剣魂    作:トライアル

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五話分続いた異世界探訪篇もいよいよクライマックス!
そして本日はアスナの誕生日です! 


第百五十三訓 激レアアイテムはいつでも使えるようにしておけ

 廃工場にて柳井が変身したアナザーパラドクスを撃破した真選組の三人と深澄。エムの加勢もあって、彼との死闘を無事に乗り切っている。

 すると、次第に廃工場にて展開されていたゲームフィールドが消滅していった。

「アレ? 戻っちゃった」

「どうやら俺の渡したエナジーアイテムの効力が切れたようだな」

 時を同じくして深澄の変身状態も解除され、服装もファンタジー風の衣装から制服に戻り、持っていた両手鎌も消えている。エム曰く、彼女に渡したエナジーアイテムの効果が途切れたと推察。お気に入りのアバターを気に入っていた深澄は、元の姿に戻ることに少々勿体なく感じている。

 なおそれは彼にとっても同じ立場であった。ゲームフィールドが破壊されたことで、段々と現実にいられなくなっていたのである。

「俺もここで限界らしい。ほんの僅かだが、君達と戦えたことは光栄に思っている」

「うむ。俺も同じ想いだ!」

「まぁ、頼りになったことは確かだよ。感謝しておく」

 エムは最後に近藤ら共闘した仲間達に向けて、別れの言葉を伝えていた。彼ら真選組や深澄らがいたからこそ、少女を守り切ることが出来たと痛感している。

 爽やかに別れを伝える一方で、沖田はエムから聞いていた正体について気になっていた。

「おい、結局お前の正体って一体誰なんですかい?」

「フッ。それはだな……」

 とエムが沖田の問いに答えようとした時……彼の姿は粒子状となって消えてしまう。結局は正体が分からないまま、エムと半強制的に別れてしまっていた。

「消えちまいましたか」

「結局誰だったんだよ」

「まぁ、良いじゃん。正体が誰だって。良い人そうなのは確かだからさ」

 エムの言いかけたことが気になる土方や沖田だったが、深澄は特に気にしていない。彼女は正体よりも、エムの持つ優しさに改めて心を打たれていた。増々彼への憧れを強めている。

 すると深澄は、足元にあったあるものを見つけていた。

「ん? なにこれ?」

「おい、それ。転移のチップじゃねぇか?」

「えっ!? トッシーが話したあの!?」

 そう。彼女が拾い上げたのは、転移のチップ、いやエナジーアイテムである。縁が虹色に輝くまさにトッシーの話していた都市伝説通りの代物であり、偶然の発見に深澄も土方も驚きを隠せない様子だ。沖田だけは何のことだが、さっぱり分かっていないが。

「なんですかい、それは?」

「アレか。転移のチップだよ。トッシーの言っていた次元間を行き来する幻のアイテムだ。でもまさか、こんなところでお目にかかれるとは」

「これでみんな元の世界へきっと戻れるはずだよ! 良かったね!」

 土方や深澄の説明で、沖田も薄っすらと転移のチップが何物なのか把握していた。二人のテンションが上がる理由も分かったが、それよりも沖田はチップの出所が気になっている。

「さっきの戦闘にあった宝箱の中身か? いや、もしや……」

 思いつく限りのことを頭に浮かべるも、そのうちの一つの仮説に彼は言葉を詰まらせてしまう。その仮説が正しければ、自ずとエムの正体も分かってしまうからである。自分にはやけに面倒見が良かったことも、その仮説の信憑性に拍車をかけていた。こればかりは土方や近藤らには決して口外しないと彼は密かに誓っている。

 その一方で近藤は伊東に、救出した少女の様子について聞いていた。

「そういえば、あの子は?」

「大丈夫だ。いつの間にか昼寝をしているみたいだがな」

 少女は伊東の後ろへ隠れているうちに、目を閉じてウトウトしながら眠っている。助けられたことによる安心感で、気が緩んでしまったようだ。伊東も彼女を起こさないように気遣っている。

「ん?」

「どうしたんだ?」

「いや、どっかで見たことがあるような……」

 すると近藤は、少女の顔を見てある既視感を覚えていた。元の世界の誰かと顔が似ているのだが、確証が無く名前まですぐに出てきていない。

 そんな平穏な一時を感じている近藤達に対して……アナザーパラドクスの変身を解除された柳井は、地面を這いつくばりながらゆっくりと立ち上がっていた。

「ぐはぁ! この僕が……!」

 破壊されたゲーマードライバーを握りしめて、伊東らに向けて睨みを利かせている。もはや体力的、精神的にも限界が生じており、ただ相手を威嚇するだけしか彼に手段は残されていなかった。最もその威嚇も、伊東達にとってはまったく聞いていないのだが。

「さぁ、大人しくしなさい! 誘拐犯!」

「今度こそ観念しやがれ!」

「詳しくは署で聞かせてもらうぞ」

 深澄や土方が柳井に言葉を吐き捨てると同時に、伊東は早速彼を確保しようと手錠を用意していた。このまま柳井の両手にかけようと近づこうとしたその時である。

「ハァ!」

「何!?」

「うわぁ!?」

「これは電撃……?」

 突如として彼らの足元に、電撃のような衝撃が襲い掛かってきた。全員がその衝撃に怯まされる中で、柳井の目の前にとある人影が近づいている。

「フッ、どうやらここまでのようだな」

「だ、誰だ!」

「銀色の怪人……!?」

 そう。その正体は、彼にゲーマードライバーを渡した張本人であるシャドームーンだった。仮面に覆われ表情は読み取れないが、その声には怒気が籠っているようにも見える。

 突然現れたシャドームーンに対し、困惑と共に警戒心を強める深澄と伊東。一方で近藤ら真選組の面々は、シャドームーンを見てあることを思い出していた。

「おい、トシに総悟。あの怪人って、リーファちゃんの言っていたサイコギルドの一員じゃないのか?」

「確かに言っていたことと一致するな」

「だとすれば、アイツが騒動の元凶ってことですかい」

 彼らはリーファと初めて会った時に聞かされた転移したきっかけを思い起こす。銀色の怪人と彼女が話していたことから、シャドームーンがサイコギルドの一員であると悟っていた。

 全員がシャドームーンに警戒する中、柳井だけは必死に彼へ助けを求めている。

「シャドームーン! 助けてくれ! アイツら、とんでもなく強いんだ! ゲーマードライバーじゃなくて、もっと強いベルトを僕にくれ! 必ずやアイツをウイルス感染させるから、僕をアンダーワールドに連れて行ってくれ!」

 彼はしぶとくも、まだシャドームーンとの約束にしがみついていた。どうしてもアンダーワールドに逃亡したい一心で、代わりのベルトを要求している。

 約束に執着する柳井に対し、シャドームーンの返答はと言うと、

「残念だが、貴様はここで用済みだ。ご苦労だったな」

冷たくも彼に何の未練もなく切り捨てていた。と同時にシャドームーンは落ちていたバグルドライバーⅡを手にすると、

「はぁぁ!」

「ぐはぁぁぁ!!」

なんと柳井に向けてドライバー内に詰まっていたバグスターウイルスを放出させている。

「はぁ!?」

「嘘でしょ……!?」

 このシャドームーンの手ひどい裏切りには、近藤や深澄らも衝撃を受けてしまう。あまりにも一方的な仕打ちには、思わず柳井に同情する始末であった。

 そんな柳井は、シャドームーンによって強制的にゲーム病を発症している。

「な、何の真似だ! シャドームーン!」

「言っただろう。貴様は用済みだと。ベルトの戦闘データを収集してくれたことには感謝している。むしろそれこそが、本来の目的だったけどな」

「え……じゃ、僕をアンダーワールドに連れて行って、アドミニストレータに会わせてくれるんじゃなかったのか!?」

「そいつはお前を騙す為の嘘だ」

「そ、そんな……」

 ここで柳井は、自分がシャドームーンに利用されていたことを嫌でも思い知っていた。彼と交わした約束は何一つ果たすつもりは無く、全てはシャドームーンひいてはサイコギルドの思惑通りに動かされていただけなのである。それを聞き、柳井は項垂れて絶望を味わっていた。

「アドミニストレータ……?」

 二人の会話の中で、沖田は柳井の発したアンダーワールドやアドミニストレータという名前に引っかかっている。柳井の逃亡先、並びに会いたい人と推察できるが、その異様な執着性に沖田は妙な違和感を覚えていたのだ。さらなる手がかりを聞こうとするも、既に柳井はゲーム病によって体が消えかかっている。

「結局お前は死ぬ運命だったはずだ。だったら何で死のうと文句はないはずだ。それ自体、変えられない運命だったのだからな」

「シャドームーン……貴様ぁぁぁぁぁ!!」

 挑発を続けるシャドームーンに激高し、思わず殴りかかろうとした柳井だったが……ちょうどよく、彼の体は粒子状となって完全に消滅してしまった。

〈ゲームオーバー!!〉

 消滅と同時に、濁ったような音声が辺り一帯に鳴り響く。柳井の死を確認すると、シャドームーンはバグルドライバーを操作して、粒子となった柳井の欠片を全て吸収していた。

「この世界での実験は完了した。有難くお前のデータは使わせてもらうぞ」

 目的を達成したシャドームーンは、そうぶつくさと独り言を発して、その場を跡にしようとしたが、

「待ちやがれ!」

当然この結果に納得のいかない土方達が彼を呼び留めている。

「お前、シャドームーンと言ったな! 一体何者だ!」

「あの男の人、本当に消滅させたの!?」

「アンダーワールドやアドミニストレータって奴について、話してもらいやすかい?」

「犯罪者を消滅させるなんて言語道断だ! 誰であろうと、罪を償ってもらうぞ!」

 近藤、深澄、沖田、伊東と各々が気になっていることを、シャドームーンにぶつけていた。どれもが許しがたい感情で満ちており、何よりも身勝手に柳井を裏切った点には、皆揃って怒りを覚える始末である。

「さっさと吐きやがれ!」

 土方も加勢して彼に問いかけるも、シャドームーンはまったく応じようとしていない。彼らの方を振り向き、冷徹な視線を向けたまま一言だけ吐き捨てていた。

「これだけは覚えておけ。これ以上関わらない方が身のためだ。それにこの世界にもう用は無いとな」

「待て!」

 そう言い残して、シャドームーンは瞬時に姿を消していた。意味深な言葉を呟き、謎だけを残したまま行方をくらませてしまう。

「ったく、逃げられた!」

「何なの、アイツ!」

「まさか抹消されるとは……」

 シャドームーンを逃がしたことに、一行は揃って悔しがっていた。何よりも伊東は、犯人こと柳井を連行せずに消されたことに大きな悔いを感じている。いずれにしても、彼らには消化不良な顛末であった。

「この世界に用は無いと言っていやしたが、まさかまた別の世界に逃げたってことか?」

「その可能性はあり得るな。俺達の世界に潜伏したか、はたまたこの世界の過去や未来に飛んだか……」

「厄介なことにやりやしたね」

 その傍らで、土方と沖田はシャドームーンの行方について冷静に考えている。時間や空間を自在に行き来することが判明した今、簡単に尻尾を出す相手ではないことも彼らは確信していた。

 新たに発生した謎に憤りを感じる一行であったが……ひとまずは廃工場を出て、トッシーらの元に戻ることにする。

「とりあえずはここを出るか」

「そうだな。この女の子を、お爺さんの元に戻してあげないと」

 何よりも公園で待つお爺さんと孫を早く再会させなくてはならない。この一件を知らないまま眠りにつく少女を伊東が抱きかかえて、五人は廃工場からトッシーらの待つ公園へと移動していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おじいちゃん!」

「おぉ! よく戻ってきたのう! 心配していたぞ!」

 公園に戻ってきた一行は、数時間ぶりに再会を果たしたお爺さんと孫の再会を揃って見守っている。共に涙を流しながら、無事に戻れたことに歓喜していた。

 温かな家族の光景を目の当たりにして、近藤やトッシーらは一安心する。

「やったでござるな! 無事に女の子を保護出来て!」

「じゃないと爺さんに顔向けできないだろ。あの子を取り戻すのには、相当な苦労がかかったけどな」

「えっ? どういうことでござるか?」

「前回のお話を見れば、分かることでさぁ」

「前回……?」

「おい、総悟。そんなメタネタ、この世界の住人に伝わるわけがないだろ」

「アレレ。そうでしたかい?」

 土方達が少女を取り戻し守ろうとした戦いについてトッシーは知らず、聞こうとしてもメタネタで軽く返されていた。当然沖田の一言は何一つ伝わっておらず、土方からも注意が加えられている。

 一方で深澄は、お爺さんとの再会を果たした少女に一際感情移入していた。

「あの女の子、とっても嬉しそう」

「そりゃ、大好きな家族と再会出来たんだ。あの笑顔を見れただけでも、俺達が守り抜いた甲斐があるだろう」

「あぁ。僕もそう思っている」

 深澄と同じく感慨深く感じる近藤と伊東。共に家族としてあるべき姿を見て、微笑ましく思っている。だからこそ、少女を守り抜いたことに大きな達成感を覚えていたのだ。

 すると深澄は、少女の元に近づきそっと話しかける。

「良かったね。お爺ちゃんと再会出来て」

「うん! たすけてくれてありがとう、おねえちゃん!」

「どういたしまして! ところで君の名前聞いていなかったね。なんて言うの?」

「わたし? わたしはゆうきあすなだよ」

「明日奈ちゃんね。良い名前だね」

 少女から感謝の言葉を受け取り、さらには名前まで教えてもらっていた。元気よく自己紹介を交わす傍らで……近藤と土方はその名前に心が引っかかっている。

「えっ? アスナ……?」

「おい、待て。近藤さん。アレって……」

 そう。二人は現在自分達の世界にいる青髪のアスナを脳内に思い浮かべていた。よくよく見ると少女の顔つきはアスナを幼くした雰囲気で、さらに髪型も色合いを除けば自分達の知るアスナと少し似ている。

 この事実に二人は大きく困惑していた。

「トシ……この世界はキリト君達のいた世界の過去の時間軸じゃないのか?」

「そのはずだ……じゃなんで、アスナがあんなに幼いんだ?」

 二人は元々自分達の転移先がキリト達のいた世界の過去と思い込んでいたが、少女の正体がアスナと分かるや否や、その仮説が一瞬にて崩されている。整合性が合わず、脳内の処理が追い付かない近藤と土方に対し、沖田はそっと補足を加えていた。

「やっぱりそういうことですかい」

「総悟? 一体どういうことだよ?」

「だからここは黒剣さん達の世界のパラレルってことでさぁ」

「パ、パラレル?」

「あの別の時間軸から来た柳井のいた世界が、恐らく黒剣さん達のいた本来の世界かと。つまりここは、サイコギルドの実験場として選ばれた限りなく似ているけど違う異世界なんでさぁ」

「つまり俺達はずっと誤解をしていたってことか?」

「そういうことなんじゃないですかい」

 沖田は柳井と会った時に聞いた一言から、自分達の転移先がキリト達のいた世界とは別物であると確信している。無数にあるパラレルワールドの一つであり、本来のキリト達の世界とはまったく無関係だと早々に察していたのだ。

 それを聞いた近藤と土方は、誤解が解けたと同時に一種の安心感を覚えている。

「ってことは、未来を変えようと、キリト達には何の影響もないってことだよな」

「よ、良かったなトシ……」

「なんでそんな疲れた顔をしているんですかい」

 そう。二人は深澄にSAOの真相を話した時、未来が変わることに大きな不安を覚えていたのだ。それがまったく別なパラレルワールドだと分かると、その不安も払拭されている。と同時にそのきっかけを作ったこの世界線のアスナにも、彼らは大きく感謝していた。この一件を知らない沖田からすれば、何のことだかさっぱり分かっていなかったが。

 一抹に抱えていた不安も解けたところで……ちょうど近藤の持っていた虹色の転移のチップが突然光り始めていた。

「近藤さん。転移のチップが急に光っていやすよ」

「何? 本当だ!」

 沖田に言われて、近藤もその異変に気付く。しばらくチップの様子を伺っていると……急に眩い光を解き放ち、地面に光で構成された穴を作り出していた。その穴は、近藤達が元の世界で見た虹色の穴と酷似している。

「おい、この穴って……」

「俺達が落ちた穴じゃないか!」

「ってことは、この穴をくぐれば元の世界へ戻ることが出来るんじゃない?」

 既視感のある穴を見かけて、より一層驚嘆する土方ら真選組の面々。と同時に元の世界へ戻れる可能性が出てきたことには、大きな希望を見出していた。深澄も近藤達と同じような推察をしている。

 そして別れを察した一行は、最後に挨拶を交わしてこの場を締めることにした。

「お別れか。いよいよ元の世界へ戻るんだな」

「あぁ。僅かな時間だが、この世界では大変世話になったな! これからも市民の平和を守ってくれよ! 先……いや、伊東さん!」

「ありがとう、近藤さん。その言葉、肝に銘じておく」

 近藤は伊東に熱いメッセージを交わして、最後には互いに固い握手を交わしている。別の世界では幸せに過ごしてほしいと彼は切に願っていたのだ。事情を知らない伊東は、近藤の言葉を真摯に受け止めていく。

「いやぁ~。まるでアニメのような世界から来た異世界人と楽しかったでござるよ! 僕も転移のチップを手に入れたら、土方氏の世界へ遊びに行くでござる!」

「別に来なくて良いよ。そもそもそれで、この世界に戻れなくなったらどうするんだ? それだけは止めておけ」

「……優しいでござるな! 流石土方氏!」

「うるせぇ! いちいち調子狂うから、その眼差しを止めろ!!」

 トッシーは自分と顔の似ている土方と別れの挨拶を交わしていた。素っ気ない雰囲気からは想像もつかない気遣いと優しさに、トッシーは再度心を打たれている。憧れを抱き始めている彼に、土方は若干鬱陶しく感じていた。

「本当にありがとうございました。アナタ方のおかげで、孫が無事に戻ってこれました」

「そんな大したことはしてないんですがねぇ。そういえば青……いや、ガキンチョ。この近くのゲームカフェってところには言っているんでい?」

「げーむかふぇ? あっ、そこならよくともだちといっているよ!」

「そうかい。だったらそこの店長さんに伝えてくだせぇ。助けてくれてありがとうってな」

「わかった!」

 沖田には少女とお爺さんから、助けてくれた感謝を再度伝えられている。沖田は飄々と軽く接していたが、同時に彼は少女へゲームカフェについて聞いていた。そこの常連と知り、沖田は少女を通して店長……いや、この世界のミツバへの託を預けている。

 そして……三人は深澄にも最後の挨拶を交わしていた。

「ありがとうね、近藤さん。土方さん。沖田さん。ほんの僅かな時間だったけど、アナタ達と出会えてとっても良かったよ!」

「こちらもだ! 君やその仲間達のおかげで、俺達は元の世界へ帰れるんだからな」

「まぁ、人生色々あると思うが、しっかり答えを出せば、気にすることは無いと思うぞ」

「右のニコチン野郎と同じ意見でさぁ」

 三人なりの別れのメッセージを受け取り、深澄はとびっきりの笑顔で彼らに返している。どちらにとっても、この出会いを奇跡のように感じ、両者共朗らかな気持ちを感じていた。そんな深澄とのやり取りを終えて、いよいよ近藤ら三人は元の世界へ戻ることにする。

「って、そういえばこの後にどうやって戻るんだ?」

「来た時と同じやり方で良いんじゃないですかい? こんな風に」

「えっ? ぎゃぁぁぁぁ!!」

 すると沖田は土方の足を引っ掛けて、虹色の穴に容赦なく突き落していた。悲痛な悲鳴を上げる土方に対し、沖田は彼の苦しむ姿に若干喜んでいる。

「良い様でさぁ、じゃ俺もこれで」

「そ、総悟!? トシ! って、俺を置いていくな!」

 土方に続き、沖田も自らの意思で穴に落ち、続いて近藤も彼の跡に続いていた。最後にはグダグダな雰囲気で終わったものの、これで真選組は元の世界へと転移している。すると穴は、光の粒子状となってすぐに消滅した。

「行っちゃったでござるか……」

「あんな落ち方で本当に大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ。だって彼らは真選組なんだし」

 彼らの行方を少しばかり気にするトッシーと伊東だったが、対照的に深澄はまったく気にしていない。特に根拠は無いが、彼らなら大丈夫と無自覚に彼女は感じている。

 こうして深澄達の世界で起きた不可解な事件は、別の世界の侍とこの世界にいた勇気あるゲーマーや警察官の手により、無事に解決していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 真選組が元の世界へと戻っていた頃、公園から離れた場所にあるゲームカフェでは一人の女性が和室で一休みしていた。

「ふぅ~。ちょうどもう元の世界へ戻ったかしら、総悟君」

 そう。その女性は沖田がこの世界で出会った沖田ミツバである。彼女は沖田が仲間と合流して以降、実はある手助けを密かに行っていたのだ。それは……突然光り出した携帯ゲーム機を通して行われている。

「でもまさか、私の持っていたアバターが、現実の世界に飛び出しちゃうなんてね」

 三度手にした携帯ゲーム機の画面には、自身がカスタマイズしたファンタジーゲームのアバターが写っていた。金髪で体格の良い男性で、ゲーム内で苦労して手に入れた大剣を装備している。そしてペンネームとして、自身のイニシャルであるエムという名前を使っていた。

 つまり……あの時に手助けしてくれたエムの正体は、正真正銘の彼女である。ミツバは廃工場内で展開されたゲームフィールドと携帯ゲーム機が反応し、それを操作して一時的に自分のアバターが現実に姿を見せていたのだ。最終的には真選組らに加勢し、アナザーパラドクスにも勝利を収めたが、時間切れによりその正体までは明かせぬまま彼らと別れている。だがむしろ、これで良かったとミツバは思い始めるようになっていた。

「きっと総悟君なら気付いているわよね……」

 勘が鋭く、自分と交流を深めた沖田総悟ならば、自分が言わなくても勝手に気付いているとミツバは思っている。ほんの僅かしか彼と交流していないが、元の世界へ戻っても仲間と一緒に元気で過ごせるように、ミツバは内心で強く願っていた。

「さて、そろそろ準備しようかしら」

 そして彼女は気持ちを切り替えて、ゲームカフェの開店への準備を進めていく。今日起きたことも、自分の見た夢に置き換えて、来てくれる子供達の話題の種にしようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「早く縄で局長達を……って、ぐはぁぁぁ!?」

 一方でこちらは、真選組が存在する正真正銘の銀魂の世界。謎の穴に落ちた近藤達を助けるべく、道具の準備を続いていた山崎だったが……そんな彼の頭上には、穴に落ちたはずの近藤、土方、沖田が何の前触れも無く現れている。山崎は避けることも出来ずに、彼らの下敷きになっていた。

「こ、ここは……」

「どうやら俺達の世界のようですねぇ」

「ようやく帰ってこれたか……」

 山崎の気配に気づかないまま、付近をまんべんなく確認する三人。既視感のある光景から、すぐに自分達のいた世界と断定していた。

「なんでい、土方さんも戻って来たんですかい」

「おい、なんでそんな喧嘩腰なんだよ」

「まぁまぁ、落ち着け。折角元の世界に戻ってこれたんだ。今日くらいかっかするな」

 早速一触即発な雰囲気となる土方と沖田に、近藤は冷静な口調で落ち着かせる。別の世界でもまったく変わらなかった険悪な仲に、近藤は思わず手を焼いてしまう。

そんな彼らはやっと、足元にあった違和感に気付き始めている。

「そういえば、足元に何かあるよな」

「でっかい漬物石じゃないんですかい?」

「いや……ザキじゃねぇか! おい、どうした! しっかりしろ!」

「もっと早く気付いてよ……」

 彼らは山崎が下にいることに気付き、慌ててどいていた。特に近藤は過保護のように山崎を呼び掛けているが、土方と沖田は特に何もしていない。相変わらずの扱いに、山崎はもうろうとした意識で愚痴を零している。

 こうして真選組も無事に元の世界へと戻れたのだが、結局虹色の穴の正体は分からないまま捜査が終了していた。なお、穴の消失から数日間が経っても、同じような事例はまったく起きていない。

 

 

 

 

 

 

 

 その一方で……シャドームーンは密かに別の世界へと転移。バグルドライバーとは異なるベルトを手にして、ある場所へと向かっていた。

「まだだ。まだ足りん! ノロイドライバーを完成させるには、記憶もデータももっと必要だ……」

 その道中で彼はぶつくさと独り言を呟く。どうやらとあるアイテムを完成させるべく、より一層奔走している様子であるが……その実態はまだ明かされていない。彼が時折呟くノロイドと関係性があるのだろうか。いずれにしても、そのドライバーの完成にはまだまだ労力が必要そうではある。

「その鍵を握るのは、仮想世界のアンダーワールドと言ったところか。有効活用させてもらうぞ、柳井よ……」

 そしてシャドームーンは、ノロイドライバー完成の鍵をSAOの世界に存在する仮想世界アンダーワールドと断定。新たな目論見を考え、早速実行に移していたのだ。

 そんなシャドームーンの手元にあったベルトは、アークドライバーゼロ。悪意に満ちたベルトで、人工知能をハッキングさせる能力を秘めている。果たしてシャドームーンはこのベルトを使い、何を企もうとしているのか……?





 これにて真選組異世界探訪篇は終了でございます。一か月にわたり追って頂き、ありがとうございました。
 今回は最後と言うこともあり、衝撃の展開の連続だったと思います。原作と同じで死亡扱いの柳井、さらわれた少女の正体は別世界の結城明日奈などなど……そもそも真選組が転移した先が、キリト達のいた世界の過去じゃなくて、別の世界の過去だったことに気付いた方はおられましたか? どうしても真選組と関わるとこれから先の本編(プログレッシブ等)に影響が出ると思い、別の世界の過去と言う設定になりました。
 そしてエムの正体は……ミツバはでした。間接的に沖田と共闘した形になります。こちらも前々から伏線として貼られていた要素になります。この正体も結局知らないまま別れた形になりますので、個人的には良い塩梅だったんじゃないかと思います。
 様々な出会いがありましたが、その裏では着々とサイコギルドに関する計画が動いております。アンダーワールドも本格的に関わってきそうです。そして彼の持っていたアークドライバーワンは誰に渡るのでしょうか……
 さぁ、次回でいよいよ秋晴の日常回篇の完結! それが終わるとその次回は、いよいよ新長篇の架創決戦篇の幕開けです!








次回予告

晴太「この手紙一体誰のだろう?」

シノン「持ち主が分からないなら、警察に届けたら良いんじゃない?」

リズベット「でも真選組に渡すのはちょっと……」

近藤「フッ。こういう時こそ俺達の出番だろ!」

沖田「なんせフォローの達人もいやすからね。手紙の返事も代わりに考えてあげやすよ」

土方「おい、勝手に仕事を増やすなよ」

シリカ「次回! 返事は考えているうちに毎回長くなる!」

リーファ「絶対ろくでもない返事になりそう……」




お知らせ
 10月は事情により、新作の投稿は隔週となります。宜しくお願いします。
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