剣魂    作:トライアル

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 みなさん、すいません。二週間ぶりの投稿で……言い訳になりますが実は体調を崩してしまって絶不調でした。本当はSAOの3期の放送に合わせてこの章を終わらせるつもりでしたが、体調不良に加えて台風といった自然現象にやられ、今に至っています。もうしばし、お付き合いください。後、前回の話は人数が多くてわかりづらかったと思い第十一訓の文体を大幅に変えました。冒頭の部分を除いて、大まかな話の流れは変わっていませんので気になる方は是非見てください。人数が多いと思いますがなるべくわかりやすく書いてお送りします。それでは、二週間ぶりの剣魂を是非ご覧ください。



第十二訓 猫に甘い物を与えるな! 

 時刻は九時を過ぎたあたりで、朝から徐々に昼へと向かっている。そんな中、万事屋一行はシリカ、リズベット、ピナと合流して、かぶき町から次の目的地である吉原へと進んでいた。次に出会うべき仲間は月詠らの元にいるシノン。一部のメンバーは、現在彼女がとんでもないことに巻き込まれているのを知っている。少しだけ不安を感じつつも、一同はかぶき町を駆け行けていった。総勢十一人と二匹で移動する中、かぶき町の町並みを改めて見たリズベットら二人は、それぞれ自分の感じたことを声に出している。

「宇宙人の来た江戸時代ね……未だに信じられないわ……」

「そうですね。別の世界から来た人なら最初は信じがたいですもんね」

 彼女の呟きに新八が返す。周りを見れば古風な江戸の町とビル街が乱立して、中央には巨大な塔がそびえ建っている。自分達のいた世界とは違った文化に驚きを隠せなかった。徐々にこの世界について理解を深めていたシリカ達だったが、それでも疑問は多くある。

「本当です……ところでキリトさん達はこの世界でどんな生活をしていたんですか?」

 シリカの素朴な疑問に、キリトはすぐに返答してくれた。

「生活って、特に変わったことはないよ。さっきも言ったけど、文化や科学技術は俺達のいた世界となんら変わらないし、困ったこともないから安心して過ごしているよ」

「つまり、江戸時代と言ってもそこまで意識しなくていいということですよ!」

 ユイも説明を補足して二人に伝える。キリト達はすでに慣れた様子であり、まったく不安に思っていなかった。それを見てリズベットらは反応に困ってしまう。

「そうなの……?」

「そうよ、リズ。多少困ることはあったけど、私達は何不自由なく暮らしているのよ」

「そうだぜ、気にしたら負けだからな。無意識でいいんだよ、無意識で」

 アスナに続きスクーターを運転していた銀時も伝えてきた。万事屋らの表情から不安な気持ちはないように見えるが、彼女はまだ納得していない。

「本当なのかしらね……?」

 大雑把な態度に思わず苦笑いで返してしまった。さらに今度はユイが二人に質問を振ってくる。

「他に聞きたいことはありますか?」

「他ですか……やっぱりアバターとの一体化でしょうか?」

「そうね……まさか妖精系のアバターのまま別の世界に来るなんて、思いもしなかったわ」

「みなさんはともかく、アタシに至っては猫耳と尻尾付きですからね。この姿のまま生活するのは不安しかないですよ……」

 そう言ってシリカは、自分の耳部分に付いた茶色い猫耳をさする。二人が肉体とアバターの一体化を知ったのもつい数分前だった。脈だけではなくアミュスフィアの待機音が聞こえた謎も分かったのはいいが、まだ受け入れがたく不安を口にする。浮かない顔をしている彼女達に、キリトや銀時がアドバイスを加えた。

「まぁ、そんな重く考えるなよ。アバターと一体化しても俺達は何不自由なく暮らしているし、そこまで気にすることはないよ」

「そうそう。それにこの世界には宇宙人が存在しているって言ったろ。何かあってもごまかしが効くし、不幸中の幸いってやつだよ」

「宇宙人ね……ある意味この世界の方が、今のアタシ達にとっては安全かもしれないわね」

「そうですね。宇宙人がいるからこそ、この姿でも緩和されているんですね……」

 改めて二人はこの世界へ来たことの奇跡を思い知る。宇宙に開国した別世界だからこそ、容姿を気にせずに存在できるのだ。すると、急に桂は意味深な言葉を呟き始める。

「おい、銀時。そんな話よりも今は仲間との合流に集中しろ。結局、アレには間に合わなかったからな……」

「アレ? 桂さん、一体どういうことなの?」

 アスナが気になって質問で返すと、桂は一つの不安を口に出した。

「それは――SAOの三期放送にだ!」

「さ、三期?」

「って、ヅラァァァぁ!? 何とんでもないこと言ってんだよ! こいつらの前で放送ネタはやめろよ!!」

 銀時のツッコミがすかさず決まるが、桂は何一つ動じていない。そんな彼は突如SAOの放送再開に乗っかりメタ発言を口走った。当然キリトらSAOキャラクターはまったく意味を理解していないが、銀時ら銀魂キャラクターは桂の言った意味をよく理解している。

「桂さぁぁぁん!? 急にどうしたんですか!? 三期とか言っても僕らにしか分かってませんよ!? キリトさん達、何一つ意味を理解してませんよ!!」

 我慢できなくなった新八が激しいツッコミを繰り出すが、何を言われようと桂は否を認めない。

「それでいいのだ!! そもそもこの「剣魂」の第一章も放送再開前には終わる予定だったが、作者の環境の変化に加えて体調不良により予定が狂ってしまった! だから、もうこうするしかないのだ!」

「誰が作者の裏事情まで話せっていったよ! つーか、さっきからキリト達が顔をポカンとしたまま理解してねぇんだよ! やめろ! これ以上ここで三期ネタをするんじゃねぇ!!」

 銀時の言う通りキリト達は苦い顔のまま、まったく意味を理解していなかった。注意を促し続ける中、クラインだけはなぜか食い気味に反応している。

「いや、待ってくれ! 桂さんは何も悪くねぇよ! 俺も楽しみにしていたんだ! そこは素直に喜んでいるぜ!」

「ク、クラインさん!? まさか、あなた……桂さんに影響されてとうとう銀魂キャラに染まったんですか!?」

 意見に同感するクラインの姿を見て、思わず動揺する新八。彼もメタ発言の意味を理解していると思いきや、

「いや~面白かったぜ! 「とある魔王の時空転移」!」

「って別の作品だったぁぁぁぁ!! つーか、お前らいつアニメなんか見たんだよ!! ちゃんと攘夷活動しろ!!」

まったく違っていた。桂のようなボケをかまして、新八からの手強いツッコミが入る。それは置いといて、桂のボケはまだ止まらない。

「しかし、どうする? このまま放送が続くとこの小説の時系列が合わなくなるぞ。作品のピンチではないか?」

「いや、そこは読者の方に注意書きくらいで大丈夫だと思いますよ!」

 新八からのフォローが入ろうと、桂の考えは依然として変わらなかった。

「ダメだ!! こうなったら仕方ない! かくなる上は……俺達も行くぞ!! アンダーワールドへ!!」

「行くなぁぁぁぁ!! おい、誰かヅラを止めろぉぉ!!」

 勢いよく速度を上げる桂とエリザベスに、銀時のスクーターが追いかける。桂の思い込みと熱意は誰にも止めることができなかった。一方で、キリト達は未だに桂や銀時の言った内容を理解していない。

「えっと……つまり三期とか放送とかアンダーワールドとか一体どういう意味なんだ?」

「この世界の人にしかわからない暗号みたいなものでしょうか?」

「キリにユイ……その考えで十分アル。世の中には知らない方が幸せなこともアルからナ……」

 ユイの勝手な解釈で神楽がごまかし、騒動は一旦幕を下ろした。果たしてキリト達がメタ発言を理解する日は来るのだろうか? 違った思いが交差して、一行は吉原へと進んでいく。

 

 数分後。時刻が十時を回ったところで、一行はようやく吉原へと到着する。かぶき町とはまた異なる和風な風景が広がり、初めて見るメンバーに驚きを与えていた。数多ある店の中から彼らは茶屋であるひのやへと到着。銀時達はスクーターや定春を止めて降り、キリト達は羽を下ろして地上に再び着陸する。ピナもシリカの頭の上に乗っかった。そして、十一人が次々と店に入っていくとそこには店主である日輪がおり、車椅子に乗りながら店の準備を進めている。

「あら、みんないらっしゃい! また来てくれたの? 今日は万事屋以外にも初めてお目にかかる人達もいるわね。もしかして、また挨拶回り?」

 万事屋だけでなく新しい顔ぶれにも気付き、呑気に接する日輪。しかし、万事屋らの緊張の度合いは異なっており、切迫した雰囲気のままキリトはシノンの行方を聞いてみる。

「ここにシノンがいるって聞いて駆けつけたんだが……」

「あっ、そういうことね! あの子なら奥の部屋で月詠と一緒にいるわよ」

「わかった……なら上がらせてもらうぜ!」

 銀時が合図をして一行はみな靴を脱ぎ捨て奥の部屋へと進んでいく。大勢で向かっているため、廊下を走る音も一段と騒がしくなった。

「アレは……合流かしらね? 昨日の電話が伝わったみたいで良かったわ」

 日輪は彼らを見守りつつも準備を再開させる。一方で、万事屋一行が部屋へと向かう途中に、ちょうど廊下で倒れている人を発見した。

「ん? あいつは……ストーカーか?」

「って、さっちゃんさん!?」

 銀時や新八はいち早く正体に気付く。それは顔に引っかかれた跡が多くつき、真っ赤になっていた猿飛あやめだった。目を閉じて気絶しているようにも見える。一部のメンバーは彼女の存在を知っており、すぐに駆け寄ってきた。

「猿飛さん!? しっかりしてください! 一体何があったんですか!?」

 ユイが必死に呼びかけるとあやめは一時的に気を取り戻し、指を震えたまま奥の部屋を指す。

「あ……あそこにアナタ達の求めた者が……いる……」

 かすれ声で呟き、あやめは再び倒れ込んでしまう。とその時、奥の部屋から女性の高い悲鳴が聞こえてきた。

「この声はまさか……シノンさん!?」

 ユイがすぐに感じ取ると、キリトとアスナは走り出して部屋へと向かう。

「シノン! 大丈夫か!?」

「今、助けに……」

 二人は勢いよく戸を開けると、その光景に愕然とした。目の前に広がっていたのは――

「にゃふ~尻尾は苦手って言ったじゃん!」

「す、すまぬ。猫の扱いには慣れてないんじゃ……」

「じゃ、今度は気を付けてね! 月詠さん!」

「わ、わかった。それじゃ、やり直すぞ」

「は~い! よろしくね!」

シノンが月詠に甘えて撫でられている光景である。彼女は昨日から変わらずに酔ったままであり、改めてキリト達に衝撃を与えていた。普段のクールで冷静な性格からは想像がつかないほど表情が柔らかく、積極的に月詠へ甘える姿は元の面影すらない。月詠も困った表情で彼女の相手に苦戦している。共にキリト達の存在には気付いていないので、アスナらは状況を整理するためにそっと戸を閉めた。

「お前らどうした? シノンっていうのはあいつのことじゃねぇのか? なんで戸なんか閉めたんだよ?」

 事情を知らない銀時や桂は不思議に感じ取り、シリカ達三人は逆にシノンの陽気な姿に動揺を広げている。そんな彼らの疑問に、キリトやユイは正直に説明した。

「まだ、酔っていたから……」

「酔っていた? って、どういうことだ?」

「……実は昨日猿飛さんから連絡があって、シノンさんがまたたびで酔ったと報告を受けたんです……」

「「「またたびで酔った!?」」」

 クライン、シリカ、リズベットの三人は同時に声を上げて叫ぶ。さらにはピナにも伝わったのか、「ナー!!」と大きく鳴き声を上げた。三人もシノンの現状をようやく理解したが、銀時や桂にはまったく響いていない。

「何? それのどこがおかしいというのだ? 猫ならばまたたびで酔うのは当然のことではないか?」

「それはそうだけど、そもそもアタシ達のこの姿はアバターなのよ! 本当は桂さん達と同じ人間なのに、なんでシノンが酔っちゃっているのよ!?」

 リズベットは隣にいた桂へ疑問を叫び続ける。彼女の言う通りキリト達も元々は普通の人間で、またたびで酔うことは到底考えられない。しかし、これは猫妖精であるケットシーの特殊な事情だとユイは推測していた。

「もしかすると、この世界に来たことによって新しい弱点が付けられたのかも知れません。だからシノンさんは、またたびで酔ってしまったのでしょうか?」

「マジアルか!? ということはシッリーも……なんか酔っても変わらなさそうアルな……」

「それ、どういうことですか!? 神楽さん!?」

 神楽の言葉に思わずシリカがツッコミを入れる。それは置いときシノンが酔った原因は、新たなケットシーの弱点が関係しているかもしれなかった。シリカにも当てはまるため、彼女を中心に仲間達への動揺が広がっていく。しかしアスナだけは、心配と同時にこの状況を少しばかり楽しんでいた。

「はぁ……まさか、こんなに甘えるシノノンを見られるなんて……これはこれでかわいくてレアよね……」

「アッスー? なんか変なスイッチ入ってないアルか?」

「いいや、なんでもないわよ! 神楽ちゃん!」

「顔がにやけているアル」

 神楽が目を線にして気が引く中、アスナは酔ったシノンのかわいさを見て心がときめいている。一行がそれぞれ反応して一段落したところで、ようやく行動へと移し始めた。

「とりあえず、まずはシノンさんを元に戻しましょう!」

 ユイの声かけに続いて、クラインや新八も口を開く。

「そうだな! あんな陽気なシノンだとこっちの気が狂ってしまうぜ!」

「それじゃ。部屋に再突入しましょう!」

 二人の言葉に仲間達も頷いている。シノンを元に戻すためにも、一行は戸を開けて再び部屋へと入りこんだ。

「な、何じゃ……って主らか。いつの間にここへ来たんじゃ?」

「ついさっきだよ。キリトの仲間を引き連れてここへやってきたんだよ」

「仲間……そういえば見かけない奴らが三人おるな。シノンの仲間ということか?」

「そうだよ。とりあえず話は後だ! こいつをまずは酔いから醒まさねぇとな!」

 いきなり押し込んできた銀時達に月詠も驚いていたが、すぐに状況を把握して冷静さを戻す。彼らと接触を図り、気持ちを合わせ始めていた。そんな中、今度はキリトが話しかけてくる。

「そもそも、昨日酔っていたのになんでまだ酔ったままなんだ?」

「それはじゃな……」

 返答しようとした月詠であったが、その時にシノンは急に彼女へ向けておねだりを始めてきた。

「ねぇ、ねぇ! 月詠さん! また食べさせて~! お願い~!」

「……しょ、しょうがないな! ほら、あ~ん!」

「あ~ん!」

 断れずに月詠は、横に置いてあった袋から飴玉を取り出してシノンへと食べさせる。その袋にはマタタビ味と書かれており、これによって一同は全てを察していた。この飴玉が、シノンの酔いを悪化させているのだと。

「ま、まさか月詠さん……」

「し、仕方ないんじゃ!! この飴玉を上げないとシノンが機嫌を悪くして、本物の猫のように暴れまくるんじゃ! だから、戻そうにも戻れないということじゃ!」

「そうだったんですか……!? まさに負のスパイラルです……」

 取り乱した月詠の言い訳に、ユイも苦い顔で共感している。予想を越えたややこしい現状に、一同も言葉に詰まっていた。すると今度は新八があることに気付く。

「えっ……じゃ、さっちゃんさんが倒れていたのは、シノンさんが攻撃したからですか!?」

「その通りよ……」

「って、あやめさん!?」

 唐突に声が聞こえて思わず後ろを振り返ると、そこにいたのは戸に寄りかかりながら必死に話すあやめであった。顔に付けられた傷は、彼女曰く暴走したシノンによってつけられたようだ。

「大丈夫アルか、さっちゃん!」

「大丈夫よ……これくらい銀さんに痛めつけられる妄想に比べたら軽いもんよ……」

「おい、真面目な場でふざけんなよ」

 傷ついてもあやめのサービス精神はブレない。銀時に文句を言われたが、止まらずに説明は続けられる。

「シノンちゃんは何も悪くないのよ。たまたま、またたびをかぶってしまっただけだから……幾ら酔っていても彼女も元は人間……そこをうまく突けばきっと元に戻るわよ……」

 意味深な言葉を呟いた後、あやめは再び気絶して床へと倒れ込んだ。彼女の残してくれたヒントは重要なものだと一同は感じ取っている。

「元に戻る方法? それって一体……」

 キリトも真剣に考え始めていた時だった。

「えへへ! やっぱりキリトじゃ~ん!」

「えっ? うわぁ!」

 彼の目の前にシノンが現れる。陽気にも笑った表情はさながら子供っぽさを見せていた。どうやら彼女もキリト達の存在に気付き、近づいてきたようである。

「ひさしぶりだね~! 元気してた~?」

「げ、元気って……」

「それはこっちのセリフよ! アンタこそ、大丈夫なの!?」

 リズベットが緊迫した表情で聞いてきても、シノンの表情は柔らかいままであった。

「大丈夫だよ~! この通りいつも通りじゃん!」

「全然いつも通りじゃありませんよ! シノンさんはもっと大人びていてクールビューティーな人ですよ!」

「クールビューティ―? ハハハ! 何それ笑っちゃうよ!!」

「こ、これは思った以上の重傷ね……キャラ崩壊もいいところだわ……」

 シリカの説得も無駄に終わり、シノンはまったく戻る気配すら無い。その陽気さには、アスナも気が引いてしまう始末である。全員の調子が狂い始めたところで、いよいよ元に戻すための救出作戦へと入った。

「とにかく、元に戻さないと状況が進みませんよ! 誰か! 酔った猫を元に戻す方法を知りませんか!?」

 新八が呼びかけると真っ先に手が挙がってくる。その正体はまさかのクラインだった。

「なら、この俺に任せておけよ!」

「って、クラがやるアルか!?」

「そうだぜ! こういう酔った猫には額を押すと元に戻るって俺のばあちゃんが言っていたからよ! なら絶対シノンにも効くと思うぜ!」

「って、ちょっと待て!? クライン!?」

 キリトら仲間の不安をよそに、彼は走り出してシノンの額に向けて指を押す。ところが、

「ふにゃゃゃ!!」

「ぎゃゃゃゃ!!」

思いっきり顔を爪で引っかかれてしまい、見事に返り討ちにあってしまう。意表を突かれたカウンター負けで、彼の作戦は簡単に崩れ去ってしまった。

「おぃぃぃ!! あの人何やってんだよ!? ただセクハラしただけでしょうが!?」

 あまりのあっけなさに新八のツッコミも止まらない。一方のクラインはというと、

「違う……俺はただ……」

そう言い残した後に目を閉じてクラインは気絶してしまった。

「あっ、ゲームオーバーアル」

「不吉なこと言わないで神楽ちゃん!? クラインさん気絶しただけだからね!!」

 神楽からも辛辣な言葉を浴びせられる。そんな中、彼のリベンジを果たすべく桂が前へと出てきた。

「仕方ない。では、この俺がクライン殿のリベンジを果たそうではないか!」

「か、桂さん!? アンタがやるんですか?」

 新八はクラインの二の舞になるのかと心配するが、彼には一つだけ秘策がある。

「何、心配するな。俺は年長者だ。このぐらいのこと容易く片づけられるさ」

「か、桂さん……」

「俺の肉球への愛を伝えればきっとシノン君も元に戻るはずだ」

「か、桂さん!?」

「待っていろ、肉球! 必ずや使命を果たしてやるからな!」

「桂さん!!」

 新八が止めようともはや桂は止まらない。思い込みのままシノンへと近づく桂であったが――

「アレ? 肉球ついてなくね?」

途中で重大なことに気付いてしまう。ケットシーのアバターに肉球なんてついていないのだ。気づいた時にはもう遅く、勢いのまま桂はシノンの手を掴み……

「ふにゃゃゃ!!」

「ぐわぁぁぁ!!」

クラインと同じ運命をたどるのである。

「桂さん!! アンタ何しに行ったの!? 自爆しにいっただけなんだけど!?」

「すまぬ……後は頼んだぞ、銀時……」

 顔を痛く引っかかれたまま、さり気なく銀時を巻き込ませて桂も気絶していった。

「って、何で俺なんだよ! こいつ完全に俺になすりつけただろうが!!」

 思わぬとばっちりを受けて引き下がれなくなった銀時は、仕方なく覚悟を決めて行動へと移していく。

「ったく、しゃぁねぇな。後は俺に任せろ!」

「銀時……主にシノンを戻せるというのか?」

「ああ、そうさ。これで戻してやるよ!」

 月詠から言われると、彼はフッと笑い隠し持っていたある物を上に掲げる。

「戻すって……アレ、チョコじゃないの?」

 アスナを始め一同が気付いたのは、銀時の手にした物が携帯用のチョコレート菓子だったことだ。予想外である切り札の登場に、仲間達は驚きを隠せない。すると銀時は事細かに、その理由を話し出す。

「てめぇら子供にはわからねぇと思うが、実は酔った奴の勢いを止めるには甘いお菓子が有効的なんだよ。ここで俺が負のスパイラルを止めてやらぁ!!」

「ぎ、銀さん!?」

「本当に大丈夫なのか!?」

 勝算を見据えたのか、銀時も桂達と同じく突っ走り、シノンの元へ近づいていく。新八やキリトら仲間達が見守る中で、ついに運命の時が訪れる。

「これでもくらえぇぇ!!」

 一瞬の隙を突いて彼はシノンの口元にチョコレートを入れた。それを口にしたシノンは噛んでいないまま飲み込むと、急に唸り声を上げ始める。

「うう~! うわぁぁ!!」

 頭を抱えて苦しんだのも束の間、数秒も経たないうちに彼女の様子は急変した。

「――アレ? 私、今まで何していたんだろう……?」

 ふと我に返ったシノンは、ようやく冷静さを取り戻したのである。表情ははっきりとしていて、雰囲気も大人びさを持ち合わせていた。戸惑いながらも、彼女は完全に酔いから覚めたのである。

「やっ、やったわ! いつものシノノンに戻ったわ!!」

「これが普段のシノアルか! 確かに落ち着いていて大人っぽいアル!」

 喜びの声を上げるアスナと神楽。同時にメンバー全員が、彼女の無事を確認して一安心した。一方でシノンは、現状をまだ把握できていないが、近くにいた仲間達の存在には気付いている。

「えっ? みんな……? 一体なんでここにいるの?」

 驚きを見せるシノンとは違い、仲間達は喜びに満ちていた。あやめ、クライン、桂と犠牲者を出しながらもようやくシノンを元に戻すことに成功したからである。すると、横にいた月詠も話しかけてきた。

「とりあえず、元に戻って良かったな。それにこれには深い訳があるんじゃ」

「深い訳?」

「そうだぜ。俺達がてめぇを止めるのにどれくらいの労力がかかったと思い……」

 とかっこよく締めた銀時がシノンへ近づこうとした時である。

「ん!? うわぁ!?」

 落ちていたまたたび飴の袋につまづき体勢を崩してしまう。転ぶ彼は手をバタバタと動かしていると――

「フギャ!!」

シノンの尻に生えていた水色の尻尾につかんでしまった。不意に掴まれたことで彼女はつい高い声を上げてしまう。ケットシーの尻尾は触れるとくすぐったい感覚になるらしいが、銀時はそれを知る由もない。

「あっ……アレ? 尻尾……?」

 彼は一瞬にして嫌な予感を感じる。顔が真っ青になる銀時に対して、シノンの顔は真っ赤になって恥ずかしがっていた。この状況を見たキリトは、苦い表情となり頭を抱えてしまう。

「銀さん……死んだな……」

 彼に続きアスナら事情を知っているメンバーも同じく頷いている。そして、

「な……何触っているのよ!! この変態!!」

「ぎゃぁぁぁ!!」

反射神経でシノンは銀時に対して怒りの鉄槌をくらわせた。顔を拳で殴られてしまい、彼も桂らと同様気絶の末路を辿ったのである。こうしてシノンを酔いから戻したのだが、大人達四人を気絶させるほどの犠牲を生む結果よなってしまう。またたび騒動はこれにて終結した。

 

 それから数分後。シノンも一通り落ち着き、銀時ら大人四人も気絶状態からようやく元に戻った。そしてシノンは、月詠らからこれまでの事情と自分が酔っていた事実をここで知ることになる。

「ええ!? 私がまたたびで酔っていた……? そう……だから昨日までの記憶がぼやけているのね」

 気付いたのはいいが、やはり酔っていたせいで何一つ覚えていないという。

「そうじゃ。主を止めようとわっちらが止めようとしたんじゃが、銀時によって主を止めてくれたんじゃよ」

「そうだったのね……で、あなたが銀さんね。助けてくれてありがとう。でも、尻尾を触ったことは許されないことだから、拳の件はプラマイゼロってことでいいわよね?」

「おい、勝手に解釈するんじゃねぇよ。それが助けたやつに言う言葉かよ!」

 シノンは改めて銀時へお礼を交わしたが、同時に尻尾を触られたことを根に持っていた。銀時がツッコミついでに一喝するとアスナ、シリカ、リズベットは順々にひそひそと嫌味を話し始める。

「でも、銀さんがやったことは、私達の世界じゃプライバシー侵害よね?」

「キリトさんなら構わないですけど、銀時さんは正直……」

「普通だったら牢獄行きなのに、許してもらっているだけでありがたく思わないとね……」

「おい、てめぇら! 女子特有のおしゃべりで俺を責めるんじゃねぇよ!」

 聞こえるような声で話していたのでつい銀時にツッコミを入れられてしまった。

 ここで場の状況を整理する。現在一同がいるのは先ほどいた部屋で、みな正座やあぐらで座って話し合いをしていた。万事屋や桂一派らに加わって、シノン、月詠、猿飛あやめの計十四人とピナがこの場にいる。自己紹介を後回しにして、込み入った話を続けていた。すると今度は、シノンが仲間達へ話しかけてくる。

「さて、みんなも迷惑かけて悪かったわね。特にあやめさん達は引っかいたりしてごめんね」

「別にいいのよ……どうせ私はマゾなんだから……」

「アンタ、何か泣きそうになってませんか?」

 若干涙目なところを見せたあやめに、新八からのツッコミが入った。彼女に続いて、クラインや桂もこの件についてはさほど気にしていない様子である。

「まぁ、大丈夫だぜ。またたびで酔っていたんだから仕方ねぇよ」

「その通りだ。君の腕には感服した。ぜひ、攘夷志士として――」

「勧誘はやめてください! 桂さん!」

 どさくさに紛れて桂は勧誘を迫ったが、新八によって止めさせられた。そんなシノンだったが久しぶりに会うキリト達の姿を見て、心の底から嬉しく思っている。

「でも、みんな無事で良かったわ。リーファやエギルは見当たらないけどもう見つかっているの?」

「はい! エギルさんはスナックお登勢という店にいて、リーファさんはこれから合流する予定ですよ!」

「そう、なら良かったわ」

 ユイが詳しく説明して、シノンもひとまず安心した。落ち着いたところで、今度はキリトへ話しかけてくる。

「随分遠回りになったけど、キリト達も無事で安心したわ」

「それはこっちも同じだよ。これもやっぱり万事屋のおかげかな?」

「万事屋……今キリト達が所属しているなんでも屋よね?」

「あっ、知っていたんだ! そうよ、今私達はこの銀さん達の元で暮らしているのよ!」

 アスナがそう言うと、シノンは万事屋の方へ顔を向けた。銀髪の男性と眼鏡をかけた少年、赤髪の少女が今のキリト達の協力者であると察している。すると早速彼らも話かけてきた。

「はい、その通りです! 先ほどはうちの大将が情けないことをしてすいません」

「こんな九割がダメで出来ている人間でも、残りの一割は信じてほしいアル!」

「おい、どんな紹介だよ! それほぼ見限られてんだろ! 信じるって方が無理あんだろ!」

 銀時を当たり前のようにけなす新八と神楽。そんな彼らの雰囲気を見て、シノンもその場のテンションに乗っかることにする。

「……わかったわ。一割だけ信じるわ」

「お前も乗るんじゃねぇよ! 何笑ってんだ!?」

 面白い状況につい耐え切れなくなったのか、シノンはクスクスと微笑みを浮かべていた。同時に万事屋へ対しての信頼も生まれている。

(すごい不思議な人達……キリト達が信頼を寄せるのもわかる気がするわ)

 心の中でそっと信じ始めていた。そして万事屋も忘れないうちに自己紹介に入る。

「あっ、私は神楽って言うアル! よろしくアル、シノ!」

「うん、よろしく。神楽」

「僕は志村新八です。ツッコむこともあるかもしれませんがよろしくお願いします!」

「よろしくね。って、ツッコミってお笑いのことを指すの?」

「一応ですけど……」

 軽く挨拶を交わした神楽と新八に続いて、銀時も流れからシノンへ自己紹介を交わす。

「さて、あなたが銀さんね。改めてよろしくね」

「よろしく……ったく、尻尾触ったくらいで顔を赤くするかよ……」

「何か言った?」

「いえ、なんでもありません。勘弁してください!」

 何気ない文句を聞いたシノンは顔色を怖くして、銀時を脅し始める。彼はすぐに謝りを入れており、男としてのプライドもへったくれもない。アスナに続いてシノンにも頭が上がらなかった。

「だから謝るの早いって言ってんだろ……」

 新八にも小さくツッコミを入れられる。万事屋との挨拶も終わったところで次に桂が声を上げた。

「さて、万事屋もいいが俺も忘れては困るぞ」

「えっ? あなたも万事屋の一員じゃないの?」

「違う……俺の名は桂小太郎。侍の一人さ」

 静かに自己紹介した桂だったが、シノンはその名前に違和感を覚える。

「小太郎? 小五郎の間違いじゃないの?」

「小五郎じゃない小太郎だ! 別人だから覚えておくのだぞ」

「あっ、そうなのね」

 てっきり彼女は歴史上の人物である桂小五郎を思い出したようだ。しかし、あくまで人違いらしい。

 

 それから、延々と自己紹介が繰り返し行われ、互いに面識のないメンバーもこれでひとまず名前を憶えてくれた。

「なるほど、シリカにリズベットにピナとクラか……よし、ばっちり覚えたぞ」

「あの、月詠さん? 俺の名前が簡略されているみたいだけど……」

「いいのよ、これで! あごひげはさっさと黙っていなさい!」

「ていうか猿飛さん!? 俺にだけ当たり強くないか!? テンションも高くなっているし!?」

 月詠やあやめは、クラインの扱いを適当にあしらう。銀魂女子にはよくあることだった。一方、シリカやリズベットも月詠らの印象をしっかり記憶している。

「猿飛さんは忍者で、赤い眼鏡が特徴的よね……」

「月詠さんは大人びていてかっこいい女の人です……それに、背も高くてすごい胸も大きいですね……」

「ナー……」

 シリカの悲哀さをピナも共鳴して鳴く。自分とは真逆の容姿をした月詠が羨ましくて仕方なかった。そんな二人もあやめと月詠に対しては、共に頼りになる女性だと思い始めている。そしてシノンは、キリトや銀時と今後について話し合っていた。

「それで、次に行く場所は決まっているの?」

「ああ、そこにはスグがいるからな。無事みたいだけど少し不安かな?」

「それ、どういう意味なの?」

「それはだな……真選組の屯所だからだよ」

「えっ……!?」

 銀時の言葉を聞き動揺する桂。すると彼は急いでエリザベスを連れて、クラインの元に駆け寄る。

「クライン……少しいいか?」

「えっ、何だ?」

 そう声をかけて三人はそっと部屋を出て行く。実は真選組と攘夷志士は敵対関係にあり、簡単に言うと桂は簡単に屯所へ行けないのだ。なので、クラインへ説明するために部屋を出たと思われる。

「クラインさんを連れて桂さんはどうしたのでしょうか?」

「桂さんは少し特殊ですからね……」

 ユイの心配事に新八はそっとフォローを入れた。一方、真選組と聞いて驚いていたのはシノンも同じである。

「新撰組……この世界にもいたのね」

「……でもね、シノノン。多分私達の思っているような新撰組とは真逆の存在よ」

 アスナが注意するように説明するが、シノンはすでに勘付いていた。

「そんなの分かっているわ。あやめさんを見ていたらすっかり耐性がついたもの」

「それは褒められているのかしら……?」

 あやめはそれを言われて複雑な気持ちを示す。とはいえシノンも興味を持ったので、彼女は万事屋に連いていくことを決めた。

「わかったわ。ここまで来たら私も連いていくわよ! この世界の新撰組も見てみたいからね」

「後でショックを受けても知らねぇぞ」

 銀時はボソッと文句を呟く。こうして、お約束通りシノンも仲間に加わり一緒に屯所まで、向かうことになった。再び出発の準備を始める中、神楽は最後に月詠とあやめへある約束を交わす。

「あっ、そうアル! さっちゃん、ツッキー! 今日恒道館でアッスー達の今後について話しあうアル! 二人も来てほしいネ!」

「そうか……今後についてじゃな」

「わかったわ! 私は一足先に行ってサプライズプレゼントとして私を……」

「って、それもはやサプライズになってねぇよ!」

 あやめのダダ漏れの計画に銀時が直々にツッコミを加えた。こうして、二人はあっさりと承諾して話し合いも終了する。

「それじゃ、月詠さん、あやめさん、後でね」

「わかっておる。後でまた合流じゃ」

「銀さんもちゃんと連れてくるのよ!」

「わかっているって!」

 そう会話してシノンは月詠らと一旦別れを告げた。一日しか経っていないが、三人の間には情が深まりつつある。偶然の出会いに感謝しながら一行は外へと出て行った。そして、外へ出るとそこには一人でポツンと待っていたクラインの姿を見つける。

「アレ? クラインか?」

「一人でいますね。桂さんはどうしたのでしょうか?」

 キリトやユイがいち早く気付き彼の元へ駆け寄り、仲間達もそれに続いた。

「おっ、みんなか? 待っていたぜ!」

「って、クラインさん。一体何があったんですか?」

「それはだな……桂さんにも訳があるんだよ。あの人は侍を通すために真選組と敵対している……でも今のうちに真選組を見とけと言われて俺達は後で合流すると心に誓ったんだよ!」

 涙ぐんで話すクラインだったが、要するにわかったのは桂への尊敬と後で合流する約束だけである。この姿にリズベットは思わず皮肉を口にした。

「というかアンタ、桂さんのこと信じすぎよ」

「やっぱりヅラと似ているアルナ! 類はバカを呼ぶとはこのことアル!」

「バカじゃない! クラインだ!」

 神楽の毒舌に反抗するように桂らしい決めセリフで反抗したクライン。その言葉を聞き仲間達はそれぞれ異なる反応を示す。

(こいつ、ヅラに染まっているな)

 銀時ら万事屋は桂の影響力を身に占めてわかり、

(クライン……だいぶ変わったな……)

 キリトらゲーマー仲間は彼の心の変化になんとも言えない気持ちになっていた。こうして、シノンと合流した一行は最後の合流先、真選組屯所へと向かうのである。

 




銀魂が放送を終了して、そのバトンを受け継ぐようにSAOが放送を再開しました。恐らくですけど、銀魂はまたふらっとアニメを再開してくれそうですけどね。それはさておき、この二次小説を読む時だけは、現在の時系列を気にせずに見てくれるとありがたいです。ちなみに、なんでALOの方にしたのかは後日お伝えします。さらにシノンはチョコによって酔い状態から元に戻りましたが、本物の猫にチョコレートを与えると相性が悪いみたいで決して与えないでください。その代わり酔った人間に甘い食べ物は有効的みたいです。話が長くなりましたが遂に次回……本当に全員が集まります。後二訓くらい第一章をお付き合いください。
 後言い忘れましたが今日はちょうど銀魂の主人公、坂田銀時の誕生日です。おめでとうございます!
 では次回もお楽しみに!
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