……今更ウォズネタと思うかもしれませんが、今日がアスナの誕生日なので、これがぴったりだと思いました。〈すいません。一日過ぎて時間に間に合いませんでした……〉
それはともかく……これで夢幻解放篇はラストです! 今回は本編に加えて、補足や次回の展開など盛りだくさんでお送りしていきます。では、どうぞ!
夢世界で起こったショッカーとの戦いは終わった。目的であったチサの救出に成功して、閉じ込められていたもう一人の銀時やキリトらも、それぞれの世界へと戻っている。万事屋の六人と一匹も元の世界に帰還して、何事も無く日常に返りつつあった。
事態が収束して一週間が経とうとした八月の上旬。入院していた千佐の容態も回復して、現在一行はたまと共に再び病院へと訪れている。
「千佐様。体調が回復して良かったですね」
「ありがとうございます、たまさん。怖い夢から解放されて、体も楽になりましたから」
声をかけてきたたまへ向けて、千佐は優しく微笑んで言葉を返していた。病室のベッドに入ったまま会話を進めているが、その穏やかな雰囲気は夢世界で出会ったチサを彷彿とさせる。万事屋は密かに二人を照らし合わせていた。
「やっぱり千佐とチサは同じ人間アルよな」
「と言う事は、夢世界での出来事もしっかりと覚えているのでしょうか?」
記憶の有無について心配するユイらであったが、それも皆無である。たまと話し込んでいる彼女だが、突然キリトと目が合うと、急に表情を変えて彼の顔へ近づいてきた。
「えっ、千佐さん? 一体何を……?」
しばらく黙り込んだまま見つめており、共に気まずい空気が流れ込んでいる。すると千佐は、首を傾げてこう断言していた。
「いや、違います。ごめんなさいね……実は夢の中で出会った男の子がいて、その姿がアナタと似ていたんです。よく見れば全然印象が違いますけど」
「そ、それって……どんな人だったんだ?」
「どんな人って……気弱で泣き虫だけど、ちょっぴり勇気のある男の子かな。またいつか会うって、約束もしたんだよ。叶うといいんだけどね……」
キリトの姿を見て、夢世界で出会ったもう一人のキリトを思い起こしている。彼女はしっかりと夢世界での記憶や約束について覚えていたのだ。この事実が分かっただけでも、万事屋にとっては十分すぎる成果である。
「やっぱり、アイツらとの約束も忘れていないんだな」
「千佐さんにとっては、かけがえのない仲間だったからね。忘れるはずなんて、きっと無いのよ」
「とりあえず一安心しましたね」
銀時やアスナらも口々に呟き、安堵の表情を浮かべていた。もちろんキリトも、同じように優しく微笑んでいる。
「ん? どうしたのですか?」
「いいや、なんでもないよ。ただ君が覚えておれば、いつか会えると俺は思っているよ」
「そうですか……ありがとうございます!」
希望を感じさせる言葉を聞き、千佐も再び笑顔で返していた。穏やかな雰囲気が場を包み込み、全員が屈託のない笑顔を浮かべている。そんな中で、彼女はある事を思い出していた。
「あっ、そうでした。たまさんに言われていたので、これをお渡ししますね」
そう言ってキリトに手渡したのは、一枚のノート用紙である。
「これは……」
「サイコギルドに関するメモです。アナタ達のお役に立てればなと思って、まとめておきました。有効的に使ってくださいね」
中身は自身が目にしたサイコギルドの情報が書かれていた。お礼としての気持ちを態度として露わにしている。これにはキリト達も驚きを見せていた。
すると病室には、また新たに知り合いが訪れていく。
「千佐―! またお見舞いに来たよー!」
「二人共! 今日はいつになく早くない?」
「気のせいだよ。ほぼ毎日来ているから、そんな大差はないって」
駆けつけたのは、千佐の大切な友人達である。万事屋とも面識のある二人であり、現在では明るく気を戻して、療養中の千佐を日々励ましていた。彼女達の仲睦まじい光景を見ると、万事屋一行も空気を読んで病室を出ようとしている。
「さて、そろそろ行くか。みんな」
「ああ。後はアイツらに任せておこうぜ」
ぞろぞろと出口へ向かおうとした時であった。
「あっ、待って! 万事屋のみなさん! ……千佐を助けていただき、ありがとうございました!」
「こっちも、お礼を言わせてもらうよ。本当にありがとうね!」
友人達は礼儀正しく頭を下げて、しっかりと礼を交わしていく。突然の感謝の言葉を聞き入れ、万事屋一行はつい歩みを止めてしまう。振り返るとそこには、とびっきりの笑顔を浮かべるチサ達が見えていた。
「お、お前等……」
「二人も根は真面目ですから、言わないと気が済まないんですよ。当然、私もですけど!」
「……はい! どういたしましてです!」
返答としてユイが元気よく声を上げて、その気持ちを受け取っている。当然銀時ら五人も同じ心構えであった。こうしてチサ達とは、印象に残る別れ方で場を締め括っている。
病室を後にした万事屋一行は、病院を抜けて庭にあったベンチに腰を掛けている。そこでメモを見開き、サイコギルドに関する情報を閲覧していた。
「えっと……最初に見たのは港で、そこには妖精のような少女と銀色の怪人が立ち並んでいたか」
「少女の名前はアンカーと呼ばれていて、銀色の怪人とも親しげな雰囲気だった」
「と言う事は、共に裏で繋がっていたんですね」
目にした言葉をキリトやアスナが発していき、ユイが内容をまとめている。まず理解したのは少女の名前や、銀色の怪人との接点であった。共に行動していることから、繋がりがあると断言できる。さらに万事屋の三人も続いていく。
「サイコギルドはブラックホール及びサイコホールを作り出していたか……」
「異次元の兵力と呼んで、仲間を増やしているようにも見えたってアルネ!」
「マントを羽織った怪人が現れた途端に、不思議な球状から記憶を与えていた……それが夢世界に繋がるという訳ですね」
夢世界にてショッカー首領が伝えていた情報と、誤差が無いか慎重に確かめていた。サイコホールに関する普及や、戦力を増強する策略が少なからず目に見えている。別世界のキリトらが現れたのも、やはりサイコギルドが大きく関係しているのだろうか。
メモ用紙を一通り見たところで、キリトらはまず情報を整理していく。
「うーん。ショッカー首領が言っていたことと、だいぶ合っているな」
「情報は大方これで間違いないアルナ……」
「やっぱり、サイコギルドの目的は勢力を拡大させることでしょうか?」
ユイも独自に考えを呟いてみるが、ここでアスナや新八からは反論が飛び交っている。
「それは間違いないと思うけど、でも結局私達には結びつかないわよね。この世界へ飛ばした理由も、まだ分かっていないから……」
「球体状の記憶って書いてあったけど、もしかしてサイコギルドにとって重要なアイテムじゃないのかな?」
「うーん。全然解決できないアル~!」
情報を選別できずに、神楽も頭を抱えてやむなく混乱してしまう。サイコギルドが持つ謎を今一度まとめると、四つほど浮かび上がってくる。
何故キリト達を銀魂世界に連れ去ったのか?
ブラックホールとは一線を画すサイコホールの正体。
ショッカー首領といった別世界からの勢力を呼び出す行動。
球体状に入った記憶をどこから手に入れたのか?
これらの情報から模索を続けてみるが、謎が謎を呼び結局みな息詰まりを見せていた。
「あ~じれったいから、もう行動するしかないネ! 港にいるなら、見張っていればその内出会えるんじゃないアルか!?」
「そ、そうかもしれませんけど、一般人に見つかっている限りは場所を変更しているんじゃないですか?」
「二度も同じ場所に現れるのは、可能性として低いのかもな……」
衝動的に神楽は思い切った提案をしてみるが、ユイやキリトらからはもっともな正論で言い返されてしまう。ブラックホールを生成する以上は、場所にこだわりはないと彼らは予測していた。おかげで足取りも掴めずに、万事屋一行はさらに頭を抱え込んでしまう。
一方で銀時だけは、違う観点からサイコギルドの目的について考察を続けていた。特に気がかりだったのは、キリト達を狙った理由である。少ない情報の中で彼はある仮説を立てているが、確証がない故か仲間達には伝えられずにいた。黙々と悩み続ける様子には、キリトらも気付き始めている。
「ん? 銀さん? さっきから考え込んでいるけど、一体どうしたの?」
「いや……サイコギルドについて考えていただけだよ。どうも情報が少なくてな、上手くまとまらねぇんだよ。考えすぎているだけかもしれないけどな……」
「そんなことは無いと思いますよ。試しに言ってみてはどうでしょうか?」
「いいや遠慮しとくよ。ぶっ飛びすぎて、テメェらには絶対理解できないと思うからな」
「そう言われると、余計気になっちゃうわね……。ねぇ、言ってみてて!!」
「だから遠慮するって! なんでお前等の方が、食いつきが良いんだよ!!」
銀時の考えた仮説に興味を示して、キリト、アスナ、ユイの三人はすかさず注目を寄せていく。思いのほか反応が良く、彼自身も威勢よくツッコミを加えている。さも平然と接しているようだが、新八と神楽の二人だけは銀時に対して微かな違和感を覚えていた。
「なんだか、銀ちゃんの様子がいつもと違うアル」
「自分の考えを言うのに、ためらっているのかな? 確か――前の会議の後に、僕達だけに言った事があったよね。サイコギルドとキリトさん達の関係について」
「偶然ではないって言っていたネ! てことはやっぱり銀ちゃんは、もう大方予想が付いているって事アルか……?」
「恐らくそうだと思うけど、僕達にあえて伝えないのは情報が少ないからじゃないかな? この先でまた新しい証拠を見つけたら、きっと僕達に打ち明かすと思うけど……」
「銀ちゃんも計画的に考えているってことアルか……」
あえて仮説をひた隠すのは、彼なりの配慮であると悟っている。サイコギルドにはまだ明かされていない謎が多くあり、確証を得てから打ち明かすと二人は予測していた。銀時との長い付き合いから、既にその本心はお見通しである。そんなことはつゆ知らずに、当の本人は話題を変えてキリトらとの会話を楽しんでいた。若干の温度差を感じつつも、万事屋一行は新しい目標の為に、また一歩前進している。
その後も話し合いは続けられたが、長くは持たずに早々と打ち切られてしまう。千佐からの情報は十分に役に立ったが、それでもサイコギルドへの謎は平行線を辿ったままである。気持ちを新たにして一行は、病院を後にすると住処である万事屋へ帰路についていた。その道中でも、彼女達の会話は続いている。
「ふっ……結局考えても分からなかったネ。もっと有力な情報があればいいアルけどな」
「また別の機会に聞き入れるかもしれないし、焦らずに余裕を持って進みましょう。それよりも今は、気持ちを入れ替えておこうよ。神楽ちゃん!」
「そうですよ! 新八さんでさえ切り替えているんですから、考えすぎは体に毒ですよ!」
「って、ユイちゃん!? 今さり気なく僕の事をディスらなかった!?」
未だに考察を引きずる神楽には、アスナやユイは気持ちを切り替えるように促してきた。特にユイは満面の笑みで、新八を例えとして上げている。彼女の言い草からは優しく聞こえずに、ツッコミを入れられる始末であった。
仲間内四人にて愉快な話が繰り広げられる中で、銀時やキリトは後ろ側に付き二人だけで話を続けている。
「ヤレヤレ、アイツらもいつも通りに戻って来たな。依頼が終わったからって、切り替えが早くないか?」
「それがアスナとユイの良いところだからね。今は考えても分からないし、一旦切り離すのが英断なんじゃないかな?」
「ウチのチャイナ娘とは偉い違いだな。熱が冷めるまでは、引きずるからな……アイツは」
女子達の考え方の違いを身に染みて感じており、銀時は目を細くして微妙な気持ちに浸っていた。一方のキリトは苦笑いをしながら、彼の真意について悟っている。
各々で会話を交わす万事屋一行だが、その道中にて一台の信号機に差し掛かっていた。アスナら四人は青信号の最中に横断歩道を渡れたのだが、銀時らが進もうとした途端に点滅してしまい、二人だけは歩道に取り残されてしまう。後に赤信号となり、再び青に切り替わるまでは待機を余儀なくされていた。
「あっ、待ってください! パパと銀時さんはまだ渡り切っていませんよ!」
「本当ネ! てっきりついてきているものだと思っていたネ!」
「ここはひとまず待ちましょうか」
仲間達も渡り遅れた二人に気が付き、合流の為に歩みを止めている。道路を挟んで車が次々と走り抜けているが、その向こう側の歩道には青信号を待つ銀時とキリトの姿が目に見えていた。何気ない日常の光景だが、アスナだけはどこか心に寂しさを感じ取っている。
「こうやって、いつかは離れちゃうのかな。神楽ちゃん達とも……」
「ん? 何か言ったアルか、アッスー?」
「いいや、何でもないわ。ふともう一人の私を思い起こしていただけよ」
「そうアルか。心配なんかしなくても、きっと元気にやっているアルよ」
「そうだよね……ありがとう神楽ちゃん」
気持ちを表に出せないまま、彼女は神楽に対して誤魔化していた。率直に言うとアスナは、万事屋との別れが来ることに抵抗を覚え始めている。夢世界で体験したもう一人の自分との別れを通して、少なからず意識してしまうようだ。心情を悟られないように仲間内では隠していたが、信号待ちで取り残された二人を目にして、比喩的に思い出したようである。夢世界での出来事が、思わぬ心境の変化を与えていた。
(今は気にしないって、考えていたのに……)
心の中ではその苦悩について、そっと呟いている。
一方で反対側の歩道にいる銀時とキリトも、似たような話題を上げて青信号に変わるのを待っていた。
「そういえばさ、もう一人の俺達って今はどうしているんだろうな……?」
「さぁな。俺のそっくりさんはきっと、変わらずに戦い続けていると思うぜ。なんせ改造人間にも立ち向かえるからな。簡単には死なねぇだろう」
「確かにな。じゃもう一人の俺も、平和な世界で元気に暮らしているよな」
「当たり前だろ。なんだかんだで根性が強いから、上手くやってるはずだよ」
「フフ……そうだと良いな」
夢世界で出会ったもう一人の自分達について触れており、しみじみと懐かしく思い出している。寂しい表情を互いに見せながらも、心の中では再会を心待ちにしていた。どこかも分からない別の世界の住人だとしても、覚えている限りは可能性を持ち続けている。そんな中で二人には、夢世界に関連してある疑問が頭に浮かんでいた。
「あ、そうだ。銀さんに一つ聞きたいことがあったんだ」
「奇遇だな。俺にも一つあるよ。キリトに聞きたいことが」
共に改まって呼吸を整えたところで、相手へ振り向きある質問を発していく。
「……吉田松陽って先生知っている?」
「……茅場晶彦って科学者は知っているか?」
それは夢世界で出会った不思議な人物の名だった。互いの人生に影響を与えた恩師だとも知らずに、好奇心から相手に聞いてみたのだが――
〈ドドド!!〉
その瞬間にダンプカーが轟音を放ちながら通り過ぎていき、二人の言葉をかき消していく。さらにはちょうど信号機も青に変わり、「カッコー」と音声まで鳴り始めていた。おかげで二人の質問は、何も聞こえずじまいで失敗に終わっている。
「あれ、キリト? お前今何て言ったんだ?」
「そういう銀さんこそ、何も聞こえなかったけど……?」
共に戸惑いを見せているが、そのような時間は皆無であった。向かい側の歩道からは早速、仲間達からの催促が聞こえている。
「おーい、キリト君に銀さん! 早く渡っちゃいなさい!!」
「また赤信号に変わるアルヨ!」
「急いでくださいね!!」
先に横断歩道を渡ったアスナやユイらが、大きく声をかけてきた。みな合流を待ちわびており、神楽に至ってはあくびまでかわす始末である。待機に飽きているアスナらを察して、キリトら二人は急いで向こう側へと渡り始めていく。
「って、そういえばもう赤なのかよ」
「ここの信号機って、案外早いんだな」
「地域あるあるだよな。じゃなくて、赤になる前に渡り切るぞ!」
「ああ、分かっているよ!」
青信号が変わる前に横断歩道を走り抜き、仲間達との合流を図っている。渡り切った途端には再び信号が点滅しており、ギリギリ時間には間に合っていた。
「って、赤に戻るのも早いな。これも地域あるあるだよな」
「そうじゃなくて、二人共遅いアルよ! いちいちのんびりしているから、歩道にも勢いにも取り残されてしまうネ! 今後は気を付けるヨロシ!」
「神楽に怒られるのは、結構珍しいな……」
事情を知らない神楽からは、強気な態度で注意を促されている。怒りを露わにする彼女に、二人は頭が上がらなかった。そんな神楽の気持ちを落ち着かせたところで、万事屋一行は再び帰路へと戻り始めている。
「では、このまま万事屋に帰りましょうか」
新八もさり気なく声を上げたその時であった。
「キリトさ~ん!!」
「キリトー!!」
「ん? って、ギャャャ!!」
突然万事屋の元にシリカとリズベットが駆けつけて、正面にいた銀時を突き倒してしまう。被害を被った銀時であったが、彼に構うことは無く二人は勢いのままにキリトへと話しかけてくる。
「シリカにリズ!? 一体どうしたんだ、急に?」
「どうしたもこうしたもありませんよ!! 手紙で言っていたじゃないですか! 変な夢を見続けているって!」
「ここ最近は収まったけど、それでも大変だったのよ! ショッカーとか言う悪の組織まで現れるし、溜まったもんじゃなかったのよ!!」
「そ、そうだったんだ……」
激しく主張する夢の内容を聞き、キリトもタジタジになって恐縮してしまう。夢世界やショッカーの真相は既に知り得ているが、説明には時間を要するので、ここは苦笑いで誤魔化しを入れるしかなかった。反応に困っていた時、ようやく銀時も起き上がって早々に文句を口にしている。
「おい!! 何仕掛けてんだ、てめぇら!! 詫びの一つでも入れとけよ、ゴラァ!!」
「えっ!? だって銀さんは頑丈なんでしょ? これくらい大したことないって、お妙さんは言っていたわよ」
「むしろ攻撃した方が良いと、月姉さんからも言われましたよ!」
「原因はアイツらかい!! 何とんでもねぇ教育してんだよ!! 同じ主人公なのに、待遇の差が酷すぎやしないか!!」
持論を聞いた銀時はさらに激しいツッコミを入れていた。キリトとの待遇の差が広がり、なおかつ妙や月詠と言った知り合いからもシリカ達は影響を受けている。その結果彼には、不憫さが残ることとなった。悲壮感漂う現状には、仲間達もつい同情をしてしまう。
「銀ちゃんの嘆きが寂しく聞こえるアル……」
「もう何を言っても変わらないと思うけど……って、そういえばー同じ夢を見続ける現象って結局何だったの?」
「あっ、そんな現象ありましたよね! きっと夢世界に関する事だと思うけど……」
会話の最中にて、アスナや新八らが思い出したのは残された謎である。キリトやシリカらを始め一部の人物が、夢世界を模した夢を見続ける現象だが――銀時には既に目星が付いていた。
「ああ。それはきっとアレだよ。作者の伏線回収で、きっと取りこぼしたんだろうな」
「なるほど、そういう事アルか!」
「いや、なるほどじゃないだろ!! 完全に投げっぱなしじゃないですか!!」
まさかの投げやりな結論を聞き、新八は反射的にツッコミを加える。作者の事情を察する銀時らしいメタな考え方であった。
「いいんだよ、別に。そこまで大したことじゃないだろ? 見た目は同じだから、きっと影響を少なからず受けたんだよ」
「アンタがそれを言ったら、おしまいな気がするんですけど……」
恐縮することなく彼は、むしろ堂々とした態度で理由を説明している。勢いのまま押されていき、新八も返す言葉が見当たらなかった。銀魂らしいメタな空気感は、アスナらには一斉伝わらず、彼女達は苦笑いで聞き入れている。
一方でシリカとリズベットは、未だにキリトへ夢の中での出来事について語っていた。
「それに聞いてくださいよ! アタシが桂さんやクラインさんと共闘して、バッタのような怪人に挑んでいたんですよ! 信じられますか!?」
「アンタはまだマシよ! こっちに至っては、坂本辰馬って言う謎の男と共に戦っていたのよ! なんであんなに仲良くできたのか、本当に謎なんだけど!」
「お、落ち着けって二人共。あくまでも夢なんだから、そんなムキにならなくても良いんじゃないか?」
白熱する夢談義には、キリトもついていけずに困惑を露わにしている。冷静に二人をなだめていた時、またも知り合いと鉢合わせしていた。
「あっ、見つけた!」
「二人共、ここにいたの?」
「って、リーファちゃんにシノノンまで来たの!?」
姿を見せたのは夢世界と一斉関わりのないリーファとシノンの二人である。どうやらリズベット達を探していた様子であり、発見と同時に近づいている。そこには万事屋もいた為、思わぬ再会に二人は驚きを見せていた。
「久しぶり、みんな! ……ていうか、一か月しか経っていないのに、本当に久しい感じがするんだけど」
「体感的には半年間も会っていない気がするわね……」
「って、きっと気のせいですよ! 会っていない分、感覚が麻痺しているだけだと思いますよ!!」
冷や汗が出るような言葉を聞き、新八はついツッコミを激しく加えている。振り返ればシノンらとは会議以来の再会であるが、事情込みで言うと万事屋との共演は実に半年以上経っていた。長篇を挟んでいた故に久しぶりの出番なのである。
そんな裏事情はさておき、リーファらは万事屋との再会に興じて高揚とした気分で接していた。
「あっ、そうだ! 折角みんなオフで集まったんだし、どこかへ遊びに行かない? 例えば……カラオケとか!」
「それはいいわね。滅多には無いことだし、キリト達も一緒に行きましょうよ!」
思いつき際にカラオケを提案すると、もちろん近くにいたシリカやリズベットも貪欲に後押しをしていく。
「そうです! 皆さんで行きましょうよ!」
「まだまだ話足りない事もあるし、このまま直行ってことで!」
「ああ、今日は特に予定は無いし……行ってみるか?」
「別に大丈夫だよ。俺達も参加できるんだったら」
女子達の雰囲気に流されながら、万事屋一行は予定を変更して共にカラオケへ向かうこととなる。誘いが成功して喜びに溢れているシリカら四人に対して、万事屋もまた違った喜びを表していた。
「やっほいー! 久々のカラオケアル! 何を食べようかな、アル~!」
「って、神楽ちゃんはやっぱり歌より料理なのね」
「神楽さんらしくて良いじゃないですか!」
特に神楽は歌よりも料理に興味をそそられており、急にテンションを上げている。カラオケへの期待でみなが心を弾ませていく中で、彼らの元にはさらなる知り合いが訪れてきた。
「ハハハ! カラオケか! 実に良い選択ではないか!!」
「ならば、この俺達もついていくぜ!!」
「こ、この声はまさか……」
威勢が良い二人の男性の声が聞こえてきたが、その正体を一行はすぐに察している。すると彼らは、瞬く間に目の前へと姿を現してきた。
「……やっぱり、ヅラクラかよ」
「ヅラクラじゃない! 桂だ! そして!」
「クラインだ! 勝手に略すんじゃねぇよ!!」
お決まりのフレーズを発して、二人は同じく満足気な表情を浮かべている。侍を心掛ける攘夷志士、桂とクラインとも久しぶりに再会を果たしたのだが――残念ながら万事屋ほど驚きは無かった。
「……余計バカに磨きがかかっているわね」
「てか、何しに来たのアンタら! こっちからは呼んですらいないんだけど!」
「ただの出オチでしかないネ! 分かったら、さっさと散るアルよ!!」
それどころかシノン、リズベット、神楽の三人からは辛辣な言葉まで飛び交う始末である。すこぶる反応の悪い二人であったが、意見には左右されずにそのまま自分のペースを貫いていく。
「フッ……何を言っている。我らにもちゃんとした理由があるのだ。なんせ、ついさっきまで有終の美を飾ったのだからな!」
「有終の美? 一体何をしたんですか?」
ユイが思わず質問してみると、桂に代わってクラインが返答していた。
「おう! それはな……遠征でイタリィに行った時に得た奇襲作戦なんだよ!」
「って、そういえばこいつら遠出していたっけ……」
「てか、私達が知らない間に、外国に行っていたんだ……」
ここで改めて万事屋一行は、手紙通りに桂達が異国へ遠征に行った事実を知り得ている。もちろんリーファら女子達にとっては、初耳な情報であった。
それはさておき、桂達は淡々と異国での体験談を明かしていく。
「ピザ修行の傍らで現地の爆弾製造に勤しみ、まさに充実した日々であったな」
「アレ? これって、侍に必要な技術なの?」
シリカからの野暮なツッコミを素通りして、桂は話を続けている。
「そこで我々は実現したのだ。真選組への奇襲に必要な疑似爆弾を! というわけで、たった今作戦を遂行してきたのだ」
「……たった今?」
唐突な成功宣言を聞き入れて、万事屋一行は体が固まり反応に困ってしまう。思えば「有終の美」や「作戦」と言った言葉を発している時点で、桂達には疑念を持っても不思議ではなかった。銀時は恐る恐るその真実について確かめる事にする。
「……で、何をやったんだよ?」
「フフ……聞いて驚くなよ。実はピザ屋を装って真選組屯所に、ピザ型の爆弾を仕掛けたのだ!! どうだ、中々の名案だろ?」
「桂さん直伝の作戦なんだぜ! 凄いだろ!」
(((はい?)))
やはり嫌な予感は当たっており、一行の心の中にはただならぬ困惑が広がっていた。どうやら桂一派は、異国で得た技術を生かして、ピザ型の爆弾を真選組の屯所に仕掛けてきたようである。桂やクラインは誇らしげに自信を露わにしているが、対して万事屋一行は当然のように呆れ果てていた。桂の意志を曲げない性格と、クラインの信じやすい性格が悪い方向に向いた瞬間である。
もちろんこんな仕打ちを受けて、真選組も黙っている訳にはいかなかった。
〈ヒュー!!〉
「ん? って、うわぁ!?」
「な、なんだよ急に!?」
突如として桂達の元には、簡易型爆弾であるジャスタウェイが襲い掛かってくる。煙が立ち込める中で、彼らの目線の先にはあの天敵が姿を見せていた。
「御用だ桂ぁ! 神妙につきやがれ!!」
「よくもピザ型の爆弾を仕掛けてきたな、コノヤロー」
そこには激情に駆られている土方と沖田の二人が立ち並んでいる。手にはバズーカやジャスタウェイといった遠距離型の武器を装備しており、武装も完璧に仕上げていた。彼らの隊士服には黒く焦げた跡があり、恐らく桂からの爆弾を受けたに違いはない。その影響からか、共に表情も怒りに満ち溢れている。
「って、土方さんと沖田さんが来ていますよ!!」
「嘘でしょ!? 桂さん達を追って、ここまで来たって事!?」
執念深い真選組の一面に驚嘆して、シリカやリズベットは大きく声を上げていた。さらに銀時も、真選組の襲撃には文句を口にしている。
「おい、てめぇら! なんで俺達まで巻き込まれなきゃいけねぇんだよ! それでも江戸の警察かよ!」
「何文句を抜かしてんだ、天然パーマ! おめぇらは別件でしょっぴいているんだよ! 闇〇業もしてねぇのに、五か月間も出番が無いとはどういう了見だよ!?」
「そこなんですか、気にしていた事!? てか出番云々は僕等じゃなくて、原作者に問い合わせてくださいよ!!」
土方からの思わぬ反論には、新八もツッコミを加えていた。真選組もまた剣魂では久しぶりの登場であり、しばらく出番が無かった憂いを晴らすために、銀時へ八つ当たりを仕向けている。土方だけではなく、沖田も同じ気持ちを持ち合わせていた。
「うるせー。もうめんどいから、全員分吹っ飛んじまえー。どーん!!」
棒読みで呟いた後にバズーカを構えると、何のためらいも無く銀時らの方へ砲撃を放っている。治安部隊とは思えない横柄な所業の数々に、リーファやシノンも動揺を隠しきれていない。
「って、本当に砲撃してきたんだけど!? 沖田さん、ドSにもほどがあるって!!」
「それよりも、早く逃げないと余計に食らうわよ!!」
「ならば仕方ない……撤退だ!!」
「お前が仕切るんじゃねぇぇぇ!!」
原因の一端でもある桂は、足早にその場を去っていき、砲撃から免れようと走り出した。彼に続いてクラインや銀時らも、彼の跡を追うように逃げ出している。
「待ちやがれ、天パに桂ぁ!!」
さらにその跡を、怒り心頭の土方や沖田が追いかけていく。こうして、カオスさが極まりない逃走劇が幕を開いたのであった。
「おい、ヅラにクラ! 元々お前の責任アルから、どうにか犠牲になれアル!」
「そんな殺生な事は言うな、リーダー! これも攘夷活動にとって、仕方ないことだ!!」
「そうだぜ! 桂さんの言う通りだ! 逃げるのも立派な侍の役目だよ!」
「いや、アンタがやってることはただのテロ活動だから!! そこに気が付いてくださいよ!!」
走りながら文句をぶつける神楽らであったが、桂やクラインからは一斉の詫びは返ってきていない。持論を展開しており、新八からは強いツッコミを加えられてしまう。
巻き込まれる形で真選組に追いかけられる万事屋一行や桂達だが、その中でもアスナだけはどこか賑やかな空気に安心感を覚えていた。
「フフ……やっぱり賑やかな方が、万事屋らしく見えるわね」
「ん? ママ? どうしたんですか?」
「なんでもないわよ。ただこの状況も、悪くないって思っていただけよ」
「そうなのですか?」
いつの間にか彼女も不安が吹き飛んで、心から笑いあっている。一方で銀時とキリトは、走りながらこの状況を抜け出す作戦を練っていた。
「おい、キリト! とりあえず、作戦でも立てるか! 真選組から撒く方法を!」
「そんなの簡単だよ! 桂さん達を追い抜けばいいだけの話だから!」
「何!? そうはいかぬぞ! 競争であれば、こちらもフルスロットルだ!!」
「おめぇはいいから、報いを受けろやぁぁぁ!!」
勝手に対抗心を燃やす桂の行為には、銀時も我慢できずに大声でツッコミを入れている。カラオケまでの道のりはとても程遠く、今全員はこの逃走劇を走り抜ける事で躍起になっていた。
かくして夢世界での一件を全て片付けた万事屋は、新しい目標を掲げると共に、いつものハチャメチャな日常へと戻っていく……
一方でこちらは、江戸から離れた人気のない山の深層部。森林が生い茂る木々の中を潜り抜けると、突如として現れるのは寂れた雰囲気を醸し出す一つの遺跡であった。その暗い内部には、未発達である小型のブラックホールやサイコホールが、辺り一面に渦巻いている。
当然近くには、サイコギルドに属するアンカーと銀色の怪人が佇んでいた。刺客として放ったショッカー首領が倒されたことで、彼等は一連の流れを振り返り、次なる手を打ち始めている。
「ショッカー首領、やられちゃったね。何か呆気なくない? アレでも仮面ライダーってヒーローを追い詰めた強敵なんでしょ?」
「フッ……奴は既に不完全だったからな。本来の力は出せなかったのだろう。それに、あやつが勝とうが負けようが、我々には関係のない話だ」
「アレ? そうだっけ?」
「そうだ。今の我々にとっては、組織としての兵力が必要不可欠だからな。首領が来たサイコホールからは、数多の改造人間の記憶が渦巻いていた。それらを一つに集めて、今はこの玉に収めている」
そう言って怪人が見せてきたのは、緑色に輝く小さき球体であった。よく覗いてみると、夢世界で姿を見せた改造人間の同志が薄っすらと見えている。文字通りサイコギルドの兵力として、有効活用するようだ。これにはアンカーも強い興味を示している。
「へぇー凄いじゃん! これでまた記憶を圧縮させたんだね! これならサイコギルドの勢力拡大も間違いなしだよ!!」
「いいや、慌てるな。まだ計画は始まったばかりだ。ゆっくりと進もうではないか。我等の復讐の為にも……」
「オーケー、任せてね! シャドームーンさん!」
壮大な計画を頭に浮かべながら、アンカーは協力者である銀色の怪人――いや、シャドームーンに了承していた。かつて仮面ライダーBLACKを追い詰めた強敵が、何故サイコギルドに加担しているのか……その理由は定かではない。
「さて、次なる準備へと進めようではないか。新しい刺客も用意してあるからな」
「刺客って、あの男のこと?」
「ああ。昭和が猛威を振るうならば、平成も負けてはいられん。覚悟しとけよ……坂田銀時に桐ケ谷和人……!!」
彼は銀時やキリトの本名を上げながら、新しい計画を刻々と進めていた。謎が謎を呼ぶサイコギルドという組織。まだその全体像を把握できないまま、密かに銀魂世界で暗躍を続けている……
色々ありましたが、銀魂らしい終わり方で長篇を締め括りました。四か月ほど連載していましたが、一言で例えると「ぶっ飛んだ」としか言いようがありません。
今回は攘夷戦争やアインクラッドでの戦いをモチーフにしていますが、あえて原作には似せずに話を作っていました。そもそも銀魂もSAOも原作での時系列に沿って作っているので、同じことをしても今作には合わないだろうと思っていました。その結果、夢世界での設定を作ってサチに似た少女チサや、性格の違う銀時やキリトを出して、オリジナル風に仕立てていきました。でも今作に出たキャラはあくまでも別人設定なので、ちょっと感情移入しにくかったと私自身も自覚しています。(汗)
それでもグッとくる場面もあって、本物の銀時やキリトが茅場昌彦や吉田松陽と出会うシーンや、原作では出番の少ないサチの別人が活躍したりと、前にも言った挑戦作としては相応しかったと思います。
後は黒幕としてショッカーが出てきましたが、それは話を作る前から決まっていました。思いもよらぬ敵と言う事で、皆さんが予想しづらい相手を出しましたが――いかがだったでしょうか? 今後も予想もしない敵役は出す予定ですが、既に私自身で決まっているのでそこはご了承ください。
最後になりますが、長篇を通じて私自身にもある変化が生まれました。まだ確定事項ではありませんが、最終的に銀魂とSAOの未来が変わるかもしれません。このことについては、また別の長篇のあとがきで普及しようと思っています。(まだ上手くまとまっていないので……)
さて次回からは日常回を中心にまずは描いていきます。そしてそれが終わったら……また戦闘系の長篇に移ろうと思っています。今度は本人達が参加できるように調節していきます。それでは長く付き合っていただき、ありがとうございました!
新シリーズ予告! 剣魂は再び日常回へ!!
銀時「俺達の日常がまた始まるから、サイコギルド云々は一旦お休みな」
神楽「掲載から一年以上経って、ようやく八月って遅すぎアルよ!」
新八「オィィィィ!! 予告で赤裸々にぶっちゃけるんじゃねぇよ!!」
季節はいよいよ夏から秋へ! 八月~九月に起こった銀魂世界での日常を、一話完結型で描いていく! キリト達SAOキャラクターも、さらなるドタバタ劇に巻き込まれていくぞ!! 夢の共演を見逃すな!!
そんな次回は――「男には隠しておきたい秘密が多々ある!」
近藤「おっ、てことは俺の主役回か!!」
銀時「いいや、晴太が主役みたいだから、ゴリラの出番はないぞ」
近藤「……はい!?」