剣魂    作:トライアル

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 ちょっと早いですが、以前の予告で銀さんの言っていた「てんめぇ……ウチの従業員に何をしてやがる!」と啖呵を切った相手が判明致します。どうぞ最後までお楽しみください。




第百三十三訓 剣士の懺悔、侍の覚悟

「はぁぁぁ!」

「ホワチャ―!」

「ふっ!!」

 岩舟山の森林地区で怪人軍団と戦うのは、銀時、新八、神楽、定春、桂、エリザベスの五人と一匹。彼らは自慢の木刀、刀、傘等を使い、次から次へと迫る戦闘員や怪人達の猛攻に応戦していた。

「おりゃぁぁ!!」

 戦闘員を蹴散らしながら、銀時が目を付けたのは死神クロノス。大鎌を構えて攻撃を繰り出す死神クロノスに、銀時は瞬時にその動きを予測しながら戦っていた。

「ふっ!」

「何!?」

 だが死神クロノスも早速奥の手へと移り、手にした大鎌へ瞬時に火を灯していく。火炎を纏った鎌の刃で、銀時を焼き倒そうとしたが……

「おらよっと!」

「な!?」

銀時本人はまったく動じていない。身軽な身のこなしで火炎の大鎌をかわし、さらには手にした木刀に散った火の粉が付こうとも、

「くらいやがれ!!」

「イー!!」

「うぅぅ!!」

彼は火の粉を払うついでに、周辺にいた戦闘員達へ向けて円を描くように攻撃していた。火の粉は瞬く間に襲い掛かろうとしたショッカー戦闘員らに振りまかれ、その熱さに怯んでいるうちに銀時が木刀で追撃。戦闘員らは連鎖的に爆発を起こしながら、殲滅していった。

「なんと!?」

「これが俺なりの戦い方だ。てめぇも同じように送ってやらぁ!」

 攻撃する勢いを止めることなく、銀時はさらに死神クロノスと対峙していく。

 

「ふっ! はぁ!」

 一方で新八もカッシーンやダスタードを堅実に倒していく中、突然襲い掛かったジャガーロードとも交戦する。

「うぅぅ!」

「そこだ!」

 ジャガーロードから繰り出される格闘術に、新八は臨機応変に対応。守りの姿勢を崩さないまま、攻撃できる隙を伺っていると……

「はぁぁ!」

 ジャガーロードは自身に備わった念動力を発動。新八自体を木に埋め込んで、息の根を止めようと画策する。

「くっ……なら!」

 ジャガーロードの狙いを察した新八は、瞬時にそれを打開する作戦を思いつく。手にした木刀を上に掲げて、徐々に木々の方へ押し付けられようとする中で……

「今だ! はぁ!」

「な!?」

木刀が木の枝に引っかかる。そのまま新八は反射的に木刀を外して、ジャガーロードへ向かって飛び蹴り。不意打ちとも言える攻撃を予測できず、怯んでしまったジャガーロードに向かってさらなる攻撃を仕掛ける。

「はぁぁ!!」

「ぐっ!?」

 新八はすぐ木刀を木の枝から取り外して、ジャガーロードへ連続して打撃を与えていく。まったく引き下がらずに攻守を使い分けながら、新八は戦いを有利に進めていた。

「アンタの思い通りになんかなるか!」

 

「ホワチャ―!」

 さらに神楽も同様に、自慢の怪力や格闘術で戦闘員軍団と交戦。アントロードも彼女の繰り出される攻撃に次々と倒されていく。

 そんな中で、彼女にヤドカリの力を持つメ・ギャリド・ギが襲い掛かる。

「フ!」

「くっ! こいつは手ごわそうアルナ!」

 ギャリドの力加減を見て、神楽は咄嗟に強敵と認識。長い時間をかけず、瞬時に決着を付けると判断する。次から次へと繰り出されるギャリドの格闘術を傘で受け流しつつ、神楽は彼の隙を瞬く間に見つけていた。

「今ネ!」

「ン!?」

 神楽はギャリドの腹部目掛けて傘に搭載された弾丸を発射。それが命中し、ギャリドが空中へと浮いているうちに……

「おりぁぁっぁあ!!」

神楽はギャリドを持ち上げて体を回し、付近にいる戦闘員を次から次へと蹴散らしていく。使えるものは何でも使う神楽の戦法に戸惑う暇もなく、神楽は敵の相打ちに成功していた。

「ハハ! ざまぁみろネ! どんなもんアル!」

 作戦が上手く誇らしげに喜ぶ神楽だが、ギャリドは態勢を整えて再度応戦。神楽も同じくギャリドへとどめを刺すべく立ち向かっていく。

 

「ちっ! こっちだ!」

 一方で桂が相対するは、ヘラジカを彷彿とさせる怪人ムースファンガイア。彼の大きな角から繰り出される光弾に、桂は上手いこと攻撃できずに悪戦苦闘。ひとまずは木々の中に誘い込み、密かに相手の隙を伺っていると、

「はぁぁ!」

突然ムースファンガイアは突進攻撃に切り替えていた。角を前身に出し、桂へ致命的なダメージを与えようとしたのだが……

「読めた! そこだ!」

「な!?」

その目論見を破り、桂はムースファンガイアの背後から襲撃した。密かに彼の後ろに回って、ある一点に狙いを定めていた。それは……

「はぁぁ!」

「くっ!?」

ムースファンガイアの角である。光弾のみならず突進攻撃も有している彼の角に警戒し、それを破壊して弱体化させようと考えていた。

 桂の目的通りに作戦は上手く進んでいる。ムースファンガイアの角は片方破壊され、遠距離、長距離共に大幅に弱体化した。

「今だ! 倒させてもらうぞ!」

 そのまま彼はムースファンガイアに斬りかかっていき、攻撃の手を一切緩ませない。訪れた好機を存分に活用し、有利に戦いを進めていた。

 

「ワン!」

[行くぞ!]

 一方でこちらは定春とエリザベスの戦い。彼らは体当たりやプラカードでの打撃を武器にして、襲い掛かるGOD工作員やダスタード、カッシーンを次々と戦闘不能にしていく。自身の巨体や奇抜な戦術で戦いを展開する中、さらなる怪人が奇襲を仕掛けていく。

「くらえ!」

「閉じ込めてやる!」

 それはハエジゴクジンとビデオン。植物や機械といった真逆の属性を持つ二体の怪人だが、手を組んで定春らを一網打尽にするべく襲い掛かる。ハエジゴクジンは花粉を飛ばし、ビデオンは左手に付けられたビデオカメラを向けさせる。花粉で相手を痺れ状態にして、ビデオ内に閉じ込めようとしたが、

[させるか!]

エリザベスが真っ向からその作戦を台無しにしようと動く。彼の口から唐突に大きな鏡が現れ、ハエジゴクジンの花粉が跳ね返されてしまう。

「ワフフ!」

「イー!」

「うぅぅ!?」

 一方の定春は、付近にいた戦闘員を蹴り飛ばし、エリザベスとビデオンらの間へ強制的に移動させた。

「イー!」

「な、何!?」

 するとどうだろうか。花粉により痺れた戦闘員の大群が、ビデオンのカメラに全て吸い込まれてしまった。これこそが定春とエリザベスの狙っていた作戦であり、戦闘員が一か所に集まったところで……

「ワフ!!」

「ギァァァァ!」

 定春がビデオンのカメラに食いつき、そのまま嚙みちぎってしまう。それを地面に叩きつけて、容赦なく踏みつぶす。当然中にいた戦闘員の大群は全て倒されてしまった。ペット達の連携プレイにより、怪人達の作戦は呆気なく失敗してしまう。

[前ががら空きだぞ!]

「う!?」

 さらにエリザベスが徒手空拳で応戦し、ビデオンにマウントをとって次々と殴っていく。定春もハエジゴクジンに体当たり攻撃を繰り出し、攻撃の手を一切緩めない。とペット組も自分達の特性を生かして有利に戦っていた。

 

 と怪人相手にも、善戦していく銀時や桂ら。これまでの戦闘経験並びに夢の世界やALO星での経験が、この戦いでも存分に活かされている。

「よしっ! これで!」

 そして銀時がすかさず死神クロノスに対して、とどめを刺そうとした時であった。

「ん? あいつは……」

 彼はふとある人影を見かけていた。それはキリトらの方向に向かって走っており、銀時は直感からある嫌な予感を察していく。

「まさかアイツ、サイコギルドの仲間か? おい、新八! 見せ場譲るから、ここは任せたぞ!」

「ちょ、ちょっと!? 急にどこ行くんですか!?」

 銀時は人影の追跡を優先し、この場の戦いを新八らへ任していた。急な彼からの押し付けに、名指しされた新八は動揺している。

「逃がすな! 追え!」

「イー!!」

 なお戦闘員の一部も、銀時の跡を追いかけてその場を離れていく。彼らとしても絶対獲物を取り逃がさぬように躍起となっていた。

「銀さんは一体……」

「もしかしてサイコギルドの仲間を見つけたんじゃないアルか!」

「なら、うかうかしてはおれんな! こっちもさっさと片付けるぞ!」

 取り残された新八らは、銀時の狙いをすぐに察する。彼の遅れを取らぬようにと、この場にいる怪人達を一掃すると覚悟を固めていた。怪人達を相手取りながら、彼らの戦いは根気よく続いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、空川町の集落付近にあった椅子に座り、銀時、キリトらの帰りを待つユイとたまにもある動きがあった。

「ん?」

「どうかされましたか、ユイ様?」

 ユイはある気配に気づき、反射的に立ち上がっていた。彼女は付近を見渡しており、同じくたまも立ち上がって辺りを見ると……彼女達はこちらに近づくある光を発見していた。

「これは……」

「アルヴドライバー!?」

 そう。その正体はアルヴドライバー。かつて銀時、キリト、アスナ、神楽の四人が、ALO星で使用したアイテムだ。これを使い別世界にいるとされる平成仮面ライダーの能力を発動し、オベイロン率いる怪人軍団を撃破した経験があり、まさに影の立役者と言うべき功績を持ち合わせている。現在は万事屋の室内にしっかりと保管していたはずだったが……何の前触れも無く、ユイらの元まで追いかけてそっと彼女の手元に置かれていた。

 まるで自分の意思のように出現したアルヴドライバーを目にして、ユイ、たま両名共驚いている。だがユイは、このアルヴドライバーの出現が何らかの前触れだと思い、ある決意を固めていた。

「もしかして……」

「ユイ様?」

「たまさん! パパ達の元に向かいましょう! これはきっと何か良くないことが起きる前兆ですよ!」

 ユイはじっとするよりもキリトらへ向かうことが先決と判断し、たまにも協力を要請している。アルヴドライバー自体が窮地へと陥った時に使用できるアイテムと彼女は知っているので、アイテムの出現自体がキリトや銀時らのピンチと察していた。

 ユイの真剣そうに訴えかける表情を目の当たりにして、たまも彼女に同調していく。

「分かりました。一緒に向かいましょう」

「はい!」

 こうしてユイはアルヴドライバーを抱えて、たまと共に岩舟山の奥部へ突き進んでいく。起こるかもしれないキリトらの窮地を絶対に助ける為に……。

 

 

 

 

 

 

 

「……来い!」

「なら遠慮なく……!!」

 そして時を同じくして、エイジとクライン、次郎長の決闘が今にも始まろうとしていた。エイジはダークライダーの一体である仮面ライダーデモンズに変身。片手剣型の武器であるリバイスラッシャーを手にしている。一方で次郎長とクラインは共に刀を鞘から引き抜いており、それをデモンズに差し向けていた。両者共譲れぬ闘志を燃やしており、エイジはユナを連れ戻す為。クラインらは源外の救出とエイジの暴走を止める為に、この決闘に臨んでいた。

「じろちょん……」

「クライン様……どうかエイジ様を止めてください」

 岩陰からはユナと彼女を護衛する平子が見守っている。二人共深刻そうな表情で、彼らの無事を祈っていた。

 可能ならユナも、令和の記憶を使いエイジを止める戦いに参加したかったところだが、極端に体力を消耗する点と、男同士の戦いに水を差すわけにはいかないという理由から、今回は不参加となっている。今自分に出来ることが、エイジが過ちに気付き踏みとどまってくれることを切に願うことのみであった。

「エイジよ……悲しみに囚われても、一歩も前には進めないぞ」

 それは囚われている源外とて同じ想いである。自分の過去の所業と照らし合わせて、彼の末路を心底心配していた。

 そんな多くの想いが渦巻く中で……遂に三人の決闘が勃発する。

「はぁぁぁ!!」

「やぁっぁあ!!」

互いに声を荒げながら、真っ向から攻撃を仕掛ける三人。デモンズは素早さを活かし、連続した斬撃を。一方でクラインと次郎長は確実に相手へダメージを与える慎重さを軸に戦いを展開していた。

 剣や刀で斬りかかっては、自身の武器で防ぐ互角の戦い。一歩も譲らない拮抗した戦闘が続く中で、デモンズは秘策に移る。

「なら!」

〈ADD……!〉

〈バッタ!〉

〈Dominate up!〉

〈バッタ! ゲノミクス!!〉

 デモンズドライバーを操作し、バッタの意匠が表面に刻まれたバッタバイスタンプをベルトのLEDパネルに押印。デモンズの能力ゲノミクスを発動し、自身の脚部をバッタと似た形状に変化させていた。

「はぁぁ! くらえ!」

 そのまま彼は高く飛び上がり、クラインへ向かって瞬時にキックを繰り出す。奇想天外な攻撃に対処できず、クラインは防御を構えられぬまま、デモンズからの攻撃を受けようとした時である。

「ふっ!」

 途端に次郎長がクラインの前に入って、デモンズからの攻撃に真っ向から対抗していた。刀のみで攻撃を防ぎ、そのまま彼を押し返している。

「くっ……!」

 渾身の一撃が失敗に終わり、デモンズは思わず悔しさを声に挙げていた。

 一方でクラインは、自身の危機を救ってくれた次郎長に礼を伝えている。

「ありがとうよ、次郎長さん!」

「ふっ、気にするな。アイツは体の形状を変えて攻撃を繰り出す。次も恐らく同じような手を使うだろうな」

 次郎長からの警告を、クラインは真摯に受け止めていた。デモンズのゲノミクス攻撃がまだ続くと把握し、さらなる一手を彼らは模索していく。

「だったらこれだ!」

〈ADD……!〉

〈コモドドラゴン!〉

〈Dominate up!〉

〈コモドドラゴン! ゲノミクス!!〉

 次郎長の言う通り、デモンズはさらなるバイスタンプを使用。コモドドラゴンバイスタンプをLEDパネルに押印すると、彼の左手にコモドオオトカゲを模した特殊なグローブが装備された。

「くらえ!」

 デモンズの発声と同時に、グローブから火炎が放出。それをクラインらに向けており、所謂熱波攻撃を彼らに浴びせようとしていた。

「おっと! させるか!」

 デモンズの攻撃にいち早く気付いたクラインは、熱波を防ぐべく前線に立つ。刀を握りしめて、垂直に立てたまま刀を盾代わりにして熱波の行く手を防いでいる。

「クライン!」

「このまま行かせてくれ! 次郎長さん!」

 正面から熱波を受けるクラインに次郎長は心配するものの、本人は気合を振り絞って堪えていた。クラインにはある狙いがあり、このまま引き下がるわけにはいかないのである。

「行っけぇぇぇ!!」

 すると彼はがむしゃらに、熱波を押し返しながらデモンズとの距離を縮めていく。クラインの狙いは、このままデモンズに近づきゲノミクスを強瀬的に解除しようとしていたのだ。

「なんだと……!?」

 このクラインの決死の行動には、デモンズことエイジ自身も動揺している。負けじとグローブから絶えず炎を吐き続けるも、

「はぁぁ!!」

一気に距離を縮めたクラインの一刀によりグローブは破壊。強制的にゲノミクスが解除され、彼の狙い通りの展開となった。

「くっ……貴様!」

 中々倒れないクラインに激高したデモンズは、リバイスラッシャーを手に彼へ斬りかかっていく。クラインも刀で応戦しつつ、互いの武器で一進一退の攻防が展開される。

 そんな最中にデモンズは、クラインに話しかけてきた。

「風林火山! なぜ貴様は僕の願いを阻む! ユナに少しでも詫びる気持ちがあるなら、素直に引き下がったらどうなんだ!」

 オリジナルのユナの死の原因を再度話題に挙げて、クラインに罪悪感を与えた上で戦意を削がせようとする。だがしかし、どんなに責め立てようともクラインの戦う意思に変わりはない。

「あぁ……俺も一時はそうしようと思ったさ。だがよ……仮にこのままユナさんを人間に戻したとて、今度こそお前は彼女を守り切ることが出来るのか?」

「……なんだと?」

 それはエイジにとって、源外に言われたことと同じ台詞であった。クラインも同じくエイジの現在の状況を不安視しており、彼の力についての認識を聞いている。

 エイジことデモンズは仮面の奥底で歯ぎしりしながら、クラインに返答していた。

「当然だ。このダークライダーの力があれば、どんな奴らからも……」

「それはお前自身の力じゃないだろ!! そんな与えられた力のままで、本当に大切な人を守り切れるのか!? もしダメだったら、今度はそのベルトのせいにするのか!?」

 クラインはデモンズの返答に覆いかぶさるように、自身の熱意を赤裸々に伝える。大切な人を守る為の力が、得体の知れない組織の言いなりになっていることが、クラインにとっては度し難いことだったのだ。エイジ及びユナの未来を案じた上での、彼なりの忠告である。

 さらに次郎長もクラインへ同調するように声を上げていた。

「俺からも言わせてもらう。お前さんの刀には、何一つ信念が無い。仮初で折れやすく、随分と脆い魂だな!」

 彼はデモンズに刀を差し向けながら、思ったことをそのまま発する。二回エイジと対峙した上で、やはり迷いが拭いきれていないと次郎長は判断していた。その表情もより険しく変わっている。

 二人からの指摘にデモンズが黙り込んでいると、クラインは一呼吸置いてからさらに説得を試みていた。

「俺自身はな、己の力だけでこれまで戦ってきたんだ……武士道って言う折れない心でな!その信念はこの世界に来てから、より強くなった! だからこそ自信を持って言える! もう二度と大切なモンを失わず、守り通すってな!」

 覚悟の決まった表情で伝えたのは、侍として生きる信念である。どんなことがあっても自分が守ると決めたものは守り通す。それを彼はこの世界に来てから、より強固な意志へと昇華させていた。

「俺の仲間の失態は幾ら謝っても変わらない……だったら俺のやることは、後ろを振り向かずに前へ進み続けることだ! 今いるユナさんを助けたいなら、サイコギルドの言いなりになんかなるなよ! アンタはもっと自分の力を信じろよ!」

 その上でデモンズに、違うやり方で今のユナを守るように諭す。クライン自身も自らの仲間の過去の失態を詫び、それを含めて今の自分に出来ることを考えていたのだ。

 彼の男気のあるメッセージにデモンズは一瞬だけ心を動かされていたが、

「黙れ……黙れ! 黙れ!」

〈スタンプバイ! リバイバイスラッシュ!!〉

やはり内心に秘めた憎しみに上書きされてしまう。彼はコモドドラゴンバイスタンプをリバイスラッシャーに押印し、炎を纏った斬撃をクラインへ目掛けて浴びせていた。

「くわゎ! くっ……!」

 その必殺技の余波により、後ろへと吹き飛ばされるクライン。そんな彼を次郎長が瞬時に取り押さえて、クラインの無事を確認している。

「クライン! 大丈夫か?」

「あぁ、なんとか平気だぜ。次郎長さん」

 本人からは特に問題の無い返答が返って来ていた。ゆっくりと二人が態勢を整えなおしていく中で、デモンズはさらなる一手を切っていく。

「お前達は何も分かっていない……非力な自分を変えるには、絶対的な力が必要だということを!!」

〈エデンドライバー!! ルシファー!!〉

 デモンズは一旦変身を解除し、新たにエデンドライバーを腹部に装着する。エデンプログライズキーを開錠して、それを左側のスロット部分に差し込んだ。

「……変身!」

〈プログライズ! アーク!!〉

〈The creator who charges forward believing in paradise! OVER THE EDEN!!〉

 エイジは再度仮面ライダールシファーへと変身。骸骨の幻影に包まれて、黒と灰色の特殊なスーツを身にまとっていた。

 そしてさらに、ルシファーは一枚のカードを手にしている。

「レプリドラゴナロス! 僕に力を!!」

 そう。それはアンカーから渡されていたレプリドラゴナロスのケミーカード。そのカードを天に掲げていると、彼の見た目に大きな変化が生じていく。

「ジャオウドラゴン!」

「コモドドラゴン!」

「ドラゴナロス!」

「はぁぁぁぁあ!!」

 異なる音声が一斉に鳴ると、ルシファーの背中にカリバー(ジャオウドラゴン)と同様の紫色のマント、左腕にはコモドドラゴンを模したグローブ、右腕には闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)が装備される。さらに胸部のアーマーにはレプリドラゴナロスと同じX状の刻印が刻まれた。

 エイジはアンカーの言う通り、ルシファー、カリバー、デモンズの力を、レプリドラゴナロスのカードで一つの戦士に集約している。さながら違法改造のような強化変身であった。

「お前……今までの力を一つにしたのか!」

「さながら奴の集大成ってところか……!」

 強化されたルシファーに、大きく警戒心を露わにするクラインと次郎長。今までの力が一つに集まったことで、その未知なる恐ろしさを感じ取っていく。

 それはユナも同様の想いであった。

「あのようなライダーは、私のデータにはありません……」

「ユナさん? そうなの?」

「そうです。やはりサイコギルドの狙いは……」

 彼女は怪訝な表情で呟く。文字通りオリジナルのルシファーには強化形態が一切ない為、ユナは一層動揺していたのだ。その上でサイコギルドの真の狙いについても察していく。

「止めろ……止めるんだ。エイジ」

 一方で源外は、一人暴走するエイジに憂いていた。止めるように小さく事を呟くも、その声は彼にはもう届いていない。

「名付けて仮面ライダールシファー ドラゴンカスタム!! 僕の前にひれ伏すがいい!」

 そして強力な竜の力を宿したルシファーは、早速次郎長とクラインに向けて攻撃を仕掛けていく。

「はぁぁぁ!!

「くっ……!」

「ちっ……!」

 グローブ状の武器から繰り出す火炎に、闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)の斬撃が合わさり、二人はそれを防ぐのに力を振り絞る。刀でどうにか相殺しつつも四苦八苦しているうちに、

「そこだ!」

「何!? ぐはぁ!」

ルシファーは高速で移動してクラインに斬りかかっていた。不意打ちが成功し、彼は地面に叩き落とされてしまう。

「さぁ、とっとと消えろ!!」

「おい! いい加減に目を覚ませ!!」

 ルシファーは攻撃の手を緩めることなく、クラインに向けて次々と斬りかかっていく。その攻撃にクラインは瞬時に刀で応戦し、彼の説得を再度試みていた。だが……強大な力に高揚としているせいか、まったく聞く耳を持っていない。

 さらに次郎長も、その乱戦に加わっていく。

「あんちゃん! とうとう自分を見失ったか! 侍として……いや、剣士としての誇りは捨てたのか!?」

「僕は見失ってなどいない! はぁぁ!!」

「うっ!?」

「ぐはぁ!?」

 次郎長も次いでエイジを諭すも、クラインと同様の結果であった。ルシファーの連続した斬撃に耐え切ることが出来ず、二人は徐々に彼の勢いに圧倒されてしまう。

「クライン様!」

「じろちょん!」

 クラインらの不利な状況に心配し、ユナと平子が声をかける。二人はどうにか彼女らの声援を糧に立ち上がるも、既に気力を削がれている状況であった。

 彼らの息継ぎが激しくなる様子を見て、ルシファーことエイジは確信する。自分の確実な勝利を。

「ハハハ! さぁ、とどめ……うっ!?」

 だがしかし、とどめを刺そうとした途端に彼の体に異変が生じていた。

「何!?」

「どうした……?」

 急変する状況に再度二人が警戒していると、エイジの動きが段々と鈍くなっていくことを確認している。

「な、何故だ! なぜ制御できない……う、うわぁぁぁ!!」

 そしてとうとう、恐れていた事態が起きてしまった。エイジは悲痛な叫び声を上げながら、その強大なる力に飲み込まれてしまう。エデンドライバーを装着したまま、その外見は醜く変化。藁人形のような胴体と足に、大きな爪を生やした赤い両手。胸部はドラゴンの頭部が噛みつくようなパーツが組み込まれ、頭部にはドラゴンの羽、肩から腰にかけてはドラゴンの足がかけられていた。

 そう。エイジはレプリドラゴナロスの力を抑えきることが出来ず、意識をそっくりそのまま怪人に乗っ取られてしまう。エデンドライバーを装着した摩訶不思議なドラゴンマルガムに変貌してしまった。

「う、嘘だろ……」

「力に溺れ、自分を見失ったか!」

 エイジの怪人化を目の当たりにして、悔しさを滲ませるクラインと次郎長。彼を止められなかった自分自身を責めるも、今はどうにかしてエイジを元に戻せないか模索していく。

「くっ……」

 それは源外とて同じ想いであった。自分の悪い予感が当たり、エイジを止められなかったことに苦悶の表情を浮かべている。

 一方のユナは、エイジの怪人化を見てあることを確信していた。

「やっぱり。サイコギルドはこのままエイジ様を見殺しにするつもりです」

「えっ? 見殺し……? でもエイジのこと、仲間に引き入れたんじゃないの?」

「はい。恐らくは自分の利用しやすい駒として……あのカードを渡された時点で、既にエイジ様を見限っていたのでしょう」

 彼女が悟ったのはサイコギルドのエイジに対する扱いである。当初からユナはサイコギルドを一切信用しておらず、エイジが利用されているだけだと思い込んでいた。強大な力を与えて、最後には自滅させる。それがサイコギルドのやり方だと確信していたのだ。

 平子も緊迫した状況を察し、クラインや次郎長らに加勢しようと刀を抜き始めるが……一方のユナはある危機を発見していた。

「早く止めないと……! あっ、源外様!」

「って、ユナさん!?」

 それは戦場に放置されていた源外である。縄で縛られている彼は身動きが取れず、最悪の場合理性を失ったドラゴンマルガムの攻撃に巻き込まれる可能性も高かった。咄嗟にユナは源外の元まで走り出し、平子もその後を追っている。

「ユナ……うわぁぁぁ!!」

 一方のドラゴンマルガムは、ユナを見かけた瞬間に発狂。唸り声を上げながら、彼女の元まで近づいていく。

「不味い! あそこには源外さんが!」

「意地でも奴の暴走を止めるぞ!」

「はい!」

 その跡をクラインと次郎長も追いかけている。源外を救い出す為にも、彼らはドラゴンマルガムを止めることに躍起となっていた。

 そしてユナは源外の元へと辿り着き、彼を縛る縄を解こうと試みている。

「大丈夫ですか、源外様!」

「あぁ、なんとか。だがエイジが……奴はどうなったら止められる?」

「それは私にも……」

 源外は自分の身よりも、エイジの動向を心配していた。必死な表情でユナにドラゴンマルガムの暴走を止める術を聞くも、ユナにも確証のある方法は分かっていない。そもそもがイレギュラーな形で怪人化した為、下手に倒せばエイジの身にも危険が生じることを彼女は恐れていたのだ。

「うらぁぁぁ!!」

 一方でドラゴンマルガムはうなり声を上げながら、ユナらの元へと走らせていく。さらには鋭利に尖った爪から衝撃波も同時に放っていく。もはや味方の判別も付かないほど、エイジの理性は機能していなかったのだ。

「危ない!」

〈カキーン!〉

 咄嗟にユナは令和の記憶を使用して、仮面ライダーガヴの専用武器である大剣ガヴガブレイドを召喚。ガブの形態の一種であるブリザードソルベの力を宿し、氷の属性をガヴガブレイドに纏わせていく。

「はぁぁ!」

 氷の衝撃波を大剣から次々と解き放ち、ドラゴンマルガムの動きを止めようとするも、

「うらあぁぁぁぁ!!」

凍らせようともすぐに溶かしてしまう。ユナは必死に氷の衝撃波を解き放っていくが、ドラゴンマルガムにはまったく効いていなかった。

「ユナァァァァ!!」

 そしてユナとの距離を縮めたドラゴンマルガムは、飛び上がってユナと源外へ向けて拳を振り下ろしていく。爪を尖らせて、見境なしに彼らへ襲い掛かろうとしていた。もはや万事休すと察し、ユナが源外を庇って身代わりになろうとした時である。

「やめろ!!」

 ドラゴンマルガムに追いついたクラインが羽を広げて、彼の身動きを封じていた。ドラゴンマルガムの両脇を自身の両腕で抑え込み、力一杯行く手を阻んでいく。

「クライン様!」

「ユナさん! 源外さん! 待ってろ! 今すぐエイジを元に戻してやるからな!」

「ですが! 急に攻撃しては、中にいるエイジ様が……」

「方法はもうこれしか無いんだ! それに、こいつはこの程度じゃ倒れねぇよ!!」

 ドラゴンマルガムを取り押さえながら、クラインは彼の怪人化を解こうと大きな賭けを仕掛けようとした。ユナからは確証の無い対処に忠告を促してくるが、彼の覚悟は変わらない。クラインはドラゴンマルガムの中にいるであろうエイジの強い意志を信じ、意地でも救い出すと躍起となっていた。

 そしてその鍵を握るのは、次郎長と平子である。

「平子! アイツのベルトを狙うぞ!」

「オーケー! じろちょん!!」

 泥水親子は互いに刀を握りしめて、ドラゴンマルガムの付けているエデンドライバーに狙いを定めていく。エイジがダークライダーに変身する際に使用したベルトを破壊すれば、変身が解除され元の姿に戻ると次郎長らは予測を立てていた。

 そのチャンスを一回のみと決めて、二人は精神を研ぎ澄ましていく。

「くっ、今だ! 次郎長さん! 平子さん!!」

 クラインが踏ん張ってドラゴンマルガムを地上に降ろし、次郎長らの方向にドラゴンマルガムを向けさせている。

 最大のチャンスを察し、泥水親子はドラゴンマルガム目掛けて走り出していた。

「「はぁぁぁ!!」」

 次郎長は左腹部、平子は右腹部目掛けて、水平にエデンドライバーへ斬りかかっていく。

「ぐっ!?」

 エデンドライバーは二人の一刀で大きく傷つき、火花を散らしながらドラゴンマルガムの足元に落ちていった。さらにはレプリドラゴナロスのカードも体外から排出されて、真っ二つに斬られている。

「ぐうわぁぁぁぁ!!」

 カードの効力が途絶えたところで、ドラゴンマルガムは再び発狂。急に体の力が抜けると、その姿はエイジへと戻り、気を失ったかのように地面へ倒れこんでいた。

「エイジ!」

「大丈夫!?」

 彼の怪人化が解けたことを確認して、クライン、平子、次郎長の三人は真っ先にエイジの元へと駆けよる。さらに遅れてユナと縄から解放された源外も駆けつけていた。

「エイジ! 大丈夫か!?」

「意識はあるが、気を失っているようだな……」

「まぁ、一安心か」

 クラインが必死に呼びかける中で、源外は冷静にエイジの脈を確認。生きていることが確認でき、次郎長らも思わず安堵している。

 その一方でユナは、エイジの体を治す為にあるアイテムを令和の記憶を使用して作り出していた。

「ならば、こちらをお使いください」

「このカプセルは何?」

「リカバリーカプセム。あらゆる万物を治す、いわば回復アイテムみたいなものですね」

 それは緑色の丸いカプセルで、名はリカバリーカプセム。令和の時代に新たに誕生した仮面ライダー、ゼッツの使用する復元能力を有するアイテムである。

〈リカバリー!〉

「はぁ!」

 ユナはそのカプセムを天に掲げてから、エイジの元に近づけさせた。すると彼の意識は途端に戻っている。

「……ここは?」

「エイジ様。おはようございます」

「ユナ? それになんでアンタ達まで……」

 エイジは現在の状況をまったく理解しておらず、困惑めいた表情を浮かべていた。彼の戸惑う反応から、クラインらは怪人化した時の意識はすっぽり抜けていると確信する。

「エイジ……さっきのこと覚えていないのか?」

「さっき? 確かアンタ達と戦ってそれから……」

「ならば正直にお伝えします。エイジ様。アナタはレプリドラゴナロスのカードで怪人化し、見境なく暴れ回っておりました。私や源外様にもその牙を向けていようとしていたのです」

「……はぁ? 僕がユナと源外さんを殺めようとしただと……?」

 ユナは数分前にエイジの身に起きたことを素直に話していた。自身が怪人化して、敵も味方も判別が付かないまま、源外やユナに襲い掛かろうとした事実は、本人にとっても到底信じがたい出来事であった。

 だがしかし、周りにいるクラインや次郎長らの苦悶の表情を目にし、ユナの言ったことが紛れもない事実だとエイジは内心で察していく。さらに源外も彼に補足を加えてきた。

「エイジよ。これで十分分かっただろう。どんなに力を手に入れても、最後に信じられるのは己の力量のみだと。力に振り回されちゃ、終わりってことだ」

「う、嘘だろ……そんなことが!!」

 自分が忠告した力の使い方について再度説き、エイジ自身のやり方が誤っていたと断言している。

 これらの事実を知って、エイジは大きなショックを受けてしまった。大切な人を守る為、自分の望んだ未来の為に手にした力が、最終的には真逆の方向に向くことは本人も思っていなかったのである。彼は力を使いこなせなかったことに失望し、涙をこらえ自分自身を責め立てていた。

 自責するエイジに対し、クライン、次郎長、平子、源外の四人も、彼の想いをくみ取っていく。サイコギルドの一員とは言え、この顛末はあまりにも酷いと感じていた。ユナも同じくエイジの想いをくみ取った上で、彼女は本当に伝えたかったことを彼に打ち明かす。

「エイジ様。お辛いですが本当のことです。ですが私は……」

 とちょうどその時であった。

「ん?」

「次郎長さん?」

「テメェら……気を付けろ! 何か来るぞ!」

 次郎長は近くの気配に気づき、一行に注意を呼び掛けていく。彼は手にした刀を握りしめながら、近づいてくる何かに大きく警戒していた。

 次郎長に続き、平子やクラインも付近を見渡す中で……一体の怪人が彼らの目の前に出現している。

「計画は失敗したようだな、エイジよ」

「誰?」

「銀色の怪人……?」

 その正体は全身を銀色に包まれた怪人。平子や源外は得体の知らない怪人に戸惑いを覚える中で、クラインだけはその正体を既に見破っていた。

「お前! あの時の!」

「覚えていたか。我が名はシャドームーン! サイコギルドの忠実な下部の一人だ!」

 そう。彼にとっては忘れるはずのない相手である。自分をこの世界へと転移させたサイコギルドの一員だからだ。銀色の怪人……いや、シャドームーンは高らかに自己紹介。悪びれる様子も無く、堂々と一同の前に姿を現していた。

 探していた相手が見つかり、力んだ表情で敵意を剥き出しにするクライン。彼以外にも早々に敵とみなし、次郎長や平子も対立姿勢を露わにしていく。そんな中でエイジは、シャドームーンに先ほど起こったことをそのまま伝えていた。

「シャドームーン! どういうことだ……さっきのカードで僕は、ユナと源外さんを傷つけるところだったんだぞ! 何を考えているんだ!!」

 切実に訴えかけるエイジであったが、シャドームーンからはそっけない返答が返ってくる。

「それで良いのだ、エイジよ。まだ分からぬのか?」

「何がだ……?」

「ならば本当のことを教えてやろう。後沢鋭二。お前はただの捨て石だ!! 組織の本命がしくじった時の保険として、サイコギルドに迎い入れたに過ぎないのだ」

「捨て石だと……!」

 彼から伝えられた衝撃的な真実に、エイジは重く受け止めていた。ユナの言った通り、やはりサイコギルドは最初からエイジのことをこれっぽちも信用していない。むしろ都合の良い道具として、意のままに利用していたにすぎないのである。

 さらにシャドームーンは話を続けていく。

「その本命も今、事を上手く進めている。用済みと判断し、アンカー経由でレプリドラゴナロスのカードを渡したのだ。怪人となり自爆してくれれば良かったが、運悪く生き残ってしまったようだな」

 最後には恨み節すら吐く突き放し方であった。レプリドラゴナロスのカードを渡したことも、期待では無く用済みの意味合いだったのである。ドラゴンマルガムとなり倒されるまでを想定していたが、目論見通りにはいかず、こうして表に出てきたというのだ。

 いずれにしてもシャドームーンの明かした真実には、共に話を聞いていた平子や源外、ユナからもひゅんしゅくが飛んでくる。

「酷い……」

「なんて奴だ……」

「やっぱり……最初からエイジ様のことなんて、どうでも良かったってことなんですね」

 シャドームーン並びにサイコギルドの仲間を切り捨てるやり方に、皆嫌悪感を露わにしていた。無論クラインも同じ気持ちであり、彼は先走って思っていたことをそのままシャドームーンへとぶつけていく。

「おい、アンタ! じゃなんで最初からエイジのことを選んだんだ!! 捨て石ならお前の配下の怪人共に任しても良いんじゃないのか!!」

「何も分かっていない奴め」

「何だと!?」

「エイジを選んだ理由は二つある。一つはクライン……いやお前を含めた仲間達が、未来で対立するからだ。未来での強敵は、サイコギルドの最終目的に相応しい人材だからな」

「最終目的……? って、お前待てよ! なんで俺の名前知っているんだよ!!」

「ふっ、それは時機に分かることだ」

 サイコギルドがエイジを選んだ理由を淡々と話していく中で、クラインはシャドームーンの話から見つけた違和感を指摘している。自身を知っているかのように振舞う態度に戸惑う中で、シャドームーンはまったく気にせずに話を続けていく。

「それともう一つはユナの件だ。本来の未来でエイジはユナをAIとして本物そっくりに生き返らせる為に奔走していた。ユナの件になると周りが見えなくなるのは、捨て石として都合が良いからな。だから記憶を保管するロボットをユナそっくりに改造させたのだ。まぁ、本物そっくりにしたせいで、反逆されたのは正直計算外だったがな」

 逐一棘のある言葉で、愚痴を吐くシャドームーン。彼が明かした身勝手な行動の数々に、話を聞いていたクラインらは憤りを感じている。エイジを捨て石に選んだのは、自身の未来を見せて唆されやすい点と、ユナを生き返らせるという想いを利用する為であった。彼への根回しが良かったのも、良くも悪くも純粋で全て自分で抱え込みやすいエイジの性格を反映しての行動であろう。

 次々と明かされる新事実にエイジは内心で心を痛めている。そんな彼の想いを代弁して、次郎長がシャドームーンへ向けて一喝していた。

「黙って聞いてりゃ、好き放題言いやがって! 要はこの若造たちを利用して、甘い汁をすすろうとしていただけじゃねぇか!」

「なんとでも言え。全てはサイコギルドの悲願の為にやっていることだ。エイジはその為の肥やしでしか無かった。ただそれだけのことだ」

 外道と名指しし非難するも、シャドームーンはまったく悪びれない。組織の目的を最優先にして、他には一切興味を向けない両極端な一面を露わにしていく。

 この一方的な裏切られ方に、エイジは悔しさを滲ませながら、シャドームーンへ自身の怒りをぶつけている。

「なぜだ……なぜだ、シャドームーン!! この僕にダークライダーの力を与え約束してくれたことも、全部嘘だって言うのか!!」

「あぁ、そうさ。お前さんに複数のベルトや剣を渡したのは、期待では無く実験の為だ。全てはノロイドを復活させる為……その必要なデータを多く実証してくれたことだけは感謝するぞ」

「ノロイド……?」

 シャドームーンの口走ったノロイドと言う言葉に違和感を覚えるクライン。彼が常々口走っていたサイコギルドの最終目標に関係する何かだと、クラインは密かに察していく。

 一方でエイジは自暴自棄となり、怒りの赴くままに行動していた。

「なら!」

 彼はまだ壊れていないデモンズドライバーを手に取り、再度仮面ライダーデモンズへと変身しようとしたが……。

「ふっ!」

「何!?」

「ベルトが!」

シャドームーンが突如発動した念動力によって、デモンズドライバーは宙に浮き、彼の手元を離れてしまう。さらには闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)とジャオウドラゴンワンダーライドブック、破られたレプリドラゴナロスのカードと壊されたエデンドライバーも、彼によって回収されてしまった。

 エイジに渡された力は全てシャドームーンの手元に戻ってしまう。

「これでお前は無力な人間に逆戻りだ。仕上げに……」

「う……!?」

「ユナ!?」

 さらにシャドームーンは続けて、ユナの前にその手を差し出す。すると彼女は急に体の力が抜けてしまい、顔も咄嗟にうつむいてしまう。

「どうした!?」

 エイジが必死に呼びかけるも、次の瞬間……

「滅亡迅雷ネットに接続……人類は滅亡せよ!!」

「……くっ!? えっ……チップが!?」

彼女はエイジの懐にあったICチップを強制的に奪っている。

 ユナの急変した行動に皆が困惑する中で、彼女はシャドームーンの元へと移動していた。そう。これもシャドームーンの思惑通りの行動である。

「ユナはハッキングさせてもらった。所詮はただのヒューマギアだからな。あっ、そうだ。これも伝えておこう。そもそもヒューマギアが人間になる事例は別の世界でも確認されていない。つまり君は、俺の口車に乗せられていただけだったのだよ!」

 さらに彼はユナの身に起きたことと、エイジとした約束事の真実も明かしていく。ユナの現在の状態は特殊な回路で自我をハッキングされ、その証拠に目と耳に付けられたヘッドホン型のモジュールも紫色に光っている。要はシャドームーンの思うままに動く、操り人形と化したに過ぎなかった。

 続けてユナを人間に戻す方法も真っ赤な嘘であることが判明。最初からエイジを利用する気だったことを自白し、余計にエイジへ心理的なショックを与えている。

「そ、そんな……」

 サイコギルドの裏切り、自分がただの傀儡であったこと、洗脳されたユナなど、多くの悲劇的な出来事が重なり、エイジは思わず膝をつき、精神的なショックを受けていた。自分ではもう立ち上がれなくなるくらいに……

 そんな彼の様子を見て、クライン、次郎長、平子、源外の四人は、エイジへ無条件に同情していた。同じくして、サイコギルド並びにシャドームーンの裏切りに大きな怒りを覚えていく。

「てめぇ……!」

「この外道めが! ただで済むと思うな!!」

 感情的なままに怒りをぶつけるクラインと次郎長。シャドームーンに刀を差し向けて、今にも襲い掛かりそうな切羽詰まった表情で彼に威嚇している。

 無論シャドームーンは、何を言われても改めるつもりは無かった。

「それはこっちのセリフだ。さぁ、やれ。ユナよ!」

「はい」

〈リカバリー!〉

 するとユナは、再びリカバリーカプセムを手に取り、それを発動させる。と同時に破られたレプリドラゴナロスのカードと壊されたエデンドライバーが復元されていく。

「はぁ!」

 さらには令和の記憶を利用し、そのままベルト等アイテムにエネルギーを注ぎ込むと……

「おいおい、なんだよこれ!」

「変身者無しでダークライダーが!?」

アイテムが勝手に動き出し、変身者がいないままダークライダーや怪人に変身してしまった。これらの想定外な出来事に、クラインや源外らも大きく動揺している。

 左からサウザンドジャッカーを手にした仮面ライダールシファー。闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)を手にした仮面ライダーカリバー(ジャオウドラゴン)。リバイスラッシャーを手にした仮面ライダーデモンズ。そして唯一の怪人であるドラゴンマルガムが、令和の記憶により生成された。

 変身者はいないが、その無機質な振る舞いと無言のままクラインらに敵意を向ける姿勢から、彼らがただの傀儡であることが分かる。

「ユナの持つ記憶を使って、疑似的に復元させた俺の伏兵達だ。ルシファー、カリバー、デモンズ、ドラゴンマルガム。どれもオリジナルと大差無い強さを誇っているぞ」

 シャドームーンは手を叩きながら、傀儡となったダークライダー達を称賛した。全てはこの場にいるエイジやクラインらを抹消する為、総力を挙げて彼らを潰しにかかって来たに違いない。

 こうして彼は……いよいよ最終段階に打って出ている。

「ユナよ。今こそ完全体となり、俺の優秀な下僕となるが良い! そして! ノロイド復活の礎として、その身をささげるのだ!」

「はい。シャドームーン様」

「や、止めろ! ユナ!!」

 シャドームーンはユナに、エイジから奪ったICチップを体内に入れるように指示。令和の記憶を完全に開放し、ノロイド復活の準備の為に躍起となっていた。

 ユナもシャドームーンの言われるままに、ICチップを自身の耳のモジュールに埋め込もうと動き出す。エイジは必死に止めようと叫ぶも、現在のユナにはもう声は届いていない……。

 果たしてサイコギルドはこのまま自身の思惑通りに、作戦を遂行してしまうのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 一方でこちらは、アンカーと会話を交わすキリトとアスナの場面。アンカーより知らされたサイコギルドの真相や彼女の心の叫びを、二人は重く深刻に受け止めている。その上で再度コミュニケーションを図ろうとしていた。

「アンカーさん……アナタがSAOを憎んでいるのは、よく分かったわよ。でもそれで、世界を滅ぼすなんて間違っているわよ!」

「どんなに憎んでも、世界を滅ぼしても……君自身が変わって現実と向き合わなきゃ、前には進めないぞ!」

「……アナタ達には分からないことだよ。仲間にも恵まれているアナタ達には!」

 アンカーの気持ちを汲んだ上で、考え直すように説得を試みるも、返ってくるのは否定的なものばかりである。もはや自暴自棄ともとれるようなアンカーの態度に、二人はどう落ち着かせれば良いか分からなくなっていた。

 さらにアンカーは、あることを二人に追記で明かしている。

「あっ、そうだ。これも伝えておこう。アナタ達をなんでこの世界に飛ばす人間に選んだか。知りたいよね?」

「……どういう意味だ?」

 にんまりと不気味な笑顔を浮かべたまま、アンカーはキリトやアスナらをこの世界に送る人間として選んだ件についても話し始めた。

「それはね……アナタ達は特に未来の分岐が多いからだよ」

「分岐? パラレルワールドってこと?」

「正解~。アナタ達も出会ったでしょ? SAOが販売延期した世界線から来たもう一人の自分達を。他には……アインクラッドを75層じゃなくちゃんと100層までたどり着いた世界線。アナタ達二人が付き合うことなく全く別の相手と愛を育むことになった世界線。途中で力尽きてSAOサバイバー全員が消滅した世界線。アナタ達やその仲間達はあの世界の住人の中でも、特に分岐した未来が多いってこと。ノロイド復活の条件に必要な人為的な未来の改変には、アナタ達が大変都合が良かったんだよね~」

 彼女から語られたのは、キリト、アスナ及びその仲間達がサイコギルドの最終目的に、最も利用しやすい点である。アンカー曰く様々な分岐した世界線を重きに置いているが、以前にもまったく違う性格の自分達と出会っており、彼女の返答により説得性を持たせていた。アインクラッドを最後まで攻略した世界線や逆に全員がゲームオーバーになった世界線も、二人は容易に想像が付く。その様々な世界線に行く可能性があったこそ、サイコギルドに目を付けられてしまったのだと二人は内心で思っていた。

 さらにアンカーは二人に追記していく。

「それとアナタ達って、どうやら因縁も多い訳じゃん。SAOの時と言い、厄介な人間に目を付けられがちだよね」

「厄介って……」

「言葉には出さないけど、思い浮かんだ相手で良いよ。そいつらは本来の未来でも、アナタ達の前に立ちはだかる。ちょうどそいつらにも、ダークライダーのベルトを渡しているんだよね。むしろエイジより、そっちの方が本命だったかもね。組織的には」

「えっ……エイジはむしろ囮だって言いたいの?」

 キリト、アスナ並びにその仲間達が、妙な因縁を付けられやすいこともサイコギルド側は把握していた。むしろエイジよりも、まったく別の人物に期待を寄せていると、アンカーは自ら暴露する。

 とちょうどその時だった。彼らの目の前にある男が現れ、そそくさと近づく。

「そう。本命は……ちょうど来たみたいだね」

「ここが別の世界か……おっ! 本当にアバターのまま、こっちにいるんだな!!」

 その男は妙になれなれしく、キリトらに話しかけてきた。ぼさぼさの白髪とやつれた表情を浮かべた細身の男性で、簡素な服装とネックレスが特徴的である。アバターと名指しされていることから、恐らくはSAOの現実世界から来た人間だと、キリトやアスナは薄っすらと思っていたが……顔を見ても、どんな人間かまったく分からなかった。

「……誰だ?」

「おいおい、忘れるなんて失礼じゃないか? 俺だよ、俺。ラフィンコフィンって言ったら分かるよな?」

 そう男が口走った瞬間に、二人の間に戦慄が走る。驚嘆とした表情になり、体も小刻みに震え始めていた。なぜならば……目の前にいるのが、かつてSAOで何人ものプレイヤーを死に追いやった殺戮者だったからだ。

「何だと……!?」

「まさかアナタって……!?」

 そう。彼らの予想通り、殺人ギルド「ラフィンコフィン」の一員が、この銀魂の世界に転移している。その男の名は……

「ご名答。俺はジョニーブラック。久しぶりだなぁ! お前らぁぁ!」

ジョニーブラックだ。彼は二人と出会えて、意気揚々と気分を高めている……。

 そんな彼の手には黒いベルトとIDコア、バックルのようなアイテムが握られていた……。




 今回のお話も如何でしたでしょうか。本章の最終決戦に向けての舞台が整ったと思われます。

 まず注目点はエイジとクライン、次郎長の戦い。互いの信念がぶつかり合う熱い戦いだったと思います。この会話の掛け合いは、特に気合を込めて作成しておりました。
 そしてエイジは本作のオリジナル形態、仮面ライダールシファー(ドラゴンカスタム)に変身。圧倒的な力でクラインらの元に立ちはだかりますが、レプリドラゴナロスの暴走によりマルガム化してしまいます。
 その後に助けられるも、シャドームーンから聞かされたのは残酷な真実……エイジ自身が捨て石の補欠で、ただの実験材料でしか無かったということ。さらにはユナもハッキングされ踏んだり蹴ったりの状況が続いてしまいます。
 ユナはこのままサイコギルドの言いなりになって、ノロイド復活の引き金を引いてしまうのでしょうか……その真相は次回明らかとなります。

 一方でアンカーが語った別の世界線の件ですが、こちらはSAOのゲーム版や他の作家さんが投稿している二次創作等が該当するかと思います。多くの作品ではキリトやアスナを中心に動いているので、その多くの世界線と関係している故にサイコギルドの計画に巻き込まれたというのが真実です。

 そして……裏ボスの正体はなんと金本敦。SAO本編でキリトをアンダーワールドに転移させたきっかけの人物でもあります。こちらも予想出来た方はいるでしょうか。
 そんな彼はなんとエイジ同様に、ダークライダーのベルトをサイコギルドより渡されております。果たしてどんなライダーになるのか。
 次回は万事屋と金本が前面衝突!? どうぞ最後までお見逃しなく。


 ということで現在執筆中ですが、年内に間に合わなければ年始になるかと思います。では、また次回!





次回予告

金本「俺は知っちまったんだよ! 未来の出来事を!」
〈リボルブオン!!〉

立ちはだかる最恐のプレイヤー!

キリト「剣が!」
アスナ「そんな……!」
仮面ライダー??????「無いねぇ! 剣が無いねぇ!! でもこっちにはあるんだよ! 剣があるんだよ!!」

奪われる能力――

そして駆けつける万事の仲間。

銀時「てんめぇ……ウチの従業員に何をしてやがる!」

刀唱時代篇七 対峙Ⅰ:最恐のプレイヤーキラー
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