剣魂    作:トライアル

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いよいよ刀唱の物語も終幕……

PS 銀魂の新作映画、最高に面白かったです!!! 


第百三十九訓 誓う

 他世界対策交流会議を終えて、そのまま解散となった一行。桂、クライン、エリザベスは万事屋を跡にして、銀時、キリト、新八、アスナ、神楽、ユイ、定春の六人と一匹は、普段通りに夕食をとって、風呂に入りいつも通りの日常へと戻っていたのだ。

 それから数時間が経過した時だった。キリトは万事屋の玄関前に移動し、ふとある写真を眺めている。

「ユージオとアリスか……」

 彼が眺めていた写真は、今日の正午頃に撮った写真。源外が作った特殊なカメラで撮影し、偶然にも未来の時間軸の自分が現像されたのだ。最初こそまったく状況が分からなかったが、今日対峙した金本ことジョニー曰く、ユージオとアリスという名前を聞かされている。二人とはアンダーワールドという仮想世界で知り合い交流を深めていく予定だったが……未来が明確に変わってしまった以上、この写真通りの未来には辿り着かないとキリトは推察していた。

「本当にこれで良かったのか?」

 何かを取りこぼしたような気持ちに陥り、キリトは今後について少しだけ不安を感じてしまう。元々が自身の命に関わるマイナスな理由から、アンダーワールドに転移したことを知ったキリトは、その可能性が潰れたことには安堵している。だがもし仮にアンダーワールド内でもSAOやALOのようなトラブルや緊急事態が起きて、ユージオやアリス、はたまたその世界で仲を深めるはずだった相手が危険に晒されたとしたら……未来が変わったことで彼らの運命すら変わることに一種の申し訳なさを感じていたのだ。

 少し考えすぎな面もあるが、それでも自分だけが助かることに、彼は自責を感じてしまう。と一人で思いついた時だった。

「何しけたツラしてんだよ」

「ん? 銀さんか」

 同じく外に出てきた銀時が、キリトに声をかけてくる。彼は落ち着いた表情のまま、キリトに牛乳瓶タイプのいちご牛乳を手渡してきた。

「ほら、飲めよ。こういう時はいちご牛乳飲んですっきりしろ。思いつめているみたいだったからよ」

「あ、ありがとう。というか、なんでいちご牛乳?」

「俺が飲みたかっただけだ」

「そんなストレートに言わなくても」

 何らかの意図があっていちご牛乳を勧めてきたと思いきや、特に深い理由は無く銀時にツッコミを入れるキリト。それでも気を遣ってくれた銀時には、密かに感謝している。

 しっとりとした雰囲気のまま、いちご牛乳を飲んで夜空を眺める二人。互いに呼吸を整えながら、会話を再開していく。

「銀さん。俺知ってしまったんだ……未来のことを」

「未来? あのジョニーって野郎から聞かされたのか?」

「あぁ。アイツによると、本来の未来で俺は毒を打たれて、生死を彷徨うらしいんだ。そこで治療の為に、自分が意識しないままに、アンダーワールドという世界に転移して……この二人と出会うんだ」

「これって……源外のカメラで撮った写真か」

「恐らくはジョニーの運命が変わったことで、この未来に行きつくことは無いと思う。だが俺は本当にこのままで良かったのか不安に思うんだ……」

 キリトは自分が抱え込んでいた不安を、銀時へ全て打ち明けていた。ジョニーこと金本から聞かされた本来の世界線の出来事、写真に写っているユージオとアリスについて。今まで自分が経験したことも無いむず痒さを、ありのままに銀時へと話していく。

 落ち込んだような表情で思いつめるキリトに、銀時はフッと笑いながらアドバイスを加えていた。

「そう考え詰めるなよ。要するに未来が変わったら、この二人とも永遠に会えなくなるかもって不安を覚えているだけだろ?」

「それはそうだけど……」

「会えるさ、未来が変わっても。アンダーワールドだがワンダーワールドに、そいつらがいるなら自分から会いに行けば良いじゃんかよ。まぁ、そうしなくても、必然と会える気がすると思うけどな。マイナスじゃなくプラスな理由で」

「銀さん……」

 銀時は本質を突くような答えをキリトに返している。例えどんなに未来が変わろうと、行動次第でその未来に近づくような出来事が起きると彼は考えていたのだ。無論毒で撃たれるなどのマイナスな出来事がきっかけでは無く、もっと前向きでプラスな出会い方もあると彼は信じているが。

 銀時なりの解釈に、キリトも徐々に理解を示している。

「そうだよな。気になるなら、自分から会いに行けよって話だよな」

「そうそう。それで困ったら俺達に相談しとけよ。どんな手を使ってでも、探し出すからよ」

「銀さんが手伝ってくれるなら、こっちとしても有難いよ」

 快く協力を持ちかけてくる銀時に、キリトも安心感を覚えていた。アンダーワールド並びにユージオとアリスの件は、サイコギルドの一件が全て解決してから考えようと内心で想いを整えていく。今の彼には心強い仲間と愉快で頼りになる知り合いがいると、キリトは改めて思い知っていた。

 そう二人で飾らない会話を交わしていく中、キリトは銀時に今まで隠していたあることを伝えていく。

「なぁ、銀さん。今まで黙っていたことがあるんだけど」

「なんだよ? って、まさか……とうとう孕ませたのか!?」

「ブッ!? い、いきなり何言いだすんだよ!? そういう話じゃないから!!」

「えっ、違うの? てっきり養育費が必要になるから、保険とか消費者金融が必要かと……」

「生々しい話をするな! というか、そういう話じゃないから!!」

 銀時の先走った思い違いを聞き、キリトは思わずいちご牛乳を噴出していた。彼にとっても銀時の反応は想定外で、次々と誤解を広げる銀時にキリトは新八ばりの強めのツッコミを繰り出す。明らかに話が本筋から大きく逸れてしまう。

「えっと……俺が言いたかったのは、夢の世界の時の話だよ」

「夢の世界って……千佐の一件の時か」

 話題を戻して、キリトは覚悟を決めて銀時に自身の体験したあの件について話していく。

「あぁ。俺が一時霧の中に迷い込んで、ある人と出会ったんだ。松下村塾の吉田松陽って先生に」

「えっ……」

 その名前を聞いた瞬間に、銀時の表情は一変してしまう。彼が話題に挙げたのは、自身が夢の世界で出会った男性、吉田松陽について。銀時は唖然とした表情で、キリトの話に聞き入っている。

「俺が別の世界の自分との向き合い方に悩んでいた時、たまたま松陽先生と出会ったんだ。先生は人の持つ弱さは抗って変えられる。誰でも強くなれることを俺に教えてくれたんだ。もしかして……銀さんの先生だったのか?」

 そう。キリトはクロスギーツと対峙する銀時の言い放った言葉から、銀時と松陽の繋がりを悟っていたのだ。真剣な表情で自分の思ったことを言い放つと、銀時はフッと笑いながらキリトへ返答していく。

「……そうだな。先生はいわば俺の親代わりだったんだよ」

「親代わり?」

「言ってなかったか? 俺、親いねぇんだよ」

「えっ……」

「物心ついた時には戦場にいて、生きる意味も分からないままのうのうと生きていた。そんな俺を拾って、学も剣も生きる意味も教えてくれたのが、松陽先生だったんだ」

 思ってもいなかった銀時の過去を聞き、今度はキリトが唖然とした表情を浮かべていた。明かされたのは銀時の幼きの日の生い立ち。いわば孤児として生きてきた銀時に松陽が手を差し伸べて、その彼の元で育てられたのだ。

「そうだったんだ……」

「どうした? そんなに衝撃的だったか?」

「いや、俺も本当の親のことよく分からないから……まさか銀さんと同じとも思わなくて」

「あぁ、そういうことか……」

 キリトにとっても衝撃的で、彼自身も銀時との意外な共通点を感じている。彼の言う通りに自身も養子として親族に引き取られており、本当の両親は既に他界していた。故に自身が子供の時に感じていた孤独や違和感を、きっと銀時も同じように体験していると察する。

 なお銀時も空気を読んでか、キリトにあまり詳しいことは深掘りしなかった。そのまま彼は松陽の話を続けていく。

「先生は俺なんかよりも遥か上の存在だったんだ。簡単に勝たせてくれないわ、理不尽な修行はするわ。それでも俺にとっては、かけがえのない大切な人だったんだよ……」

「銀さん……」

 銀時の語った松陽との思い出は、キリトにとっても深く共感していた。夢の世界の性格通りなら、優しくて信念を貫く人柄と思っており、銀時に慕われるのも納得の聖人と理解を示している。

 そんな松陽との思い出を語る銀時は、最後にキリトへ対し、ある気になっていたことを聞いていた。

「なぁ、キリト。夢の中の松陽先生は、元気だったか?」

「あぁ。見ず知らずの俺を道場に入れてくれて、また来てくれと言われたよ。優しくて頼りになる大人だったよ」

「そうかい。それが聞けただけで俺は十分だよ」

 多くを語らないまま質問を打ち切った銀時だったが、キリトは内心で彼の質問の意図を見抜いている。

(あの反応は恐らく……もう松陽先生は)

 本人に聞かなくても理解していたのだ。松陽先生が既に亡くなっていることを。彼と出会ってから自分の生い立ちや過去のことをじっくりと話したのはこれが初めてのことであり、自分から話さなかったのも何か事情があると思っている。辛い過去があるから。その一点でキリトは空気を読み、これ以上の詮索はよしていた。むしろ松陽と銀時の関係性を知れただけで、キリトにとっては十分だったのである。

 すると彼に続いて、銀時もキリトに隠していたあることを打ち明かしていた。

「あっ。そうだ。俺も夢の世界で会った奴いるわ。茅場昌彦って知ってるか?」

「茅場……えっ!? 銀さん、あの人と会ったのか!?」

「って、そんな驚くことか?」

 キリトと同じく夢の世界で出会った科学者、茅場昌彦について触れている。キリトにとっても想定外の秘密を聞かされて、大きく驚嘆としていた。

「いや、俺もそこまで会ったことのない人だったから……どんな感じだったんだ?」

「どんなって、変人で堅物のジブリ大好きおじさんって印象しか残ってねぇよ。ただ別の世界のことには異様に聞いてきたから、本当は仮想世界を作るより、別の世界に行きたかっただけじゃねぇの?」

「どういう覚え方……?」

 思わず茅場の印象について聞いてみるも、銀時からの評価は散々である。むしろどんな話を交わしたのか、少なからず気になるばかりであった。

(茅場昌彦……銀さんとも会っていたのか。でも夢の世界だから、流石に本人では無いはずだよな)

 そんな中でキリトは内心にて、銀時の出会った茅場がむしろ本人では無いか、密かに疑ってしまう。SAOという最悪のデスゲームを作り出し、多くの人間の運命を狂わせた茅場の現在は行方が分からず、一応は自害して死亡扱いされているものの、仮想世界内での生存が疑われている状況なのだ。茅場ならば本人であっても可笑しくない。かつて彼と死闘を繰り広げたキリトだからこそ分かる直感に、本人自身は苛まれてしまう。

 すると銀時は、あることを頭に浮かばせていた。

「あっ、そうだ。茅場の声を聴いた時、妙にむず痒くなってよ。なんか松陽先生と声が似ているような気がしてな」

「えっ……? 銀さんもなのか。俺も松陽先生と会った時に、茅場と同じような声をしていると思っていたよ」

「マジか。お前も思っていたのかよ」

「印象はまるで違うけど、頭にちらついていて」

 そう。二人揃って、松陽と茅場の声に既視感を覚えている。共に自分の会った異なる相手を思い浮かばせており、両者共に同じような感想を発していた。これには互いに大きく共感し、思わず可笑しさを感じて笑ってしまう。松陽と茅場。似て非なる者同士に、二人は意外なシンパシーを感じ取っていた。

 とお互いに隠していたことを打ち明かし、二人はホッと一段落している。引き続き夜空を眺めながら、二人は屈託のない話を続けていく。

「そういえば、もうお前らがこの世界に来てから四か月になるのか」

「もう十一月だから、多分そのくらいかな」

 先ほど昔のことを振り返るうちに、銀時はキリト達からこの世界に来てから随分と時が経ったことを思い起こしていた。季節は夏から秋へ。気温が移り変わる中で、サイコギルドに関する情報を見つけられたことを、二人は幸運に思っていた。

「どうだよ。ホームシックになってないか?」

「俺達は大丈夫だよ。時折戻りたい時もあるけど、SAOでログアウト出来ない状況と比べたら全然マシだよ。銀さん達もついているし」

「ならよかったよ。根拠はねぇが、きっともうすぐ戻れるよ。サイコギルドの尻尾を掴んで、ついでに賠償金をふんだくってやるよ」

「って、裁判じゃあるまいし」

 密かにキリトへ気遣いしつつ、冗談を言って場を和ませる銀時。そんな彼に頼り甲斐を感じて、今もなお強固な信頼を寄せるキリト。長い時を過ごすうちに、二人はより強い信頼関係を築いていたのだ。

 そんな中でキリトは、ある想いを銀時に打ち明かしていく。

「なぁ、銀さん。ちょっとした願望を伝えて良いか?」

「願望? 万事屋の依頼ってことか?」

「そう受け取ってもらうと有難いよ。俺は……もし元の世界へ戻っても、銀さん達のいる世界を行き来したいんだ。このままどうなるのか分からないけど、ずっと離れ離れなんて嫌だと思っている。この世界は俺達にとって、もう一つの大切な居場所だから……!」

 彼はしっかりとした口調で、自身の望む未来の姿を銀時に話している。長い時をこの世界で過ごしたからこそ、元の世界へ帰っても交流を続けたいと思うようになったのだ。定期的に万事屋の仕事を手伝ったり、真選組や桂一派、妙らとも交流を続けていきたいとキリト自身は思っている。そしてそれは、キリトのみならずアスナやユイ、クラインら仲間達も共通の認識と彼は自覚していた。長い時間をこの銀魂の世界で過ごすうちに、この世界も大切な居場所と彼は確信している。

「だからもし可能なら、二つの世界を結ぶ手段も並行して考えていきたいんだ。その為ならなんだって協力する。それが……今の俺が持つ大切な願いだ」

 確証の無いことだろうと、大切な想いを全て銀時にぶつけたキリト。そんな彼の話を聞くと、銀時は優しそうな表情を浮かべてキリトに返答していた。

「その依頼、もう既に受け取っているよ」

「えっ?」

 聞かされたのは想定外の一言。思わず驚いた表情を浮かべるキリトに、銀時はその訳を打ち明かしていく。

「ユイからよ、前に言われたんだ。元の世界へ戻っても、この世界を行き来する方法を探してほしいって。だから今もなお、その依頼の為に情報を集めているところだよ」

「ユイが? いつの間に……」

「ちょうどお前と入れ替わった時に言われてな。アイツも同じ想いだったよ」

 どうやら自分が知らないうちに、ユイが密かに銀時へ同じような依頼を話しており、既に情報を集めているところだという。依頼が被ったことに驚きを示したものの、むしろ自分と同じ願いを持つ者がいて、キリトは内心で安堵していた。

 そんな彼に、銀時も正直な想いを明かしていく。

「俺もお前らと永遠の別れなんざ、ごめん被ると思っているよ。万事屋の貴重な稼ぎ頭を失うわけにはいかないからな」

「って、銀さん。そんなこと言って、本当は元の世界へ戻ったらただ寂しいからじゃないの」

「甘いな。それは新八と神楽が思っていることだ。大人の銀さんはそんなこと割り切っているよ」

 あまりにも正直な一言に、キリトは思わず笑ってツッコミを入れている。強がりと言われても動揺しない素振りをした銀時だったが、キリトは内心で察していた。彼も別れることには抵抗心があることに。その想いが面と向かって露わになるのも、本当に別れの時が訪れた時だと。長い時を過ごすうちに、銀時の性格を彼は薄っすらと察していたのだ。

 そんな二人の腹を割った率直な会話が続いていく中で、銀時はふとある気配を察する。

「おい。そろそろ出てきたらどうなんだ、お前ら」

「えっ?」

 そう後ろにある戸に向かって話すと、戸が開きそこから新八、アスナ、神楽、ユイら他の万事屋メンバーが、皆申し訳なさそうな表情を浮かべながら姿を見せていた。

「み、みんな!? いたのか?」

「いやゃ~キリトさんと銀さんの話が長いんで、少し気になって」

「でも、さっき来たばかりですので、大まかには盗み聞きしていないですよ!」

 思わぬ乱入者につい困惑するキリト。どうやら新八やユイ曰く、ちょうど数分前に来たばかりであり、全ての会話を聞いていたわけではないらしい。

「それはそうと銀さん。キリト君に変なこと、教えてないわよね?」

「キッリ―! こいつはただれた恋愛しかしていないダメ男だから、参考にしちゃダメアルよ!」

「お前らはどんだけ警戒しているんだよ。言うわけないだろ、そんなこと」

 一方でアスナや神楽は、銀時がキリトに変な入れ知恵を入れていないか、かなり心配していた。銀時本人が否定しようとも、二人は依然として疑いをかけるばかりである。

 仲間達の登場により、真面目な雰囲気が一変。緩くも温かみのある雰囲気へと変わり、キリトは再度万事屋の温かさを噛み締めていた。

「フッ……やっぱり万事屋はこうでないとな」

 改めて自分が銀時達とこの世界で出会い、万事屋の一員として入れたことを誇りに思っている。きっと彼らとなら、自分の願いも叶えられるとそう強くキリトは感じていたのだ。

「ん? どうしたんですか、パパ?」

「いいや、なんでもないよ。なぁ折角だし、みんなでいちご牛乳飲まないか?」

「おっ、良いじゃないか。いちご牛乳を飲みながら夜空を見る。真のいちごギュウニャーなら当たり前の行事だろ」

「ていうか、いちごギュウニャーって何なの?」

「キリトさん、銀さんの何に影響されたんですか?」

「ワフ~?」

「あっ、定春はダメネ! いちご牛乳飲んだら、メガシンカしちゃうアルよ」

 騒ぎを聞きつけて定春も駆けつけるものの、神楽からは口酸っぱく止められている。定春の特性上、いちご牛乳はご法度であり、念入りに彼へ注意していた。

 銀時とキリトのしっとりとした会話はいつの間にか中断され、今は万事屋の全員のワチャワチャした雰囲気で、皆が好き放題話している。いつか来る別れにも恐れず、新たな手段でまったく新しい道を彼らは突き進もうとしていた。

 

 これからも万事屋もサイコギルドの謎や行方、二つの世界を繋ぐ方法を探しつつも、一癖も二癖もある日常に身を投じていくのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして……同じ時間帯、他の仲間達もそれぞれのひと時を過ごしていた。

「か、桂さん……」

「分かっているさ。よく自分の想いをぶつけられたな。流石は俺が見込んだ侍だ」

 店内にあるカウンターに座りながら、しっとりと話すクラインと桂。

 彼らは今桂の知り合いの店であるラーメン屋北斗心軒におり、ささやかながらそこで互いの心労を労っていたのだ。

 なお、テーブル席にはひょっこりと、二人の様子を見守るエリザベスが座っている。

「クライン殿よ、覚えているか。この場所でお前は攘夷の道に行くと決め、今日に至るまで真の侍道を歩んできたのではないか」

「あぁ、そうだな。今でもあの選択肢に後悔は無いと思っているぜ」

「その言葉だけで十分だ。見違えるくらい立派な攘夷志士になったな」

「か、桂さん……!」

 桂はクラインと初めて出会ったことを思い出しながら、彼の侍として成長ぶりを褒め称えていた。数か月前、クラインがこの世界へ初めて転移した時、岡っ引きに捕まりそうになったところを桂が救出。この北斗心軒で彼の事情を聞き入れて、攘夷党に加入したことをクラインは今もなおその出来事を胸に刻んでいた。その上で彼と出会って良かったと心の底から思っている。桂のおかげで、より強い自分が目指す侍像に近づけたと。薄っすらと涙を浮かべるクラインに対して、桂はスッと彼にハンカチを差し出していた。クラインはハンカチを受け取り、しばらく涙を拭っている。

「エイジにも、俺の想いを伝えられたからよ……」

「分かっている。そう感極まるな」

 クライン自身もまた、己の力のみで過去の因縁に蹴りを付けられたことを誇らしく思っていた。形は違えとエイジに自分の強さを認められたことが、よっぽど嬉しい様子である。無論それは桂も同じように感じていたのだ。

 一方でエリザベスの元には、事前に注文したラーメンが届けられていた。

「はい、お待ち。ったく、もうすぐ店閉めるから、注文すらさっさとしな!」

 ラーメンを届けたついでに、店の店主である幾松が、桂らに注文を催促していく。毎度のこと閉店ギリギリで入店する桂達に怒りを覚え、感動的な場面でもお構いなしである。最も遠慮なんていらないと最初に出会った時から彼女は思っていたが。

「うむ。そうだな。俺はかけそばを頼む。クライン殿は?」

「俺は……俺もかけそばで!」

「はいはい。ちょっと待ってな」

 二人は揃ってかけそばを注文し、それを聞いた幾松は急いで厨房に戻る。面倒見の良い幾松を傍から見て、エリザベスは内心でこう思っていた。

[お母さんかな?]

 本人にはバレないように、プラカードを掲げて自身の想いを吐露していく。このやり取りはきっとこれから何度も続くと、彼は内心で思っていた。

「よし! 明日からまた攘夷活動だ! 並行してサイコギルドの情報収集も行うぞ!」

「おー! やってやるぜ!」

 締めに二人は、勢いよく意気込みを発していく。共により強い侍になれることを信じて。同時にサイコギルドの手がかりも見つけ出すと誓っていた。

[うるさい奴らめ]

「夜も遅いから静かにしろ」

 あまりの声の大きさに、エリザベスはプラカードを掲げながら、幾松はボソッと小言を呟いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「源外様。大丈夫でしょうか?」

「あぁ、平気だ。心配は無用だぞ、たま」

 一方でこちらは、源外の住処であるからくり堂。彼は今トランシーバーを介して、たまと通話していた。エイジより預かったリミテッドゼロワンドライバー、ナイトプログライズキー、シンガープログライズキーを解析しており、彼と約束したユナの復旧の為に、今自分が出来ることに尽力を尽くしていたのだ。

「もしかしたらお前さんのデータも借りるかもしれん。素体の目途が立ったら、回収なりに買い物に向かわせたいが良いか?」

「了解しました。私で良ければ幾らでも力になります。源外様も無理をなさらずに」

「おうよ。分かっておるわい」

 そうたまと約束ごとを交わして、源外は通話を切っている。早くもデータ復旧後のプランを練っており、たま同様にユナの素体となるパーツもちらほらと候補を頭に思い浮かばせていたのだ。

「さてと、続けるか」

 と彼はカラクリ型の携帯デバイスを操作して、二種のプログライズキーの解析を続けている。未知なるテクノロジーにも臆することなく、残っているかもしれない希望を必死に模索していく。

 そう解析を続けていた時であった。

「ん? なんだこれは?」

 携帯デバイスに表示されたのは、鍵の柄が付いたファイル。調べてもこのファイルのみ不自然に存在しており、彼は何のためらいも無くそのファイルを開いていた。

「こ、これは……」

 そしてデバイスに表示されたのは、彼にとって想定外のデータである。果たして彼が目にしたものとは……

 

 

 

 

 

 

 

 一方で次郎長、平子と放浪の旅に出ることになったエイジは、空川町を離れて早くも隣町のある集落に到着していた。

「おらよ、あんちゃん」

「あぁ、ありがとう」

 その集落にある一件の酒場を訪れて、三人は一本の日本酒を購入。それをおちょこに注ぎ込み、月夜を見ながら物思いに更けていた。

「次郎長さん。改めて僕を旅に誘ってくれてありがとうございます」

「そうかしこまるな。旅は道連れ世は情けと言うだろ。お前さんを見ていると放っておけなくてな。愚痴ならいくらでも聞いてやるからよ」

「いや、滅相も無い……」

 年上であり親子での旅路の動向に少し遠慮を感じていたエイジだったが、彼の懐の深さを知って一安心している。強面だが面倒見のある芯のある大人だと彼は感じていた。

 一方で平子の方はと言うと、

「ふぃ~。じろちょん酔っちゃいました~」

「ふっ、まったくしょうがないな~」

早くも酔いが回っている。酔ったついでに次郎長の膝枕に身を寄せて、彼へ存分に甘えまくっていた。

「娘さん……お酒に弱いなんですか?」

「何ィ、いつものことだ。気にするな」

 満更でも無さそうな表情を浮かべる次郎長に、やや気を遣ってしまうエイジ。親馬鹿なのは薄々と感じていたが、まさかここまで筋金入りなのは想定していなかった様子である。

 そう平子が甘えている間に、次郎長はエイジにある問いかけをしていた。

「ところであんちゃん。あんちゃんの思い描く強さってなんだ?」

「強さか……」

 強さの意味について聞かれると、エイジはしっかりとした口調で次郎長へ返答する。

「大切な人を守る為に全力を注ぐこと。愛って奴かな……」

「愛か。良い心構えじゃねぇか。だったらもっと、お前さんが強くなれると思うぞ」

 エイジなりの解釈に、次郎長は概ね納得していた。ユナとのやり取りを数回見てきた彼だからこそ、エイジの愛という答えにも納得している。その上で彼ならもっと強くなれると内心で悟っていた。

「明日から稽古を付けてやるか?」

「はい。お願いします」

「私も付けてやるから、覚悟しんしゃい~えいぴょん!」

「え、えいぴょん!?」

 稽古の提案を快く引き受けた後、平子は酔った勢いでエイジをえいぴょんと呼んでいる。恐らくはじろちょんと同じニュアンスで発した様子だが、妙に語呂が良いせいか次郎長も語感でそのあだ名を気に入っていた。

「良いあだ名じゃないか。俺もそう呼ぶか」

「いや、普通にあんちゃんの方で良い気が……」

「えいぴょんに決定です~! 異論は認めませんよ~」

「ちょ、ちょっと、平子さん?」

 次郎長や平子の親子のペースに乗せられてしまい、エイジは訂正できぬまま勝手にあだ名を決められてしまう。自分自身の押しが弱いことに後悔を覚えるも、彼ら親子二人の和気あいあいとした雰囲気は悪くないと感じていた。

「まぁ、いっか」

 そう自分を納得させつつ、彼はこの世界で初めての夜を過ごすのである。

 こうしてエイジは自分自身の強さを磨く為、泥水親子の旅へ引き続き同行するのだった。ユナにまた再会出来る希望を信じながら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その一方で……地球より遠く離れた地、GGO星にて別の世界からの来訪者が降り立っていた。

「ここは?」

「お前のいた世界とは違う世界だ。お前が過去にいた仮想世界? って場所に似ているらしいな」

 辺り一面を高層ビルに囲まれていた小さな裏路地から、二人の男性がこの地に降り立っている。

 一人は暗みのかかった茶髪の男性で、体型は細身。服装は囚人が着るような簡素な服装を着ており、妙に声色も張りが無く掠れている。

 一方でもう一人の男性は、人間というよりも怪人の出で立ちだった。黒と赤色の禍々しいデザインで、頭部には大きな角が二本生えている。さまがら鬼のような風貌であった。

 無論二人はこの世界の住人でない。実は彼らも金本と同じく、サイコギルドを介してこの世界へとやって来た新たな刺客だったのだ。

「分かっているな。お前の願い通りに過去へ戻りたいなら、ネガデンライナーの修復が必要不可欠だと。その修復に必要なエネルギー源、流星の欠片はこの星にあると」

「それを根こそぎ奪うのが役目なんだよな?」

「そうだ。俺達にはサイコギルドという最高のバックアップ組織がある。そいつらの手を借りて、究極の悪の軍団。ネガタロス軍団(仮)を完成させようじゃないか」

「面白い……!!」

 怪人……いや、ネガタロスの立てた計画に、彼と契約した新川昌一は薄ら笑いを浮かべていた。

 そう。男性の正体は新川昌一。かつてSAO内で殺人ギルドラフィンコフィンの一味として活躍。その後、GGO内で死銃ことデスガンを名乗り、現実世界にいる仲間と連携して、多くの殺人に加担してきた。しかしキリトやシノンの活躍でトリックが暴かれて、とうとうSAOの現実世界で警察に確保。今もなお投獄されているはずが……サイコギルドによりこの世界へと呼び寄せられたネガタロスの力で脱獄し、この世界へと転移していたのだ。

 サイコギルドの支援を受けながら、彼らはこの星である悪だくみを企んでいる。そう意気揚々と動き出そうとした時であった。

「フッ、面白い計画だね」

「何者だ!」

 彼らの計画をある二人組が盗み聞きしている。ネガタロスに怒鳴られつつも、二人は堂々とその姿を見せていた。

「おっと。怪しいものじゃないよ。ただの銀河の荒くれ物さ」

「誰だ?」

「俺は神威。そしてこいつは阿伏兎」

「まぁ、春雨って聞けば分かるだろ?」

 自己紹介を交わしたその正体は、宇宙海賊春雨の一員である神威と阿伏兎。宇宙の星々を渡り歩きながら、数々の悪事や殺戮を繰り返す正真正銘の悪党である。二人は春雨と名乗っていたが、当然別の世界から来た二人には何の意味だがさっぱり分かっていない。

「春雨? なんだそれは?」

「お前らの組織の名前か?」

「知らないのか。珍しい奴らめ」

 唖然とした反応から、決してとぼけているわけではないと神威達は察している。その上でネガタロスと昌一に再度話しかけていた。

「まぁ、そんなところはどうでもいいや。ねぇ、そのネガタロス軍団って組織に、俺達も混ぜてくれないかな?」

「ほぉー。どういうつもりだ?」

「用心棒として引き受ける提案だよ。俺は強い奴を求めていてね。アンタ達と一緒にいたら、新たな修羅が味わえると思っているんだよ……! 血の匂い。それこそが俺の求める修羅。契約とかネガデンライナーとかそんなのはどうでも良いから、強い奴と戦えるならなんだっていいのさ」

 神威は時折笑みを浮かべながら、ネガタロス達に用心棒としての加入を提案する。彼の説明通り、神威自身にネガタロスや昌一の計画は一切興味が無く、ただ強い奴と戦えるという予感だけで、ネガタロス軍団に対し興味を募らせていたのだ。

 彼の気まぐれであり戦闘狂な一面を目の当たりにして、ネガタロス、昌一の二人は緊張感を持って彼に警戒している。

「アンタも同じか?」

「いいや。団長の憂さ晴らしに付き合わされているだけさ。逆らってもロクな目に遭わないからねぇ……」

 ついて来ていた阿伏兎にも聞くも、彼は神威ほど前のめりになっていない。むしろ神威の提案を面倒に感じているものの、主従関係のせいか簡単に逆らえずにいたのだ。ネガタロスも彼の真意を察していく。

 その上で二人は、神威の提案を前向きに考えていた。

「面白そうなやつだな。昌一、こいつらを仲間に引き入れるか?」

「あぁ、俺も賛成する。退屈はしなさそうだからな……」

 彼らはすんなりと神威と阿伏兎を仲間に率いることに決める。決して自分達の邪魔をしないという予感から、二人の加入を快く歓迎していた。

「ありがとう。それにしても、君も見た感じ修羅を求めているんだね。俺と同類か」

「そうかもしれないな。神威!」

 早々に神威は昌一に話しかけて、彼の本性を見抜いている。自分と同じく戦いに飢えた獣と称しており、ただならぬ力の渇望を感じ取っていた。

 一方で昌一も神威を見て、歴戦の猛者と思っている。自分と同じ人殺しの目だと、内心で感じ取っていたのだ。

 そんな昌一と神威の互いの生き方に共感するようなやり取りを見て、阿伏兎は密かに恐れを感じていく。

「まったく。団長と似た奴がいるとは、こりゃ余計に手がかかるねぇ」

 昌一を神威同様の問題児と括って、自分にも飛び火しないか憤りを彼は覚えていた。

 その一方でネガタロスは阿伏兎の声を聴き、妙な違和感を抱え込んでいく。

「ん? どうした、お前さん?」

「いや、お前の声を聴いていると、嫌な思い出が蘇ってきてな」

「はぁ? どういうことだ?」

「詳しくは聞くな」

 自分でも分からない妙な震えに、ネガタロス自身も理解できずにいる。阿伏兎の声がかつて戦った緑色の仮面ライダーの相棒と声が似ているかららしいが……当の本人はまったく気付いていなかった。

 と早くも新たな仲間を加えたところで、ネガタロスは組織の結成を高らかに宣言する。

「気を取り直して始めようじゃないか。ネガタロス軍団が歩む覇道を!」

「俺の願い通り……過去へ戻って、一からやり直してやる!!」

「ハハ。どんな修羅が待っているんだろうね?」

「知るか。団長のお目にかかる相手と出会えることを願うばかりだよ」

 二人はネガデンライナーを修復し、過去の時間軸へと逃げる為。またもう二人は新たな強い強敵と戦う為。異なる願い持つ二組が、新たな組織として同盟を結ぶことになった。

 銃と鉄の星GGO星で、今流星の欠片を巡る事件が勃発しようとしていた……!!




 はい。改めて今回の長篇は如何だったでしょうか? 長篇の名の通り、刀と唱の物語だったと思っております。
 今回この物語を製作するに当たって、キャラを登場させた以上はそれ相応の活躍をする。そんな意識を持って、登場キャラをかなり絞って構成を練っておりました。
 その中でも大いに目立ったのはエイジとユナ。ダークライダーの力を手にしたエイジを止める仮初の姿(ヒューマギア)のユナは、ある意味で映画版のオマージュでもありました。ただし本編と異なるのは、自分自身の力を持って立ち上がる点。そのカタルシスがあったからこそ、エイジは仮面ライダーノーチラスへと覚醒したのではないでしょうか。源外と紡いだ絆や、次郎長への弟子入りなど、銀魂とコラボしているからこその繋がりも一層大事にしておりました。他にも万事屋と金本の前面衝突、桂とアンカーのやり取りなどバトルシーンも充実している点も良かったところだと思います。

 そして今回のお話では、キリトが吉田松陽のことを。銀時が茅場昌彦のことを知ることになります。共に立場の異なる師でありながら、主人公に大きな影響を与えたCV山寺宏一の最重要人物。声が似ているという点はまぁ……お察しください。
 そんな中で二人は、例え元の世界へ戻ったとしても、二つの世界を行き来する未来線を選ぶことになります。長い時を過ごすうちに、別れを惜しむようになった変化点ですね。実は当初の予定では物語の最終局面でそう決断する予定でしたが、諸々の変更があり今回の話へ前倒しとなりました。果たして万事屋全員の願い通りに未来が進むのでしょうか。

 さらには以前投稿した次回長篇の予告に登場した新川晶一とネガタロスが銀魂の世界へ転移。ここでさり気なく新川晶一が、SAOの本来の世界線から来た人物だと判明します。つまりはネガタロスにより脱獄したと言うことです。さらには神威や阿伏兎も首を突っ込み、より大きな事態へと発展致します。この続きは次なる長篇、架創決戦篇にてお楽しみください。

 ということで、ここまで刀唱時代篇をご覧頂きありがとうございました!
 ハーメルンの方では一旦投稿が休止となりますが、どこかのタイミングでピクシブで投稿した小ネタ集をまとめて投稿する予定です。次回の日常回までしばしお待ちください。







次回予告

シリカ「月姉の忘れ物ですか?」

月詠「中々見つからなくてな。みんなの一日を振り返ってもらえるか?」

リーファ「分かったわ」

リズベット「何かヒントが見つかるかもしれないからね」

シノン「次回! 灯台下暗しって、言われる前に気付こう!」
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