剣魂    作:トライアル

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話題の一件について
沖田総悟「いや~おめでとうございやす。まさかお前が人妻になるなんて、思ってもいなかったですけど」
リーファ「えっ? 一体何の話?」
沖田総悟「まぁ、分からなくて当然ですよ。俺はリーファじゃなくて、竹達彩奈に言っているんですから」
リーファ「竹達彩奈って誰!? 私の本名、桐ケ谷直葉なんですけど!?」
沖田総悟「だからお前に言ってねぇんだよ。この間はアスナ……いや、戸松遥が結婚したから、SAOでメインヒロインを飾った女は軒並み幸せを掴んでいるんだな。末永く幸せを育めよー。梶裕貴と」
リーファ「……だから、一体何の話なのよ!?」

という完全に本編とは無関係な話ですが、知らないうちにまた声優さんが結婚しましたね。戸松遥さんに続いて竹達彩奈さんまで結婚なんて、びっくりしました! 梶裕貴さんとだなんて……意外すぎます。ネットではピピ美同士の結婚って言われていますけどね。そういえば、戸松遥さんもピピ美を担当していた気が……。それはともかくとして、共にお幸せに過ごしてください!


第三十訓 もう一人の自分

 昏睡状態が続いている千佐を救う為に、銀時ら万事屋は源外が開発したカラクリを使って、現在彼女の夢の世界へと侵入している。そこで出会ったのは、性格の異なるもう一人の自分達であった。

 穏便に済まそうと説得を試みるが、考え方のズレから無情にも決闘を申し込まれてしまう。話の流れに乗るしかなく、銀時、キリト、アスナの三人のみが剣を手にして挑むことになった。木の陰で仲間達が心配そうに見守る中、自分同士の戦いは今も続いている。

「はぁぁぁぁ!!」

「とぉぉぉ!!」

 銀時が木刀で攻撃すると同時に、夢世界の銀時も刀を使って攻撃を未然に防いでいく。木刀で斬りかかろうとしても、刀が破壊されることは無く、互いに一歩も引かない状況が続いている。彼らが対峙する度に、木々に生えた葉っぱは揺らいでいき、意図的な突風を生み出していた。その直後、二人は一旦場から離れていき体制を整えていく。

(なんだよこいつ……まるっきり強さまで俺に似やがって……)

 決着のつかない勝負に、本物の銀時は心の中でつい本音を吐き出している。自分と同じ姿……ましてや昔の白夜叉時代の格好をした相手との戦いに、普段よりも調子は上がっていない。睨みを利かせた表情を崩さずに、彼は一層息遣いを荒くしていた。

 もちろん夢世界の銀時も、同じ行動を取っている。

「はぁ……。中々やるな、お前も」

「あたぼーよ。気だるそうに見えて、やる時にはやるんだよ。俺は……」

「益々信じられん……。死んだ魚のような目をしているくせに……!」

「って、気にしている事を平然と言いやがるな! 率直にもほどがあるだろうが!」

 何のためらいもなく発した彼の一言を聞き、銀時は思わずムキになって怒りを露わにしていく。夢世界側の自分は未だに敵対意識を続けており、刀を手にしている限りは銀時も攻撃を続けるしか手段は無かった。相対する彼らの目の前に、一枚の葉っぱが地面へと落下したところで――

〈キーン!〉

再び刀や木刀を握りしめて襲い掛かっていく。がむしゃらに攻撃を続ける銀時と、ひたすら防御に徹して彼の隙を狙う夢世界の銀時。どちらも勢いが衰えることは無く、火花を散らす戦闘は激しさを増すばかりであった。

 一方その横では、異なるレイピアを手にしたアスナ同士の戦いが繰り広げられている。

「チッ! 強さは同格ってところか……」

「そうみたいね!」

 長らく続いた攻防の末に、互いのレイピアは向かい合わせとなって、一歩も譲らないこう着状態を作り出していく。まるで鏡に映った自分の姿のように、二人は動きを正反対に一致させている。

 しかし、その戦闘スタイルは大幅に異なっていた。打撃を与えて激しい戦法を繰り出す夢世界のアスナと比べて、本物のアスナは繊細な動きを用いた突き攻撃を得意としている。見た目はもってのほかだったが、戦い方の違いにも夢世界側の彼女は納得していない。

「てか、そもそも本当にアタイなのか!? 少しばかり上品すぎなんじゃねぇの?」

「そうかしら? そういうアナタこそ、女子っぽさが見当たらないけど? もうちょっとしなやかさを磨いた方がいいんじゃないの?」

「うるせぇ! アタイのやり方にいちいちケチを入れてくるんじゃねぇよ!!」

 我慢できずに指摘を言い放った瞬間、もう一方からはブーメランの如く言葉を返されてしまう。本物のアスナは既に彼女の気性の荒い性格を見透かしており、一歩上手へと回り込んでいた。いずれにしろ、二人は女子特有の対立性を表に出している。共に相手の様子を伺っており、こう着状態は一行に解かれる気配が無かった。

 それぞれの決闘が続いていく中、キリトの方はというと――

「いくよ! とりゃー……って、うわぁ!」

「って、おい!? 大丈夫か?」

前例の二人とはまったく異なる雰囲気で進められていた。夢世界のキリトが長剣を両手に走り出すが、途中で小石につまずいてしまい、勢いよく地面へ叩きつけられてしまう。心配になった本物のキリトは急いで駆け寄っていき、彼の現状について確認している。

「どうやら怪我はないみたいだな。とりあえず安心したよ」

「そうなの……? でも僕はちっとも安心出来ていないよ! 戦うのをためらって、おまけに銀さんやアスナさんも人の話を聞かないし……なんでこうも上手くいかないの!」

 優しく言葉をかけたものの、彼は自身を追い詰めてしまい、本音を吐き出すと同時にしくしくと涙まで流し始めた。事が上手くいかず理由すらも聞かない仲間の強引さに、どう行動すればいいのか分からなくなったのである。

 自暴自棄と化したもう一人の自分に対して、キリトも反応に困ったものの、苦い表情をしたまま説得を促すことにした。

「まぁまぁ、落ち着けって。そんなに泣いても問題なんて解決しないから、まずは自分から行動した方が最善だと俺は思っているよ」

「で、でも……僕が止めたって、あの二人に返り討ちにされるだけで、出来っこないんだよ……」

(かなりのネガティブ思考だな……夢世界の俺って、ここまで悲壮感に溢れているのか?)

 優しい口調で話しかけても全然立ち直らずに、むしろマイナスな思考でより暗い気持ちに彼は包まれてしまう。これには本物のキリトも対応に困ってしまい、言葉に詰まる始末であった。

 大した進展も無いまま、自分同士の戦いは今もなお続いている。

 

 そんな中、ユイら仲間達は木の陰からそっと銀時達の戦いを見守っていた。

「中々決着が付こうとしませんね……」

「銀ちゃんもアッスーも互角に戦っているアルからナ……。まぁ、キリだけは月とすっぽんくらい差があるけど」

 ユイからの素朴な呟きに、神楽は正論に近い言葉で返している。弱気な性格である夢世界のキリトに対しては、容赦のない辛辣な言葉で例えていた。真剣に場を見守っている中、新八だけは密かにある気配へと気付き始めている。

「ん? アレ……?」

「どうしたんですか、新八さん?」

「いや……気のせいかもしれないけど、足音が聞こえてこない?」

「足音アルか?」

 彼からの情報を頼りに神楽やユイも耳を澄ましてみると、微かではあるが草に揺れて響く人の足音を感じとっていた。徐々に音は大きくなっていき、まるでこちらに近づいてくるようである。

「って、新八さんの言う通り聞こえてきますよ!」

「何か嫌な予感がするアル……新八! ユイの身を一緒に守るネ!」

「もちろんですよ!」

 新たなる伏兵の可能性もあり、新八や神楽も隠し持っていた木刀や日傘を手にして準備へと入っていく。戦うことが出来ないユイを自分達の後ろへ連れて行き、取り囲みながら守備を周到に整えている。すると落ち着く暇もなく、二人の人間が一行の目の前へ姿を現していく。

「「ハァァァ!!」」

 甲高い声を発しながら、接近戦用の武器を手に、新八達へと襲い掛かってきた。だが彼は既に攻撃を予測しているので、一段と冷静に対応している。

「早く下がって、二人共!」

 ユイや神楽を反対方向へ逃がしたところで、木刀を握りしめながら、二人の襲撃者へ果敢に立ち向かっていく。振り上げると同時に木刀で相手からの攻撃を打ち消していき、まずは勢いよく薙ぎ払っていった。一定の距離を保ったところで、ようやく新八は襲撃者の姿を目の当たりにする。

「一体誰が……って、シリカさんとリズさん!?」

 その正体は意外にも、知り合いであるシリカとリズベットに酷似した少女達であった。共にSAO時代にて着ていた衣装を身にまとっており、耳や外見も本人と比べれば若干の違いが生じている。

 シリカの服装は赤を多めに基調しており、リズベットも丁度良い丈のスカートと茶色いブーツで足元を決めていた。

 いずれにしても、またも現れた夢世界のそっくりな住人に、新八達は驚きを隠せずにいる。一方でシリカとリズベットの二人は、強気な態度で接して勝手に話を進めていく。

「って、なんでアタシ達の名前を知っているの……?」

「さてはアンタも統率者の一味ってことね!」

「違いますから! ていうか、統率者って一体誰なんですか!?」

「しらばっくれないでください! ピナの技を使って、アナタの行動を制限しますよ!」

「ピ、ピナ!? まさかあの子も夢世界にいるって事!?」

 こちらも依然として敵対意識をむき出しにしており、しかめっ面な表情をしたまま新八へと脅しをかけている。動揺をしながらも彼は説得の為に会話を続けようとしたが、その背後からはある鳴き声が響いてきた。

「ナー……!」

「えっ!? これって……」

 気づいた時にはすでに遅い。新八は恐る恐る後ろへ振り返ってみると、そこには特技のバブルブレスを発射しようとするピナの姿が映っている。狙いを定められてしまい、逃げる隙もないまま……

「ナー!!」

「うわぁぁぁ!!」

無抵抗で泡攻撃を受けてしまった。当然現実との効果は同等であり、新八はこの泡によって数分間は体の自由が奪われてしまう。

 そして新八の助けもあって、襲撃者から逃げようとしているのは神楽とユイ。出来る限り森の入り口まで避難しているが、彼女達の元にまた新たなる敵が襲い掛かってくる。

「ハッ!? ユイ! 左の木の下に隠れるネ!」

「えっ!? 神楽さん!?」

 人の気配を悟った神楽は、ユイを強引にも左へ押し倒すと、たった一人で戦闘準備を本格的にしていく。目を大きく見開きながら、警戒心を高めていたその時である。

「ファァ!」

「そこネ!!」

 微弱に感じた振動から、右側からの襲撃を一瞬で察していた。この直後に神楽は、勢いよく飛び上がって未然に攻撃を回避している。一方で襲撃者の正体は、大型の斧を持った褐色肌で大柄な男性……エギルと酷似した人物であった。

「な……エギ!? こいつも夢世界の住人ってことアルか!?」

 気が付くなり大きく驚嘆する彼女であったが、既にその後ろにはさらなる伏兵が回り込んでいた。

「夢世界? 十分ロマンチックな台詞を言うじゃねぇか。お嬢さんよ!」

「何!? お前は……」

 聞き覚えのある男性の声に気が付き、思わず後ろを振り返ってみる。そこにいたのは、甲冑が特徴的な侍風の衣装に身を包んだクラインらしき男であり、彼女と同じくして大きく飛び上がっていた。この二人も共にSAO時代と同じ格好をしており、服装や容姿にも本人との誤差が生じている。

 それはさておき、背後を取られてピンチに陥っていた神楽だったが、土壇場である作戦を閃いて早速行動へと移していく。

「あっ、そうネ! これでもくらえアルー!!」

「ハハ。何をしてももう……って、アレ?」

 余裕をかましていたクラインであったが、彼女に足の根元を掴まれたことで状況が一変。動きを制御されたことに気が付くと、

「ピンチをチャンスに変えるアルゥゥゥ!!」

「って、ウワァァァ!!」

そのまま勢いよくエギルの元まで投げ飛ばされてしまった。彼女の作戦通りに上手くいき、見事に形勢を逆転させている。

「えっ、おい!? こっちに来るな……!? って、うぉぁぁ!?」

 エギルにも予想が付かなかった故に何の対策も立てておらず、落下するクラインの衝突をもろに受けてしまった。ぶつかり合った両者は気を失い、行動不能に陥っている。

 時を同じくして神楽も地上に着地して、木の隅へ隠れていたユイの元へと駆け寄っていく。

「ユイ! 大丈夫だったアルか?」

「はい、もちろんです! ところで神楽さんの方は?」

「こんなの平気ネ! お茶の子さいさいアル! でも、こいつらまで夢世界にいたなんて驚きアルナ」

 お互いの無事を確認したところで、彼女達は一連の流れについて振り返っている。シリカ、リズベット、クライン、エギル。どれもキリトやアスナと同じく過去の姿を踏襲した別人が、この夢世界に存在しているようだが……彼らには一つだけ共通点が浮かんでいた。

「どれもSAOの生還者ばかり……不思議な夢の正体とは、やはりコレなんでしょうか?」

「不思議な夢……あっ! そういえば、まだ銀ちゃんと同じ攘夷志士達とは出会っていないネ!」

「確かにそうですね。ということは、同じくこの森に潜んでいるという事でしょうか?」

「ひょっとして……」

 SAOを経験した者、並びに現在夢に悩まされている仲間達が、夢世界で姿を現している。となれば、銀時と共に戦った攘夷志士達もこの世界に存在していると予測していた。嫌な予感を察し始めており、二人は急いで銀時達のいる場所へと戻り出していく。

 

 一方でキリトらがいる一帯では、未だに決闘が続けられており、まったく収まる気配すら無かった。銀時とアスナの二人は互角の勝負を繰り広げているが、キリトだけは自信喪失したもう一人の自分に根気強く説得を促している。

「ほら、もう一度考えようって。自分の意志を伝えないまま、このまま誤解を招いたままじゃいけないだろ?」

「そうだけど……僕には無理なんだよ。君みたいに強い根性も持ってないし……」

「そんなことは関係ない。たった一歩の後押しだけで十分なんだよ。だから……踏み出してみろよ。自分の心に決めた気持ちで!」

「気持ち……」

 必死に問いかけていき、自らの想いについて伝えていた。彼の言葉が心に響いたのか、夢世界のキリトは迷いながらもある考え事を浮かべていく。自分の行動次第でこの決闘も終わらせることが出来ると。彼が決意を固めるのももはや時間の問題であった。

(例え別人だとしても、この子も俺だったら……絶対に前へ進んでくれるはずだ)

 本物のキリトも心の中でそっと呟いている。弱気な自分であれ、必ず克服して自らの強みにしていくと信じていた。その瞬間までは優しく見守っていく――はずだったが、

「そうはさせるかよ……」

「……何!?」

ここで予想外の事態が発生してしまう。聞こえてきたのは、どこか聞き覚えのある低く渋い男性の声。キリトが気配を悟っていると、その男は唐突に目の前へと姿を現していく。

「……ハァ!!」

「フッ!!」

 そして何のためらいもなく刀を抜き、本物のキリトへ向けて素早く斬りかかっていった。しかしキリトも二本の長剣を前へ差し向けて、瞬く間にその攻撃から身を守り抜く。ギチギチと剣と刀を擦る音が響いており、かなりの力を入れている事が伺い知れたが……

「トワァ!」

せめぎ合いの末に二人は、互いの力に押されて距離を広めてしまう。地面へと叩きつけられてしまったが、共にそこまでの深手は負っていない。

「おい、キリト!?」

「キリト君、大丈夫―!?」

 銀時やアスナも彼の危機に気付き、戦闘を一時中断して駆け寄ってくる。これにより、現実世界の万事屋と夢世界のキリト達にて勢力が分かれてしまう。

「……なんとか平気だよ。それよりも、あいつは一体何者だ……?」

 二人へ礼を言うと同時に、彼は慎重に新たなる襲撃者を凝視していく。紫がかった髪と一段と細い目つきが特徴的であり、陣羽織風の甲冑を身にまといこの戦場へ舞い込んでいる。すると彼は、冷静な口調で言葉を返してきた。

「ふっ……俺の事か? 鬼兵隊を率いる総督、高杉晋助だ。ちゃんと覚えておけよ、偽物共」

「高杉……晋助?」

 聞いたこともない名前に、キリトはつい首を傾げている。その正体は、かつて攘夷戦争で銀時と共に戦った一人の高杉晋助であった。戦闘能力の高さから、ただならぬ人間である事は雰囲気からも察せることが出来る。彼の登場により場の空気は一変し、それぞれ異なった反応を露わにしていた。

「高杉さん……?」

「よぉ、キリト。また随分と困ってんじゃねぇか。いい加減戦いに慣れないと、こっちの身が持たねぇんだよ」

「何言ってんだよ、お前だけ遅れてきやがって! アタイらがどんだけ大変だったのか、分かっているのか!?」

「高杉はいつでもマイペースだからな……」

 助っ人の介入に文句を言いつつも、若干安心感に包まれている夢世界のキリトら三人。やはり彼らも、夢世界での高杉とは面識があるようだ。

 一方で現実の銀時は、自然と苦みのある表情を浮かべている。高杉とは大きい因縁があり、例え別人であっても心にはモヤモヤとした感情を募らせていた。

「やっぱり高杉もいるんだな……こりゃまた面倒な事になりそうだな」

 そう言いながらもキリト達の方へ顔を向けると、彼らはまた違った反応を示している。初めて会う相手にも関わらず、声だけを聴いてある天敵を頭に思い浮かべていたからだ。

「ねぇ、キリト君。高杉さんの声って、どこかで聞いたことのある声よね?」

「声で言うと……やっぱり、オベイロンと似ているよな?」

 神妙な表情で二人は深く共感している。話題に上げた人物は、かつてのALOの管理者でもあったオベイロンであった。アスナを数か月に渡って自分の手元に幽閉していき、それを助けに来たキリトにも憎悪をぶつけて危害を加えた外道とも言うべき男である。もちろん高杉とは何の接点もないが、声を聞いただけで二人はすぐに強欲なイメージを彼に植え付けてしまう。

 すると、二人の話に乗っかって銀時も声をかけてきた。

「ああ、オベイロン? まさかこの間の東城みたいに、声の似ているお前らの宿敵って野郎か?」

「まぁ、そういうところね。あの人には本当酷い仕打ちを受けたからね……」

「思い出しただけで、虫唾が走るくらいだよ」

「ほう……そんなに悪意のある奴か。高杉も別の世界では、クロちゃ〇並みに問題を起こしていた事をしていたのか」

「あの、銀さん? 多分その人と比較するのは、間違っている気がするんだが……」

 銀時の独特な例え方に、キリトは小声でツッコミを入れている。彼はふと思い付きで某芸人の名を声に出していた。ちょっとした小ボケであり、キリトらもその名を理解しなくとも場のノリを察している。

 そんな万事屋の会話を夢世界側の高杉達も密かに聞き入れていた。

「さっきからアイツらは何を言っているんだ? オベイロンって言うのは、一体誰だよ?」

「さぁ、分からないが恐らく……あっち側の奴等にいる高杉のアダ名じゃないのか?」

「随分とかっこ悪いアダ名だな! そんな凝った名前よりも、気楽にタカちゃんって付けりゃいいじゃないのか!?」

「そこは違うと思うよ、アスナさん……というか、いつまでクロ〇ゃんの話題を引っ張るつもり?」

 アスナからの提案に、こちらのキリトも控えめにツッコミを加えていく。思わず彼らの雰囲気に合わせており、互いの緊迫感は少しずつだが薄れていった。

 しかし、高杉の介入から間もなくして、さらに別の仲間達が夢世界のキリト達の元へと集結していく。

「フッ……オベイロンに〇ロちゃんか。確かに高杉には似合わないアダ名だな。あまりにもファンシーすぎるのではないか?」

「ならばワシらが付ければいいきに! ファンシーがダメならファンキーじゃ! 題してモンキーベイベーでいいじゃろ!」

「って、坂本。あのグループは既に解散したのではないか?」

「そんなことは関係ないぜよ! 今日から高杉はモンキーベイベーで決まりじゃ! 良かったぜよ!」

「いや、何も良くねぇよ……」

 呑気にも会話をしながら駆けつけた二人に対して、高杉は苛立ちながらも不機嫌にツッコミを入れていた。その二人とは、銀時や高杉の仲間でもある桂小太郎と坂本辰馬である。共に甲冑を用いた攘夷時代の格好をしており、こちらも昔の姿とほぼ酷似していた。本物のキリトやアスナも桂には見慣れていたのだが、ここで初めて坂本辰馬の姿を目の当たりにしている。

「って、あの人達は……桂さんと坂本さんなのか?」

「えっ!? あの人が坂本辰馬なの!?」

「その通りだよ。どっからどう見ても、胡散臭いだろ? なんであいつらだけは、この世界でも性格がほぼ変わんねぇんだよ……」

 本人との性格が変わっていない二人を目前にして、銀時は頭を抱えて三度苦い表情を浮かべていた。その証拠に辰馬のいつもの癖も夢世界では健在である。

「アレ? 金時が二人いるぜよ!! なんだかだいぶ目つきが違うきに。あっちの金時の方が、ノリが良さそうじゃ! すぐにツッコミを入れて来るぜよ! ハッ、ハッ! 愉快じゃの!!」

「って、愉快さはてめぇの頭だろうが!! なんでお前はこっちでも金時って言い間違えるんだよ!? いい加減覚えろよ!!」

 お決まりである銀時の名前違いを声に出して、本物の銀時からは怒りを買ってしまう。彼らの登場によって場が乱れてしまったが、冷静に考えると夢世界側に高杉ら三人も助っ人が加わったことになる。つまり、万事屋にとっては窮地に追い込まれてしまった。

「金時ではないと言っているが……まぁいい。援軍として存分に手を貸してもらうぜ」

「分かっている」

「もちろんじゃ!」

「足を引っ張るなよ」

 銀時や高杉らが互いに声をかけたところで、桂や坂本も仲間達と同じく刀を抜いて構えていく。アスナも含めた計五人が再び万事屋への敵対意識を露わにしていた。攘夷志士達の助けによって、不利な状況となった万事屋は闇雲に戦うことを諦めかけている。

「おい、どうするんだ? ちょいと多勢に無勢になってきたぞ」

「確実に私達の方が不利ね……でも戦う以外に選択肢は」

「ここはもう一人の俺に賭けるしかないな……頼む! 早く動いて、誤解を解いてくれ!」

 最後の希望としては、唯一現状を理解している夢世界のキリトに託すしかなかった。彼だけは武器を構えておらず、依然として敵対意識は持っていない。密かに本物のキリトがアイコンタクトを送りながら、彼へ動くように指示を加えていく。ほんの少しだけの勇気が、場の雰囲気を変えるきっかけになりつつあった。

「あ、実は……」

 遂に、小声ながらもようやく打ち明けようとした――その時である。

「もう戦いをやめてください、みなさん!」

 突如として聞こえてきたのは、芯のある女性の声。一同が声の聞こえた方向へ背を向けていくと、そこにいたのは……

「えっ!? まさか……サチ!? いや、チサ!?」

夢世界にいる千佐であった。その外見はSAOに登場したサチそのものであり、装いである青い服やスカートも本人と瓜二つである。あまりにも似ているので、本物のキリトも最初に目にした時から間違えてしまう始末であった。

 一方で彼女は勢いよく声を上げた後に、一同の元へ近づき自信良く自らの主張を続けていく。

「何をやっているのですか、皆さん!! この人達もこの世界に捕らわれた被害者かもしれないのに、襲い掛かるとは何事ですか! まだ敵だとも判断していないのに!」

「って、チサ! アンタも言いたいことも分かるが、それ以前にキバオウ達が言っていたんだよ! こいつらはアタイ達と似ている統率者からの新たなる刺客だって」

「そうですか……では、第一発見者に聞いてみましょうか。キリトだったら、何か知っているようね?」

「って、ぼ、僕!?」

 アスナからの反論にも動じずに、チサはすぐにキリトへと質問を振ってくる。唐突な展開に彼は戸惑いつつも、言葉を詰まらせながら口を開いていく。

「えっと……僕が知っているのはこの人達も別の世界から来ていて、少なくとも敵意とかは無くて……」

「つまり統率者の刺客じゃないって事だよね?」

「そ、そうだと思います……」

 途中でチサの助け舟を貰いながら、キリトはようやく仲間内へ伝えたかった事を打ち明けていた。この大胆な発表により、仲間達の心境は一変。みな驚きを隠せずに困惑した表情を浮かべている。

「そ、そうなのか……!?」

「と言うことは、お前達は統率者からの刺客ではないのだな?」

「さっきからそう言ってんだろ。そもそも統率者自体分かっていないからな」

 桂や高杉からの問いに、銀時は堂々と答えていく。反応の違いから敵でないことは明確であり、夢世界の銀時達は徐々に状況を理解していった。

「おい、てめぇ!! 何でここまで重要な事を、さっさと打ち明けねぇんだよ!! おかげで骨折り損のくたびれ儲けじゃねぇか!!」

「だって言ったところで、アスナさんも銀さんも分かるわけないと思って……」

「そんなことは無ぇよ! アタイが優しい女だって、昔から分かり切っていることじゃねぇかよ!」

「優しかったら、胸ぐらを掴まないよ……」

 そんな中、夢世界のアスナは弱気に怯えるキリトの胸ぐらを掴んでいき、思いの丈をぶつけていく。女子とは思えないドスの効いた大声で接していき、彼をさらに恐怖で震え上がらせていた。

 いずれにしても、夢世界の彼らは敵対意識を紐解いて、装備していた刀や剣も鞘に戻し始めている。結果的に一触即発な状況は過ぎ去っていた。

「えっと、これは助かったって事よね?」

「そうだな。無駄な体力も使わなくていいし、結果オーライだろ。なぁ、キリト」

 安堵の表情を浮かべるアスナや銀時に比べて、キリトは未だに驚いた表情を続けている。夢世界で生きるチサを目にして、かつての仲間であるサチとの面影を照らし合わせていたからだ。

「やっぱりサチなのか、あの子は……」

「って、キリト? おい、聞こえてんのか?」

 銀時からの呼びかけにもまったくもって応じていない。

 一方でチサは、決闘が収束したことにより安心感を覚えている。

「ふぅ……助かって良かったですね」

 髪を風になびかせながら、訪れた平穏に彼女は心から感じとっていた。大きく変化した現状には、後から駆けつけた仲間達もつい驚きを見せている。

「アレ? もう終わっているアルか?」

「見慣れない人もいますけど、あの人達も攘夷志士なのでしょうか……?」

 ようやく現場に到着した神楽やユイの二人は、高杉ら攘夷志士にも注目を寄せていたが、決闘が終わったことにも衝撃を受けていた。一方で、

「えっ? 敵じゃ無かったって事?」

「ど、どうしましょう! この男の人をボコボコにした後なのに……」

「ナー……」

敵でないと分かるなり大袈裟に動揺していたのは、シリカやリズベットらである。バブルブレスによって拘束した新八に向かって、共に攻撃を与えていたので自らの行動に後悔を抱き始めていた。

 そんな新八は、現在木の茂みにて体に軽い傷を負いながらずっと横たわっている。

「誰か、助けて……」

 クラインやエギルと同等に、新八もまた気絶寸前の状態であった。

 こうして、夢世界で生きる千佐をきっかけにして、物語は急展開を迎えていく……




銀魂完結について

 まずは空知先生、お疲れさまでした! 銀魂が遂に完結したということで、この場を借りてちょっとした思いを語らせてもらいます。
 私自身が銀魂という存在を知ったのは、四年前のアニメ放送再開がきっかけでした。ジャンプ系のアニメにはさほど興味が無かったのですが、たまたまテレビを付けると、銀さんや仲間達がハチャメチャとしている一場面が映って、度肝を抜かれたことは今でも覚えています。そこからは再放送やDVDを借りてきて、過去の話数を全て視聴していき、段々と深みにハマっていきました。コミカルな日常回では腹を抱えて笑い、シリアスなバトル系の長篇でも息を呑んで心を震わせていました。
 自分が愛していた作品が終わるのは正直辛いですが、しっかりと完結してくれたことには感謝もしています。本当に、この作品と出会えて良かったです! 
 銀魂が完結してもこの剣魂はまだ続くので、これからも応援よろしくお願いします!





もう一つ報告

 実は伝え忘れていましたが、一昨日開催された洞爺湖マンガ・アニメフェスタに参加してきました。物販をするのは二回目でしたが、ここまで大きいイベントに参加したのは今回が初めてでした。紆余曲折ありましたが、手に取り買っていただいた方には、本当に感謝しかありません! 今後も積極的にイベントにはどんどん参加していこうと思っています!




次回予告
夢世界でのチサともう一人の自分達
彼らの正体は一体何者なのか?
明かされるこの世界の仕組みとは?
夢幻解放篇五 戦い続ける者達

桂 「ヅラちゃんです! ワワワワ~!!」
坂本「攘夷大サーカスの結成ぜよ!!」
新八「って、コラァァァ!! もうそのネタは引っ張らなくていいんだよ!!」
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