「って、お前かいぃぃぃぃぃ!!」
窮地に陥った土方達の前に現れた金髪の男性。深澄の持っていた携帯ゲーム機を介して現実に出現した彼の正体は、彼女が憧れる天才ゲーマーのエムである。その容姿は近藤ら三人もかつて出会ったことのある伝説のハンター、エムのアバターと酷似していた。というよりこの世界で活躍しているエムそのものである。三人はアバターの中身が彼らのいた世界と同様に、無職の長谷川泰三と予想。美味しい場面を持っていかれて、やや納得のいかない表情を揃って浮かべている。
「もしかして、天才ゲーマーのエムなの!?」
一方で深澄は、聞き覚えのある声や口調から、すぐに金髪の男性がエムだと察していた。普段は表舞台に顔を出さないエムのアバターを間近に見られて、目を輝かせて彼に憧れを感じている。
そんな羨望の眼差しで見つける深澄に、エムもやっと彼女に話しかけていた。
「どうやら俺を呼んだのは君のようだな。でもまさか、ゲームを飛び出して現実に出てくるなんて思いもしなかったが」
「それはあのアナザーパラドクスとかいう黒野郎の仕業で……! でも、エムさんに出会えて、とっても感激です!」
「ありがとう。君の期待に応えられるか分からないが、困っているなら手を貸そうでは無いか。あのアナザーパラドクスさえ倒せば良いのか?」
「もちろん! アイツ目的の為なら、人殺しも誘拐もウイルス感染もする悪い奴だから、徹底的に叩きのめさないと!」
エムは深澄に協力的に接しており、快く彼女へ手を貸すことを決めている。無論深澄はアナザーパラドクスの打倒を託しており、彼に指を指しながらこれまで行った悪行の数々をエムに話していた。
「お前……言わせておけば!」
「正論言われて逆上してんじゃねぇよ」
「その腐った根性、俺達が叩き切ってやる!」
それを聞いたアナザーパラドクスは怒り狂うも、土方や近藤からは一喝されている。自分が蒔いた種と称し、屁理屈をこねる彼に再度敵意を剥き出しにしていた。
近藤ら三人もエムの元に駆け寄って、臨戦態勢を再び整えていく。刀を握りしめて、標的をアナザーパラドクスへと差し向ける中で……エムはふと沖田の方を目にしていた。
「ん? どうしたんでい、マダオ……いや、エムさん」
「別になんでもない」
何か言いたげな様子であったが、彼は咳払いをして何事も無く接している。沖田もエムのこの行動に関しては、特に違和感を持っていなかった。
エムが参戦したことにより、戦況は確実に真選組側へと傾いている。アナザーパラドクスにとっては四面楚歌な状況と化し、周りを敵に囲まれてしまう。彼は増々余裕が無くなり焦り始めていた。
「たかが一人仲間が増えたところで無意味だ! この僕にはエナジーアイテムが……」
そしてまたもエナジーアイテムで、戦況を有利に進めようとした時である。
「残念だが、それを好き勝手に扱えるのもそれまでだ」
「何だと!?」
「俺にはこれがあるのだからな!」
〈逆転!〉
エムはアナザーパラドクスへの襲撃がてらに、彼から奪い取った一枚のエナジーアイテムを使用していた。それは上下に絵柄の異なる逆転のエナジーアイテムで、これを使用するとアナザーパラドクスにある異変が生じている。
「何!? エナジーアイテムが来ない!?」
そう。先ほどまで自在に呼び寄せていたエナジーアイテムが、まったく手元に届かなくなったのだ。彼が困惑している隙に、エムは代わりに逆転のエナジーアイテムについて説明している。
「どうやらこのチップは、自身と相手の能力変化を入れ替えることが出来るらしい。つまりお前の能力を、俺が奪い去ったということだ!」
「なんだと……!!」
手探りではあるが逆転の効果が、能力を入れ替えるものと予想。自身に有利な空間を展開したアナザーパラドクスだが、エムと能力を入れ替えられたことにより、エム自身にとって有利な空間となっていたのだ。つまり、アナザーパラドクスは増々不利な状況へと陥っていたのである。
「す、凄い! 流石エムさん!」
「これがこの世界のゲーマーの戦略か……」
「つーか、俺達の出番食ってないですかい?」
「ここまでやると、敵にとっては理不尽過ぎるだろ」
エムの戦略を目の当たりにして、さらに感激する深澄。対し近藤らは、エムの対応力並びに目当てのアイテムを引き当てる豪運に唖然としてしまう。沖田や土方はむしろ敵側に同情する始末であった。
するとエムは、即座にあるエナジーアイテムを引き寄せて、それを深澄に渡している。
「良ければこれを使ってくれ。今の君にとって最適なチップだと思う」
「これは……」
深澄が手にしたのは、鏡の前でポーズを決める謎のエナジーアイテム。エムは直感で彼女にこのチップを渡している。詳しい説明もないまま深澄がチップ全体を眺めていると……咄嗟にその効果が発動していた。
〈モノマネ!〉
「えっ!? きゃ!?」
「何!?」
チップから放たれた光を浴びた深澄は、次第にその容姿が変化していく。白色のケーブを羽織り、胸当てや腕具が瞬時に生成されて着用される。服装も制服からファンタジー風の服に、足元はサイハイブーツに変わっていた。顔つきに変化は無いが、目の色が緑から赤に移り変わっている。ゲームのアバターのような姿に変化すると、その手には自身の背丈ほどある両手鎌を手にしていた。
そう。深澄はモノマネのエナジーアイテムの効力によって、自身が思い描くアバターの容姿に変身したのである。
「こ、これって……」
「深澄君の姿が変わった!?」
想定もしていなかった変身をして、深澄は大いに困惑してしまう。間近で見ていた真選組の面々も同じような反応を示していたが、エムだけはまったく動じていなかった。
「思った通りだな。このチップは、君の理想の姿を具現化する能力を持つようだ。最もこのゲームと現実が織り交ざったフィールドでしか、効果を発動しないようだが」
「そうなんだ……ってことは、これで私も戦えるんだね!」
エムは推測を織り交ぜながら、モノマネのエナジーアイテムについて深澄に話していた。それを聞いた深澄は大きな自信を感じ取っていく。この力でアナザーパラドクスを打ち倒せると確信している。
その一方で、土方は深澄を戦いに巻き込ませることに否定的であった。
「おい、エム! こんな戦いの素人、勝手に巻き込んでどうすんだよ!? この戦いはゲームじゃないんだぞ!」
「そんなことは重々承知だ。だが相手は、ゲームの能力を持つ奴だ。正攻法だけじゃなく、俺達のようなゲームに精通した者もこの戦いに必要だと思うが」
「それは……」
エムを一喝しようとするも、彼なりの理由を聞き土方は思わず言葉に詰まってしまう。相手がゲームの能力を主体としたダークライダーならば、真選組のみならずエムや深澄の力も必要不可欠だと土方は次第に感じ取っていた。
一方の沖田と近藤はある視点から、深澄やエムの加勢は好意的に受け取っている。
「まぁ、良いんじゃないですかい。あのエナジーアイテムってさえなければ、ただの雑魚ですよ。あの男」
「確かに歯ごたえの無い相手ではあるな。隙だらけだし、俺達が補佐すりゃ深澄君でもやっつけられる相手だと思うぞ」
二人は完全にアナザーパラドクスこと柳井の実力を低く見ていた。エナジーアイテムを好き放題使える能力を失った彼にとっては、対した強敵でも無いと判断している。無論それは土方も密かに感じていたことで、二人の主張に何一つ反論しなかった。当の本人は彼らの舐めた態度に怒りを覚えていたが。
「お、お前達! さっきから黙って聞いていれば、僕を何だと思っているんだ! 僕は全然隙だらけじゃ……」
激高してかんしゃくを起こしながら、土方らに向けて必死に否定を試みたが、
「よし、ほどいたぞ!」
「えっ?」
「ありがとう、おまわりさん!」
その間になんと、伊東が拉致された少女を縛っていた縄をようやく解放。彼に仕向けていたはずの拘束状態がいつの間にか解消されており、エムや土方と言い合っているうちに、肝心の人質まで奪われていた。
伊東は少女を背中に乗せて、おんぶしたまま土方らの元へと戻っている。貴重な人質すらあっけなく取り戻される間抜けぶりを、近藤らに見せつけていた。
「隙だらけじゃないですかい」
「もしかして、私の出番無し?」
「どう考えても詰みだろ。いい加減お縄につけよ」
沖田、深澄、土方と思ったことをそのまま発している。あれだけ息巻いたアナザーパラドクスの威勢が一気に縮まり、土方はむしろ彼に降伏すら垂れ流していた。正真正銘後の無くなったアナザーパラドクスだが……彼はまだ諦めずに足掻こうとしている。
「ふざけるな……お前達! 僕は絶対アンダーワールドに行くんだ! こうなったらお前ら全員倒して、ウイルス感染してやる!」
逆切れのような素振りを見せて、彼は隠し持っていたあるエナジーアイテムを発動した。
〈分身!〉
複数体の影が映ったチップを掲げてそれを発動すると、アナザーパラドクスの左右に二体の分身が出現する。
〈パーフェクトパズル!〉
〈ノックアウトファイター!〉
分身体はそれぞれに応じたゲームの姿に変化し、パズルゲームを模したパズルゲーマーと格闘ゲームを模したファイターゲーマーへと変わっていた。どの姿も原典と異なり黒と灰色一色に染められており、覇気の無い様子から忠実なアナザーパラドクスの傀儡であることが伺える。彼は自身の手数を増やして、無理やりにでも少女にウイルス感染しようと考えていた。
「何? 分身戦術か?」
「往生際が悪い奴ですねぇ」
諦めの悪いアナザーパラドクスに揃ってため息を吐くエムと沖田。そのしぶとさを面倒に感じつつも、それでも少女を守り切るべく、彼らは戦う意思を固めていく。
「近藤さん、土方さん! 私も戦うから、一緒にこの空間から脱出しよ!」
「分かったよ。ただし無茶だけはするなよ」
「君の力も存分に借りるかもしれない。宜しく頼むぞ!」
「もちろん!」
深澄、土方、近藤も沖田らと同じ想いであった。土方は深澄に無謀な行動だけはしないよう釘を刺している。一応は条件付きで、彼女との共闘を認めてくれたようだ。
こうしてゲーム空間と現実が織り交ざった廃工場にて、近藤、土方、沖田、深澄、エムは各々の武器を握りしめ、自身の野望を叶えるために暴走するアナザーパラドクスに向けて、大きな闘志を燃やしていく。
「だいじょうぶかな……おにいさんたち」
「心配するな。彼らは十分に強い。きっとアイツにも勝てるはずだ」
つい近藤らを心配する少女にも、伊東は彼女に目線を合わせつつ、彼らを信じるように諭していた。僅かな時間しか交流してはいないが、それでも近藤らもとい真選組が強くて頼りになる存在なのは十分に感じている。だからこそアナザーパラドクスの撃破を彼らに任せて、自分は彼から少女を守り切ることに決めたのだ。揃って物陰から、五人の勝利を願っている。
「ええい! やれぇ! 我が分身たちよ!!」
「てめぇら、行くぞ!」
「あぁ、ノーコンティニューでクリアしてやる!」
「あぁ!」
「おう」
「オーケー!」
やけくそ気味に分身を差し向けるアナザーパラドクス。対し土方やエムの掛け声で、彼らも一斉にパラドクス軍団に向かって突進していく。少女を守り切る為、このフィールドから脱出する為の戦いが今始まったのだ……。
〈伸縮化!〉
「おっと!」
「かわせ!」
「もちろん!」
傀儡のアナザーパラドクス(パズルゲーマー)と対峙するのは、近藤、土方、深澄の三人。本人同様にエナジーアイテムを巧みに操る戦法に、近藤と土方は己の実力だけで張り合っていく。二人は深澄を補佐しながら、柔軟に戦いを進めていた。
「くっ! こいつはあのエナジーアイテムを自在に使えるのか!?」
「分身までは効果が効かないみたいだな」
度重なるエナジーアイテムを使った戦法に、近藤、土方は次第にその厄介さに飽き飽きとしてしまう。あらゆる効果を発揮するエナジーアイテムを逐一相手することに、多大なる労力を消費している。
そんな二人を深澄は叱咤激励していく。
「だったら私達で使えば良いだけ! もしくは奪い去るのみ!」
「おい、待て!」
彼女はアナザーパラドクスのエナジーアイテムに狙いを定めており、あわよくば自分達の手で使用しようと考えていた。土方の制止を振り切り、深澄は両手鎌を構えたまま、アナザーパラドクスに接近していく。
「フッ」
咄嗟にアナザーパラドクスがさらなるエナジーアイテムを使用しようとした時であった。
「そこ!」
「な!?」
なんと深澄は斧の先端部分を取り外し、鞭のようにアナザーパラドクスへ向けて投げ飛ばしてしまう。所謂不意打ち攻撃が狙い通りに決まり、アナザーパラドクスは複数枚持っていたエナジーアイテムを手放している。
「よっと! 近藤さん、土方さん! これを使って!」
それを難なく深澄は手にして、そのうちの二枚を二人に投げつけていた。
「ありがとう、深澄君!」
「同じくな。こいつで仕留めるぞ、近藤さん!」
「おう!」
二人は深澄に感謝しつつ、早くもそのエナジーアイテムを発動している。
〈鋼鉄化!〉
〈発光!〉
近藤が発動したのは防御力を上げる鋼鉄化。土方は強い光を身に纏う発光を発動した。
「そこだ!」
「くっ!?」
近藤はアナザーパラドクスの攻撃を顧みずに突撃。鋼鉄化で防御力が上がっているおかげか、一切のダメージを受けないまま、自慢の一刀を浴びせていた。
「おまけにこいつだ!」
「ぐはぁ!」
さらに土方が追撃を仕掛けている。発光のエナジーアイテムで、彼の持つ刀が眩い光を纏っていく。それに目をくらませているアナザーパラドクスに向けて、連続した一刀を仕掛けている。連携にとれた二人の攻撃を真に受けて、近くの壁へと吹き飛ばされたアナザーパラドクスだが、ここで深澄が最後の一手を披露していく。
「今だ! やれぇ、深澄!」
「任せて!」
〈巨大化!〉
彼女は同じくアナザーパラドクスから奪い取ったエナジーアイテムを発動。対象を何倍も大きくさせる巨大化の能力を使い、自身の持っていた両手鎌を三倍ほどの大きさに変化させていた。
「吹っ飛べ!」
それを力づくで持ち上げて、アナザーパラドクスへ目掛けて被弾させている。
「うわぁ!? ぐはぁぁっぁ!!」
巨大な両手鎌が当たり、大きなダメージを負ったアナザーパラドクスは断末魔を上げながら爆散。爆発の衝撃で辺り一面に火花が散り、三人は程なく勝利を確信していた。
「よしっ! やったね、二人共!」
「あぁ! 流石だぞ、深澄君!」
「素人にしてはよくやった方じゃねぇのか?」
「って、土方さんは素直じゃないんだから」
勝利にはしゃぐ深澄を、緩やかに落ち着かせる近藤と土方。いずれにしても、彼女のがむしゃらな作戦で勝利をもぎ取ったと見て間違いないであろう。難局を乗り越えて、土方も一安心している。
「はぁぁぁ!」
「はぁ!」
「そこでさぁ!」
一方で傀儡のアナザーパラドクス(ファイターゲーマー)と戦うのは、エムと沖田の二人。パズルゲーマーと異なり接近戦を主体にして戦うファイターゲーマー状態のアナザーパラドクスに、二人は真正面から戦っている。
「なら……!」
するとアナザーパラドクスは、近くのブロックを壊し、エナジーアイテムを入手して戦況を変えようとするも、
「させるか!」
「何!?」
エムの手によりエナジーアイテムが彼に吸い寄せられてしまう。アナザーパラドクスが入手しようとした二枚のエナジーアイテムが、エムの手に渡っている。
「これを……君に渡しておこうか」
「ありがとうございやす。マダオ……いや、エムさん」
それを沖田に渡すがてら、彼はつい気になっていることがあった。さっきから沖田が言いかけているマダオという言葉である。
「なぁ、そのマダオというのは一体なんなんだ?」
「それは俺達の世界にいたエムの正体でさぁ。イケメンかと思いきや、中身は冴えない男で、通称マダオって呼ばれていたんでねぇ」
エムは沖田の話を聞き、エム自身が別の世界にいたことを把握した。中身とのギャップがあるものと聞き、彼はどこか親近感を覚えている。
「なるほどな……ならばもし君が俺の正体を知ったら、きっと驚くかもしれないな」
「そいつはどういう意味ですかい」
「なぁに。時間があれば、後で明かすさ」
エムは何かを含ませるように、自身の正体について大きくハードルを上げていた。沖田もエムの意味深な一言が気になっていたが、ひとまずは今目の前にいるアナザーパラドクスの撃破に再度集中することにする。
「来るぞ!」
「あぁ、分かってやすよ!」
二人は共に武器を握りしめながら、手にしたエナジーアイテムを使用した。
「液状化!」
「透明化!」
エムは自身の肉体を液体状に変化させる液状化。沖田は自身の体を敵から見えなくする透明化を発動していた。
「な……!?」
エナジーアイテムを発動した二人が瞬時にいなくなり、困惑するアナザーパラドクスであったが、
「そこだ!」
「そこでさぁ!」
「ぐはぁ!?」
その隙を見事に突かれてしまう。液状化したエムがアナザーパラドクスの周囲に近づき、液体のまま体当たりをして、さらに沖田は相手から見えないことを良いことに次々と連続した一刀を浴びせていく。
「はぁぁ!」
「終わりだぁぁ!」
「ぐ……うわぁあっぁあ!!」
連続した攻撃に手ごたえを感じた二人は、元の姿に戻った上で、左右から力を込めた一撃をアナザーパラドクスに浴びせていく。二人の度重なる猛攻に耐え切れなくなったアナザーパラドクスは、悲痛な唸り声を上げながら爆散していた。
「ふぅ……やっと片付きやしたね」
「手ごわい相手だったな。だが傀儡なら、俺達に勝てるはずが無かろう」
「当然でさぁ。無職もたまには良いこと言うんですねぇ」
「本当は無職じゃないんだけどな……」
「何か言いやしたかい?」
「いや、別に」
互いの戦いに健闘を称えるも、エムは沖田の一言にこっそりと否定している。と同時に自身の正体を明かそうか、少しだけ悩み始めていた。
そんな心の葛藤はさておき、いよいよ本命のアナザーパラドクス打倒に向けて、近藤らと合流し立ち向かうことにする。
五人がパラドクス軍団を一掃する一方で、アナザーパラドクスは伊東と少女の元に近づいていた。
「さぁ、渡せ! そこの女を!」
「誰が渡すか! これ以上近づけば撃つぞ!」
「やってみろ。こんな銃弾ごときで、僕を追い詰められると?」
強気にもアナザーパラドクスは伊東に挑発している。真選組やエムで無ければ容易く倒せると彼は考えていた。見くびられているのだが、伊東は必死な表情で後ろにいる少女を守ろうとしている。
「そうはさせるか!」
「いい加減諦めなさい!」
「くっ……もう片付けたか!」
とそこに傀儡のアナザーパラドクス達を倒した土方や深澄らが乱入。果敢に攻撃を展開していく。
一方でエムは、伊東に近づき話しかけていた。
「大丈夫だったか?」
「エムさん。こっちはなんともない。女の子は無事だ」
「なら良かった。ならばまだ拳銃は使わない方が良い。奴は秘策を隠している」
「秘策?」
エムは密かに感じ取っていた不穏なことを伊東にも伝えている。そう彼は、まだアナザーパラドクスに逆転負けする流れも読めていたのだ。
「はぁ!」
「くらえ!」
「そこだ!」
「行けぇ!」
「ふっ、今だ!」
〈反射!〉
真選組と深澄が一斉に斬りかかろうとした途端、アナザーパラドクスは隠し持っていたエナジーアイテムを発動。何かを打ち返すような絵柄が書かれたチップで、それを見たエムはすぐ近藤らに忠告していた。
「みんな、危ない! 敵から遠ざかれ!」
エムの注意を聞きつけて、近藤や深澄らはアナザーパラドクスと瞬時に距離を遠ざけている。そして、
「うわぁ!?」
「何!?」
彼の周囲に邪悪そうな波動が出現し、辺り一面に向けて爆散したのだ。辛うじて四人は無傷のまま事なきを得たが、一歩間違えれば重傷を負っても可笑しくない攻撃だと感じている。
「今のって……」
「まさか倍返しって奴か!?」
「そうだ! さっき数枚程集めておいて助かったよ。こいつさえあれば、どんな攻撃だって跳ね返せる! これで無暗やたらに攻撃出来ないだろう!!」
困惑する四人に、アナザーパラドクスは高笑いをしながら軽く説明していた。彼が使用した反射のエナジーアイテムは、受けた攻撃を倍にして返すことが出来るとのこと。最後の最後で厄介なエナジーアイテムを披露し、その悪質な能力に四人は揃って大きく警戒している。
「くっ、卑怯な……」
「どこまで腐った野郎なんだよ……」
「厄介にも程がありますねぇ」
近藤、土方、沖田も思ったことを吐き捨てていた。そう簡単に攻略することが叶わずに、早くも反射に対する対策を考え始めていく。
「エムさん。こういう時はどうすれば……」
「賭けではあるが、これを使うしかないか」
深澄も心配そうな表情でエムに聞くと、エムは先ほど入手したあるエナジーアイテムを手にしていた。四つ葉のクローバーを手にした絵柄が書かれた未知なるこのチップで、反射に対抗しようとしている。
「はぁ!」
〈幸運!〉
エムが掲げて効果を発動させると、とある幸運がエム達に起きていた。
〈ガシャコンブレイカー!〉
〈ガシャコンソード!〉
〈ガシャコンマグナム!〉
〈ガシャコンスパロー!〉
〈ガシャコンキースラッシャー!〉
〈ガシャコンパラブレイガン!〉
なんと仮面ライダーエグゼイド及びドクターライダー達が使用した武器の数々がエムや深澄らの手元に出現している。近藤はエグゼイドが使用した片手剣状のガシャコンブレイカー。土方はブレイブが使用した片手剣状のガシャコンソード。沖田はスナイプが使用したハンドガン状のガシャコンマグナム。深澄はレーザーが使用した鎌状のガシャコンスパロー。エムにはエグゼイドが使用した片手剣状のガシャコンキースラッシャー。さらには伊東にも本物のパラドクスが使用したハンドガン状のガシャコンパラブレイガンが付与されていた。
「こ、これは……」
「新しい武器?」
「僕にも渡った……!?」
突然現れた武器に困惑する近藤や伊東ら。手探りで武器を確認する中で、エムは推測を交えながらみんなにこう呼びかけていた。
「どうやらさっきの幸運の力で、反射に対抗する武器が出てきたようだな」
「おい。こいつで本当にあの野郎を打ち負かせるのかよ」
「大丈夫だ。同時にゲームカセットのようなアイテムも出てきた。多分これをその武器に入れるのだろう。ゲームを悪用する輩に、俺達のゲーム愛で対抗しようじゃないか」
土方からの呟きに、エムはスラスラと返答する。武器と同時に特殊なライダーガシャットもエムの手元に出現しており、その力を持ってこの戦いに終止符を打つと覚悟を決めていた。
「おぉ! なんと燃える展開!」
「いや、俺達はいう程ゲーマーじゃないんですがねぇ」
「細かいことは気にするな」
ゲーム愛と言う言葉に大きく反応する深澄に対して、沖田は奥歯が引っかかるような物言いに違和感を覚えてしまう。大きく括るとゲーマーでは無いが、エムはそこまで気にしていなかった。
「なるほどな。では僕も微力ながらこの銃で協力しようじゃないか」
「よしっ! 頼むぜ、伊東先生!」
伊東もエムの言った作戦に協力的となり、手にしたガシャコンパラブレイガンを握りしめて、アナザーパラドクスへ狙いを定めていく。近藤も伊東の考えに賛同していた。
「どんな手を使っても無駄だ! 全部お前らに跳ね返してやる!」
一方のアナザーパラドクスは、まったく自信を崩さずにエム達の挑発を続けている。どんな武器が現れようと、その攻撃すら反射で跳ね返そうとしていた。
「無駄かどうか俺達で決める。行くぞみんな!」
「おう!」
「オーケー!」
エム達も真っ向からアナザーパラドクスに対抗し、出現した武器を構えていく。エムは全員に特殊なライダーガシャットを配り、全員に武器のスロット部分へ差し込むように指示していた。
〈愛チョリス! クリティカルフィニッシュ!〉
〈ドラゴンハンター3! クリティカルフィニッシュ!〉
〈モンキーハンターオンライン! クリティカルフィニッシュ!〉
〈アスカ・エンパイヤ! クリティカルフィニッシュ!〉
〈スーパーマダオブラザーズ! ガンゲイル・オンライン! クリティカルフィニッシュ!〉
〈天知を喰らう! アルヴヘイム・オンライン! クリティカルフィニッシュ!〉
近藤は恋愛ゲームの愛チョリス。土方はファンタジーゲームのドラゴンハンター3。沖田はオンラインゲームのモンキーハンターオンライン。深澄は和風ファンタジーのアスカ・エンパイヤ。エムはアクションゲームのスーパーマダオブラザーズとサバイバルゲームのガンゲイル・オンライン。伊東はRPGゲームの天知を喰らうとファンタジーゲームのアルヴヘイム・オンラインのライダーガシャットを装填していた。それぞれのゲームに応じたエフェクトが武器に宿り、各々がその武器を構えていく。
「今だ、行け!」
「やぁぁぁぁ!」
「はぁぁぁぁ!」
「食らえ!」
そしてエムの指示と共に、六人は一斉に武器から衝撃波を解き放っていた。剣や鎌の先端にエネルギーを貯め込み、真空波のような形で投げ飛ばす者もいれば、銃口にエネルギーを貯めて大きな弾丸として放出する者もいる。
いずれにしても六つの武器から放たれた波動が一つに合わさり、強力なエネルギーとしてアナザーパラドクスへ差し迫っていく。
「させるか!」
と彼が意気揚々と反射のエナジーアイテムを使用するも、
「な、何!? ぐはぁぁ!!」
当然打ち返すことが出来ず、巨大なエネルギーを真に受けたアナザーパラドクスは大きなダメージを負ってしまう。変身解除までは至っていないものの、深手を負ったせいで強制的に彼は怯まされていた。
そしてこの絶好の機会を、エム達は一切見逃していない。
「今だ! 一気に決めるぞ! ベルトの部分に一点集中だ!」
「分かった!」
「任せて!」
彼が怯んだ隙に、一斉攻撃を仕掛けようとしている。各々が武器を切り替えて、近藤、土方、沖田は自慢の刀を、深澄は両手鎌、エムは大剣を握りしめて、アナザーパラドクスへとどめを刺そうとしていた。
「頼んだぞ……」
「がんばっておにいちゃんたち!」
伊東や少女も五人の勝利を信じている。二人に見守られながら……五人は一斉に動き出していた。
「はぁぁぁ!」
「やぁぁぁ!」
「たらぁぁぁ!!」
「あぁぁぁ!」
「いけぇぇぇ!!」
全速力で突進し、エナジーアイテムを使われる前に仕留めようとしている。
「くっ……な!?」
態勢を整えようとしたアナザーパラドクスだが、気づいた時にはもう遅かった。もう目の前には五人の勇姿達が接近しており、避けることも防御姿勢を取ることも出来ず……
「「「「「はぁぁぁぁ!!」」」」」
「う、うわぁぁあぁぁ!!」
真正面から彼らの一撃を次々と受けてしまう。同時に変身に使用していたゲーマードライバーも破壊され、変身状態が出来なくなったアナザーパラドクスは……
「ま、負ける!? そんなバカなぁぁぁぁぁ!!」
小者のような叫びを上げながら爆発の中に消えて行った。幾度も策を講じて自身の邪な願いを叶えようとした男は、最終的に少女を守るために命を懸けた三人の侍と二人のゲーマーにより打破されてしまう。
背後に吹きあがる爆発をバックに、五人は自らの勝利を強く噛み締めている。
「やったね!」
「あぁ、ゲームクリアと言ったところか」
深澄と土方は互いの目を会わせて、アナザーパラドクスに勝利できたことを誇らしく感じていた。
今回のお話は如何でしたでしょうか。アナザーパラドクスに対し奮闘する五人が印象的だったかと思います。それにしても、ダークライダーに変身してもあまり良いところが無かった柳井……まぁ、相手があの真選組ですししょうがないですね笑 因みに意図的に弱くしています。
深澄もプログレッシブで登場したアバターと同様の姿に変身! ゲームと現実の境界が曖昧となったが故に、そのアバターの姿で登場させることが出来ました。
今回の戦闘シーンで鍵となったエナジーアイテムは、仮面ライダーエグゼイド本編で存在したエナジーアイテムのみを使用しております。この主導権を早々に握ったエムは賢かったですね。
因みにしれっと小ネタとして、銀魂でこれまでに登場したゲームもガシャットとなっております。むしろこれがやりたくて、エグゼイド系統の武器を無理くり呼び寄せました笑
さぁ、戦いも終わって、次回でいよいよ完結するはず!
次回予告
柳井「なぁ、シャドームーン! 助けてくれよ!」
土方「お前の本当の目的は一体なんだ!?」
沖田「さぁ、気のせいか」
深澄「またね、みんな!」
伊東「元の世界の僕にも宜しくな」
近藤「あぁ、任せておけ」
次回 激レアアイテムはいつでも使えるようにしておけ