後序盤はオリジナル要素が多めに入っています。そこを踏まえてご覧ください。
第二十七訓 知らない方が幸せなこともある
すべては一人の少女がきっかけで、物語が動こうとしていた……
七月が始まり一週間が経ったある日のこと。かぶき町でも夏の勢いが止まることはなく、夜でも昼間と同じ蒸し暑い日々が続いている。帰宅途中の大人達は収まらない暑さにうんざりとしているが、塾帰り中の少女達はまったく暑さなど気にすることなく道端で雑談に勤しんでいた。
「それでさーアタシは言ってやったのよ! マンホールは万能武器じゃないって!」
「ていうかどういう発想したら、そんな考えに行きつくのよ!」
「不思議だよね。でも、想像豊かなのは少し羨ましいかも」
三人ほど集って、今日に起こった面白い出来事を振り返っている。その内の一人である早見千佐は、他の女子と比べて控えめな一面が目立っていた。青みがかったセミロングの黒髪と右の目元についた泣きぼくろが特徴的で、アジサイをあしらった着物を気に入って身に着けている。大人しい印象であるが、真面目で優しい性格から友人も多い、どこにでもいる普通の少女であった。
「あっ、もうこんな時間じゃん! 早く帰らないと!」
「そうね。じゃ、また明日寺子屋ってことで!」
「うん。じゃあね、みんな!」
話が盛り上がったせいか、友人達が時間を確認すると既に八時を超えている。三人は別れの挨拶を交わした後に、別々の方向へと向かいそれぞれの家路へと進んでいった。夜が色濃く変わっていく中、千佐は夜道を警戒しつつ人通りの少ない道を歩いていく。
「早く明日にならないかな~」
暗がりに近づいてもなお彼女は、明日への想いを募らせ、呑気にもハミングを続けている。日々寺子屋にて勉学へと励み、友人にも恵まれている千佐は、まさに子供らしい順調な日常を送っていた。あの時までは……
「ん? 今の何……」
穏やかに歩いていたちょうどその時、唐突に怪しい気配を察して顔色を急変させている。得体の知れない感覚に見舞われてしまい、警戒心を高ぶらせていく。すると、何気なく見た空の上にその正体が浮かび上がっていた。
「アレって……」
彼女が目にしたのは――小さい紫色の粒が束となって、一斉に南東の方角へと集まっていく光景である。その姿は未知の生き物なのか、はたまた偶然にも起こった自然現象なのか定かではない。たった一つ彼女が理解したのは、経験したことのない異常な恐怖である。
「怖い……に、逃げないと!!」
不気味な存在に不安を駆られてしまい、千佐の心は大きな動揺に包まれてしまう。つい空からの目線を逸らすと、ひたすら家に向かって足早にその場を走り出していく。もしまた空を見てしまえば、より恐ろしい光景を目にしてしまう。そう心の中で思い込み、今はただこの状況から逃れるしか術はなかった。
(何なのアレは……あの紫色の粒って一体……)
頭で考え込みながら、無我夢中で逃げ回っていく。その表情は怯えきっており、冷静さすら失っている。場所の把握も出来ないまま奥へと逃げ回っていき、気が付けば彼女は家とはまったく違う方向へと辿り着いていた。
「はぁ……はぁ……。ここは?」
辺りを見渡すと、そこは人気のない真っ暗な港である。荷物を運ぶためのコンテナが丁寧に積み重ねており、街灯によって出来た大きな影が存在感を露わにしていた。
「港? そういえば、あの物体は?」
呼吸を整えて自身を落ち着かせたところで、千佐は改めて空を見上げていく。するとそこで見たのは、先ほど見かけた紫色の粒が一つの塊へと集約する瞬間であった。塊からさらに渦巻き状の穴へと変化していき、いびつな存在を作り出していく。
「何アレ? ブラックホール?」
コンテナを影にした彼女は、恐る恐る変化を観察しながら分析を始めている。恐怖と並行して子供らしい好奇心も芽生え始めており、真相へと近づくために危ない橋をも渡る覚悟であった。その予測が偶然にも当たっていることなど知らずに……。
「えっ……あの人達は一体?」
さらに千佐はブラックホールだけではなく、怪しげな行動を取る二人組の人影をも発見していた。銀色に覆われた怪人と大きな槍を持つとんがり耳の少女である。堂々と話し込んでいるので、彼女は耳を澄ましてその会話を盗み聞きすることにした。
「アンカーよ、ブラックホールの調子はどうだ?」
「ばっちりだよ。新たなエネルギーを集めたから、これで別世界から手駒を呼び寄せることも可能……まぁ、俗にいう運ゲーってところかな」
「それでも構わん。我が組織に必要なのは異次元の兵力だ。上手くそそのかして利用しなければ……俺達自身の計画も滞ってしまうだろう」
「それもそっか。まぁ、出来る限りラスボスクラスに来てもらわないとね。早くやって来てよ~!!」
ブラックホール、別世界、異次元の兵力。どれも聞き慣れない言葉に違和感を覚えていたのだが、唯一理解できたのは自分が今とんでもない事実を知ろうとしていることである。
「何言っているの、あの人達……何を企もうとしているの?」
これ以上ここにとどまってしまえば、その分見つかる危険性も高まってしまう。それでも好奇心を抑えきれない千佐は、リスクを承知で一連の流れについて見届けることにした。一方アンカーらにも、ようやく事態が動きだした。
「あっ! 何か引っかかったよ!」
「何? 今すぐ引き出してこい!」
まるで魚釣りのような感覚で接していき、アンカーは自慢の槍を使ってブラックホールから物体をすくいだしていく。同時にブラックホールも役割を終えると、自然に消滅してしまう。証拠を消し去ったところで、アンカーらは呼び寄せた手駒に注目を寄せていた。
「これは――結構な大物だね」
「我々は当たりを引くことが出来たようだな」
召喚された敵の姿を見て、二人はやや驚きつつも堂々たる貫禄に惹かれている。コンテナの影と重なってしまい、千佐だけは詳しく見られなかったが、人型である事は少なからず理解できた。するとようやく敵側も、状況に気付き声を発していく。
「ここはどこだ……? お前達は何者だ?」
「ようこそ別世界へ! 私達の名はサイコギルド! アナタを消滅から救った者だよ!」
「消滅だと?」
「そうだ。我が組織が作り上げたブラックホール――いやサイコホールは、別次元をも干渉する能力を保持している。恐らく貴様はある理由から命を落として、先ほどの空間でずっとさまよっていたのだろう?」
「それは間違いない……。私はかつて組織ごと爆発して散ったからな」
アンカーは高ぶった口調とテンションで会話を続けているが、銀色の怪人は冷静さを保ったまま敵と接していた。次々と明らかになる事実を受けて、隠れていた千佐も思わず小声で驚嘆してしまう。
「サイコギルドにサイコホール? それに別次元なんて……」
傍から見れば信じられない光景である。彼らの思想は大きく見積もっても、侵略的であることは想像に難くなかった。一方でアンカーらは、突然不可思議な行動を取り始めている。
「さて……折角この世界へ来たんだから、私達からあるプレゼントを贈らせてもらうね!」
「プレゼント? 何を与えるのだ?」
「そう怪しむではない。我々が貴様の味方であることの、証明だと思っていれば良い」
意味深な言葉を発した後に、銀色の怪人は両手を重ね始めて、透明な球体を作りだした。それも二つほど作り出すと、目の前にいた異世界の敵へと投げつけて取り込ませていく。
「グォ! ……な、何をしたんだ?」
「貴様に記憶を吹き込んだんだ。一つはこの世界で起きた悲しき戦争の記憶。そしてもう一つは、別世界で起きた仮想世界での戦いの記憶。それらを上手く使いこなせれば、きっとさらなる力を得ることになるだろうな」
「そうか……! なんて頼もしい連中なんだ!」
球体の正体は、二つの世界で起きた戦いの記憶のようだ。どこから仕入れたのかは不明だが、異世界の敵は疑うことなく友好的に捉えている。さらにアンカーは、続けざまにある条件を伝えてきた。
「まぁ、折角貴重な記憶を与えたんだから、その代わりアンタも私達に協力しなさい。ウィンウィンの関係ってことで」
「分かっている……お礼に私も、君達に手を貸そうじゃないか」
「契約成立……ということだな」
話し合いの末に異世界の敵は、あっさりとサイコギルドへの協力を了承する。計画通りに事が進み、アンカーら二人は勝利を確信するように不敵な笑みを浮かべていく。彼らが起こしていた一連の行動は、唯一その場に居合わせた千佐にしかまだ把握していなかった。
「これって結構まずいんじゃ……早く誰かに知らせないと……!」
彼らが実行へと移す前に、彼女はこの場からそっと立ち去ろうとする。町へと逃げ込んで、近くにいる大人か真選組に知らせないといけない。重い使命を背負って、今にも走り出そうとしたその時である。
「行かせないよ。お嬢さん~」
唐突に聞こえてきたのはアンカーのねっとりとした不気味な声。つい後ろを振り返ると、そこには満面の笑みで千佐を見つめてくる彼女の姿があった。そう、すでにサイコギルドからは千佐の存在を悟られていたのである。
「あ、あなたは……!」
「さっきの事、全て聞いていたんでしょ? まったく、ドブネズミのような女の子ね!!」
急な事態に動揺して感覚が鈍っている千佐の隙を狙い、アンカーは容赦なく彼女の上半身へと襲い掛かっていき、力任せに締め付けていった。子供相手にも関わらず、本気で千佐を封じ込めていく。
「離してよ!! 離してってば!!」
「いいや~離さない!! クフフ!!」
嫌がる千佐の表情とは対照的に、アンカーはまるで状況を楽しむかのように異様な笑みを浮かべ続けている。必死にも抵抗を続けているが、年齢差が相まってかまったくアンカーには効いていない。脱出する方法すらも見つからず、まさに千佐の現状は絶体絶命であった。さらにそこへ仲間達も駆けつけてくる。
「アンカーよ。よくぞやってくれた」
「当然! 秘密を知ったネズミちゃんには、相応の処置を取らないと……どうしようかな~?」
「処置か。では、我らの実験体として活用させてもらおうじゃないか。ちょうど今、肉体を欲している同士がいるからな……」
「おおー! ナイスアイデア! それじゃ、後はアンタに任せるわ。よろしくね~!」
千佐の口封じのためにサイコギルドは、異世界から来た敵に対処を任せることにした。彼もまた静かに了承していくと、ゆっくりと近づき実行へと移し始める。その様子を見たところで、アンカーも千佐を解放して地べたへと突き放した。そしてそのまま、銀色の怪人と共にその場を立ち去ってしまう。港の一角に千佐と敵だけを残したまま。
「ハハハ……女に入るのは趣味ではないがこれも仕方ない。お前の体を乗っ取り、私は完全復活を果たすのだ!」
「そんなの……嫌! やめてって……!! 誰か! 誰か助け――」
必死に抵抗を続けて助けを求める千佐であったが、人気の少なさから助けなど来るはずがなく、その努力も虚しいまま散ってしまう。そしてとうとう敵と目が合ってしまい、恐ろしげな姿を目の当たりにしてしまった。
「存分に利用させてもらうぞ……我が生贄よ!!」
「キャャャャ!!」
悲痛な叫び声を上げたと同時に、敵は宣言通り千佐の肉体へと侵入していく。そのショックから彼女は絶望を抑えきれずに、勢いよく倒れ込んでしまう。場に唯一残ったのは、静寂を極める夜の闇であった……
だがそれから数分が経った頃。ある予想外なことが起こり始めている。
「はぁ……はぁ。伝えなきゃ、誰かに……」
なんと気絶していたはずの千佐が、自我を保ったままゆっくりと起き上がっていく。どうやら彼女はまだ敵に精神を乗っ取られてはおらず、残った気力を振り絞り意地でも誰かに状況を伝えようと動き出したようだ。
「誰でもいい……誰でもいいから……」
ボソッと呟きながら、体を引きずっていき、自分が辿ってきた道を再び歩いていく。道行く人に伝えようとしているが、不幸にも人通りが少ない道を彼女は進んでいる。また通りかかった人にも、その異様な雰囲気から遠ざけられてしまい元も子もなかった。誰一人頼ることが出来ないまま、彼女の精神が限界を迎えようとした――その時である。
「おや? どうしたお前さん? 顔をうつむかせたままで、一体何があったんだ?」
ようやく声をかけてくる者が現れた。その正体は――からくり堂を営む江戸一の発明家、平賀源外である。彼女は現在からくり堂の前を通りかかっており、偶然にも異変に気付いた源外が話しかけてきたようだ。その瞬間千佐は思わず涙を流して、思い責任から解放されたことに喜びを感じている。そして、
「サイコギルドがサイコホールを作り出して――」
〈バタァ!〉
「おい、大丈夫か!? しっかりしろ!? おい!!」
一言呟いた後に力尽きてしまい、再び倒れ込んでしまった。源外は取り急ぎ駆けつけ、事態の重大さにようやく気付いている。サイコギルドの陰謀に巻き込まれた千佐によって、物語は大きく動こうとしていた。
時は流れていき、あの一件から三週間が経とうとしていた。銀魂世界ではすでに七月も終盤を迎えており、キリト達がこの世界へ来てしばらく経った頃である。気温は数週間前よりも蒸し暑くなり、本格的な夏日へと移り変わっていた。しかし夏が来ようとも、万事屋では相も変わらぬ日常が送られている。今日は特に仕事が入っていなかったので、朝からゆったりとした朝食の一時を過ごしていた。
「ごちそうさまヨー! 久々に食べたアルナ! 朝から卵かけご飯なんて」
「って、今日は神楽ちゃんが当番だったからでしょ。それに久々でもないと思うけど」
「いいや、久々アルよ。味の〇付きの卵かけご飯なんて」
「そっちかい! そんな微妙な違い僕には分からないって!」
「フフ……新八さんに神楽さんも、朝から元気が良いですね!」
独特なこだわりを持つ神楽の考えに、新八のツッコミが激しく決まっていく。食べ終わってもなお、二人の応酬は終わる気配すらない。それを見たユイは、思わずクスッと笑いを堪えている。何気ない日常の一幕であったが――異変はすでに起こり始めていた。
「「「ハァ……」」」
ちょうど同じタイミングで、銀時、キリト、アスナのため息が重なって吐き出されている。何故かこの三人だけは、朝からまったく元気がなかった。
「ん? どうしたアルか、三人共? ため息なんか吐いて」
「何か気にするようなことでもあったんですか?」
心配そうに神楽やユイらが問いかけると、口々にある気持ちを打ち明かしていく。
「いや、実は最近変な夢を見るんだよ。それも一回だけじゃなく、何度も続いていて……」
「そうそう。俺だって変な夢を見続けているぞ」
「私も同じね。まさかキリト君や銀さんと同じ悩みを抱えているなんて、信じられないわ」
三人は口を揃えて、ある不可解な夢に悩まされているようだ。表情も若干やつれており、元気が無かったのもその夢が原因らしい。
「えっと、三人はどんな夢を見ているんですか?」
続けざまに新八が聞いてみると、今度はキリトから答えを返してきた。
「それが不思議なんだよ。さっき聞いてみたら、アスナや銀さんと同じ夢を見ているらしいんだ」
「同じ夢ですか!?」
「そうよ。夢の中で私達がもう一人いて、一緒に戦う場面を何度も見続けているのよ。神楽ちゃん達にはイメージしづらいけど、その姿もSAOの時のアバターとだいぶ似ていたわ」
「俺に至っては攘夷志士時代の姿だからな……ったく、今更になって何でこんな夢を見ることになるんだよ……!」
三人からの証言によると、夢の内容は奇遇にも全員共通した内容らしい。しかもその中にはもう一人の自分がおり、姿も昔の衣装と酷似しているようだ。不可思議すぎる夢の事情に、話を聞いていた新八らも違和感を覚え始めている。
「そんな三人も揃って同じ夢を見続けているなんて……」
「少しおかしいですよね」
「絶対裏があるに決まっているネ! こんなこと偶然じゃ片づけられないアルよ!」
自然的な要因ではなく、何者かが関わっている人的要因であると万事屋内では捉え始めていた。すると、丁度よいタイミングで定春がある物を神楽へと渡してくる。
「ワン!」
「ん? どうしたネ、定春?」
彼が運んでくれたのは、複数枚の手紙であった。差出人はみなバラバラで、裏面にはそれぞれの想いを綴った内容が書かれている。
「これは……皆さんからの手紙でしょうか?」
「あっ! 見て銀ちゃん! ヅラクラの手紙にこんな事が書かれてあったネ!」
興味深く呟いたユイの言葉をかき消すように、神楽は仲間達へ桂から届いた手紙を見せびらかしていく。一同もその手紙に注目を寄せていた。
『銀時にキリト君。最近変な夢を見続けたりはしていないか?』
そこに書かれていたのは、現状の銀時達にも当てはまる内容である。
「変な夢……まさか桂さんやクラインも、俺達と同じ夢を見続けているということか?」
「マジかよ!? あいつらにまで影響が出ているのか!?」
続きが気になってしまい、キリトや銀時らはさらに桂達の手紙を読み解いていく。そこに記されていたのは――実に意外な内容であった。
『突然ですまない。だが俺達の実情を伝えるべく、今回は手紙を書かせてもらった。実はな、俺とクラインは偶然にも同じ夢を見たんだ。突拍子もなく仙人がやって来て、攘夷を極める前にピザを極めろと! ――そこで今俺達は、未知なる土地イタリィにてピザマスターになるべく日夜修行に励んでいる。そうだろ、クライン殿?』
『もちろんだぜ! 期待を寄せてくれた仙人の為にも、一日も早くピザマスターにならないとな!』
『その通りだ! だから銀時。剣魂も遂に長篇に突入するみたいだが、今回は休暇を取るから一斉出ることはないぞ。みな懸命に頑張ってくれ』
『追記。最近知ったのだが、どうやらSAO本編にもアナザー桂が現れたらしいな。俺と同じ声をしているみたいだが、こいつも剣魂本編に出てくる予定はあるのだろうか?』
「知るかぁぁぁ!! 作者自身もそんな先まで考えてねぇよ!! つーか長い文字数を使って、何の情報性も無いってどういうことだぁぁぁ!!」
期待して見続けたのだが、結局的外れな内容しか書かれておらず、時間を無駄にしただけである。苛立ちを抑えきれなくなった銀時は、激しいツッコミを入れながら、思わず手紙をビリビリと引き裂いてしまった。彼に続き他のメンバーも不満を口にしていく。
「ていうか、この人達だけ別件に巻き込まれているだけでしょうが!! 桂さんだけじゃなくて、クラインさんもこんな大ボケに参加するなんて……」
「類は友を呼ぶとはこのことアルナ。夢に導かれてイタリアに行くなんて、バカにしか出来ない所業アル」
新八や神楽は桂の行動力に驚くどころか呆れ果てており、思わずため息を吐いてしまう。一方のキリトらはというと、
「てか、クラインって今イタリアにいるんだ……」
「ちゃんとイタリア語は話せるのでしょうか?」
「それよりも、勢いだけで桂さんに乗っかっていく方が心配よ……」
変わり果てたクラインのバカさ加減に、思わず苦言を呈する始末であった。いずれにしても事態の進展はなく、銀時らは桂達を気にせずに別の手紙を拝見する。
「もうこいつらは良いとして。その次は誰からなんだよ」
「次は、シッリーとリズからネ!」
「えっ? シリカちゃんとリズからなの!? 一体どんな手紙?」
続けて目にしたのは、吉原で滞在しているシリカとリズベットからの手紙であった。アスナ達も再び食い付いていき、内容を確かめていく。
『キリトさーん』
『アスナー』
『最近変な夢を見ませんかー?』
『でそれは置いといて……』
『『八月いつ遊べる?』』
「って、短!? 思いっきり緩く書いているし、内容も薄いんですけど!?」
書かれていたのは二人の切実な願いが伝わる予定確認であった。テンポ良く新八がツッコミを入れた後、キリトも思わず本音を口にしている。
「そう言われてもな……万事屋って不定期だから、遊べる日も当日にならないと分からないんだよな」
「おーい、キリト。真面目に答えなくていいぞ。また時間がかかるから」
素直に答えてきたので、すかさず銀時が気だるい口調でツッコミを加えてきた。概要の少ない手紙であったが、夢に関しての疑問がまたも書かれており、彼女達も同じような影響を受けていると一行は捉えている。さらに手紙はこれだけにはとどまらない。
「あっ、こんなのもあったネ! 銀ちゃん、見るヨロシ」
「ああ? 今度は一体誰が――」
神楽に釣られて銀時が手紙を見てみると、そこには懐かしい男からの願いが書き記されていた。
『おお、金時! 不思議な夢を見とるんじゃが、剣魂でのワシの出番はいつ来るんじゃ?』
「辰馬ぁぁぁぁ!! 急にぶっこんで来るんじゃねぇよ!! 俺に言う前に、この小説の原作者に聞けやぁぁぁぁ!! 名前も間違っているし!!」
まさかの辰馬からの手紙に、銀時は桂と同様に勢いよく手紙を引き裂いていき、やりきれない思いを解消していく。彼らしいノリと質問であったが、今の銀時からしてみれば火に油を注いだに過ぎなかった。キリト達もその思いを密かに読み取っている。
「ま、また銀時さん、手紙を引きちぎりましたね……」
「よっぽど怒りがあったのね……というか、辰真さんって言うのは一体誰なの?」
苦い表情のまま呟いているが、まず率直に感じたことは辰馬の存在であった。キリトらはまだ彼とは会っておらず、ここでようやくその存在について知ることとなる。
「ああ、キリトさん達にはまだ紹介していませんでしたね。辰真さんは銀さんの知り合いで、本名は坂本辰馬さん。共に戦った攘夷志士の一人で、現在は宇宙を股にかける貿易組織快援隊の艦長を務めている人なんだよ」
「坂本辰馬……坂本龍馬に名前が似ているな。それに銀さんと同じく戦争に参加していた一人なのか」
「昔は強かったみたいだけど、今は能無しの能天気野郎に成り下がったから、キリ達と会わなくても十分な奴アルよ」
「そ、そうなんだ……」
新八や神楽からの説明で辰馬についての補完は出来たのだが、実際に会ってみないとやはりイメージはしづらかった。類似する偉人で坂本龍馬と名前が似ていることに興味を沸かしていたが。それはさておき、銀時の方は次々と来ていた手紙の内容について、もはや鬱陶しく思い始めている。
「ったく、なんだよ! どいつもこいつも変な手紙を送ってきやがって! 期待はずれなもんばっかりじゃないか!!」
怒りを露わにして本音を口にするが、ユイだけは冷静にも考察を練ってある考えを閃いていた。
「でも、結構進展はしたと思いますよ。一つ気になる共通点も見つかりましたし」
「共通点? そんなもんあったのか?」
「はい! 手紙を送ってくれた人は、みんな奇妙な夢を見てみます。パパやママも含めると、全員がSAO参加者という枠組みが出来上がります」
「確かに……。リーファちゃんやシノノンからは特に連絡もないし、その考えは合っているのかもしれないわね」
元気よく彼女が伝えてきたのはある共通点である。手紙を送って来た友人はみな不思議な夢に悩まされており、なおかつ過去にデスゲームであったSAOに参加していた面々ばかりであった。盲点を突くユイの考えにみなが納得していると、さらなる根拠を彼女は述べていく。
「さらに銀時さん達も大きく関係があります! 手紙を送ってきた桂さんや坂本さんとの接点は、同じ戦争に参加していたこと……つまりここでも共通点があるということです!」
「そう言われてみれば、そうだな……」
銀時、桂、辰馬の共通点として攘夷戦争に参加していたことが上げられる。二人の手紙にも夢についての記載があるため、大方銀時と同じような夢を見ていると言っても過言ではないだろう。桂だけは若干怪しいが……。以上の接点から、特定の人間しか不思議な夢は見続けていないようだ。もちろん一行は、一連の流れから早速疑い深く進めている。
「やっぱりこれって、何か裏があるに違いありませんよ!」
「絶対そうネ! もしかしたら、とうとうサイコギルドが本格的に動きだしたんじゃ――」
と新八や神楽らも考察に加わろうとしたその時であった。
「失礼します! みなさん揃っておりますか?」
「この声はたまか?」
玄関先からたまの声が聞こえている。全員揃って玄関先まで行き戸を開くと、そこには神妙な顔つきで待っていたたまの姿が見えた。どこか真面目な雰囲気を醸し出しており、いつもとは確実に何かが違っている。
「たまさん? 一体何の用なんだ?」
「……キリト様にみなさん。少しお時間を頂けるでしょうか? 会ってもらいたい人がいるんですよ」
「会ってもらいたい人? そう言われてもこっちは今立て込んでいて――」
「不思議な夢の真相について、知りたくはないのですか?」
「えっ!? なんでお前がそれを知ってんだよ……」
「エギル様も同じ夢を見て悩まされていますからね。それに今会わせようとしている人は、きっと夢を解放するきっかけになる方だと思いますよ」
どうやら彼女は夢についての事情をだいぶ理解しているらしい。たまからの誘いをきっかけに、遂に状況が動きだしていく……
おまけ
神楽 「あっ、銀ちゃん! こんな奴からも手紙が届いているネ!」
銀時 「ああ!? 今度は一体誰が……」
ギンガ『剣魂のオファー待っています。BY.仮面ライダーギンガ』
銀時 「って、おめぇは銀魂でもSAOにも所属してねぇキャラクターだろうがぁぁぁ!! ちゃっかり乗っかってくるんじゃねぇよ!!」
分かる人には分かる声優さん繋がりです。まぁ、サイコホールが通じるなら、ワンチャン来るのかな? 出したら厄介なことになりそうだけど……
予定では十訓程度にまで伸びる予定ですが、何分予測の為どうなるのかは分かりません。そこはご了承ください。
後関係ないかもしれませんが、予告では千沙と表記していましたが、個人的にしっくり来なかったので千佐と変更しています。どうでもいいかもしれませんが、一応伝えておきます。
さらに補足ですが、今回の港の場面は十六訓の場面とは時系列が異なるので、そこは勘違いしないでください。長くなりましたが、今回はここまでです。また次回、お楽しみにしてください!
次回予告
たま 「あの方は、早見千佐様。ずっと夢の中に閉じこもっている少女です」
神楽 「さっき、銀ちゃんとキリの名前を言っていたネ!」
ユイ 「やっぱり何か裏があるのでしょうか?」
キリト「千佐って子、どこか昔の仲間と似ているんだ」
銀時 「気にすんな。喋りづらいことなら、無理して言うんじゃねぇよ」
夢幻解放篇二 悪夢を見る少女