相手取りながら、彼が使役するライダモデル達とも戦う羽目になってしまう。

「皆さん……」

「ワフ……」

 次々と繰り出される未知なる技の数々に、つい仲間達を心配するユイと定春。一方でユナもキリトら並びにエイジの動向を心配している。

(あんなに力を使って、本当に大丈夫なの……?)

 自身も同じく令和の力を使用して、体に負担がかかったことがあり、エイジにも同じことが起きないか彼女は薄っすらと心配していた。

 一方で銀時やキリトらは、ライダモデルの対応に追われている。

「はぁぁぁ!!」

 マンモスのライダモデルを相手取る神楽。傘による遠距離射撃や、接近戦を多用しても、まったく倒される気配は無かった。

[仕留めてやる!]

 空中を自在に舞う鮫のライダモデルに飛び乗り、エリザベスはプラカードをひたすらにぶつけて、地上に叩きつけようとしていた。

「くっ……次から次へと発射しやがって!」

 クラインが相対するは狼のライダモデル。洗練された素早さと口から放つ弾丸を刀でかわしつつ、彼は次々と斬撃を繰り出していた。

「この蜂……隙が無い!」

 電撃を放ちながら空中を浮遊する蜂のライダモデルに対し、アスナも羽を広げて応戦。ただし蜂の反射的な行動に防戦一方となってしまう。

「やぁぁぁ! こいつ、硬い!」

 平子はサソリのライダモデルと対峙。毒針に気を付けながら攻撃を仕掛けるも、その強度に手を焼いている。

「おっと! 火を吐く虎か……面白い!」

 虎のライダモデルから繰り出される火炎攻撃に、桂は慎重に戦いを進めていた。刀を握り直して、再度果敢に立ち向かっていく。

「ふっ! こんなデカ物にやられてたまるか!」

 新八と戦うのは白熊のライダモデル。文字通りの氷結攻撃にもろともせずに、彼は攻撃をかわしながら、確実な一手を見据え木刀で攻撃していた。

 ライダモデルの登場により、場は乱戦状態に陥る中で、いち早く攻略した者が二人いる。

「させるか!」

「おらよっと!」

 そう。キリトと銀時である。キリトはハヤブサのライダモデルに対処し、こちらも羽を使って空中から接近戦を展開。一方で銀時はチーターのライダモデルと戦い、その素早さを見切りつつ、次々と左右からダメージを与えていった。

「キリト!」

「あぁ、任せろ!」

 そして二人は一気に勝負へと出る。キリトはハヤブサの腹部目掛けて二本の長剣を突き付けて、地上へと降下。その隙に銀時はチーターの行動を予測して、先回りすると、

「そこだ!」

一気に木刀で力いっぱい叩きつけていく。するとチーターは吹き飛び、上空へと抵抗なく上がっていくと、

「はぁぁ!」

キリトが突き落そうとしたハヤブサと接触。その隙に彼は長剣を構え直し、二体の左側に向かって……

「終わりだ!!」

横長に切り裂いていく。これが決め手となり、二体のライダモデルは〈ドカーン!〉と大きな爆発を空中で起こして消滅。

 二人の偶然の一撃が、上手い具合に噛み合い、早くもライダモデルを撃退していた。

「……流石はSAOの英雄。白夜叉も中々の強さだ」

 その戦いを様子見していたルシファーも、キリトの変わらぬ強さと、銀時の英雄と呼ばれる実力を間近で実感している。そして彼らが行きつく間もなく、不意打ちの如く二人へ襲い掛かっていく。

「はぁぁ!」

「くっ! てめぇ!」

「ふっ!」

 銀時、キリトと共に、反射的にルシファーへ応戦。彼から振り下ろされる槍を打ち返し、本能的に彼と交戦していた。

 キリトの長剣とルシファーのサウザンドジャッカーがぶつかり、互いの武器を押し付ける中で、キリトはルシファーへエイジ自身の本心を探っている。

「アンタ……そんなに未来を変えたかったのか!? そこまでしてダークライダーになりたかったのか!」

「あぁ、そうさ! 求めていた者はあの世界の未来には無かった! これは僕にとって千載一遇のチャンスなんだ……もうあの時の何も出来なかった自分とは違うんだ!」

「あの時……? SAOのことか?」

「分かった口で探るな!!」

 ルシファーことエイジの本心に触れていくうちに、キリトは次第にエイジの想いを悟っていく。守り切れなかったことによる怒り、憎しみ、憤り。キリトもまた同じ経験を持っており、彼もまた自分と同じSAOによって運命の狂った一人だと思い始めていた。

 互いに状況が膠着化する中で、銀時は木刀を構えながら、キリトと対峙するルシファーに一言かけている。

「ったく、頑固親父並みに頭でっかちだな!」

「なんだと……!?」

「テメェにどんな過去があったのか、どんな未来をサイコギルドに見させられたかは知らねぇよ。だがな、与えられた力のままにサイコギルドの言いなりになって、本当に理想の未来へ辿り着けるのか? サイコギルドによって敷かれたレールを、ただ走っているだけじゃないのか? そこにテメェの意思はあんのかよ?」

 銀時は鋭い目つきで睨みつけながら、ルシファーに自身が感じたことをそのままぶつけていた。未来を変えることに執着していたエイジだったが、それも全てサイコギルドの思ったままに動いている。そこに自分自身の意思はあるのか。銀時は再度ルシファーに問いかけていた。なお、彼からの返事はまったく無い。

 さらにキリトも追記していく。

「銀さんの言う通りだ……アンタはまったく周りが見えていない。ユナさんを見ろ! アンタのこと、心の底から心配しているんだぞ!」

 彼が指を指した方角には、心配そうにエイジを見るユナの姿が見えていた。

 サイコギルドの言われるままに自分の未来を変えようとしたエイジであったが、ここで彼は本当に自分の意思で決めたことなのか思い悩んでしまう。

(もう終わりか、あんちゃんよ。思ったよりも強いが、大きく迷いがあるな。こんなんじゃ俺には勝てねぇよ)

 さらに彼は、数時間前に戦った次郎長の言葉も思い出していた。大きな迷いとは無自覚に、抑え込んでいた自分の意思なのかもしれない。

 そう自分自身で自覚はしていたのだが……彼にとってはもう引き下がれない状況だった。

「うるさい……うるさい!!」

 ルシファーは急に激高し、サウザンドジャッカーを次々とキリトへ向かって振りかざす。それをキリトは瞬時に打ち返し、ルシファーに向かって応援していた。

「うっ!」

 しかし、最後の一撃を防ぎきることが出来ず、彼は地面に勢いよく倒れこんでしまう。

「おい、キリト! 大丈夫か?」

「あぁ、平気だ。そこまで大したことじゃないよ」

 銀時が駆け寄るも、特にキリトは問題なく立ち上がっていた。

 一方でルシファーは、銀時やキリトらに言われたことを振り払い、必死に自分自身を納得させている。

「お前達に何が分かる……! お前達に……僕の覚悟が分かるものか!!」

 彼は怒りを爆発させながら、エデンドライバーを外す。そして新たなベルトを腹部に巻き、闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)とジャオウドラゴンワンダーライドブックを手にした。

〈ジャオウリード!〉

 闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)にジャオウドラゴンワンダーライドブックを読み込ませて、ベルトに装填。サイコギルドから授かったもう一つのダークライダーへと変身していた。

「変身!」

〈闇黒剣月闇!!〉

〈jump out the book! Open it and burst! The fear of the darkness!! You make right a just no matter dark joke!  Fnry in the dark!! ジャオウドラゴン!! 誰も逃れられない……!〉

 ベルト上部のボタンを剣で押し込み、彼は暗黒と邪竜の力を身にまとう。紫色の特殊なスーツ並びにドラゴンの装飾が特徴的な闇の剣士、仮面ライダーカリバー ジャオウドラゴンに変身していた。

「別のダークライダーに変身した……!?」

「奴の奥の手って奴か」

 エイジの隠し持っていた新たな戦士の力に驚く二人。ルシファーとはまた違う狂気的な力を前に、彼らは一段と気を引き締めていく。

「さぁ、覚悟しろ! はぁぁぁ!」

 カリバーは闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)を強く握りしめ、容赦なく銀時やキリトへ再度襲い掛かる。彼らが戸惑っている隙に真っ向から攻撃を仕掛けようとした時だ。

「ふっ!」

「おらよ!」

「はぁ!」

 同じタイミングで、アスナ、クライン、桂の三人がキリトらの元に駆けつける。それぞれ刀や細剣を振るって、カリバーを一旦退けようとしていた。

「くっ……」

 思わぬ攻撃を防ぎきれず、勢いを止めてしまったカリバー。態勢を整えつつ。彼はアスナらの様子を伺っている。

「お待たせキリト君! 銀さん!」

「ここからは俺達も加勢するぜ!」

「リーダー達ももうすぐ来る。心配は無用だ!」

 助太刀に来たアスナ、クライン、桂の三人は、既にルシファーの使役していたライダモデルをとっくに撃破していた。また神楽らも大方ライダモデルを倒しており、残りの一匹を総出で相手している。

 頼もしい味方が加わって一安心する銀時とキリトだが、一方でカリバーは思わぬ形で相対することになったかつてのSAO攻略組と、ユナから聞いていた攘夷戦争の英雄の組み合わせに若干の嫌悪感を感じ取っていた。

「攘夷志士達に攻略組か……妙な組み合わせだ」

 そう嫌味を呟くも、アスナらは気にせずにカリバーへ思いの丈をぶつけている。

「いい加減にしなさい、アナタ! 聞こえないの? ユナさんの叫びが!」

「幾ら自分の未来を変える為とはいえ、ちと独善的ではないか」

「そもそも女の子を泣かせるなんざ、男の風上にも置けないぜ!」

 アスナ、桂、クラインと各々が思ったことを発していた。

 だがしかし、そのうちのクラインの言葉にカリバーは、例えようもない怒りを心の中で覚えてしまう。

「泣かせるか……風林火山のお前には言われたくないな」

「はぁ? どういう意味だよ?」

 すると彼は、ある昔の記憶を五人に向けて話し始めた。

「分からないなら教えてやろう。SAOの40層のダンジョンで、モンスターの大群に追い込まれたパーティーを救うべく、「吟唱」のスキルを使って誘導し、パーティーの救出に一役買ったプレイヤーがいた。しかしそのプレイヤーは逃げることが出来ず、そのままモンスターに襲われこの世を去った」

「って、何の話をして……」

 突然振られたSAOでの出来事の話題に困惑する五人。思わずクラインが文句をぶつけようとするも……その瞬間に彼はある嫌な予感を察している。

「まさか……!」

「クライン殿?」

「おい、どうした?」

 何の前触れも無く動揺するクラインに、違和感を覚える桂や銀時ら。彼の様子が急変する中で、カリバーはこの話の真実を惜しげも無く一行に明かしていた。

「やっと思い出したか。そのプレイヤーこそユナだ! そしてその時一緒に同行したのは、お前のギルドである風林火山の一味だ!」

 そしてカリバーはクラインを名指しする。先ほど話した一件の被害者は紛れもないユナ本人であり、彼女は自らを囮にして窮地に陥っていた人々を救ったのだ。その代償として彼女は命を落とす羽目になった……

 カリバーの語った真相。並びにユナの顛末を知り、銀時やキリトらの間には大きな動揺が広がっていた。さらにカリバーは話を続けていく。

「僕はあの時に理由があり、前線に出ることが出来なかった……お前の仲間に助けを求めたが、モンスターの相手で手一杯だった。なんであの時、助けられなかったのか今でも後悔しているんだ!!」

 彼の言う通り、あの一件以来エイジは、自分自身でユナを助けられなかったことを悔やんでいた。助けを求めるも手一杯で動けず、自分の弱さを攻め続ける日々。彼の心に大きな闇が覆われた瞬間でもある。

 ユナの死の真相を聞き、一番に動揺していたクラインであろう。話には薄っすらと聞いていたが、まさか守り切れなかった相手がユナだとは、まったく想像していなかった様子だ。

「う、嘘だろ……こんなことが」

「クライン殿!?」

 膝から崩れ落ちるクラインに、心配の声をかける桂。クラインにとっては荷が重く、何よりも信じがたい真実である。

 一方でキリトや銀時は、冷静にカリバーことエイジの力を求める理由について再度聞いていた。

「それがアンタにとって力を求める理由か?」

「ふっ、その通りだ。僕とてSAOの記憶は憎いさ……お前達にも恨みつらみはたくさんある……! だが、もう今はどうでも良いんだ。ユナさえ戻ってくれれば……それに今の僕には仮面ライダーの力がある! この力がある限り、SAOの英雄も閃光も風林火山も、果ては白夜叉や攘夷志士さえも僕の手には及ばない!!」

 カリバーは赤裸々に、SAOに対する憎しみを披露している。その憎しみを原動力として彼は動いており、ダークライダーの力を存分に過信。この力を使えば、キリトやアスナの実力も優に超えられると自負していた。

 その凝り固まった覚悟に触れて、銀時は段々とエイジのことを厄介に思い始めている。

「ったく、こりゃ完全に暴走してやがるな」

「力を持ったが故に、変な自信が付いているな」

「本格的に倒さないと、分からないみたいね……!」

 アスナらはエイジの話を聞いた上で、増々彼の目を覚まさせることに強い覚悟を決めていく。

 一方でクラインの心境にも整理が付き、彼も同じく刀を構え始めようとした時である。

「ならばこちらとて、全力で叩き潰すしかないだろう。それと……クライン殿。今は休んでおけ」

「いや、俺はまだ戦え……」

「遠慮はするな。顔に迷という字が付いているぞ。この場は俺達に任せておけ」

「か、桂さん……」

 桂は場の空気とクラインの心境を察して、彼へ一時撤退を提案していた。クライン自身が無理をしていることは明白であり、これ以上抱え込ませないように気を遣っている。そんな桂の気遣いに感謝し、クラインは苦渋の決断で戦闘から離脱していた。

「さて……ここからはナイスタッグの二組が、お前の相手をしてやろうじゃないか」

「誰がナイスタッグだ。適当に横文字使うんじゃねぇぞ」

「何ぃ、嫉妬するな。ベストパートナーとベストタッグは、既にエリザベスとクラインと決まっているからな。ナイスタッグで我慢してくれ」

「知るか!! そもそもその言葉を分ける区別って何なんだよ! ただのお前の匙加減じゃねぇか!」

 一段と意気込む桂であったが、彼の謎のこだわりには、銀時も思わずツッコミを入れてしまう。間近で見ていたキリトやアスナも、彼の変わらぬマイペースぶりには思わず苦笑いを示している。

「ふっ、四人となったか。だが、容赦はしないぞ!」

 一方でカリバーは、クラインが離脱しようとも、変わらずキリトらへの敵意を向けていた。剣を構えつつ、ゆっくりとその距離を縮めていく。

「みんな、来るぞ!」

「構えて!」

「あぁ、分かっている!」

 未知なるダークライダーの力に警戒しながら、キリト、アスナ、銀時、桂の四人はカリバーと相対することとなった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に皆さん大丈夫なのでしょうか……」

「ワフ……」

 一方でユイと定春は、引き続きキリトらの戦いの様子を見守っている。状況はあまり芳しくなく、一進一退の攻防が続いていた。

 その中でもユナは、現在の新八、神楽、平子、エリザべスの戦いを特に心配している。

「不味いですね……」

「えっ!? どういうことですか、ユナさん?」

「あのライダモデル、特に手ごわそうです。例え神楽様やエリザベス様が相手でも、勝つのは難しいかと」

「そ、そんな……」

 深刻そうな表情で戦況を呟くユナに、大きく驚嘆するユイ。

 現在四人が戦うマンモスのライダモデルは、神楽の怪力並びにエリザベスの戦術をもってしても中々倒すことが出来ず、四人の手を焼いている。

「ぐはぁぁ!」

[こいつ、中々手ごわいぞ!]

 マンモスの突進攻撃、並びに巨大な足の幻影を使った技に苦戦する神楽とエリザベス。まともに攻撃を食らってしまい、大きくダメージを負ってしまった。

「くっ、どうすれば……」

「諦めず攻撃を続けましょう! 皆さん!」

 新八や平子は態勢を整えて、どうにかマンモスを撃破するべく躍起となっている。

 ユナ自身は彼らが戦うマンモスを強敵とみなしており、このままでは苦しい戦いが続くと予測していた。

「仕方ないです……ここは私の力で!」

「ユナさん?」

「私も加勢します。ユイ様と定春様は待っていてください」

「ちょ、ちょっと!?」

 戦況の劣勢具合を感じ取ったユナは、覚悟を決めて神楽らの手助けをすると決めている。自身に詰められた令和の記憶を有効活用し、数分前と同様に武器にして戦うつもりだった。

「皆さん! 大丈夫ですか?」

「ユナさん!?」

「危ないアル! 下がるネ!」

 戦場に駆けつけたユナに、困惑する新八と神楽。思わず彼女を離れさせようとするも、ユナ自身は強気のまま、まったく引き下がらない。

「いえ、これ以上見過ごすわけにはいきません。ここは令和の戦士の力で対抗する他ありません」

「令和の戦士……あの仮面ライダーって戦士のこと?」

「そうです。最初は……これです!」

 平子らの反応を伺うことなく、ユナは強硬的にある記憶を呼び起こす。すると彼女の手元には、四角く小さいアイテムが出現していた。

〈パワー!〉

「これは?」

「パンチングコングプログライズキー。先ほどエイジ様が変身したルシファーと同じテクノロジーで開発されたアイテムです。その名の通り、ゴリラの力を宿しております」

 ユナが手にしたのは灰色と黒色に塗装されたアイテム、パンチングコングプログライズキー。ゴリラのデータが詰まったアイテムで、名前の通り圧倒的な攻撃力を手にすることが可能となる。

「なるほどアル! ゴリラのライダーを召喚して、あのマンモスに対抗するつもりアルよ!」

「それなら心強い助っ人に……」

 神楽や新八はこのアイテムで、てっきり新たな助っ人を呼び出すと予測。マンモスに真っ向から対抗する力強い戦士が召喚されることに期待していたが……

「はぁぁ!」

彼らの目の前に現れたのは言うと、

「って、アンタが変身するのかいぃぃぃ!」

巨大なグローブを装備したユナ本人である。彼女はパンチングコングプログライズキーを使用して、自身の腕にグローブ型の武器「ナックルデモリション」を装備していた。

 予想外の展開に、新八は思わずツッコミを入れてしまう。

「変身ではありません。装備です。このグローブで、マンモスに対抗致します」

「お~! ゴリラ対マンモスの夢の対決じゃないですか!」

「いや、夢の対決じゃないからね! そもそもゴリラの腕しか装備されてないからね!」

 周りのテンションとはお構いなしに、淡々と説明を続けるユナ。平子がユナの装備に羨望を抱く一方で、新八は彼女にも同じくツッコミを入れている。

 そしてユナは、そのまま必殺技を繰り出した。

「くらいなさい!」

〈パンチングブラストフィーバー!!〉

 自身の腕をマンモスのライダモデルに向けて差し出すと、装備されたグローブが勢いよく噴射。マンモスに衝突すると大爆発を起こし、大きなダメージを与えていった。

「凄い~! 大ダメージじゃないですか!」

[効果は抜群か!?]

 必殺技が成功して、手ごたえを実感する平子とエリザベス。

 だが一方で神楽と新八は、ゴリラとはあるまじき近未来的な攻撃方法に若干の違和感を覚えていた。

「いや、ただのロケットパンチだったアル」

「なんか僕らが思っているゴリラと違うような気が……」

 仮面ライダーの力故になんでもアリなのは自覚しているが、それでも現実のゴリラとはどこか程遠いと感じてしまう。

「続いてこれです!」

〈コング!〉

 さらにユナは装備を一旦解除すると、次なるアイテムを召喚していた。オレンジの柄と水色のゴリラが描かれた特殊なスタンプ、コングバイスタンプを手にしている。

「これはコングバイスタンプ。最強生物の一種であるゴリラの遺伝子を宿した特殊なスタンプです」

「って、ユナさん!? さっきからほとんどゴリラの力しか出していないけど大丈夫!?」

 二回連続で繰り出されたゴリラのアイテムに、再度ツッコミを入れる新八。偶然なのか、それとも狙ってやっているかは定かではないが……ユナ本人はまったく気にしていない。

「心配なさらず。先ほどとは違う効果ですから。こう使うんです!!」

 すると彼女は、目の前にいた新八とエリザベスに向けて、スタンプを彼らの肩に向けて押印していた。

「えっ? って、うわぁぁぁぁ!」

[なんだ!?]

「新八!? エリー!?」

「おっ!?」

 すぐに二人の体に異変が起き、自分の意思とは関係なく動いてしまう。

〈必殺! キング! パンチング! コング!〉

 この変身音と同時に、エリザベスは四つん這いとなり、新八はその上に体が丸まった状態で配置される。そのまま新八の背中には、ゴリラの顔を模したパーツが勝手に装備され、この状態で変身が完了となった。

「ちょっと!! なにこれ!? 僕、どうなっているの!?」

「落ち着いてください、新八様。こちらはリバイとバイス特有の能力、リミックス。二人が組体操して動物の姿を模して、攻撃力を高めるいわば……恒例行事です」

「いや、そんな淡々と説明しないでくださいよ! ライダーがやったらかっこいいかもしれませんけど、僕らがやってもただの宴会芸にしか見えないクオリティだよ!?」

 ツッコミを続ける新八に、ユナは何一つ表情を変えず、冷静にリミックスについて説明。一風変わった能力であるが、新八の言う通り、エリザベスとの組体操は正直無茶な仕様であった。新八のツッコミも収まる気配が無い。

[ここは恥を忍んで、やるしかないぞ!]

「おい、新八。エリーの足、引っ張るなよ」

「私からも同意見ですー!」

「つーか、なんでアンタらは普通に受け入れているんだよ!? 可笑しく感じているの、僕だけなの!?」

 なお、エリザベス、神楽、平子は特に問題なく感じている。軽口まで飛ばしており、余計に新八の方が浮いていた。

「このまま攻撃です! はぁ!」

〈コング! スタンピングフィニッシュ!!〉

「えっ、ちょっと!?」

 ユナは間髪入れず、そのまま即座に必殺技を発動。リミックス状態の新八とエリザベスに指示を加えると、彼らは勝手に動き出す。まるで本物のゴリラのような躍動感でマンモスを攻撃し、留めにプロレスのような体ごとのしかかる戦法で相手に大ダメージを与えていた。

 その攻撃の連続に、マンモスもつい後ずさりしてしまう。

「つ、疲れた……」

[俺もだ]

 リミックス状態が解除されて、やっと元の姿に戻る新八とエリザベス。慣れない動きで共に筋肉痛のような痛みを感じてしまう。

「ちぇ。もうちょっと根性見せろよ、新八」

「無茶言わないでよ、神楽ちゃん! これ根性でどうにかなるようなことじゃないからね!」

 そんな事情を知る由もない神楽からは文句が飛び出るも、新八は即座にツッコミを入れている。勝手に組体操された彼にとっては、まさに踏んだり蹴ったりな状況であった。

 一方でユナは数々の攻撃に手ごたえを感じており、好機と捉えて一気に畳みかけていく。

「とどめにこれです!」

〈バーニングネロ! ゴリラセンセイ!〉

 ユナが次に手にしたのは二枚のカード。ハバネロとゴリラを模した人口生命体ケミーがカードに描かれており、今までに召喚したゴルドダッシュとスマホーン同様に彼らを呼び出そうとしている。

「またゴリラ!?」

「しかもセンセイってまさか……」

「いや、違うからね! あのゴリラ原作者じゃないからね! つーか。またこれも変てこな使い方じゃ……」

 ゴリラセンセイという名前に既視感を覚えた神楽。本家大元のゴリラ原作者を頭に思い浮かべたが、単なる気のせいであろう。むしろ新八は先ほどのコングスタンプ同様に、奇抜な使い方をすると予想していたが……

「ガッチャブラザーズ! バーニングゴリラの召喚です!」

「バーニング!」 

「ゴリゴリ!」

「って、最後の最後で仮面ライダーを召喚したぁぁぁ!?」

まったく真逆の結果となっていた。ユナは二枚のケミーカードを使って、ガッチャブラザーズを召喚。ケミー自身が仮面ライダーになるガッチャードの能力を彼女は使用していた。

 召喚されたバーニングゴリラは、灰色の体色と赤いグローブを装備した攻撃特化形態。虹色の複眼とマフラーが特徴的であり、発する言葉もケミー自身の鳴き声のみである。

「さぁ、バーニングゴリラ。とどめを刺してきて」

「ゴリゴリ!」

「バーニング!」

 ユナは優しくバーニングゴリラへ指示すると、彼は勢いよくマンモスのライダモデルに真っ向から立ち向かった。自慢の腕力を活かし、次々と直接攻撃を仕掛けていく。

[い、一方的なワンサイドゲーム]

「つーか、私らの出番が取られているネ」

「ほとんどゴリラの技しか無かったような……」

 バーニングゴリラの攻撃力に圧倒されるエリザベスらであったが、よくよく考えると途中から彼らの見せ場は皆無であった。ユナと令和ライダーの力による加勢があったものの、いつの間にか形勢は逆転している。窮地は脱したものの、展開的にこれで本当に良かったのかと若干不安を感じる四人であった。

 そんなことはまったく気にしていないユナは、とどめとしてあるアイテムをバーニングゴリラに渡している。

「今です! バーニングゴリラ! これを!」

〈ガッチャイグナイター!!〉

 そのアイテムの正体はガッチャイグナイター。ガッチャードの能力を高める拡張型のアイテムで、バーニングゴリラは早速それをベルトに装着させた。

〈ガッチャンコ! ファイヤー!! バーニングゴリラ!! アチーッ!!〉

 するとバーニングゴリラの背中にブースターらしき物体が出現。胸部も青色に変化し、炎に燃え上がる戦士、ファイヤーガッチャード(バーニングゴリラ)に拡張進化していた。

「ファイヤーガッチャード! バーニングゴリラです!!」

「いや、明らかに色々重複しているよね!? ていうか、さり気なく原作に無いフォーム出していませんか! 投稿者!!」

 ユナが自信満々にファイヤーガッチャードを紹介するも、新八は我慢できなくなりさらにツッコミを入れる。こちらの形態は本編にも出ておらず、なおかつ炎を宿す形態が重複しているのだが……ユナは細かいことを気にせずに、そのままマンモスへとどめを刺そうとしていた。

「さぁ、このまま全員で決めましょう!」

「全員……?」

〈バーニングフィーバー!!〉

 全員と言う一言に違和感を覚える新八。詳しく訳を聞こうとするも、バーニングゴリラは早速その大技の準備に取り掛かっていた。

「えっ? うわぁぁあ!!」

「おぉぉ!?」

 なんとバーニングゴリラは次々と新八や神楽らを、自慢の握力でマンモスの元まで投げ飛ばしていく。ユナの言う全員とは、全員で直接攻撃を加えるものであった。やり方がやや強引な気もするが……。

「えぇえい! こうなりゃやけだ!! はぁぁ!」

「ほわちゃぁぁ!!」

「ふっ!」

[くらえ!!]

 もう後先考えずに勢いへと乗った新八らは、次々と木刀や日傘、刀等を構えて、自慢の一刀をマンモスのライダモデルに向けて繰り出している。新八、神楽、平子、エリザベスの順に自慢の攻撃を繰り出した後に……

「バーニング!」

「ゴリゴリ!!」

とどめとしてバーニングゴリラが必殺技を繰り出した。付近にあった土管を錬金術で再錬成して、巨大な拳を作り出す。そこに炎のエレメントを加えて真っ赤に燃えあがらせて、

「「はぁぁぁ!!」」

そのままマンモスのライダモデルへぶつけていた。この一撃が決め手となり、ようやくマンモスは爆散して消滅。長らく時間のかかった最後の一体を撃破し、ようやくすべてのライダモデルを全滅させる。

「バーニング!」

「ゴリゴリ!」

「ありがとう。ケミー達」

 手助けしてくれた二体のケミーに感謝を伝えるユナ。彼らをカードに戻すと、優しい表情をしたままそっとカードを抱きしめていた。

「じゃあな! ゴリラ原作者!」

「だからセンセイだからね。その呼び方だと、確実に間違う人いるからね」

 神楽もケミー達に感謝を伝えるも、まったく違う呼び方で接している。誤解を生みかねない為、またも新八はツッコミを入れながら訂正していた。

「やっと……うっ!」

 一方でユナは一安心したところで、またも胸の痛みに襲われてしまう。苦しそうな表情を浮かべるも、仲間に悟られたくない為、すぐに気を落ち着かせている。

「ユナさん? 大丈夫?」

「はい、大丈夫です。問題無いですよ」

 異変にいち早く気付いた平子だったが、ユナの無理をしているような態度には、余計に心配してしまう。彼女はユナに問題が起きないか、より一層注視していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁ!」

「ふっ!」

 一方でこちらはエイジが変身したカリバーと戦う銀時、キリト、アスナ、桂の四人。木刀、長剣、刀と言った武器で、カリバーに真っ向から対抗するも、戦況は一進一退の攻防が続くばかりである。

「なら、これでどうだ!」

〈ジャアクリード! ジャアクぶた3!〉

 するとカリバーは、闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)に緑色の本(こぶた三兄弟ワンダーライドブック)を読み込ませた。その剣の先端からは、絵本から飛び出たようなアニメチックなぶたのキャラクターが三匹登場。皆サングラスをかけており、見た目から見ても邪悪さが際立っている。

「なんだ、こいつら?」

「お前らの遊び相手だ。行け!」

 するとぶた達はカリバーの命令の元、それぞれ銀時、アスナ、桂の三人に向けて襲い掛かってきた。

「だはぁ! って、なんだよこいつら!?」

「無駄に戦闘力が高いぞ!」

「この子達も相手しなくちゃいけないの……!?」

 彼らの繰り出す接近的な攻撃に、思わず困惑して不意打ちを食らってしまう三人。カリバーのトリッキーな技に翻弄され、思わず悪戦苦闘してしまう。

「みんな!」

 キリトもアスナらの動向を心配するも、同時に目の前にいるカリバーも相手取らなくてはならない。カリバーとキリトの一騎打ちとなったが、ここでカリバーはすかさず必殺技の準備を進めていた。

「SAOの英雄……いや、キリトよ! 僕はお前を倒し、SAOサバイバーで一番強いことを証明する!!」

 すべては目の上のたんこぶだったキリトを超える為。待ちに待った好機を逃さない為にも、彼は渾身の一撃をキリトへ向けて繰り出すことにした。

〈必殺リード! ジャオウドラゴン!!〉

 変身に使用したジャオウドラゴンワンダーライドブックを、闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)へ必殺技を発動。剣から解き放たれた四体の邪竜のエネルギー体を、キリトへ向けて差し向ける。

「何……!? くっ……!」

「キリト!?」

 邪竜は全てキリトの体に絡みつき、四体同時に鎖へと変化。彼の四肢に絡まって、身動きを取れなくしてしまった。途中離脱したクラインも、キリトの窮地には思わず声を上げてしまう。

「ったく、こんにゃろ! テメェらの相手をしている場合じゃないんだよ!!」

「良いから離れなさい!!」

 銀時やアスナらもキリトを手助けしたいのは山々だが、邪悪なこぶた達がその行く手を阻んでいる。

 もはや絶体絶命の窮地。流石に不味いと察したクラインは、再度キリトの元へ向かって走り出す。

「やめろ!!」

 しかしその距離は遠く、どんなに急いでも届きそうで届かない。

「終わりだ……はぁぁ!!」

 そしてカリバーはキリトへ大ダメージを与えるべく、闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)を構えてそのまま彼に斬りかかっていく。鎖に繋がれたキリトはどうにかして脱出を試みるも、まったく動く気配はない。

 仲間達も皆他の相手で手一杯の中、本当にこのまま彼はやられてしまうのか……誰もが、そしてキリトまでもが敗北を覚悟した……まさにその時である。

「そこまでだ。あんちゃん」

「何!?」

 なんと急に、キリトの目の前に一人の男性が割って入ってくる。その男性は刀を引き抜き、カリバーの繰り出す必殺技に対し、真っ向から立ち向かっていた。

「はぁぁぁ!!」

「くっ……!」

 その勢いを押し込むことが出来ず、カリバーの必殺技はあえなく相殺されてしまう。そのまま余波で後ろに引き戻されたところで、彼はやっと自身の前に立ちはだかった人物を確認していた。

 それはカリバー……いや、エイジにとって一番に相手したくない男である。

「あ、あんたは……」

「フッ、ただのしがないガングロジジイさ」

 一方でキリトは、突然現れた助っ人にまったく状況が読み込めずにいた。皆が彼の正体を確認する中で、銀時、新八、神楽、平子の四人だけが、いち早くその正体を察している。

「アンタは……!」

「次郎長さん!」

「じろちょん!」

 そう。キリトの窮地を救ったのは、万事屋にとってかつての強敵、そして平子の父親でもある泥水次郎長だったのだ。

「相変わらずかわらねぇな……この町は!」

 彼の登場により、戦いはより激化していく。




 今回はエイジと万事屋、桂一派の衝突を主にお届けしました。色々と互いの素性が知れた回になったんじゃないでしょうか。
 見どころとしてはルシファーの戦闘シーン。本編では僅か数分の活躍だったので、今回はサウザンドジャッカーを使ったライダモデルの使役という設定を盛り込みました。
 それとクラインがユナの死を知ってしまうシーン。こちら彼のギルドである風林火山が関わっておりましたが、この件をクライン本人が知っているかどうかは正直判定がしづらかったので、点と点が結ばれてようやく判明する仕様になりました。滅多にない彼の曇らせ要素だと思います笑
 ユナも令和の力を使って大活躍しますが、ほとんどゴリラの装備しか使用しませんでしたね。ゴリラアームを装備するユナ、新八とエリザベスの組体操リミックス、そして本編に登場しないバーニングゴリラのファイヤーガッチャード版など、この場面は息抜き程度に見て頂ければ幸いです。
 そして……いよいよ泥水次郎長もかぶき町に戻ってきました! 彼も銀時らと合流し、さらに大活躍する事間違いないでしょう。さらに次回はアンカーも登場する予定です。キリトやアスナにとっては、自分達をこの世界へ送った因縁の相手……さて、どうなることやら。また次回もご期待ください!






次回予告

アンカー「こいつらが相手になるよ」

明かされるアンカーの真の能力!

クライン「俺は……」」
桂「だったら自分の刀で蹴りを付けて来い」

クライン、そして万事屋の決意!

源外「俺にも分かるぜ。大切なもんを失った苦しみは」

源外とエイジの邂逅……?

刀唱時代篇四 復讐の剣士、機械技師と交わりて。
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