「え……えぇぇぇえぇ!! TOSHI! RIZU!」
「お前らまで脱落するのかよ!」
「しっかりしろ、二人共!!」
ペルソナの淹れたココアにより、新八、銀時、キリト以外のホストが全員気絶。彼女の従者であるストレアも泥酔してしまい、ゲストルームには有象無象の屍が転がっていた。ホストクラブとは思わぬ異様な光景に、ペルソナも少しばかり驚いてしまう。
「あら。全員ココアに魅了されて気絶してしまったのね。アナタ達のおもてなしはこれでおしまい?」
対応してくれるホストが軒並み減ったことで、ペルソナにも飽きが生じていた。このもたついた雰囲気のまま、たった三人でどうペルソナをもてなすか銀時らが考えていた時……思わぬ助っ人がゲストルームにやって来る。
「いや、まだです!」
「ユ、ユイ!?」
「ユイちゃん!?」
それは厨房で妙の看病をしていたはずのユイであった。彼女は覚悟を決めたような表情で、ペルソナの方をじっと見ている。
「ん? アナタも私をもてなしてくれるの?」
突然の乱入者にも関わらずにユイと接するペルソナ。余裕そうな表情を浮かべながらも、ひとまずはユイの話に耳を傾けていく。
「その通りです! ペルソナさん、私達と宇野で勝負です!」
「えっ? 宇野?」
「はいです! 散ってしまったホスト達に代わって、私がペルソナさんをもてなしてみせますよ!」
なんと彼女が提案したのは、ボードゲームの一種である宇野を使った勝負。神楽から事前に手渡されていた切り札を、この場で使用している。
この突飛なユイの提案に、男子達は困惑したものの……ペルソナはこの状況を面白がっていた。
「面白そうな提案ね。その勝負、受けて立つわよ」
「えっ!? ペルソナさん、乗り気なの!?」
「おいおい。段々話が逸れていってねぇか?」
ユイの仕掛けた宇野勝負を引き受けており、ただならぬやる気を見せている。二人で勝手に盛り上がる光景には、銀時ら男子達もより困惑を深めていた。
そんな男子達の戸惑いをよそに、テーブルを囲んでの宇野勝負が着々と進められていく。
「ペルソナさん、私を侮らないでください! なんたって、宇野だと五連勝しているんですから!」
「あらあら。可愛い記録だこと。私の通算勝利回数、七十五連勝には到底及ばないけど」
「ぐぬぬ……」
「いいや。どんだけ宇野に力入れてんだよ、お前ら」
「ユイもそんなに意地を張らなくても……」
互いに宇野の勝利回数について張り合うユイとペルソナ。顔が似ているせいか、普段に比べて意地の張り合いが激化している。銀時やキリトもユイを落ち着かせるようにと一声かけていた。
そして宇野のカードが複数枚に分けられて、五人分の手札が出来た。ここから色や数字を重ね合わせて、手札の無くなった者が勝利となるが……
「これは……」
ペルソナは手札を見た瞬間にあることに気付く。それは……カードに書かれた数字のデザインが、きかんし〇トーマスの車体番号に酷似していたからだ。
「気付きましたね、ペルソナさん。これはトーマスデザインの宇野ですよ!」
ユイもこの仕様は既に把握しており、ペルソナへ自信満々に伝えている。彼女はペルソナがトーマス関連で喜んでくれると思い、この宇野勝負を提案したのだ。
「い、いつの間に」
「神楽から手渡されたものか、これ?」
「はい! まさかの偶然で、私もびっくりしましたよ!」
ユイにとってもこれは偶然だったようで、思わぬアシストをしてくれた神楽に彼女は感謝している。それは銀時やキリトらも同じ想いであった。
一方でペルソナはユイの好意を感じつつも、冷静になってある深読みをしてしまう。
「粋なことをしてくれるじゃない……これで私を動揺させようって魂胆かしら?」
「そんなことないですよ。ペルソナさん、その作品のこと好きそうでしたから、てっきり喜んでくれると思って、宇野を提案したんですよ」
てっきり自身を油断させるユイの罠かと思っていたが、それは大きな間違いである。ユイの無邪気で優しい笑顔を見ると、とても邪な考えなんて思いつくはずがないと彼女は考えを改めていた。
ユイなりの気遣いと察したものの……ある一言だけペルソナは大きく否定している。
「作品じゃないのよ……」
「えっ?」
「信じられないかもしれないけど、私は実際に見たのよ。トーマス達を」
「ペルソナさん?」
「おいおい、急にどうしたんだよ? 見たってどういう意味だ?」
意味深な一言を呟いたペルソナに、ユイや銀時らは彼女へ再度その意味を聞き直す。表情も深刻そうに変わっており、何か訳アリだと彼らは考えていた。
するとペルソナは、自身の身に起きたある出来事を四人に話していく。
「そのまんまの意味よ。私がまだ君と同じくらい頃に、ある星の森の中で迷子になったことがあるのよ。家族とも離れ離れになって、森の中を彷徨っていた時、ある場所にようやく辿り着いたの。そこには喋る機関車がいて、人間達と一緒に仲良く仕事をしていてね」
「えっ、それって……」
「そう。そこは紛れもないきかんし〇トーマスの舞台、ソドー島だったのよ」
信じられないような体験に、銀時達は揃って唖然としてしまう。空想かと思われていたトーマスの舞台であるソドー島に、彼女は不本意ながら足を踏み入れたことがあるのだ。
さらにペルソナは話を続けていく。
「その島で私は黒い機関車のドナルドに会って、彼の協力のおかげで元の森に戻ることが出来たのよ。家族とも再会して、このことを話したけど……誰も信じてくれなかった。そりゃ夢や幻覚だったのかもしれないけど、私は間違いなくドナルドに会った気がするのよ」
「それでペルソナさんはドナルドが一番好きになったんですか?」
「えぇ、そうよ。大人になった今でも、ソドー島は本当にあるって思っているの。どんなに誰かから否定されようと、またドナルドに会いたいから……」
ペルソナが明かした本当の想い。それはかつて自分を助けてくれたきかんしゃともう一度出会いたい純粋な想いだった。家族や友人から夢や幻覚と決めつけられようとも、ペルソナはドナルドもといトーマスやソドー島が本当にあると信じている。銀時やキリトらに打ち明かしたのは、彼らなら話しても大丈夫だと思ったからであった。
そのペルソナの判断は何一つ間違っていない。
「素敵な話ですね」
「えっ……?」
「だって幼い頃の恩をしっかりと覚えているなんて、そう簡単なことじゃないと思いますよ。ペルソナさんが諦めない限りは、絶対にまた会えると私も信じていますから!」
最初にペルソナへ話しかけたのはユイであった。彼女はペルソナの話を何一つ疑わずに、彼女の持つ夢を応援している。
それを聞いたペルソナは、昔の子供の頃の自分に言われているように錯覚し、少しばかり感極まっていた。
「そ、そんな綺麗事、私に通用するわけがないじゃない……」
「そうか? SOUGOも言っていただろ。凝った言葉よりもストレートな言葉の方が、ペルソナ様には似合っているって。綺麗事だろうと嬉しいもんは受け取っておけよ」
「それに少なくともここにいる四人は、ペルソナさんの夢を否定したりはしませんから」
「諦めない限り実現する。俺もそう思っているよ」
自身の心情をユイらに隠し、つい背を向けたペルソナ。しかし銀時、新八、キリトの一言に、増々感情を揺さぶられてしまう。やはりストレートな言葉が彼女には効く様子であり、何一つ自分の想いを否定しない彼らにより大きな好感を持っていく。
そう会話を交わす中で、ゲストルームにまたしても思わぬ来客が訪れている。
「様子を見に来たけど、どうやらお取込み中なの?」
「あっ、夜神さん!」
それは本家の高天原に訪れていたマダム夜神だった。彼女は銀時達の様子が心配になり、早めに切り上げて駆けつけたようである。夜神は表情を崩さずに、ゆっくりとペルソナの元まで近づいていく。
「それにしても人は見た目に寄らないわね。冷酷そうなアナタが、そんな昔の出来事を大切にしているなんて」
「別にアナタには関係ないでしょ……」
「関係あるわよ。私にだって会いたい人がいるんだから……」
「えっ? そうなの?」
夜神もまたペルソナの想いを一切否定せず、むしろ彼女に共感していた。ライバルと思っていた相手の意外な共通点を知り、ペルソナは少しだけ驚く。
さらに夜神はペルソナにある情報を伝えていた。
「そういえば今日会ったホストにも、同じような体験をした人がいたわね」
「えっ? 私と同じ……?」
「そう。面白そうな情報だったから、メモを取っていてね。そこの場所に行くと、もしかしたらアナタの会いたい人……いや、機関車に会えるかもしれないわね」
彼女が渡したメモには、機関車関連の目撃情報が多く書かれている。ペルソナにとっては夢のような情報であり、メモを見た瞬間により一層と体を震え上がらせていた。
「この場所に行けば、トーマス達に会えるかもしれないってこと?」
「そうね、確証は無いけれど。気晴らしに行ってみたらどう? まぁ、私はかぶき町からアナタ達がいなくなる方が有難いけど」
「とかなんとか言って、本当はこいつの夢を応援しているんじゃねぇのか?」
「さぁね」
「はいはい。そう受け取っておくよ」
ペルソナへの厄介払いがてらにメモを渡したように見えたが、その本心は単なるペルソナの夢の後押しである。銀時はすぐに夜神の狙いを見抜いたものの、本人からはすぐに否定されてしまう。結局は本人のみぞ知ることであるが。
「あ、ありがと……」
「やりましたね、ペルソナさん!」
「そうですよ! マダム夜神さんに感謝しないとですね!」
「アナタの夢に一歩近づいたんじゃないのか?」
内心では絶対に嬉しがっているペルソナの意向を汲み、新八やユイ、キリトは彼女へ励ましの言葉をかけていく。強がって恥ずかしがっているように見えるペルソナだが、その本心は周りの優しさに感謝し、追い求めていた夢が実現するかもしれない高揚感に駆り出されていたのだ。今日ばかりは高天原に来て良かったと彼女は確信する。それは銀時やキリトらにとってもほぼ同じ想いであった。
すると、夜神はトーマスと関連した話題をペルソナへ振っていく。
「ところでアナタが好きな機関車っているの?」
「えぇ、もちろん。私を助けてくれたドナルド様一択ね」
「ドナルド…ですって!」
「へ?」
好きな機関車もとい推している機関車を聞いた夜神だったが、ペルソナの返答を機に一変している。先ほどとは違い不機嫌な表情で、ペルソナに拒絶反応を起こしていた。
「や、夜神さん!?」
「どうしたんですか?」
急変した夜神の態度に、キリトやユイが聞き返すと……夜神は呼吸を整えながら、ようやく重い口を開いている。
「我が推しのヘンリーに炭水車を複数台付けて、晒し者にしたあのドナルドのことね!?」
「いや、アンタもトーマス見てたんかい!?」
「つーか、ヘンリー推しだったのかよ!? 完全に中の人ネタで選んだだろうが!!」
どうやら夜神もトーマスを視聴済みだったようで、自身の推しキャラがペルソナの推しキャラに貶められたことを今でも根に持っているとのこと。(本家○かんしゃトーマスの七十二話、たんすいしゃがほしいを参照)
あまりにも早い急展開に、新八や銀時は強めにツッコミを入れるも、夜神の怒りは一切収まる気配が無い。
「そ、そんな怒ること無いんじゃないの? 第一威張り散らかしていたヘンリーにだって、責任があると思うわよ」
「黙りなさい。ヘンリーのヘの字も知らないくせに。彼はね森を愛して気遣いをも出来て、それで……」
「って、ストップ! これ以上言い争っても不毛な争いしかならないですよ!」
「てか、まだ宇野すら始まってねぇんだぞ! いい加減に始めさせろよ!」
ヘンリーの良いところについてスラスラと教えようとした夜神であったが、口論の長期化を危惧して、新八や銀時からは無理にでも止められてしまう。肝心の宇野勝負から話題が脱線したままであり、ひとまずは宇野を始められるようにこっそりと準備が進んでいく。
その後は夜神も宇野勝負になりゆきで参加し、計六人のまま真剣に勝負。ライバル意識を持つユイやペルソナが必要以上に踏ん張り、幾度も二人の勝利数が積み重なっていく。高天原の夜はまだまだ続きそうであった……。
そんなペルソナのおもてなしから約一週間が経過した頃。この日、高天原には銀時やキリト、土方にリズベットと言った外部からの協力者達が、狂死郎に呼ばれて集まっていた。どうやらペルソナから手紙が届き、それを銀時らにも知らせたいとのことらしいが。
「えぇぇぇ! ソドー島が見つかったんですか!?」
「そうみたいですよ。こちらとしても驚きではありますが」
その手紙の内容に、新八は大きく驚いてしまう。他の仲間達もざわついており、ペルソナの悲願が叶ったことには大なり小なり皆驚いていた。
「つーか、見つかるの早くねぇか」
「本当ネ。ざっと二年はかかると思っていたアル」
銀時や神楽もつい本音を漏らしている。あまりにも早いソドー島の発見に、ペルソナの先走りと疑いまでかける始末であった。
「ペルソナさん、ようやく見つけられたんですね!」
「ユイちゃん、嬉しそうね」
「はいです! だってペルソナさんの幼い頃の夢が叶ったんですから!」
「確かに良い知らせではあるよな」
一方のユイはペルソナの朗報を素直に喜んでいる。彼女に明かした想いが叶うことには、つい自分のことのように嬉しく思っていたのだ。キリトやアスナもユイの想いに同調する。
「本当にそんな島があったのね」
「それでその手紙にはなんて書いてあるんだ?」
「ソドー島に関することが書いているの?」
「早く聞かせてくださいよ!」
リズベット、近藤、シノン、シリカと他の仲間達を思ったことを呟いていく。皆ユイらと同じくペルソナからの手紙に注目を寄せていた。
「焦らないでください。今、読み上げますから」
彼らの好奇心を抑えつつ、狂死郎はそっと手紙を代読していく。
「高天原のホストの方々。先日は楽しいひと時をありがとうございます。あの時にくれた情報を基に、今私は従者のストレアと一緒に静岡県に来ています」
「し、静岡県!?」
「随分と近いじゃねぇか」
てっきり別の星に向かったかと思いきや、意外にも近かった目的地に新八や土方らは驚かされていた。さらに狂死郎は手紙の代読を続ける。
「あの時と同じく森の中を探索し、ソドー島に繋がる出入口無いか二人で必死になって探し渡りました。そしてとうとう発見したのです」
「おっ、遂に!」
「ドナルドとのご対面ですかねぇ」
「感動の対面かしらね」
遂に内容の核心へと近づき、リーファ、沖田、妙もその真相に期待を寄せていた。ペルソナの想いがついに報われる……と思われていたが、
「辿り着いたのはソドー島ではなく、大井川鐡○でした」
「えっ?」
「はい!?」
その話の顛末は予想の遥か斜め上へと着地していた。そう。ペルソナやストレアが辿り着いたのは、トーマスを模した観光列車に乗れる鉄道会社だったのである。(本当に実在している鉄道会社です)
思わぬ急展開となり、銀時やキリトらはつい体が固まってしまった。
「聞くところによると、本家と正式に契約を結んで走らせてくれるそうです。また次々とトーマスの仲間達を増やす予定で、これは私の推しであるドナルドを観光列車にするチャンスと思い、クラウドファンディングを始めました。良ければ皆さん支援してください、ペルソナとストレアより。とのことですね」
これにて狂死郎によるペルソナの手紙の代読が終わる。ソドー島ではなく、某鉄道会社に辿り着いたこと。さらには自身の願望を叶える為に、支援金の募集を開始したことを手紙でつらつらと綴っている。
このあまりにも突拍子も無い手紙の内容に、一行はまったく声が出なかった。悪い意味で。
「いや、ただの宣伝じゃねぇかぁぁぁぁ!!」
「静岡県まで行って、何やってんだよ! あのユイもどき!!」
とうとう我慢できなくなった新八や銀時が虚空に向かってツッコミを入れていた。もはや大声でも出さないと、このモヤモヤした思いは晴れない様子である。他の仲間達も予想とは違った展開に苦笑いを示す中、ユイだけはまったく違った反応をしていた。
「えっとこれは……」
「本当にこれで良かったのかしら……?」
「ペルソナさんが納得しているならそれで良いんじゃないですか!」
「「そうかな……?」」
疑問に思うキリトやアスナに、自信を持って肯定を続けている。ユイにとってはペルソナが新しい夢が見つかって何よりだと純粋に感じていた。キリトやアスナはやや納得がいかない様子であったが……。
こうして第二の夜の女王をもてなす計画は無事に終了。自身の野望や夢を叶えた時、ペルソナとストレアはまた高天原にやってくるのかもしれない。
「いや、もう来なくて良いですよ」
「どうせ次はCG時代のトーマスを話題にするんだろ」
新八や銀時は依然として浮かない顔をしていた……。
これにてホスト篇は終了! 波乱に満ちたカオスな展開は如何でしたでしょうか? 本当は全員ココアで全滅して、ユイとペルソナがマンツーマンで対峙する場面がありましたが、話の収集がつかなくなることを察して、銀時やキリトらを残す形となりました。新たな夢が出来て、ペルソナにとっても楽しいことが増えたのではないのでしょうか。
因みに大井川○道では実際にトーマスを模した機関車が走っております。いつかプライベートで行ってみたいですね!
次回予告
土方「サイコギルド……一体どこに隠れてやがるんだ?」
沖田「そろそろ黒剣さん達もホームシックになっても可笑しくない頃合いなんでねぇ」
山崎「大変です! かぶき町に変な穴が出来て……」
近藤「まさかサイコギルド絡みか!」
土方「行ってみるか……」
真選組異世界探訪篇 開幕!
次回 穴があっても無暗に入るな!
???「アナタ達は一体……?」