剣魂    作:トライアル

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 ちょっとした余談ですが、白猫プロジェクトと言うゲームでSAOコラボが始まったみたいですね。私自身はやっていないのですが、前に銀魂ともコラボしたみたいで、お互いのキャラも並べる仕様にびっくりしています。持っている方は、試してみてはいかがでしょうか? (ちなみにモンストとパズドラでも二つの作品はコラボ済みだそうです)


第三十四訓 攻略開始

 銀時やキリトら万事屋六人が夢世界で活動する一方で、現実世界でも絶え間なく事態が動き続けている。源外はただ一人パソコンと向かい合い、一行の脳波を監視していた。装置の状態も神経質に確認しており、抜かりない手助けを黙々とこなしている。時刻が二時を過ぎてもなお、その集中力が途切れる事は無かった。

 定春も静かに見守っている中、急に源外はある変化に気が付いている。

「ん? これは……」

「ワフ?」

 共にパソコンの画面へ目線を向けると、そこに映っていたのはレーダー上で点滅する黒点であった。六人の脳波から夢世界での大まかな位置を示しているが、ここまで大きな変化が起きるのは初めてである。さらに、黒点は万事屋とは違う人物から発せられているようだ。

「ちと怪しい光だな。これが夢世界の秘密を握っているのか? 調べてみる必要があるな……」

 不穏な予感を察して、タイピングもより激しくなっていく。すると源外は、定春にある嘆願を持ち掛けてくる。

「定春よ。もしかすると、お前さんの力も借りる事へなるかもしれないな」

「ワフー!?」

 突然の提案に彼は大袈裟な反応を見せていた。ずっと見守っていた定春にも、夢世界への介入が近づいている。この方向性の転換が、万事屋の助けに繋がっていくのだろうか――

 

 一方で夢世界にいる万事屋は、別世界の銀時達が集まるアジトに取り急ぎ戻っていた。

「ん? やっと来たか」

「遅ぇぞ、てめぇら!! どこまで行っていたんだよ!?」

「ごめん……森の中を彷徨っていたんだよ」

 到着するなり別世界の銀時やアスナが声を荒げると、反射的にもう一人のキリトが言葉を返す。万事屋一行も申し訳なさそうに、会釈をしながら会議室にぞろぞろと入っていく。

 部屋の中には既にチサの仲間が集まっており、銀時や高杉と同じく攘夷志士風の男達や、キリトやアスナと同じくのSAOゲームプレイヤー風の戦士が姿を見せていた。もちろん、桂やシリカら七人も捜索から戻ってきている。

 手狭な会議室に密集して、神妙な面持ちで全員が時を待っていると、中心で佇んでいたパクヤサがようやく話し始めた。

「みんな! 集まってくれてありがとうな! 随分と苦労を掛けたが、このエリアを解放するステージが遂に見つかったようだ! これより、ステージ攻略による作戦会議を開始する!!」

 勢いよく声を響かせて号令をかけている。重要な情報を発見したパクヤサ一派白組が、この会議を進めていく。その証拠にキバオウやディアベルの二人も、パクヤサの周りを固めていた。全員が注目を向ける中で、続けて伝えたのはボスステージの情報である。

「今回のステージは、探索団によると四つの障害が待ち構えているようだ。大ボスの前に中ボスが二体。その前に大量の雑魚兵が、入り口付近で守りを固めているらしい。そこで今回は、事前に役割を分担するべきだと思うんだ!」

 通常の大ボスに加えて、中ボスや雑魚兵もこのステージには現れると告げていた。強さにはバラつきがあり、戦力の分担も重要になるが、ここでパクヤサは独自の考えを話し始める。

「誠に勝手ながら、我が一派は人数が少ないので雑魚兵を相手にする考えだ。残りのボスは君達自身で決めてくれるか? 分担が決まり次第、それぞれのチームで進めて作戦を話し合ってくれ!」

 人員の少なさを理由にして、彼の一派は一番負担の少ない雑魚兵を担当すると発表した。まとめ役でありながら、自分の一派のみを優先する決めつけに、銀時ら万事屋は反感を覚えている。

「おいおい。アイツらだけ優遇するのかよ。要するにボス戦には参加しないって事じゃないのか? そんなで大丈夫なのかよ?」

 銀時の率直な呟きを聞き、別世界の銀時が小声で言葉を返す。

「まぁ、仕方ない事だからな。パクヤサの一派は曲者の集まりだから、前線から外れないとこっちが迷惑を被るんだよ。現に俺だって、キバオウに戦闘中でも喧嘩を売られた経験があるからな」

 彼によると、パクヤサの判断は何ら問題無かった。表向きでは人手不足による割り当てであるが、本音では他の一派に迷惑をかけない為の手段でもある。数分前にも高杉といがみ合っていたキバオウを始め、パクヤサの配下には癖のある戦士が集められていた。一連の流れを読み解くと、万事屋も徐々に彼の考え方に納得していく。

「それは……そうかもしれないわね」

「パクヤサさんも、事情を分かって判断しているんだな……」

 特にキバオウと一悶着あった本物のキリトとアスナは、苦い表情でしみじみと理解していた。一方で当の本人には何も伝わっていないが、妙な違和感だけは覚えている。

「何か、さっきからワイの噂が飛び交っていないか?」

「さぁ。気のせいだろう」

 察したディアベルのフォローによって、噂は軽く受け流されていた。割り当てが一つ決まったところで、ボス戦による会議はさらに続いていく。

 

「――さて、これで全部決まりましたね!」

 会議から約三十分が経った頃。チサは堂々と声を上げて、決まったボス戦の主要メンバー十六人に話しかけている。先ほどの会議室とは違い、別の部屋に移動してさらなる話し合いを続けていた。ここで一行は、割り当てられたメンバーを確認している。

「中ボス戦の一つは、俺桂小太郎とクライン殿を始め攘夷志士で戦うとしよう。花形として、シリカ君とピナ君を加えようと思う」

「もちろん大丈夫ですよ! でもピナはオスですから、間違えないでくださいよ!」

「ナー!!」

「おう! どんと任せておけ!」

 手慣れた雰囲気を持つ桂、クライン、シリカの三人を始め、攘夷志士の連合チームで中ボス戦を担うようだ。桂のリーダー性から、仲間内からは早くも安心感が生まれている。一方でもう一つの中ボス戦では、

「こっちもじゃ! ワシとリズベットとエギルの三人に、自慢の戦士が数十人も集まれば完璧じゃき! 勝利はこっちのもんぜよ! ハッ! ハッ!」

「また馬鹿笑いが始まったのね……もういい加減慣れてきたわ」

「辰馬のチャームポイントだからな。底抜けで明るいとこっちも安心するよ」

独特な雰囲気を持つ、坂本、リズベット、エギルを筆頭にする戦士達で請け負う考えだ。彼らが従える戦士の中には戦いに不慣れな者もいたが、銀時ら攘夷志士の教えもあって、今ではモンスターにも立ち向かえるくらい成長している。

 チームが続々と決まっていく中で、万事屋はというと――残っていた大ボス戦に割り振られていた。

「それで、俺達は大ボス戦ってわけか。責任が思いやられるな」

「何を言っているネ、銀ちゃん! 大切な戦いだからこそ、私達の出番が回ってきたって事アルよ!」

「そうですよ! ここまで来たら、みなさんの為にも頑張るべきですって!」

「なんでお前らは、やる気に満ち溢れているんだよ」

 早くも後ろ向きな言葉を呟く銀時へ向けて、新八や神楽は十分な元気を見せて反論していく。捉え方に違いはあれども、その目的は三人共に一致させていた。

 一方で二人のアスナも、それぞれの反応を声に出している。

「結局このメンツで、ボス戦も挑む事になったのかよ」

「まぁ、良いんじゃないの。アナタとも一緒に戦ってみたいし」

「……そうかもしれないけど」

 優しく受け入れる本物のアスナに対して、別世界のアスナはつい頬を赤らめていた。素直になれない自分を恥ずかしがっており、もどかしさを覚える始末である。そんな彼女の姿を見て、本物のアスナはそっと心意気を悟っていた。さらに、

「フッ。結局今回も、鬼兵隊が大ボス狩りに努めるという訳か。足なんか引っ張るんじゃねぇぞ、銀時」

「それはこっちの台詞だ。もっとも、お前のようなリーダーがいれば、問題は無いと思うけどな」

「言わせてくれるじゃねぇか……」

高杉や別世界の銀時も、お互いに言葉を掛け合って、気持ちを合わせている。例え別人だろうと、強さを認め合うライバル関係は、本人達とはなんら変わっていなかった。

 続けてユイも本物のキリトにある想いを伝えている。

「みなさん十分に気合が入っていますね! 私にも何か手伝える事があったら、遠慮せずに言ってください! パパ!!」

「ああ、もちろん。いつものようにサポートしてくれるだけで十分だと俺は思うよ」

「ありがとうございます!」

 戦う意志ではなく、仲間を支える意志を彼女は口にしていた。普段よりも気合が入ったユイの覚悟を聞いて、キリトは優しい微笑みで気持ちを受け取っている。強い信頼関係を感じさせる一場面であった。

 それぞれの想いを誓い、挑もうとする解放の為の戦い。万事屋、攘夷志士、別世界の戦士。立場は違うが、全員の想いは一つになっていく。この強い気持ちに触れていき、見守っていたチサも心強さを感じている。

「このメンバーだったら、刺客にも勝てそうですね。改めて頑張ろう、キリト!」

 そして、横にいたキリトにも共感を求めようとしたが――何故か彼は、一度も言葉を発さずに黙り続けていた。その表情も、落ち込み気味に悩んでいるように見える。

「どうしたの? また黙り込んで?」

 心配になったチサが話しかけると、彼は急に横を向いて言葉を返していく。

「チサ。ちょっと僕、勇気出してみるね」

「キリト?」

 意味深な言葉を呟いた後に顔色を急変させていた。弱腰な性格とはまるで違う、真っすぐな態度をチサは不思議そうに感じ取っている。様子を見守っていると、彼は宣言通りに勇気を出して、声を上げてきた。

「あの……みんな! 少し、僕の話を聞いてもらえるかな……」

「って、もう一人の俺?」

「急にどうしたんだ? お前から話しかけてくるなんて珍しいじゃねぇか。一体どんな話なんだよ?」

 話しかけられた銀時らは、キリトの唐突な行動力に驚きを受けている。注目が向けられると同時に、彼はつたない喋り方で話を続けていく。

「それは……ボス戦の話だよ! 実は森の中を彷徨っていた時に見てしまったんだ。統率者が引き連れている刺客の正体に……」

「刺客の正体? そんなものを見たのか?」

「ああ。この目でしっかりとね。みんなにも、ちゃんと真実を受け止めてほしいと思っているんだ……」

 声を途切れさせながら打ち明けたのは、偶然目にした刺客の正体であった。迷いながらも伝えようとする真意を察して、一行はさらに話への興味を寄せていく。

「真実か……。じゃ、詳しく聞かせてもらえるかな?」

「わ、分かっているよ」

 本物のキリトからも声をかけられて、もう一人のキリトはゆっくりと頷き了承する。深く呼吸を交わした後に、彼は一連の出来事について話し始めた。間接的ではあるが、万事屋や仲間達にも刺客の正体が大まかに伝えられていく。

「――という訳なんだよ。僕が見た真実は」

「そんな……私達が戦ってきた刺客って……」

 数分程に凝縮された内容は、想像の遥か上をいっていた。これにはチサを始め、多くの仲間達が激しい動揺を受けている。衝撃から口を閉ざす者や、仕掛けに気が付かなかった自分へ後悔を始める者もいた。もちろん別世界の住人のみならず、万事屋の六人も同じようなショックを露わにしている。

「あんな仕掛けがあったなんて、予想もしていなかったわ……」

「これじゃ益々、サイコギルドと何か関係がありそうですよね……」

 アスナや新八も複雑な表情で思った事を呟いていく。刺客の正体を改めて知って、サイコギルドとの関連性をさらに高めていた。

 同じくしてキリトの仲間達も動揺こそしたが、誰一人彼を疑う事は無く、信じがたい情報を受け止めつつある。

「嘘じゃないって事は明らかだろうな。こいつが嘘を付く訳が無いし……」

「この件が事実なら、今まで俺達はとんでもない勘違いをしていた事になるな……」

 比較的に疑い深いもう一人のアスナや高杉の二人も、彼への信頼性からすんなりと信じていた。思い切ったカミングアウトによって、戦況や作戦も変わり始めている。上手くいけば無条件の解放も不可能ではなかった。希望的な道筋を信じて、別世界の銀時は呼吸を整えてから一行に話しかけていく。

「そうと決まれば、話は簡単だな。このボス戦を通じて、統率者の企みを炙り出そうじゃねぇか」

 そう。彼は既に迷いなどなく、この情報を元に戦いを終わらせるつもりであった。突発的に決まった目標の変更に、仲間達も強く頷いて共感を呼んでいる。みな真剣な表情で、この空間からの脱出を考えていた。

「と言う事は、他の仲間達にはこの件を言わない方が良いアルか?」

「急に伝えれば、さっきの俺達のようになってしまうからな。一部のメンバーだけに伝えて、その後は徐々に伝言で知らせる方法でいくか」

 神楽からの素朴な疑問にも、もう一人の銀時は答えを返している。あくまでもこの場にいる十七人のみが知る情報として、共有への線引きを図っていた。

 そしてもう一つ問題となるのは作戦面である。刺客の正体を暴く計画がそんなすぐに思いつく訳も無く、銀時どころか他の仲間達も悩みを浮かべる始末であった。息詰まり始める空気の中で、突如として坂本がある考えを思いつく。

「あっ、そうじゃ! ワシにいい考えがあるぜよ!」

「辰馬? 何かいい考えが思いついたのか?」

「もちろんじゃ! きっと刺客の正体を暴く方法に違いないからのう!」

 エギルからの問いかけにも自信満々に答えて、彼は三度呑気な笑い声を高らかに上げている。全員が分かり切っている事だが、坂本の考えには期待と同時に不安も付き物であった。とりあえずは話だけでも聞いてみる事にする。

「それで、一体どんな作戦だ?」

「そう焦らんでいいヅラ。簡単に言うとじゃな……囮作戦で本性を誘い出すぜよ!!」

「囮作戦?」

 意気揚々と告げたのは、無難とも言える作戦概要だった。一行が反応に困っている中で、坂本はさらに説明を加える。

「おうよ! 中ボスにしろ大ボスにしろ、仲間内で倒れる相手を決めて、力尽きる演技を見せればいいぜよ! そうすれば、刺客は誤解して本性を露わにする事間違いないきに!」

 倒すのではなく、あえて負ける演技をして、刺客の本性を誘い出す方法であった。機転は利いているが、その分危険を伴う作戦である。演技面や作戦においても、不安の声は少なからず上がっていた。

「……それはいい考えですけど、そんな簡単に騙されるのでしょうか?」

「ていうか、そもそも倒されなきゃいけないんでしょ? 体力を削られるにしろ、ちゃんとした防具を揃えなくちゃいけないんじゃないの?」

 話を聞いていたシリカやリズベットも、作戦への指摘を加えている。すると彼は、強い自信を保ったままある秘策を口にした。

「心配無用じゃ、二人共! ワシらには、とっておきの防具があるからのう……」

「防具? そんなのあったっけ?」

 どうやら作戦を遂行するための防具を、既に用意しているらしい。坂本にしか知りえない情報だと思われたが、その防具は意外にも仲間達から認知されているものであった。こうして、大勢の仲間達が知らないうちに、十七人のみで打ち立てられた作戦は静かに進展していった――

 

 それから数分後。作戦を組み立てた一行は、それぞれ担当するチームに分かれて、アジトから森内部にある解放ステージの入り口まで移動していた。先頭をパクヤサ一派白組が進み、その後を追いかけるように、中ボス担当の桂チームと坂本チーム、本丸を迎え撃つ高杉ら鬼兵隊や万事屋が列を作って歩いている。

 緊迫した空気のまま向かっており、空気を察してか誰一人声を上げる事も無かった。ほとんどのメンバーが近くの仲間とアイコンタクトをとって、互いの様子を確認している。そんな中、遂にパクヤサはステージの入口を発見していた。

「おっ! どうやらここみたいだな!」

 指を指した方向には、何の変哲もない洞窟の入り口が見えている。その中は薄暗く、人の気配すら感じられなかった。みなが警戒心を高めていると、パクヤサは一行に指示をかけて自分だけ進んで状況を確認してみる。すると、

〈カチ!〉

≪シュ!!≫

スイッチを切り替える音と共に、地面から大量の兵士が飛び出してきた。地面下に仕掛けられたトラップで出現している。全員が西洋風の甲冑を模していることから、事前情報で上げられた雑魚兵であると推測していた。

「何!? もう出て来るのか!?」

「ならばここは、俺達が引き受ける! お前達は先に行け!」

 飛び出してきた兵士達に驚きを受けたパクヤサらであったが、すぐに平常心へと戻して、早くも戦闘態勢に移り始める。彼に続いてキバオウやディエベルも剣を構えていた。この入り口一帯は、パクヤサ一派白組によって委ねられている。彼らへ希望を託しながら、一斉に仲間達は洞窟内へと走り出していく。

「言われなくても、分かったらぁ!」

「雑魚にやられるんじゃねぇぞ! 曲者共の集い!」

「誰が曲者や! 後で兄ちゃん覚えておけや!!」

 その途中でキバオウは、二人の銀時から声をかけられたが、本物からは挑発じみた言葉を受け取ってしまう。おかげですぐに怒りを見せて、ツッコミを返す始末であった。

「落ち着け、キバオウ。ひとまずは我らのみで、この雑魚を相手にするぞ!」

「わ、分かっているよ。パクヤサさん……」

 そんな彼に対して、パクヤサが冷静になるよう促してくる。リーダーには頭が上がらずに、あっさり怒りを静められていた。仲間達もひとまず安心したところで、ディアベルが号令をかけて白組の気持ちを一つにしていく。

「よし! ならば……みんな! 覚悟は良いか!?」

〈オー!!〉

「そうか。では、いくぞ!」

 勢いに乗っかったまま、一派は剣や盾、刀を構えて雑魚兵に向かって突進を始めた。そのまま相手へ斬りかかっていき、互いの戦力をぶつける持久戦が行われていく。

 

 一方で、洞窟の奥へと進んでいた残りメンバーは、目の前に立ちはだかった大きな扉の前で動きを止めている。話によればこの扉の向こう側に、統率者の刺客――いわゆる中ボスや大ボスが待ち構えているようだ。

「えっと……扉の中に刺客がいるんですよね?」

「そうだな。ここからは気を引き締めて、戦いに集中しなくてはいけないからな」

 ユイからの疑問に高杉が静かに返答する。扉の中に潜むボスの存在は、かつてのアインクラッドを彷彿とさせる仕様であった。本物のキリトやアスナは既視感を覚えながらも、徐々に戦闘への覚悟を決めていく。同じく銀時ら万事屋の三人も気持ちを重ね合わせていた。緊張感に包まれた一行は、恐る恐る扉を開いて、辺りを注意深く見ながら部屋に入っている。

「ここがボスのいる部屋アルか……」

「中には誰もいないけどな……」

 気配を察しながら神楽や銀時が思った事を呟く。内部には遺跡のような複雑かつ神秘的な模様が広がっており、透明感を漂わせる薄い水色で統一されていた。洞窟内部とは思えない煌びやかな光景と広大なフィールドに戸惑っていると、本物のキリトがある気配に気が付いている。

「いや、待てよ……まさか天井からか!?」

 周りに刺客がいない事に疑問を覚えると、そのまま注意を疎かにしていた天井の方へ顔を上げてみる。そこには……タイミングよく落下する二体の巨大生物の姿が見えていた。

〈ドォーン!!〉

「うわぁ! ……遂に現れたか!」

 着陸すると同時に地ならしが起こり、クラインら一行の足元へ微弱な揺れが襲い掛かる。すぐに揺れは収まったが、刺客は既に目の前に存在していた。中ボスと位置付けられる二体の巨大モンスターは、体格こそ四メートル弱で一致していたが、それぞれ違う姿をしている。

「四足歩行の虫型が一体。二足歩行の角持ち獣人型が一体です!」

「どれもアインクラッドにいなかった個体ね……」

 さらにユイの言う通り、どちらの個体もSAO及びアインクラッドには存在していない。バッタのような四足歩行型のモンスターと、銀色に覆われた大きい角持ちの獣人モンスターは、どのタイプにも当てはまらないのである。

 過去の出来事はさておき、中ボスが姿を現すと同時に、担当である仲間達は一斉に前へと飛び出してきた。

「とりあえず銀時さん達は先に進んでください! この奥にきっと、本丸の大ボスがいるはずですから!」

「進路はワシらに任せるぜよ! 中ボスを相手にしているうちに、さっさと行けきに!」

 シリカや坂本を始め、桂、クライン、リズベット、エギルの四人も、それぞれの武器を構えて戦闘態勢に入る。彼らの後に続いて攘夷志士や戦士達も、同じように武器を構えていく。作戦通りに彼らも、この場を担う考えであった。

「よし! だったら、テメェらに任せたぞ!」

「怪我しないように気を付けてね!」

 走り際にもう一人の銀時やキリトが声をかけると、近くにいたリズベットが言葉を返してくる。

「分かっているって。アンタ達こそ、作戦を成功させなさいよ!」

「もちろん!」

 激励を受けた残りの仲間達は、大ボスがいる刺客の部屋へと足を走らせていく。その隙に桂やエギル達が、中ボスである二体の刺客を相手にする。隠された正体について、意地でも暴くために……

「みんな! 気合を込めて行けよ!!」

「俺達の遥かなる目標の為に……!!」

 声掛けを行った後、果敢にもそのまま刺客へ向かって勢いよく走り出す。勝つ為に戦うのではなく、正体を暴く為に彼らは剣や斧を奮って戦うのだ……

 

 最後に残っているメンバーは、銀時やキリトら万事屋の六人と、別世界の銀時、キリト、アスナ。さらにチサや高杉を始めとした鬼兵隊の面々である。集団として行動しながら中ボス部屋と向かい合わせの部屋に向かうと、そこには既に大ボスであるモンスターが待ち構えていた。

〈グルルァァ!!〉

 風をなびかせる雄叫びが、辺り一面に響き渡ってくる。一行の目の前に姿を現した刺客は、キマイラ型の巨大生物であった。

「アレが大ボスなんですね……」

「ハイエナや蛇にイカって……モチーフがゴチャゴチャしていねぇか!?」

 野性的な迫力に圧倒されるチサに対して、銀時は統一性の無いモチーフにツッコミを入れている。彼の言う通り目の前にいるキマイラは、中心の顔が白い毛で覆われているハイエナ、右側の顔には緑の大蛇が張り付けられており、左側の顔には透明なイカの頭部が隣接していた。さらに尾は日輪を模した盾が装備されている。種族も能力もバラバラのキマイラが、今回の大ボスを務めるようだ。一行がそれぞれの反応を口にしていると、キマイラは早速攻撃を仕掛けてくる。

〈グルルー!!〉

 再び雄叫びを上げた後に、突進を繰りだして銀時らの元へ襲い掛かっていく。

「って、危ない! みんな避けて!」

 攻撃に気が付いた別世界のキリトが、大声で仲間に喚起を促す。タイミングよく気が付くと、全員で左や右へと向かい攻撃をかわしていく。大ボスが戦闘態勢に入ったのを見計らい、一行は次々と刀や剣を装備している。ここで神楽は、手にしていた日傘を近くにいたユイに手渡してきた。

「ユイ! 作戦通りに決めるアルよ!」

「もちろんです! 神楽さん!」

 日傘を受け取ったユイは、しっかりと抱きかかえて前線より離れていく。戦えない彼女の存在が、後に作戦で重要な使命を果たす事になる。それはさておき、丸腰となった神楽であるが、自慢の怪力を武器に先陣を切っていく。

「さぁ、行くアルよ! ホワチャァァ!!」

 真剣な表情でまずは、キマイラの中心顔に向けて殴りかかる。俊敏な動きでキマイラも応戦しようとした時、思わぬ不意打ちを突かれる事になった。

「下ががら空きよ!」

「どこに目を付けてんだ、ゴラァ!!」

 足元には既に二人のアスナが配置されており、レイピアを武器に攻撃を加えていく。

「「ハァァァ!!」」

 繊細なる斬撃とデタラメで激しい斬撃が、キマイラへ順調にダメージを与えている。動きに鈍さが出てきたところで、

「ハッ!!」

神楽の拳が直に命中した。さらなる攻撃を受けて、初戦にして勢いに陰りが出始めている。

〈グルァァ!!〉

 怒りを高めたキマイラは、唐突に変化技を繰り出してきた。蛇の顔からもう一匹の細長い蛇を、イカの顔から伸縮性のある足を使って触手のように形成させる。そして有無を言わさずに、人質を捕えていく。

「えっ? って、うわぁぁ!?」

「僕まで吊るされちゃうの!?」

 残念な事に捕まったのは、新八ともう一人のキリトであった。共に叫び声を上げて困り果てていたが、すぐに救いの手が伸ばされる。

「何やったんだよ、新八!」

「今助けてやるからな!」

 大きくジャンプをして新八を助け出そうとする銀時と、黒い羽を広げて助け出す本物のキリトの二人であった。自慢の木刀や長剣で応戦していき、触手に怯む事は無く斬りかかっていく。

「これでもくらえぇぇ!!」

「ハァァァ!!」

 共に眼光を鋭くさせて、有利な瞬間を見抜き救い出していた。斬られてしまった触手であるが、キマイラは痛がることは無く、たださするだけで事なきを得ている。一方で仲間を助け出した銀時やキリトも、無事に着地して新八やキリトを両手で抱えていた。

「大丈夫かい、もう一人の俺?」

「うん、大丈夫。また迷惑をかけてごめんね」

「そんな事はないよ。仕方のない事だから」

 優しく接しているキリト同士に対して、

「大丈夫か、新八! ちょっとグラスが曇りすぎているんじゃないのか!?」

「って、体の方を気にしろよ! 思いっきり触手で濡れて、ぬめぬめになっているからな!」

銀時はいつも通りの眼鏡ネタで全振りしている。おかげで新八からは、場違いなツッコミを加えられていた。仲間の無事を確認する一方で、キマイラとの戦いはさらなる激しさを増している。

「ここでもお前と共闘する日が来るとはな……タイミングよく斬りかかれよ、銀時!」

「言われなくても分かっている。お前こそミスなんかするなよ」

「当たり前だ!!」

 キマイラへ向けて悠然と立ち向かうのは、別世界の銀時と高杉の二人。刀を手にして走り出しており、真っ向からやり合う姿勢を見せていた。

〈グララァァ!!〉

 キマイラも新たなる攻撃パターンを披露しており、日輪を模した衝撃波を二人へ向けて放っている。しかし、

「かわせ!」

「おうよ!」

手段を予測している二人にとっては、何の問題も無かった。自信良く砲撃を避けると、そのまま相手の両肘に向けて斬りかかっていく。

「とりゃぁぁ!」

「ファァ!」

 威勢の良い声を上げながら、銀時と高杉の攻撃が綺麗に決まっている。長い戦いの中で二人の間にも、阿吽の呼吸とも言える信頼性が高くなっていた。

 キマイラへの攻撃が次々と決まる中で、仲間達も一斉手を緩める事は無かった。

「みなさん怯まないで! 銀時さんやキリトに続いて、立ち向かってください!!」

 チサの掛け声と共に鬼兵隊の面々も、次々にキマイラへと斬りかかっていく。場は優先的に相手の手を見切った銀時達が上手をリードしていた。

 快進撃を続ける彼らの状況に、ずっと姿を隠して監視していた統率者もある考えを思い浮かばせている。

「フフ……奴等の強さも高まりつつあるか。ここいらで正体を明かしても、良い頃合いだろうな……」

 銀時やキリトらの強さを見定めながら、不穏な呟きを口にしていた。彼が思い描く計画が、いよいよ現実味を帯び始めている。

 遂に始まったエリア75解放への戦いであったが、密かに計画していた作戦によって、事態は思わぬ方向へと向き始めていく……

 




 ここで改めて、この長篇の謎についてまとめようと思います。
1 サイコギルドの呼び寄せた敵について
2 早見千佐が呟いた「一つ目と蛇」の謎
3 夢世界の秘密及び銀時らが見ている不思議な夢
4 別世界のキリトが見つけた刺客の正体
5 坂本の提案した作戦概要
6 何故かアインクラッドにはいないボスモンスター

 これらの謎の内、次回の話ではその大半が分かるかもしれません。急展開を迎えるので、覚悟をして見て頂けると幸いです。ではまた次回で!

追記 今回はお盆の関係で、普段とは違った時間帯に投稿しました。
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