長期的な戦いを見せるショッカーとの合戦。銀時やキリトらが怪人の大群を蹴散らす一方で、キバオウやパクヤサらも仲間を率いて戦闘員を次々に倒していく。
「怯むな! 続け!!」
「恐れずに突き進むのだ!」
「我らの勝利の為にな!」
共に戦う仲間達へ指揮しながら、一丸となって戦い続けている。
そして銀時ら十六人と二匹にも動きがあった。大群を倒して全員が合流すると、荒野の奥で佇んでいた黒幕、ショッカー首領の元へと辿り着いている。戦いに終止符を打つ為に、みな真剣な構えで覚悟を決めていた。
「遂に見つけたぞ、ショッカー首領!!」
「チサを取り戻して、元の世界へ帰らせてもらうよ!!」
「アタイらを苦しめた分、きっちり返させてもらうぜ!!」
別世界の銀時、キリト、アスナが順々に首領へ向けて、強気に声を発していく。同時に仲間達も武器を握りしめて、敵意を露わにしていた。一方で当の本人は、取り囲まれてもなお平然とした態度で接していく。
「ハッハッハッ! よくぞここまで来たな! ……だが! 私に敵う事は出来ぬぞ!」
高らかに笑い声を上げると、彼は自身の一つ目を発光させて、そこから無数の火炎弾を解き放ってきた。威嚇射撃のように銀時やキリトらに牽制を図っている。
「ハァ!!」
「危ない! みんな伏せろ!」
咄嗟の判断で本物のキリトが呼びかけて、全員が首領の攻撃を避けていく。中には武器を盾代わりにして、火炎弾を防いだ者までいた。突然の奇襲にさらなる警戒心を強めていると、首領の元には五体の幹部怪人が集結して、早速指示を加えている。
「お前らの相手はこいつらだ! 仲良く遊んでもらうのだな!」
「イカ―!!」
「ガラァ!!」
「スティール!!」
得意げに鳴き声を発していき、怪人達は意気揚々と銀時らの元へ襲い掛かっていく。各々の特性や武器を生かしながら、彼らの足止めを図ってきたのだ。
「こ、こいつらは……」
「大ボスの元になった怪人達ね……いわゆるラスボス戦ってところかしら!」
アスナらも必死に対抗して戦闘を始めていくが、やはり幹部級とあり戦闘力には大きな差が生じている。一体の幹部怪人に付き、二、三人は相手にしないと互角には張り合えない。元凶が近くにいるにも関わらず、思わぬ足止めを食らってしまった。
「くっ……こいつら強い!」
「やはり、簡単にはいかせないという事か……」
苦戦を強いられてしまい、新八や高杉もつい心の内を声に出している。全員が幹部怪人との戦いで躍起になる中で、ショッカー首領は自然と場を去って、自分だけが逃れようとしていた。
「あっ、待て! ショッカー首領!」
「ここで逃がしてたまるかよ!」
彼の行動に気が付いた別世界の銀時やキリトは、がむしゃらに場を突き抜けて、二人で首領を追跡していく。掴みかけた好機を逃がさぬ為にも、必死で走り出していた。
「そうはさせぬのだ! ショッカーに反抗する者たちよ!!」
当然幹部達もただで逃がすわけもなく、怪人の一体であるアポロガイストが彼らを追いかけようとしたが――
「おっと! ここからは先は通さねぇよ!」
「悪いが通行止めなんでね。俺達が相手させてもらうよ!」
「何……!?」
目の前に本物の銀時とキリトが立ちはだかり、こちらも足止めを企てていく。余裕の表情を見せながら、アポロガイストを相手取っていた。
(後はお前等次第だ。しっかりとやっつけろよ、もう一人の俺……!)
(今の君ならきっとチサを救えるよ。頼んだぞ……!)
共に心の中では別世界の自分を信じており、彼らに希望を託して勝利を祈っている。この戦いの運命は、この場にいる十六人によって委ねられていた……
ショッカー首領を追っていた銀時とキリトは、次第に彼の元へと追い付いていき、堂々と前の行く手を阻んで強制的に戦いを挑んでいた。
「もう逃がすか……ショッカー首領!」
「アンタを絶対に倒して、こんな戦いを終わらせてやる!」
「ふっ……たった二人で挑むとはいい度胸だ。私が返り討ちにしてくれようぞ……!!」
長剣や木刀を向けながら強気に接していく二人であったが、首領も同じように高らかな自信を持っている。共に目つきを鋭くさせて、一歩も引かない状況が続いていた。荒野にて行われる決闘が始まる一方で、首領にはある切り札が残されている。
「そうだ。私も本気を出さなければな……ハァ!!」
そう呟くと同時に、彼は腕を下ろして全身を変化させていく。赤いマントだけを残し、異形であった顔や肉体を人間の姿に差し替えていた。
「な、何……?」
「嘘だろ……?」
首領の思惑通りに変化後の姿には、銀時やキリトも驚嘆して言葉を失ってしまう。予想外の展開に、彼らも強い動揺を露わにしている。
その容姿は――数分前に見せたチサと酷似していたからだ。
「どうだ? 随分と似合っているであろう?」
度肝を抜かれた二人の反応を面白がるように、首領はチサの顔でニヤリと笑みを見せている。予測通りに事が進み、この状況を存分に楽しんでいた。容姿だけでなく声色すらもチサに似せており、本物と同じ仕草でさらなる動揺を与えている。
そして銀時とキリトは、首領が化けたチサの姿に思わず抵抗を覚えていた。するとキリトが、ようやく声を発していく。
「なんで、チサの姿にまた化けたの?」
「戦いやすくするためだ。かつての仲間が敵として立ちはだかれば、この上なく面白いことになるからな! ハッ! ハッ!」
彼からの問いに、首領は悪びれることなく高笑いで答えを返している。キリトらとチサの縁を利用して、精神的なショックを与える悪質的な行為であった。作戦にはめられていく二人だが、ここは一旦互いの顔を合わせて、静かに心を落ち着かせる。そっと肩の力を抜くと、自らの想いを次々に吐き出していた。
「面白くなんかねぇよ。勝手に煽りやがって、何を笑ってんだ!! 本当に外道だな……お前は!」
「もうチサを苦しませないでよ……例えどんな姿に変わろうと、僕等は決して負けないからな!!」
姿を変えていく首領に、さらなる怒りをぶつけていく。手にしていた刀や長剣を強く握りしめて、二人は彼女を救い出す覚悟を決めている。対抗するように首領も、チサが得意とする両手槍を手に持ち、戦闘態勢を整えていた。
「だったら来い。ショッカーの名の元に、お前達から消し去ってくれよう!」
相手が二人であろうと、気にせずに戦いを望んでいる。未知数の能力を持つ首領にも、彼等は敢然と立ち向かう。チサを取り戻して、自分のいた世界へ帰るために。命懸けも承知で二人は、最後の戦いへと赴いていく。
「ハァァ!!」
「行くぞ!!」
「ああ!!」
互いの武器を衝突させて、運命の勝負が遂に始まった……!
一方で幹部怪人を相手にする銀時ら十四人と二匹は、依然として苦戦を強いられている。自分の持てる全力を出し切りながら、必死に抗って戦い続けていた。
「「「ハァァァ!!」」」
刀やダガーを握りしめて、一体の怪人へ集中攻撃を仕掛ける桂、クライン、シリカの三人。ピナもサポートに回して、戦略的に場を進めていく。
そんな彼らが戦うのは、ネオ生命体の一種であるドラス。バッタのような容姿をした怪人で、物質を取り込む再生能力と肩からの破壊光線を、能力として持ち合わせている。
「ドォア!!」
「「ウワァァァ!!」
「キャッ!!」
故に三人揃っての攻撃も、光線によって返り討ちにあってしまう。軽い擦り傷で済んだ桂達であるが、一歩間違えれば命すらも危うい攻撃であった。するとドラスはゆっくりと口を開いて、声を発していく。
「どうしたのお兄ちゃん達? もっと僕を楽しませてよ。そうしないと、殺しちゃうよ?」
恐ろしげな見た目に反して、その声は少年のような響きであった。戦いを遊びのように楽しむ姿は、さながら子供っぽさを覚える始末である。当然桂ら三人も、この声にはテンポを崩されていく。
「なんて奴だ……見た目は大人で声が子供とは、逆コ〇ン君かアイツは!?」
「そんなボケはいいですから、どうにか隙を見て倒しちゃいましょう!」
桂からのボケを受け流して、シリカが根気よく場の士気を高めている。戦力の差を埋める為にも、相手を見極めながら持久戦へ持ち込む作戦に移っていた。
「そうだな! 諦めずに進もうじゃねぇか!」
「ナー!」
クラインやピナも声を上げて、今一度気合を上げている。武器をドラスへ向けると、集中力を高めて狙いを定めていた。攻略に向けて、彼らは一歩前進している。
「行くぞ!」
「「「ハァァァ!!!」」」
発射される光線に怯むことなく、三人は大声を上げて勇敢にも立ち向かっていく――
桂らと時を同じくして、坂本、エギル、リズベットの三人も幹部怪人を相手に苦戦を強いられている。
「スティール……!!」
「おっと! 危なかったぜよ……!」
振り回してくる鉄球を避けていき、ひとまず安心する辰馬。三人と戦いを繰り広げているのは、デルザー軍団に属する鋼鉄参謀。他の幹部怪人よりも大柄であり、鉄で覆われた上半身と武器である巨大鉄球を巧みに操るパワー系の怪人だ。おかげで攻撃もロクに与えられず、相手からの鉄球をただ避けるだけで時が進んでしまう。
「こいつめ……固いし厳ついし、モンスターと大して変わりはないな」
「あの鉄球に当たったら、一溜りもないからね……」
みな深刻な表情となって、攻略への道筋を探るため慎重に動いている。消極的に戦う彼らの姿に、痺れを切らした鋼鉄参謀は自らの声で強気に喧嘩を売っていく。
「フッ、弱腰共め。中ボス戦での勢いはどうした? もっと俺に近づけ。正面から徹底的に潰してやるからな……」
渋い男性の声を発しながら、高らかに勝利宣言を掲げている。これには坂本らも黙ってはおらず、互いに目を合わせて、押さえていた気持ちを解き放ってきた。
「完封じゃと? そんな事はさせんぜよ!」
「力だけならば、俺だって負けてはいないぞ!」
「鉄は鍛冶屋にとって慣れているんでね……打ち倒すくらい簡単な事よ!!」
攻撃を恐れずに突き進む根性を三度心へ思い起こしている。僅かにあった迷いも無くしながら、三人は各々の武器を握りしめて前を向いていた。鋼鉄参謀へ狙いを定めて、その場の勢いで突き進んでいく。
「「「ハァァァ!!」」」
「愚かな真似を……これでも食らうがいい!!」
迫力負けすることは無く、鋼鉄参謀も洗礼として鉄球を用いた奇襲攻撃を仕掛けている。しかし恐れを捨てた三人にとっては、何の効果も無かった。鉄球を避け続けながら、一瞬の隙を狙う攻防は続いていく……
「行くぞ、もう一人のアタイ!」
「オーケー! 一緒に行くわよ!」
一方でこちらは、変わった幹部怪人を相手にする二人のアスナと神楽。奮闘しながら戦っているのは、軟体動物を模した幹部怪人であった。
「ゲソゲソ!!」
「グワァァ!」
「ウワァ!」
堂々と正面から攻撃を加えようとしたが、怪人の伸ばした触手により、いとも簡単に跳ね返されてしまう。地へ落ちたところで、神楽が真っ先に駆けつけてくる。
「大丈夫アルか、アッスー達!?」
「ええ、なんとかね。とんでもない不意打ちを食らったわ……」
「あんなふざけた野郎にやられるなんて、真っ平ごめんだけどな!」
冷静に場を読み解く本人に対して、もう一人のアスナは感情的になって怒りをまき散らしていた。三人が相手にしている幹部怪人は、イカ型の改造人間であるスペースイカデビル。イカのような白い外見が特徴的であり、伸縮自在の腕を使って、自由に攻撃を仕掛けられる強敵であった。実力も十分にあるが、何よりもアスナを苛立たせるのは彼の性格にある。
「イカカ! これで終わイカ? 全然イカしてないじゃないか、ゲソゲソゲソ!!」
イカやゲソと言った単語を多用して、神楽やアスナらを煽りにかけていく。彼女はこの小馬鹿にする性格がどうしても我慢にならなかった。
「聞いたか、今の!! 完全にキバオウと声も似てるし、腹立つんだよ!! 色々と調子が狂うし、どうにか黙らせろよ!!」
「そ、そんな事私に言われても……」
強張った表情になりながら、もう一人のアスナは本人に対して無理な提案を押し付けてくる。やや興奮状態となっており、冷静になるのも時間がかかりそうであった。さらに同じくして、その怒りは神楽にも伝わっている。
「でもムカつく事に変わりは無いネ! 完全におっさんのノリには、私も付いていけないアル! ここは一緒に倒して、スルメに仕上げるネ!」
「おおー! それはいい考えだな! おやつに丁度良いじゃねぇか!」
「って、二人で何を企んでいるのよ! 呑気な事を言う前に、早く戦闘態勢に入って!!」
場違いな神楽の提案にも、彼女は本気で乗っかっており、本物のアスナからは強めのツッコミを入れられていた。他の仲間達の戦いとは異なり、若干緊迫感に欠けた展開がここでは繰り広げられている。
「お前等はボケてる場合じゃなイカ! さっさとゲソっそりにさせてやるからなー!」
遂には敵であるスペースイカデビルですら、戦闘を促してくる始末であった。彼からの一喝によって、場の空気は再び神妙に戻っていく。
「どうやら細かい事を気にしてる場合じゃないようだな」
「さっさと倒して、スルメルートに突入するアル! 行こう、アッスー!」
「……とりあえず、二人共落ち着いてから作戦を立て直しましょうか」
感情の起伏が激しい二人をまとめるには、本物のアスナでさえも苦労を感じている。今一度戦闘態勢を整えていく中で、彼女だけがため息を吐いていた。少しの不安を抱えながらも、彼女達の戦闘はようやく再開していく。
「ガルァ!」
「おい、あっちだ! 気を付けろ!」
「はい! くっ……!!」
さらにアスナらの近くでは、高杉と新八がノバショッカーの幹部怪人であるウルガと戦っていた。ハイエナの特性を持つ怪人であり、俊敏なる動きで二人を翻弄している。冷静にウルガの動きを見定めており、新八が木刀を使って力尽くで抑えようとしたが――
「ラァァ!!」
「ぐわぁ!」
「……駄目か」
敢え無く負けてしまい、彼は突き飛ばされてしまう。素早く動くが為に、決定的なダメージを与えられぬまま場が進んでいる。とここで巨大な獣が一体、この戦いに乱入していく。
「ワン!」
「行ってください、定春! あの怪人を取り押さえて!」
その正体はユイを乗せていた定春であった。彼女の指示の元で戦場を駆け抜けており、幹部戦にも当たり前のように姿を見せている。彼女らも勢いに乗っかっていたのだが……
「ハァァ!!」
「ウウ!? ワフー!?」
「えっ? きゃっ!?」
ここで思わぬ不意打ちを受けてしまった。ウルガの口から放ってきた透明な衝撃波によって、定春が動きを急停止してしまう。同時に乗っていたユイもバランスを崩してしまい、振り落とされてしまった。
「ユイちゃん!?」
「何!? チッ……!」
彼女の身を守る為にも、ここで近くにいた高杉が咄嗟に動く。両手を広く伸ばして、落下する位置を予測したところで――ユイは何事も無く助かっている。
「えっ? アナタが助けてくれたんですか?」
「ああ、そうだ。ガキのくせして無理するんじゃねぇよ。俺達に任せておけって」
「それは出来ません! 私だって見ているだけじゃ駄目なんです! 一緒に戦って、皆さんの力になりたいんですよ!」
「……ったく、分かったよ。その代わり、もうへまはするなよ」
子供という理由で彼女を気遣う高杉であったが、ユイの強気な態度には返す言葉も無かった。真剣な表情を目の当たりにして、つい心では妥協を許している。とそこへ、新八や定春も駆けつけてきた。
「高杉さん!! ユイちゃんは、大丈夫でしたか!?」
「ワフ―!?」
「ああ、何てことは無いよ。それよりも、あの幹部を倒すには総出で立ち向かうしかなさそうだな……お前らもしっかり手伝えよ」
「もちろんですよ!」
「ワン!」
互いの無事を確認すると、高杉は自らの提案で協力を呼び掛けている。近くにいた新八や定春が返事をすると、今度はユイが言葉を返してきた。
「そうです! 私だって、手伝いますからね!」
「ああ。だがな、いざとなったら意地でも逃げろ。自分の身だけは必ず守れよ」
「……はい。分かりました!」
彼女の固い意志を否定はせずに、高杉は安全を気遣いながら、彼女を共に戦う仲間として認識している。微かにある優しさを感じ取って、ユイもさらなる責任感を高めていた。
こうしてウルガには、高杉、新八、ユイ、定春と言った滅多にない混合チームで相手にしていく。即席ではあるが、そのチームワークは申し分ないほど高まっている。
「では、行くぞ」
「「はい!!」」
「ワン!!」
こちらの戦いもさらに激化していた。
そして一段と激しい戦いを繰り広げるのは、坂田銀時とキリトの二人。太陽神を模したGOD機関の大幹部、アポロガイストを相手に立ち向かっていた。
「ガイストカッター!!」
「キリト、今すぐに避けろ!」
「分かった! ハァ!!」
ブーメランのように投げつけた盾、ガイストカッターを反射的に避けていく二人。互いに相手の動きを読み取りながら、逐一声をかけて順調に戦っていた。一方のアポロガイストは、ガイストカッターだけではなく、細身の刀であるアポロフルーレを取り出して、銀時やキリトに襲い掛かってくる。
「これで終わりなのだ! さっさと散れ!」
「させるか!!」
近場にいたキリトが反射的に動くと、エクスキャリバーを含めた二本の長剣を使い、アポロフルーレを力づくで取り押さえていく。「ギチギチ」と武器同士で擦れる音が、場に響き渡っている。長剣と細刀で大きさに差があるが、どちらも梃子でも動かずにこう着状態が続いていく。
「くっ……何故貴様らは抵抗して戦うのだ? ショッカーの軍門に下れば、さらなる力を得られるのだぞ! お前が求めているのも、力ではないのか?」
「悪いが俺はそんなのに興味は無いよ。力なんて自分自身で掴むモノだからな。それに今必要としているのは……」
怪人の考えなどは聞く耳を持たずに、キリトは自らの意志を強く貫いている。さらに意味深な言葉を呟いたところで、
「ハァァァ!!」
「グワァ!?」
真横から銀時が援護攻撃を加えていく。木刀で殴りかかっていき、アポロガイストへ予想外のダメージを与えていた。絶妙なタイミングによる攻撃は、銀時自身も誇らしげな気持ちでキリトへと話しかけている。
「俺の手助けだろ? お前も粋な事を言うようになってきたな」
「いやいや。銀さんじゃなくて、いつもの万事屋って言いかけたんだよ」
「ったく、素直じゃねぇな。さすがは黒の剣士だな」
「白夜叉も同じだと思うよ」
互いに冗談を交えつつも、二人はそっと笑みを浮かべていた。時に見せる戦いでの相性が、存分に発揮された瞬間である。
「何を呑気に喋っているのだ!! 黒と白の男共よ!」
追い打ちを受けたアポロガイストは、大きく怒りを露わにすると、手にしていたガイストカッターを再び投げつけていく。油断をしている二人を狙った奇襲攻撃であったが、
「二度も同じ手は食わねぇよ!」
「そのまま、切り裂いてやる!!」
すぐに気付かれてしまい、そのまま木刀と長剣によって綺麗に切り裂かれてしまう。返り討ちどころか、武器であった盾すらも失ってしまう結果を生み出していた。
「おのれ、貴様ら……!!」
「「ハァァァァ!!」」
さらなる憎しみを糧にするアポロガイストと、一つの目的のために立ち向かう銀時とキリト。志の違う三人の剣士達は、次々に剣や刀をぶつけていき、己の信念を貫く為に戦いを続けている。
「ハァ! トウ!」
「セ、セイヤー!」
「ハハハ! この状態でどこまで立ち向かえるか?」
一方もう一人の銀時とキリトは、チサの姿に化けたショッカー首領と激突しており、武器をぶつけ合ってひたすらに攻撃を続けている。互いに接近戦を展開しているが、やはりチサを相手にするのは共に抵抗を覚えていた。銀時は気持ちを押し殺しながら戦っているが、キリトは思うままに攻撃が出来ずに調子が狂っている。
「キリト、大丈夫か?」
「ああ。でも、やっぱり調子が上がらないよ」
苦い表情をしながら彼は、赤裸々に胸の内を語っていた。一旦体勢を立て直す中で、ショッカー首領も一度呼吸を整えていく。その間にも彼らの心の変化を察して、精神的に追い詰めている。
「どうした? こんなものか、お前達の強さは? 折角モンスターと戦わせて、ついでに強くさせてやったのに……相手が仲間と言うだけでこの体たらくとはな」
「お前……! 俺達をどこまで欺く気だよ……!」
煽るように言葉を発しており、さらなる怒りを買っていた。当然銀時は噛みつくように怒りを感じているが、キリトは対照的に黙ったままである。首領が化けたチサを偽者だと払拭できずに、心では迷い続けていた。そんな悩みを抱える彼に向けて、首領はある非情な現実を突きつけていく。
「さぁな。ところで黒い方に良い事を教えてやろうか?」
「ぼ、僕に……?」
「ああ。例え私を倒してチサを取り戻したとしても、彼女とはもう会う事は出来ぬぞ。彼女は別の世界の人間だからな。いずれは別れが来ることを、お前も知っていたはずだ」
「そ、それは……」
「戦う中で感じなかったのか? チサもお前の仲間である侍も、共にいる時間が限られている事を。いずれはバラバラの世界へと戻り、お前には何も残らなくなる。随分と寂しくないか?」
首領からの問いかけに、キリトは再び口を閉ざしてしまった。いずれは起きる仲間達との別れを例に上げて、さらなる精神的追い打ちを彼に与えていく。策に陥ろうとするキリトに、銀時が咄嗟に警鐘を鳴らしている。
「これ以上聞くなキリト! 奴からの言葉を間に受けるな! 今は戦いに集中しろ!」
「無駄だ! どんなに抗おうと、お前に待つのは孤独だけだ。辛い思いをするよりは、私やチサと共にショッカーへ入らぬか? 共に理想の世界に仕立てようではないか……」
食い気味に首領も会話へと介入して、とどめの誘いを呟いていく。チサのみならず、迷いが生まれているキリトすらも手中に収めて、利用しようと画策していた。人の弱みに付け込むその姿は、悪魔と言っても過言ではない。
策略に乗せられようとするキリトだが、顔をうつむかせてゆっくりと歩みを進めている。首領の元へと向かっており、完全にペースへ飲み込まれていた。
「おい、キリト!? 行くな! 何を考えているんだ! 首領の考えに乗るつもりか!?」
銀時が必死に呼びかけても返事は返ってこない。魂の無い抜け殻のように、背後の姿には喪失感が漂っている。場の流れは首領の思惑通りに動き始めていた……
「勝負あったな。さぁ、私と共に――」
「悪いけど、断るよ」
「はぁ?」
わけではなかった。急に口を開いたキリトは、顔を上げると同時に手にしていた長剣を、首領へ振りかざしていく。予想外の攻撃であり、彼は無防備のままダメージを負っている。
「ハァァ!!」
「くっあ!? 貴様何を考えて……」
睨みを利かしながら問いかけると、キリトは一度深く呼吸をして、自らの想いの丈を大声で吐き出していく。
「僕達がバラバラの世界から来たのは、既に分かっていたよ。一緒に戦ってくれた銀さんや、励ましてくれたチサも、いずれ別れが来るって……でも、だからそれでいいんだよ! みんなにとっての居場所に戻れるなら、それを受け入れて後押しするべきだって! 永遠の別れだとしても、ここで築いた記憶はずっと残り続ける! それなら僕は、十分なんだよ……」
目には大粒の涙を浮かばせながら、彼は自身の決意を存分に話している。今まで溜め込んでいた感謝や、運命を受け入れる覚悟。仲間と紡いだ絆の数々を全て言葉に諾していた。この行動は銀時自身も驚かされており、つい言葉を詰まらせるほどである。
「キリト、お前……」
「銀さん! もう迷いは一斉無いよ! だから……さっさと倒そう! チサの偽者を!」
「……ああ。また足なんか引っ張るなよ!」
「もちろん!」
涙を拭ったキリトは、屈託のない笑顔を見せて強気に勝利を誓っている。彼の本気に触れていき、銀時も同じく覚悟を決めていた。一斉の迷いを全て捨て、チサを救い出すことで目的を一致させている。
一方で厚い手のひら返しを受けた首領は、感情を高ぶらせて敵意をむき出しにしていた。
「おのれ剣士共め……ただで帰れると思うな!!」
「いいや。帰らせてもらうぜ」
「アンタと決着を付けてからな!」
表情をフッと笑わせながら、二人は果敢にも首領に全力で立ち向かっていく。その姿勢は数分前とは比べ物にならないほど変化していた。
長く続いている幹部怪人との決戦も、終わりが近づいている……
「ドラァ!」
「また発射したか……!」
「気を取られないでください! 私が囮になるので、桂さんとクラインさんは集中して狙ってください!」
「おう! 任せておけ!」
光線を巧みに操るドラスに立ち向かう桂達は、相手の能力を封じるために賭けの作戦に出ていた。小柄で俊敏なシリカが囮となって、その間に桂とクラインが発射装置のある肩を破壊する段取りである。重要な役割を担う彼女であるが、恐れは抱かずにドラスへ接近戦を挑んでいく。
「行きますよ! ハァ! トウァ!」
武器であるダガーや身軽な戦法を用いて、次々に攻撃を与えている。ドラスからの物理攻撃も難なくかわしていき、場の主導権は彼女が握り始めていた。
「ハァ……! いいねお姉ちゃん。もっと僕を楽しませてよ!!」
強く戦うシリカにドラスも気を惹かせており、彼女へ向けて早速光線を発射させていく。その間に彼女は指を鳴らして仲間に指示を加えている。
「今です!」
「待っていたぞ!」
「覚悟しやがれ!」
一瞬の隙を狙ってシリカが光線を避けたところで、二人の侍が前線へと姿を現す。刀を握りしめながら、ドラスの肩にある発射装置に狙いを集中している。そして、
〈グサァ!!〉
「グワァ!?」
二人の刀は見事にドラスの肩を貫いていた。火花を散らしながら抜くと、場を離れてシリカの元へ合流する。作戦は成功して、ドラスの主要武器であった光線は使用不可となった。
「お兄ちゃん達もやるね……でも、全て無意味だよ!!」
しかし彼にもまだ打つ手はある。隠し持っていた再生能力を発動させて、周辺にあった岩石で肩を再構築しようとしたが……
「させません! ピナ! バブルブレスです!!」
「ナー!!」
ここでようやくピナが動き始めた。シリカの指示で彼は、得意技であるバブルブレスを発射していく。相手の動きを止める効果があり、もちろんドラスも泡を浴びると、再構築を止めて体の自由を封じられてしまう。
「何!? 動かない……」
想定外の技を受けた事で、若干の焦燥感に包まれている。またとない好機を生かすために、困惑している間を狙って、三人は怒涛の決め技でとどめへ斬りかかっていく。
「これで最後です! ハァァ!」
「俺達も行くぞ! トオァァ!!」
「おう! ホワァァ!!」
「グッ!? グワァァ!?」
シリカを筆頭に桂、クラインの順でドラスの腹部に向けて次々と斬りかかっていた。この一撃に全力を懸けた三人の技によって、ドラスにはダメージが蓄積して肉体には限界が近づいている。
「……強いね君達も……最高だよ!!」
彼女らの強さを認めたところで、彼は倒れ込みそのまま爆発していく。強力な能力を併せ持つドラスであったが、侍やテイマーのチームワークには敵わず敗れてしまった。
一方の桂達は、ドラスを撃破すると同時に高く喜びを露わにしている。
「よっしゃー! 勝ったぜ!!」
「よくやったな、二人共」
「ピナの事も忘れないでくださいよ!」
「ナー!」
全力を尽くした結果には、みなが大きい達成感を覚えていた。さらなる励みを受けながら、三人は勝利の余韻に浸っていく。
「力には力で勝負だ! ウォリャャャ!!」
「来い! スティール!!」
さらに鋼鉄参謀を相手にする坂本らも、全面的に相手へ勝負を挑んでいる。まずは力に自慢のあるエギルが、斧を握りしめて攻撃を仕掛けてきた。相手も鉄球を持ち上げて、二つの武器が激しくぶつかっていく。
「貴様も強いな! だが俺には及ばない!」
「それはどうかな? お前の鉄球さえ無くせば、互角に張り合えると思うぜ?」
「何をふざけたことを……」
「ふざけてなどいないさ。ハァァァ!」
たわいないやり取りを続けていると、ここでエギルが賭けへと動いている。手にしていた斧を急に手放して、全身の力を拳に溜め込んできたのだ。斧が刺さった鉄球は地へと落とされて、鋼鉄参謀の動きを止めている。僅かな油断を見計らい、彼から攻撃が仕掛けられた。
「今だ! ハァァ!!」
「はぁ? って、グハァァァ!?」
力を目一杯に溜めた強烈な拳が、鋼鉄参謀の上半身へと襲い掛かっている。渾身の一発は頑丈な装甲にもヒビを入れており、こう着していた戦況を一気に作り変えていた。
「ハァ……やっぱりこれで限界か」
「アンタはこれで良いのよ! ここからはアタシに任せなさい!」
しかし力を使い果たしたエギルは、息切れしながら疲れ切っている。そんな彼に代わって、今度はリズベットが戦いを挑んでいく。武器であるメイスを握りしめて、引き続きヒビの入った上半身を狙っていた。
「今度は女か……たわいもないな!」
「そうやってなめてていいのかしら? これでどう!?」
嘲笑うように女子を挑発する鋼鉄参謀だが、彼女は気にせずに戦闘態勢を整える。助走を付けて勢いに乗ったところで、高くジャンプをしてメイスの先端を向けていく。そのまま相手へ突き刺すように、攻撃を加えていったのだ。
「ハァァ!!」
「何!? ダハァ!?」
正面から受けた鋼鉄参謀は予測よりダメージを受けて、吹き飛ばされてしまう。さらにはヒビも大きく広がっており、自慢の装甲も少しずつ綻びている。まさに彼女の作戦通りであった。
「こ、これは……」
「アタシは鍛冶屋なんでね、鉄ならではの脆さは既に知っているのよ」
「そういうことか……おのれ!」
鉄の扱い方に慣れているリズベットが一歩上手に戦っている。各々の攻撃を与えていく作戦は、鋼鉄参謀へ順調にダメージを与えていた。そして遂に、最後の大トリに運命が託されていく。
「さぁ、とどめよ! 辰馬さんにバトンを渡すわ!」
「オーケーじゃ! いよいよワシの出番ぜよ!!」
意気揚々と坂本も大きく飛び上がると、刀を上へ掲げて斜め上から鋼鉄参謀へ向かっている。回転斬りの構えをして、得意の技で終止符を打つのだ。
「とどめじゃゃゃ!!」
「ナ……ス、スティールゥゥゥ!?」
最後の攻撃は綺麗に決まっており、受け止めた鋼鉄参謀にも体力の限界が近づいている。さらには壊れかけた装甲が、ダメージを上手く吸収できずにいた。鳴き声を上げ続けながら……ようやく倒れ込み爆発していく。同じくして鉄の装甲もはじけ飛んでおり、思わぬ二次災害を生み出している。
「痛!? なんじゃこりゃ!? 置き土産が飛んできたぜよ!」
「最後の最後まで警戒が必要って事だな」
「ありがとうね辰馬さん! アタシ達の盾になってくれて」
「って、これじゃ褒められている気がせんぜよ!」
その内の一つは坂本の背中に当たり、仲間内では和やかな会話が飛び交っている。勝利を手にしてこちらも、喜びの雰囲気に包まれていた。
「イカゲソ! さっさと捕まるイカ!」
「そうはいくかよ!」
「お前の触手ももう見飽きたネ!」
一方でこちらは、スペースイカデビルを相手にする女子三人。腕を伸ばして捕まえようとする怪人の技を避けながら、着実にダメージを与えていく。もう一人のアスナと神楽が避けている内に、空中からは羽を広げた本物のアスナが攻撃を仕掛けている。
「ハァァ!!」
「何!? イカカ!?」
振られてきたレイピアが皮膚へと当たっており、またも不意打ちを食らっていた。怪人の個性と相まってか、他の幹部よりも隙や油断を多く見せている。おかげで場の流れは、完全にアスナ達がリードしていた。
「よし! また成功したな!」
「さっきよりも戦いやすいからね。このまま一気に決めちゃうわよ!
「おうネ! 任せるヨロシ!」
勢いに乗っかって三人は、攻める考えで一致させている。みなが勝利を確信しており、気楽な心構えでこの戦いに臨んでいた。対して幹部怪人であるスペースイカデビルは、隠していた秘策を披露して逆転を図っている。
「小娘共め……これでも食らイカ!!」
唸り声を上げると同時に、手から紫色で三角状の魔法陣を生成していく。切り札として残しておいた魔法の力で、彼は奇襲を仕掛けていった。
「って、アレは……」
「まさかアイツは魔法も使えるってこと?」
「はぁ!? 反則だろうが! 何本気を出してんだよ!」
「うるさイカ!! スペースショッカーの魔法を味わうがいい! ゲソソ!!」
聞く耳を持たずにスペースイカデビルは、意気揚々と魔法陣を解き放っていく。一瞬にしてアスナ達へ近づき、避ける暇も無く彼女達を吸い込んでしまった。
「「ギャャャ!!」」
「キャ!!」
叫び声を上げてそのまま魔法陣の中へと消えてしまう。こことは違う場所へと転移しており、不利であった相手を退けて怪人は勝ち逃げを図っていた。
「イカカ! 愉快、愉快! このまま転移を続けて、永久にこの世界を彷徨うがイイカ!」
予想通りに事が進み、笑いが止まらずにいるスペースイカデビル。相手を送り去ったところで、自分もこの場から去ろうとしていた。
「さて俺様は別の相手でも――って、イカカ!?」
しかし、ここで彼は思わぬ攻撃を受ける事となる。背後の隙を突かれてしまい、突然の奇襲を許してしまった。その相手は――なんと先ほど別の場所に転移させたアスナら三人である。
「よくもアタイ達を勝手に飛ばしてくれたな……!」
「な、何故すぐ戻って来たんだ?」
「気付いたらお前の背後にいたからだよ。いや~幸運だったアルナ!」
「貴様ら……!!」
魔法陣に吸い込まれた彼女らは、幸運にも近場で転移していた。おかげで時間もかからずに、この場所へと戻れたのである。
「はぁ! さぁ、これでとどめよ!」
受けた攻撃を返すようにアスナ達は、目を鋭くさせてスペースイカデビルに狙いを定めていた。アスナらはレイピア、神楽は日傘を握りしめて決着を付けていく。勢いよく走り出して、次々に斬りかかるのだ。
「トリプル!!」
「ヒロイン!!」
「超絶螺旋斬!!」
「イカカァァァァ!?」
即席で思いついた必殺技名を叫びながら、渾身の一撃を次々に決めている。各々の得意な戦法で相手にダメージを与えていった。
「女も怒れば恐ろしい……ゲソソー!!」
悲痛な呟きを上げた後に、スペースイカデビルは倒れ込み爆発していった。本気を出した彼女達によって、あえなく敗北している。そして三人は、怪人を倒して歓喜に浸っていく。
「遂に勝利だぜ! やったな!」
「って、超絶螺旋斬ってどういうこと?」
「ああ、思いついた事をありのままに言っただけだ。かっこいいだろ!」
「確かに戦う乙女って感じがするアル! 流石は別世界のアッスーネ!」
「だろ! 共感してくれてアタイも嬉しい限りだよ!」
中でも必殺技の名称で、もう一人のアスナと神楽が共感して二人だけで話が進んでいる。本物のアスナだけは、どこかついていけずにいたが。
「ここまで盛り上がっているなんて……でも、まぁいっか」
それでも勝利を誇らしく思い、長い戦いが終わった事に安堵の表情を浮かべている。
「ハァ!!」
「セイ!!」
そしてウルガと戦っている新八や高杉らにも動きがあった。相手の俊敏な動きを見極めながら、順調に攻撃を与えていたのである。長期的に戦いが続いており、いよいよ終わりが見えてきた。
「グルァ……」
「次は私達です! 行ってください、定春!!」
「ワフ―!!」
さらなる追い打ちをかける為に、ここでユイを乗せた定春が動き始める。失敗した突進攻撃を再び発動させて、大きなダメージを与えようとしていた。しかし……
「ガルァ……ラー!!」
「キャッ!!」
またもウルガは衝撃波を使い、定春の動きを止めてしまう。徐々に勢いを失っていく彼女達には、仲間内でも不安が飛び交っている。
「また衝撃波!? 早く助けに行かないと」
「ここは俺達が回り込むか……」
すぐにでも救い出す方法を画策していたが、その心配は無用であった。なんと急に定春が前進を続けて、ユイも同じように指示を加えている。突然の粘り強さを彼女達は見せていた。
「大丈夫です……定春は同じ手なんかに負けませんから!」
「ワフ……!」
共感するように彼も強く頷いている。衝撃波を真っ向から受けながら、ゆっくりと進んでいき、遂には走り出すまでに行動範囲を広げていた。
一方のウルガは、衝撃波を出し続けたあまりに、声を枯らして攻撃を止めてしまう。反動で動けない隙を狙い、定春はさらに走りを加速させている。
「今です! 定春―!!」
「ワフ―!!」
「ガラァ!?」
そしてようやく、巨体を生かした突進がウルガへと当たっていく。苦労しながらも彼女達は、諦めずに自らの信念を貫いていた。渾身の攻撃を受けたウルガは、大ダメージによって取り柄だった素早さを一時的に失っている。まさに今が狙い目であった。
「今です! 新八さんに高杉さん! とどめを刺してください!」
「言われなくても分かってたら!」
「この一撃で決めてやる!」
ユイに言われるまでも無く、新八と高杉は木刀や刀を構えて、ウルガの元へと駆け抜けている。目指すべき一撃に全てを駆けて、この戦いに終止符を打とうとしていた。
「ハァァァ!!」
「サァァァ!!」
「ガラァ!?」
共に刀を振るわせると同時に、ウルガへ向けて一刀の斬撃を浴びせている。X型の字を描くように、二人揃っての必殺技で決めていた。
「ウルァ……!」
この技が決め手となって、ウルガはそのまま倒れ込み爆発していく。ユイや定春が突破口を作ったことで、スムーズに戦いを終わらせることが出来た。
「やりましたね! 遂に勝つことが出来ましたよ!」
「よくやったよ。ユイちゃんに定春も、頑張ってくれてありがとうね」
「はい! どういたしましてです!」
「ワン!」
全員が合流すると、早速新八はユイや定春に向けて率直に褒めている。頑張りを見せてくれた彼女達に、思わず感銘を受けていた。ユイも満面の笑みを浮かべて、新八に言葉を返している。もちろん定春も同じ気持ちだ。
一方の高杉は、ぶっきらぼうな口調でユイを評価している。
「お前も中々やるじゃないか。その根性だけは、認めてやるよ」
「……ありがとうございます。高杉さん」
「大した事は無ぇよ」
こちらは真面目に接しており、ユイも真剣な表情となって高杉の言葉を受け止めていた。思わぬチームワークを発揮しながら、こちらも無事に戦いを終えている。
仲間達が幹部との決着を付けていく中で、銀時やキリトの戦いも佳境へと突入していた。強敵であるアポロガイストを打ち倒すために、二人は攻撃の手を緩めずに戦い続けている。かつて経験した戦いを思い起こしており、その表情も真剣さを極めていた。
「タァァ!!」
「こいつ! どこまで食らいつくのだ?」
木刀を握りしめて、がむしゃらに立ち向かうのは坂田銀時。攘夷戦争での戦いと照らし合わせて、守るべき者を救う為に敢然と戦っている。チサを現実へ連れ戻すために、彼も最善を尽くしていく。
「キリト! バトンタッチだ!」
「オーケー! ハァァ!!」
「今度はお前か! どこまで張り合うつもりだ!?」
銀時に代わって今度はキリトがアポロガイストを相手取る。二本の長剣を使った激しい剣裁きで、次々にダメージを与えていた。SAOで培った死を恐れぬ覚悟と、立ち向かう強さをここで発揮している。彼も銀時と同じで昔の自分と照らし合わせていた。
しかしアポロガイストも、押されているわけではない。細刀であるアポロフルーレを用いて、二人の猛攻を受け止めながら反撃の瞬間を伺っていた。
「これしきの攻撃で、負ける私ではないのだ! ドファ!」
「クワァ!?」
僅かに出来た隙を突いていき、見事にカウンター攻撃を決めている。キリトには地味なダメージを響かせており、折角の勢いもここで途絶えてしまった。
「キリト! 大丈夫か!?」
「ああ、何とかな。それよりも、そろそろ決着を付けないといけないな」
彼の無事を確認すると、二人は体制を整えて、最後の構えへと入っている。全力を賭けた必殺技を使って、この戦いを終わらせようとしていた。
「折角だし、二人でやってみるか?」
「もちろん! 同時に斬りかかろう!」
「ああ、そうだな」
少ない言葉で交わして、心を通じ合わせる二人。戦法は大きく違うが、お互いを信じあい、各々で準備に入っている。木刀や長剣を掲げた後に、アポロガイストへ向けて狙いを定めていた。
「何が来ようと無駄なのだ!」
「果たしてどうかな?」
「俺達のコンビネーションは、そう簡単に折れねぇよ!」
怪人に何を言われようとも、二人はやる気をたぎらせつつ心を研ぎ澄ましている。相手の隙を見極めたところで、二人は遂に動きだしていく。
「「行くぞ!!」」
突発的に走り出すと、キリトは左方向に、銀時は右方向へと進んでいる。がむしゃらのままに突き進み、動きを合わせながら同時に斬りかかっていく。
「何!?」
「ハァァ!」
「トワァ!」
「グワァ!?」
一瞬で囲まれたアポロガイストは、かわす暇も無く二人の攻撃を食らっていた。そのまま吹き飛ばされて動きが鈍ると同時に、銀時とキリトはさらに容赦なく必殺技を叩き込んでいく。
「とどめだ……バーストストリーム!!」
「こっちも……えっと……どれにするか」
「って、銀さん! 言うなら早くして!」
ところがその途中で、銀時が必殺技の名称で迷いを浮かばせている。時間が限られているので、彼はヤケクソになって決めていった。
「分かってる! じゃ……トウヤコストリーム!!」
「結局思いついてなかったのかよ!!」
自身の木刀についた洞爺湖と、キリトの必殺技名をいじり、安上がりな技名を叫んでいく。おかげで本人からは、強いツッコミを入れられる始末であった。
それはさておき必殺技名を上げた二人は、アポロガイストへ向けて全力の連続斬りを浴びせていく。一つ一つに込めた斬撃が、次々にダメージを蓄積させている。
「ハァァァァ!!」
「トワァァァ!!」
力尽きぬ限りに続けていくと――相手の動きがぴたりと止まり、同時に二人も必殺技を止めて長剣や木刀を下ろしていく。とうとう決着が着いていた。
「クルァ! この私が負けるとは……組織にとって大迷惑なのだ……」
そう言い残して、アポロガイストは倒れ込み大きく爆発していく。長期的に続いていた幹部戦は、これを持って幕を下ろした。綺麗に必殺技が決まって、銀時やキリトも有終の美を飾っている。
「どうにか勝てたな、キリト」
「うん。それよりも、トウヤコストリームって何?」
「技名が思いつかなったから許してくれよ! 本当はカメハメストリームとか、卍解ストリームとかあったんだが、こだわっていたら時間が過ぎたんだよ! だから多めに見てくれよ!!」
「何か聞いた事がある名前ばっかりだな……」
一つだけ気にしていた必殺技名だが、結局銀時の考えた案がパロディ風だと気付き、キリトは安心と共に若干の呆れを感じていた。それでも勝利を手にしたことは誇らしく思っている。
「そういえば、アイツらは大丈夫か?」
「そうだった。行ってみようか?」
「ああ、もちろん!」
戦いを終えたと同時に、もう一人の自分達の戦況が気になり、二人はこのまま彼らの行方を追いかけている。残す相手は遂に、ショッカー首領ただ一人となった。
残すはチサ(ショッカー首領)のみ! 長く続いた夢幻解放篇の戦いもいよいよフィーナーレ!! ここまで長かった……では、また次回! (予告は今回無しです)