剣魂    作:トライアル

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今回より新たな中篇がスタートします! キーワードは天才ゲーマーです!


第百四十九訓 穴があっても無暗に入るな!

 ここはSAOが存在していた別の地球。とある街のとあるビルの一室にて、とある男性が銀色の怪人からあるものを手渡されていた。

「こいつはゲーマードライバー。このガシャットと呼ばれるアイテムをベルトに差し込むと、お前は仮面ライダーと言う存在に変身することが出来る」

 そう。銀色の怪人の正体はシャドームーン。彼はまた以前の後沢鋭二、金本敦と同様に、とある人間の運命を変える為に、その未来を変えようとしていたのだ。手始めに彼はエグゼイド系統のゲーマーライダーになれる変身ベルト、ゲーマードライバーを一人の男に手渡している。

「そいつを使って、お前の運命を変えて見せろ。最もその気概があればの話だがな……」

 シャドームーンはまるで男を挑発するように、鼻につくような文句を男にぶつけた。なお肝心の男性はまったく気にせず、新たな力を手に入れたことに大きく浮かれている。

「この力さえあれば……」

 果たして男の正体とは? そして手に入れた力の正体は如何に……

 

 

 

 

 

 

 

 一方でこちらは、現在キリト達が住んでいる銀魂の世界の地球。江戸は真選組の屯所より今回の物語は始まった。

「報告は以上か」

「えぇ、そうですね」

「山崎……念の為聞くが、サイコギルドに関する情報はあるか?」

「いいえ、まったく……」

「そうかい。分かった」

 山崎からの返答に土方はやや苦い表情を浮かべている。彼から受け取ったここ数カ月の情報に、サイコギルドに関する情報が入っていなかったからだ。

真選組も日々の仕事の傍ら、キリト達をこの世界に送ったきっかけとされるサイコギルドに関する情報を収集している。数か月前に起きたマッドネバーの件といい、彼らがよからぬことを企んでいることは明白だったからだ。だがしかし、ここ数日は何一つ有力な情報を得られていない。

 報告を終えた山崎が部屋を後にすると、同室にいた沖田と近藤が土方に向けて話しかけてくる。

「土方さん。最近よくサイコギルドの件について聞いてやすね」

「まぁ、そろそろ新たな情報が無いとあいつらも心配するだろ。なんやかんやでもうこの世界にキリト達が来て、四か月が経過している。ホームシックになっても可笑しくないからな」

「確かにその通りだな、トシ。だがこうも一行に情報が見つからないものなのか?」

「マッドネバーに加担していた奴の取り調べだと、次元間を行き来すると話していやしたから、見つからないように別の世界に潜伏している可能性もありますがね」

「ったく、なんて面倒な奴らだ」

 沖田の呟きに土方は思わず愚痴を漏らす。底知れぬ能力を持つサイコギルドに対し、彼は厄介で面倒な奴らと括っていた。無論それは近藤や沖田も同じ想いである。

 すると近藤は、サイコギルドに関する疑念を二人に打ち明かしていた。

「なぁ、トシに総悟。一つ疑問に思ったのだが、サイコギルドの最終的な目的って一体なんなんだ?」

「目的か……」

「キリト君達をこの世界へ勝手に送って、かたや別の星で戦力の拡大を図っていた。どうもこの二つが何の関連性も無いように俺は思うんだ……」

 深刻そうな表情で彼が話したのは、サイコギルドの目的について。真選組は万事屋やキリト達がこれまでに経験した夢の世界の出来事やエイジの一件をまったく知らない為、サイコギルドの活動自体が二つほどしか思い浮かんでいない。だからこそその目的については当初から疑念を抱いていたものの、未だに確証を得ていないのが現状である。

「バラけているが、戦力拡大の割にテロや侵略行為の兆候すら無いのが気になるな」

「あんなに怪人を用意したなら、どっかの星で暴れ回っていても可笑しくないんですがね」

「いや、もしあの怪人達がキリト君達のいた世界に襲撃をかけていたら……相当不味くないか?」

「だとしたら、なんでキリト達をこの世界に転移させたんだよ。まさかあっちの世界を滅亡させて、その後に元の世界に戻す悪趣味な目的の線もあるのか……?」

 三人は考えれば考えるほど、サイコギルドの目的の着地点が分からなくなってしまう。別の世界に行き来出来る情報があらゆる可能性も膨らませており、より一層の悩みの種になっていたのだ。

 会話が行き詰まり、鬱屈とした雰囲気が部屋に流れ込む中で……ふと山崎が焦った表情で部屋に戻って来ていた。

「た、大変です! 局長! 副長! 沖田隊長!」

「おい、どうした。そんなに慌てて……」

「江戸の裏路地に変な異空間が出来たとの通報が!」

「はぁ? 異空間?」

 山崎からの情報を聞き、三人は半信半疑でその話に疑問を抱く。聞いたことも無い通報に微妙な反応を示したものの、先ほどまでの話を彼らは思い起こしていた。

「おい。その異空間って、サイコギルドに関係することじゃないのか?」

「まさか……いや、あり得るか」

「とりあえず行ってみた方が良さそうですかね」

 今度こそサイコギルドに関する情報が見つかるかもしないと直感で感じ取り、三人は急いで現場に向かうことにした。

 この一件が彼らにとって、思わぬ出会いや出来事になることを……まだ知る由も無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 場面は変わって、こちらは江戸の一角にあるビル同士に挟まれた路地。よくある裏路地ではあるが、この日は真選組によって立ち入り禁止となり、現場には多くの隊士達が駆けつけていた。そこには虹色で出来た謎の穴が地面に出来ており、一見すると変わった色の水たまりにも見えなく無いが、底がまったく見えず、まるでどこかと繋がっているような不気味さを醸し出している。現状この謎の穴による被害者は出ていないが、真選組は大きな被害が起きる前に事態を解決しようと現場に駆け付けたのだ。

「こちらです。目撃者によると、朝に最初見かけた時は無かったようですが、コンビニから家へ戻る時にはこの状態になっていたと」

 山崎は近藤ら三人に通報された内容を事細かに伝えている。今日の明朝に出来たようで、犯人らしき人物は見かけていないとのこと。人為的なものか自然発生したものなのか、その正体は未だ謎が包まれている。

「随分と不気味な穴だな」

「近づいたら、まるで吸い込まれそうな感じですねぇ」

 土方や沖田もこの穴に対して、得体の知れぬ違和感を覚えていた。と同時に彼らは、この穴自体がサイコギルドの仕込んだものと感じている。

「これはまさか……サイコギルドの仕業か?」

「そうと決まったわけでは無いが、妙にその匂いがするな」

「もしかすると、奴らが次元間を行き来している痕跡かもしれやせんね」

 謎の穴を眺めながら、三人は思ったことをそのまま発していた。皆神妙な表情を浮かべていたが、その心情は一致している。この穴とサイコギルドは何かしらの繋がりがあると。三人はその確実な証拠を掴むべく、穴に気を付けながらじっくりと付近を観察している。

「あっ、皆さん。そんな近づかないでくださいよ。まだこの穴は分からないことだらけなんですから」

 山崎も念の為、三人の忠告を促していた。万が一穴に落ちた場合、どうなるか分からない為である。

 と近藤らが謎の穴を眺めていると……彼らはあるものを穴の奥から発見していた。

「おい、待て! 今!」

「どうした、近藤さん?」

「今……伊東先生の姿が!」

「はぁ? あいつの……?」

 近藤は穴の奥に一瞬だけ映ったある人物を見つけている。それはかつて真選組にて屈指の実力と才能を誇った隊士、伊東鴨太郎の姿であった。彼は真選組動乱篇にて命を落とし、この世界には存在していないのだが……。

 近藤は伊東の姿を見つけたものの、土方と沖田は残念ながら見逃している。

「何も見えませんけどね」

「近藤さん。何かの間違いじゃないのか?」

「いや確かに……」

 と二人が近藤の言ったことを否定しようとした……その時であった。

「あっ」

「どうした、総悟? まさかお前も伊東を見かけたのか?」

「いや、違う……」

「ん?」

 沖田も穴の奥からある人物を見かけていた。しかしそれは、沖田自身にも信じられないことであり、つい二人に言うことをためらってしまう。土方は沖田の様子の変わりようがつい気になっていた。

「おい、どうしたんだよ?」

「なんでもないんでさぁ」

「だから何かあった……」

 と無理やりにでも沖田に何があったのか聞こうとした時、

「えっ?」

「あっ」

沖田が軽やかに避けたところを土方は前進してしまい……彼の足元は謎の穴に移動してしまう。そう。不本意ではあるが、土方は穴の上に立ってしまっていた。

「おい……これって、うわぁぁぁ!!」

「トシ!!」

「副長!?」

 彼が気付いた時にはもう遅く、土方は垂直に穴へと落下していく。悲痛な叫び声を上げて手を伸ばすも、まったく掴むことが出来なかった。

「不味いな……絶対に会わせてたまるか!」

「おい、総悟! 勝手に行くな!」

 沖田はあることを危惧し、率先して自身を穴へと落下していく。それを見かけた近藤も、二人の跡に続いて穴に落ちて行った。偶然に起きた事故がきっかけで、真選組の三人は謎の穴に飛び込んでしまう。

「えぇぇぇぇ!! 局長!! 副長!! 沖田隊長!! 聞こえてます―!?」

 一気に上司が三人も穴に落ち、山崎は急いで声をかけるも、穴を見ると彼ら三人の姿が無かった。山崎は最悪の事態が頭をよぎり、どう対処するか困惑してしまう。

「と、とりあえずロープだ! 早くロープを!」

 穴に落ちた近藤らを救うべく、必死に打開策を練っていく。山崎のみならず、他の真選組の隊士達もこの事態を重く見て、緊急で近藤達の救出に当たることになる。

 そして穴に落ちた三人であるが……そこで彼らは予想外の人物と出会っていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫? ねぇ、大丈夫!?」

 女性の呼びかける声が耳元で届き、近藤と土方はようやく失った気を取り戻していた。

「ん? なんだここは……? って、近藤さん! しっかりしろ!」

「ト、トシ? 一体どうなったんだ、俺達は!?」

「分からねぇ。そもそもここは一体……」

 目覚めと同時に、近藤と土方は互いの無事を確認する。特に怪我等も無く、二人はそっと安心していた。だが穴からどこに落ちたのか、未だに分からずじまいである。

 すると二人にずっと呼び掛けていた女子が、話しかけていた。

「良かった~目覚めてくれて。おじさん二人が公園で気絶していたら、何事かと思ったよ」

「お、おじさん? って、俺達のことか!?」

「アナタ達以外に誰がいるの?」

 女子は近藤と土方をおじさん呼びし、二人が無事に目を覚ましたことに安心している。近藤は彼女の呼び方に納得がいかない様子だったが……。

 すると女子は続けざまに近藤らへ話しかけていく。

「そもそもアナタ達は何者なの?」

「それはこっちの台詞だよ。お前こそ何者だ?」

「私は兎沢深澄! 私立エテルナ女子学院に通う中学三年生よ」

「エテルナ女子学院?」

「えっ? 知らないの? ここじゃ有名な中高一貫校なのに」

 女子は元気よく自身の素性を明かしていた。彼女の名は兎沢深澄。近くの女子高に通う中学三年生とのこと。腰まである長い紫がかった黒髪と緑色の瞳が特徴的で、きりっとした顔立ちで中学生ながら少しの大人っぽさが際立っていた。制服を着用していることと付近の空模様から、恐らく帰宅途中に近藤らを公園で見かけて現在に至ると思われる。

 そんな深澄は近藤らが私立エテルナ女子学院について知らないことに違和感を覚えていたが……それもそのはず。ここは彼らがよく知っている江戸では無いのだから。

「おい、トシ。まさかここ……俺達のいた世界じゃないのか?」

「そうかもしれないな。だとすると可能性があるのは……」

 深澄の話で近藤と土方はすぐに自分達の状況を把握。あの穴に落ちたことで、この別の世界に来たと確信していた。そしてその世界は……キリト達のいた世界と勝手に予測を立てている。土方は早速その説を確かめるべく、深澄にあることを聞いていた。

「おい、深澄とか言ったか?」

「えぇ、そうだけど。何?」

「……アンタ、SAOって知ってるか?」

「SAO?」

 神妙な表情で土方が聞くと、深澄は驚いたような表情で返答する。

「あぁ、もうすぐ発売されるゲームのこと? もしかして、おじさん達もあのゲームに興味あるの!?」

 SAOと聞き、深澄は好きな話題だからか、テンションが少しばかり上がっていた。対し土方と近藤は、彼女の返答に困惑してしまう。

「もうすぐ発売……?」

「おい……確かキリト君達って、もうあのデスゲームをクリアしたはずじゃ」

「まさかここは……キリトのいた世界の過去なのか?」

 そう。キリト達から聞いていた話と大きく異なるからだ。断片的でしか彼らも聞いていないが、近藤らはキリトらが元の世界でデスゲームをクリアしたことは知っている。だからこそ深澄の言った発売前と言う言葉には矛盾が生じ、その点から土方は今自分達がいる時間軸が、キリト達がSAOを経験する前の時間軸。所謂過去の世界だと察していたのだ。

「ねぇ? さっきから何を言ってるの? デスゲームとかキリトって何のこと? そもそもおじさん達のこと、まだ何も聞かされてないんだけど」

「……しゃねぇ。洗いざらい話すか」

 一方で深澄は、ぶつくさと言っている土方らの会話を何一つ理解していない。これ以上話をすれ違いさせるわけにもいかず、近藤と土方は深澄に自分達の素性や起きたことをありのままに伝えていた。もちろん自分達が別の世界の人間や真選組であることも全て伝えきっている。

「えぇぇぇぇ!! 新撰組じゃなくて真選組の近藤勇と土方歳三なの!?」

「いや、俺は勲な」

「俺は十四郎だよ。微妙に違うけどな」

 当然深澄は、近藤や土方の話を聞き騒然としてしまう。別の世界の新撰組……いや、真選組の存在がにわかに信じられなかったからだ。彼らから見せてもらった別の世界の運転免許証や警察手帳を見て、ようやく二人が嘘を言っていないことだけは理解している。

「アハハハ! 凄! 私、異世界の新撰組と会っちゃったんだ!」

「おい、そんな笑うことかよ」

「ごめん、ごめん。例え嘘だとしても、あまりにも展開が面白くてさ。こういう刺激的なこと、私大好物だし!」

「そんなにんまりとした笑顔で言わなくても……」

 思わぬ未知との遭遇を経験し、深澄は思わず笑いをこぼしていた。彼女は漫画やゲームのような異世界から来た真選組に対し、大きな興味を示したのである。

「でも、おじさん達の言うことは信じるよ。服装もしっかりしていて、証明書もあるから、多分別の世界の人なんでしょ?」

「今更だがあっさりと信じるんだな」

「まぁ、直感でね!」

 明るく振る舞い、何一つ土方らに疑いをかけてこない深澄。そんな彼女の純粋さに近藤は密かに感銘し、土方はすんなりと話が通じて安心していた。

 すると深澄は思っていた疑問を二人にぶつけている。

「でも気になったんだけど、なんでSAOのことは知っているの? もしかして別の世界にもSAOがあったの?」

 それは土方が聞いてきたSAOの一件だった。もうすぐ発売されるゲームを、何故異世界の住人が知っているのか。彼女は特にこのことが気がかりであった。

 すると土方は真面目な表情のまま、包み隠さず自分の知っていることを話していく。

「俺達の世界には無いが、俺達とは違う世界から来た奴らにそのゲームのことを教えられたんだよ」

「えっ? どういうこと?」

「実はつい最近、違う世界から来た人間が俺達の世界に転移してきたんだ」

「えっ!? じゃ、おじさん達と同じ?」

「そうだな。状況は似ている。そいつらのうち一部の奴らは、SAOのゲームをクリアしたと聞いている。そのSAOはゲームの世界からログアウト出来ず、ゲーム内の死が現実の死に直結するいわばデスゲームだったこともな」

「えっ……SAOがデスゲーム?」

 その一言を聞き、深澄の表情は段々と薄暗くなり始めている。彼女の持つ期待を崩すことにはなるが、土方は構わず自分の知る真相を打ち明かしていた。

「俺達も全てを知っているわけじゃないが、そのゲームを遊んだ奴らからは相当苦労したことは聞いている。過酷で何度も困難に直面したことも。なんなら何度も死ぬ目に遭ってきたと……だからお前さんもSAOはやらない方が良いかもな。下手したら、死ぬぞ」

「そ、そうなんだ……未来だとそんなことが起きていたんだ」

 土方から聞いたSAOに関する話に、深澄は大きなショックを受ける。まさか自分が数日後にやろうと思っていたゲームで、物騒な事件が起きるなんて思ってもいなかったからだ。困惑した表情に変わるも、どこか彼女はこの話を聞いて納得している。

 すると、近藤は土方にある助言をしていた。

「ト、トシ? ちょっと良いか?」

「なんだよ」

「さっきのこと、深澄君に全て言って良かったのか?」

「いや、幾らゲームが楽しみだろうと、命を落ちしたら不味いだろ。ここは現実を突きつけてでも止めた方が良いと俺は……」

「いや、そうじゃなくて! もしキリト君達が今後出会う人間だとしたら、未来が変わっちゃうんじゃないのか?」

「えっ? そうなの?」

「タイムパラドックスだよ! 深澄君がいたことで、もしかしたらゲーム攻略に繋がった可能性だってあるかもしれないだろ! もし彼女が不参加になったら……」

 そう。近藤は過去が変わることを勝手に心配している。深澄がSAOに参加しないことで、キリト達の未来に変化があったとしたら……今銀魂の世界に来ているキリト達にも影響が出かねないと近藤は思っていたのだ。

 そんな近藤からの助言に、土方は段々と血の気が覚めたような表情に切り替わる。もしかすると自分はとんでもない分岐点を作ってしまったと思い込んでしまう。

「お、おい! ちょっと待ってくれ!」

「えっ。どうしたの?」

「お、お前! キリトやアスナ、ユイは知っているか?」

「だ、誰? その人達?」

「だったらシリカやリズベット、リーファやシノンは? クラインにエギルは?」

「……知らないけど、もしかしてその人達がSAOを攻略したプレイヤーのこと?」

「お、おう。そうだ。一部違う奴らもいるが、大方それで合っているぞ」

 土方は念の為、思いつく限りのキリト達の知り合いを深澄に聞いている。どうやら全員とも関りが無く、現状ではタイムパラドックスの影響は薄いと自分で勝手に納得していた。そうでもしないと、不安が拭いきれないからである。

「だ、大丈夫だよな、近藤さん? 未来変わったりしていないよな!?」

「お、俺に言われても……」

 心配で体が震えてしまい、近藤にも同意を求める始末であった。自分のお節介が招いた事態に、土方は内心でこっそりと反省していく。

 そんな中で深澄は晴れ晴れとした表情で、再度近藤らに話しかけてきた。

「でも、そっか。だけど踏ん切りは着いたかな」

「踏ん切り?」

「実はSAOって怪しい噂とかいっぱいあって、やるかちょうど悩んでいたところでね。もしデスゲームだって言うなら、別のゲームにシフトしても全然良いかなって思っていたからさ」

 彼女自身も密かに聞いていた不穏な噂から、SAOを遊ぶか悩んでいたところであり、そこに土方らの話が加わって、きっぱりと止められた様子である。土方からの助言はまったく迷惑に思っておらず、むしろ危険を知らせてくれたことに大変感謝していた。

 そんな深澄のゲームを話題にした時の楽しそうな様子に、近藤らは彼女の本心が少しばかり気になっている。

「思ったんだが、君はゲーマーなのか? 聞いた限りだと、そのエレクトロ女子学院はお嬢様が通う進学校にも思うんだが」

「近藤さん。エルテナ女子学院な」

 微妙に名前を間違えた近藤に、土方はそっと訂正を加えていた。言い間違いはさておき、深澄は二人に自分の抱えていることを打ち明かす。

「うん、そう。と言っても親には内緒だけどね」

「内緒?」

「ウチの親、そこら辺厳しくてね……だから内緒でゲームセンターに通ったり、ネットゲームに打ち込んでいるわけ」

 さらに彼女は一呼吸を置いて、自身の本心をさらに声にしていく。

「親が思い描く理想の娘と自分のやりたいことって一致しないよね……勉強は嫌じゃないけど、どうせなら偽っている自分より、本当の自分を認めてもらいたい気持ちもあるけどね。そんな日がいつか来るのかは分からないけど……」

 寂しげな表情で語ったのは、自分の持つ悩みについて。親の理想像と自分理想像の狭間で、彼女は今大いに悩まされていたのだ。過度な期待に答えなくちゃいけない焦燥感と、勉学とは違うことで自分らしさを磨きたい本心。その葛藤を今もなお、深澄は続けている。

 そんな深澄の心からの叫びに、土方と近藤は各々が思ったことで返答していく。

「確かに進学校の親なら、厳しくて過剰に子供へ期待するよな。その上、自分のやり方通りにしないと気が済まない上に、すぐ態度が顔に出るもんな。○型の女みたいなもんだよ」

「あれ? 土方さんももしかして私と同じ感じだった?」

「いや、違う。トシはB○の女に偏見があるだけど」

「おい、伏字がズレているぞ。読者にバレるだろうが」

 土方はさり気なく○型の女への偏見を交えつつ、深澄の想いに共感している。

「でもまぁ、どんなに親から言われようと、最終的に決めるのは自分自身だ。それに答えなんて今出さなくても良いんだよ。いつか答えを出す時のギリギリまでな」

「俺達みたいな田舎の芋侍でも、真選組を仕切る立場になれるからな。大丈夫だ! きっと深澄君はどっちに進んでも、大成すると俺は思うぞ!」

 土方、近藤共に自分なりのアドバイスを交えて、深澄の背中を押していた。共に深澄の悩める心に共感し、彼女が本当にやりたい道を選ぶことを切に願っている。

 そんな二人からの愚直な一言に、深澄はほんのりと心が温まっていた。

「えっ、どうした? 何か不味いこと言ったか?」

「いや……近藤さんや土方さんみたいな人が親族にいたら、こうも我慢せずに済んだかなーって」

「えっ、どういうこと?」

「いや、なんでもないから!」

 彼女は素直に二人からの言葉に胸を打たれている。悟られないよう咄嗟に二人へ誤魔化そうとした時、バックからあるものが転げ落ちてしまう。

「なんだこれ? 天才ゲーマーM?」

「あっ、待って! これは私の大切なものだから!」

 土方が拾い上げると、それはサインが刻まれた小さなぬいぐるみである。一頭身のゲームキャラっぽい見た目をしているが、このぬいぐるみは深澄にとって大切な代物だった。

「もしかしてそのゲーマーって、深澄ちゃんの憧れている人のことか?」

「そ、そう。これはゲームセンターの大会で手に入れたものでね。天才ゲーマーMは、あらゆるゲームにてハイスコアを叩きこむゲームのプロフェッショナル。でも素性も姿も明かさずに、ゲーム内のアバターと声しか確認出来ていないか、正体は未だに分からずじまい。声だってボイチェンで変えているって公言しているし。私……そういう孤高のゲーマーに憧れていて。何をするのも、てっぺんを目指したいものじゃない?」

 深澄は自身の憧れているゲーマー、通称Mについて土方らに話していく。彼女曰く素性の読めない謎多きゲーマーで、天才的なプレイスキルで多くのファンを熱狂しているとのこと。深澄もこのMのファンであり、彼女の持つぬいぐるみはMが主催したゲーム大会で優勝し入手したものらしい。

 深澄の憧れている存在を知り、近藤は大きく感激していた。

「うぅ……トシ! 深澄ちゃんはなんて健気なんだ!」

「泣くなよ、気持ち悪い。まぁ、目標があることは良いんじゃないか。聞いた限り、アンタは大層な努力家だよ。勉強とゲームの両立なんて、そう簡単に出来るもんじゃねぇ。そこから辺はもっと自分を誇っても良いと思うぞ」

「フフ、ありがとうね。近藤さん、土方さん!」

 土方も深澄の努力的な一面を褒めている。負担ばかりかかる深澄に少し不安を覚えていたが、努力家かつ根気強い彼女なら大丈夫と内心で土方は察していた。二人はこの世界で初めて出会った深澄を心から応援することに決めた。

 そう互いの素性や身の回りのことについて三人での会話が続いていた時、深澄はふとある人物を思い起こしていく。

「あっ、そうだ。私のゲーム友達にオカルト系に詳しい人がいるから、その人に元の世界に戻れる方法が無いのか聞いてみる?」

「えっ、良いのか?」

「ちょうどその話をこの間にしていたし。色々話してくれたお礼に、手伝わせてよ! ちょっと待っていてね」

 自身の知り合いにオカルト系に精通した人物がいるらしく、近藤らの手助けになると思い彼らへ提案していた。早速深澄は携帯電話を手にし、その人物に要請をかけていく。

 快く協力してくれる深澄の優しさに、近藤は再び感激していた。

「いやぁ~なんて立派な娘さんなんだ」

「さっきからなんで父親面になってんだよ」

「だって、深澄ちゃんは俺達が親族だったら良いのに言ってくれたからな!」

「ただのお世辞だろ」

「えっ、そうなの!?」

 勝手に親族のように振舞う近藤に、土方はボソッと冷静にツッコミを入れている。舞い上がる近藤であったが、対照的に土方は冷静に別の問題について考えていた。

「それよりも総悟の行方も知りたいところだな」

「そういえば、近くにいなかったよな」

「恐らくこの世界にいると信じたいが……」

 まずははぐれてしまった沖田の行方について。同じ穴に落ちた分、この世界のどこかにいると予想を立てていたが……不明瞭な点があり、少々不安を感じてしまう。

 一方で近藤にもある疑問が思い浮かんでいた。

「それにあの時、写った伊東先生は一体何だったのかもまだ分からないからな」

「まだ言っているのかよ。ただの気のせいじゃないのか?」

「いや、俺は見たぞ! あの姿に眼鏡は間違いなく伊東先生だ!」

「じゃ、この世界に伊東がいるっていうのか?」

 それは穴から見えたかつての同志、伊東鴨太郎の行方である。土方は気のせいと近藤を諭すも、依然として近藤はまったく自身の勘を疑わなかった。

 そう二人で伊東の件について話していた時である。

「ちょっと君達、良いかな?」

「えっ?」

 二人の背後にある男性が話しかけてきた。咄嗟に振り向くとそこには……予想外の人物が目に写り込んでいる。

「警察のものだが、君達はここでしているのかな?」

 しっかりとした口調で話しかけてきたのは……伊東鴨太郎に似た男性であった。服装は警察官のような服装を着用しているが、明るめの茶髪と細めの眼鏡、さらに落ち着いて生真面目な雰囲気から、二人がよく知る伊東の姿と大きく酷似している。

 当然二人にとっては信じがたい出会いであった。

「い、伊東!?」

「やっぱり先生だ!」

 思わず驚きの声を発し、困惑した態度を出してしまう。一方で男性の方は、近藤らの態度に疑問を感じていた。

「ん? なんで君達は僕の名前を知っているんだ?」

「いや、それは……」

「これには深い訳があって……」

 なんと男性の苗字まで、伊東と同じだったのである。もはや偶然で片付けることが出来ず、二人は目の前の男性をこの世界で生きている伊東鴨太郎と勝手に錯覚していた。

 互いの素性が知れずこう着状態が続く中で……友人との連絡を終えた深澄が近藤らの元に戻ってきている。

「ちょうど時間あったから、すぐ駆けつけてくれる……ってアレ?」

 深澄は近藤らと伊東が鉢合わせしているのを目撃。すると彼女はあることに気付いていた。

「伊東巡査!」

「じゅ、巡査!?」

「へ!?」

 そう。伊東と深澄は顔見知りだったのである。伊東を見かけるや否や、深澄は彼に敬礼のポーズをして挨拶していた。

「お仕事、ご苦労様です!」

「なんだ。深澄君か。もしかして君の知り合いか?」

「そうなんですよ。あっ、伊東巡査。もし良ければ、手を貸してもらいませんか? この人達、別の世界から来ていて……」

「うわっぁ!!」

「おい、ちょっと待て!!」

 敬語でスラスラと軽快に伊東と会話する深澄だったが、ノリよく近藤と土方の正体まであっさりばらそうとしている。深澄の行動に対し、二人は慌てて彼女の口を塞いでいた。

「おい! 何をストレートにお願いしてんだよ!」

「えっ? だって警察の手を借りた方が早くない? 流石に私の知り合いだけじゃ、情報もあんまり集まんないと思うし」

「だとしても、もうちょっと伝え方があると思うが!」

 深澄はあくまで善意から警察の手を借りようとしたものの、近藤や土方は段階を踏まずに突き進む深澄のやり方に注意を加えている。必死な表情で深澄に注意する二人だが、肝心の深澄はあまりよく分かっていなかった。

「とりあえず話を聞かせてもらおうか?」

 何の話をしているかまったく分からない伊東は、再度深澄、近藤、土方に何があったのか詳しく聞くことにする。こうして三人は伊東に何が起きたのか、嘘偽りなく話すことになったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 その一方で肝心の沖田はと言うと、

「ん……? ここは?」

彼が目覚めるとある和室で寝ころんでいた。訂正に掛け布団がかけられており、恐らく誰かが助けてくれたと沖田は薄っすらと察している。

「何が起きたんでい……」

 それでも現在の自分の状況はあまりよく分かっていなかった。穴に落ちた後、結局何が起きたのか。

 一人で勝手に考え込んでいると、和室にある人物が入って来る。

「あら。もう起きたのね。お体の方は大丈夫ですか?」

「えっ……」

 その人物と目が合った時、沖田は困惑した表情を浮かべてしまう。彼に話しかけたのは着物を着たおしとやかな女性。自身と同じ色の茶髪と赤い目。何よりもその優しそうな表情に、沖田はある女性の姿と重なり合わせていた。それは……かつて生き別れた自身の姉、沖田ミツバである。今目の前にいる女性はそのミツバと姿や雰囲気が大きく酷似していたのだ。

「あ、姉上……?」

「えっ? 姉上?」

 信じられない出会いに騒然とする沖田だが、対しミツバは沖田の態度にどこか違和感を覚えている。てっきり誰かと勘違いしているものと察していた。

 

 こうして近藤、土方、沖田は、まったく知らない異世界で、思わぬ人物と遭遇。果たして元の世界へ無事に戻ることは出来るのだろうか。




 真選組異世界探訪篇 第一訓は如何でしたでしょうか? 近藤、土方、沖田が来てしまったのは、なんとSAOの過去の時間軸。そこで思わぬ人物と出会い、はたまたそっくりさんと出会うことになりました。この話でまたサイコギルドに関する新たなことが分かるのかもしれません。
 今回のお話でメインを貼るのは、真選組とSAOのプログレッシブの重要人物であるミトこと兎沢深澄! 残念ながらアバターが登場するかは未定ですが、真選組が初めて出会った人物として活躍してくれました。この時の深澄はまだ色々と悩んでいた時期でもあったので、近藤や土方の助言で良い方向に向くと良いですよね。それにしても土方の助言で、SAOに行かなくなる可能性も出てきましたが果たして……
 さらに伊東鴨太郎や沖田ミツバもそっくりさん枠として参戦! 特に伊東はミトと毒親の被害者繋がりで共通点があるので、是非別人だとしても二人を共演させたかった節があります。
 そして次回はまた急展開! ……があるのかも。






次回予告

伊東「僕は彼女に、僕のような想いを味わってほしくないんだ」

土方「良いんだよ。これで。本当のことを伝えて、ショックを受けたらどうするんだよ?」

深澄「こちら私のゲーム友達ね」

近藤「き、君は!?」

ミツバ「分かったわ。私も一歩前進してみるわね」

沖田「その方が良いと思います。姉……ミツバさん」

次回 そっくりさんは自信が無い奴ほど似ている
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