剣魂    作:トライアル

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お久しぶりです! ようやく、会議の後半戦が出来上がりました! キリト達の明日がどう決まるのか? 期待してご覧ください! そして、不穏な影も動き出します……



第十六訓 何事もグダグダなまま終わらせるな!

 銀時やキリトらが話し合っている他世界対策交流会議は、まだ続いていた。数分前に再結成された超パフュームを中心に、現在はシリカら女子四人の今後について話題が上がっている。そんな中銀時は、月詠に代わって吉原にある「ひのや」に黒電話で連絡し、四人の下宿先について日輪と交渉していた。

「まぁ、年頃の女子四人が安心して住める場所が、お前の所しかないと思うから電話したんだが、受け入れてもらっても大丈夫か?」

「もちろん。四人くらいなら、私は問題ないわよ! 任せて頂戴な」

「おー! それは助かるぜ。性格はてんでばらばらだけど、根は優しい奴等ばかりだから、よろしく頼むな」

 電話してから一分も経たないうちに、日輪は下宿について受け入れる。月詠の言う通り、訳を話せば彼女も大方賛成してくれたようだ。しかし、一人だけこの事態に動揺を隠せない男子がいる。

「ねぇ、銀さん……その下宿に来る女の子って、一体どんな子達なの?」

 それは、日輪の息子である晴太だった。彼だけは寺子屋に行っていたため、シノンを除く女子とは出会っていない。故に女子達の想像がついていなかった。電話越しで聞いてきた彼に、銀時はからかい混じりで伝えてくる。

「その点については安心しろ。お前が興奮するほどかわいい奴等ばっかりだからな」

「って、ちょっと待って!! それってどういう――」

〈プツン!〉

 晴太が動揺して興味深く聞いてきたところで、銀時は受話器を黒電話へ置いて会話を強制的に終了させた。そして、電話で話した内容を早速仲間達へ伝える。

「大丈夫だそうだ。四人まとめて受け入れてくれるってよ」

「良かった……これでみんなも、泊まる場所が決まったのね」

 アスナを始め仲間達は、交渉が成功したことに安堵の表情を浮かべていた。それは、この件の当事者でもあるシリカ達も同じである。

「下宿先が決まって良かったですね!」

「そうだね。でも、日輪さんの家ってどんな感じなんだろう?」

「落ち着いている雰囲気の家よ。茶屋も経営していて、十歳くらいの息子もいたと思うわ」

「へぇーそうなんだ」

 ふと疑問が浮かんだリーファに対して、シノンが昨日の記憶を元に言葉を返した。すると、リズベットにある考えが浮かぶ。

「十歳くらいの子ね……純粋な子だったら、小悪魔っぽくいたずらしようかな?」

「って、リズさん。そんな悪い事考えないでくださいよ」

 息子がいると知り、ついいたずらを考え付いたようだ。若干薄ら笑いとなる彼女に、シリカがヤレヤレと小声でツッコミを入れる。四人共、新生活への期待がより高まった。

「ありがとうよ、銀さん。わざわざ日輪さんとまで話し合ってくれて」

「別にいいよ。これくらい、当然のことだからな」

 キリトの何気ないお礼に銀時が照れ臭く返す。これで下宿先についての問題は解決したが、まだ彼女達には決めるべきことがあった。

「後は姉御達の意見がまとまってくれればいいアルけどナ……」

「お妙さん達の意見ですか……」

 そう言った神楽とユイは、苦い表情のままある方向へ顔を向ける。そこには、妙、九兵衛、あやめ、月詠の四人がおり、シリカ達の今後について詳しく話し合っていたのだ。

「やっぱり、大人の女になるには私と同じくキャバ嬢をするべきなのよ!」

「いいや。我が柳生一門で手伝いをした方が、彼女達の為にもなると思うのだが……」

「何を言っているのよ! 始末屋としての知識を教えれば、きっと強くなれるわよ!」

「そうかのう? 百華の元で手伝えば、女として立派に生きていけると思うが……」

 話が行き詰まる中、四人は腕を組み必死に考えている。そもそも事の発端は、妙達が下宿をするシリカ達に対して、自分達の仕事を手伝ってもらおうと提案したのが要因だった。意見もバラバラに分かれ、妙はキャバ嬢、九兵衛は柳生一門の手伝い、あやめは始末屋、月詠は自警団である百華の手伝いと、結論がまとまらずに今へ至っている。言い争いではないのだが、一行は空気を読んで口出しできずにいた。

「キャバ嬢に始末屋って……さすがにそれはやりたくないわね……」

「女子高生のするような手伝いじゃないですよ……」

 小声で思わず本音をこぼしたリズベットとシリカ。妙やあやめの提案した仕事内容に、気が引いてしまい表情も困ってしまう。その一方で、

「でも、月詠さんや九兵衛さんの仕事ならやりがいはありそうね」

「そうだね。剣術に関われるなら、私は構わないよ」

シノンやリーファは月詠と九兵衛の提案した仕事内容に興味を持ち始める。超パフューム内でも、仕事内容によって格差が生じていた。その様子を見ていた銀時は、既に結果を見据えている。

「こりゃ、お妙とさっちゃんのメンツが立たねぇな」

 どう考えても水商売と命懸けの仕事が、女子高生に受けるはずがない。選ばれなくてショックを受ける妙とあやめの姿を彼は予測していた。そんな中、女子達の中でなぜかリズベットだけが浮かない顔をしている。

「ん? どうしたんだ、おめぇ? トイレでも行きたいのか?」

「いや、違うから! 乙女であるアタシに何てこと言ってんのよ!」

 気になった銀時が声をかけたが、冗談交じりに言った言葉に彼女はつい怒りを露わにした。しかし、銀時は怯むことなくやる気のない声で話を続ける。

「それはいいから、何か言いたいことがあるなら言ってみろよ。コラー」

「そ、それは……」

 リズベットも銀時へ話すのを躊躇っていたが、ある思いがあったので彼女は正直に話してみることにした。

「……わ、わかったわよ! 実はね、アタシは鍛冶がやりたいのよね……」

「鍛冶? 武器を鍛える方のか?」

「そう。でも、お妙さん達とは無関係そうだから、正直話しづらかったのよ……」

「そういうことだったのか」

 リズベットが話したのは、元の世界でもやっていた鍛冶屋についてである。武器を鍛えるのが好きだった彼女は、折角なら自分に合った仕事をしたいと心の中で思っていた。しかし自分から言えずに、浮かない顔をしていたという。そんなリズベットの要望を聞いた銀時は、ふとある事を思いつく。

「あっ、そうだ。何ならいい方法があるよ」

「えっ? どういうこと、銀さん?」

 すると彼は、先ほど使った黒電話を持ってきて、ある番号をかけ始める。受話器を取り連絡をとると、すぐにリズベットへ渡した。

「ほらよ。後は任せたぜ」

「えっ!? ――あ、あの? もしもし?」

 耳へ近づけると、電話越しに聞こえてきたのは活気のある女性である。

「あっ、君が鍛冶について興味のある女の子だね?」

「えっと、あなたは?」

「村田鉄子。銀さんの知り合いで、刀鍛冶を営んでいる職人ってところかな?」

「刀鍛冶……!?」

 そう。通話の相手は鍛冶屋を営んでいる村田鉄子だった。挨拶回りの時にキリト達とも出会っている銀時の知り合いである。鍛冶屋繋がりのリズベットとは相性が良いと思い、銀時から電話をかけたのだ。そんな二人の通話は予想通りスムーズに進む。

「ところで、君は何て言うんだい?」

「あっ、リズベットと言います!」

「リズベット……わかったよ。銀さんからさっき聞いたけど、君もキリト君達の仲間なのかい?」

「そ、そうです! 元の世界では、鍛冶屋をやっていたんです!」

「おー! それは、助かるよ! 私とも気が合いそうだね!」

「こ、こちらこそ光栄です!」

 やや緊張気味にリズベットは、鉄子と通話する。その後も会話は進み、話のウマが合ったのか彼女の表情も明るくなっていく。雰囲気から二人は既に意気投合し、仕事が決まるのもそう遠くはなかった。

「まぁ、きっと大丈夫だろうな」

 様子を見ていた銀時も、彼女の楽しそうな表情を見て一安心する。一方、他のメンバーも徐々に仕事が決まりつつあった。

「さて、アイツらの方はと」

 妙らの方へ顔を向けると、そこには銀時の予想していた光景が広がっている。

「それじゃ、柳生一門のお手伝いとしてよろしく頼むな」

「はい、九兵衛さん!」

 互いに握手をする九兵衛とリーファ。どうやら九兵衛の提案した剣術関係の仕事に、リーファが了承してくれたようだ。満足気な表情を共に浮かべている。その一方で、

「まぁ、日輪の店の手伝いは四人全員に任せるとして、シリカとシノンはひとまず百華の手伝いを頼むぞ」

「もちろんですよ、月詠さん!」

「ナー!」

「力になれることは、なんだってするつもりよ!」

月詠の提案した仕事に快く賛同していたのは、シリカ、ピナ、シノンの二人と一匹であった。自警団である百華の手伝いを、このメンバーで行うことが決まる。ということは、やっぱりあの二人の仕事は誰も受け入れていなかった。喜ぶ五人の横では、妙とあやめが項垂れて落ち込んでしまっている。

「な、なんで……みんな、キャバ嬢のように男から金を搾取したくないの?」

「そんな……始末屋になれば、私と同じく愛を追いかけるストーカーになれるのに……」

「――お前らはまず仕事内容を変えろ。スタート地点すら立ってねぇんだぞ」

 そんな彼女達に対して、銀時は辛辣な言葉で追い打ちをかけた。二人はふざけていたわけではなく、本気でシリカ達をキャバ嬢や始末屋として誘い込もうと考えている。だからこそ、選ばれなかったことにショックも大きかった。こうして事態は進み、超パフュームの今後の目的や活動も着々と決まっていく。

 

 時刻が夕方から夜へと移り変わり、会議もいよいよ終盤を迎えた。今回議題に上げたサイコギルドの情報や超パフュームの仕事内容なども、ホワイトボードのスペースが無くなるほど書き詰めている。そして、頃合いを見た銀時が再びマイクを持って仕切りだした。

「さて……夜になってきたし、話せることもだいたい話したからそろそろ締めるか。お前らの明日もだいたい決まったからな」

「明日か……」

 銀時の言葉を深く受け止めるキリト。思えばこの会議を通して、多くの意見交流が出来たと思っている。彼の仲間達もみな、会議に集まってくれた万事屋らこの世界の住人達には感謝しかない。これからは、みなバラバラの場所でそれぞれの日常を送ることになるが、元の世界へ戻るという目的はなんら変わっていない。この個性的な大人達の元で、なんでも屋として働いたり、侍として国を変える運動をしてみたり、スナックで元の世界と同じく酒場で働いたり、下宿しながら各々の仕事を手伝ったりと、普段とは違う日常を送っていく。そうキリトら九人は決断したのだ。そして、銀時が会議を締め括る。

「まぁ、最後に俺から言うことはただ一つだな。お前らは……俺達が絶対に元の世界に戻す! いつになるのかは分からねぇが、それまでは俺達のことを信じてほしい。大丈夫だよ。どんなことがあろうと、ここにいる奴等は全員……てめぇらの味方だ!」

 彼の頼もしくも人情味のある言葉が、場に響いていく。その表情は、いつもよりも男らしく普段とは別人のようにかっこよく見えた。

(銀さん……やっぱり、なんだかんだで頼もしい人なんだな……)

(銀さんもこんなかっこいいことを言えるのね……)

 キリトやアスナを始め仲間達も心の中で、銀時の言葉を深く噛みしめている。彼や万事屋がいたからこそ、仲間との再会や自分達の状況を理解してくれる新しい仲間もできた。先行きが不安な未来でも、この人達だけは最後まで信じていきたい。そう、キリト達は密かに心の中で思っていた。

「銀ちゃんにしては、珍しい締め方アル」

「そうだね。相手がキリトさん達だから、ふざけたことは言わないのかもね」

「そうアルナ」

 新八や神楽も、銀時の真面目な締め方に一安心する。と会議は綺麗に締め括られたはずだったのだが――

「……といっても、結局元の世界には戻れるんだけどね」

「えっ?」

「アレ、銀さん?」

銀時が唐突に元も子もないことを言い始めてきた。表情も気だるく変わり、態度も先ほどと違って緩く一変している。キリトらは意味がわからず、新八らは嫌な予感を察して戸惑っているが、さらに銀時は言葉を続けた。

「だってよ。一訓か冒頭の説明にも書いてる通り、お前らの時系列って原作七巻の後、もしくはアニメの方の二期の最終回直後って設定なんだぜ。だったら、その後も劇場版なり三期をやっているんだから、必然的に戻るのは当たり前だろ? そんな真剣な表情しなくても戻れんだって! だからもっとお気楽にいこうぜって!」

 まるで気持ちが吹っ切れたように、メタ発言を連発する銀時。無論、キリト達SAOのキャラクターは意味が分かっておらず、まったく通じていない。

「劇場版に三期って、一体どういう意味ですか?」

「アレ? ユイやお前らには伝わっていないのか? だったらこれを機会に教えてやろう。てめぇらは実は人気ライトノ――」

「「これ以上言うな!! 天パァァ!!」」

「ブホォ!!」

 勢いに乗ってメタ発言を言ってきた銀時に対して、業を煮やした新八と神楽が彼に向って飛び蹴りし、強制的に止めさせる。そして、万事屋同士の内輪揉めが始まった。

「アンタ!! 最後の最後で、なんてこと暴露しようとしてるんですか!! キリトさん達をさらに混乱させたいんですか!!」

「綺麗に締め括ると思ったら、メタ発言でぶち壊しにされたネ!! なんで最後にふざけたアルか!!」

「ったく、てめぇら! こっちだってな、グダグダにしないと気が済まないんだよ! ギャグ漫画の定めなの! SAOみたいに真面目な空気は続かねぇんだよ! 察しろよ、ゴラァ!」

「「察せるか!!」」

 仲間達が大勢いるにも関わらず、三人は本格的な喧嘩を始めてしまう。結局、グダグダな雰囲気を作りながら、会議は締め括られたのであった。この結末に、仲間達の反応もそれぞれ異なっている。

「ヤレヤレ……やっぱりこうなるのか」

「まったく……さっきまでの空気はどこへやらだねぇ……」

 いつも通りの展開に、呆れを口にする長谷川とお登勢。さらに、たまはエギルへ万事屋の説明を加えていた。

「エギル様。これが、万事屋の本性です。よーく覚えておいてくださいね」

「ああ、わかったよ。喧嘩するほど仲が良いってことだろ?」

「ソウ解釈スルノカヨ!?」

 ポジティブに考える彼の姿に、キャサリンがついツッコミを入れる。一方で、シリカら女子達はこの状況に気が引いていた。

「すごい剣幕で争っているわね……」

「そうじゃな。それが奴等の日常と言うべきところかのう」

 喧嘩の迫力に圧倒されるシノンに、月詠が一言添える。さらに、リーファからはある不安が思い浮かぶ。

「これが毎日あるなんて……お兄ちゃん達の体力が持たないよ!」

「って、そこに食いつくの、リーファちゃん!?」

 キリトらの心配をする彼女に、あやめが強くツッコミを入れた。

「だ、大丈夫なんでしょうか、三人共……」

「ナ……?」

 人一倍不安を感じるシリカやピナには、妙と九兵衛が補足を入れる。

「大丈夫よ、このくらいの喧嘩。数分じゃなくて、数時間で収まるから」

「って、余計心配するわよ!? 本当に大丈夫なのよね!?」

「ああ、心配ない。それが、万事屋らしさで彼らの日常だからな」

 予想外のことを言われ、リズベットも激しくツッコミを返す。動揺するシリカら女子四人とは違い、妙ら女性四人はさも当たり前のように慣れていた。一方で、

「ん、桂さん? この状況でも冷静さを保っているのか?」

クラインは万事屋の喧嘩よりも、それに動じない桂の姿が気になっている。先ほどの超パフュームの仕事決めの時も、桂は腕を組み男らしく黙っていたので、クラインも釣られて珍しく黙っていたのだ。微動だにしない桂の行動に、彼は疑問に感じる。前に回り込んで桂の様子を見ようとするとそこには、

「ゴォォ……エリザベスにクライン殿、そばがあるぞ……」

「って、寝てんのかよ!?」

寝言を立てながら居眠りしていた。そう、マイペースな桂は会議の途中から眠気に負けてしまい、静かに眠っていたのである。近くにいたクラインでさえ、まったく気づいていなかった。

「誰にもバレずに居眠りを続けるなんて……やっぱり桂さんは、只者じゃないってことか!?」

〔いや、お前も只者じゃないよ。それを自覚しろよ、バカ〕

 勘違いをしたクラインに、エリザベスが辛辣なプラカードを掲げる。いい意味で彼らの仲も高まっていった。

 そして、万事屋でもあるキリトら三人も、銀時らの喧嘩を静かに見守っている。

「なんだかいつも通りになってきましたね……」

「そうね。でも、勢いがありすぎてつい喧嘩しちゃう関係は、私は嫌いじゃないかな? それで仲直りして、絆が深まるなら良い事だと思うよ」

「銀さん達には、そのやり方が合っているのかもな。だから、素直に信じられるんだよ。さっきみたいに、時々意味の分からないことを言う時もあるけど」

「ワフ!」

 キリトの解釈に、アスナとユイはフッと笑いながら大きく頷いた。三人に続き定春も深く頷き、共感している。メタ発言の真意について彼らはまったく理解できていないが、それでも万事屋の三人を信じる気持ちに変わりはない。だからこそ今は、三人の気が収まるまでずっと見守っている。こうして、大規模に行われた他世界対策交流会議は、銀時らの喧嘩によって幕を閉じた。

 

 気付けば時刻は夜の九時を過ぎている。満月が夜の空へと輝く中、会議を終えた一行はそれぞれの新しい居場所へと帰っていく。

「みんなー! 元気でやるのよー!」

「また会おうなー!」

 下宿先である「ひのや」へと向かうシリカら女子四人に、手を振って見送る妙と九兵衛。にこやかな表情ながらも、少し寂しそうな仕草を共に見せていた。

「……まだ会って二日しか経っていないのに、少し寂しい気分だわ」

「そうだな。でも、これからはいつでも会えるんだから、大丈夫じゃないのか?」

 九兵衛が優しく妙へ声をかける。二人は女子達への思い入れが強く、全員ともっと仲良くしたいと心から思っていた。

「そうね! その為にもまずは、キャバ嬢以外の仕事を考えないと! 何がいいのかしら? うーん、思いつかないわ……」

「いや、僕と同じく道場の手伝いくらいでいいのではないか?」

 盲点にすら気付かない妙に、九兵衛がそっとツッコミを入れる。それでも、彼女はまだ真剣に悩み続けるのであった。

 

 一方で月詠は、女子四人とピナを連れて吉原へと向かっている。街灯が照らす道中で、彼女達は期待と不安を交差させていた。

「いよいよ今日から、新しい生活が始まるんですね」

「ナー!」

 やや緊張しているシリカに、ピナはいつもよりも元気な鳴き声を返す。これから始まる新生活に彼女は期待を寄せていた。

「成り行きで色々と決まったけど、このメンバーと過ごせるなら、なんだかんだで充実した生活を過ごせそうだけどね」

 何気なく言ったリズベットの言葉に仲間達も頷く。交流会議をしてから四人は、下宿先や目的も明確に決まり、気持ちが楽になっていたのだ。故にその表情も明るくなり、月詠も一安心している。

「そうか……主らがそう思っているなら、わっちも何よりじゃ。会議をして正解じゃったな」

「まぁ、今は先の事よりもこの時を楽しむ方が、有意義だと私は思うけどね」

「折角別の世界に来たんだから、帰れるまで思いっきり楽しまないとね!」

 冷静なシノンと、前向きに考えるリーファ。女子四人の反応は違えど、その気持ちは一つである。こんな状況だからこそ全力で楽しみ、手伝いや仕事を通じて自分の長所や個性を高めようと、心に誓ったのだ。

「ふぅ……主らなら絶対に出来ると思うぞ。わっちらも、全力で後押しするからのう」

 優しい口調と微笑みで話をまとめた月詠。そんな彼女に対して、シリカがお礼を口にした。

「はい! これからよろしくお願いしますね! 月詠お姉ちゃん!」

「ああ! ――って、お姉ちゃん!?」

 唐突な呼び方の変更に、月詠はつい戸惑ってしまう。しかも、シリカの高音かつロリっぽい口調で言われると、どこか違った意味にも聞こえてくる。彼女に続いてか、リズベットやリーファらも呼び方を変えてきた。

「おっ! その呼び方、いいね! 月詠さんに対しても、親しみも込めているし」

「いや、あの。そうなのか……?」

「そうだよ! 月詠さんにとって、私達はもう妹分みたいなものだから、私もその呼び方にしようかな? 略して月姉(つきねぇ)とか!」

「それはいいわね。月詠さんはその呼び方でも大丈夫かしら?」

「――もう! ならば、主らの好きなように呼びなんし! 姉でもお姉ちゃんでも!」

「フフ……わかったわ。月姉さん」

 シノンまでも姉呼びをしてきたので、月詠はついに気持ちが吹っ切れてしまう。顔を赤くする彼女に対して、シリカら四人は純粋な反応を見て思わず笑いをこらえている。月詠との距離が縮まるのも時間の問題であった

 

 同じ頃、桂、エリザベス、クラインの攘夷志士三人組は、拠点としている極秘のアジトへと足を進めていた。

「さて、クライン殿。明日から本格的な攘夷活動が始まる。気を引き締めて覚悟するのだぞ」

「わかっているぜ、桂さん! 侍としての覚悟なら、もう既に出来ているからよ!」

「そうか――それでこそ、立派な攘夷志士だ! また一歩、侍へと近づいたな!」

「桂さん……その言葉こそが、有り難き幸せです!!」

 不安など一斉感じさせないクラインの表情と言葉に、桂も一安心する。彼だけはむしろ、今後の生活が楽しみで仕方がないのだ。そんな二人の侍を、後ろから見守っていたエリザベスは唐突にプラカードを掲げる。

〔ヤレヤレ。今度からこのバカ二人を、俺が支えていかなければいけないのか……〕

 桂と同じくバカの匂いのするクラインに、手を焼く光景が浮かんだようだ。それでも彼らのことを見捨てることはできないので、陰ながら支えることを決心する。

〔まぁ、クラインさんが元の世界へ戻るまでは、俺達が守らなければな……〕

 続けて掲げたプラカードにも、その思いが書かれていた。そんなエリザベスに対して、桂とクラインが急に声をかけてくる。

「ん? どうした、エリザベス? 何か伝えたい事でもあったのか?」

〔いいえ。なんでもないですよ〕

「そうか……でも、相談したいことがあれば難なく俺達に言ってくれよな!」

〔わかっている。ありがとうな〕

 心配をしてくれた二人に、エリザベスは新しいプラカードでお礼を返した。思いを隠しつつ、三人の侍は絆を深めていく。

 

 一方で、お登勢ら四人はスナック、長谷川は公園へ戻るため、共に帰り道を歩いていた。場には大人しかいないため、口数も少なく落ち着いた雰囲気となっていたのだが――

「はぁ……またこれから、無慈悲なホームレス生活が再開するのか……」

長谷川だけは空気を読まずに、ずっと文句を垂れ流している。不安定な生活が続き思わずため息をついたようだ。そんな彼に、見かねたエギルが一言声をかけてくる。

「そう悲観するなよ、長谷川さん。アンタと知り合った以上は、俺からも出来ることはなんだってするから、遠慮なく頼ってくれよな」

「エギル……お前は何て良い奴なんだよ! 横にいるババアとは偉い違いだぜ!」

「って、それどういう意味だ!! ゴラァ!!」

 エギルからの励ましの言葉を受けて、感動した長谷川は思わずお登勢への本音を口に出す。当然、彼女からはツッコミを入れられてしまったが。その様子を見ていたキャサリンやたまは、長谷川やお登勢のリアクションよりもエギルの頼もしさに脱帽している。

「アノグラサンヲ励マスナンテ、エギルサンモ物好キデスネ」

「それは、私達女子には分からない、おっさん同士の情が関係しているのですよ。エギル様らしいですよね」

「アノ男ハ人一倍、落チ着イテイマスカラネ」

 エギルがこの世界に馴染んでいることが、彼女達にとって喜ばしい事だった。だが、そんな彼も実は心の中である思いを隠している。

(落ち着いているか……本当は不安な気持ちもあるんだが、この人達といるとそんなもんが吹き飛んじまうんだよな)

 密かにあった不安も、この人達といれば自然と無くなっていく。だからこそ、大切に関係を築いていきたいと思っていた。互いに理解しながら、新しい信頼を勝ち得るのである。

 

 そして、万事屋も同じく自分達の居場所へと帰ろうとしていた。先にいるお登勢らの後を追いかけるように、六人と一匹はゆっくりと道を歩いている。ちなみに、今日も新八は万事屋へ一泊するようだ。すると、ユイが元気よく銀時らに話しかけてくる。

「それにしても良かったですね! 喧嘩をしても、すぐに仲直りできて!」

「まぁ、万事屋の喧嘩はこう見えて、すぐに収まるからナ!」

 彼女の言葉に、意気揚々と神楽が答えた。先程の喧嘩も時間が経つと収まり、三人は既に仲直りしている。

「確かにそうだね。そもそも今回は、銀さんが真面目な空気を読まなかったのが原因なんですから、これからは気を付けてくださいよね!」

「はいはい、わかってるから!」

 新八からの注意に、けだるい声で答える銀時。喧嘩して懲りたはずなのだが、本当に反省しているのか疑わしかった。これには、アスナもため息を吐いてしまう。

「まったく銀さんってば……って、そもそもさっき言っていた劇場版とか三期って一体どういう意味なの?」

「そこは触れないでください、アスナさん……この世界の住人にしか伝わらない言葉だと思っておけば十分ですから……」

「そうなの……?」

 メタ発言について知ろうとするアスナに、新八が震えた声でごまかしを利かす。キリト達には正直、その真意を知られたくなかったのだ。まだ納得が出来ていない彼女だったが、そこへキリトが話しかけてくる。

「まぁ、銀さん達が訳の分からないことを言うのはいつものことだし、気にしなくてもいいと思うけど」

「そっか……そうよね」

「って、キリトさんの言葉には納得するんですか!?」

「つーか、お前らメタ発言のこと、そんな風に思っていたのかよ」

 彼の解釈を聞き、アスナはすんなりと納得してしまった。展開の早さに、銀時や新八からはツッコミを入れられてしまう。と話が途切れたところで、ユイが再び一行へと話しかける。

「でも今日は、色んなことがありすぎて忙しかったですよね。ハプニングもありましたけど、無事にシリカさんやリズさん達と合流出来て本当に良かったです!」

「そうですね……それに、みなさんの居場所や目的も決まって進展した方だと思いますよ」

「終わりよければ全てよしアル! みんなの明日が決まって私も安心ネ!」

 今日の出来事を振り返ったユイに、新八や神楽が言葉を返した。三人の言う通り、少しずつではあるが事態はいい方向へと進んでいる。仲間達の受け入れ先も決まり、サイコギルドの情報も整理できた。それだけでも十分な成果である。すると、アスナやキリトが銀時へと話しかけ、自らの思いを伝えてきた。

「私達のためにここまでしてくれるなんて……銀さん達には感謝してもしきれないほどの、恩が出来たわね」

「フッ……そうでもねぇよ。俺達は万事屋として、当然のことをしただけだからな」

「当然のことか……それでも、銀さん達は優しいよ。見ず知らずの俺達を、信じてかくまってくれるなんて。そんな大人、俺のいた世界にも滅多にいないよ」

「それは……テメェらを見過ごせなかっただけだ」

「フフ……銀さんってば」

 若干照れている銀時に、キリトらは思わず微笑みをこぼす。万事屋と出会えたからこそ、自分達の今に繋がっている。疑いもなく信じてくれた彼らに対して、キリトら三人は改めてお礼を交わしていく。

「いずれにしても、しばらくお世話になるんだから、改めて銀さん達にはお礼を言っておかないとね!」

「そうだな。これからも色々と迷惑をかけるかもしれないけど、万事屋として精一杯頑張るから……俺達やみんなを、これからもよろしくな!」

「よろしくです!」

 そう言うと三人は一旦歩みを止めて、微笑みながら深くお辞儀を交わした。それにつられ、万事屋も立ち止まり彼らの気持ちを受け取る。

「こちらこそよろしくネ! さぁ、また明日から忙しくなってくるアルよ!」

「僕等もできることは全力でサポートしていきますから、遠慮なく頼ってくださいね!」

「まぁ、前も言ったけど迷惑なんて上等だからな。俺は、テメェらが満足しているならそれで十分だよ」

「ワン!」

 銀時らも自分なりの言葉で、キリト達へ返答した。正直に言い合ったからか、お互いに笑顔の表情を浮かべている。こうして、万事屋はまた絆を深めていくのだ。と場の空気が落ち着いていた時である。

「ん? アレはなんでしょうか?」

 ユイが万事屋の後ろにあった曲がり角から、ある気配に気づく。目を凝らしてじっと様子を見ていると、いつの間にか気配は無くなっていた。だが、

「ガサッ!」

と微かに小さい物音が彼女の耳に入ってくる。

「まさか、誰かいるのでしょうか?」

「って、ユイ? どこへ行くんだ?」

「一人で行っちゃ危ないでしょー」

 不審に思ったユイは、つい気になってしまい曲がり角へと向かう。その跡をキリトとアスナが追いかけていった。三人はその場を離れてしまい、道中には銀時、新八、神楽、定春の三人と一匹だけとなる。すると、銀時は急に顔色を急変させて仲間達へ話しかけてきた。

「なぁ、新八、神楽。あいつらって、「ソードアート・オンライン」って作品のレギュラーメンバーなんだよな?」

「えっと……そうアルか、新八?」

「そうですね。劇場版のポスターも確かあの九人が飾っていましたから。それがどうかしたんですか?」

 神妙な顔つきに加え意味深に聞く銀時に、新八や神楽も違和感を覚えていく。さらに、彼は続けざまにある推測を話してくる。

「いや、これは真面目な話なんだが。もしかすると、サイコギルドがあいつらを狙った理由って、やっぱり偶然じゃねぇのかもな?」

「えっ? つまり、どういうことですか?」

「それはだな……」

 と二人へ伝えようとした時だった。

「キャァァァ!!」

 突然、ユイの悲鳴が辺り一面に響き渡ってくる。

「ユ、ユイちゃん!?」

「まさか、とうとう尻尾を表したってことか! てめぇら、話は後だ! 行くぞ!」

「おうネ!」

 キリト達の身の危険を感じとり、万事屋一行は急いで彼らの向かった曲がり角へと向かっていく。もしかすると、サイコギルドを見つけたのかもしれない。そう一行は思っていた。

「おい、てめぇら!! 大丈夫か!?」

「今助けに来た――」

 そして駆けつけたのはいいのだが、そこで目にしたのは予想外の光景である。

「あっ、みんな! ようやく、来てくれたのね」

 キリトら三人に異常や怪我はなく、みな無事であった。さらに横には、

「って、銀さん!? なんでここにいるのよ!?」

布を使って電柱と同化していたあやめの姿を見つける。ユイが見つけた気配は、銀時のストーカーをしていたあやめであった。会議が終わり、みんなが油断している隙に実行へと移したようである。つまり、さっきのユイの悲鳴も彼女が原因だった。

「ま、まさか……悲鳴の正体って……」

「えっと、あやめさんが電柱に隠れていて、びっくりしてしまったんですよ。すいません」

 自分には何も非がないのに、丁寧に頭を下げて銀時らへ謝りを入れるユイ。一方であやめは、まったく懲りておらず反省すらしていない。

「フフフ……バレてしまっては仕方がないわね! こうなったら、銀さん!! 今日はあなたの家に泊め――」

「ノーサンキューじゃぁぁ!! このメス豚ァァァァ!!」

「ブホォォォ!!」

 手を広げて突進してきたあやめに、銀時は彼女の顔面を容赦なく殴り、その勢いを終わらせる。心配して損した上にストーカーであるあやめのテンションの高さに苛立ち、銀時の怒りは限界を迎えていたのだ。

「す、すごいです……銀時さん」

「ストーカーを難なくひれ伏せるなんて……」

「これが銀さんの本気なのか……?」

 見たことのない銀時の一面に、驚きを隠せないキリトら三人。みな苦笑いで、この状況を呟いている。一方で、新八や神楽もあやめのしつこさには辟易していた。

「はぁ……さすがさっちゃんアルナ……」

「そうですね。――って、そういえば銀さんが言っていた、サイコギルドの話って一体何だったんだろう?」

「まぁ、今は話せる状況じゃないアルし、また今度ってことにするネ」

「そうですね」

 結局、聞くことのなかった銀時の推測も、またの機会に持ち越しとなる。こうして、あやめへの制裁を加えつつ、万事屋の帰宅時間はより遅くなっていくのだ。

 

 時を同じくして、江戸にある一つの港にはある不穏な影が近づいている。それは空中に集まっていき、一つの不気味な穴を作り出す。そう、ブラックホールだ。するとその穴の中から二人の人間が出現し、この世界へと降り立つ。同時にブラックホールは、役目を果たして跡形もなく消滅していった。

「ふぅ……ようやくこの世界に辿り着いたね」

「そうだな。これからはこの世界が、俺達の拠点となるだろう」

「さっすがー! この世界の宇宙は広いんだし、簡単にはあいつらに見つかりそうにないもんね」

 周りに人の気配がないのを言いことに、堂々と計画を口にする二人。その正体は、キリト達を別世界へと送った張本人、サイコギルドのメンバーだった。大きい槍を持った少女と、全身が銀色に覆われた緑目の怪人。やはり二人は、最初から面識があったのである。

「あいつらか……いい実験材料となってくれたもんだな」

「本当そう! 別世界に送ったおかげで、良い実験結果を得られたんだし、感謝だけはしておかないとね……」

「ふっ……まぁ、いずれは俺達と衝突することになるだろう。その為にもまずは、このサイコホールの完成を急がなくてはならない」

「これを使って、私達に協力してくれる輩を増やそうってことだね?」

「未完成ではあるが、それでも凄まじいエネルギーを秘めている。別世界から敵を呼ぶなど容易い事だ……」

 会話の中で彼らは、ブラックホールを元に作り出したサイコホールの存在を上げた。恐ろしい計画を次々と語り、少女は不気味な笑みを浮かべる。一方で、怪人も高笑いで自身の計画に酔いしれていた。

「……さて、そろそろ始めようか。サイコギルドが掲げる野望の為に……なぁ、アンカー?」

「もちろんだよ……シャドー――」

 互いの名前を言った二人は、気持ちを合わせるために唐突に握手を交わす。銀時やキリト達の知らない間に、大きな陰謀が渦巻き始めていく。サイコギルド――その正体や目的は未だに不明である。

 




 ようやく全員の居場所が決まりましたが、その裏で暗躍するサイコギルドとは一体……?そこにも、注目していてください。そして、次回はいよいよ第一章が完結! 同時にこの小説のこれからについても話そうと思います。長い事時間はかかりましたが、最後までお付き合いしていただければ幸いです。では、次回!
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