「愛しの女神様。アナタの慈愛さえあれば、俺は何もいらないです。どうか俺……って、この手紙には書かれていて」
「愛しの女神様って……」
「誰に向けて書いた手紙なのよ」
晴太が拾った手紙を見たシリカ、リズベット、リーファ、シノンは思わず絶句していた。ラブレターらしき相手へ愛を伝える内容なのだが、その文体はどこか自分に酔っているようにも見える。あまりにも目を当てられない手紙の内容に、彼女達は揃って苦笑いを浮かべていたのだ。
この日の女子達は吉原外でそれぞれ手伝いや用事があり、それが終わると公園に合流している。晴太の寺子屋終わりに合流して、一緒に吉原へ帰る約束をしていたのが、彼はその道中で先ほどの手紙を手にしていたのだ。
彼らは揃ってこの手紙をどうするか悩み始めている。
「どうしようか、姉ちゃん達。交番に届けた方が良いよね?」
「それもアリだけど、落とした持ち主が戻ってくる可能性もあるし」
「でもお遊びでこの手紙を書いたなら、持ち主は戻ってこないんじゃないの?」
律義にも交番へ届けようとする晴太に対し、リーファやシノンは落とした場所に戻そうと考えていた。双方の意見がまとまらず、五人はより一層手紙の対処について頭を悩ませてしまう。
「とりあえず待ってみましょうよ! 数十分経っても来なかったら、後は真選組に押し付ければ良いだけですから!」
「そうね。厄介事に発展したら、面倒なことになるし……」
埒が明かないと察し、シリカやリズベットは揃って様子を見ることにする。本当に大事な手紙なら、相手が探しに来る可能性に彼女達は賭けていたのだ。他の仲間達も渋々、二人の意見に乗っかろうとしている。
その一方で、リズベットは中途半端に終わっている手紙の内容について、少しばかり気になっていた。
「それはそうと、この手紙の続きってなんて綴る予定なんだったんだろう……」
「リズ姉はそこが気になるの?」
「あったりまえでしょ! もしこれがイチャラブカップルのプロポーズだったら、ある意味でロマンチックに感じない?」
「ロマンチックっていうより、ちょっと痛い気もするけど」
リズベットの熱気のこもった主張に、シノンは冷静なツッコミを加えている。手紙の続き並びにそれを受け取った相手の反応を、リズベットは勝手に妄想していたのだ。なお他の女子達も、手紙の続きに関してはリズベットと同様に実は気になっている。
「もしかして、あまりの痛さに自分で捨てちゃった可能性もあるかも」
「じゃ、本物はもう別で用意しているとか?」
「どっちなんでしょうか……?」
考えれば考える程、この手紙の真相がまったく読めなくなっている五人。リーファや晴太が思い付きで仮説を立てるも、どれもうまく要領を得ていない。シリカもつい仲間達の考えに振り回されてしまう。
そう五人揃って、考えを煮詰まらせていた時であった。
「おっ! こんなところで何やったんだ、君達」
「ん? 近藤さん?」
「いやぁ~ペルソナ様の一件以来の再会だな!」
彼女達を見かけたある知り合いが威勢よく声をかけてくる。その正体は、話題にも上がっていた真選組の近藤勲であった。近藤側は女子陣との再会を素直に喜んでいたが、対し女子達の反応は微妙な表情となっている。厄介な相手と鉢合わせしたと、内心面倒くささを感じ取っていた。
「うわぁ、よりによって面倒な人が」
「えっ、どういう意味だ、リズ君?」
「そのまんまの意味よ。お妙さんのストーカーばっかりしているアンタに、この手紙の想いなんて分かるわけが無いでしょ」
「手紙?」
「あっ、しまった!」
「ちょっと、リズさん!」
皮肉交じりにその場から追い返そうとリズベットだが、うっかり口を滑らせて、近藤に手紙の件を知られてしまう。誤魔化すことも難しく、晴太はありのままに起きたことを近藤へ伝えることにした。
「えっと、近藤さん。実はかくかくしかじかで」
「なるほど、かくかくしかじかか。よく分かった!」
「って、本当に分かっているの?」
曖昧な近藤の回答に、ついツッコミを入れるリーファ。伝わっているか心配だったが、一応近藤は晴太達に起きたことを理解していた。
「要するにこの手紙を落とした本人が戻ってくるのを待っているんだろう? 安心しろ! もし戻ってこなくても、俺達真選組が責任を持って預かる!」
「だと良いんですけど……」
内容を理解し、頼り甲斐を見せて張り切る近藤であったが、むしろ女子達は彼が空回りしないか不安を感じている。シリカもボソッと小言を呟いていた。
一応落とし物を預かってくれる相手も見つかったところで、近藤も女子達と同じく手紙の続きを気にしている。
「それにこの手紙の書きかけの続きを、君達は考えていたんだよな。一体どんな続きになったんだ?」
「ちょうどリズ姉が考えていたところだよ」
「って、晴太! まだアタシはそんな深くは思いついていないって!」
興味津々に聞くと晴太が返答したが、指名されたリズベットはつい慌ててしまう。肝心の続きをまだあまり思いついていないからである。思わず仲間に助け舟を求めるも、
「口を滑らせたリズさんから答えてくださいよ」
「人一倍張り切っていたものね」
「聞いてみたいわね、リズなりの告白」
「アンタ達……!」
近藤に手紙の件をバラされたせいか、誰も助けてくれなかった。まさに四面楚歌である。
「アレ? 一体何があったんだ?」
「気にしなくて良いよ、近藤さん。いつものことだから」
なお鈍感な近藤は、女子達の本質をまるで理解していない。晴太に聞いてみるも、毎度のことと一蹴されてしまう。
もはや続きを発表するしか手段が無くなったリズベットだが……彼女は覚悟を決めて、思いつくままに告白を発表していた。
「あぁ、もう! なるようになれっての! ……愛しの女神様。アナタの慈愛さえあれば、俺は何もいらないです。どうか俺……いや、素直になり過ぎた。もうちょっと、謙虚になるべきだったよな。だったらストレートに言わせてくれ、大好きだ! 一生幸せにするからな……!」
「もしかして、キリトさんに言われてたかったプロポーズ?」
「んなわけないでしょ! 即興で思いついたアタシなりの愛の告白よ!」
浮かれていた気持ちを落ち着かせて、ストレートな言葉で告白を締めたリズベットだが、仲間達からは早速からかいの文句が飛んでくる。禁じ手のような手法を使った彼女にシリカ、リーファ、シノンは冷たい視線を送っていた。
「うーん、近藤さんはどう思った?」
晴太は近藤にもリズの考えた告白について聞いてみたが、女子達とは異なり大いに共感している。
「ばっちりじゃないか! リズ君なりの優しさに溢れていて、プロポーズもスラスラと上手くいくと思うぞ!」
「逆になんでアンタはべた褒めしているのよ! 余計に恥ずかしくなるから、止めなさいって!」
清々しいまでの高評価をして、余計にリズベットを困らせていた。女子に受けが悪くても、男子には好感触な告白らしい。あくまでも近藤の観点ではあるが……。
「じゃ、次近藤さん! 男からして、この手紙の続きはどう綴るの?」
「おう、任せろ! リズ君よりも短く、簡潔に想いを伝えられるぞ!」
「本当に?」
増々赤面したリズベットは、次の回答者を近藤に押し付けている。意気揚々と答えのハードルを上げる近藤に、リズベットはあまり彼のことを信じていなかった。晴太や他の女子達も同じ想いだが、近藤はそんなプレッシャーに臆せず自身なりに考えた告白を堂々と発していく。
「愛しの女神様。アナタの慈愛さえあれば、俺は何もいらないです。どうか俺を……ムラムラさせてください。どうだ! この一言さえあれば、女の子はイチコロ……」
「んなわけないでしょうがぁぁぁl!!」
「ぶふぉぉぉぉ!!」
簡易的……いや、あまりにもストレートすぎる告白に、リズベットは勢いのまま持っていたメイスをハリセン代わりに近藤の上半身へぶつける。想像はしていたものの、近藤の告白はかなりお粗末な出来であった。リズベット同様、他の女子達や晴太も近藤の告白に心を引かせている。
「何がイチコロよ! 二人の関係性にとどめを刺すような告白なんじゃないの!?」
「いいや、違うぞ。リズ君! やはり恋愛関係になった以上、身も心も丸裸にしなくてはならない! つまりこれも一種の答えだ」
「そんな答え、原始時代にまで遡らないと辿り着かないわよ!」
「そんなはずはない! 現代のプロポーズでも通じる!」
「通じるか!」
頑なに自分の考えを改めない近藤に、リズベットは必死の抵抗のように激しいツッコミを入れ続けている。互いの主張が一方通行のまま交差し、より話をややこしくさせていた。
「ムラムラって……」
「増々近藤勇のイメージが崩れる……」
「最悪のプロポーズね……」
「流石近藤さん……」
シリカ、リーファ、シノン、晴太もがっかりとした表情で、思ったことを発している。総じて近藤には呆れた感情が沸き上がっていた。
近藤の爆弾発言で場の雰囲気が荒れる中、またしても彼らの元にある知り合いが近づいてくる。
「おい、どうした。公園でそんなに騒いで」
「おっ、トシ!」
「って、近藤さんかよ」
騒ぎを聞きつけて声をかけてきたのは、真選組の土方十四郎であった。土方は近藤に気付くと、また彼が妙絡みの騒動を起こしているものだと勝手に思っている。
「今度は土方さんですか!?」
「なんでこういう時に限って、真選組が集結してくるのよ……」
一方で女子達は、次々と集まる真選組の面々に嫌気が指していた。今回ばかりはタイミングが悪いと、シリカやシノンは思い始めている。
しかし追い返すわけにもいかず、彼らは土方にも手紙の件について説明していた。
「なるほどな。手紙を落とした相手を待つがてら、その手紙の続きを考えていたってわけか」
「リズ姉と近藤さんがやってんだけど……まぁ」
「どうもみんなの反応が悪くてな」
「アンタの場合は、それで妥当だと思うけど」
晴太や女子達の反応からも、手紙の続きが思うようにいっていないと予想する土方。特に近藤の方を怪訝な表情で見る女子達を目にして、土方は薄っすらと前に経験した新八の文通の件を思い起こしていた。
「おい、近藤さん。まさかアレをまたやったのかよ」
「てか、以前もやっていたの!?」
「常習犯だったの……?」
土方の一言には、リーファやリズベットら女子達もさらに気を引かせている。既に別件でも同じようなことをやっていたのが信じられない様子であった。
そんな矢面に立たされている近藤は、土方にも手紙の続きをお願いしている。
「そういうわけだ、トシ! ここはフォローの達人、フォロ方十四フォローとして、この手紙のベストな答えを考えてくれ!」
「ったく、また面倒な仕事増やしやがって」
憎まれ口を挟みつつも、近藤の頼みを断るわけにもいかず、土方は渋々晴太の拾った手紙の内容を確認していた。土方のお節介さに近藤は深々と感謝している。
「フォロ方十四フォローって?」
「銀さん曰く、フォローの達人って意味らしいけど」
一方で晴太は、近藤の発した土方の二つ名が気になっていた。以前に銀時から聞いた話を折り合わせて、シノンが晴太に返答している。
そして手紙の内容を確認した土方は、念の為他の女子達の意見も聞くことにした。
「内容は大体わかった。それでこの手紙、猫耳二人はどう考えたんだよ?」
「って、アタシ達から発表するんですか!?」
「あくまでも参考程度だよ。そっから俺が補修するから、考えたことを言ってくれ」
「そんな銀さんみたいなやり方しなくても」
「なんか言ったか?」
土方は以前に遊園地の件で交流を深めたシリカとシノンを指名。彼女達の意見を聞いた上で、最適な意見にまとめるとのこと。投げやりなやり方にシノンら二人は、銀時と土方の姿を照らし合わせている。
そう文句を発しつつも、二人は言われた通りに手紙の続きを考えていた。
「アタシだったら……どうか俺と幸せになってください。俺もアナタを一生懸けて、慈愛を与え続けますとか?」
「私は……どうか俺に一生分の愛を与え続けてください。俺もお前のことだけを、一生愛し続けるからって言うかしら」
「なるほどな」
二人は長すぎず、コンパクトに告白の内容をまとめている。共通していることは、一生相手と添い遂げる覚悟と愛や幸せを強調していることであった。
土方も二人の考える告白で一番強調したいことを把握した上で、その文体をより補強しようと考えている。
「おい、小僧。筆と紙はあるか?」
「えっ? 持っているけど」
「なら貸せ」
土方は近くにいた晴太から筆と紙、本を借りて、ベンチを机代わりに。本を下敷き代わりにして、スラスラと自分なりの返事を書き始めていた。
「は、早い!?」
「文字通り、筆が乗っている……?」
「トシの本領発揮だな!」
筆を走らせる土方だが、一切止まることなく続きを書き綴っている。あまりにも手早い筆遣いに、リーファや晴太らは驚嘆とした表情を浮かべていた。なお近藤はまるで分っていたかのように、土方の文章能力に感心している。
そしてものの一分で告白文が完成していた。
「おらよ。俺の告白はこうだ。愛しの女神様。アナタの慈愛さえあれば、俺は何もいらないです。どうか俺のことだけ見続けろ。いつだって幸せにしてやる。俺と愛を育め。こんなところだな」
「随分と強気な告白だな……」
「元の分からして、自分に酔っているように見えたからな。だったらそのキャラを徹底させて、伝えることを一貫すりゃそれで十分なんだよ。猫耳共の強調したいところも、これで分かりやすくなっただろ?」
「た、確かに……」
完成した手紙の内容に圧倒される晴太達。シリカやシノンが仮の文で強調していた愛や幸せを織り交ぜて、強烈なキャラクター性とシンプルで分かりやすい内容にまとめている。女子達は改めて、土方がフォロー能力の達人であることを思い知っていた。
「さっすが、トシだな! フォローをやれせれば、右に出る者がいないというところか」
「俺にかかれば、そんなもんだよ。近藤さん、もう気が済んだだろ? とっとと屯所に戻るぞ」
近藤も鼻を高くして、土方をべた褒めしている。土方本人は手紙の出来よりも、仕事の方を優先的に考えていたが。このままキリの良いタイミングで切り上げようとした時である。
「アレ? 裏面にも書いてありますよ」
「本当だ。この短時間で二つも続きを作ったの?」
シリカやリーファが、土方の綴った手紙の裏側に書いてあった、もう一つの告白文に気付いていた。気になって内容を見てみると……そこには表面とはまったく異なる内容が書かれている。
「愛しの女神様。アナタの慈愛さえあれば、俺は何もいらないです。どうか俺と、マヨリーンの誓いを立ててください。一つ、マヨネーズに人生のすべてをささげること。一つ、マヨネーズ以外の調味料を口にしないこと。一つ、マヨネーズはマヨリーン版を必ず使う……何これ?」
「マヨリーンって何?」
あまりにも表面とはかけ離れていた告白文に、騒然としてしまうリーファや晴太達。皆微妙な表情で土方を見ると、彼は何食わぬ顔で淡々と解説していた。
「あぁ、こっちは付き合っている奴がマヨラーだった時の告白文だよ」
「告白文っていうか、なんか変な誓いとか立ててなかった!?」
「変じゃないだろ。マヨラーなら当たり前のことを書いているだけだ。まぁ、変に意識しなくても、これぐらいマヨラーには至極当然な内容だけどな」
説明を続けるうちに、土方はまるで自信が付いたかのように声が高くなっていく。どうやら表面よりも、自分の趣味趣向をさらけ出した裏面の方が、彼にとっての自信作のようだ。状況が限定的とはいえ、仮に土方と同じマヨラーが告白相手だったとしても、リズベットら女子達はあまり土方なりの告白にまったく共感していない。
「こりゃ重症ね……」
「こんな誓い立てられても、食いつくわけがないでしょ……」
「土方さん、マヨネーズのせいでだいぶ損しているんじゃ……」
「オイラが彼女さんから、この手紙を貰った時点で破局な気がする……」
シノンやシリカ、晴太も次々に、苦い表情を浮かべつつ、各々が文句を呟く。やはりマヨラーという点に目を瞑っても、彼が提案した誓いには無理があると感じていた。
「おい、トシ。晴太君達の反応が悪くなっているぞ!」
「まぁ、お子様共には少し早かった内容か?」
「いや、そこは全然関係ない気がするが……」
評判の悪さを感じ取り、まったく納得のいかない土方。対し近藤は、晴太達の評判を妥当と感じている。近藤でさえも土方の自我を主張するような告白文の内容には、難色を示していたのだ。
綺麗に終わるはずが、土方の綴った裏面の告白によって、またも微妙な雰囲気となってしまう。するとまたしても、彼らの元にさらなる知り合いが声をかけてきた。
「アレ? 近藤さんに土方さんじゃないですかい。こんなところで何やっているでい?」
「なんだ、総悟か」
「おっ、ちょうど良いところに来てくれた!」
飄々とした態度で舞い込んできたのは、真選組の一番隊隊長である沖田総悟。偶然にも真選組の中心人物が、公園に集結していた。
近藤が沖田との合流を嬉しく思う一方で、女子達はまたしても微妙な反応を示している。特にリーファは、一段と苦い表情を浮かべていたのだ。
「げっ! 沖田さんまで来たの……?」
「なんでい。俺じゃ不服ですかい?」
「不服っていうか、関わりたくないんだけど!」
「やれやれ。ブラコンはいつもどおりか」
沖田の性格の悪さに散々振り回されている分、沖田への憎悪も深くなっているリーファ。徹底的に反発する彼女に対し、沖田はいつものことのようにまったく気にしていない。
「相変わらずのリフ姉と沖田さんのバチバチ感……」
「会う度に悪化してない?」
「こればっかりはリーファに同情してやるよ」
そんな二人の険悪な仲を見て、晴太、リズベット、土方は思ったことを発していた。仲間達は皆、二人の相性の悪さを嫌と言う程理解している。
それから沖田は女子達や近藤らから、手紙の件やその続きのことについて把握していた。
「なるほど。面白そうなんで、俺も混ぜてくだせぇ」
「えっ!? 沖田さんに告白文なんか書けるの?」
「少なくともブラコンや土方さんのよりはマシでさぁ。俺にかかれば、お茶の子さいさいなんでねぇ」
「って、土方さんの告白と一緒にしないでくれる?」
沖田も近藤らに続き、手紙の続きに対して興味を持ち始めていた。まだ発表していないリーファへ挑発を加えつつ、自分自身の意見により高いハードルを上げている。リーファもまんまと、沖田の挑発に乗っかっていた。
「だったらより愛のこもった内容で、総悟を打ち負かせれば良いだけだろ」
「そうですよ、リーファさん! 沖田さんになんか負けないで!」
気が立っているリーファを、土方やシリカらが声をかけて落ち着かせている。土方も女子達と同じく沖田に良い想いをさせたくない一心で、さり気なくリーファ側についていた。
「まぁ、残りもん同士、正々堂々と勝負しやすか」
「望むところよ! せめて告白のセンスだけは、アンタなんかに負けないんだから!」
ライバルのように対抗心を燃やしながら、二人は揃って自分なりの告白文を考えることにする。共に相手より優秀な答えを出す為だけに、告白文の製作に全力を尽くそうとしていた。
そして先に完成したのは、リーファの方である。
「愛しの女神様。アナタの慈愛さえあれば、俺は何もいらないです。どうか俺と結婚を前提にお付き合いしてください。アナタは俺に慈愛を。俺はアナタに一生分の幸せを与え続けるから。お互いに助け合っていこう」
「なんかベタな告白ですねぇ」
「そりゃ変に奇をてらったりしたら、滑っちゃうでしょ。こういうのは王道的な方が、女子受けが良いのよ!」
早速文句を付けてきた沖田に、リーファは正々堂々と反論していた。シンプルで直接的に相手を伝える告白を彼女は考えている。
「うむ。良いとは思うが……」
「ちょっと物足りない気もするわね」
渾身の一答であったが、近藤やリズベットらの反応から、皆の意見はまちまちであった。痒い所に手が届かないような感覚を、仲間達は感じ取っている。
「やれやれ。ここは俺のストレート勝ちですかね」
「って、まだ決まったわけじゃないから! そもそも沖田さんの告白もまだ聞いていないわけだし!」
「まぁ、じゃ俺なりの告白を伝えて終わりやすか」
沖田は自身の自信を崩さないまま、自分の考えた手紙の内容を発表していく。
「愛しの女神様。アナタの慈愛さえあれば、俺は何もいらないです。どうか俺オメガハチエイトセブンナインアルファ……何この文字列?」
「何って、女を催眠にかける暗示でさぁ」
「へぇ、催眠……って、なんてもの手紙に綴ってんの!?」
紙に書かれていたのは、不規則な文字列の数々。不気味な文体に恐る恐るリーファが沖田に聞くと、その意味が単なる催眠術だと発覚していた。沖田の意図が分からずに、リーファは反射的に強いツッコミを入れている。
一方の沖田は、催眠術を手紙に綴った理由を彼女に明かしていた。
「うまくいきゃ、効果は一生モン。これを読んだ女は、生涯ご主人様の下僕として忠義を尽くすんでさぁ」
「何その非人道的なやり方!? てか、なんてものを私に読ませようとしてんのよ!」
「まぁ、実証実験でさぁ。うまくいきゃ、偽装結婚をこじつけて真選組を寿退社できるかと」
「ふざけないでよね!! 誰がアンタの下僕になんかなるもんですか!!」
もはや告白の手紙とはいえず、マインドコントロールのような手法で相手を支配しようとする沖田のやり方に、リーファは大きく戦慄してしまう。さり気なく催眠術の被験者に仕立てられそうになり、彼女の怒りはより一層激しくなっていた。だがどんなに怒りをぶつけられようとも、沖田の態度は何一つ変わっていない。
この沖田なりの告白に、他の仲間達も苦い表情を浮かべている。
「何やってんだよ、アイツは……」
「告白じゃなく、一発芸でやるべき内容じゃないのか?」
「そういう意味じゃねぇよ、近藤さん」
近藤のズレた意見にツッコミを入れる土方。どちらにしても場違いであることを、二人は察していた。
「お、沖田さんってば……」
「あの人、本当に警察官よね……?」
「堂々とやる度胸が凄いわ……」
「リフ姉が可哀そう」
シリカやリズベット、シノン、晴太も思ったことをそのまま呟く。総じて沖田のサディスティック性に、内心大きな恐怖を感じていた。彼だけは敵に回さないようにと、心の中に留めている。
真選組の面々が揃ってもなお、手紙の続きが一向に分からないまま、すでに一時間が経過しようとしていた。手紙を落とした持ち主も見つからず、このまま真選組に落とし物として処理してもらおうとした……その時である。
「おい、何やってんだ、お前ら」
「あっ、銀さん!」
「なんだ旦那か」
真選組に続き、今度は銀時が公園に訪れていた。見知ったかが集結していることに気付き、声をかけてきたのである。
「ていうか、どういう組み合わせだよお前ら。真選組と女子達で合同コンパですか、コノヤロー」
「そんなわけないでしょ!」
「そうよ! この手紙を巡って、色々と真選組に相談していたのよ!」
銀時の小言に真っ向から反抗するリズベットとシノン。説明がてらに銀時にも例の手紙を見せると、
「えっ……お前ら、それどこで見つけた?」
「ん? ちょっと待ってください……」
「まさかこの手紙って、お前のか!?」
銀時があっさりと自身の綴ったものと認めていた。そう。この痛い内容の手紙の持ち主は、銀時だったのである。これには近藤、晴太、リーファと場にいた全員が、想定外の真実に騒然としてしまう。
「よ、万事屋のものだったのか……!?」
「て、てか銀さん! 誰に当てて書いたんだよ!?」
「そうよ! 銀さんの気になっている相手なの!?」
持ち主が分かって次に気になることは、銀時が誰宛てに送ろうとしていた手紙なのかだが……
「いいや、違ぇよ。これは結野アナのファンレターだ」
「ファ、ファンレター?」
「読んでもらっても、すぐに保管されないように、一際目立つ文体で書いたんだよ。どっかで落として無くしたかと思ったが、お前らが拾っていたとはな」
その正体はただ銀時が推しているアナウンサーであった。告白やプロポーズではなく、ただのファンレターであることが判明し、一同は拍子抜けしてしまう。今まで自分達が四苦八苦して考えていたことが、水の泡と化した瞬間でもあったのだ。八人はまるで時間を無駄にしたかのような感覚に陥っている。
「いやぁ~助かったぜ。拾ってくれてありがとよ。じゃ、俺で」
そんな苦労を知らない銀時は、軽くシリカ達に挨拶をして、その場を軽やかに去ろうとしていた。だがしかし、
「銀時さん」
「ん、なんだ?」
急に女子達に呼び止められて、思わず後ろを振り返ってみると、
「「「「はぁ!!」」」」
「ブフォォォ!!」
シリカ、リズベット、リーファ、シノンが怒った表情で、銀時の額目掛けてデコピンをかわしている。一斉の不意打ちを喰らった彼は、勢いのままに吹き飛ばされてしまう。
「これはアタシ達なりの怒りの鉄槌ですよ!」
「デコピンで済んだこと、有難く思うことね!」
「人の時間を無駄にして……!」
「今度同じことをしたら、命は無いと思いなさい!」
四人は終始怒りを滲ませながら、銀時に捨てセリフを吐いてその場を去っていた。言いたいことをぶつけることが出来て、四人は揃ってモヤモヤした気持ちを発散させている。
なお晴太や真選組の面々も、銀時に注意がてら声をかけてきた。
「銀さん。シリカ姉達をあんまり怒らせない方が良いよ」
「物の管理ぐらいちゃんとやれ、万事屋」
「そんなんだから、ガキんちょに舐められるんだよ」
「俺は楽しかったですけどねぇ」
各々が言いたかったことを伝えて、彼らも公園を去っていく。
なお銀時は、急に女子達がデコピンをしてきたことに、まったく思い当たる節が無かった。
「えっと……何に怒っていたんだ、あいつら」
女子達や真選組があくせく考えた告白文を知らないまま、この一件は幕を下ろしたのである。
今回はこの章でメインを張ったSAOのサブヒロイン達と真選組が集結。偶然拾った手紙を巡っての一騒動が起きましたね。近藤さんは本編でも披露したムラムラしますを一筆。当然女子達からは総スカンを喰らいました笑 懐かしいネタも多くある中で、手紙を書いた張本人はまさかの銀さんでした。彼だけ今回はとばっちりのような気も。
次回予告
剣魂 新長篇! 架創決戦篇が次回よりいよいよスタート!
デスガン「その名を覚えておけ、仮面ライダーデスガンとな!」
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星海坊主「サイコギルドだと!?」
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架創決戦篇一 世の中には似ている奴が二、三人いるらしい