〈ブックゲート!!〉
ユナの手にしたブックゲートワンダーライドブックを使って、銀時、キリト、新八、アスナ、神楽、ユイ、定春、桂、エリザベス、クライン、次郎長、平子、たまの十二人と一匹はかぶき町から空川町へと移動。
空川町の集落にある公衆電話の戸から、ぞろぞろと一行は移動していた。
「さて、到着しました」
「うわぁ、凄いアル! 本当にどこでもドアみたいネ!」
瞬間移動できた喜びで、思わずテンションの上がる神楽。ドラえも〇の秘密道具を疑似的に体験できたことがよっぽど嬉しいようである。
「むむ、銀時よ。これは本当に大丈夫なのか? 幾ら同じテレビ朝日系列とはいえ、ネタ被りするというのは」
「うるせぇよ、どこ気にしてんだよ。転移結晶だってドラえ〇んのどこでもドアのパクリなんだから、気にすることはねぇよ」
「いや、銀さん。多分それはまったく関係ないと思うぞ……」
一方で桂は神経質にも、ブックゲートワンダーライドブックがパクリに該当しないか心配していた。銀時が例え話で一蹴するも、キリトは即刻それを否定していた。
とそんなやり取りはさておき、一行は気を引き締めてサイコギルドの指定した岩舟山まで向かうことにする。
「それでユナさん。岩舟山ってのは……」
「あちらですね。私が案内致します。皆様は後ろからついて来てください」
岩舟山の指定場所まではユナが案内してくれるようだ。一行は彼女の言う通りに従う。
「たまさん、ユイちゃんのことを宜しくね」
「ここで待っていてくれよな」
「はい、頑張ってくださいね! パパ! ママ! 皆さん!」
「お二方、ご心配なく。ユイ様は何が何でも絶対お守りします」
その前にアスナとキリトは、たまにユイの保護を一任している。この空川町の集落で彼女達は待機することとなった。共に彼らの帰りをここで待つこととなる。
「そうだ。ユイ様にこれを」
すると出発前にユナは、ユイに対してあるアイテムを渡していた。四角く白いフロッピーディスクのようなもので、表面には「SHINGER」と文字が刻まれている。
「これは……シンガー?」
「今後のあなた方にきっと役立つものかと思います。大切に持っていてください」
「分かりました……ユナさん!」
ユナの意味深な一言に疑問を覚えつつも、ユイは空気を読んで彼女からのアイテムを受け取っていた。強く手に握りしめて、ユナの言う通り大切に保管することにする。
「では、行きましょう」
「おう」
「頼むぜ」
こうしてユナの案内の元、岩舟山へと駆け上げていく十人の戦士達。源外を連れ戻す為、エイジと決着を付ける為、アンカーに真実を聞き出す為にと、各々の目的の元に彼らは動いていた。
「きっと大丈夫ですよ、ユイ様」
「そうですよね。源外さんを連れて、帰ってきますよね」
全員が無事に帰ってくることを、ユイとたまは強く祈っている。ユイはユナからもらった白いアイテムを祈るように握りしめて、彼らの勝利を心の底から信じていた。
そして岩舟山を駆けあがっていくユナらは、辺り一面に生い茂る森林をひたすらにかき分けていく中で、ある分岐点に差し掛かっている。
「この右側の道を進めば、拓けた場所に辿り着きます。恐らくエイジ様と源外様がいるのは、そこかと」
そこには二つの道があり、左側は舗装された通路。そして右側は獣道とも言える自然に放置された通路が広がっていた。ユナは右側の道にエイジや源外がいることを予測し、銀時らにそれを伝えている。
「よし! このまま突き進んで……」
とユナの言う通り、キリトらが右側の通路に向かおうとした時であった。
「ちょっと待て。何か聞こえるぞ……!」
「この音、まさか……!?」
何の前触れも無く、またしても不協和音のような音色が辺り一面に広がっている。数分前の状況と酷似しており、桂やクラインらは早速鞘に手を伸ばし、戦闘準備を整えていた。
その予感はすぐに的中することになる。
「シュー!!」
「ビビビ!!」
「はぁぁ!!」
数分前の光景と同じく、紫色の霧から数多の怪人達が出現。先ほども見かけたショッカー戦闘員やGOD工作員、アントロードと言った戦闘員の大群のみならず、一般怪人もフルートの音により出現している。
「またこいつらアルか!」
「いや、なんか別のも混じっていますよ!」
神楽や平子らは見慣れない怪人にも、警戒心を露わにしていた。
戦闘員に混じって出現したのは、六体の怪人。時の神クロノスを模して造られ、大鎌を武器とする改造人間、死神クロノス。ハエトリソウをモデルに植物の力を持つ改造人間、ハエジゴクジン。ビデオ等映像媒体の能力を有する改造人間、ビデオン。グロンギの「メ」集団に属し、ヤドカリの特性を持つ怪人、メ・ギャリド・ギ。豹の身体能力を有する超越生命体、ジャガーロード(パンテラス・ルテウス)。ヘラジカの怪力と頑丈な外骨格を持つ怪人、ムースファンガイア。
以上六体と戦闘員の大群が、銀時やキリトらを囲むように足止めしている。皮肉にも銀時の言った通りの展開となっていた。
「怪人共か!」
「うじゃうじゃと湧きやがって!」
あまりの数の多さに、面倒さを感じる次郎長とクライン。ただでさえ一刻を争う状況の中で、この怪人達の出現はあまりにもタイミングが悪い。無論それは銀時やキリト、ユナらも同じ想いである。
とそんな最中に、キリトはある人影を見つけていた。
「アスナ! アレを!」
「あの子……アンカー!?」
そう。彼らが見つけたのは、分かれ道の左側を突き進むアンカーの姿。恐らくは怪人達を召喚した後に、気づかれないよう逃亡を図っているのだろう。
キリト、アスナにとっては、願ってもいない因縁の相手との遭遇。そこで銀時はすかさず二人の背中を後押ししていた。
「ったく、ちょうどいいタイミングだな。お前らはアイツのことを追え!」
「ここは僕達に任してください!」
「すぐに片づけて、駆けつけるアルよ!」
「ワン!」
銀時に続き、新八、神楽、定春も同じく後押しする。アンカーとの決着を付けたい彼らの意気込みを汲み、この場は自分達のみで対処するつもりであった。
三人と一匹の清々しく頼りになる表情を目にして、キリトやアスナも自然と決心が付いている。
「みんな……ありがとう!」
「ここは頼んだわよ!」
こうして二人は戦線を離脱し、アンカーを追いかけることに。透明な羽を広げて、一気に左側の道へと飛んで行った。
さらに万事屋に続いて、桂達も同じ意思を示す。
「ならば俺達もやるか。クライン殿、ここは俺達に任してお前達は先に行け!」
「か、桂さん……!?」
「心配は無用だ。エイジとやらに伝えたいことがあるのだろう。だったら思う存分伝えて来い! お前自身の刀で!」
[この場は俺達が食い止める! ユナさんと次郎長さんと平子さんも行け!!]
桂とエリザベス、クライン並びに次郎長と平子にも先に行くように指示。特に桂はクラインの自分自身で決着を付けたい意向を汲んで、またしても彼の背中を後押ししていた。
「か、桂さん……分かったぜ。この場は任せたぞ!!」
「頼みますよ、皆様」
「よしっ、先に進むぞ!」
「はい、じろちょん! クラ!!」
「って、せめて本名で呼んでくれよ!!」
桂の男気に感激しながらも、流れに乗っかり彼らは先にエイジの元へ向かうことにする。ユナや次郎長らも深々と万事屋や桂の損な役回りに感謝していた。なお、平子の呼び捨てのような振る舞いには、クラインも思わずツッコミを入れてしまう。
こうしてユナ、クライン、次郎長、平子の四人も、エイジもとい源外の元に向かうべく、戦線を離脱し突き進んでいった。場に残っていた銀時、新八、神楽、定春、桂、エリザベスのみである。
「さて……急に静かになったものだな」
「静かだぁ? うるさいのだけ残っただけだろ」
「ふっ。それもそうか」
銀時の皮肉に、桂は何一つ動じない。今はそれよりも、目の前にいる怪人達を一掃することに彼らは集中していた。
「行くぞてめぇら! さっさと倒して、キリト達と合流するぞ!」
「はい!」
「おうネ!」
「ワン!」
銀時、新八、神楽、定春共に暴れる準備は万端である。
「エリザベス、行くぞ!」
[任せろ!]
もちろん桂やエリザベスも同じだった。
こうして彼らは木刀や刀、傘を握りしめて、蔓延る怪人達と乱戦を繰り広げていく。
「「「「はぁぁぁぁ!!」」」」
すぐに倒し、仲間と合流することを信じて。
「ついてきてる……」
一方でこちらは、アンカーの行方を追いかけるキリトとアスナ。彼らの尾行はアンカー本人も既に気付いており、思わず厄介に感じていた。
「ったく、しつこい! アンタ達の相手は、こいつらだよ!」
中々彼らを振り切れない中で、アンカーはここで勝負に出る。一度立ち止まり、武器であるフルートランサーを奏でて、また新たな怪人を呼び出そうとしていた。
「はぁ!」
アンカーの掛け声と共に、彼女の目の前に二体の怪人が出現する。武将のような出で立ちで刀を構える怪魔界の戦士である武陣と、てんびん座の力を宿す星座の怪人リブラ・ゾディアーツを呼び出していた。
「いけ!」
「ぐはぁ!」
「くっ……!」
すぐにリブラ・ゾディアーツは行動に移り、持っていた杖から衝撃波を飛ばしている。それをキリトとアスナに当てて、彼らを無理やり墜落させていた。地面に叩き落とされてしまい、二人はダメージを負ってしまう。
だが彼らはすぐに立ち上がり、アンカーへ向けて話しかけてきた。
「待ってくれ! 俺達は君にどうしても聞きたいことがあるんだ!」
「サイコギルドのこと……私達をこの世界へ送ったこと……一体全体アナタは何を企んでいるの?」
再度自分達が疑問に思っていたことを問いかけるも、彼女は一切聞く耳を持っていない。
「教えないよ。アンタ達に分かってたまるもんか。行け、武陣にリブラ! あの二人を倒して!!」
アンカーは一度暗い表情を浮かべたものの、そのまま怒りの表情に切り替えていく。さらには二体の怪人に指示を加え、キリトらを倒そうと画策していた。
「はぁぁぁ!」
「ふっ!」
武陣は刀、リブラは杖を手にそれぞれアスナとキリトに勝負を挑もうとしている。
「結局戦うしかないのか……!」
「仕方ないわね……!」
会話が上手くいかず、憤りを感じるも今は戦いに集中する二人。キリトはリブラ・ゾディアーツ、アスナは武陣に戦いを挑んでいた。
「さぁ、怪人達の強さに苦戦するがいいよ」
アンカーはにんやりと笑い、彼らの苦しむ姿に期待している。自分が呼び出した怪人の中でも指折りの強さを誇るとアンカーは思っており、すぐに事が片付くと勝手に舞い上がっていた。
「はぁ! そこ!」
刀で次から次へと攻撃を繰り出す武陣に、アスナは自身の得手であるレイピアで応戦。共に接近戦を展開しており、一進一退の攻防が続いている。
「今よ!」
そして武陣の隙を見つけ出し、勢いよくレイピアで突き刺そうとした時だった。
「ふっ!」
「えっ、消えた……?」
武陣は何の前触れも無く、突如として姿を消している。辺りにいるのは木々と雨で濡れた地面と水たまりのみ。気配もほぼ無く困惑するアスナであったが、ここで彼女はあることを思い出す。
「この流れ……あの時と同じ!」
そう。以前に鏡の世界を行き来するダークライダー、仮面ライダーリュウガと相対した時と同じ状況であった。彼女の勘が正しければ、次に起こる展開はほぼ読めている。
「くらえ!」
「そこよ!!」
「何!?」
アスナは武陣が水たまりから出てくることを予測し、そこ目掛けていつでも攻撃できるように構えていたのだ。その読みは見事当たり、武陣はカウンターとも言える一刀を受けて大ダメージを受けている。彼が持つ秘儀「鏡渡りの術」が破られた瞬間であった。
一方でキリトの方も、リブラ・ゾディアーツと互角の戦いを繰り広げている。
「はぁ!」
「ふっ!」
リブラの杖を使った棒術に、キリトは瞬時に見切って次々と攻撃。長剣とエクスキャリバーを巧みに操り、戦いを有利に進めようとしていた。
「ならば……!」
繰り出される攻撃に我慢できなくなったリブラは、ここで自身に備わった幻術を発動。任意で別の姿に変化していた。
「……何だと!?」
そしてキリトの目の前に現れたのは……坂田銀時の姿に化けたリブラである。木刀では無く引き続き杖を手にしているが、構えは銀時に極力似せたままキリトへ襲い掛かってきた。
だがしかし、
「銀さんに化けたつもりだろうが……生憎俺はこの程度じゃ騙されないぞ! 銀さんならもっと、目が死んで垂れ下がっているからな!」
「何!?」
キリトはまったく動揺していない。むしろ銀時のはつらつとした表情に違和感を覚え、まったく本物として見ていなかった。
「はぁぁ!」
「うぅ!!」
彼は容赦なく長剣をリブラに切り刻み、彼の幻術を即座に解除している。普段の銀時を知り尽くしたキリトにとって、この一瞬の違いは簡単に見破る証明となっていた。
このように折角の秘儀もすぐに見破られてしまい、怪人側は劣勢へと追いやられている。
「くっ……!」
アンカーとしてもこれは想定外の様子で、苦しむ姿を見るつもりが真逆の反応となり、密かに苛々を募らせていた。
そして、
「「はぁぁぁ!!」」
「くわぁぁ!」
「うぅぅ!!」
二人の渾身の一刀が武陣とリブラに炸裂。猛攻を耐えられなくなった二体の怪人は、爆発しそのまま散っていた。
「あいつら……! なら!」
怪人の撃破を目の当たりにすると、アンカーは即刻さらなる怪人を呼び出そうとした。フルートランサーを構え、またも不協和音な音楽を奏でようとした時である。
「はぁぁ!」
「何!? しまった!」
キリトの不意打ちを食らってしまい、彼女はフルートランサーを手放してしまった。アンカーの手元を離れて、近くの地面へと槍は突き刺さってしまう。これでアンカーは文字通りの丸腰状態となっていた。
「これでもう怪人は呼び出せないぞ」
「いい加減諦めなさい!」
「くっ……」
キリトとアスナは共にアンカーへ長剣やレイピアを差し向けている。ただしあくまでもけん制目的で使用しており、彼女への攻撃の意思は皆無に等しかった。肝心なのは彼女から、これまでのサイコギルドの不可解な行動を聞き出す為にある。
するとキリトとアスナは、ある推測をアンカーに向けて言い放ってきた。
「単刀直入に聞こう、アンカー。君は……俺達のいた世界の人間なんだろ?」
「えっ!? なんで知っているの……? まさかユナから聞いたの?」
「いいえ、違うわ。キリト君から聞いたんだけど、あのフルートランサーってALO内のレア武器の一種みたいね」
「それがつい最近、原因不明のバグで消失したと話題になったことがあった。それを強制的に盗み出したのは、君……いや、君の仲間であるシャドームーンって奴の仕業か?」
キリトの問いに、アンカーはただ黙るばかりである。だが恐らくは、フルートランサーの件には彼女か彼女の仲間が関与している様子だった。
キリトとアスナの読み通り、アンカーは自分達と同じSAOの世界にいた住人である。ALOの種族の一つであるプーカに似た衣装と、フルートランサーの件が重なり、彼らの立てた仮説により信憑性を持たせていた。
口を閉ざし黙り続けるアンカーに、アスナやキリトは再度説得していく。
「ねぇ、アンカーさん。私達はずっと謎だったことを知りたいの。なんで私達をこの世界に転移させたのか。サイコギルドの目的が何なのか。アンカーさんはどうして、サイコギルドの一員になったのか」
「君のことを恨んでいるわけではない。ただ理由があるなら聞きたいんだ。この一連の件についても……頼む。素直に教えてくれないか?」
二人にとっては恨みよりも謎を解く探求心を優先的にしており、アンカーを刺激しないよう返答を勧めていく。
そんな彼らの働きかけもあってか、アンカーの心の中にも変化が生まれていた。別に話しても今後の計画に支障が無い為、全て洗いざらい話そうしている。
「分かった、話すよ。もうどうせ計画は止まらないし……」
意味深なことを呟きながらも、アンカーはキリトとアスナの方に目線を向けて、真剣な表情で自分の知っていることを二人に打ち明かしていく。キリトやアスナもアンカーに向けていた剣を下ろして、彼女の話にそっと耳を傾けていた。
「そう。私の本当の名前は石澤杏果。アナタ達と同じ世界の住人だよ」
「杏果……それが君の本当の名前なのか?」
「うん。それでね、私には杏奈っていうお姉ちゃんがいたの。お姉ちゃんはとっても優しくて頼りになって、私の憧れの人だった。でも……もうお姉ちゃんはいない。あの時にゲームオーバーになったから……」
「ってことは……」
「SAOのプレイヤーだったのか……」
アンカーはまず自身の素性並びに姉がいたことを二人に明かす。姉に対する愛情があったことを二人は悟ったが、同時にSAOの事件で命を落としたことも明らかになり、居た堪れない気持ちに移り変わっていた。
さらにアンカーは続きを話す。
「聞いた話だとお姉ちゃんはチームを組んでいて、そのチームメンバーを助けるために犠牲になったって。何人かはお姉ちゃんのこと、弔ってくれたけど……そのリーダーだけは、助けてもらったクセに、何もしてくれなかった! むしろお姉ちゃんを悪者に仕立てようとしていた!!」
アンカーは突如感情的に怒りを露わにしていた。自身の姉が助けた仲間のうち、そのリーダーだけは人間性が宜しくなく、彼女の評判に泥を塗ることばかりしていたという。
そしてこの一件をきっかけに、アンカーの心には深い闇を宿すことになった。
「結局その人からは何一つ謝罪も無かった。今でも自分は悪くないとのたうち回っている……そこからかな。私は引きこもって、誰とも話さなくなった。お姉ちゃんのこと悪く言う奴がいたら、すぐ反論してレスバする毎日。虚無のような作業だけど、私にとってはお姉ちゃんをバカにされる方がよっぽど嫌なの!!」
段々とアンカーの事情が判明し、キリトやアスナの表情も聞いていく内に険しく変わる。姉のことを信じ深い愛情を抱いているからこそ、何も分かっていない人間にとやかく言われるのが、彼女にとっては許しがたい行為だったのだ。次第に現実の生活は疎かになり、インターネットや仮想世界の方にのめり込んでいったという。
「そして時折仮想世界にも行くようになった。でも、たった一人のソロプレイのみ。だってお姉ちゃんみたく、勝手に悪者にされたら嫌じゃん。何も進展しない毎日の中で、私にある転機が訪れたの。突然時間が止まって、ある男が話しかけてきた。そいつは……」
「シャドームーンか……」
「その時にアナタは、サイコギルドに入ったの?」
そんなアンカーにも、偶然の出会いが訪れた。それが山崎の報告にも上がっていたシャドームーンと言う存在。アンカーは彼からの誘いを受けて、サイコギルドに加入したという。
「その通り。アイツは言っていたよ。世界が憎いか? 恨みがあるなら、俺が力を貸してやろう。サイコギルドの目指す最終目標の為にってね……!」
「最終目標……それは一体?」
「フフ。それはね……ノロイドを世界に降臨させる為だよ!」
「ノロイド……!?」
「一体誰なんだ……?」
そして彼女は、遂にサイコギルドの真の目的についても明かしていた。ノロイドの降臨。聞きなれない単語に、キリトやアスナは思わずアンカーに聞き返している。
「ノロイドは次元の狭間にいるとされる最強の生命体。目覚めれば、どんな世界も一瞬で滅びに向かわせることが出来るって。それをシャドームーンから聞いて私は思ったの。そうだ……こんな世界消えてなくなれば良いんだって。お姉ちゃんがいない世界なんて、生きる価値が無いんだって! だから私はサイコギルドに入った。アイツの言うことを聞いて、ノロイドを復活させる準備を整えたの。アナタ達をこの世界に送ったのも、ノロイドを復活させる下準備だよ!!」
「なんだと……!?」
ノロイドの説明と同時にさらに明かしたのは、キリトらをこの世界に送った経緯。それは全てノロイドと呼ばれる最恐の生命体を目覚めさせる為、アンカーがシャドームーンから言われて行った行動であった。
さらに彼女は話を続ける。
「ノロイドを目覚めさせるには、本来の未来とは違う世界線を人為的に作ることが必要と言われてね……彼から与えられたブラックホールの力で、アナタ達をこの世界に無理やり転移させた。ついでにアナタ達の仲間も転移させた。けれど……未来は変わらなかった。だから私達は計画を変更して、兵力を増やす方向に変えた」
「それが千佐の夢にいたショッカーの件に繋がるのか?」
「その通り。あそこはいわば実験場だった。ショッカーやデストロンと言った昭和の時代で活躍した所謂怪人達の記憶が集まり、今じゃサイコギルドの貴重な兵力にも繋がっている。怪人達の記憶はノロイドを呼び覚ます上でも必要な要素でね、シャドームーンからは三つの時代の記憶が必要と言われていたの」
「それが……さっき言っていた昭和と平成、そして令和の記憶ってこと?」
「正解~。この三つの時代の記憶は、ノロイドに捧げる供物みたいなものだからね。つまり令和の記憶さえ確保すれば、もう復活は目の前ってこと!」
点と点が繋がりあい、さらに強く動揺するキリトとアスナ。千佐の夢の中での件は、サイコギルドがノロイド復活の為に進められた下準備と判明。
そこで入手した昭和の記憶。そして恐らくマッドネバーとの件で入手したであろう平成の記憶。さらには現在ユナの内部に詰まっている令和の記憶。この三つこそ、サイコギルドがノロイド復活に必要な所謂供物のような位置づけだったのだ。
「その記憶があれば、私の奏でる音楽によって怪人を複製させることも出来るの。さっきの怪人達も、記憶を利用して作られた模造品なんだよ」
さらにアンカーは、自身の能力についても再度明かす。怪人を作り出す大元は彼らが入手した記憶が大きく影響しており、彼女の奏でる音色によって本物そっくりに作られる仕掛けらしい。これも恐らくサイコギルドがアンカーに付与した能力だと、キリト、アスナは内心で感じていた。
その流れのままに、アンカーはさらなる新事実を二人に明かしている。
「そしてさらに、もう一つ分かったことがあるの。別の世界にいたアナタ達を集めて、SAOと同じ状況を作り出したら、その世界の未来は大きく変わった結果が出た。だから変えるにしても、大胆なアプローチが必要だと気付いた。そこでシャドームーンが目を付けたのは、ダークライダーシステム。怪人とは異なる強大な力を持つアイテムを、接触してきたマッドネバーと協力し、その復元に成功させた。私は計画が長引くことに関しては、正直反対だったけどね……」
説明の最後には恨み言を吐くアンカー。個人的には好ましくないことと態度で露わにしている。そんな彼女が明かしたのは、ダークライダーシステム。別の世界から流れ入手したベルトの欠片を集めて、マッドネバーと共同で完成させたシステムである。キリトやアスナもマッドネバーの構成員であった天人達や、ALO星にいた別世界のシグルド、ナメクジ、オベイロンもダークライダーやそれに似た力で変身したことを思い起こしている。
そしてその力が、自分達の世界にいた人間にも配られていることに、彼らはようやく気付くこととなった。
「いや、待て……まさかエイジにダークライダーのベルトを渡した理由って!」
「そう。未来を変えて、新しい世界線を作る為。アナタ達が今後出会う人間に本来の未来を見せて、その未来を阻止しようと彼らは動き出す。エイジはそのうちの一人だったってことだよ」
キリトらの読み通り、エイジがダークライダーのベルトを手にしたのは、サイコギルドの目的であるノロイド復活の為であった。未来を変える為に彼は動いていたが、その行動自体がノロイド復活もしくはサイコギルドの布石でしかない。当然エイジがこの事実を知っているとは思えず、やはり彼はただ利用されただけと二人は痛いほど知ることとなった。
「すべてはノロイドを復活させて、俺達の世界を滅ぼすのが目的ってことか!」
「そんな計画の為に、私達をこの世界に飛ばして、散々好き放題したってこと!?」
とうとう我慢が出来ず、二人は大きな怒りをアンカーにぶつけていく。全てが身勝手で独善的なサイコギルドのやり方には、どうしても許しがたい様子である。
なお、どんなに言われてもアンカーはまったく動じていない。むしろこの光景を、少しばかり面白がっている。
「ふっ、アナタ達の言う通りだよ。この世界に送ったことも、千佐って子の夢の中で疑似的なSAOを作り出したことも、マッドネバーと協力したことも、怪人達の記憶を集めていることも、全部ノロイドを降臨させる為にやっていることだよ!」
さらにアンカーは一呼吸を置いて、感極まった顔で自身の野望を露わにしていた。
「私はSAOが憎い……だから復讐するんだよ! あの世界を! いや、それだけじゃ物足りない! ソードアート・オンラインってゲームが存在する全ての並行世界を消滅させる! それこそが私の……いや、サイコギルドの最終的な目標! SAOが存在する世界は、全部滅んじゃえば良いんだよ!!」
その勢いにキリトらは圧倒されていた。アンカーの抱えるSAOの憎しみは、誰よりも強く闇に包まれていることを目の当たりにする。同時に彼女の荒んだ心をどうにか助けられないか……心の内では、彼女と戦いたくない意思も感じ取っていた。
彼らが知ったサイコギルド、そしてアンカーの真相は、想像以上に重く悲しみに包まれている。その真相を知ったキリトとアスナは、今後どう行動するのだろうか。
そしてそんな二人の背後に、また新たな敵の影が忍び始めている……。
「あそこです!」
「よしっ! いよいよか……」
その一方でこちらは、エイジや源外の元まで向かうユナ、クライン、次郎長、平子の四人。自然に生い茂る獣道を駆け抜けて、サイコギルドの指定した場所まで急いで向かっていた。
そして道中では、クラインがユナに対して例の件について謝罪している。
「なぁ、ユナさん。すまなかった! あの時は……」
「あの時? オリジナルのユナ様のことですね」
ユナはクラインの謝罪の意図を最初掴めなかったものの、自分のオリジナルの件だとすぐに把握する。その上で彼女はクラインに、思っていたことを伝えていた。
「正直当事者ではない私は、あの時の選択が本当に正しかったのか分かりかねます。ですがユナ様は誰かを助けられて後悔はしていないと思います。そう気を落とさないでください」
「ユ、ユナさん……」
オリジナルが命を落とした理由も彼女は把握しており、その上で後悔のしない選択をしたとユナ自身は考えている。この言葉は決して慰めではなく、純粋に今のユナが思ったことであった。それを聞いたクラインはより一層決意を固める。もう二度と大切なものを失わないと。強く誓うクラインの姿を見て、次郎長も内心では思わず安堵していた。
こうして一行は森林をようやく抜けて、荒廃した地面が広がる採石場へと辿り着く。そこにはユナの狙い通り、
「あっ、あそこです!」
「源外さん!!」
源外の姿があった。平子が気付き、一行はその場所へと足を進める。両腕を縄で縛られているが、特に大きなけが等も無く一同は安心していた。
と彼の元に向かおうとした時である。
「ようやく来たか」
「くっ……エイジか」
源外の背後からエイジも姿を見せていた。彼は既にベルトを装着しており、いつでも変身する準備を整えている。
邪魔者が入り怪訝な表情を浮かべるクライン、次郎長、平子だったが、同じくエイジも、次郎長を見て露骨に嫌そうな表情を浮かべていた。
「またあんたか……どうやら何度やっても、避けられないようだな」
「ふっ。これも運命ってところかい」
やはりエイジは、次郎長に対しての苦手意識が拭いきれない様子である。とそんな邪念を振り払いつつ、彼はクラインらに向かって話しかけてきた。
「約束通り、ユナは連れてきたようだな。彼女を引き渡せば、すぐに源外さんを解放してやる。さぁ、さっさとこっちに渡せ!」」
「って、誰がそんなあからさまな手に乗るかよ!」
「こういうのは、人質を返さないのが鉄則なんですよ!」
人質の交換を持ちかけたものの、クラインと平子は即刻否定。絶対に約束を破ると予感し、彼の取引に応じる様子は無かった。
なおそれは、ユナも同じ想いである。
「私も反対致します。ですがエイジ様がサイコギルドを抜け出してくれたら、取引には応じますよ」
「ちっ……やはりお前らと永遠に理解できないようだな!!」
肝心のユナからも否定されてしまい、エイジはとうとう激高。スパイダーバイスタンプを構えて、早速デモンズへの変身を試みている。
〈スパイダー! Deal……!〉
デモンズドライバーの上部に押印して、空中から銀色の蜘蛛が出現。変身へのポーズを構えている途中で、ふと源外が話しかけてきた。
「結局お前さんは戦う意思を選んだか」
「源外さん……まだ辛抱していてくれ。ユナを取り戻したら絶対、解放するからな」
心配する彼に優しく言葉をかけた後、エイジは再度表情を切り替えて、スパイダーバイスタンプをデモンズドライバーのLED部分に押印していた。
「変身!!」
〈Decide up! Deep! Drop! Danger!! 仮面、ライダー……デモンズ!!〉
銀色の蜘蛛から吐き出された糸がエイジの全身を包み込み、特殊な戦闘スーツを形成していく。蜘蛛の糸を模したアーマーが右肩より展開。顔を覆うマスクに付けられた青い複眼が発行して、仮面ライダーデモンズへと変身していた。
〈リバイスラッシャー!!〉
さらには手元に、リバイスシステムの一種であるリバイスラッシャーが出現。力強く握りしめて、クラインらに差し向けていく。
「いよいよ決戦か。おい、平子。ユナのことを頼めるか」
「了解、じろちょん! さぁ、こっちに!」
いよいよ始まる決戦に士気を高める中で、次郎長は平子にユナを避難させるように誘導。平子とユナが安全な場所まで退避して、場にはエイジの変身したデモンズとクラインと次郎長が刀や剣を構えて、互いに睨み合っていた。
「風林火山に侍……今ここで僕が引導を渡してやる!」
恨みを交えながら敵意を向けるエイジに対し、
「エイジ……アンタの目を覚まさせてやる!」
「思い存分かかってきな、あんちゃん!」
クラインと次郎長はエイジの暴走を止めることに強い決意を固めている。互いに一歩も譲らない真剣勝負が今、始まろうとしていた……!
「行くぞ!!」
「はぁぁ!!」
果たして勝負の行方は如何に……。
おまけ
デモンズ「風林火山に侍……今ここで僕が引導を渡してやる!」
クライン「エイジ……アンタの目を覚まさせてやる!」
応援団「いざ、掴め!! ナンバーワン!! オー! オー! オー! オーオーオー!!」
デモンズ「ユナを生き返らせる為なら、どんな泥でも被ってやる! 後沢鋭二。またの名を仮面ライダーデモンズ! 誰であろうと邪魔をするなら容赦はしない!!」
応援団「フレー!!」
クライン「かつての仲間の失態は、リーダーの俺が返上する! 風林火山の一人にして、攘夷志士桂一派のニューカマー、壷井遼太郎! アンタの暴走は、俺と次郎長さんで止めてやるよ!」
応援団「男気ナンバーワンバトル! レディ……ゴー!!」
すいません。なんか思いついたのでおまけとして挟みました。しかも偶然にも現在の二人はどちらも赤い戦士。奇遇ですね笑
余談ですがこの流れだと、エイジがリュウソウレッド。クラインがシンケンレッドにエンゲージ(変身)しそうですね。(もうエイジはデモンズに変身してるじゃんというツッコミは無しでお願いします)
今回のお話も如何でしたでしょうか。アンカーを中心に、物語が大きく動いたと思います。
遂にキリトとアスナがアンカーと対峙し、彼女からサイコギルドの素性を知ることになりました。
まずアンカーの本名は「石澤杏果」。SAO世界の住人で、使用しているアバターもALOのプーカ族をモデルにしております。彼女には姉の「石澤杏奈」がいましたが、SAOに囚われそのままゲームオーバー。それ以来心を閉ざすようになり引きこもりに。無力な毎日を送る中で、シャドームーンという異世界の怪人と出会い、彼からサイコギルドのスカウトを受けます。彼と組むようになり、言われるままにキリトらを銀魂の世界へ強制転移。その後も組織自体は、記憶の招集やダークライダーのベルト開発に携わっておりました。
そしてサイコギルドの目的は……ソードアート・オンラインが存在する全ての並行世界の消滅。それを実現する為に、次元の狭間にいるとされる生命体「ノロイド」の復活が最終目標となります。
アンカーの姉に対する執着っぷりは、当初そこまで過激なものでは無かったのですが、姉を失ったことと姉を悪く言うかつての仲間によりここまで拗れてしまいました。狂気的ではありますが、彼女も一応はSAOにより人生を狂わされた人間。救いがあると信じたいです……。
一方でクラインと次郎長は、いよいよエイジと真っ向勝負! 男同士の仁義なき戦いが今繰り広げられようとしています……!
そんなこんなで次回は、エイジとユナの進展に大きな動きがあるかもしれません。さらになんと本章の裏ボスも登場……!? 最後まで見逃さずにご覧ください!
そしてここで皆さんに報告があります! スケジュールにもよるんですが、今年のどこかの週で二回投稿を現在考えております。実は次々回の刀唱時代篇の展開が結構キリの良いところで終わるので、どうにか無理やり今年中に詰め込みたいと思っております。難しかったら、またこちらで報告致します。
次回予告
クライン「俺はこの世界で、真の武士道を学んだんだ!」
次郎長「とうとう自分を見失ったのか!」
侍達の共闘!
エイジ「集まれ! 三つの力よ!」
エイジの決死の変身……!?
シャドームーン「お前に本当のことを教えてやろう」
サイコギルドの本命……?
???「久しぶりだな……!」
刀唱時代篇六 剣士の懺悔、侍の覚悟