それはALO星にて起きた出来事。この日、騎士団の一チームであるスリーピング・ナイツの六人は、シルフ領に潜伏していたある人物を追っていた。
その人物の名は令貴。マッドネバーの構成員で、密かにダークライダーのベルトを強奪した所謂残党の一人である。夜兎、辰羅に続く、宇宙最強戦闘民族の一つ、荼吉尼族出身の天人で、緑色の体色と大きな体格を備える鬼のような種族だ。その特徴的な容姿故に、密かに身を隠しながら逃亡を続けていたが、ユウキらの聞き込みによりようやく行方が発覚。
今はシルフ領を抜け出した令貴を追いかけて、アルンまでの通り道にある大きな木の立つ広場にて彼を追い詰めていた。
「見つけたよ! マッドネバーの残党、令貴!」
「もう逃げられないぞ!」
「さっさと捕まりなさい!」
令貴に対し、降伏を促すユウキ、ジュン、シウネーの三人。他の面々も皆武器を構えており、臨戦態勢を整えている。相手は宇宙三大傭兵部族の一角。その実力も重々に承知しているからこそ、皆警戒に当たっていた。
一方で追い詰められた令貴は、最後の一手に出ている。
「クソ……ならば!」
すると彼は、強奪したダークライダーのベルトを腰に巻く。目玉のようなアイテムである眼魂をベルトに装填し、強制的に変身しようとしていた。
〈バッチリミナ~! バッチリミナ~!〉
「まさか変身する気!?」
「させませんよ!」
咄嗟に変身のプロセスに気付いたノリとテッチは、その変身を妨害しようと強襲を懸けようとするが、
「ハァ!」
「うわぁ!?」
「きゃ!?」
「お二方!?」
ベルトから出てきた浮遊する黒色のパーカーに妨害を阻止されてしまう。パーカーの体当たり攻撃を受けて、テッチとノリは強制的に怯まされている。そこに心配したタルケンらが話しかけてきた。
その間に、令貴の変身が完了してしまう。
〈開眼! ダークライダー! 闇の力! 悪い奴ら!!〉
宙を浮いていたパーカーが令貴に被さり、特殊なスーツを形成していく。全身を特徴的な紋章で覆われたスーツで、胸部には目玉のようなマークが刻まれている。恐ろしそうな顔面も白黒の仮面で覆われたが、令貴とはタイプの違う怖そうな見た目の仮面が装着された。
そう。彼はダークライダーの一人であるダークゴーストへと変身したのである。
「やっぱりダークライダーの力を持っていたのか!」
「その通り。この力で俺はマッドネバーを復興させてやる!」
「そんなこと……させませんよ!」
ダークゴーストに変身したことで調子づく令貴。意気揚々と自らの野望を語り、ユウキらを不必要に刺激していた。そんな彼の舐め腐った態度に憤慨し、シウネーらは再度武器を強く握りしめていく。絶対に令貴を打ち負かし、連行すると決意していたのだ。
「「「「「「はぁぁぁぁ!!」」」」」」
六人は容赦なく、一斉にダークゴーストへと立ち向かう。無論闇雲に戦おうとはせず、独自のフォーメーションを立てながら、戦略的に戦おうとしていた。
「さぁ、来い!」
〈ガンガンセイバー!〉
一方でダークゴーストも、ベルトから片手剣型の武器であるガンガンセイバーを取り出して構える。真っ向からスリーピング・ナイツを相手取ろうとしていた。
「「ハァ!!」」
最初にユウキとジュンが、連続してダークゴーストへ斬りかかる。刀剣と大剣。二人の息の合った剣術のコンビネーションに押されていき、余裕のあったダークゴーストも徐々に二人の斬撃を受け始めるようになってしまう。
「おのれ、なら!」
するとダークゴーストはベルトを操作し、とっておきの必殺技を披露していた。
〈ダイカイガン! ダークライダー! オオメダマ!〉
「はぁぁ!!」
彼が両手を腕に掲げていると、エネルギーで出来た巨大なアイコンが出現する。それを力づくで持ち上げて、ユウキやジュンらに撃ち落とそうとしていた。
「回避!」
「了解!」
ユウキの的確な指示で、ジュンもアイコンから遠ざかろうとする。早々に防ぎきれないと判断した様子だった。
無論アイコンは誰にも当たることなく爆散。周囲に爆風を起こすだけの結果で終わる。
「はぁぁぁ!」
「おりゃぁぁ!!」
「何!? はぁ!?」
その爆風の中からユウキとジュンが果敢に潜り抜けて、ダークゴーストへ向けて渾身の一刀を差し向けていく。不意打ちとも言える二人の戦術に、ダークゴーストは手痛いダメージを負ってしまう。
「今です!」
「そこです!」
さらに今度はシウネーとタルケンが仕掛けていく。前者の杖を使った打撃と、後者の槍を使った突き攻撃で、ダークゴーストのベルトを破壊しようとしたが、
「そうはさせるか!」
〈開眼! ノブナガ! 我の生き様! 桶狭間!〉
ここでダークゴーストは別の眼魂をベルトに装填していた。紫色の眼魂を入れると同時に同色のパーカーが襲来し、その新たなパーカーを羽織っていく。そう。ゴースト系統のライダーは偉人の力を行使することが出来、ダークゴーストは日本の戦国時代で活躍した偉大なる武将、織田信長の力をその身に宿したのだ。仮面も信長が愛用した火縄銃を模したデザインに切り替わっていく。
「パーカーが変わった!?」
「このダークライダーは、瞬時に姿を変えることが得意のようですね……!」
未知なる力を目の当たりにして、より強く警戒するタルケンとシウネー。ダークゴーストの隙を伺う中で、本人は構うことなく早速技を繰り出す。
「こいつで仕留めてやる!」
〈ダイカイガン! ノブナガ! オメガドライブ!〉
必殺技と同時にシウネーとタルケンの周りに、無数の火縄銃が出現する。信長特有の鉄砲による集団戦法をイメージし、発砲による乱射で二人の体をハチの巣のようにしようと企てていた。
「行け!」
ダークゴーストと共に放たれる無数のエネルギー状の弾丸。防ぎきることの出来ない数による攻撃に、ダークゴーストは思わず勝利を確信する。だがしかし、
「「はぁぁぁ!!」」
「なんだと!?」
二人はまったく諦めていない。シウネーが密かにかけた魔法術で、周囲の時間を少しだけ遅くし、全ての弾丸を二人揃って撃ち落としていたのだ。どちらも長物を得手としているが、それを活かして無駄のない攻撃を繰り出している。
ダークゴースト渾身の一撃が、成す術も無く敗れ去ってしまった。
「おのれ……ならば!」
〈開眼! ナポレオン! 起こせ革命! それが宿命!〉
分が悪くなったダークゴーストは、さらなるパーカーを身に纏っていく。今度はかつての革命時代で活躍したフランスの英雄、ナポレオンの力を宿したのだ。青色のパーカーを羽織って、仮面にはナポレオンの愛馬らしきデザインが刻まれている。高貴さを感じさせる王子のような出で立ちに変化していた。
「またちょこまかと変わって!」
「今度こそ仕留めますよ!」
次々と姿を変えるダークゴーストに面倒さを感じながらも、ノリとテッチが今度は接近戦を持ちかけていく。ハンマーとメイス、盾を手に、果敢に挑む二人へダークゴーストは、またも必殺技を繰り出していく。
〈ダイカイガン! ナポレオン! オメガドライブ!〉
するとダークゴーストの手にしていたガンガンセイバーに赤いエネルギー波が加わって、武器にバフ機能が加わっていた。それを利用して、ノリやテッチに真っ向から立ち向かう。
「はぁぁぁ!」
「やぁ!」
「とう!」
互いに武器を振りかざしてはギリギリで防ぐ、防戦一方の接近戦。しかし、数秒も経たないうちに、その戦況は大きく動いた。
「そこ!」
「何、ぐはぁ!?」
ノリがダークゴーストの一瞬の隙を突いて、左腹部へ勢いよく打撃を加えていく。
「はぁっぁあ!」
「くっ!」
さらにテッチも続く。自慢のメイスを振りかざして、確実な一撃をダークゴーストに与えていた。
折角の新たな力を得た令貴であるが、ユウキらスリーピング・ナイツの実力とコンビネーションの前に、成す術も無く劣勢に追い込まれてしまう。
「アンタがどんなに姿を変えたって、僕達は何度でも対応し立ち向かう! それが僕達、スリーピング・ナイツだ!」
ユウキの放った一言に、仲間達も静かに頷く。どんな手段を使おうと、この星の秩序を守るために全力を注ぐと全員が覚悟を決めていた。故に中途半端な覚悟しかない令貴ことダークゴーストに負けるはずがないと確信している。
一方で防戦一方となった令貴ことダークゴーストは、ここで最終手段に打って出ていた。
「くっ……ならば!」
彼は手にしたガンガンセイバーを勢いよく握りしめ、それを背後へ向けて振りかざしていく。するとどうだろうか。空間に謎の裂け目が出現していた。
「何アレ?」
「一体何をするつもりだ!」
嫌な予感を察して、率先してジュンがダークゴーストに問いただすと、彼はとっておきの秘策をペラペラと話し出す。
「フッ、死者の世界へと逃げるのさ。そこで新たな眼魂、ひいては新たな賛同者を見つけ、ネオマッドネバーを作り出してやる!」
「何!?」
「そんなことを……!」
その新たな計画に嫌悪感を示すテッチやシウネー。無論他の仲間達も同じ想いである。
ダークゴーストが語ったのは、ネオマッドネバー再興計画。ダークゴーストの死者の世界を行き来する能力を使って、さらなる一大勢力を築こうと目論んでいた。突然出来た謎の裂け目は、恐らく死者の世界へ繋がる入り口だと皆察していく。
「って、そんなことさせるか!」
「逃げようとしても、そうはいきませんよ!」
逃亡の恐れがあると判断し、ユウキやタルケンらは急いでダークゴーストを取り押さえようと動き出す。しかしダークゴーストとの距離はほんの僅かだけ遠く、あと一歩のところまで追いつくものの……タッチの差で間に合わない様子だった。
「あばよ、この星の騎士……」
とダークゴーストが死者の世界へ行こうとした時である。
「はぁぁぁ!!」
「えっ? ぐはぁぁ!?」
裂け目から突然、連続した斬撃が襲い掛かり、ダークゴーストはその余波で吹き飛ばされてしまう。
「えっ?」
「何が起きたの……?」
突飛な出来事に理解が追い付かないジュンやノリら。ただ一つ分かるのは、ダークゴーストが思わぬ襲撃にあって、ベルトごと破壊されたこと。さらに変身も強制的に解除されて、計画が総崩れになったことも皆理解していた。
「今の斬撃って……」
一方でユウキには、先ほどの斬撃に一種の既視感を覚えている。なぜならば、アレは自分が努力の末に作り上げた自慢の必殺技の一つだったからだ。しかし、自分と同じ技を使える相手なんているはずない。そう思っていたが……彼女の脳裏にはある可能性が思い浮かんでいた。
「……まさか!?」
「ユウキ?」
ユウキは衝動に駆られて、謎の裂け目へと近づく。もし自分の仮説通りなら、さっきの斬撃にも思い当たる節があるからだ。そう。彼女は既に斬撃を放った相手を把握している。
その正体は……
「ねぇ、待って! 君……別の世界の僕でしょ!」
別の世界に存在するユウキであった。ユウキは以前アッスーことアスナから、彼女の知っている別の世界の自分についての話を聞いており、アスナとの思い出やユウキの最期についても知っている。亡くなったことも既に把握していたので、ダークゴーストの呟いた死者の世界と自分によく似た技を使う様子から、別の世界の自分と断言したのだ。
そしてユウキは裂け目から見えた後ろ姿を見て確信する。間違いなくアスナの話していたユウキであることに。
すると彼女は後ろを向いたまま、別の世界の自分に一言だけ伝えている。
「君はまだこっちに来ちゃダメだよ。仲間と……そしてアスナとも、これからも仲良くしてやって」
「分かったよ……ありがとう、助けてくれて! 別の世界の僕!」
そうお礼を返されると、裂け目の中にいるユウキは別の世界の自分に向けてそっと微笑み、その場を跡にした。裂け目はそのまま閉じていき、元通りの空間に戻っている。
「ユウキ? 何かあったのですか?」
「うん。助けてくれた人にお礼を言っただけだよ」
「助け? 誰か裂け目の中にいたのか?」
「そりゃ、かっこいいヒーローにだよ」
「ヒーロー? って、また広い括りですね」
「きっとアタシらみたいに、強くて頼りになるヒーローなんじゃない?」
「それは言えていますね。どんな方だったのですか?」
「それはね……」
ユウキは間接的ながらも、別の世界の自分に助けられたことを、仲間達にも伝えていた。ヒーローと称しているものの、彼女自身は心の中であることを思っている。しっかりと別の世界の自分からも想いを託されたことに。この邂逅を忘れないことを決意していた。
こうして、思わぬ手助けにより、マッドネバーの残党である令貴は逮捕。彼の掲げるネオマッドネバー計画も、スリーピング・ナイツと手助けしてくれたもう一人の剣士によって、その野望は打ち砕かれたのである。