剣魂    作:トライアル

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ハーメルンの皆さん、お久しぶりです。




あらすじコーナー

新八「いやー、ようやく剣魂も再開ですか」

銀時「てか、投稿者は今の今まで何をやっていたんだよ」

神楽「きっとまた全国各地を乗り鉄していたアルよ!」

新八「まぁ、良いじゃないですか。無事に再開できて」

キリト「ん? 何やっているんだ、みんな?」

アスナ「何の話をしているの?」

銀時「おっ、ちょうど良かった。おい、お前ら。もしもよ、俺達の日常にもしキャッチコピーを付けるとしたらどうするよ?」

ユイ「キャッチコピーですか?」

銀時「そう。よくあるだろ。映画やアニメを見たくなるような謳い文句。お前らにも聞こうと思ってよ」

新八「あの、銀さん? 折角久しぶりの再開ですし、もっと別の質問をした方が良いんじゃ」

神楽「でもアッスー達は、メタネタが一切伝わらないアル。この質問が限界ギリギリネ。もしこれ以上踏み込めば、世界の禁句に触れて……」

新八「いや、元の原作者に怒られるだけだよね?」

神楽「あのインテリ厨二おじさんにアルか?」

新八「おい! SAOの原作者にとんでもないあだ名を付けているんじゃねぇよ!!」

銀時「おい、静かにしろよ。折角のキリト達の答えが聞こえねぇだろ?」

キリト「いや、そう言われても……」

アスナ「キャッチコピーなんて、そう簡単に思いつかないわよ」

ユイ「では、こんなのはどうですか!」

銀時「おっ。流石はユイだな。もう思いついたのか?」

ユイ「はいです! キャッチコピーは……なんでもアリな破天荒ライフとかどうでしょうか!」

銀時「……ほんじゃ、なんでもアリな破天荒ライフ小説、剣魂! まもなく再開するぞ!」

新八「おい、ユイちゃんの答えをまんまパクるなよ」

神楽「相も変わらず大人げないアル」

キリト「ていうか、なんでキャッチコピーの話をしていたんだ?」

アスナ「万事屋のホームページを更新する予定なの?」

新八「そういう意味じゃないんですよ、キリトさんにアスナさん……」

剣魂 秋晴の日常回篇(延長戦) 始動!


第九章 秋晴の日常回篇(延長戦)
第百四十訓 灯台下暗しって、言われる前に気付こう!


 時は秋が始まった十月のある日。何気なくいつも通りの日常を過ごしていたシリカ、リズベット、リーファ、シノンの四人。今日も手伝いや稽古などを終えて、この世界で居候している日輪の家に戻り、就寝時間までまったりと過ごしていた時のこと。四人の寝室に月詠が訪れて、ある件について聞いていた。

「かんざしですか?」

「そうじゃ。わっちが戻って来た時には無くてな。何か心当たりはないか?」

 深刻そうな表情で月詠は、探し物を見かけていないか四人に聞いている。月詠が普段から髪に結っているかんざしのスペアが、帰って来た時には無くなっており、今もなお見つかっていないとのこと。自室を探しても見つからず、日輪や晴太、そしてシリカらにも情報を求めて聞き回っているのである。

 だがしかし、四人にも心当たりが無い。

「見かけていないわよ」

「月姉の部屋にも、今日は入ってないし……」

「どっか荷物に紛れてるとかじゃない?」

 シノン、リーファ、リズベットと月詠に思ったことを返答する。共にかんざしらしきものはまったく見かけていなかった。

 有力な情報を得られず、月詠は残念そうな表情を浮かべている。

「そうか……どこにいったんじゃ」

 状況が進展できずに微かな不安を覚える月詠。そんな彼女の姿を見て、同情したシリカやシノンらはある提案を交わしていた。

「じゃ、今日一日のアタシ達の行動を振り返ってみませんか?」

「そうね。荷物に紛れているかもしれないし、何か手がかりに繋がるかもしれないし」

「えっ? 良いのか?」

「うん。快く協力するよ!」

「他ならぬ月姉の頼みだものね」

 リーファやリズベットらは、今日一日の行動を振り返り、月詠の探すかんざしの手がかりを見つけようと決める。荷物等に紛れてしまった可能性も否定できず、何よりも困っている月詠を助けたい気持ちから、協力を提案していた。

 四人のさり気ない優しさに触れて、月詠も深々と彼女らに感謝する。

「皆、ありがとうな……では、早速頼めるか?」

「もちろん! じゃアタシからね……」

 こうして寝室にて、四人は各々の回想を思い起こしていく。まずはリズベットの番である。

 

 

 

 

 

 

 場面は江戸にある一軒の鍛冶屋から始まる。店主である鍛冶職人の村田鉄子の元で、日々鍛冶の修行を続けているのがリズベットだ。

元の世界では多種多様な武器を手入れしていた彼女だが、この銀魂の世界では専ら刀しか鍛えていない。しかし、ゲームスキルのいらない本格的な鍛冶の技術力を学べるとあって、より専門的な技術をリズベットは日々磨いている。

 今日もまた依頼された刀を鍛え上げて、引き取りに来た依頼主に早速手渡していた。

「はい、どうぞ! 随分とがたが来ていたから、しっかりと鍛え直しておいたわよ」

「おう、ご苦労さん」

 刀鍛冶屋を訪れたのは、真選組の副長土方十四郎。彼は預けていた刀をリズベットから受け取り、その出来栄えを早速確認する。

「まぁ、大した出来じゃないか」

「そうでしょ! なんせ元の世界でも鍛冶屋を営んでいたんだからね! ゲームの中でだけど」

「我流か。それでも腕は確かだと思うがな」

 土方から素直に褒められると、リズベットも鼻を高くして誇らしげに振る舞っていた。普段は特に意識していないが、仮にもこの世界の警察的立場の人間から、自身の鍛冶の腕を褒められると、ちょっぴり嬉しい様子である。

 すると、鉄子も二人の会話に入ってきた。

「どうだい、土方さん。ウチの愛弟子のリズは?」

「良いんじゃねぇか。図太い女子共に鍛え上げられて、きっとトッシーも満足しているに違いねぇよ」

「ハハ。って、トッシーって誰?」

「俺の別じ……いや、話が長くなるから止めておく」

「えー! 気になるじゃないの。ねぇ、ねぇ! 誰なの?」

「そんな大層な話じゃねぇよ」

 会話の途中で出たトッシーという存在に、興味津々なリズベット。だがしかし、土方は長くなる解説が煩わしくなり、説明自体を諦めてしまう。

 そう三人で会話を交わしていた時である。

「こんにちはー。リズに鉄子さんいるかー?」

「えっ、キリト!?」

 刀鍛冶屋にまた新しいお客が訪れていた。それはリズベットにとって古くからの仲であるキリトと、彼とよく行動を共にする坂田銀時の二人である。

「ちわーす、いるか?」

「って、どうしたのよ!? 二人揃って、鍛冶屋に来るなんて」

「いや、ちょっとした頼みごとがあって」

 飛び入りで来店した二人に、驚きを示すリズベット。早速キリトらから要件を聞こうとしたところ……思わぬ因縁が勃発してしまう。

「おい、なんでテメェがいるんだよ?」

「あっ? なんだよ、大串君かよ。こんなところで会うなんて、奇遇じゃねぇか? 最近イバラキとは会ったのか?」

「うるせぇ! 会話を逸らすんじゃねぇよ! 大体なんでまた大串だよ!?」

 そう。銀時と土方の口喧嘩である。二人の仲の悪さは有名であり、キリトやリズベットら別の世界の人間達にも広く知られていた。故に二人の一触即発な雰囲気を目の当たりにすると、共に苦い表情を浮かべている。

「まーた始まったよ、二人の喧嘩」

「本当に懲りない二人だな……」

「もう一周回って、仲良しなんじゃないの?」

 折角落ち着いた雰囲気のままキリトと話したかったリズベットだが、仲の悪い大人達により台無しになってしまう。

「まぁまぁ、落ち着きなって」

 見るに耐えられない口争いに、鉄子も間に入って二人を落ち着かせる。とそのまま銀時へ要件を聞いていた。

「それで銀さん。用事ってのは?」

「そうだった。実はお前らに引き取ってほしい剣があってだな」

「剣? 刀じゃなくて」

「そう。かの有名なMDソードをお前らにプレゼントしようと思ってな」

「はぁ? なんだよ、その厨二臭い剣は?」

 聞きなれない剣の名前に、思わず聞き返してしまう土方。どうやら銀時らは、リズベットらに貴重な剣を送りたいとのこと。突飛な提案に二人は、やや怪しさを感じ取っている。

「そのMDソードって、いわくつきの剣じゃないの?」

「そういうわけじゃねぇよ。なぁ、キリト?」

「そ、そうかもな……」

「なんでキリトは目が泳いでいるのよ」

 密かに二人の真意を探るものの、堂々としている銀時に対し、キリトは少しばかり申し訳なさを漂わせていた。まるで銀時の提案に乗り気じゃない様子だが……。

「とにかく! 見てみれば分かるはずだよ。ほんじゃキリト、持ってきてくれ」

「あぁ、分かった」

 百聞は一見に如かずと、銀時は直接MDソードをリズベットらに見せようとする。彼の指示でキリトはその剣を鍛冶屋の中に入れようとしていた。

「鉄子さん。MDソードって知ってる?」

「いや、初耳だね。どこかの星で発見された未知なる剣かな……?」

 肝心の鉄子もMDソードについては把握していない。妖刀の類と思い始めるものの、リズベットはキリトの反応からある予感を察していた。

(キリトのあの反応……まさか! レア武器を手に入れたけど、銀さんのせいで手放そうとしているってこと? もしそうだとしたら、可愛そうなんだけど……)

 そう。キリトと銀時の間で意見の相違があり、表情にも違いが出ていると考えている。故に自身の仮説通りなら、キリトへ同情しようと思っていたが……話はあらぬ方向に向いてしまう。

「えっと……これです」

「って、ちょっと待って!?」

 キリトが持ってきた……いや、連れてきたのは段ボールで出来た剣だった。そのうえ、人が丸々入る着ぐるみっぽい構造になっており、見るからに武器とは程遠い風貌をしている。チープな見た目と段ボールから、薄っすらとある人物が頭をよぎったが……今はそれよりもMDソードの妙な存在感にリズベットはツッコミを入れていた。

「な、なにこれ!? 明らかに着ぐるみだよね!? 中に人が入っているよね!?」

「そんなことはねぇよ。これはMDソード。地球より遠く離れた星、MD38ダンボ星で発見された伝説の剣で、所有者を瞬く間にまるでダメなおっさんに変貌される強力な剣だ」

「強力って言うか祟りだよね!? 何一つ良いことないじゃん!?」

「いや、でも……敵に渡して、強制的にデバフされるってのはアリじゃない?」

「キリトも無理やり考えなくて良いから! こんな茶番に付き合わなくて良いから!」

 スラスラとMDソードの解説を加える銀時だが、依然としてリズベットのツッコミは収まる気配が無い。さらにキリトも微妙な表情で補足しており、余計に彼女を疲れさせていた。

「こ、これは……」

「完全に押し付けじゃねぇか」

 一方の鉄子と土方も、リズベットと同様に微妙な表情を示している。後者は完全に銀時の意図が分かり、MDソードの中に入っている人を鉄子らに押し付けるつもりであると把握していた。

「ていうか、こんな不気味な剣、はなっからお断りよ!」

「ったく、お前らは分かってないな。このMDソードは、光る! 鳴る! の子供にも大うけする武器でもあるんだぞ」

「ヒーローのおもちゃじゃ無いんだから……」

 どんなにリズベットから拒否されようとも、依然として引き下がらない銀時。売り文句を発するも、どこかで聞いたことのあるような内容でいまいち新鮮味がない。

「とりあえず百聞は一見に如かずだ。キリト、鳴らしてみろ」

「あぁ……」

 そこで銀時が実践して、MDソードを鳴らしてみることに。キリトが下にある持ち手に手を添えると、

「マダオ! ダークネス! マキシマムアタック!!」

MDソードから効果音らしき男性の声が聞こえてきた。その声質は明らかに見知ったかではあるのだが……薄っすらと三人は中の人を理解する。

「それで。この後はどうなるの?」

「そりゃ、必殺技発動だろ。ほら、キリト。頼むぞ」

「うん……」

 段々とキリトのテンションは下がっているが、銀時は無理やりにでも強引に進めようとしていた。やや場の雰囲気が微妙になり始めていたちょうどその時である。

「マダ……痛!」

「えっ? うわぁ!?」

 MDソード内にいる中の人のバランスが崩れてしまい、こけた反動で内部から破壊してしまった。そこから声の主である長谷川泰三が姿を現す。なお皆の予想通りの正体だった。

「おい、長谷川さん! 何やってんだよ。完全にバレたじゃないか!」

「いや、どう考えても無理があっただろ! 第一普通に訪れれば良かっただろ! それをなんで武器に化けなきゃいけねぇんだよ!」

「そりゃ、普通に雇ってもらうなんてむずいからだろ! どさくさに紛れて店に入れば、後はずっと安泰だろ!」

「それただ放置されているだけじゃねぇかよ!」

「落ち着けって、二人共!」

 折角の作戦がグダグダなままで終わり、口論に発展してしまう銀時と長谷川。そんな大人げない言い争いをする二人に対し、キリトは必死に宥めようとする。余りにも詰めの甘い作戦には、様子を見ていたリズベットらも苦い表情を浮かべてしまう。

「はぁーしょうがない。鉄子さん、アレ借りていい?」

「うん、良いよ」

 面倒くさいと感じつつも、リズベットは二人を落ち着かせるべくある強硬手段に出ようとしていた。壁に立てかけられた刀を手にして、鞘から抜くと刀身……ではなく、紙で出来たハリセンが飛び出している。

「おい、それって」

「こうするのよ! えい!」

「ぐはぁ!?」

「ぐへぇ!?」

 そこからやるべきことはただ一つ。ハリセンを相手にぶつけて、半強制的に口論を止めることである。実際効果はあったようで、銀時も長谷川もハリセンをぶつけられた衝撃で、思わず怯んでしまった。

「リ、リズ……」

「意外と強硬的なんだな……」

「こうでもしないと止まらなかったでしょ、あの二人はね」

 強引に口論を止めることが出来て、リズベットも鉄子も一安心した表情に変わる。対してキリトと土方は、強引なリズベットのやり方に少しだけ気を引かせていたが……。なお今もなお銀時と長谷川は痛がっている。

 こうしてリズベットはいざという時、厄介なお客も追い払うのだ。限定的ではあるが……。

 

 

 

 

 

 

「今日のアタシの一日はこんな感じね」

「って、お兄ちゃん来てたんだ」

「銀さんと一緒に変なこと付き合わされて……」

「キリトさんも断れば良かったのに」

 リズベットの話を聞き、茶々を入れ始める仲間達。キリトと偶然にも出会えたことを羨ましいと思いつつも、銀時の下らない作戦に付き合わされたことには素直に同情していた。

 だが、肝心のかんざしはまったく心当たりはない。

「でも、アタシの荷物には紛れていなかったし、鉄子さんの店にも無かったと思うけど」

「そうか。ありがとうな、リズよ」

 協力してくれたリズベットに対し感謝を伝える月詠。未だにかんざしへの進展は無いが、ひとまずは別の仲間達の回想を頼りにすることにした。

「では、次は……」

「じゃ、私から良い?」

「分かった。頼んだぞ、シノン」

「えぇ」

 次はシノンが今日一日の出来事を振り返っていく。

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、今日もパトロールに行きましょうか」

「はい!」

「行きましょう!」

 この日のシノンは当番で入っている百華の見回り業務に当たり、百華に所属する二人の女性と合流。三人体制で吉原に異常が無いかパトロールすることになっていた。

 百華は吉原の自警団として活動しており、町の見回りや不審人物の確保などその仕事は多岐に渡る。シノンら女子達も月詠の勧めで所属はしているものの、パトロールや街の手伝いなど比較的安全な仕事しか任されていない。基本は昼時の仕事のみを担当し、限られた時間の中で百華の面々との貴重なひと時を過ごすのである。

「いやぁ、やっぱりシノンさんはいつ見てもクールビューティーですね!」

「そう? そんな大層な肩書じゃないと思うけど」

「いやいや、この年齢でここまで大人の色気を放つなら、遊郭でもナンバーワンを取れますって!」

「ちょっと大げさじゃない? でも、ありがとうね」

 今日行動を共にする百華の女性陣は、シノンの大人びた雰囲気を大変気に入っており、大袈裟にも彼女のことを褒めまくっていた。シノン自身はあまりしっくり来ていないものの、二人の気持ちは素直に受け取っている。

 そんな普段通りにパトロールをこなすシノンらであったが……ふとした瞬間にある異変を察していく。

「きゃぁぁ!」

「今のって……」

「女性の悲鳴です!」

「あっちから聞こえてきましたよ!」

 何の前触れも無く聞こえてきたのは、女性の甲高い悲鳴。嫌な予感を察した三人は、急いで悲鳴が聞こえた場所まで直行する。

「ここね! 一体何が……」

 悲鳴の出所である裏路地に辿り着き、現場の状況を確認しようとしたところ……そこには衝撃的な光景が広がっていた。

「なんで絡まっちゃうのよ! 折角銀さんを閉じ込めるねばねばの糸を用意したのに!!」

 場にいたのは、粘度のある糸で地面とくっ付けられた猿飛あやめである。そう彼女はストーキングしている銀時を強制的に捕まえるべく、邪な理由で新たな忍術を編み出そうとしていたが……ものの見事に不発となり、現在のような状態となっている。

 当然一人ではどうすることも出来ずに助けが必要な状態なのだが……あやめの性格や異常性を知っているシノンらからすれば、理由を聞かずとも自業自得なのは明白であった。

「ただのストーカーだったわね」

「そうですね」

「行きましょうか」

「ちょっと待ちなさいよ、アナタ達!!」

 呆れたような表情で場を去ろうとしたところ、勢いよくあやめに止められてしまう。ひとまずは彼女の方に振り返り話を聞こうとするも、シノンらはまったく乗り気では無かった。

「ここに困っている人間がいるのよ! なんで助けないのよ!?」

「助けるも何も、自分で蒔いた種でしょ? どうせ銀さんに近づこうとして、策に溺れたんじゃないかしら?」

「ぎく……」

「やっぱり。もういい加減にストーカーは止めなさいって」

 図星を突かれてしまい、勢いがみるみるうちにすり減らされるあやめ。シノンはため息を吐いて彼女を一蹴し、百華の女性達と共にそのまま立ち去ろうとする。

「それじゃ、後は自力で頑張りなさい」

「ちょっと待って! せめて少しだけ手を……」

 慈悲を求めようとするも、もはや聞く耳すら持ってくれない。幾度もストーカー行為を繰り返すあやめには、徹底した塩対応が有効とシノンは確信していたのである。

 こうして裏路地を離れた後、またしてもまったく別の悲鳴が聞こえてきた。

「ぎゃぁっぁあ!!」

「今度はあっちからです!」

「すぐに行きましょう!」

「はい!」

 悲鳴の聞こえた正反対の方に向かい、吉原の小道を突き進んでいく三人。死角となる建物の角に辿り着くと、そこにはまたしても予想外の光景が広がっていた。

「ふ、不審者!」

「不審者ではない! カツオだ!」

「同じくクライ―ジだ!」

[ついでにエリオだ!]

 腰を抜かした町娘が指を指した方角には、三人組の男達が立っている。赤、緑、黄色とそれぞれ異なる帽子やシャツを着用し、服装はオーバーオールに手袋、大きめのブーツと、世界的に有名な配管工の格好をしていた。一見するとコスプレ集団のようにも見えるが、シノンは大方この三人の正体を察している。

「桂さん?」

「桂じゃない! カツオだ!」

「俺はクライ―ジだ!」

[そしてエリオだ!]

 この一言で全てを察していた。このコスプレ集団の正体が、桂、クライン、エリザベスの攘夷党の面々であることに。頑なに正体を明かさない桂達の意固地さに腹を立ち、シノンは咄嗟に強硬手段へと打って出ていた。

「……だったら」

 彼女は背中に装備していた弓を構えて、腰に携えていた弓矢のホルダーから一本の弓を取り出す。矢の先端に爆竹を蓄えた敵をかく乱させる弓矢を、桂達のいる地面へ向けて解き放とうとしていた。いつまでもボケを繰り返す桂達を正気にさせる手段として、容赦なく差し向けていく。

「えっ、何をしているんだ。シノン君……ぐはぁっぁあ!!」

「ぐはぁっぁあ!!」

[うわぁぁ!!]

 弓矢は地面へ着弾すると、その衝撃で小規模の爆発を繰り返す。桂、クライン、エリザベスの周りだけを爆発が襲い、手痛いダメージを与えていた。彼らが爆発の被害を受けているうちに、

「ところで何があったの?」

「いや、土管に隠れているところを私が見つけて、それで素性を聞いたら配管工としか言わなくて……」

「なるほどね。状況は分かったわ」

シノンは腰を抜かした町娘から現在の状況を聞いている。元は土管に潜伏しているところをたまたま見つけたのが始まりというが……ひとまずシノンは、桂側の話も聞いてみることにした。

「まったく。一体何の理由があって、こんな変てこなコスプレをしているのよ」

「ま、待てシノン君! これは潜入捜査の為だ!」

「潜入捜査?」

「そうだぜ! 吉原であることを調べる為に、わざわざこんな格好をしていたんだよ!」

「で、その操作内容って何なの?」

「それは……」

 潜入捜査と高を括る桂達であったが、詳しく聞いてみると途端に口をすぼめてしまう。何か話せない事情があると察し、その本心をシノンが探ろうとしたところ……エリザベスの布から何かがはみ出ていることに気付き始める。

「ねぇ、エリザベス。それ何?」

[こ、これは!]

 と急いでエリザベスが隠そうとしたところ、慌てて手を滑らせてしまい、地面にそれが落ちてしまう。その正体は……人妻もののエロ本である。

「はぁ?」

 想定外の代物に、シノンを含め女子達は皆絶句。要するに変装の理由が、ただ単に吉原で古いエロ本を漁りに来たことだと判明していた。

「か、勘違いするなシノン君! これには貴重な幕府の情報源があるのだ! 決して寝取られもののシチュが好きと言うことではないぞ!」

「そ、その通りだ! 袋とじが目的で買ったわけじゃないからな! 絶対だからな!」

 すらすらと言い訳を羅列するものの、もはや時すでに遅い。否定のつもりが本心を語る始末であり、どんなにシノンらを説得しようと焼け石に水である。もはや配管工の格好やなぜ土管に隠れていたのかはどうでもよく、こそこそと回りくどいことばかりした桂達に怒り心頭のシノンは、

「もう一回火の矢をぶっこまれたい?」

恐ろし気な表情で桂達を脅すのである。

「ひぃぃ! それだけは!」

「勘弁してくれ!」

[同じくだ!]

 流石に二度も爆発を浴びたくない桂達は、揃ってシノンに謝罪した。三人揃って深々と頭を下げている。

「大体! なんで普通に買うことが出来ないのよ!」

「いやだって、一応指名手配犯だからな」

「そうそう。こんな格好でもしないと、普通に買いに行けないんだぜ!」

「アンタ達の普通の定義どうなっているのよ! この格好だと余計に目立つじゃないの!」

「だがな、シノン君。この格好は幕府にすら気付かれない完璧な変装で……」

「ただのまぐれよ、それ!」

 それからシノンは、まるで年下の子供を りつけるかのように、桂、クライン、エリザベスに注意していた。もはや十歳ほど年の差が離れようとも関係なく、容赦のないツッコミや指摘を次々と繰り出している。

 そんな強気にも頼りになるシノンの姿を目の当たりにして、百華の女性達は増々シノンに魅了されていた。

「クールなだけじゃなく、強気でリーダー性もあるなんて……」

「頭が一目置くのも納得の女の子ね!」

 未成年ながら有望的な将来性に一目置いている。その一方で、

「えっと、私はもう立ち去って良いのかな……?」

桂達を最初に発見した町娘は去り際を完全に見失っていた。今はただこの異様な光景を見守ることしか出来ないのである。

 こうしてシノンは今日一日、百華の手伝いに勤しむのであった。

 

 

 

 

 

 

「ってことがあったわ」

「うわー。あやめさん懲りないね」

「クラインさんも桂さん達と何をしているの……」

「もはや攘夷志士じゃなく、お笑いトリオね」

 シノンの語った今日一日の出来事に、リーファ、シリカ、リズベットは各々の思ったことを呟く。あやめや桂達の奇行に絶句していたが、肝心の月詠の探し物は未だ手がかりが掴めないままであった。

「でも、月姉。かんざしは見かけていないし、百華が拾った忘れ物にも確か無かったわね」

「そうか。ありがとう、シノン」

 協力してくれたシノンに感謝を伝える月詠。依然として状況が進展しない中で、次はリーファが今日一日の出来事を語ることになった。

「では、次にリーファにも聞いてよいか?」

「分かったわ。えっと私はね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 回想の舞台は柳生家の道場。今もなお柳生流の極意を学ぶべく、多くの門下生を抱える由緒正しきの道場に、時折リーファは手伝いに来ている。雑用から九兵衛の補佐、さらに時間があれば九兵衛が直々に柳生流の指導を受けるなど、日々多くの任務に当たっていた。

 そんな忙しない日々を送るリーファは、今日九兵衛からある秘儀を学ぶことに……。

「リーファ君。とうとう君に柳生流の秘儀を教える時が来たようだな」

「柳生流の秘儀……」

 静寂が広がる道場で、ふと言われた九兵衛の一言。その彼女の重々しく真剣な表情には、ただならぬ緊張感をリーファは感じている。

「九兵衛さんの秘儀と言うと、神速のような刀裁き。いや、それを応用した確実な一刀のことなの?」

「ふっ。それを超えるものだ……!」

 その秘儀は自分にとっても未知なるものであり、リーファも自然と期待値が高まっていた。それを教わるということは、柳生系の流派に近づくと言っても過言ではないからである。

(神速を超える秘儀って……一体どれくらい凄い技なの?)

 固唾を飲みながらリーファは慎重に頷く。そして九兵衛はようやくその重い口を開いていた。

「では、リーファ君に伝授するぞ! 柳生家に隠された秘儀、万華鏡天通眼を!」

「ま、万華鏡天通眼!?」

 その言葉を発した途端に、場の雰囲気はやや微妙なものに移り変わる。自信満々に発する九兵衛に対して、リーファは緊張が解けたかのように困惑めいた表情を見せていた。

「どうしたのだ、リーファ君。そんなポカンとした顔をして」

「いや、だって……名前の癖が独特だったから。てか、万華鏡天通眼って何!?」

 動揺しながら九兵衛に聞き返すと、彼女は腕を組んで誇らしげに返答している。

「万華鏡天通眼は、全ての技が一撃必殺となる柳生家最強の秘儀だ」

「い、一撃必殺!? そんなバランスブレイカーな技を、九兵衛さんが会得しているの!?」

「その通りだ。この秘儀を習得すれば、きっと今後のサイコギルドとやらの戦いでも役に立つに違いないだろう」

 珍妙な名前からは想像もつかない強過ぎる効果に、リーファの困惑はさらに高まってしまった。たった一撃で相手を倒すことの出来る卑怯さが際立つ秘儀だが、それでも今後起こりうるかもしれないサイコギルドとの戦いには必要と九兵衛は説いている。無論リーファも同じ想いではあったのだが……。肝心なのはその秘儀の会得方法である。

「じゃ……その秘儀はどうやったら会得出来るの?」

「簡単なことだ。僕と同じ目の才能を活性化させれば、例えリーファ君でもすぐに会得することが出来る。まずアイマスクをして、真っ暗な状態のまま、バッティングマシンから放たれる豪速球を受け止めろ。そして野球ボールに書かれている問題を解き……」

「ちょっと待って! 何一つ簡単じゃないんだけど!? 鬼畜ゲーム並みに、攻略難易度高いんだけど!?」

 さも当たり前のように秘儀の会得への方法を話す九兵衛に、リーファは激しくツッコミを入れていた。もはや方法が無茶苦茶の域に達しており、習得すら困難と彼女は察していたのである。

「秘儀の会得はそう簡単なものではないからな。これくらいの根性があってこそ、初めて半人前のレベルの達すると断言して良いだろう」

「いや、だとしても目隠ししたままクイズに答えて、野球ボールも受け止めなくちゃいけないのは無理だって!」

「無理じゃない!」

「無理!」

 リーファを信じ意地でも彼女に秘儀を勧める九兵衛だが、当の本人からは強めの口調で否定されてしまう。万華鏡天通眼の会得を巡り、二人の口論が始まってしまった……とその時である。

「いいえ。あまりにも無茶過ぎるわよ」

「えっ? お妙さん……?」

 ふと道場の入り口に目を向けると、そこにはたまたま柳生家を訪れていた妙の姿が見えていた。どうやら二人の口論を聞いていた様子であり、妙は落ち着いた表情で二人の仲介に入っていた。

「九ちゃん。張り切るのは良いけど、人には向き不向きがあるものよ。第一にこんな方法でやったら、秘儀の習得の前に体がバテちゃうもの」

「……そ、それもそうか」

 妙は落ち着いた表情のまま、九兵衛の説得に準じている。確信を突くような一言に、九兵衛もつい言葉を詰まらせてしまった。

(お妙さんの一言で静まった……?)

 九兵衛の言いくるめられるような姿には、リーファも驚嘆とした表情を浮かべている。いち二人の関係性を幼馴染と聞いていたが、それにしても妙が優位的であると確信していた。

 そんな妙の大人な対応に感心していた時、妙はリーファの方に目を向けている。

「ところでリーファちゃん。私も実は秘儀があるんだけど、折角だし会得してみない?」

「お妙さんの秘儀? って言うと、恒道館で行っているビームサーベ流のこと?」

「いいえ。私独自に編み出した秘儀のことよ」

 なんと今度は妙が、自身の編み出した秘儀を教えてくれるとのこと。ビームサーベ流とはまた違った秘儀に、リーファは少しだけ興味を持ち始めている。

(お妙さんの秘儀だったら、私でも会得出来るかも……一体どんな)

 と内心で好奇心を滾らせていたのだが……その高揚とした気分は、一瞬で崩されてしまった。

「題して! 玉石粉砕大破壊よ!」

「……はい?」

「まずは男の背後に近づいて、手で手刀を作るの。そこに気力を貯めて、股間目掛けて勢いよく殴打! 並みの男はこれだけで大ダメージを与えられるわ!」

「……はい?」

 楽しそうに秘儀を話す妙であるが、その内容は男性の急所を狙った極めて卑怯な秘儀である。無論リーファも想像の斜め下を行く妙の秘儀に、苦笑いどころか絶句してしまった。

「リーファちゃんの色気で男を誘い込めば、秘儀は確実に成功するわよ! ということで、早速練習を……」

「却下します!」

 乗り気な妙に気を遣わずに、リーファは堂々と彼女に断りを入れている。もはや剣術とは関係のない秘儀には真っ向から否定していた。

「え~。折角似合うと思ったのに」

「どこが!? こんなの卑怯の極みじゃないの!」

「だが万華鏡天通眼よりも、玉石粉砕大破壊の会得が早いと僕は思うぞ」

「九兵衛さんも真に受けなくて良いから! ただその秘儀の言葉を言いたいだけじゃないの!?」

 残念がる妙並びに本当のことのように受け止める九兵衛に対し、リーファは強めのツッコミを繰り出していく。どんなに二人から勧められようと、彼女の意思が変わることは無い。

どの秘儀も癖が強く、その強烈さにリーファが辟易していた時である。

「まったく。何も分かっていないな、お前達は!」

「って、近藤さん!?」

 道場にまたしても思わぬ来客が訪れていた。それは妙のストーカーとしてお馴染みの近藤勲であり、リーファにとっての馴染みのある相手である。最もそのほとんどが妙絡みや沖田との一悶着で遭遇することが多いのだが……。

 なんとも言えない表情を浮かべるリーファに対し、妙や九兵衛は近藤を見た瞬間に容赦ない敵意を向けている。

「あぁ、ゴリラが何の用だよ?」

「また妙ちゃんにストーカーしているのか!」

「待ってくれ、今回は別件だ! リーファ君には是非、俺の秘儀を教えようと思ってな」

 共に近藤の乱入を快く思っていないものの、近藤自身はリーファへの秘儀の伝授が第一と念押ししていた。お節介さを披露する近藤だが、リーファにとっては九兵衛や妙の例に漏れることなく、またしてもトンチキな技だと察してしまう。

「近藤さんの秘儀? 嫌な予感しかしないんだけど……」

「そう悲観するな! 俺の秘儀、多摩金剛撃砕三段突きを君に伝授しようじゃないか!」

「たま? で、それはどんな技なの?」

「フッ。まずは股間から極太の棒を伸ばし――」

 と詳しい秘儀の内容を説明した瞬間に、

「万華鏡天通眼!」

「玉石粉砕大破壊!」

「ギャァァァ!!」

九兵衛と妙が揃って秘儀を発動し、近藤を瞬く間に戦闘不能にしてしまう。共に嫌な予感を察したから実行に移していたのだが……リーファは妙らが察する前から既に近藤の意図を理解していた。

(ただのセクハラでは……!?)

 もはや近藤の秘儀自体、突っ込んだ方が負けだと感じてしまう。

 こうして今日のリーファは、終始個性的な大人達に振り回されただけであった……。

 

 

 

 

 

 

 

「振り返ると、碌な思い出じゃないんだけど……」

「秘儀と言っても、本当に実践で役立つかは別物じゃない?」

「てか、近藤さんは何をやっているのよ……」

「本当に警察の局長なんですか?」

 出来事を振り返っただけで疲労を大きく感じるリーファ。そんな彼女に同情するシノンら仲間達。一方でリズベットとシリカは、近藤のとんでもない行動に絶句してしまう。そもそも警察組織の長がストーカーをしているだけでも未だに信じがたいことなのだが……。

 それでも月詠の探すかんざしの手がかりは見つからなかった。

「でも、月姉。私は今日、かんざしは見かけていないよ」

「うむ。分かった。協力してくれてありがとうな。後は……」

「最後はアタシですね! 何か手がかりが見つかると良いですけど」

 リーファに軽く感謝を伝える月詠。そして最後はシリカの番となり、彼女は今日当番であったひのやでの手伝いについて振り返っていく。

 

 

 

 

 

 

 今度の回想の舞台は、吉原にある茶屋のひのや。シリカら女子四人とピナが居候している住処でもあり、四人はひのやにいる時には日輪のお手伝いや晴太の面倒も見てくれている。

 そんなひのやでは当番制で接客の手伝いも行っており、今日はシリカが担当であった。

「ありがとうございました!」

「ナ!」

 退店する客に対して、元気よく挨拶を交わすシリカとピナ。彼女の接客も手慣れたもので、とびっきりの笑顔で応対していた。

 そんな接客の仕事をこなすシリカらに、ふと日輪と晴太が話しかけてくる。

「シリカちゃん。少し晴太と出かけるから、戻ってくるまで店番を任せても良いかしら?」

「もちろん良いですよ! 任してください」

「近所に届け物を渡すだけだから、終わったからすぐに戻って来るよ。じゃ、シリカ姉。頼むね!」

「は~い。いってらっしゃい~!」

 どうやら二人は届け物の用事があるらしく、店を離れている間はシリカらに店番を任せようとお願いしていた。無論シリカもすぐに了承し、話はすんなりとまとまっている。そのまま晴太は日輪が座っている車椅子を押しながら、目的地の住所までゆっくりと歩みを進めていた。

「ふぅ~。しばらくアタシ達だけですけど、頑張って店番しましょうね!」

「ナー!」

 シリカは一度深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。ほんの僅かな時間ではあるが、日輪から任された大役をしっかりこなそうと気合を入れていた。

 そんなやる気を十分に高めるシリカとピナの元に、一人のお客が訪れてくる。

「うぃっす。いるか」

「いらっしゃ……」

 笑顔で来店を迎い入れようとしたシリカだったが、お客の顔を見た瞬間に引きずったような笑みに変わってしまう。なぜならば、

「お、沖田さん!?」

「なんだメスネコだけか?」

その相手が真選組の沖田総悟だったからだ。以前にもかぶき町フレンドラリーで同じチームとして行動するなど沖田とは少なからず面識はあるのだが、彼の印象はサディスティックで掴みようのない性格とシリカは把握している。

 故に沖田と目が合った瞬間に、こっそりと後ろに一歩下がっていたのだ。

「おい、なんで後ずさりするんでい」

「だって沖田さんだし……」

 不自然にも彼女は沖田と目線を合わせないようにしている。彼の悪評は同居しているリーファから嫌と言う程聞かされており、自分にも降りかかるのではと嫌な予感を察していたのだ。

「まぁ、いいや。とりあえずほうじ茶頼むわー」

「か、かしこまりました!」

 一方の沖田は気にすることなく、ひのやにある四角い椅子に座って早速ほうじ茶を注文。いち客として普通にくつろぎ始めている。

「いやぁ~、ここのほうじ茶は格別なんでね。何度も来たくなるんでさぁ」

「ハハ、そうですか……」

 シリカは早速ほうじ茶を沸かしながら、沖田の与太話に付き合っていた。自分が知らない間に、すっかりとひのやのほうじ茶を気に入っている様子である。そんな沖田の話に付き合いながらも、シリカの内心は大いに取り乱していた。

(なんでよりによって沖田さんなの!? どうせならキリトさんの方が良かったのに……)

 今日が当番であることを早速後悔している。

「ナ……」

 ピナもご主人様の真意を察して、小さくため息を吐いていた。

 その後に沖田は、早速シリカの煎れたほうじ茶を呑んで一息つく。しばらくまったりしていると、シリカから沖田にある質問を投げかけてきた。

「ところで沖田さんは、吉原に何の用で来たんですか?」

「俺か。まぁ、ただのパトロールでさぁ。俺も昔、この町である任務に当たっていたんで、変わりがないか確かめにね」

「任務?」

 すると沖田は神妙な表情となり、昔に体験したことをシリカに話していく。

「まだ吉原の天井が固く閉ざされていた頃に、違法売買されていた危ない薬があって、その摘発に動いていたんでさぁ」

「そ、そんなことがあったんですか」

「えぇ。忘れたくても全然忘れられなくてね。なんせ同じ頃にどっかの大馬鹿達が吉原の天井をこじ開けて、この町を支配していた夜の王を打ち倒しやしたから」

「それって鳳仙の件?」

「おや、知っていやしたか」

「はい。日輪さんから一度聞いたことがありましたから……」

 彼が語ったのは、吉原で調査した事件について。沖田にとってはなんてことない潜入調査だったが、同じ時期に吉原でさらに大きな出来事があった為、今でも色濃く記憶に残っているとのこと。無論シリカもその話の一部分は日輪本人から聞いており、真選組との思わぬ共通点に驚嘆としている。

 シリカら女子達は吉原の昔の姿を日輪や月詠ら当事者の話のみでしか聞いていないが、真選組の潜入捜査と照らし合わせると、その悲惨さを大いに痛感していた。

「まぁ、昔と比べたら、吉原はだいぶマシになりやしたが、それでも悪い奴はあちらこちらに蔓延っている……そいつらをまとめて一掃するのも俺ら真選組の役目なんでねぇ」

「沖田さんが真面目に仕事を語っている……?」

「ナ……?」

「おい、ペット共々どんな印象を抱いているんでい?」

 自身の仕事の責務について語った沖田に対し、今一度大きなリアクションをするシリカとピナ。飄々とした態度が目立つ沖田だが、そんな彼にも仕事の流儀があったことには密かに感心していた。沖田自身はその反応を快く思っていないのだが。

 と二人で会話を交わしていたちょうどその時である。

「シリカさん!」

「遊びに来たアルよー!」

「えっ、皆さん!?」

 またしても思わぬ来客が、ひのやに訪れていた。それはユイ、神楽、アスナ、新八、定春の万事屋の面々である。

「どうしたんですか、みんな揃って」

「実は別件で吉原に来ていて、折角だしひのやも訪れてみようと思ってね」

「って、シリカさん。日輪さんと晴太君は?」

「あっ、二人なら出かけていますよ。すぐ戻ってくると言っていましたし、ひのやで待ちますか?」

「そうですね」

「ワン!」

 どうやらユイらは別件で吉原を訪れており、近くへ寄ったついでにひのやにも顔を出していたのだ。シリカの提案通りに、日輪や晴太が戻ってくるまで待つことにしたのだが……ここで思わぬ火種が発生してしまう。

「おいおい、チャイナかよ。折角のほうじ茶が台無しになるじゃねぇかよ」

「はぁ? 私はおめーがいるだけで、ムードが台無しアルよ!」

「あっ」

 そう。沖田と神楽の険悪な仲である。何を隠そう二人の仲は最悪と言っても過言ではなく、目を合わせる度に喧嘩する関係性だ。以前のフレンドラリーでも二人の言い争いをシリカは何度も目撃しており、一触即発な二人を見てつい頭を抱えてしまう。

「また始まっちゃいましたか……」

「本当、神楽ちゃんと沖田さんって相性が悪いわよね」

「相性というより、同族嫌悪な可能性もありますけど……」

「ワフ……」

 シリカに続いて、ユイ、アスナ、新八、定春も揃って、苦い表情を浮かべていた。彼らも神楽と沖田の相性の悪さを嫌と言うほどに理解しているのである。薄っすらと今回の言い争いは長くなると思っていた。

「面白ぇ、どっちが強いか決着を付けやすかい?」

「上等アル! お前をぎったんぎったんにぼろ雑巾にしてやるネ!」

「って、落ち着いてください! 二人共!」

「ナー!!」

 仕舞いに沖田は喧嘩の提案をして、神楽を思いっきり挑発している。そんな彼の目論見にまんまと乗せられて、神楽は喧嘩腰でその挑発に乗っかった。これ以上対抗心がヒートアップすると止め時が一行に分からない為、シリカとピナは必死で二人の喧嘩を止めようとしたのだが……

「キャー! 泥棒!!」

ちょうど同じ頃。外では助けを求める女性の叫び声が聞こえてきた。声の雰囲気からひったくりに大切なものを奪われた様子ではあったが……

 ここで二人にある提案が交わされていく。

「おい、ドS! どっちが先に捕まえるか勝負するアルか?」

「いいでっせ。先に捕まえて、テメェの泣きべそを拝んでやらぁ」

「上等アル! 全力でかかってくるネ!」

「って、二人共!?」

 決着の付け方が、いつの間にか逃亡した犯人を捕まえるものに代わり、神楽と沖田は早速逃げ回る犯人目掛けて猛スピードで追いかけていく。その異様な速さと図太さにはシリカのみならず、アスナら万事屋の面々も驚いていた。

「い、行っちゃった」

「凄いスピードでしたね!」

「本当に仲悪いのか、あの二人……」

 特に新八は神楽と沖田の相性の向き不向きさが、大幅に異なると考えていく。一歩間違えれば相性の良いベストパートナーであると思っていた。無論そんな未来線は一切現れないと思われるが……。

 一方のピナは、さっきまで沖田らがいた椅子のスペース周りに注目を向けている。

「ナー!」

「ん? どうしたんですか、ピ……えっ!?」

 ピナに服を引っ張られて、建物の端っこまで移動するとそこには……テーブルに置かれていたものが一斉に床へ散らばっていた。恐らくは先ほどの神楽と沖田が勢いよく走り出したことで、近くにあった小物が散らばったと見て間違いはないであろう。

「いつの間に……」

「神楽さん達が散らかしたのでしょうか?」

「恐らくは。あの二人はなんら気付いていないと思いますけど」

「日輪さん達が戻ってくる前に片付けないと!」

 身勝手に仕事を増やした神楽らに不満を覚えながらも、シリカら四人は急いで散らかったものを片付けることにした。

 こうしてシリカの今日一日の大まかな出来事は終了したのだが……ここで彼女はあることを思い起こしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー!」

「シリカ、どうした?」

「……月姉の探し物、あの中にあったかも」

「えっ!?」

「本当なの!?」

 そう。神楽と沖田により散らばったものの中に、月詠の探しているかんざしがあると推測したのである。既に散らばった小物は片付けられていて、無意識のうちにどこかへしまっているとシリカは考えていたが……

「ナー!」

「えっ? ピナ?」

ちょうどその時、シリカの前にピナが姿を現す。しかも彼の口には……月詠の探していたかんざしが咥えられていたのだ。

「あっ! わっちのかんざしじゃ! 主が探してきてくれたのか?」

「ナー!」

「凄いですよ、ピナ! よく見つけられましたね!」

 ようやく探し物が見つかって安堵する月詠。手がかりを見つけてくれたシリカやピナにも彼女は大きく感謝を伝えていた。

「やっぱりひのやの中にあったのね」

「灯台下暗しってところかな」

「どっちにしろ見つかって一安心ね!」

 シノン、リーファ、リズベットも月詠の探し物が見つかって安心している。月詠の表情につられて、シリカら女子達もまた優しい笑みを浮かべていたのだった。

 こうして探し物の騒動は一晩を跨がずに、今日一日の内に解決したのである……。

「それにしても、こんな綺麗な形で終わって良いのか……」

「何の話ですか?」

「いや、なんでもない」

 月詠はメタ的な取れ高を少しだけ気にしていたが。




 と言うことで、本日から徐々に新作も投稿していきます! 「剣魂 秋晴の日常回篇(延長戦)」の開幕です! 
 今回は月詠の無くしものを見つけるべく、女子達が一日の出来事を振り返る流れでした。思い起こすと断片的には描いていたものの、イベントごとで普段通りの日常を描けていない箇所もあったので、その補填としてこのお話が生まれました。シリカら女子達は銀魂の世界だと皆月詠や日輪、百華のお手伝いをすることが多いですが、その中でもリズベットは鍛冶屋である鉄子の見習い、リーファは柳生家の手伝いや稽古も兼任しています。ちょこちょこ他の女子陣の手伝いもしているので、結構忙しい日々を送っているのです。無事にかんざしも見つけることが出来て良かったですね。ピナが今回のMVPです!


次回予告

土方「交通安全教室だぁ?」

沖田「そうでさぁ。子供に人気のヒーローと一緒に、ショー形式で交通安全を学ぶイベントに俺達真選組が選ばれてねぇ」

近藤「本当に大丈夫なのか、総悟?」

山崎「そもそも子供に人気のヒーローって誰?」

沖田「それは次回のお楽しみでさぁ」

土方「次回! 交通安全を怠ると痛い目に遭う!」
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