自分の知らないところで、物事が進み動いている。それに本人が気づくのはいつだって事が済んだ時だ――
銀魂の世界へキリト達がやってきて早三日。二つの依頼を終えた六人は万事屋へと戻るため帰り道を歩いていた。
「あー疲れたアルー! 家に帰ったらアッスーに抱きついて癒されたいアル!」
「って、神楽ちゃんってばまた甘えたこと言うんだから!」
「ずるいですよ! 私も混ぜてくださいよ!」
「ユイちゃんも本気になってる……こりゃ長くかかりそうだな」
女子陣は仲良くじゃれあって絆を深めている。その様子を新八は近くから見守っていた。そんな穏やかな空気とは変わり、後ろでは銀時とキリトが会話していた。落ち着いた雰囲気でキリトは自身の悩みを銀時へ打ち明けていたのだ。
「それで、結局悩みは晴れたのか?」
「ん……だいたいはな。でも、やっぱり元の世界にいるみんなには迷惑をかけているよな」
「迷惑ね……」
彼はずっと元の世界にいる仲間が気がかりで仕方なかった。自分達がこの世界で生活している間みんなは何をしているのか? きっと自分達がいなくなったことに気付き必死に捜索している。そうキリトは感じておりずっと不安に思うしかなかったのだ。そのせいで、仕事の時も考えてしまうこともあった。銀時は気にするなと言って励ましたが、やはり上手くはいかない。そこでもう一回、銀時は励ましの言葉をキリトへかける。
「まぁ、そんな気にするなよ。考えても変わらないのは放っておけって言ったろ。それに少しは仲間のことを信じてやれよ。きっとうまくいくからよ」
「仲間……そうだよな。なんとかなるよな」
「そうそう。もし戻れなくても俺達のところに移籍してこいよ。銀魂の新レギュラーとして、てめぇらを迎い入れてやるよ」
「フフ……銀さんはまた訳のわからないことを言って」
「いいんだよ、わからなくても。だいたい、てめぇらは真面目にやってる作品だからふざけるって心意気を知らねぇんだよ。俺達みたいに三期のアバンは謝罪会見から始めな――」
「はいはい。訳のわからないことはいいから、みんなの元へ戻ろう!」
「お前! 人の話を区切るなよ! つーか、いつの間にか元気を取り戻しているんじゃねぇか!」
途中からメタ発言となったが、キリトは思わずクスッと笑い笑顔が戻った。意味は全く理解していないが、銀時の言葉に思わずおかしさを感じたかららしい。そして二人は前にいた仲間達へ合流し、穏やかな空気のまま万事屋へと足を進めたのであった。しかし、彼らが働いている間にもキリトの仲間達が次々とこの世界へやってきている。そして、ついに気付く時がやってきた――
しばらく歩き一行はようやく万事屋へと到着。着いた頃には夕方から夜近くになり辺りも暗くなっていた。
「よし、帰ってきたな。我が家に」
「さて、仕事も終わったし、みんなゆっくり休もうか」
「そんなの言われなくてもわかっているアルよ。キリ!」
そう言って一行が万事屋への階段を上がろうとした時である。スナックから突如賑やかな声が聞こえてきた。
「ん? 誰かいるのか?」
「こんな時間からお客さんでしょうか?」
一体どんなお客が来ているのかと思い彼らは中を覗く。すると、そこには一人のいかつい男性がお登勢らと話していた。椅子には大型の斧を置き服装は分厚い装甲を装着している。褐色の肌とスキンヘッドが際立っているその男性は、明らかに外国人だった。
「おいおい、誰だありゃ? なんで長谷川さん達と仲良くなっているんだ? どっかの外国人タレントか?」
「きっとあの人アル! でも、中々思い出せないネ! 有名な人なのに――」
「本当に外国人タレントなんですか? 明らかに違う気がしますけど」
銀時ら三人は呑気にも芸能人だと推測して、必死に名前を思い出そうとする。一方で、キリト達の反応は全く違う。
「って、キリトさん達はさすがに外タレとかわかりませんよね? ん、アレ? どうかしましたか、みなさん?」
新八が声をかけた時だった。キリト達の表情は変わり気が動転している。みな黙り込みこの状況を理解していなかった。
「あの、大丈夫ですか? みなさん?」
新八が言っても反応がなかったが、しばらくするとようやくキリト達は口を開く。
「嘘だろ……」
「あの人って……まさか……」
その声は少し震えており、三人の変わり様を見た銀時は不審に思い始めた。
「どうした、キリト? って、勝手に開くのか!?」
するとキリトは衝動的にスナックの扉を開き中へと入っていく。彼に続き仲間もついてきて全員が店へと入った。
「ん? どうやらあんたの待ち人がようやく来たみたいだねぇ」
いち早くお登勢が気付きその男性へ声をかける。そして、いよいよキリト達と対面した。
「おっ! やっと来たか、みんな!」
「「エギル!?」」
「エギルさん!?」
そう。その男性の正体はエギル。元の世界へいるキリト達の仲間の一人だ。本来ならこの世界にはいないはずだが……突然の展開にキリト達も驚きを隠せない。一方、銀時達は別の衝撃を受けている。
「あっ、銀ちゃん! 思い出したアル!」
「俺もだぞ! あいつの名前は――」
「「ボ、ボビーオロゴ〇!?」」
「いや、違うだろ!? まったく似てねぇだろうがぁ!!」
二人が思い出したのは外国人タレントの一人、〇ビーオロゴンだった。前回のネタでもあったが、ここでもまた間違われてしまう。エギルは戸惑うが、勘違いした銀時と神楽は馴れ馴れしくも話しかけてきた。
「おー! こんなところで、会えるとは幸運アル! 後でサインが欲しいネ!」
「いや、俺はボビーオ〇ゴンじゃないんだが……」
「またまた冗談を。まさかモザイク無しでこの話に出てくるなんて思ってもなかったぜ。ところでいつもと口調が違うな。「あなたは何しにキャバクラへ?」みたいなナレーションしてくれよ~!」
「アンタら、いい加減気づけよ! ボ〇―オロゴンじゃねぇって言ってんだろうが! 微妙に番組名も間違っているし! ほら、離れてくださいよ!」
余計に場を混乱させた二人は新八の手によって取り押さえられる。そして、彼が代わりにエギルへ謝りを入れた。
「すいません。うちのリーダーとヒロインが余計なことして」
「まぁ、別にいいんだ。この世界へ来てからよく間違われているから」
「間違われているんですか!? 〇ビーよりも格闘家とかと間違われていませんか!?」
しかし、すでに慣れていたのでエギルは大して気にしてはいなかった。すると今度は横にいた長谷川が万事屋へ声をかけてくる。
「って、銀さん! ようやく来たのかよ! 遅かったな!」
「長谷川さん。なんでアンタもここにいるんだよ?」
「エギルを案内しようと思ってここにやってきたんだよ。なんせキリト君達と同じ世界から来たんだぜ」
「同じ世界――まさかお前、キリトの仲間か!?」
「マジアルか!? ボビー〇ロゴンじゃなかったアルか!?」
「当たり前だろうが! いつまでそのネタ引きずっているんだよ!」
長谷川からの言葉でようやく銀時と神楽はエギルがボビーオロ〇ンではなくキリト達の仲間であると知った。むしろ気付くのが遅い方である。長谷川に続きキャサリンとたまも説明を補足した
「その通りです。キリト様と同じくエギル様も別の世界から来られたんですよ」
「散々話シ合ッテ私達ノトロコデ預カルコトニナッタンダヨ!」
「そうだったのか……」
キリト達はエギルがお登勢の店で働くところまで理解する。いつの間にか進んでいた状況の変化に、驚きがとどまることはない。そんなキリトは、状況を整理するためにエギルへ近づき話しかけた。
「エギル……もうここまで話が進んでいたのか?」
「まぁな。それにしてもお前らも無事で良かったよ。万事屋って奴等も面白そうだし、一安心したよ」
「ってそれにしても急すぎるよ! 一体何が起こったのよ?」
「詳しく話してもらいませんか!?」
さらにはアスナとユイも加わり事実の確信へと迫る。そんな、彼らの本気を見たエギルは、三人へ向けて自分や仲間の身に何が起こったのか鮮明に話し出した。
「わかったよ。これははっきりと話さないといけないな――実は、お前達が失踪した後に俺達はALOを飛び回りあちこちと捜し回っていたんだ。そしたら、突然現れた怪人によってこの世界へ来たんだよ」
「怪人?」
「ああ、サイコギルドを名乗る銀色の怪人だ。そいつの持つ赤い剣から放たれたブラックホールに吸い込まれて、俺はこの世界へやってきてしまったんだ」
「サイコギルドにブラックホール……やっぱりアイツらの仕業ってことか……」
キリトは悔やんだ表情を露わにする。やはりエギルがここに来たのはサイコギルドが大きく関わっていた。しかし、ユイは会話の中で一つ気がかりなことを見つける。
「銀色の怪人? 槍を持った少女ではないのですか?」
「少女? いや、銀色の怪人は渋い男性の声をした奴だったが……」
「私達と送った人物が違うってこと?」
「ギルドなだけあって複数犯ということでしょうか?」
送った人物が違うことだった。エギルの話によれば彼らをこの世界へ送ったのは少女ではなく赤い剣を持った銀色の怪人。同じくブラックホールを作り出すことから少女と同じくサイコギルドの仲間と仮定した。なぜキリト達が狙われたのかは未だに不明であるが、いずれにしろ謎は深まるばかりである。それよりもキリトは今、他の仲間の行方が心配で仕方がなかった。
「それじゃ、みんなもこの世界へ来ているってことか?」
「そういうことになるな。俺よりも先に行ってしまったからな」
「そうか……」
新しい事実を多く知らされて言葉に詰まるキリト。これはアスナとユイも同じだ。場には重い空気が流れて、みな黙り込んでしまっている。しかし、キリトは冷静さを保ちながら銀時へ話しかけた。
「銀さん……一ついいか?」
「わかっているよ。仲間を見つけてほしいんだろ? それくらい手伝ってやるよ」
「……ありがとう、銀さん」
訳なんか言わなくても銀時は全てを察してすぐに答えを返す。そんな彼の優しさを受けてキリトは静かにお礼を言った。同じく彼らの仲間達も励ましの言葉をかける。
「ほら、大丈夫アルよ! キリ!」
「今はしっかりと対策を考えて、みんなを助けましょうね!」
神楽やアスナや言葉にキリトもうなずいた。こうして、万事屋の六人は隣にあったソファー席へと駆け寄り話し合いを始める。そんな銀時達の頼もしさを見てエギルも一安心した。
「アレが万事屋か。あいつらがついているならキリト達も大丈夫そうだな」
「そうさね。なんでもやるバカな連中だが、依頼は解決するまで果たす奴等だよ。案外早く仲間達も見つかるかもね」
憎まれ口を叩きつつもお登勢もしっかりと彼らの人情を理解している。大人達五人は空気を読んで今は六人をそっと見守った。一方、万事屋の話し合いもいい調子である。
「さて、で誰を探すんだ?」
「エギルさんがここにいるなら待ち合わせをしていたメンバーは五人です!」
「結構多いアルナ……」
「どこに誰がいるのかまったくわからない状況なのに」
「聞き込みから始めましょうか?」
「それがいいかもな。一刻も早く捜さないと――」
彼らは仲間の捜索を前提に考えを一致させていた。しかし、現在は夕方過ぎで夜も近い。さらに仕事の疲れもあり、今日の捜索は困難に思われた。まずは情報集めからと決めていた時、突如店の扉が開く。
「ハハハ!! こんなところにいたとはな! 銀時ィ!」
聞こえてきたのは威勢のいい男性の声だった。声質から思い当たるのは昨日会ったあの男しかいない。
「って、その声は――ヅラてめぇか!?」
「ヅラじゃない桂だ!」
お決まりのセリフを言い放ったその正体は桂小太郎と相棒のエリザベスだ。いつものように腕組みをして直立不動のポーズのまま立っている。おかげで真面目な空気は彼らによって壊されてしまった。
「か、桂さん!? 一体何でここに?」
新八からの問いに桂はフッと笑い理由を答える。
「うむ! よくぞ聞いてくれた! 実は貴様らに紹介したい奴がいてな。居ても立っても居られずに来てしまったというわけだ!」
「紹介だ? こちとらそんな暇はないんだよ! 今大事な話し合いをしている最中で――」
「まぁ、待て。すぐに事は終わる。我が一派に、素晴らしいニューフェイスが加入したのだ。侍を愛し侍に愛された空前絶後の男だぞ」
「どこかで聞いたことのある言葉アル。サンシャイン池〇でも入ったアルか?」
「いいや、違う。侍道を愛する男だ」
「侍道……まさか」
どうやら桂の組織に新しい仲間が入ったらしい。浮かれる桂とは裏腹に万事屋の対応は冷たい。しかしキリトだけは嫌な予感を察していた。侍と聞いて思いつく仲間がいたからだ。そして、その男は桂とエリザベスの間に割って入ってくる。
「それでは紹介しよう! 我が一派に入った俺達の新しい仲間! クライン殿だ!」
「どうも! ご紹介にあずかったクラインです! この度我が桂さんの一派に入りました! 万事屋のみなさん! よろしくお願いします!」
現れたのは赤い髪と侍のような和服が特徴的な男、クラインだった。桂と同じく高いテンションと笑顔で現れた彼は、腕をガッツポーズにして元気さをアピールする。ところが、彼の登場により場の空気は盛り上がるどころか静まり返ってしまう。なぜなら、
「ク、クラインさん?」
「う、嘘だろ? 本当にお前なのか……!?」
彼こそがキリト達が探そうとしていた仲間の一人だったからだ。思わぬ再会に開いた口が塞がらないキリトら三人。一方、銀時もこの事態をようやく理解して声を上げた。
「えっ、マジで!? もう見つかったの!? ヅラが連れてきたこの男がお前達の仲間ってことか!?」
「ヅラじゃない桂だ! そしてこの男がクラ――」
「そんなセリフはどうでもいいんだよ! そもそもなんで、てめぇがそいつといるんだよ!」
「何を言うか銀時。貴様らだってキリト君やアスナ君、ユイ君といった仲間を増やしたではないか。それと同じことだ。そんな訳で、これからの「剣魂」は挨拶回り篇ヅラクラバージョンをお送りするぞ!」
「お送りしねぇよ! 妙にお笑いコンビみたいな名前つけやがって! 漫才師にでもなるのか!? てめぇら!」
「クライン殿は漫才師ではない! トラック運転手だ!」
「誰がリアルな方の職業を言えって言ったよ! もうツッコミが追いつかねぇんだよ! てめぇの方が冷静になれよ!」
喧嘩腰に桂と話す銀時。彼のマイペースさに銀時も苦戦してしまう。一方で新八と神楽も事態を飲み込み、クラインがキリト達の仲間だと知る。
「えっ? あの人がキリトさん達の仲間なんですか!?」
「その通りです! クラインさんという侍道を愛する男の人ですよ!」
「まさか、桂さんと一緒にいたなんて……混ぜるな危険とはまさにこのことね……」
「なんか雰囲気がヅラと似ているネ! バカの匂いがプンプンするアル!」
言いたい放題言う神楽やアスナは頭を抱えてため息を吐いた。侍を愛する者同士のタッグ結成は予想以上に衝撃を受けてしまう。そんな中、キリトはクラインの元へ近づき話しかける。
「て、てかクライン!」
「おー!! キリの字にみんな! やっぱり元気だったか! 一安心したぜ!」
「それはこっちのセリフだって! そもそもなんでアンタが桂さんと一緒にいるんだよ!?」
真剣な表情のキリトに対してクラインの表情はどこか能天気そうだった。するとクラインは桂同様腕組のポーズをして、キリトへ自信よく答えを返す。
「それはな……俺はこの世界でピンチになった時に助けてくれたのが桂さんだったんだ。本物の侍に助けられてその時俺は思ったんだよ! この人こそが俺が人生で出会うべきだった男なんだって!」
「……はぁ?」
熱弁するクラインに対して、キリトはその思いをまんじりとも感じ取っていない。しかも話はまだ続く。
「だから俺は桂さんと一緒に行動すると決めたんだ! きっとこの人となら後悔のない時間を過ごし元の世界にだってきっと戻れる! そう確信したんだよ! お前らが万事屋を信じたように、俺は桂さんを信じると決めたんだ!!」
「その通りだ! クライン殿!」
すると、銀時と言い争っていた桂もクラインの元へ戻る。互いに肩を組み熱い気持ちを一つにし始めたのだ。
「共に見るのだ! この江戸の夜明けを!」
「ああ、もちろんだぜ! 桂さん!」
「「ハハハハハ!!」」
〔見たか! これが、侍達の絆だ!!〕
共に高笑いをする桂とクライン。さらにエリザベスもプラカードを掲げて彼らの仲の良さをアピールする。要するに分かったことは、クラインは桂に憧れを感じて心酔していることだった。指名手配犯と仲良くなった仲間の姿に、万事屋の六人はもちろん苦笑いで引いている。
「いつの間にあいつら仲良くなったんだよ……」
「完全にこの世界の侍に染まったわね……」
「驚くほど共鳴しています……もうあの頃のクラインさんとは違うんですね……」
「バカとバカがただ手を組んだだけネ」
「てか、本当にいたんだ。桂さんについていく人……」
「クラインならやりかねないと思っていたが、まさか現実になるなんて……」
銀時達三人は厄介な奴が増えたとめんどくさい気持ちになり、一方キリト達三人はかつての仲間が親友を見つけたことに、嬉しいのか悲しいのかわからない気持ちで心が一杯になってしまった。そんな彼らの様子をずっと見ていたエギルは、万事屋とは違いクラインの心境を理解して普通に話しかけてくる。
「まぁ、良かったよ。お前も居場所を見つけられたのならなによりだよ」
「おー!! エギル! アンタも万事屋に入ったのか!?」
「いいや、ここのスナックお登勢ってところでかくまうことになったんだよ」
「スナック? あっ、ここは居酒屋だったか!」
ここでクラインは今いるのが古風な酒場であることに気付く。すると、今度はたまが話しかけてきた。
「その通りです。折角ですので侍のお二方もここで飲んできますか?」
「酒か……そういえばまだ杯を交わしていなかったな。ここで祝杯でも上げるか?」
「おう、悪くねぇぜ! 桂さん!」
その場のノリに乗って桂とクラインはお酒を飲むことに決める。さらに桂は、周りの人間も巻き込むことにした。
「ならば、銀時。貴様も元攘夷志士として参加しろ。当然、おごりはしないがな」
「はぁ? 何言ってんだよ。なんで、てめぇらの祝いに参加しなきゃいけねぇんだよ!」
自腹と言われ否定する銀時。否定する彼の元にクラインが近づき誘いをしてくる。
「まぁまぁ、そんなカリカリするなよ。銀さん」
「って、なんでお前は気安く銀さんとか言ってんだよ! 俺と若干衣装被りやがって!」
「あっ、本当だ!」
「今気づいたのかよ!!」
初対面にも関わらず桂と同じ雰囲気のクラインに銀時はあまりいい印象を持っていなかった。さらに、桂は長谷川も誘いをかける。
「おお! 長谷川さんではないか! どうだ、ついでに一緒に飲むか?」
「ついでは余計だよ! いいけど俺、金持っていないぜ」
「心配するな。ここは俺が持ってやるから安心しろ!」
「って、なんで長谷川さんはOKなんだよ! お前の基準はどうなっているんだ!?」
長谷川に関しては桂が持つことになった。銀時は納得がいっていないが……
「ったく、どうしようか。自腹だしな」
「そこなんですか、銀さん!? それよりもまだ見つかっていないメンバーがいますから、そっちを優先してくださいよ!」
「そうだって! まだシリカにリズ、リーファにシノン、ピナが残っていて――」
とキリトが銀時を説得しようとした時だった。彼らの元にキャサリンが近づく。
「ミナサン。電話デスヨ」
「電話? って、姉御からアルよ!」
「姉上からですか!?」
彼女は鳴っていた固定型の電話機を新八へ渡した。着信先は新八の実家、恒道館からである。銀時を除く万事屋の五人は電話の方に注目して、新八は急ぎ通話ボタンを押して電話に出た。
「もしもし、姉上!?」
「あっ、新ちゃん? ようやくつながったわね!」
出てきたのは予想通り新八の姉、妙からである。
「一体どうしたんですか? 急に電話なんかかけてきて」
「いや、実はね今日の朝に女の子が二人うちの近くに落ちてきたのよね。九ちゃんと一緒に助けに行ったらその人達がキリト君達の仲間だったのよ!」
「えっ!? そうなんですか!?」
「そうよ。シリカちゃんとリズちゃんの二人と小さい竜みたいなピナ君が今うちにいるのよ。でも、みんな私の卵焼きを食べたら急に倒れこんじゃって未だに起きないのよね」
「卵焼き? ……大丈夫なんですか?」
「まぁ、大丈夫よ。九ちゃん曰く別の世界の住人だからお口に合わなかったのよ。いずれ起きてくるから安心して! それじゃ、みんなに伝えてね。新ちゃん!」
「……わかりました姉上。僕は今日万事屋に泊まるので二人と一匹をお願いしますね」
「はーい!」
妙の元気な返事と共に電話は終わった。吉報と悲報を伝えられた彼の表情は少し下向きであった。そして新八は、受話器を外して近くにいた四人へ妙から聞いた内容を伝える。
「一体何の電話だったアルか? 新八!」
「えっと、まずはいい報告からです。姉上がキリトさん達の仲間を見つけたそうですよ」
「えっ!? それって本当なのか!? 新八!」
「はい、シリカさんとリズさんとピナ君の二人と一匹だそうです」
「そうなの!? 良かった! シリカちゃんにリズ、ピナも無事だったんだ!」
「見つかって良かったですね!」
シリカ、リズベット、ピナの安否がわかり安心するキリト達。喜ぶ彼らとは裏腹に、新八だけはなぜか全く浮かない顔である。
「ん? どうした、新八?」
「お二人に何かあったんですか?」
「それはですね……申し上げにくいんですけど。シリカさん達は今姉上の料理を食べて気絶中なんですよ……」
「気絶? どっちの意味で?」
「不味い方です」
この言葉にみな再び黙り込んでしまう。料理を食べて気絶するなんてフィクションの世界でしかないと思っていたからだ。新八の表情を見てキリト達もその深刻さに気付く。
「そ、そうか……でも、生きているよな」
「そこは大丈夫です。まぁ、記憶障害が起こらなきゃいいけど」
「記憶障害!? お妙さんの料理って本当に食べ物なの!?」
「本当にシリカさん達は大丈夫なんですよね!?」
思ってもいない妙の料理に心配の種が増えた。とはいえ、仲間が助かっているなら彼らにとって何よりだった。と安心した時に再び電話が鳴り始める。
「今度は私が出るネ!」
新八に代わり今度は神楽が電話に出た。
「もしもしアル?」
「ギャャャャ!?」
「おーい!? さっちゃんアルか!? 一体何があったアルか!?」
聞こえてきたのはあやめの悲鳴である。ふと着信先を確認すると月詠のいる茶屋「ひのや」から電話だった。すぐにあやめは調子を取り戻して、通話を続ける。
「だ、大丈夫よ。今少しひっかかれてね……シノンって女の子に」
「シノン? まさか、キリ達の仲間のことアルか?」
「えっ、シノンなのか!?」
「本当なの、あやめさん!? 一体シノノンに何が起こっているのよ!?」
どうやら、あやめからの情報によると今「ひのや」にシノンがいるらしい。目の色を変えて一行は受話器へと近づく。そして、シノンの声を聞き取ろうと耳を澄ますが……
「ひっく! 私は大丈夫でしゅよ~! みんなー!」
聞こえてきたのは陽気で酔った女性の声だった。これには一同も沈黙してしまう。この状況は良くないと。
「シノは結構陽気な奴アルな」
「違いますよ! シノンさんは、大人びていてもっと落ち着いてクールな女の子なんですよ!」
「じゃなんでこんなことに……まさか、アンタ! 酒でも飲ませたのか!?」
「って、違うわよ! 彼女が酔っているのはお酒じゃなくてマタタビ! 晴太が大量にばらまいたせいで、こんなことになっているのよ!」
「シノノンがまたたびで酔った!?」
思ってもないトラブルを聞きアスナらは驚いてしまう。ここで、通話相手があやめから月詠に変わり詳しく理由を説明してくれた。
「そうなんじゃ! かぶった瞬間にわっちに抱きついてきて猫のようにじゃれあってくるんじゃ! 今日は無理だと思うから明日来てもら――」
「会話はおしま~い! 月詠さん! もっと遊んで! 遊んで!」
「わかったわね、あなた達! 明日ちゃんと来るのよ!」
あやめから言葉で通話が切れる。シノンも無事だったのは嬉しかったが、それよりもまたたびで酔ったことが衝撃的で仕方なかった。
「またたびであんなに酔うんですね」
「猫がモチーフのケットシーだから酔うのはある意味間違っていないような……」
「あーあ。シノノンがキャラ崩壊しちゃった……でも、それはそれで見てみたいかも!」
「新しい属性が追加されたアル。これも銀魂の世界ならではの影響アルか? それとも大人の事情アルか?」
「神楽ちゃん。せめて、後者の選択肢は排除しようか……」
感想はそれぞれだが、アスナは少しだけ興味を寄せている。仲間の安否が続けさまに報告される中、またも電話が鳴る。
「ん? またですか!?」
再び新八が電話に出ると、次にかかってきたのは真選組屯所からだった。
「あっ! 新八君?」
「山崎さん!? 珍しいですね! 電話をかけるなんて!」
「そんなこと言わないでよ! 今日は用があってかけたんだよ! 万事屋にはつながらないから、下のスナックにかけてようやくつながったんだよ!」
電話の相手は真選組屯所にいる山崎である。珍しい電話相手に驚きつつも山崎は会話を続ける。
「それで、キリトさんっていう新しい万事屋のメンバーはいますか?」
「キリトさんに用があるんですか?」
「いや、用があるのは俺じゃなくてお客さんなんだよ」
「お客さん?」
山崎の指示通り新八はキリトに電話を渡した。
「ん? 俺か?」
「はい。かけたい相手がいると」
キリトはとんがった耳に電話を近づかせる。
「あっ、もしもし一体誰――」
「お兄ちゃん!? お兄ちゃんなの!?」
「えっ!? スグ……いや、リーファか!?」
すると、電話越しに聞こえてきたのはキリトの義妹のリーファだった。またもメンバーに衝撃が走る。
「スグ? アッスーの言っていたリッフーって女の子のことアルか!?」
「そうよ! でも、なんで真選組からかかってきているの?」
聞きたいことはあるが、まずは二人の会話を一同は見守る。
「今ね! 私は真選組の屯所にいるのよ!」
「屯所? 一体なんでそんなところにいるんだ?」
「落ちたところがそこだったからだよ!」
「そうか……それで、今は大丈夫なのか?」
「うん。一応沖田さんのおかげで接待部屋にいてプライベートの面は大丈夫。お兄ちゃん達が迎えにくるまでここにいていいって。ただ……」
「ただ?」
突然リーファの声が小さくなった。そして、急に言葉を溜めて自分に起きたショックな出来事を言い出す。
「沖田さんの彼女にさせられたのよね……」
「えっ?」
唐突な言葉にキリトもどう返したらいいのかわからなかった。
「それって……どういう?」
「この部屋に通すための嘘なんだけど、もう局内じゃ噂が広がっていて! 結婚とか妊娠とかそんな嘘まで広がっているのよ!」
どうやら知らないうちに自分の義妹が、あるドSの警察官によって心の傷を負っているらしい。彼女の放った心の叫びは、キリトだけでなくそれを聞いた仲間達にも聞こえている。
「あー! 奴のやりそうな手アルな!」
「沖田さんならやりかねないな……」
万事屋の二人は特に納得していた。リーファにとってかなり悪い状況であることを理解する。だがこれで、待ち合わせをしていたキリトの仲間達が全てこの世界にいて、無事であることが確認できた。
「わかったよ。災難だったな」
「うん! 励ましてくれてありがとうね、お兄ちゃん!」
「それじゃ、明日迎えに行くから今日は待っていてもらえるか?」
「うん、わかったよ! それじゃ、待っているね! ……山崎さん! 電話も終わるからさっさと部屋を出て! 女子だけの空間に入ってこ――」
山崎を部屋に追い出すところで通話が切れた。仲間の無事もわかったところで一同は、早くも明日の予定を立て始める。
「さて! これでみなさん無事だってことがわかりましたね!」
「そうね! それも私達が挨拶回りした万事屋の知り合いばかりで良かったわ!」
「まぁ、予定通りってことアル! 今日はもう遅いし明日にした方がいいアルよな?」
「焦っても自分達によくないからな。一部心配な人もいるけど、まぁ大丈夫だよ。きっと」
「そうですね。それじゃ、銀さんにも伝えましょうか。銀さん! 明日――」
と今まで通話には参加しなかった銀時へ先ほどの出来事を紹介しようとした時だった。
「「「「ぷはぁ~!!」」」」
彼らが見たのは、銀時、桂、クライン、長谷川のおっさん四人組はいつの間にかビールを頼み勝手に祝杯を上げる光景である。
「おぃぃぃぃぃ!! お前ら、何勝手に乾杯しているんだよ!! さっきの話聞いていたのか!? ごらぁ!!」
四人の能天気さに耐え切れなくなり新八は大声でツッコミを入れた。しかし、四人は全く変わらず陽気に接してくる。
「そんなに怒るなよ、新八君! それよりも聞きなよ! クラインさんの悲恋の話をよ!」
「はぁ?」
長谷川の言葉と共にクラインは半泣きしながら自分の悲しい愛について語りだす。
「聞いてくれよ、みんな! 俺なんてキリトと違ってよ、全くモテないんだぜ! おかしいだろうが!」
「そうだよな! その気持ちわかるぜ! 若いからって美少女共といちゃいちゃしやがって! 何が彼女持ちだ! 何が子持ちだ!」
クラインの肩を銀時が支えフォローしている。数分前とは全く違った対応であった。
「てかお前らいつから仲良くなったんだよ。酒が入っているからって、フレンドリーすぎだろうが……」
「若さを羨ましがるおっさん同士の哀れな飲み会アル」
新八や神楽が辛辣な言葉を言っても、酔っ払い共の勢いは止まらない。
「よし! こうなったら俺が、若くイキった奴らを天誅してやろうじゃねぇか!」
「よっ、待っていたぜ! ヅラ!」
「さっすがー桂さんだぜ!」
「俺達のリーダーだな!」
「「「「ハッハッハッ!!」」」」
酒で酔っ払うおっさん四人組。その様子をキリト達は苦い顔で見つめていたが、エリザベスはずっと見守っている。
〔クラインもいい飲みっぷりだな! アレはいい侍になるぜ!〕
「って、エリザベスさん!? 能天気すぎませんか!?」
「ていうか、アレってしばらく終わらないわよね……」
戸惑う五人の元に今度はエギルとたまが話しかけてきた。
「だろうな。お前達は後好きにいな。ここにいてもいいし、万事屋に帰ってもいいよ」
「ご心配なく。終わったら銀時様達に伝えておきますので今日はゆっくりと休んでくださいね」
二人に加えてエリザベスもプラカードを掲げてメッセージを伝える。
〔まぁ、仲間も見つかったんだ。後はゆっくり休んで明日に備えておけよ〕
「みなさん……わかりました。それじゃ、上でゆっくりと休みますか?」
「そうだな。今一度作戦を見直しておきたいし」
「しっかり休養を取って明日に備えないとね!」
「それでは、銀時さん達は頼みましたよ!」
「いざという時は、ボコボコにしてもいいアルよ!」
こうして、五人は休養をとるため賑やかなスナックから上の万事屋へと移動した。夕方過ぎに起きた多くの出来事は衝撃の連続だったが、それでも仲間達が全員無事で何よりである。おっさん達は酒に酔い、シリカやリズベットは未だに気絶中。シノンも元に戻る様子はなく、リーファは屯所の個室で安心した時間を送っている。それぞれがそれぞれの時間を過ごして、いよいよSAOのレギュラーメンバーが集結する――
銀魂の連載が終わると聞いてあとがきを長く予定していましたが、移籍だと聞いたので、なかったことになりました。さぁ、次回予告へと話を戻して、予定では後二訓か三訓くらいでこの章は終了します。今後の予定はのちに明かしていくので待っていてください。では、また次回!