万事屋にて繰り広げられている他世界対策交流会議。今回手に入れたサイコギルドの情報を基に、皆がこれまでに得た情報を整理していた。
銀時、キリト、新八、アスナ、神楽、ユイ、桂、エリザベス、クラインの九人は、今もなお会議を続けている。
「そして、次に大きく動いたのはALO星の時か」
「確かALO星にいるフィリアって子と出会って、次元の狭間にある遺跡に行ったよな」
「そこで平成の時代に活躍する仮面ライダーのことを知ったんですよね!」
銀時、キリト、ユイの三人は、数か月前に起きた次元遺跡での件を話題に挙げていた。
それは今回の戦いの舞台となった空川町を、別件で訪れていた時のこと。ALO星の住人であるフィリアと出会い、彼女が入手した呪文で次元遺跡と呼ばれる未知なる場所を探検したことがあったのだ。そこではマッドネバーと呼ばれるALO星の反権力組織と衝突し、彼ら組織が雇った傭兵が、サイコギルドからの技術力でダークライダーなる戦士へと変身。その圧倒的な力に手を焼いていたことを、皆が鮮明に覚えていたのだ。
「そこで何度も戦うことになったダークライダーは、強敵中の強敵でしたけどね」
「仕方ないネ。夜兎や辰羅が変身していたし、むしろ後々に勝ったことが奇跡に等しいアル」
新八や神楽はあの時に起きた戦いを振り返りながら、彼らの強さに戦々恐々としている。神楽の言う通り、宇宙最強の戦闘民族がダークライダーの力を手に入れただけあり、その強さは段違いであった。故に皆が全力を尽くして勝てたことには、まるで奇跡のように感じ取っている。
皆も神楽の意見に同調する中で、キリト、ユイ、アスナも続けて話す。
「その騒動の後には、マッドネバーが本格的に動き出したんだよな」
「そうですね。私も何故か狙われてしまって、一時連れ去られてしまいましたから」
「あの時の絶望感は、今でも胸が締め付けられるくらい痛かったわよ……。辛うじてすぐにALO星に行けたから良かったけど」
三人が同時に思い出したのはユイが拉致されたことであった。それはマッドネバーのリーダーであるオベイロンの策略から始まり、次元遺跡でのユイの行動から勝手に仮面ライダーに近しい存在と決めつけて、研究対象として連れ去ったのである。
キリトやアスナにとっては許しがたい出来事であり、二人は複雑な表情を浮かべていた。なお桂達もこの一件をしみじみと感じていく。
「懐かしいな。俺達も天井に隠れて、ユイ君を助けるために一肌脱いだからな」
「なんとも絶妙なタイミングだったぜ」
[俺も同じ想いだ]
「いや、アンタらはただ盗み聞きしていただけでしょうが」
「つーか、気軽にウチの天井に入ってくるなよ」
さも当たり前のように話しているが、銀時や新八からは率直なツッコミが飛んでくる。桂やクライン、エリザベスは当時万事屋の天井裏で待機しており、銀時らがアルヴヘイムメモリでALO星に移動する際、どさくさに紛れてついて来ていたのだ。銀時側からすればいつも通りのボケとしか捉えておらず、桂達との温度差を実感している。
と話は逸れてしまったが、一行は話題をマッドネバーに戻していく。
「それでマッドネバーは、独自の技術力でALO星の中心街アルンを、瞬く間に掌握していたんですよね」
「サイコギルドの手助けもあったかもしれないが、それを抜きにしても多くの技術力を持っていたのは確かだからな」
「なんでそれを平和利用に出来なかったんだよ」
新八、キリト、銀時が話題に挙げたのは、マッドネバーの技術力について。ダークライダーシステムから始まり、鏡の世界を作り出してALO星の住人を幽閉、別の世界に存在する数多の怪人達を複製など、彼らの技術力が常軌を逸している点をあの戦いの中で痛感していたのだ。その技術力を破壊や独善的な支配の為に使用したオベイロンには、ただただ理解できずにいたが……。
すると、ユイ、アスナ、神楽も追記していく。
「でも、あの時は皆さんが力を合わせたからこそ、私や街も救われましたし、仮面ライダーさんにも認められましたからね!」
「ユッキーと会ったのもあの時だったし。何も悪いことだけじゃ無かったのよね」
「最後は反逆者達が集結して、あのオベ野郎もコテンパンにしてからナ!」
彼女らは話をまとめるように、マッドネバーとの戦いの顛末を振り返っている。力を貸してくれた平成仮面ライダー達の力を宿したアルヴドライバーの覚醒、別の世界のユウキやスリーピングナイツとの出会い、そして打倒マッドネバーの為に集結した多くの仲間達など、この戦いで起きた奇跡や逆転劇を嬉しそうに話していた。多くの者達が力を合わせたからこそ、マッドネバーに打ち勝ったと皆が自覚していく。
するとキリトは、この戦いで駆けつけてくれた高杉のことも思い出していた。
「でもまさか、高杉さんも加勢してくれるなんて、当時は思ってもいなかったけどな」
「つーか、高杉が俺達側に付くくらい、どんだけオベイロンのことを嫌っていたんだよ」
「うむ。とことん人望が無かったと言うべきか」
特に銀時と桂は、高杉の加勢を奇跡に等しいと自覚している。彼の性格上から、自分勝手なオベイロンを毛嫌いすると思っていたが、まさか一時休戦で加勢することは想定外だったのだ。いずれにしても、頼もしいことに変わりはないと二人は感じていたが……。
とマッドネバーやALO星での戦いを振り返る中で、新八はちょうど今日届いた山崎からのメールを思い起こしている。
「あっ。そういえば山崎さんからの情報で、マッドネバーからサイコギルドに対して複数のダークライダーのベルトを渡したと、協力者から供述があったそうですよ」
「えっ? そうなのか、新八?」
「はい。その情報通りなら、エイジさんもサイコギルドが所持するベルトを渡されて、ダークライダーになったのかもしれませんね」
山崎経由で聞かされた新たな情報に、桂やエリザベス、クラインは神妙な表情を浮かべていた。マッドネバーの影響力が、今回の一件にも繋がっていることに、桂達も大きな懸念を感じている。
「なるほどな。ならばそのベルトは、まだ別途用意していると見て良いだろうな」
[俺やキリト達が未来で戦うことになる相手に、渡している可能性があるな]
「未来を変える手段に、また使われるかもしれないってわけね……」
桂やエリザベスの推測に、アスナは何とも言えない表情で同調していた。現に今回の一件でもエイジのみならず、ジョニーこと金本にもダークライダーのベルトが渡されていた為、過去に因縁がある相手が再び現れても、可笑しくない前例が出来ている。銀時やキリト達はその先の見えない状況に、皆形にしがたい気持ち悪さを感じ取っていた。
そんな中で銀時は、マッドネバーの戦いで見えたサイコギルドの行動理由について、自分なりにまとめている。
「つまりこん時のサイコギルドは、ALO星にいるマッドネバーと協力。密かに平成の記憶を手に入れた上で、開発に協力したダークライダーのベルトを見返りとして手に入れた……ってことで間違いないな?」
「はい。恐らくは銀時さんの言う通りだと思います」
ユイも返答して彼の意見に同調していた。自分達の知らない間にも、サイコギルドが暗躍していたことを、一行は改めて理解している。
千佐の一件やALO星での戦いを振り返った後に、一行はいよいよ今回起きた件について普及していく。
「そして、今日の出来事に繋がるわけアルナ」
「今回も前回同様に各時代の記憶の入手も目的の一つでしたが、それに加えてパパ達の未来を変えることが主目的だったように思います」
「あぁ。未来を変えることで、ノロイドを復活させる。その為にエイジやジョニーを雇ったとみて間違いないだろうな」
内容をまとめてくれたユイに、キリトは慎重な面持ちで補足を加えていた。連続して行われた記憶の入手に加え、未来で戦う人物を唆し、世界線を変えることが目的だったと皆が推察している。
「うむ。急にアクセルを踏んだかのように、大きく動き出したと言うべきか」
[表立って出てきたのも、下準備が全て終わったからか?]
「かもしれないな。ユナが逃げなかったら適当なタイミングで、エイジやらジョニーやら差し向けて、半強制的に未来を変えただろうかな」
桂、エリザベス、銀時も、各々が感じていたことを呟いていた。これまでは隠密に行動していたサイコギルドとは一変して、明確にこちらへ牙を差し向ける計画的な犯行には、思わず恐れを抱いている。
その話を聞いた上で、クラインにはある一つの疑問が思い浮かんでいた。
「でもよ、なんでサイコギルドはエイジの大切な人だったユナを、ヒューマギアってロボの外見に選んだんだ? エイジを抱き込むとはいえ、抵抗されて逃げ出したなら本末転倒もいいところだろ」
「確かにそうですよね」
彼はサイコギルドとユナの関係性に疑問を呈している。そもそもエイジを利用するなら本物そっくりに似せなくても良いと思っており、彼女のせいで作戦が半壊した分、計画的なサイコギルドにしては少々爪が甘いと思っていたのだ。
新八やアスナら仲間達も同じような疑問を抱える中で、アスナはふとあることを思い出している。
「あっ、キリト君。エイジさんのメモに何か書いてないかしら」
「メモか。そこに何か書いているかもな」
彼女がキリトに提案したのは、エイジからのメモだった。彼との別れ際に渡されたサイコギルドに関する情報をまとめたメモであり、何か新しい手掛かりに繋がるとアスナは考えている。
キリトは懐からメモを取り出して、気になった個所を音読していた。仲間達も彼の言葉に耳を傾けていく。
「えっと……僕がサイコギルドに誘われたのは三月のこと。彼らは急に僕へ未来を見せてきて、その未来を変える為にサイコギルドへの加入を勧めてきた。加入と同時にヒューマギアのユナを僕に見せてきた。彼女は元々記憶を保管するロボットで、僕をサイコギルドに誘う為にユナの人格と外見を似せたみたいだ。彼らはユナに保管されている令和の記憶を解放する為、徹大教授の所持するICチップを強奪しろと僕に銘じてきた。その為にダークライダーのベルトを渡して、任務が成功すればユナを人間に戻すとも約束してくれたんだ」
明かされたエイジの証言に対し、桂や新八、クラインらは言葉を返す。
「運命を変えるようにと、未来を見せた上で選択を突き付けられたというわけか」
「わざわざユナさんまで用意して、エイジさんに揺さぶりをかけるなんて」
「しかもそのユナさんは、人間に戻ることが最初から不可能だったみたいだしよ」
「うわぁ、マジアルか」
クラインの追記に神楽は気を引かせていた。
エイジの証言から、サイコギルドは最初から彼に目を付けていたことは明白であり、未来を見せた上で変えるように誘導する手段に、皆計画性のある狡猾さを感じ取っている。さらには人間に戻す約束も最初から不可能だったと分かり、余計にサイコギルドが卑怯な組織だと確信していた。
さらにキリトはメモを続けて読み上げている。
「サイコギルド加入後は、ユナを介して二つの世界と次元の狭間にあるアジトを行き来していた。彼女は僕の知らない情報も教えてくれて、万事屋やこの世界のこともユナから教えられたと」
「なるほどな。記憶を保管するロボットだから、そこから情報を仕入れていたと」
「僕達と初めて会った時に名前を知っていたのは、ユナさんから聞いてからなんですね」
名前を知っていた謎が紐解かれて、納得する銀時と新八。
さらに続けてキリトがメモを読み上げる。
「サイコギルドで見かけた人物は二人。シャドームーンとアンカー。前者は冷徹な男で、正直人間なのか怪人なのか分からなかった。口数も少なく高圧的で、正直好きではない。ただ時折魂が抜けたかのように止まることがあった。アレが何なのかはいまいち僕も分かっていない」
「魂が抜ける?」
「どういうことアルか?」
「さぁ? そこまでしか書いていないが……もしかして定期的な待機が必要な怪人かロボットなんじゃないのか?」
「ただ寝落ちしていただけじゃないのか?」
一行が気になったのは、エイジからのシャドームーンの一文。魂が抜けるように止まる点を明記しており、その謎の行動に彼自身も疑問に感じていた様子だ。ユイらもこの行動に違和感を覚えていたが、銀時だけは寝落ちと簡略的に一蹴している。
「そしてもう一人がアンカー。彼女は僕と同じ失った立場の人間だった。サイコギルドに入ったのも、僕と同じくスカウトが理由らしい。ただ時折シャドームーンに反発している様子が見られ、必ずしも二人の仲は良好ではないみたいだ」
「お互いのやり方にこだわりがあるってことか?」
「こだわりよりかは、シャドームーンの威圧的な態度に納得がいかないって理由じゃないかしら?」
「要するにパワハラ野郎と」
「いや、ひと言でまとめないでくださいよ」
キリトは続けて、エイジから見たアンカーの評価も話していた。エイジ自身もアンカーの素性を分かっていたようで、同じ立場の人間と同情を寄せている。その上でシャドームーンと彼女の衝突を、何度か目撃した様子だった。
この証言にクラインやアスナは考察を始めていたが、銀時はまたしても一言だけかけて勝手にまとめている。新八は反射的に彼へツッコミをかけていた。
と詳しくメモの内容が分かったところで、ユイはある推測を立てている。
「つまりユナさんがサイコギルドに反旗を翻したのは、シャドームーン側にとっても想定外なことだったんじゃないでしょうか」
「ユナさんの逃亡までを含めての計画だったとしても、かなり粗があるものね」
「AIが人類に反抗するシンギュラリティが起こったようなものか」
彼女の意見にアスナやキリトも同調していた。ユナの逃亡や裏切りはサイコギルドにも想定外だったと思い、彼女の奪還に躍起だったのも納得している。機械的で命令通りに動くヒューマギアのユナに、人の心が芽生えたことが、今回の一件に繋がったと仮定していた。
「策士策に溺れると言ったところか」
「飼い犬に手をかまれたじゃないアルか」
「いや、どっちとも捉えられるような気が」
銀時や神楽もことわざを交えながら、ユナの一件について感想を述べている。内心ではサイコギルドの思い通りになることが無く、ホッと彼らは一安心していた。
一方で一連の話を聞いた桂には、再度二つの疑問が浮かび上がっている。
「それにしても……」
「どうしたんだ、桂さん」
「二つほど疑問があるのだが良いか?」
「またかよ。それでなんだよ」
銀時から軽口を叩かれつつも、構うことなく桂はスラスラと声に挙げていた。
「エイジと同じくサイコギルドに入ったというジョニーとかいう男は、記憶を消された上で元の世界へ強制的に戻されたでは無いか。でもなぜ、エイジは記憶を消されずに、野放しにされているのだ?」
「そういえばそうですね……」
それはエイジとジョニーこと金本の顛末の違いである。結果的にエイジは野放しとなり、金本だけは入念にサイコギルドに関する記憶を消されて、元の世界へ強制退場。恐らくは警察に逮捕され、散々な未来へと塗り替えられていた。
この明らかな境遇の違いには、皆頭を抱えていたのだが……銀時はふと思いついたことを桂に返している。
「そりゃシャドームーンにとっては、心底エイジがどうでも良かったって裏返しだろ。アイツはジョニーの保険として呼ばれただけで、はなっから期待なんてされていなかった。だからこっちの世界で生き延びようが、興味すら湧かないってことだと思うが」
「無関心ってことか……」
[始末なんて手が回らないほどに、切羽詰まっているのかもしれないな]
エリザベスも銀時の意見に補足を加えていた。二人の違いは単純な興味の差でしか無く、サイコギルド側が最初から金本しか見ていないと銀時は推察している。もしくは始末すらする時間が無いと後回しにしている可能性もあり、いずれにしてもエイジがただの補欠要員だと二人は裏付けていたのだ。
「つまりエイジは、もうサイコギルドに狙われることはないってアルか?」
「恐らくはな。まぁ、仮に襲われてもあの爺さんがいるから大丈夫だろ」
「そうね。エイジさん自身も強いことに変わりは無いんだし」
神楽やアスナらも銀時の意見に共感している。エイジ自身の強さを仲間達も実感している為に、どんなことが起きても大丈夫と一行は考えていた。
さらに続けて桂は、もう一つの質問を口にしている。
「なるほどな。ではもう一つ。アンカーについてだな」
「アンカー? 何か気になったんですか、桂さん?」
「あぁ。あの子はなぜ、サイコギルドに選ばれたのだ? SAOに恨みがあることは、俺も彼女と戦う中でよく分かった。だがなぜ、シャドームーンが彼女を最初の仲間に選んだのかがいまいち分からないのだ」
彼が発したのはアンカーの件について。桂は彼女と戦う中で、アンカーの抱える恨みや憎しみを大いに理解していた。ただその歪んだ感情だけで、サイコギルドの一員となる裏付けが弱いと感じている。
桂の質問を聞き入れて、仲間達も言葉に詰まってしまった。
「選んだ理由ですか……」
「うむ。その戦いの中で彼女はふと気になることを言ってな。どこの世界線を覗いても、姉と死に別れになると」
「死に別れ?」
さらに桂は補足として、アンカーとの戦いの中で聞いた彼女の想いを発している。世界線や死に別れと言った一言には、彼女なりの事情があると皆考察を始めていた。
「姉って言うとキリトさん達の言っていた……」
「あぁ。この会議が始まる前に伝えたと思うけど、アンカーには姉の杏奈さんって人がいたんだ」
「でも杏奈さんはSAOに囚われて、その後に……」
アンカーの姉とされる石澤杏奈の話をすると、二人は複雑そうな表情を浮かべている。杏奈はキリト達と同じSAOプレイヤーであり、悲しくもゲーム内で戦死してしまい、既に故人となっていた。その憎しみがアンカーの世界を滅ぼしたいきっかけにも繋がっている。
(なお、クラインにも杏奈の件について伝えたが、彼も彼女に付いてはまったく面識のない様子であった)
以上の話を含めた上で、アンカーの言った言葉の意味を皆が考えていた。
「その言葉の通りだと、アンカーさんはサイコギルドに他の世界線を見させられて、どの世界でもお姉さんと死に別れになる現実を突きつけられたのではないでしょうか?」
「もしくはその世界線しか無いと、唆された可能性もあるけどな」
新八や銀時が考えながら呟くと、続いてユイや神楽、アスナも発していく。
「だとしても、なんで彼女を仲間に引き入れたんでしょうか?」
「エイジと同じでキッリ―達と今後敵対するかもしれないからアルか?」
「その可能性も否定しきれないけど……」
皆がしっくりこない仮説ばかりを思いつく中で、桂はある推測を立て始めていた。
「俺もそんな高尚な理由はよく分からん。だがサイコギルドにとって、アンカーは最重要人物と見ている。むしろ彼女でなくてはいけない理由があると思うのだ。それを解き明かすことが、今後の課題では無いのか?」
「か、桂さん……」
桂は今日の一連の出来事から、アンカーがサイコギルドひいては今後の計画における要を握っていると踏んでいる。今後の作戦において、彼女にしか出来ないことがあると思い、その謎を解き明かすことが重要だと皆に訴えていたのだ。
「そうよね。わざわざ最初にスカウトしたみたいだし、使い捨ての捨て駒とはまた違った感じよね」
「怪人を呼び出すことも出来るし、今後も敵対は免れないと重いけどな」
[まだまだ全ての謎が解き明かされるのも先になりそうだしな。焦らずに行こう]
アスナやクラインの呟きに、エリザベスがプラカードで返答する。多くの情報が明かされ、不安になる気持ちも十分に分かるが、焦らず慎重に進むべきと冷静に彼は説いていた。
「そうだな、エリザベスよ。とりあえずは日々の情報を欠かさず集めつつ、普段通りに過ごしていこうではないか」
「おい。勝手に仕切るなよ、ヅラ」
話のまとめとしてリーダーのように振舞う桂に、神楽は辛辣なツッコミをぶつけている。いつの間にか話の主導権を握られていることに、彼女は不服の様子であった。
だが彼の言う通り、焦っていても仕方が無い為、今できることは日々の生活から再度情報収集を欠かさないこととまとめている。
ユイも彼の意見に賛成していた。
「そうですね。大まかな謎としては、シャドームーンの正体、ノロイドのより詳しい情報、アンカーさんをサイコギルドに引き入れた理由、ダークライダーのベルトの行方。以上の四つといったところでしょうか」
ユイが細かに残ったサイコギルドに関する疑問点を発する中で、銀時はひっそりと手を挙げて、彼女の意見に補足を加えている。
「いや、もう一つあるな」
「銀時さん? なんでしょうか?」
「よくよく考えると、俺達の世界に飛ばした理由がよく分からなくてな。サイコギルドは数ある世界から、なんでキリト達をこのまったく常識も文明も違う世界に飛ばしたか、説明ってされてないよな」
神妙な表情で銀時が語ったのは、キリト達をこの世界へ飛ばした理由について。時間軸を変える為とサイコギルドから説明はあったが、キリト達がいた世界と面影も無いこの世界が転移先として選ばれたかはまったく見当が付いていなかった。彼はアンカーが選ばれた理由と同じく、この世界ではなければいけない理由があったと言及していく。
「そういえばそうですね」
「時間軸を変える上でどの世界でも良かったなんて、適当な理由は考えつかないだろうし」
「ひょっとして、アンカーさんと何かかかわりがあるとかじゃないですか?」
「こっちの世界にもユッキーと同じで、同姓同名のアンカーさんがいるってこと?」
「でも、そんな奴はサイコギルドにいなかったネ……」
「姿を現していないだけじゃないのか?」
銀時の新説に、皆が思い思いに反応している。新八やキリトのように考え込む者もいれば、ユイやアスナ、神楽やクラインのように思いついたことをそのまま発する者もいた。いずれにしても銀時の新説は、アンカーの理由付け同様に、何らかの理由があると見て皆考え始めている。
「うむ。銀時よ。中々の良い視点だったぞ」
[流石は攘夷四天王だ]
「お前らに褒められてもなんも嬉しくいねぇよ。つーか、四天王関係ないだろ」
桂は銀時の着眼点の違いについて、ただ一人で盛り上がっていた様子だが……。
いずれにしても銀時の意見を含めて、サイコギルドの残る謎は大まかに五つに分かれていた。
(エイジ……絶対にユナさんの想いは無駄にしないからな)
今もなお話し合いが続く中で、キリトはエイジのメモに記されていた最後のメモを閲覧していた。
〈ユナは身を挺して、僕とお前達の未来を繋いでくれた。その想いを絶対に無駄にしないでくれ。サイコギルドのアジトが見つけられることを祈っている。僕からも協力できることはなんでもする所存だ〉
この文体のみ力強く筆で描かれている。エイジもまた心の奥底では、キリト達がサイコギルドを倒せるようにと切に願っていたのだ。口では伝えていないが、文体からその情熱的な一面を彼は察している。ユナが自らを破壊し、彼女の中に残っていた令和の記憶も消滅。また記憶をあくせくと探し回っている今こそが、サイコギルドの大きな隙に繋がっていると彼は考えていた。
そのエイジやユナの想いを無下にしない為にも、キリトや仲間達は心の中で誓っている。必ずサイコギルドを倒して、元の世界へ安心して戻ることを。その為にも今は、次元の狭間にあるとされるアジトの発見が急務と自覚していた。
(絶対……見つけるからな)
そう胸に強く誓いつつ、他世界対策交流会議はまとめへと入っていく。
そんな話題に挙がっていたアンカーにも、ある動きがあった。
「はぁ? しばらく留守にする!?」
次元間に用意されたアジトで、彼女は信じがたい手紙を目にしている。それはシャドームーンによるもので、その内容はしばらくアジトを離れ戻れなくなるものであった。恐らくはユナの一件で令和の記憶を取り逃してしまい、それを集め直しているものだと思われる。
だが、勝手に置いてけぼりにされ、世界への復讐する準備すら停滞し始めている現状に、アンカーはかつてない怒りを覚え始めている。
「な、なんなの!! もうアイツにいい加減にしろよ!! いつになったら、私の復讐が果たされるの!!」
彼女は地団駄を踏みながら、怒号を飛ばしていく。その表情も感情的に切り替わり、手にしたフルートランサーを振り回す始末である。乱心しながらしばらく暴れ回るも、それでも彼女の気は収まらない。
「あぁ、もう……こうなったら!」
怒りの赴くままに彼女はアジトを脱出し、空川町にある岩舟山に降り立っていた。そこにある大樹に目を付けて、フルートランサーでその大樹に八つ当たりしようと目論んでいる。
「このまま折れちゃえ!」
アンカーはフルートランサーを握り締めて、大樹を丸ごと伐採しようとした……ちょうどその時であった。
「あの……止めてください!! この樹は町にとって大切なものなんです! 勝手に斬り落とさないでください!!」
彼女の背後に、ある女性が警告してくる。アンカーはたまたま居合わせた女性と察して、伐採を注意されたことに、大きな屈辱感を覚えていた。
「はぁ? 誰だか知らないけど、私を余計にイライラさせないで!」
アンカーは女性の存在を疎ましく感じて、振り向いてフルートランサーを突きつけようとする。
ところが、
「えっ……?」
彼女は女性を見た瞬間に、大きな驚きを覚えていた。怒りもスッと驚きに塗り替えられてしまい、表情も呆然として困惑してしまう。
なぜならば……彼女がずっと追い求めていた相手が、今目の前にいたからだ。
「お姉ちゃん……?」
「お姉ちゃん?」
そう。声をかけてきた女性は、アンカーこと石澤杏果が生き別れた自身の姉、石澤杏奈に見た目が酷似していたのである。
「ねぇ……誰なのアナタ?」
「アタシ? アタシは石澤杏奈って言うの」
「杏奈……!? 本当なの!?」
「はい? そうですけど……」
さらに名前まで同じく、アンカーは動揺して体も小刻みに震えていたのだ。杏奈の容姿はアンカーと似た童顔な顔つき、黒いショートボブな髪型、服装は竹の模様が入った緑色の和服や草履を着用。さながら町娘のような雰囲気で、若干自分の知っている杏奈と異なるが、それでも雰囲気は自分の知っている姉そのものであった。
「お姉ちゃん……」
「えっ? どうしたの君?」
「会いたかったよ! お姉ちゃん!」
「ちょ!? えっ!?」
アンカーはフルートランサーを手放して、杏奈へとびかかり彼女を抱きしめていく。杏奈にとってはまったく状況を読み取れず、ただただ困惑するしか無かった。
「……なんで泣いているの?」
それでも今、自分の目の前いる相手が訳アリなことを察して、彼女の話を聞こうと考えている。
こうしてサイコギルドの一員であるアンカーにも、自分にとって想定もしていなかった物語が今、始まろうとしていた。
今回は会議の後半戦です。偶然にも話数が二話増えたので、今回はガヴ。次回はゼッツ風のタイトルでお届けしたいと思います。ゼッツは現在放送中なので、被りそうな気がしますが……被ったらまた考えます。シンプルなサブタイトルなので、当たりそうな気も。
そんな今回のお話は、ALO星の一件や今回起きた出来事を中心に振り返っていきました。今思うとALO星の戦いって、かなり長期間やっていたんですね……と思いました。皆さんにとっては懐かしかったのではないでしょうか。
それとアンカーについても深掘りされましたね。彼女を仲間に引き入れた理由について疑問が浮かび上がる中で、彼女で無ければいけなかった理由があるのではないでしょうか。
そして同時に、銀魂の世界に転移させた理由についても疑問が上がりましたね。ただ二つの作品を共演させたかったから! ではありません。よくよく考えるとサイコギルドがSAO側の世界の人間しかスカウトしていないのも、理由があるのかもしれませんよ
そして……ラストシーンではまさかの新キャラが。この展開は最終章近くでまた進展があると思いますのでお見逃しなく。アンカーの改心フラグかも。
そんなこんなで次回はいよいよ刀唱時代篇の完結篇です!
次回予告
キリト「俺、夢の中で松陽先生って人に出会ったんだ」
銀時「えっ……本当か?」
キリトと銀時、二人の主人公が自分の想いを吐露する。
そして、互いに誓ったことは……
キリト「俺は……」
銀時「良いんじゃねぇか」
動き出す運命と物語
刀唱時代篇十二(完) 誓う