剣魂    作:トライアル

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 今更なのですが、前回のラストで集結した十五人って、丁度昭和ライダーの数と一致しているんですね。それらを含めてショッカーと戦うのは、どこか運命的と言うか……
 それはさておき、物語はいよいよ合戦状態へ! かなりマニアックな怪人も集まっていますが、容姿や設定に関しては設定集で補完するので気にしないでください。今回はバトルが中心で進みます。では、どうぞ。




第三十六訓 戦いの記憶

「よし。これで万全だな。後はお前さん次第で、夢世界へ転移することが出来るぞ」

「ワフー?」

 銀時達が夢世界で真実に触れていた一方で、現実世界で源外は、定春にも彼らと同じ転移装置を頭から被せている。咄嗟に察していた嫌な予感を気にしており、保険用として彼に出動を呼び掛けていた。

 するとタイミングが良く、コンピューターにもある異変が生じている。画面全体が赤く点滅しており、夢世界で始まった戦闘を現実側にも伝えていた。

「遂に起きたか……定春よ。アイツらを守ってやってくれよ」

「ワン!」

 源外の必死なる想いを感じ取ると、定春も神妙な表情で理解して頷いている。後は彼の気持ち次第で、夢世界へと転移していく。現在の時刻は午前の三時半。タイムリミットまでの時間は、刻一刻と迫っている……

 

「だったら……いくぞぉぉぉ!!」

「「「ハァァァ!!」」」

 そして夢世界では、一連の黒幕であるショッカーの軍団を倒すべく、攘夷志士や戦士達が共闘して戦いを繰り広げていた。首領に取り込まれたチサを救うために、元の世界へと戻るために、みな一丸となって戦っている。万事屋の五人も別世界のキリトや銀時らと共に、ショッカーの大群へ突き進んでいた。

「来たか……行け!」

 しかし首領は、ひるむことなく冷静に手下へと指示を加えている。彼からの命令に応じて、一部のショッカー戦闘員が先制攻撃を加えてきた。

「「「イー!!」」」

 奇声を発して大きく飛び上がると、足から火を噴射させて、そのまま空中からの奇襲を仕掛けていく。命懸けとも言える体当たりだが、銀時達は一斉怯むこと無く、攻撃を避け続けている。戦場にこだまする爆発音を潜り抜けながら、彼等は果敢にも走り続けていた。

「ええぃ! 何をやっている! 奴等の侵攻を止めるのだ!!」

 立て続けに失敗する奇襲へ苛立ちながら、首領は手下に作戦の続行を伝えている。そこで一人のショッカー戦闘員が、銀時へ突撃した時であった。

「そこをどけぇぇぇ!!」

 唐突に狙いを定められて距離を縮めると、同時に木刀を振り下ろされて、返り討ちを受けてしまう。

「イー!?」

 まるで野球のホームランのように投げ飛ばされていき、とんぼ返りの如く怪人達の元へと戻されてしまった。

「……イー!!」

 落下直後には受けたダメージにより、煙を上げながら爆死。しかしその煙が目くらましの役目を果たして、隙が出来ている間に銀時達との距離が徐々に縮められる。

「タァァァ!!」

 遂に追いついた一行は、真正面から衝突して各々で戦闘を開始していく。大量に出現している戦闘員の軍団を蹴散らしていき、襲い掛かる怪人を相手にしながら、大合戦が幕を開けたのであった。

 

「これでも食らえ!!」

「イィィ!」

 木刀を手にしながらトリッキーに戦うのは、本物の坂田銀時。戦闘員の軍団に恐れを成す事は無く、次から次へと相手取り薙ぎ倒していく。その表情も真剣さを極めており、向かい打つショッカー戦闘員を怯ませるほどである。

「そこをどけぇぇ!!」

「イィィー!?」

 近づいていた戦闘員の肩を掴むと、そのまま持ち上げて襲い掛かる軍団へ向けて突き飛ばしていく。相手すらも巻き込む銀時ならではの攻撃術であった。

「ハァ! フッ!」

「イー!!」

 そんな彼の近くで戦うのは、刀を用いて多くの戦闘員へ斬りかかっている別世界の銀時。本物とは違い正々堂々と挑み、自身の持つ力を誇示している。律儀にも一つの型に集中する姿は、彼の真面目さを際立たせていた。

 二人の銀時が戦い続ける場には、戦闘員に続いて怪人達も乱入していく。

「アーアー!」

「フォフォ!」

「何……!」

「こいつらは……!?」

 槍や強靭な腕を使い、正面から衝突したのは二体の怪人である。本物の銀時と接近戦で張り合うのは、ショッカーに所属するカラス型改造人間のギルガラス。一方別世界の銀時には、ネオショッカー産のゴリラ型怪人マントコングが立ちはだかった。奇しくも攘夷戦争や作者ネタに関する動物が、姿を変えて襲い掛かっていく。

 共に一度相手を振り降ろしながら、静かに距離を遠ざけていると、二人の銀時は互いに背中合わせとなり会話を始めている。

「どうやら奴等が、ショッカーの言う副産物のようだな。見るからに戦闘員とは格が違うようだ……」

「何を言ってんだよ。たかがカラスとゴリラに対策を立てる必要は無ぇよ……キリトの言うように、最後までがむしゃらに戦い続けようじゃないか」

「がむしゃらか……それも悪くはないな」

 気合で乗り切ろうとする銀時の本気を感じ取って、彼は静かに頷いていく。むやみに考えるのではなく、ひたすら戦い続ける決意を彼も固めたようだ。

 そんな二人の元に、容赦なく二体の怪人が突撃していく。

「アーアー!」

「フォフォ!」

 特徴的な鳴き声を発して襲撃を仕掛けようとするが、気持ちを一つにした銀時達にとってはもはや敵ではなかった。

「ちょうどいい! お前等全員、地獄まで送り返してやらぁぁ!!」

「俺達の剣撃を受けてみろ!!」

 木刀や刀を握りしめた後に、二人は大きく飛び上がり、相手の隙を突いたところでとっておきの技を放っていく。

「ハァァ!!」

「アー!?」

 木刀を振り下ろした銀時は、ギルガラスの手にした槍を打ち落とすと、丸腰となった彼に向けて力一杯連続で斬りかかる。木刀ならではの打撃を与えていき、怪人へのダメージを増やし続けていた。

「おらぁぁ!!」

「フォ!?」

 もう一方の銀時も、マントコングの顔や上半身に狙いを定めて、正確な剣裁きで攻撃を繰りだしていく。体毛の目立つ上半身を集中的に攻めて、そのまま押し切ろうとしていた。

 二人の銀時によるがむしゃらな戦法は、見事に成功を収めている。ギルガラスにはカウンター攻撃、マントコングには弱点を突く攻撃が有効打となり、有利となった戦況を物語っていた。その結果……

「アーア……!」

「フォ……!」

鳴き声の迫力も衰退していき、怪人達は地面へ倒れ込み爆発していく。燃え上がる炎を背景にして、二人の銀時は勝利の余韻に浸っていった。

「よし! まずは第一関門の突破だな!」

「いや、喜ぶのはまだ早いぞ。怪人を倒しても、まだ戦闘員がいるのだからな」

 健気にも喜びの声を上げる銀時に対して、別世界の銀時は早くも近くに潜む敵を察している。彼の言う通り近くには、ショッカー戦闘員や隠れ潜んでいたコンバットロイドやチャップも姿を見せていた。所属の違う戦闘員同士で、集団戦法を披露している。

「ってまだいやがったのか……次から次へと湧いてきやがって」

「流石は別世界の悪の組織だな……しぶとさがまるで違う……!」

「どこに感心してんだよ! とにかくさっさと倒して、首領の元へ向かうぞ!」

「分かっている!」

 例え戦闘員だろうと一斉手を抜かずに二人は、武器を握りなおして再び大軍へと戦いを挑んでいく。三度背中合わせとなったが、その表情は互いにフッと笑いかけている。微かに感じている絆を思い起こしながら、二人の銀時は果敢に立ち向かっていった。

「行くぞ!!」

「言われなくてもな!!」

 

「これでも食らいなさい!!」

「さっさと受け上がれや、ゴラァ!!」

 それぞれ異なった戦い方で、レイピアを武器に戦うのは二人のアスナ。上品さを感じさせる本物の繊細な技と、勇ましさを思い起こすもう一人の豪快な攻撃には、表裏一体のコンビネーションを生み出していた。

 おかげで続々と登場するデストロン戦闘員やチャップも、すぐに一掃する始末である。互いに戦闘力の高い二人だが、密かに奇襲攻撃が迫っている事にまだ気が付いていなかった。

「ん? アレは……」

 戦闘員の大群と戦う中で、本物のアスナが気付いたのは紛れ込む怪人の存在である。その正体はゴルゴム直属の改造人間ヤギ怪人と、クライシス帝国所属のムカデ型異性獣ムンデガンデであった。皮肉にもアインクラッドに存在していたボスモンスター、グリームズアイとスカルリーパーを彷彿とさせる怪人達である。

 それはさておき二体の怪人は、密かにアスナ達へと標準を合わせて、各々の遠距離攻撃を準備していた。

「まさか奇襲を仕掛けるつもり? だったら……」

 事の重大さに気が付いた本物のアスナは、事態の回避の為にやや強引な手段を思いつく。迷っている暇などは無いので、早速行動に移し始めている。

「ねぇ、私! 一旦場を離れるわよ!」

「ハァ? 何を言って――って、どういうことだ!? まだ戦っている最中だろうが!?」

 強引にももう一人の自分の両腕を掴むと、自らの青い羽を広げて空中へと逃げ込む。彼女達が場を離れたと同時に、二体の怪人による光線が発射されていく。

〈ドゥーン!〉

 たった僅かな秒差で、攻撃を回避していたのだ。

「おのれ、小娘共め!!」

「俺達の作戦に気が付きやがって……!」

 人間と同じ言葉を発しながら悔しがる怪人達。一方でアスナら二人は、危機を脱した事に一安心している。

「ふぅ……なんとか間に合ったわ」

「って、お前……最初から気が付いて、アタイを上空まで運んだのか?」

「そうよ! と言うか、そろそろ下ろして戦いに戻らないと……」

 敵へ狙われない為にも、今すぐ地上へ戻ろうとするアスナであったが、もう一人の自分はある作戦を閃き早速伝えていく。

「いや、このままでいい! おい、アタイ! このまま敵の元まで連れて行って、蹴散らしてやろうぜ!!」

「えっ? それって」

「がむしゃらに戦うんだろ? だったら、多少の無茶は承知の上だよ!」

「……分かったわ。アナタに免じて行きましょう!」

「気が合ってきたな! 正面突破で一気に走り抜けるぜ!!」

 冷静に場を進めるアスナでさえも、彼女の作戦には同意して、無茶を覚悟に突き進むつもりであった。両腕をがっちりと掴んだところで、空中から急降下して怪人やチャップのいる大群へと突進していく。

「いたぞ、奴等だ!」

「ここで撃ち落としてやらぁ!」

 発見するなり二体の怪人は、再び紫や赤色を模した破壊光線を角や目から発射する。だが、アスナらは怯むことなく勢いのままに降下を続けていた。

「今だ! 離せ!」

「分かったわ!」

 頃合いとなった時には、アスナが掴んでいた両腕を離して、彼女の自由を解放している。風の抵抗を利用して、もう一人のアスナは素早さを増して怪人達の元へと突っこんでいく。そして――

「くたばれ、ヤギ野郎ォォ!!」

「グワァァ!!」

ヤギ怪人の特徴的な角に狙いを定めて、力強く斬りかかっていった。攻撃手段を失ったことで徐々に弱体化しているが、この事実に気付くことなく、彼女はさらなる追い打ちを加えていく。

「もういっちょくらえ!!」

「ブホォォ!!」

 レイピアを使わずに、勢いのまま殴りかかった拳で、ヤギ怪人を吹き飛ばしてしまう。本物とはまた違った技を、彼女は惜しげもなく披露している。

「おい、大丈夫か!?」

「相手の心配よりも、自分の心配をした方が良いんじゃないかしら?」

 隙を見せるムンデガンデに対しては、本物のアスナが攻撃を仕掛けていく。空中から向かっていき、レイピアを強く握りしめていると――

「ハァァ!」

〈グサァ!〉

「クッ……!?」

ムンデガンデの体へ突き刺していき、一撃必殺を加えている。かつての太陽の子を思わせる技で、アスナも怪人へとどめを刺していた。

「これで……」

「終わりよ!」

 勝利を確信した二人のアスナは、誇らしげに笑みを浮かべると、手にしていたレイピアを下していく。同時に必殺技を受けた怪人達は、倒れ込みそのまま爆発していった。燃え上がる炎を背景に、彼女達も勝利を手中に収めたのである。

「いや~作戦成功だぜ!」

「がむしゃらって言うのも、悪くはないわね!」

 お互いに成功を祝うと、タイミングよくハイタッチを交わしていく。真逆な性格のアスナ達であったが、むしろ功を奏した結果を残していた。

「さぁて、残りは雑魚狩りだな!」

「一気に倒しちゃいましょうか!」

 そして場に残された戦闘員を倒すべく、再びアスナらは戦闘を開始していく。互いの信頼を糧にして、二人はより強くなっていった――

 

「行くぞ、クライン殿!! 侍の底力を見せつけようではないか!!」

「もちろんだぜ、桂さん!!」

 一方でこちらは、戦闘員の大群へ突撃していく桂とクライン。侍魂を心掛ける二人は、例え別人でも本物の同じ縁を築いている。そんな彼らが相手にするのは、ドグマファイター達を率いている怪人であった。雷魚をモチーフとする怪人ライギョンと、釣竿の能力を持つ改造人間ツリボットが幹部に代わって指示を加えている。まずは戦闘員を倒すしか、進む道は無かった。

「ハァ! トォワ!」

「オラよっと!」

「「ギギ!!」」

 すぐに衝突すると、彼等は素早く戦闘員達を一掃していく。拳法を用いて戦うドグマファイターだが、侍達の剣裁きには太刀打ちできず、次から次へと倒されてしまう。場にいたドグマファイターを全て倒しきると、ここでようやく怪人達が動きだしていく。

「ギャハー!」

「何!? 遂に動きだしたか……!」

 ライギョンの持つ巨大な口が、桂の刀へと噛みつき攻撃手段を防いでしまう。力技で封じ込めており、攻撃手段すら奪ってしまった。

「桂さん!? 大丈夫か!?」

「隙ありだ!!」

 桂のピンチにより呆気にとられるクラインにも、ツリボットの魔の手が迫る。右手に装備した釣竿で、クラインの持つ刀を引っかけて、ひょいと盗まれてしまった。

「あっ、しまった!?」

「コイツは頂いていくぜ!」

 主要武器を奪われたことで、丸腰となってしまうクライン。さらに彼だけではなく、桂も刀を取り返せずに、ライギョンから押し倒されてしまう。

「グハァ!」

「桂さん!? 大丈夫か?」

「何とかな。しかし、こちらも刀を奪われてしまったな……」

 傷は負わなかったものの、どちらも武器を取られたことで、劣勢へ追い込まれてしまった。刀を手にした二体の怪人が差し迫り、まさに絶体絶命である。しかしこの状況で、桂はある打開策を思いつく。

「あっ、そうだ! これならばきっと、勝てるやもしれんぞ!」

「おっ? 何か作戦でも思いついたのか!?」

「ああ、クライン殿! 今から刀になれ!」

「……はい?」

 一度は期待を寄せていたクラインであったが、桂からの突拍子もない言葉には、つい反応に困ってしまう。首を傾げている間にも、怪人達の侵攻は続いている。

「「ハァァァ!!」」

「まずい、来るぞ! こうなったらヤケだ!」

「ええ!? ちょっと桂さん!? 急に何をして――ウワァァァァ!!」

 クラインからの了承を得ずに、桂は強引にも自ら考えた作戦を実行へと移していく。彼の両足を掴んで持ち上げると、そのまま刀のようにして装備していた。真面目な表情で接する桂であるが、クラインには訳が分からずに混沌とした表情を浮かべている。この常軌を逸した行動には、二体の怪人も立ち止まり困惑を口にしていく。

「おいアイツ。仲間を武器にしやがったぞ!」

「まさか、こっちに向かってくる気か!?」

 警戒心を高ぶらせているが、その分足元には一瞬の隙が出来始めていた。この好機を桂が、見逃すはずなど無い。

「今だ! 行けェェ!!」

「ギャャャャ!!」

「「ええっっっっ!?」」

 なんと今まで持ち上げていたクラインを突き放し、怪人達の足元へ向けて投げ飛ばしてきた。自由すぎる桂の攻撃はクラインのみならず、怪人達も驚きを受けてしまう。奇想天外な技に怪人達も避けることが出来ずに――

「「「ブハァァァ!!」」」

クライン共々三人でダメージを被っていた。その反動によって、奪い取っていた刀も勢い余って手放していく。これこそが、桂の狙っていた真の目的である。

「作戦通りだ!」

 文字通り奪還作戦が成功すると、彼は勢いよく飛び上がり、二本の刀を取り戻す。同時に怪人へ向けて、必殺技の準備を進めていた。

「こいつで終いだ!!」

 勢いを付けたまま突き進み、空中に舞う怪人へ渾身の剣術で斬りかかっていく。乱舞とも言えるこの技によって、ダメージを負った怪人達はさらなるダメージを増やしている。

「「グハァ! ……アァァァ!!」」

 共に地面へ叩きつけられると、喚き声を上げて遂には倒されてしまった。爆発で燃え上がった炎を背景に、桂もかっこよく着地してポーズを決めている。

「やったぞ、クライン殿! 刀も取り戻し、怪人共も倒すことが出来たぞ!」

「ハハ……桂さん。せめて事前に伝えてもらえるか? 俺……決めポーズすらやっていないから」

 彼の横ではクラインも着地していたが、体勢を間違えて軽い痛みを負ってしまう。武器のみで利用された彼にとっては、精神的にも悔いの残る戦いであった。そんな彼をいたわりながら、二人の侍の戦いはさらに続く。

 

「ハァァ! ホワチャァー!」

 大量に襲い掛かる戦闘員を次々に薙ぎ倒していくのは、万事屋の一員である神楽。戦闘民族である夜兎の特性を生かしながら、徒手空拳の戦法でさらなる勝利を得ていく。拳法を使うドグマファイターや、格闘技を多用するゲルショッカー戦闘員すら、彼女には敵わずにいた。作戦通りに戦闘員を蹴散らしていく神楽に、いよいよ怪人が差し迫ってくる。

「チィーッ!」

「何!? こいつは……」

 眼前に見えたのは、蜂の能力を持ったガランダ―帝国直属のハチ獣人。手や口に針を装備した奇怪な容姿であるが、神楽は嫌悪感を抑え込みさらなる闘志を燃やしていた。

「へんてこな奴アルナ! 私が一撃で倒してやるネ!!」

 強気にも豪語しながら戦いへ挑んでいる。神楽からの先制で始まったタイマン勝負だが、彼女の言う通りに勝負は一瞬で決まってしまった。

「くらえアル!!」

「チィーッ!?」

 強い自信を保ちながら、連続で拳を用いた打撃を加えている。自らの隙すら与えない連続攻撃は、相手の反撃すら封じてしまう。

「これで終わりアル!!」

「チィーッ!!」

 そしてとどめの一撃として手を真っすぐにしながら、手刀のように相手へと斬り込みを入れていく。かつての野性的な戦士を彷彿とさせる技で、この戦いへ終止符を打とうとしている。

「……チィーッ!!」

 結果ハチ獣人は、蓄積ダメージにより呆気なく倒されていった。黄色い爆発を背景にして、神楽も渾身の決めポーズで勝利への達成感に酔いしれていく。

「やったアル! 早く決着が付いて良かったアル……」

 内心は嫌悪感を抱いていた彼女にとって、早期の決着は本望であった。思わず一安心して、静かに呼吸を整えていく。

 戦闘を終えた神楽であったが、彼女の近くでは新八が木刀を手に戦いを続けている。戦闘員の軍団を倒しきった後に、ショッカー怪人であるジャガーマンを相手取っていた。

「ヒョーオウ!!」

「くっ……! 中々こいつも強いな」

 スティックを武器に使っており、木刀とぶつけ合いながら互角の戦闘を繰り広げている。豹の特性を持つ怪人ジャガーマンは、かつて新八を虐げていた茶斗蘭星の天人を思わせる容姿をしていた。もちろん新八も密かに照らし合わせており、自らの士気を高めている。

「あの時を思い出すけど、今は違う! 僕だって、強くなっているんだ!!」

 顔つきも真剣さを極めながら、心からリベンジを誓っていた。集中力を高めながら、遂に運命の時がやって来る。

「そこだぁぁ!」

「ヒューオウ!」

 気合の入った一騎打ちが始まりを告げていた――はずだったか、

「ホワチャャ!!」

「ヒューオ!?」

「……えっ?」

場の空気を読まずに神楽が突拍子も無く割り込んでしまう。大きく飛び上がりジャガーマンへ向けて、強力な頭突きを与えていく。この不意打ちは予想外だったようで、大きいダメージを体へと負ってしまう。

「ヒューオン……!」

 挙句の果てには倒れ込んでしまい、鳴き声を上げながら爆死してしまった。爆発の背景には神楽が立ち上がり、またもや別の決めポーズで勝利を喜んでいる。

「やったアル! 見事に勝利ネ!」

「ちょっと神楽ちゃん!? ここ僕のターンなんだけど!? 勝手に割り込んで見せ場を奪わないでくれる!?」

「何を言っているネ。新八の見せ場が遅いから、私が代わりにとどめを刺したんだろうが。ありがたく思えよ、コラァ」

「人の話を聞いてた!? 僕だって爆発を背景にポーズを決めさせてよ! そこがバトルの醍醐味だろ!」

「いちいちうるさいアルナ……だからお前は新一号じゃなくて、新八号アルよ」

「そんなライダーいねぇよ! いいから見せ場を取らないでって!」

 見せ場が取られたことで怒りをぶつける新八であったが、神楽は一斉謝らずに口論を長引かせていた。戦場で行われる万事屋らしい口喧嘩は、どこか安定な雰囲気を醸している。現に岩陰で戦いを見守っていたユイも、クスッと笑みを浮かべていた。

「新八さんに神楽さんも、いつも通りの調子ですね!」

 戦う事の出来ない彼女は、応援と言う形で一行をサポートしている。常に場を見張っている彼女であるが、その背後には刻々と怪人が迫ろうとしていた……。

「ん? この気配は……?」

 ただならぬ殺気に気が付き、思わず後ろを振り返るとそこには――骸骨とカマキリを模した怪人とショッカー戦闘員二体がユイを取り囲んでいる。

「キャ!! あなた方は……?」

「チッ、見つかったか! ならば、お前を人質にとるぜ! かかれー!!」

「「イー!!」」

 双頭のドクロを装着したカマキリ奇械人は、見つかると同時に戦闘員を使役してユイを取り押さえていく。子供相手にも関わらず、力でねじ伏せて人質にしようと企んでいた。

「キャャャ!! 離してください! 人質なんて卑怯ですよ!!」

「やかましい! 大人しくしなければ、この鎌で貴様を切り裂いてやるぞ……ギリギリ!」

 遂には奇械人によって捕らえられてしまい、右腕にある鎌で脅しをかけている。ユイも必死で抵抗するが、ショッカー戦闘員の取り押さえにより行動すらも制限されてしまう。

 彼女の叫び声を聞きつけて、口喧嘩をしていた新八と神楽も、表情を変えて怪人らの方へ目線を向けていた。

「って、ユイ!? 捕まったアルか!?」

「その通りだ! こいつの命を救いたければ、武器を捨てて降伏するがいい! さもなければ、どうなるのか分かっているだろうな?」

「くっ……卑怯な真似を!」

 ユイを人質にして無理難題を押し付ける奇械人。これには新八や神楽も対応に困り、慎重に動かざるを得なかった。不安げな表情で彼女も助けを待っているが、ここで予期せぬ助っ人が姿を現していく。

「さぁ、どうする――って、うわぁぁ!?」

「「イー!?」」

 意気揚々と脅しをかけていた奇械人の横から、白い塊が割り込み突進を食らわせている。おかげでユイは拘束から解放されて、事なきを得ていた。

「えっ? 一体誰が……?」

「ワン!」

「さ、定春さん!?」

 振り返るといたのは、ふわふわの毛を揺さぶらせる万事屋の巨大犬……定春である。彼もまた転移装置を使って、この夢世界へとやって来たのだ。

「さ、定春!?」

「来てくれたアルか! ユイを助けてくれて、ありがとうネ!」

 丁度良いタイミングで駆けつけた定春に、新八や神楽も思わず脱帽している。一方の彼は、ユイの顔をじっと見つめてある気持ちを伝えていた。

「ワン!」

「……もしかして、私に乗って欲しいんですか?」

「ワフ~」

 それは彼女と一緒に戦う決意である。戦えないユイを補佐するために、自らの意志で彼女を助ける考えであった。いつもとは違う本気の眼差しで気持ちを察すると、ユイも深く頷いて定春の頬をさすっていく。真剣な表情でこちらも決意を固めていた。

「分かりました! 私も一緒に戦います! 行きましょう、定春!」

「ワワン!!」

 互いの意志を疎通したところで、彼女は定春にまたがり準備を整えていく。強力な相棒へ指示を加えて、早くも行動へ移ろうとしていた。

「おのれ~一体何が……?」

 不意打ちを食らい油断を見せるカマキリ奇械人らに向けて、定春が勢いよく差し迫っていく。そして、

「倍返しです! 行っけぇぇ!」

「ワフ―!!」

「って、ギリィィィ!!」

「「イィィィ!!」」

タックルのように体当たりを与えていき、奇械人ら三体はあえなく敗北。揃って倒されたところで、爆発してしまった。真っ赤に燃える炎をバックに、ユイや定春も喜びを分かち合っていく。

「ワフ~!」

「やりましたね、定春さん! 大金星ですよ!」

 頑張りを見せた定春に対して、ユイは顔をさすり仲睦まじくじゃれ合う。彼女の意外な活躍には、見守っていた神楽らも賞賛していた。

「やったネ、ユイ! これで戦えるようになったアルナ!」

「ユイちゃんまで活躍するなんて……これじゃ、僕のメンツが」

「そんなに落ち込まないでください、新八さん!」

「うわぁ……グサッと来る台詞だ」

「ワン!」

 子供らしい純朴な笑顔の前には、新八もさらに落ち込んでしまう。彼の不遇な扱いを慰めながら、三人と一匹はさらなる協調性を高めていく。

 

「はぁ! おりゃ!」

「せい! やー!」

 そしてキリトら二人も、果敢に戦闘員を相手取り戦いを続けていた。ナイフを手にするショッカー戦闘員や、スティックを使うデストロン戦闘員を倒していき、集団戦法に負けじと抗い続けている。熟練されたキリトの二刀流による技と、がむしゃらに戦い続けるもう一人のキリトによって、場の主導権は二人が握っていた。とそこへ、怪人達も乱入していく。

「シャーシャー!」

「何!? こいつは……」

 獣のように突進を繰りだしたのは、デストロンの改造人間ジシャクイノシシ。名前の通り磁石と猪を合成した改造人間であり、左手に装備した巨大磁石には、キリトも警戒心を露わにしている。

「ニャアーオゥ!?」

「おっと……! 危なかった……」

 さらにもう一人のキリトにも、ゲドン産である黒ネコ獣人が襲い掛かってきた。一瞬の殺気を感じて、不意打ちを回避している。正体を現した怪人達によって、場の流れは変わりつつあった。キリトももう一人の自分と合流して、怪人への警戒を呼び掛けている。

「気を付けろ! 奴等は只者じゃない気がする……」

「うん。気を付けるよ」

 冷静にも二人は、怪人が持つ特性を見定め始めていた。すると怪人達も、キリトらとの距離をとって秘策を取り始めていく。

「さて……俺があの二人をぶっ倒してやる!」

 強気に前へと出てきたのは、キリトが警戒していた相手ジシャクイノシシ。左手に装備した巨大磁石を使い、何かを引き寄せるようだが――

「……今だ!」

「えっ? あっ!?」

彼の狙いはキリトの持っていた長剣である。こちらも武器を奪い去り、相手の攻撃手段を無くす作戦に出ていた。その目論見は当たっており、もう一人のキリトが持っていた一本の剣を引き寄せる事に成功している。

「よしよし、やったぞ!」

「そんな……僕の武器が奪われるなんて」

「やっぱりあの磁石は、相当な磁力を持っているのか……?」

 辛うじてもう一方の剣は無事であったが、油断を許さない状況は続いていく。しかめっ面で本物のキリトも対策を練っているが、既に標的は彼に向いていた。

「お前の剣も引き寄せてやる!!」

「うわぁ!? くっ……!!」

 必死にも磁力に抗うキリトであったが、強力な磁場の前では力に限度があり、遂には握っていた二本の長剣を手放してしまう。

「しまった!!」

「これでお前達は――って、重!? なんだこの剣は!!」

 優勢を図っていたジシャクイノシシだが、例外的にもキリトの主要武器であるエクスキャリバーには、重量の影響で持ち上げる事すら困難になっていた。二兎を追う者は一兎を得ずのように、欲張った仕打ちを彼は受けている。

「アレ? 君の剣って、そんな重たかったの?」

「認めた者しか持つことを許されないからな……その影響かもな」

 エクスキャリバーの特殊な仕様によって、最悪の事態を防いだ二人。場の流れはキリト達の方へ風を吹かせており、敵が戸惑う間に長剣の奪還へと動いていく。

「と、とりあえずこれを使って! 一気に取り返そう!」

「おう、もちろん!」

 もう一人のキリトが守り抜いた黒い長剣を手にすると、本物のキリトが羽を広げて、ジシャクイノシシの元へと飛び立つ。長剣が密集している巨大磁石に狙いを定めており、目つきも段々と鋭く変わり集中力も高めている。

「この、動け! って、何――」

「ハァァァ!!」

「シャャャ!!」

 怪人が隙を見せている間に、キリトは剣を振り下ろして、巨大磁石を切り落としていく。片手持ちであろうと、キリトが強い事に変わりは無かった。三本の長剣を奪い返して、作戦を成功させている。一方のジシャクイノシシは、唯一の武器を切られた事で悲痛な叫び声を上げ続けていた。

「シャャ! おのれ……黒の剣士め!!」

 激しい怒りを露わにしながら、その矛先をキリトへと向けている。感情のままに反撃を仕掛けようとしたが――

「そうはさせるか!」

彼も簡単には退こうとしていない。地面に落ちたエクスキャリバーと黒い長剣へ武器を持ち替えると、突進するジシャクイノシシに得意の必殺技で対抗していく。

「今だ! ハァァァ!!」

「何!? グワァァ!?」

 容赦のない一撃を次々に浴びせる連続斬りを、この最中で発動させていた。素早く正確に攻撃する姿は、かつてのSAOで培った昔の自分を彷彿とさせている。

 そんな彼の猛攻を目にして、もう一匹の怪人も黙ってなどはいなかった。

「ニャアーオゥ!!」

「さ、させないよ!」

「二ャア!?」

 奇襲を仕掛けようとする黒ネコ獣人であったが、もう一人のキリトの乱入によって、あえなく防がれている。未遂に終わった直後、彼は地面に落ちていた二本の長剣を手にして、そのまま獣人へ向けて技を解き放っていた。

「ぼ、僕だって戦えるんだ! 行けぇぇ!!」

「ニャアー!?」

 真剣な表情へ急変させると、こちらも連続斬りを発動させて斬りかかっていく。もう一人の自分と共に鍛え上げた渾身の技で、この戦いへ決着を付けようとしていた。動きにはブレがあるが、それでも技としての威力は格段に上がっている。

 信念を貫く二人のキリトによる猛攻も、数秒後には終わりが見えてきた。

「「ハァァァ!!」」

「シャャャ!!」

「ニャャャ!!」

 最後の斬撃が綺麗に決まると、怪人達は蓄積ダメージによって喚き声を上げて爆発。爆風に舞う火花がちらつく中で、二人のキリトは長剣を下ろして、勝利の余韻へ浸っていく。その表情はどちらも誇らしげであった。

「や、やったね! もう一人の僕!」

「ああ、よくやったな。もう一人の俺」

 つい喜びを溢れさせている別世界のキリトに対して、本物のキリトは率直に彼を励ましている。弱気で強気な二人のキリトも、抜群のコンビネーションで戦場を勝ち進んでいた。

 

 戦闘員との戦いも終盤を迎える中で、シリカやリズベットも仲間に負けじと奮闘を続けている。

「ピナ! ウォーターブレスを発射です!」

「ナ……ナー!!」

「イィィィ!!」

 泡や水を操るピナを相棒に従えて、ショッカーに立ち向かうシリカ。彼との息の合った戦法を見せながら順調に戦っていた。

「そうはさせませんよ! ヤー!」

「イー!!」

 自身もダガーを用いて、短剣を持つコンバットロイドらを一掃していく。彼女に続きリズベットも、勢いに乗って戦いを続けていた。

「シリカに負けてられないわね! アタシも行くわよ! セイ!」

「イィィ!!」

 トゲを付着させた棍棒メイスを振り回しながら、混成の戦闘員軍団を次々に倒していく。可愛くて強い女戦士達の快進撃によって、周りにいた戦闘員達は全て倒されてしまった。

「よし、やりました!」

「ナー!」

「お疲れ~。これで一段落着いたわね」

 苦労を労い、勝利を分かち合う二匹と一匹。休憩がてらに心を休ませている彼女達であったが、実は背後から新たな怪人が刻一刻と迫っている。

〈ヒュル!!〉

「ん? えっ――って、キャャャ!!」

「シ、シリカ!?」

「ナー!?」

 なんと彼女の足元に植物のツタが絡み、そのまま持ち上げられてしまった。その先にはなんと、ショッカー怪人の一体であるドグダリアンが堂々と姿を現している。

「ようやく捕まえたぞ、小娘よ! ヒーヒ!」

 老婆のような声を出しながら、不気味にも引き笑いで状況を楽しんでいた。人喰い花をモチーフとするドグダリアンは、かつてシリカに襲い掛かった植物系のモンスターを思わせている。状況が酷似している為、当然ながら彼女もデジャブを感じ始めていた。

「って、またこのパターンですか!? 恥ずかしいから、やめてくださいよー!!」

 ツッコミを入れながら彼女は、自身が感じている恐怖心と羞恥心を赤裸々に吐き出している。左手でスカートを必死に抑え込みながら、右手に持ったダガーを振り回し抵抗を続けていた。不憫さや危機を感じさせる訴えは、リズベットやピナにも届いている。

「ナー!?」

「シリカ! 今助けに――」

 と彼女らも救出に向かおうとした時であった。

「そうはさせるか! イチィィィ!」

「って、また怪人なの!?」

 行く手を阻むように白い怪人が堂々と立ちはだかる。その正体は同じくショッカー怪人のシードラゴンであった。タツノオトシゴを模した改造人間で、右手に装備している鞭を使いリズベットへ襲い掛かろうとしている。

「お前らを真っ黒に染めてやるぜ! イチィィィ!」

「ハッ! 避けて、ピナ!」

「ナー!」

 脅しをかけながらもシードラゴンは、鞭を振り回しながら攻撃を仕掛けていく。ただならぬ恐怖を感じてリズベットやピナが避けていると、近くにあった岩石へ鞭が当たっている。すると岩石は黒く焦げあがっており、あられもない姿へと変えられていた。

「これって……」

「ナ……」

 予想外の出来事に彼女らも釘付けになっていると、シードラゴンは自ら説明を繰りだしていく。

「俺の鞭には大量の電流が組み込まれているのだ! これでお前らも感電死させてやる! イチィィィ!」

 自白後も態度を変えることはなく、リズベットらを倒すために襲撃を再開している。当然彼女達も警戒心を高ぶらせながら、意地でも攻撃を避け続けていた。緊迫感漂う攻防であるが、傍から見ればただの追いかけっこでしかない。逃げ続けている間にも、シリカはまだ吊るされたままであった。

「助けてください~! 全然脱出出来ないんですけど~!」

「ヒーヒ! 苦しむがいい! いつでもお前を倒す事は出来るのだからな!」

 悲痛なる想いを叫び続けながら、未だに彼女はリズベットらの助けを待ち続けている。戦況は依然として劣勢が続き、怪人の能力によりどちらも追い込まれてしまった。捕らわれてしまったシリカと、電流鞭を避け続けるリズベット。逆転の可能性は低いと思われていたが――

「くっ……どうすれば? ……あっ、そうだ!」

ここでリズベットがある作戦を閃いている。もし上手くいけば、怪人達による自滅が可能となる作戦であった。早速ピナに指示を加えて、実行へと移し始めている。

「ピナはシリカを救い出して! アタイはあの白い怪人をおびき寄せるから!」

「ナー!」

 彼女からの指示を聞き取ると、ピナは高速でシリカの元へと向かい、足元に絡んでいるツタをかじり始めていた。

「ピ、ピナ!? ようやく来てくれたんですね!」

「ナー!」

 主人を助けるためにも、その期待に応えようとしている。しかしドグダリアンは、ピナの行動を快く思ってなどいない。

「何をしている! いいからツタに噛みつくな!」

 もう片方の手で新しい鞭を作り出し、ピナへ向けて攻撃を始めていた。その直後に彼は場を離れて、空中を飛行しながらドグダリアンの気を誘っている。

 一方のリズベットは、一か八かで攻撃を避けながら順調に作戦を進めていた。

「ハァ! よっ!」

「いい加減感電しろよ、小娘!」

 彼女を執念深く追いかけるあまりに、怪人は周りすらも見えなくなっている。

 頃合いを見定めたリズベットは、ドグダリアンとの距離を縮めながら、遂に実行へと移し始めている。

「今よ! ハァァ!」

 助走を付けて大きく飛び上がると、手にしていたメイスを握りながら、シリカを捕えているツタへ狙いを定めていく。

〈シュパーン!〉

 トゲの付いた部分を利用して、先程ピナが噛みついた箇所を切り裂いていった。この直後にピナはシリカの元へと駆け寄り、リズベットも落下する彼女を抱きかかえて救っている。

「リ、リズさん!?」

「作戦成功よ! 後はアイツらが自爆するのを待つだけよ!」

「自爆? 一体何を……」

 意味深な言葉につい首を傾げているが、その理由はすぐに把握できていた。

「イチィィィ!」

「って、待て! こっちへ来るな――ギャャャ!!」

「イチィィ!?」

 なんとシードラゴンの振り回した電流鞭が、ドグダリアンの体へと触れて感電を起こしたのである。同時にシードラゴンも電流を浴びる事となり、ダメージを負う羽目になった。さらにドグダリアンは花をモチーフとしており、電流から発せられた火が引火して体中を燃え上がらせていく。シードラゴンにも引火しており、結果二体の怪人は互いの能力がアダとなってそのまま倒れ込み、大きく爆発していった。燃える炎を背景として、リズベットは地へと着地しシリカを解放していく。

「こ、これは凄い爆発ですね……」

「まぁ相手は植物系の怪人だからね。ギリギリで思いついた考えが功を奏したってわけね」

「ナー!」

「むしろ危機一髪ではないでしょうか……?」

 相打ち作戦の成功を喜ぶリズベットやピナであったが、シリカは野暮にも賭けのある作戦だと聞きどこか複雑な心境を抱えていた。いずれにしろ助かった事に変わりは無いため、丁寧に感謝を伝えていく。こうして彼女達も気を取り直して、次なる戦いへと進んでいた。

 

「行くぞ! エギルに辰馬!」

「おう!」

「了解じゃき!」

 そして高杉、エギル、坂本の男三人も順調に戦いを勝ち進めている。眼前に広がっている三体の怪人や戦闘員の大群を打ち倒す為にも、横列を崩さずに突き進んでいった。

「くたばり散るがいい! ムウー!」

 すると怪人の一体であるGODの改造人間ミノタウロスが、三人の行く手を阻んでいく。角の手から次々と遠距離攻撃を放ち威嚇を図ってきたのだが――

「その手には乗らんぞ!」

「ハァァ! 恐れずに進め!」

三人には一斉効いてはいなかった。ただひたすらに走り続けて、自らの意志を曲げずに行動している。爆発を潜り抜けて、遂に真っ向から衝突していく。

「ハァ! トォア!」

「オラァ!」

「ここぜよ! トォ!」

 刀や斧と言った武器を握りしめて、まずは多勢に襲い掛かる戦闘員らと戦っていく。拳を用いるゲルショッカー戦闘員や、ナイフを扱うコンバットロイドと戦法は各々まばらであったが、三人は気にすることなく攻撃を続けている。

 素早い剣裁きで圧倒的な実力を見せる高杉。巨体を生かして豪快な技を披露するエギル。正確かつ軽い身のこなしで戦う坂本。戦い方は違うがそれぞれの持ち味を現していき、次々に戦闘員を一掃していく。

「ギィーッ!!」

「イー!!」

 遂には場にいた数十人ほどの戦闘員達を、数分の間に全て倒しきってしまった。勝ち進み勢いをつける高杉らの元に、こちらも怪人達が襲い掛かってくる。

「ムウー!!」

「くっ! とうとう怪人共のお出ましか!」

 エギルに真っ向から挑んだのは、先ほど遠隔攻撃を放ってきたミノタウロスであった。手の甲に付けられた半円状の盾を装備して、肉弾戦で勝負を挑んだのである。

「ソーリィ!」

「こっちはサソリとトカゲか……面白い組み合わせぜよ!」

 坂本にはゲルショッカー出身の合成怪人、サソリトカゲスが立ちはだかった。二つの動物の特性を生かして、自信良く勝負を挑んでいる。そして高杉にも一体の怪人が戦いを仕掛けてきた。

「ここは俺が相手をしてやる!」

「ふっ……受けてやろうじゃないか」

 バダン帝国のサイボーグ、バラロイドが姿を見せていく。植物上のツルを使って、接近戦で決着を付けるようだ。

 三対三で始まった個別の一騎打ち勝負。互角の戦いが続くと思いきや、勢いの付けた高杉ら三人が早くも決着を付け始めている。

「フッ……オラァァァ!!」

「ムウー!!」

 斧と盾が激突して、力任せの勝負が続いていくエギル対ミノタウロス。持久戦へと持ち込む中で、追い風が遂にエギルへと向き始めていく。

「まだだ! ハァァ!!」

「ムウー!?」

 溜め込んでいた制御を徐々に解除していき、自分の持っている力を斧へと集中していた。次第にミノタウロスも押されてしまい、劣勢へと追い込まれていく。

「ならばこっちもじゃ! せい!」

「ソー!?」

 時を同じくして坂本も、秘策であった技を繰り出していく。大きく空へ飛び上がっていき、空中を一回転しながら、サソリトカゲスへと攻撃を仕掛けてきたのだ。

「行けぇぇ!!」

「ソーリィ!?」

 無防備であった背中へ斬りかかると、サソリトカゲスは極端に痛がり地へと崩れていく。弱点が偶然にも直撃して、予想よりも大きいダメージを受けてしまう。

「ハァ!」

「フッ! そこだ!」

「何!?」

 一方で高杉対バラロイドにも進展があった。繰りだしてきたトゲ付きのツルを、高杉がなんと素手で掴み、そのまま的確に切り落としていく。

「おのれ、ツルを斬るとは!」

 体の一部を斬り落とされて激情に駆られるバラロイドに、高杉は隙を見計らい必殺技へと行動を変えてきた。

「今だ! ハァァ!!」

「クワァ!? ギャャャ!!」

 シンプルにも真っ二つに切り裂く剣技で、この戦いにとどめを刺している。実力を存分に発揮する高杉らしい戦法であった。

 各々の必殺技で決着付けたこの勝負。倒されてしまった怪人達は、限界を迎えて爆発していった。燃え上がる火を目にしながら、三人の戦士は勝利を強く受け止めている。

「やったぜよ! ワシらの勝利じゃき!」

「いや、まだ幹部が残っている。油断は決してするなよ」

「分かっているぜ、高杉さん。こっちもより本気を出していくからな」

 喜びを上げる者や次の戦いへ備える者。各々異なった感想を口にしていた。

 

 順調な戦いを続けている銀時ら十六人の戦士達。微かな希望が見え始めている中で、遂にショッカーの幹部怪人や首領が牙を向いていく。

「復活まであと少しだ……」

 合戦はまだ続く……

 




ユーザーのみなさまへ
 コメント欄でよくリクエストを頂きますが、残念ながら本作では受け付けておりません。ご理解を頂けると幸いです。

 さて、四か月ほど続いた夢幻解放篇もいよいよクライマックス! 予定では後二話か三話でまとめるので、最後まで是非ご覧ください。それにしても、戦闘パートの分量は多い!

次回予告
「見るがいい! ショッカーの底力よ!」
 遂に始まる最終局面! チサを救う為に……元の世界へ戻る為に……彼らは決して諦めない!
「行くぞ、キリト」
「ああ、銀さん!」
夢幻解放篇十一 過去の意志
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