遂に最終局面を迎えたショッカーとの決戦。その元凶たる首領を倒すためにも、別世界の銀時とキリトは今もなお激しい戦いを続けている。一斉の迷いを捨てており、全力を尽くして相手に立ち向かっていた。
「おのれ剣士共め……これでもくらえ!」
「くらうかよ!」
「こんな攻撃じゃ、僕達は絶対に倒れないよ!!」
チサの姿へと化けた首領は、手にした槍の先端から燃え盛る火炎弾を次々に解き放っていく。ところが二人の剣裁きにより、その全てを真っ二つに切り裂かれている。爆発で燃える背景に照らされながら、共に首領の元へと走り出していた。
「「ハァァ!!」」
「くっ……しぶとい奴等め!」
攻撃の手を緩ませずに進む二人に、首領もつい引き気味となっている。焦燥感にかられながらも、槍を構えてこちらも正面から衝突していく。互いの武器がぶつかり合い接近戦を繰り広げる中で、銀時やキリトは自らの想いの丈を言い放ってきた。
「僕達はこの空間で何度も辛い目にあってきた! 傷ついて必死に頑張って、ここまで強くなったんだ!!」
「お前はチサだけじゃなく、俺達まで強くしたんだよ! 侮ったのが運の尽きだったな!」
「黙れ!! 例え貴様らが強くなろうと、私に勝つことは出来ぬぞ!」
仲間と共に心を成長させた記憶。困難にぶつかり乗り越えた達成感。この夢空間で起きた出来事を思い起こして、二人はこの瞬間を全身全霊で戦っている。
槍を巧みに使って攻撃を防ぐ首領だが、勢いに押されてしまい若干劣勢に追い込まれていた。形勢が逆転する中で、銀時とキリトはいよいよとどめの準備を進めていく。
「キリト! この技に全てを懸けるぞ!!」
「ああ、もちろん!!」
各々の武器を握りしめて、首領へ向けて慎重に狙いを定めている。目つきを鋭くさせて、最後の一撃に全力を注ぎ始めていた。
「何をしようと無駄だ! 限界を思い知るがいい!」
咄嗟に首領も再び槍から火炎弾を作り出し、真っ先に放出して妨害を加えていく。攻撃は命中して、辺りには濃い煙が広がっている。見事先手必勝が決まったかに思えたが――
「ハハ……とうとうくたばったか……」
「「トワァァァ!!」」
「何!?」
彼等はまだ倒れていなかった。煙をかき分けて抜け出すと、大きく飛び上がり首領へ向けて刀や長剣を振り下ろしていく。そして、
「これで……!」
「最後だぁぁ!!」
「ぐっ……ウワァァァ!!」
渾身の一撃が首領へと決まっている。十字を描く様にダメージを与えており、負荷が大きくなった相手は嘆き声を上げながら、そのまま静かに倒れ込んでしまった。
「ハァ……やったのか?」
「これで全て終わったのかな?」
全力を出し切ったことで、共に息遣いも荒くなっている。手にした勝利を受け止められずに、まだ半信半疑で細心の注意を払っていた。すると首領からは、聞き覚えのある声が微かに聞こえている。
「キリト……銀さん……」
「チサ? 今チサの声が!?」
「ようやく戻ったのか?」
小さくも普段通りのチサの声を感じ取っていた。思わず二人も倒れた首領の方へ振り向くと、そこにはゆっくりと立ち上がる姿が目に見えている。しかしその様子は、明らかに彼女では無かった。
「勝手に出るな……お前は私だ! 何があってもなぁぁぁぁ!!」
なんと首領は、二人の猛攻を堪えており驚異の粘りを見せつけていく。本来の姿とチサの姿を混在させて、真っ黒に染まったおぞましいオーラを体から放出していた。
「何……うわぁ!!」
「剣が……!?」
二人にもオーラが襲い掛かり、武器を盾代わりにしながら身を守っている。ところが武器も、オーラに当たると砂のように粉々と崩れ去ってしまった。丸腰状態となったキリトらを嘲笑うように、首領は甲高く声を発していく。
「もはや誰であろうと私を止める事は出来ぬぞ!! 貴様らがどれだけ抗おうと、この力で跪かしてやる!! ハハハ!!」
溜め込んでいた力を暴走させながら、自暴自棄となり二人をねじ伏せようと企んでいる。往生際が悪く、首領は意地でも戦いを止める事は無かった。一方の銀時やキリトもオーラに堪えて踏ん張っているが、攻撃手段を失った事で戸惑いを見せている。
「アイツ……まだあんな力を残していたのか?」
「最後の悪あがきってヤツか……武器まで葬られたのが手痛いな……」
苦しい表情を露わにして、逆転の手段を必死に模索していた。だが、強いオーラに体を押されてしまい、思うように動けずにいる。状況を打開するために考えを巡らせると、ここでようやく本物の銀時とキリトが駆けつけてきた。
「おい、てめぇら!」
「これを使え!!」
大きく声をかけると同時に、二人は自身の武器である洞爺湖の木刀とエクスキャリバーをもう一人の自分達に投げつけてくる。チサを救い出すための希望を、彼等はさり気なく託してきたのだ。
「これって……」
「そういう事か……ならば使わせてもらうよ!」
言葉を交わさずともすぐに理解したキリト達は、木刀や聖剣を握りしめて、三度体制を整えていく。そして首領の元へと突き進んでいき、今度こそ決着を付けようとしていた。放たれるオーラを潜り抜けながら、相手の僅かな隙を狙っている。
「私こそが真の支配者となる――」
力に酔いしれて不気味に笑い続ける首領だが、慢心するあまりに横側への防御は手薄となっていた。もちろん二人は、この好機を逃すはずがない。
「「ハァァァァァ!!」」
「グッ!? ナ……」
新しく手にした武器を振りかざして、タイミングよく首領に斬りかかっている。不意を突かれた彼は徐々に勢いを失い、放っていたオーラも薄らいでいき、本来の姿へと戻っていた。土壇場で見せた特別な一撃が決め手となり、長く続いた戦いにようやく終止符が打たれている。
「き、貴様ら……!!」
「これ以上させるかよ……!」
「アンタの野望も、これで終わりだ……!」
「おのれ……」
最後に台詞を言い放つと、銀時とキリトは手にしていた武器をゆっくりと下ろしていく。同時にショッカー首領も動きを止めており、一つ目の光が消えると再び後ろへと倒れ込んでいた。直後には取り込まれていたチサも解放されて、首領と分離する形でようやく本物が姿を現している。
「チ、チサ……!!」
突発的にキリトが手を伸ばして、彼女を抱きかかえるように救出していた。一方のチサは依然として目を瞑って、気を失ったままである。二人は固唾を飲んで慎重に安否を気遣っている。
そして離れた場所で様子を見ていた本物の銀時とキリトの元に、幹部との戦いを終えた神楽やアスナら仲間達が瞬く間に集結していた。
「キリト君!!」
「銀ちゃん! チサはどうなったアルか!?」
「ああ、アイツらが助けてくれたよ」
「首領もあの二人が倒してくれたんだよ」
「何!? 本当か?」
銀時らが目にした戦いの結末を、彼女達も徐々に理解していく。目線の先にあるのは、倒れ込んだ首領と、気絶しているチサに呼びかけを続けるキリトと銀時の姿であった。事情を聞かなくとも、この一場面だけで十分に理解できる。
仲間達がみな彼女の無事を祈っていると、その瞬間は唐突に訪れていく。
「……ウ……キリト……? それに銀さんも……?」
「チ、チサ!?」
キリトらの必死な呼びかけに気が付いて、チサはゆっくりと目を覚ましていた。待ちに待った再会が、ようやく実現している。
「お前……本当にチサなのか?」
「何を言っているの? 私に決まっているじゃん。首領に取り込まれちゃったけど、もしかしてキリト達が助けてくれたの?」
慎重に本人かどうか確かめてみるが、控え目な口調や穏やかな雰囲気から、チサ本人で間違いはなかった。それを確信した二人は、肩の力を抜いて安堵の表情を浮かべている。特にキリトは目に大粒の涙を浮かばせながら、彼女との再会を心から喜んでいた。
「ああ、そうだよ。僕達が君を……救……救ったんだ!」
気持ちを抑えきれずに感極まっており、ボロボロと涙までこぼし始めている。辛く苦しい戦いを乗り越えたからこそ、つい本音のままに自分をさらけ出していた。
「そっか……ありがとうね。キリトもここまで強くなったんだね……」
「いや、まだまだだよ……僕なんて」
「そんなことは無いよ。絶対に……」
泣きじゃくるキリトの心境を察して、チサは優しく微笑んだ後に彼の頭をなでて慰めていく。気弱で自信の無かった彼だが、この戦いを通じて見違える程に心身を成長させている。その変化はもちろんチサにも伝わっており、彼女も心の中では密かに感激していた。
「ふっ……良かったな。キリト」
戦いを共にした銀時も、二人を静かに見守りながら呟いている。桂やクラインら長い付き合いのある仲間達も、同じような気持ちで温かく見守っていた。ところが、何故かアスナだけは徐に感情を出していつの間にか号泣している。
「クソ……こっちまでもらい泣きじゃねぇか! 一体どうしてくれるんだよ……!!」
「いや、お前が涙もろいだけだろうが」
あまりの泣き顔を見せられて、高杉も気が引いた表情でツッコミを入れていた。感動的な場面には、意外に涙腺の弱い彼女である。
一方で本物の銀時やキリトらがいる万事屋でも、チサの救出ともう一人のキリトの成長につい心を揺さぶられていく。
「とりあえず、元凶を倒してチサも助け出したし一件落着アルナ!」
「まさかもう一人の銀さんとキリトさんが倒すなんて、予想もしていませんでしたけど」
「あっちのキリト君も、十分に強くなったからね!」
「さすが、パパが鍛えただけありますね!!」
「いやいや、俺はただ技を教えただけだから。後はチサや仲間を想う優しさが、彼自身を強くしたと思っているよ」
各々が感じた事を率直に呟いているが、特にキリトはもう一人の自分に対して強い思い入れがあった。弱さを糧にして強さに変える精神力には、つい感銘を受けている。彼なりの優しさを感じ取り、そっと微笑みを浮かべていた。
感動的に物事を受け止める万事屋一行であったが、ただ一人銀時だけはあまり浮かない顔をしている。黙り続ける不自然な態度には仲間達も気が付いており、慎重に新八が声をかけてきた。
「アレ、銀さん? どうしたんですか、急に表情を変えて?」
「ああ、新八。戦いが終わったからこそ、少し言いたい事があってな……」
「えっ? 何をですか?」
意味深にも言葉を発すると、彼は一度呼吸を整えていく。そして、心に抱えていたある気持ちを解き放ってきた。
「……なんで黒幕がショッカーなんだぁぁぁぁ!!」
「いや、今更!? なんでそのツッコミを急に繰り出すんですか!! アンタ二話に渡って、真面目に戦っていたじゃないですか!!」
正直すぎる一言を聞き、新八のツッコミも激しくなっている。どうやら彼は敵役に対して、強い不満を持ち合わせていた。予想もしない相手と戦った事で、内心では強い戸惑いを宿している。ツッコミを交わす機会すら失っていたので、今この場を借りて赤裸々に本音を口にしていく。
「そこはしっかりと空気を読んだんだよ!! キリト達もいるからさ!! だいたい攘夷戦争とSAOの世界観をテーマにしているなら、天道衆とかヒースクリフとかが適任じゃないのか!? 何で他作品の秘密結社が黒幕なんだ!! もう意味が分からなねぇよ!!」
「そんなこと僕に言われても困りますよ!! そもそも自然に伏線を張っていただけでも、十分じゃないですか!! ちょっとは普通じゃないのは、僕も薄々感じていましたからね!!」
独自の主張を展開しながらも、新八からは的確なツッコミを入れられている。予想の斜め上を行くショッカーの襲来は、銀時達に多大なる衝撃を与えていた。もちろんキリト達には、何一つ意味は伝わっていないが……。それはさておき、二人の会話には神楽も乱入して、さらに思わぬ方向へと進んでいく。
「それは私も思っていたネ!! 散々敵の存在をほのめかしておいて、ショッカーなんて出されても、とんだ拍子抜けアル! それがアリなら、デ〇オとか〇オウとかと戦ってみたかったネ!」
「そーだよな! 今後は俺達の融通も聞くべきだよな! 俺だったら、ゾー〇や〇スカと戦いたいけどなー!」
「って、おぃぃぃぃぃ!! 戦いが終わったからって、急にぶっちゃけるんじゃねぇよ!! 前回との温度差が激しすぎるでしょうが!! 少しは自重してください!!」
銀時と神楽の間では敵役談義が盛り上がり、思うままに著名な悪役を次々と声に上げている。勝手に妄想を膨らませる仲間には、新八も勢いのあるツッコミで返していた。万事屋らしいグダグダとした雰囲気が広がり、キリト達三人もつい彼らの愉快さを察している。
「……結局、銀時さんは何が言いたかったのでしょうか?」
「さぁな。でも銀さん達にしか分からないこともあるし、深く追わない方が良いかもな」
「ああやってじゃれ合うのも、三人らしいからね」
「ワン!!」
側にいた定春も元気よく鳴き声を返していく。会話の内容をいまいち理解していない三人だが、銀時達が楽しそうであれば十分であった。万事屋一行も勝利の余韻へ浸っている。
そんな平穏な空気が流れる一方で、ユイはあるただならぬ気配を感じ取っていた。
「ん? アレ?」
「どうしたの、ユイちゃん?」
「ちょっとついてきてもらえますか? 銀時さん達も」
「えっ、俺達もか?」
近くにいたキリトや銀時らを促していき、万事屋だけである人物の元へと近づいている。その正体は、地べたへ寝込みを続けるショッカー首領であった。
「こいつが一体どうしたアルか?」
「もう一人の俺と銀さんで倒したはずだが……まさか、まだ生きているのか?」
「そうかもしれません。ちょっと嫌な予感を感じたので……」
爆発の過程を得ずに個体が残っていることから、ユイらは微かに生存の可能性を悟っている。みなが一定の距離を保って首領を取り囲んでいると、唐突にも彼の一つ目は見開いて、ささやくように声が発せられた。
「ハハ……その通りだな」
「何!? まだ生きてやがったのか!?」
「しぶとい人ね! いい加減敗北を認めなさいよ!」
生存を確認した一行は、目つきを急変させて警戒心を高めている。武器を持つ者は収めている腰に手をかけて、万全の体制を整えていた。だが、首領の態度は数分前とだいぶ異なっている。
「それなら安心しろ。私にはもう戦う力は残されていない……消滅するのも時間の問題だ。だから、置き土産としてお前達に有益な情報を教えよう」
「有益な情報……サイコギルドの事ですか!?」
戦う意志を見せることはなく、衰弱した様子で万事屋に話しかけてきた。自身に残された時間を使って、サイコギルドに関する情報を伝えるらしい。一行が半信半疑で耳を傾けると、首領は淡々と事を打ち明けていく。
「ああ、そうだな。私はアイツらの手によって、この世界へと流れ着いた。サイコギルドはブラックホールに似た物質、サイコホールを使って、平行世界から刺客を呼び寄せているらしい……」
「刺客? 一体何のために呼び寄せているのですか?」
「それは私にも分からぬ。ただ一つ言える事は、奴等の計画はお前達の想像を遥かに越えている……それだけはしっかりと、肝に銘じて覚えておけ――」
そう言い残した途端に首領は言葉を失い、それ以上は何も口にしなかった。同時に肉体も砂のように崩れていき、風に吹かれて綺麗に消え去ってしまう。恐怖を与え続けた統率者の顛末は、呆気なく終わりを告げている。
「消えた……のか?」
「これで本当に勝ったんですね……」
勝利は確定したのだが、粘り強かった首領の退場にはしっくりと来ていなかった。新八やユイも疑問形で呟く始末である。一方で気になったのは、サイコギルドに関する新しい情報であった。
「サイコホールに刺客って……益々謎が深まったわね」
「想像を遥かに越える計画って、もうどう捉えたらいいのか分からないネ」
謎が解けるわけもなく、アスナや神楽はため息交じりに頭を抱えている。大雑把に計画を知らされても、何一つ事は進展などしていなかった。
「結局、ショッカー首領もサイコギルドの計画に利用されたって事か?」
「そうかもしれねぇな。ここまで大事に仕立てるなんざ、何か理由があんだろ? 俺はそう思うぜ……」
キリトや銀時も真剣に考察を進めているが、やはり息詰まっている。新たな謎も発生しており、さらなる情報が必要不可欠であった。問題の根本解決のために、二人は躍動に駆られている。万事屋一行が首領の証言に触れていると、目の前ではある変化が訪れていた。
「ん? って、みなさん!? 見てくださいよ、アレ!!」
新八が一早く気が付き、仲間達に大声で伝えていく。彼に釣られて前を見てみると、そこにあったのは――三つに並んでいる光り輝く扉である。
「どうしたって……扉?」
「なんで三つも現れているアルか?」
「そこじゃなくて、その隙間を見てくださいよ!」
彼の言う通りに扉からの隙間をよく見てみると、森林や町並みといったバラバラの場所が映し出されていた。恐らく別世界の銀時やキリトが暮らしていた世界であり、元凶を倒したことにより帰還への道筋が出来たと推測される。
「もしかして、この扉で元の世界に戻れるのか?」
「それじゃ……これでもう一人の私達も救えるって事?」
「やりましたね! これで全て解決ですよ! 皆さんに伝えてきましょうよ!!」
状況を飲み込んだ万事屋一行は、一度喜びを抑え込んで、チサ達のいる場所へと再び駆け寄っていく。彼女達も扉の情報を聞きつけると、みな喜びを露わにしていた。こうして長く続いた戦いは終焉を迎えて、場にいる全員に別れの時が訪れている……
それから数分が経った頃。三つの扉の前には、万事屋だけではなく高杉ら攘夷志士やキバオウを含めた戦士達が集結している。みな戦いを終えて心を落ち着かせながら、元の世界への帰還を楽しみに待ちわびていた。現在は全員がそれぞれの言葉で、戦いに協力してくれた仲間達に感謝や別れの一言を伝えあっている。
「ありがとうな、あの時に助けてくれて!」
「こちらこそ、共闘してくれてありがとうな!」
率直な言葉を言い合って感謝を伝える者が多いが、キバオウの場合は少しテイストが異なっていた。
「パクヤサさん……! アンタのおかげで、ワイは強くなったんや!! 本当に……良い侍でしたわ!!」
「そう感極まるな。元の世界へ戻っても、その強さを生かしてくれると俺は嬉しいぞ」
「はいー!!」
「ヤレヤレ。こりゃ、長く続きそうだな」
尊敬していたパクヤサとの別れを惜しんで、似合わない泣き顔を見せている。パクヤサ自身もしっかりと返答して、彼の感謝を受け取っていた。近くにいたディアベルも、静かに見守りながら事が済むのを待っている。
「クライン殿にシリカ殿。元の世界へ戻っても、達者にやるのだぞ」
「おう! 任せておけよ!」
「もちろんですよ! それにピナも、今までアタシ達を助けてくれてありがとうね!」
「ナー!!」
一方で桂は、共闘してくれたクラインとシリカに対して丁寧に礼を交わしていく。侍同士とあってか、特にクラインとは手厚い握手で接していた。さらにシリカも、協力したピナに感謝の言葉を伝えている。共に別れを惜しみながら、この時間を勤しんでいた。
「さて、おまんらも手伝ってくれてありがとうな。中々楽しい時間を過ごせたぜよ!」
「辰馬さんとのやり取りも悪く無かったわよ。こっちもいい刺激を受けたからね!」
「元の世界でも、アンタらしさを貫けよ!」
「おう、任せとき!!」
こちらでは、活気の良い挨拶を交わす坂本らの姿が目立っている。共闘する機会が多かったエギルやリズベットと接して、元気よく別れを伝えていく。
名残を惜しんでいるのは、もちろん万事屋一行も同じであった。
「あんかとよ。アタイに色々と接してくれて」
「こちらこそ。もう一人の私と共に戦えて、光栄だったわよ」
共に深い握手を交わして褒め合うのは二人のアスナである。性格や戦い方は大まかに異なるが互いを信じて突き進み、戦闘では見事なコンビネーションを見せていた。より強い絆を強めている中で、もう一人のアスナはある決意を本物のアスナへと伝えている。
「もしよ……元の世界へ戻ったら、打ち明けようと思うんだ。親に自分のしたい事や本心とかを。そうじゃないと、前に進めないと思ってさ……」
「それは良い決断よ。自分で抱え込むよりかは、打ち明けた方が気持ちも楽になるからね」
「そっか……ありがとうな」
しんみりとした表情で、今後の目標について語っていた。彼女なりの決意には、アスナもそっと後押しをしている。そんな二人の会話の中に、突如として神楽が割り込んできた。
「おおー! こんな真面目なアッスーは見た事がないネ! なんかもう一人の自分と触れ合って、少し乙女っぽくなったアルナ!!」
「お、乙女!? バカ、違ぇよ!! 何も変わってねぇし、アタイはそのまんまだって!!」
「そうアルか?」
「そうだって! 勝手に勘違いするなよ!!」
「さーて、どうかしらね?」
「お前もこの流れに乗っかるなよ!! ていうか、アタシがツッコんでいるだけじゃないか!!」
彼女の一言から始まって、場には和やかな空気が流れ込んでいる。取り乱して顔を赤くするもう一人のアスナに対して、神楽や本物のアスナがノリよくからかっていく。こうして三人の女子も、残された時間を有意義に接していた。
その一方でユイは、手助けしてくれた高杉に改めて礼を交わしている。
「あの、高杉さん。先程は助けていただいて、ありがとうございました!」
「別に大したことはしてねぇよ。子供にしては無茶が多いから、そこだけは気を付ろよ。それと……行動力だけは素直に褒めてやるよ」
そう言うと彼は、会話を終わらせて別の人物に話しかけていく。口数は少なかったのだが、ユイを思いやる優しさだけは彼女自身にも伝わっている。穏やかな表情で、真意を悟っていた。とそこへ、新八や定春もユイに声をかけてくる。
「別人とはいえ、高杉さんも褒める事ってあるんですね」
「えっ、そうなんですか!? と言うことはかなり珍しいんですね。貴重な体験ということでしょうか?」
「ワン!!」
あくまでも別人だが、高杉の他者を率直に褒める行為には、新八もつい目新しさを感じていた。それを知ったユイは、改めて彼からの言葉を深く心に刻み込んでいる。
そして二人の銀時やキリト、チサも名残惜しく別れを勤しんでいた。
「ありがとうな。土壇場で君の剣を貸してくれて」
「お前らのおかげで、チサも救い出せたからな」
「どういたしまして。君達の助けになって、俺達も嬉しい限りだよ」
「結構すれすれだったからな。まぁ、勝利できたんだし何よりだよな!」
まずは貸してもらった聖剣と木刀を返却して、本人の手元へと渡している。お礼を言いつつも彼等は、たわいない雰囲気で会話を進めていく。
「ところで元の世界へ戻ったら、君は一体どうするんだ?」
「僕は……まず自分の身の回りを整えるよ。それから普段通りの生活に戻って、もっと積極的に人付き合いをしていくよ」
「そっか。ようやく日常の生活に戻れるもんな」
変わらぬ日常へと戻り、本音を口にしていくもう一人のキリト。そんな彼とは違い銀時は、気を引き締めてやるべき事を声に上げていた。
「俺はまた戦争へと戻っていくぞ。大切な人を救い出すために、立ち止まっていられないからな」
「ふっ……精々頑張れよ。絶対にくたばるなよ」
「分かっているよ」
元の世界では三度過酷な戦いに戻っていくが、恐れを感じる事は無く堂々と立ち向かう構えを見せている。目的が大きく異なっている二人だが、それでもやり遂げる強い意志がある事に大差はなかった。その強さは本物の銀時やキリトも感じ取り、そっと背中を押して彼らを応援している。
しかしチサだけは、仲間との別れに少しだけ寂しさを覚えていた。
「でもこれで、みなさんともお別れなんですよ。別々の世界に戻っちゃうなんて……どこか寂しい感じです」
「チサ……そ、そんなことはないよ! 元の世界へ戻っても、この記憶がある限り僕達は一緒なんだよ!!」
「キ、キリト?」
悲しげな表情を浮かべる彼女に向けて、ここでもう一人のキリトが声を上げてくる。真剣な表情で、熱心にも説得を始めていた。
「チサが言う通りこれでお別れかもしれないけれど、それでも忘れなければ絶対にまた会えるよ! そう信じて僕は戻ろうと思っているんだ……だからチサも、また会えることを信じて前に進もうよ!!」
「……そうだよね。またいつか会えるよね、絶対に……!」
「うん……そうだ! 折角だし約束しよう! また会える日を祈って!」
「ええ!」
前向きに物事を捉えており、場の流れから固い握手を交わして約束を取り付けている。寂しさを紛らわすように、二人だけで明るく乗り越えていた。築かれた絆の強さには、見守っていたキリトも安心感を覚えている。
「良かったな。もう一人の俺……」
微笑みを浮かべながら、そっと呟いていた。さらに銀時ら二人も、さり気なく話題に乗っかっている。
「例え離れていても、また出会えるか……俺も叶うならば、またお前等とも会ってみたいな」
「今度は俺達の世界でも来るか? 万事屋らしいおもてなしで出迎えてやるよ」
「ふっ……考えておくよ」
冗談を交えながらこちらも親しげに接していた。各々が感謝を伝えて別れを惜しんでいき、限られた時間を過ごしている……
かくして夢世界で激戦を終えた者たちは、それぞれの世界に戻っていく。キリトら戦士達は、平穏な日常の世界へ。銀時ら攘夷志士達は、真っ只中な攘夷戦争の世界へ。そして万事屋とチサは――
「おっ、やっと目覚めたか。朝陽ぴったりに戻って来たな」
「ああ……おはよう、爺さん。千佐もちゃんと戻って来たよな」
「もちろんだ。さっきたまから連絡を受けて、あっちも目覚めたらしいぞ」
「良かった……これで、本当に終わったんだな」
一夜が明けた銀魂の世界に帰ってきている。眩い朝陽は既に町を照らしており、新しい今日を告げていた。時刻は五時半を指しており、制限時間までには間に合っている。万事屋一行のみならず、昏睡状態だった千佐も現実世界へと戻って来ていた。夢世界で起こった出来事を微かに思い出しながら、六人と一匹は徐々に目を覚ましていく――
なんだろう、このチサのヒロイン力は。書いていてそう感じました。
さて、次回でいよいよ夢幻解放篇は完結します。同時に次の章の内容もちょっとだけお見せします。それでは、また!!
次回予告
銀時 「とうとうこのスタンスで予告が戻るんだな」
神楽 「長篇の時は使われないセリフが多かったアルからナ!」
新八 「そこは作者の事情では……」
キリト「ていうか、みんなは誰に話しかけているんだ?」
新八 「いやいや、なんでもないです!」
銀時 「次回は「戦いを終えて」だからな」
アスナ「戦いならもう終わっているわよ?」
新八 「だから、そういう事じゃないんですって!!」