2026年4月 13時15分
SAOの次元の地球にて動きがあった。キリト達が銀魂の世界へ飛ばされたおよそ五分後、仮想世界ALOにて仲間達が集合場所である広場へたどり着いている。
「ごめんー! お待たせ!」
「遅れちゃいましたー!」
羽を収め地上へと降りたのは、シリカとリズベット。そして、ペットであるピナだ。二人共、旧知からキリトら三人のことを知っている仲間で、良き理解者でもある。シリカは猫耳と尻尾を生やした茶髪の女の子で、見た目や声から幼く思われがちだがれっきとした女子高生である。青色で統一した服にスカートとニーハイで決めており、武器のダガーや小竜であるピナを使うビーストテイマーなのだ。一方のリズベットは、小さいとんがり耳をした鍛冶の得意な女の子。明るい性格とそばかすのついた活発なムードメーカーだ。赤と白色のズボンタイプの服を着用して、盾とメイスと呼ばれるこん棒を装備している。二人共に仲が良く、今日もクエストに必要な物を買い揃えていて集合場所へと着いたのだが――
「アレ? 三人共いない?」
「ええ!? どこ行っちゃったのよ!?」
そこには、キリト、アスナ、ユイの三人の姿はいなかった。突然と姿を消したことに、二人は違和感を覚える。
「ナー?」
ピナも不安そうに鳴き、この状況に自然と不安が募り始める。
「さっきまで、連絡取れていたのに……」
「まさか、そのままお茶に行っていたりして!?」
そう憶測を考えていた時、またも仲間がやってきた。
「ん? シリカにリズ?」
「って、リーファにシノンじゃない!? 一体どうしたの?」
「お兄ちゃん達を探しているんだけど、中々見つからなくて……」
「お二人も探しているんですか?」
場へ駆けつけたのは、同じく仲間であるリーファとシノンだった。リーファは、キリトの義妹であり現在世界では黒髪のショートカットだが、仮想世界では外見を変えて金髪で大きめのポニーテールにしている。胸元の空いた服や白いスパッツ、茶色のブーツでファッションセンスを上げており、風を操る種族シルフの力と剣を使った空中戦法が得意だ。結構長いとんがった耳をしている。一方、シノンはシリカと同じく三角耳と尻尾を生やしたケットシーの女の子。元々シューティングゲームの世界で活躍していたが、キリトやその仲間との出会いを機にこのファンタジーの世界へと移行した。水色髪のショートヘアー、外見は薄い緑色のローブ付きの服、黒いホットパンツにへそ出しと露出の多いファッションをしており、足元は黒ブーツで決めている。遠距離戦が得意なため大型の弓を使いこなし、仲間をサポートしている。個性も武器センスも違う四人はキリトやアスナの頼もしい仲間だが、その呼び出した張本人が集合場所にいないことにまだ戸惑いを隠しきれていない。
「そうよ。でも、あちこち探しても見つからないのよ」
「もしかして、ログアウトしているんじゃないの? 現実世界に戻っていたりとか?」
「だったら、あの二人のことだし連絡くらいするよ!」
「それでは、一体どこへいるのでしょうか?」
四人は持つ情報を話せるだけ話したが、結局何もわからずしまいだった。しかし、見つからなくて当たり前である。なぜなら、今キリト達がいるのは――
「うるせぇぇぇ!! もうとっくに起きてるだろうがぁぁぁ!!」
銀魂の世界なのだから。そんな、彼らが初めて起きた朝は銀時の唸る怒りから始まった。
「フワワ……何の音?」
「朝から何騒いでいるのよ……銀さん?」
騒ぎを聞きつけキリトやアスナも目を覚ます。屏風越しに見てみるとそこには、壊された目覚まし時計が転がっており、安眠を妨げられた銀時の鬼の形相が目に見えていた。
「ったく、このおんぼろ時計のせいで折角の睡眠が台無しだぜ」
「それはこっちのセリフよ……」
「まったく、銀さんはすぐ責任転嫁するんだから……」
朝から銀時の調子は昨日と変わらず激しかった。でも、そんな彼の姿を見てキリトは少しだけほっとする。
(一日経ったけどやっぱりこの人は変わらないな……)
なんだかんだで、心の中では頼りにしていた。そんな中銀時は、目覚ましを設定した犯人を探している。
「そもそも、俺昨日時計なんかセットしたか?」
「あっ! つい、いつもの癖で俺がセットしていたわ」
「全ての元凶はてめぇかぁ!?」
そして、まさかのキリトが犯人であった。怒りのまま銀時はキリトの頬っぺたをつねって、彼の目を覚まさせようとする。
「痛てて! やめてって銀さん!」
「うるせぇ! ついでに、てめぇの目を覚ましてやろうかぁ!」
「もう俺は、起きてるからぁ!」
「フフ。キリト君も銀さんも仲いいわね」
子供のようなじゃれあいをする二人。しまいにはキリトも銀時の頬っぺたをつね始めて反撃に出ていた。そんな二人の様子にアスナはそっと微笑んでいる。すると、その騒ぎを聞きつけユイや神楽も目を覚まし始めた。
「フワァァ……一体何の騒ぎですか?」
「朝から何を喧嘩しているアルか?」
「あっ、ユイちゃん! 神楽ちゃん! おはよう!」
あくびをしながらアスナの元に集まると、二人が見た光景は銀時とキリトが互いの頬っぺたをつねり喧嘩している様子である。
「ん? パパと銀時さんが喧嘩してます?」
「アッスー? 寝ている間に何があったアルか?」
神楽の質問にアスナは笑顔で答える。
「えーと……アレはただの兄弟喧嘩よ」
こうしてキリト達は、この世界で初めての朝を迎えたのであった。
この世界の朝は、キリトのいた世界の朝となんら変わらない。まばゆい太陽が町を照らし一日の始まりを告げている。そんな万事屋の朝は、新八が来てから始まるのだ。
「おはようございますー!」
彼が部屋へ入るとすでに仲間達は起きている。普段の万事屋ではまだこの時間帯に起きていないことが多いが、先ほどの目覚まし騒動があってか今日はみんな早めに起きていた。服も着替えており、みなソファーに座って、テレビに映ったニュース番組を見ている。
「あれ? 今日はみなさん早いですね」
「こいつのせいで目覚まし時計が鳴ってこの様なんだよ」
「悪かったって、銀さん」
そう言った銀時とキリトの頬っぺたは赤く腫れていた。これはきっと朝に一悶着があったのだろうと、新八は察している。
「あっ、これは喧嘩したんだな」
彼は小声でそっと呟いた。それはさておきニュース番組を見ていると、宇宙中の出来事が報道されている。政治や経済など他の星で起きている様々な話題が取り上げられていた。
「やっぱり色んな事が宇宙で起きているのね」
「宇宙規模となると、問題もやっぱり多くなるんだな」
アスナやキリトは、見ているうちに改めてこの世界が宇宙へ開国した事実を知る。
「お二人共、ニュースはよく見るんですか?」
「朝に見たり、後はネットで見ていたかな?」
「そんな、頻繁じゃないわよ」
新八の質問に答えているとキリトが見かけたのは、銀時が微動だにせずにテレビをじっと見つめる場面であった。
(やっぱり、銀さんも社会問題には関心があるのか?)
社会的な一面を見て彼を見直そうとした時である。番組も終盤にかかり、ニュースからお天気と占いのコーナーへ変わった。
「それでは、ここで星座占いに移りましょう。結野アナーお願いしますー」
「はぁ~い! 結野クリステルです! みなさん、夏も近づき暑くなってきましたね。今日は――」
場面が変わり映ったのはピンク色の和服を着た穏やかそうな女性、結野クリステルである。それと同時に銀時の目が変わり、
「来たぁぁ! 結野アナー!!」
急にテンションが上がり始めた。
「ぎ、銀さん!?」
「急にどうしたのよ!?」
あまりの変貌ぶりにキリト達が驚いていると、新八と神楽が代わりに説明してくれた。
「はぁ……この時間が来たアルか」
「一体、どういうことなんですか?」
「えっと、実は銀さんはお天気や占いをする結野アナって人の大ファンなんだよ」
「そうなのか!?」
銀時の好みのタイプに人一倍驚いた表情を見せるキリト達。しかしそれも無理はない。彼らにとって銀時は何が好きなのか全く分からず、まさかお天気お姉さんが好きなタイプだとは思ってもいないからだ。
「ぜひ、暑さに気を付けて仕事や勉強をしてくださいね!」
「はーい! わかりましたー!」
しかも見る限り、かなり熱烈なファンであることがわかる。
「銀さんの好きなタイプってお天気お姉さんなんだ……」
「意外ね……まさか銀さんが」
「人の好みは千差万別ですからね……」
苦笑いで呟くキリトら三人。この人はニュースのためではなく、お天気お姉さんである結野アナのために番組を見ていたのだと、心の中で確信する。すると、彼が待ちわびていた占いのコーナーが始まった。
「それでは、お待ちかねのブラック星座占いですー!」
「ん? 何か始まりましたよ?」
「これは星座占いだよ。毎回銀さんはこの結果を楽しみにしているんだ」
ユイの質問に新八が返す。始まったのは結野アナが独自の力で運勢を予測する星座占いである。キリトらも元の世界では朝出かける前にやっている占いを、おまけ程度で見ておりつい結果を気にしてしまうらしい。
「星座占いか。当たるといいな」
「そういえばキリ達の星座って何座アルか?」
「それは――」
アスナが神楽へ言いかけた時、もうすでに結果が発表されていた。
「今日、もっとも運勢のいい星座は……てんびん座のあなたです!!」
「よっしゃー! ラッキーだぜ!」
一位を獲得して喜びに浸る銀時。しかし、喜んでいるのは彼だけではなかった。
「えっ!? てんびん座が一位!?」
「やったわね!! 私達が一位よ!!」
なんと、同じくてんびん座であるキリトとアスナも喜び声を上げたのだが――
「「「えっ!?」」」
ここで三人は気付く。銀時、キリト、アスナの三人が同じ星座であることに。
「お前ら!? 俺と同じ星座だったのかよ!?」
「うん……だって私、九月三十日生まれだから」
「俺は、十月七日生まれだな。そういう銀さんは?」
「十月十日――って、三日違いじゃねぇかぁ!?」
まさに偶然の一致である。話をまとめるとアスナは九月三十日生まれ。キリトは十月七日生まれ。銀時は十月十日生まれとかなり近い範囲で、三人は同じてんびん座ということだ。
「すごいです……パパとママの星座が銀時さんと同じ星座なんて」
「むしろ集まりすぎアル」
「なんで、うちの天パがラノベカップルコンビと同じ星座なんだ……」
この展開に仲間達の反応もバラバラである。そんな、てんびん座の内容はというと、
「てんびん座のあなたの運勢は、かなり好調です。特に背中に大きな剣を二本携えた妖精の方に抱きつくと、かなり運勢や恋愛運が上がります。羞恥心を捨てて、てんびん座の方は励んでください! それでは、次に二位から五位についての発表です――」
かなり変わった展開であった。しかも、キリトを言い当てるような結果に当の本人は戸惑いを見せている。
「えっ、さっきの占いってまさか俺のことか!?」
自分に指をさし周りを見渡していると、そこには新八、神楽、ユイの三人しかいなく銀時とアスナの姿はいなかった。
「アレ? アスナ? 銀さん?」
二人を探して後ろを振り返ってみると、
「「キ~リ~ト~く~ん!!」」
「ん!? ギャャャャ!!」
そこには占いを信じ込み強制的に抱きつこうとする彼女と万事屋の社長がいた。そして、彼の体へと飛び掛かってくる。
「もう~!! さっすがー、私のキリト君なんだから!! ラッキーアイテムが彼氏なんて最高すぎるよ~~!!」
「ちょっと、アスナ!? 落ち着いてって!? 意味間違えているから!?」
「頼むー、キリトー!! 俺に恋愛運を分けてくれー!! 結野アナのケツの〇〇を早く〇合したいんだぁぁぁ!!」
「銀さん!? 朝から欲望を叫ぶのやめてもらえるか!? つーか俺にそんな力ないからなー!!」
アスナはただイチャイチャするため。銀時はただ結野アナと〇合したいがために、キリトへ抱きつき離れない。彼はただツッコミを入れることしかできないが、まだ収まりそうにはなくカオスな状況が朝から続いた。この場面を見た仲間達は、
「って、この状況誰が得するアルか?」
神楽は死んだ目となり冷静に呟き、
「〇合とは一体どういう意味なんですか?」
「あわわ! ユイちゃん!? まだ知っちゃダメだから!! 銀魂に染まっちゃダメだからー!!」
新八はユイの説得に明け暮れ、賑やかな朝が続いたのである。
その数分後、ようやく騒ぎは収まった。
「はぁ……やっと終わった……」
「これで、私は満足だよ~!」
「本当にあやかれるのかな!? 結野アナと俺、付き合えるのかな!?」
「俺が知るわけねぇだろ!!」
ごもっともな意見である。彼氏に抱きつき幸せな気持ちに溢れるアスナと、結野アナへの思いの止まらない銀時。キリトにとって、波乱な朝のひと時だった。それは置いといて、みなが落ち着いたところで新八が話しかけて、場を整える。
「ほら、銀さん! 今日は挨拶回りなんですから、シャキッとして朝ご飯作ってくださいよ! 今回は銀さんが料理当番なんですから!」
「あっ! そうだったな……」
そう指摘されると、銀時はあくびをしてキッチンへと向かった。今日は彼が当番らしい。
「銀時さんが料理を作るんですね!」
「そうアル! 銀ちゃんは、ああ見えて料理の腕はある方だからナ! 存分に期待していいアルよ!」
「へぇ~そうなんだ! なら、言葉通り期待してるわ!」
料理のハードルを上げられ、アスナやユイはかなりの期待を持つ。その一方で、キリトは急に少し浮かない顔をしている。
「ん? どうしたんですか? キリトさん?」
「いや、なんでもないよ!」
「そうですか?」
新八が聞いても特に何もなかったが、実はまだ彼の心の中では元の世界にいた仲間達が不安で仕方がなかった。そのせいで、無意識にボーと浮かない顔になってしまう。
(みんな……大丈夫かな?)
その彼の不安と比例して、時は過ぎていくのであった。
話をSAOの世界へと戻そう。その後、シリカ達は同じく合流を約束していた男子達と会い、三手に分かれて大規模な捜索へと明け暮れていた。シリカ、リズベット、ピナは町に近い洞窟エリアを。リーファ、シノンの二人は、近い草原エリアを。そして、男子陣は市街地を担当することになる。
「おーい! どこにいるんだ、三人共ー!」
大声を出しながら町を走るのは、キリトの旧友クラインであった。彼もデスゲームである「SAO」に捕らわれていた一人である。解放後もキリトとの縁はあり、直々一緒に遊んだり戦っている。濃い赤髪に鉢巻と巻き炎をモチーフにした和服を着ており、刀を使った戦術で侍を志して生きている。現実では、物を運ぶトラック運転手だ。見た目からはわかりづらいがこれでも二十代前半のいい大人である。一方、西側にはもう一人探している大人がいた。
「いないな……ここにも」
しらみ潰しに店を覗き三人を探していたのは、もう一人の男子エギルであった。彼も同じく「SAO」に捕らわれた一人で彼らとも旧知の中である。褐色肌の目立つ外人で、体格もかなり大きい。髪はなくスキンヘッドで濃い緑色の服に装甲も重装備である。おもに大型の斧を使って力任せに戦うのを得意としている。ちなみに現実では、バーを営むこじゃれた大人で年齢も意外に二十代後半である。そんな、大人の男性二人も捜索には難航を示していた。
「どうだ? いたか?」
「いいや、これっぽちも。にしてもよぉ……本当にこの世界にいるのかよ?」
「さぁな。まぁいざとなれば家まで訪ねればいいって話だ!」
「リーファちゃんもいるしな!」
気持ちを明るい持ち二人は捜索を再開させる。しかし、まだ六人は気付いていない。サイコギルドにその存在を狙われていることに。
「もうすぐだ。待っていろ……」
その影はすぐ近くにまで迫っていた――
一方、こちらは銀魂の世界。銀時の作った朝食のチャーハンを食べ終えると、一行は軽く支度をしていよいよ挨拶回りに向けて出発しようとしていた。
「それにしても、銀さんの作るチャーハンは本当おいしかったよ」
「正直予想以上だったわ。やっぱり、銀さんって侮れない人ね……」
「おめぇら! 俺のこと、どういう目で見てたんだよ!」
準備をしながら交わされる銀時の料理談義。どうやら思ったよりおいしかった反応で、ユイもそのおいしさに感動している。
「これがこの世界の料理なのですね! 感動しました!」
「って、チャーハンはどこの世界にもあるだろうがぁ! 何に感動してんだよ!」
銀時が大きくツッコミを繰り返す展開であったが、この様子に新八と神楽は感心している。
「なんだか、アッスー達の緊張がほぐれたみたいネ」
「そうだね。一日しか経ってないけど不安は少なくなっているみたいだね」
昨日まではどこか不安で押しつぶされそうになっていた三人も、一日経てば自然と万事屋に解け込み笑顔の回数も増えていた。そんな三人が次に挑むべきは今日のメインイベント、挨拶回りである。
「ほら、銀さんにみなさん! 行きますよ!」
「チャチャとやって、チャチャと帰ってくるネ!」
新八らに呼びかけられ六人はついに万事屋を出た。もちろん、遠くまでいくので定春も同行しており、先ほども多めにドッグフードを食べて気合もばっちりである。
「ワフ~!」
「定春さんも元気一杯ですね!」
ユイも定春の額をさすり仲良く接した。彼女との仲が深まるのも時間の問題である。そして、階段を下りて地上に集まると、まず銀時がスクーターを持ってきて新八を後ろに乗せて自分も乗る。神楽も定春にまたがりその後ろにユイが乗った。キリト、アスナは羽を広げて空中浮遊するとバランスを保ち空への飛行に成功する。これですべての準備が完了すると、ちょうどよいタイミングでたまがスナックお登勢から顔を出した。
「おや、どこへ行かれるのですか? みなさま?」
「あっ、たまさんだ。これから銀さんに連れられて挨拶回りに行くんだよ」
「挨拶回りですか……お気を付けてください。この世界の住人は個性が強すぎる方が多くいるので気を確かに持ってくださいね」
彼女が伝えたのは、励ましと警告だ。たまの言う通り銀魂のキャラクター達は一癖も二癖もある連中が多いので、かなり丁寧に警告してくれたのである。
「挨拶回りって、そんな命がけの行事だっけ?」
「おそらく違うと思いますよ」
「まぁ、それは置いといてだ。気を取り直して行くぞ、てめぇら!」
「じゃあな。たまー! 夕方には帰るアルからナ!」
そして、一行はついに万事屋は出発。勢いよく場を去っていったのだ。
「夕方ですか……」
それを聞きたまは手で見送っていたが、同時に何かを思いついている。
かぶき町を中心に江戸のビル街を駆け抜けて行く万事屋一行。この時代背景は江戸時代末期だが周りに存在しているのは、ビルや飛行船。さらに道行く人は、スマートフォンにタブレットなど最新の端末機器を持ち歩き、その光景はまるでキリト達のいた現代となんら変わっていない。
「どこを見てもビル……本当に江戸時代なのかわからないわね……」
「まぁ、この世界観は説明したってイマイチわからないアルから、ほとんど気にしなくていいアルよ」
アスナの呟きに、神楽が返す。さらに、ユイも銀時へ聞いてくる。
「本当にそんな大雑把でいいんでしょうか?」
「いいんだよ。そんな気にしなくて。わかるやつだけ連いていけばいいだけなんだよ」
「銀さんがそういうならいいけど……」
「本当に気にしたら負けですからこの世界は……」
万事屋の三人は一斉に些細なことは気にするなと助言してくれた。これが正論だと思い、これ以上キリト達は言わないことにする。そんな中、キリトは銀時に改めて目的地を聞く。
「ところでまず俺達は、どこへ向かうんだ?」
「ここから近いってなったら、まず新八の家か?」
彼の返事からまず一行が向かうのは、昨日も話題で上がっていた新八の住む道場「恒道館」であった。
「新八さんのお家ですか?」
「そうですよ。ということは、姉上に挨拶した方がいいかな?」
「姉上? 新八君のお姉さんのことね!」
興味を持ち始めるユイやアスナに対して、再び銀時がからかいを加える。
「まぁな。ゴリラに育てられたキャバ嬢のねぇ―ちゃんだよ」
「ちょっと、銀さん!? 勘違いを思わせることは言わないでくださいよ!!」
彼の冗談に新八がすかさずツッコミを入れた。だがキリト達は、ゴリラ似のキャバ嬢だと言われても想像がつきづらく、早くも嫌な予感しか感じてない。
「それで、結局どんな姉なんだ?」
「まぁ、そこは行ってからのお楽しみにしましょうよ」
結果、楽しみに取っておくことになった。一行が恒道館へ向かおうと進んでいた時である。
「ピピーー!!」
突如聞こえてきたのは、高音の笛の音だった。
「ん、何アルか?」
音の聞こえた方角へ向けるとそこには、黒い服を着た男が二人立ち並んでいる。
「はいー。ストップーストップー検問ですー」
「真選組だ! おとなしくこっちへ来い! てめぇら!」
鞘へ納めた刀を手に男達は促してきた。一人は、緑がかった黒髪に先端をⅤ字ヘアーにして目つきをかなり鋭くさせている。しかも、口には煙草をふかして煙を出していた。もう一人は、茶髪の髪に大きな赤目と若い印象を持たせている。さらにリズムを刻みながらピンク色の風船ガムを作っていた。そんな二人は共に制服のような黒服と刀が目立つ男達である。しかし、キリト達が気になったのは見た目と威圧さだけではない。真選組という言葉だ。
「ったく、やべぇのに見つかちまったな」
「真選組の土方さんと沖田さんだ! あの二人が一緒に仕事となると、イヤな予感しかしないんだけど……!」
銀時らは真選組との関わり方にも慣れているため、見た瞬間にやる気が失せたが、キリト達は真選組という単語が引っかかり気になっている。
「なぁ、銀さん。シンセングミってあの新撰組なのか?」
「はぁ? それってまさか新って書く方の新撰組か?」
「そうよ。って、それ以外に何があるの?」
「――この世界じゃ真に選ぶと書いて真選組って言うんだよ。多分、てめぇらの知っている新撰組とは違ぇよ」
「「えっ!?」」
二人はてっきり京都で活躍した本来の偉人の新撰組を思い浮かべていたが、この世界では全く違う組織として存在していたことがわかった。
「つまり、この世界の新撰組は大きく異なるということですか?」
「その方がわかりやすいですよ。真選組はここでは江戸を守る武装集団で、簡単に略すると警察みたいなものなんですよ」
ユイの問いに新八が答える。さらに、神楽が一言アスナへ伝えた。
「ほとんどチンピラのようなことしかしてない組織アルけどナ」
「警察でチンピラ……本当に別の組織なのね」
万事屋からの補足で、真選組の存在について理解したキリト達。彼らもそこまで詳しくなかったが、まさか別の世界で歴史上の偉人達に会えるとは思いもしていなかった。
「おい、何ゴダゴダしてんだ? さっさとこっちへ来い」
「わかってるわ! そう、急かすんじゃねぇよ!」
土方からの催促が来てしまったので、仕方なく万事屋は真選組の待つ検問前に向かう。その途中でも会話は続く。
「それで、あの二人は一体誰なんですか?」
「えっと、前髪がⅤ字になって、煙草を吸っている人が土方十四郎さん。鬼の副長と言われていて、真選組の要と言われている人なんだ。そして、茶髪で風船ガムを作っているのが沖田総悟さん。真選組一番隊の隊長で、剣術なら誰にも負けない持ち主の人なんだ」
新八が事細かにキリト達へ、真選組を説明する。土方十四郎と沖田総悟。見た目も違えば名前も微妙に違っていた。
「土方十四郎? 沖田総悟? 歳三と総司じゃなくて?」
「気にするなって言っただろ。別物として扱えって」
「本当に別人なのね……」
慣れている銀時とは違い、キリトやアスナが真選組を受け入れるのも、まだ時間がかかりそうだ。そして、検問所へと一行はたどり着く。
「やけに遅かったじゃねぇか」
「ちと、説明していたんだよ。こいつらに」
「説明? それはこっちがしてほしいですよ、旦那。その見慣れないとんがり耳の天人共と小さい女は一体誰ですかい?」
キリトらを見た瞬間に沖田がやはり聞いてきた。彼の勘はかなり鋭い。仕方なく銀時が説明する。
「誰って、俺達が新しく雇った連中だよ」
「万事屋にか? てめぇにそんな金あるのかよ?」
すかさず土方が反論してきた。
「だいたい、見たところ天人らしきやつが二人いるが、不法入国ってわけじゃねぇよな?」
「天人? 違ぇよ。こいつらはな別の地球から来た奴らなんだよ」
「はぁ? じゃ、なんで耳がとんがってファンタジー系の衣装を着てんだよ」
「そりゃ、仮想世界のアバターだからだろうが! いい加減、察しろ!」
「察するわけねぇだろ! だいたい、なんでゲームのアバターがこの世界に来て、現実世界を普通に歩いているんだよ!」
「知らねぇよ、そんなもん! それがわからねぇから俺達がかくまっているんだよ! だいたい、その原因知りたいならこの二次小説の原作者に聞きやがれよ!!」
「元も子もないこと言ってんじゃねぇよ!!」
弁解するつもりが、途中から口喧嘩となりしまいにはただの喧嘩にまで発展してしまう。銀時と土方は、壊滅的に仲が悪く顔を合わせれば話すらうまくいかないのもザラである。
「ちょっと!? 銀さんに土方さん!? 大丈夫か!?」
「無駄ですよ。あの二人は言い出したら止まらねぇ人間なんでねぇ」
心配するキリトらとは違い、沖田は全くもって無関心であった。ひとまず二人を放っておくことにして、代わりに沖田が簡単に話をまとめる。
「で、要するにゲームのアバターのままこの世界へ来てしまって、帰れるに帰れない状況。そんなところですかい?」
「まぁ、そういうところですね……」
「なるほど。ゲームのアバターねぇ。じゃ……」
理由を知った沖田は急に不敵な笑みを浮かべる。そして、何の前触れもなくキリトへ近づくと左手に力を入れて、そのとんがった両耳を押しつぶし始めた。
「痛ァ!? 沖田さん!? 何してるの!?」
「おーい! やめるアル! このドS!」
「キリト君から離れなさいよ!!」
唐突な沖田のいたずらに怒りを覚え、アスナと神楽は攻撃を仕掛けようとする。しかし、その瞬間に沖田はいたずらをやめて、彼女達の攻撃も反射神経でかわす。
「ふっ。チャイナだけでなく、あの青髪も中々やりやすねぇ」
いたずらの中で沖田は密かに強さを測っていたのだ。一方で、アスナと神楽は沖田から解放されたキリトの元へ集まる。
「大丈夫アルか、キリ! あのドSにもう何もされていないアルか?」
「う、うん。なんとかな」
「はぁ~よかった……」
どうやら、キリトに問題は何もなかった。安心する女子陣とは裏腹に、沖田は何一つ悪びれず謝るどころか余計に煽ってくる。
「ふっ、どうやら本物の耳らしいな。証明できて良かったですねぇ」
「あんたねー! それでも、警察なの!」
「警察ですが何か?」
アスナの怒りも沖田には伝わっていない。何一つ表情を変えず人を小バカにする笑みを浮かべている。彼には何を言われても全く動じないのだ。
「落ち着くネ、アッスー! あいつに何を言っても無駄アルよ!!」
「くっ……何てドSな人なのよ……」
沖田の本性に、アスナはとうとう何も言えなくなってしまう。正直、悔しい気持ちでいっぱいになっていた。しかし、当のキリトはというと
「そもそも俺は大丈夫なんだが……」
そこまで気にしてはいない。
「そう、まともに相手にしたら終わりだぞ。てめぇら」
「って、銀さん!? いつ、戻ったんですか!?」
一方で、銀時と土方はいつの間にか喧嘩の熱が冷めて仲間の元に戻っていた。
「まぁ、総悟もほどほどにしろよ。仮にも別の世界の人間らしいからな」
「そうですかい。じゃ土方さんのあの料理は誰も受けいれてくれやせんねぇ」
「料理?」
ここで沖田に続き、土方の本性まで明かされてしまう。
「土方さんに得意料理なんてあったのか?」
「おい、三人共! 見るなアル! 理解なんてできない世界が広がっているネ!」
神楽の忠告を促すが、時すでに遅い。
「はい、これですよ」
「「「!?」」」
沖田の携帯電話に映し出されたのは、丼たっぷりにマヨネーズが入っただけの料理、土方スペシャルであった。もちろん、これを見たキリト達は完全に気が引いている。マヨラーの常識範囲を超えていたからだ。
「うわぁ……なんだこれ……」
「バランス悪そう……」
「体に良くないですよー!」
顔色を悪くして土方に注意する三人。さらに、銀時も続けて口に出す。
「まぁ、あんな料理見せられたらそうなるわな」
「いや、あんたが言える立場かよ! ご飯に小豆かけて食べていただろうがぁ!」
他人事に思う彼に、新八もついツッコミを入れる。だが、土方は全く聞く耳を持たずに我流を通す。
「まぁ、誰から何を言われようが俺の思いは変わんねぇよ。この土方スペシャルは、俺のソウルフード。何も変えられない大切な一品なんだよ……」
なぜか誇った表情で堂々と宣言する土方の姿にキリト達は、
(((この人もまともじゃない!!)))
心の中で癖のある大人であると確信する。
「まぁ、この世界にまともを求めること自体間違っているけどな」
銀時の呟いた言葉は、ある意味間違ってはいなかった。
「つーか、アンタどうやって心の中読んだんだよ?」
細かい事を気にしてはいけない。
それはさておき真選組が本当に呼び止めた理由は廃刀令にあった。この銀魂の世界では、普通の人間が武器を持てないようにこの法案が地球にはびこっており、一部の人間しか武器を持つことが認められない。キリトやアスナも自慢の剣型の武器を持っていたため、真選組に呼び止められてしまったのである。
「これが全部ゲームの武器なんて思いもしないですねぇ」
沖田は一つずつ武器を確認して危険性がないか確認した。一方、土方はキリト達の名前を聞いている。
「キリト、アスナ、ユイか。本当に天人じゃねぇんだな?」
「疑い深いアルなー! 三人共別の世界から来た立派な人間アルよー!」
「神楽ちゃん、落ち着いてって!」
怒りを上げる神楽をアスナが止める。さっきとは真逆の展開であった。
「ふっ、一応覚えておくよ。少なくともこいつよりはしっかりしてそうだし、大丈夫だろ」
「こいつって俺のことか!? バカにするんじゃねぇよ! おい、聞いてんのか!!」
さりげなく放った土方のフォロー。銀時の悪口でもあったが、何気に彼らのことを考えてくれていた。そう、話し込んでいるとようやく沖田から武器が返却される。
「はーい。検査終了でっせ。特に問題なかったですよ」
結果は問題なく異状なしだった。
「やっと、戻ってきた……」
武器を返してもらい、二人はもう一度腰や背中へ装着し直す。
「まぁ、この江戸で暮らす以上は、俺達みたいな人間が多いことを忘れるなよ」
「てめぇも受け入れたからには、しっかりと責任持てよ。それじゃあな、行っていいよ」
こうして、真選組の検問も終わり万事屋は彼らの元を去っていったのである。初めての挨拶回りは最初からクライマックスの展開だった。
「あれがこの世界のシンセングミ……」
「なんか、イメージが覆されたんだけど……」
特にキリトとアスナの二人は、おそらく一生忘れられない思い出として心に残っていただろう。
「だろうな。ニコチンV字ヘアーのマヨラーとサディスティック星のドS王子だからな」
「歴史好きの人からすれば苦情モノですものね……」
万事屋がさりげなくフォローを入れたが、複雑な気持ちに変わりはない。そんな一行が再び、恒道館へ向かおうとした時である。遠くからある気配が近づいてきた。
「ん? 何か聞こえてきませんか?」
「何アルか? ユイ?」
ユイが感じ取っていたのは、微かに聞こえてくる男の声。しかも徐々にこちらへ向かってくる。そして、
「うわぁぁぁぁ!」
凄まじい轟音とともに万事屋の近くへ落ちてきたのだった。
「な、何だ!?」
幸いにも手前の歩道に衝突したためメンバーに怪我はない。巻き上がる砂煙の中、姿を現したのは真選組の隊士服を着た男である。
「だ、誰だ?」
「また、真選組の人?」
キリト達が戸惑う中、万事屋は断言した。
「「ゴリラァァ!?」」
「って近藤さんだろうが!!」
天より降ってきた近藤という男はいかに? そして、いつになったら再び事態は進むのか? まだ挨拶回りは始まったばかりである……
後篇は間に合わなかったので次週にします。次々と出てくる銀魂キャラクターの個性に注目して待っていてください。