剣魂    作:トライアル

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 祝え! ゲーム攻略に長けて、仲間の為に全力を尽くす少年の生誕を! その名は桐ケ谷和人ことキリト! これからも剣魂で活躍する主人公に、祝福を上げようではないか!

 アスナの誕生日から一週間後。ちょうどキリトも誕生日を迎えたので、今回もウォズネタで祝いました。ていうか、10月上旬は誕生日迎えるキャラが多すぎるんだよ! 今度は銀さんに向けて頑張ってみるか……アレ? 誰か一人忘れているような……

 さて、「剣魂」の方では日常回に一旦戻り「真夏の日常回篇」が始まります! この章ではこれまで出演した銀魂・SAOキャラクターのみならず、様々なサブキャラの登場や、意外な共演を主軸に描いていきます。より銀魂らしい日常に近づいていくので、応援のほどをよろしくお願いします!

 そんな今回は晴太とそのお友達が主役です! キリトの誕生日なのに場違いな感じがしますが……気にせずにご覧ください。ちなみにこの話だけは、時系列が7月下旬となっています。



第四章 真夏の日常回篇
第四十訓 男には隠しておきたい秘密が多々ある!


 江戸の近くに建てられている一軒の寺子屋。そこには日輪の義息子である晴太も通っており、友人達と共に日々勉学に励んでいた。七月も終盤に差し掛かった今日は、終業式が行われており、待ち望んでいた夏休みにみな期待を膨らませている。ホームルームも終わって生徒たちが帰宅の準備を進める一方で、晴太の元には桃色の和服を着た少女が話しかけてきた。

「晴太君! 夏休みも始まるし、折角だから今度お家に遊びに行ってもいいかな?」

「えっ!? それは……」

 元気よく笑顔で接してきたのは、クラスメイト兼友人でもあるいずみであった。愛想が良く明るい性格の彼女は、晴太とも気軽に話せるほど親しい関係を築き上げている。故に遊ぶ機会も多かったが、彼女から誘ってきたのは今回が初めてであった。

(ど、どうしよう……まだいずみちゃん達には、リフ姉達の事を言ってないし……)

 ところが、晴太の心の中では迷いが生まれている。実は彼、自身の家で同居しているシリカやリズベットら女子陣の事を、まだ友人達に明かしていないのだ。タイミングを密かに伺っていたが、言う機会も見出せず今に至っている。

「ご、ごめん! まだ母ちゃん達に確認していないから、決まったら伝えに行くね!!」

「って、晴太君!? もう行っちゃうの?」

「今日は忙しいから――!」

 返す言葉に詰まってしまい、晴太は急ぎ気味に話をはぐらかして去ってしまう。彼の不自然な態度には、いずみも薄々勘付いている。

「怪しい……」

「ん? どうしたんだ、いずみ」

「あっ、お兄ちゃん! 聞いてって! 晴太君の様子が最近変なんだよ! 遊びに行くって約束したのに、急にうやむやにするなんて、きっと何かを隠しているんだよ!!」

 疑いを強めながら彼女は、近くにいた自身の兄に向けて昨今の晴太の様子について話していた。熱意が収まらない妹とは異なり、兄は冷静に物事を分析している。

「って、アイツにも事情があるんだろ。その内落ち着いたら、きっと向こうから誘いに来ると思うよ」

「お兄ちゃんは呑気に考えすぎだよ! 夏休みも今日から始まっちゃうのに――こうなったら、私達の目で今から確かめに行こうよ!」

「はぁ? 今から……?」

 しかし説得をしても、彼女の意志が変わる事は無かった。夏休みに入る前にどうしても事実をはっきりさせたいので、兄を巻き込んで晴太の跡を追いかけようとしている。こうしていずみの積極的な行動から、晴太の隠していた秘密が徐々に暴かれていく――

 

「はぁ……いつどのタイミングで、みんなに言えばいいんだろうか」

 ため息を吐きながら晴太は、深く考え込んで帰り道をゆっくりと進んでいる。実際同居している女子達の一件も、好機さえあれば友人達に訳を話して、素直に打ち明ける考えではあった。ところが中々言い出せずに、ズルズルと長引かせてしまい、つい後悔を覚えている。

 そんな彼の後ろには、いずみら二人が密かに身を潜めて尾行を始めていた。電柱を影に利用して一定の距離を保って、静かに晴太の様子を伺っている。彼が移動すると同時に、二人もまた別の電柱に移動して身を隠していた。真実を知るためにやる気に溢れるいずみだが、兄はそこまで乗り気ではなく、二人の間には早速温度差が生じている。

「それで結局ついてきたんだが、何一つ変わらねぇじゃないか。やっぱり、いずみの思い違いじゃないのか?」

「そんなことないよ。きっと晴太君には誰にも言えない事情があるんだよ。まだまだこれからだから、お兄ちゃんもちゃんとついてきて!」

「はいはい、分かっているよ……」

 兄に何を言われようが、いずみは意志を曲げずに尾行を続けていく。妹の真っすぐな態度には彼自身も苦労を感じていたが、それでも内心では心配しており、今もこうして行動を共にしていた。

(こういう時のいずみは、梃子でも意志を曲げないからな……まあ、その内にほとぼりも冷めて諦めるだろう)

 心の中ではそっと本音を呟いている。晴太の隠し事についても、彼はさほど重要視はしていなかった。本人の様子を後ろから覗いても、特に怪しい行動は見当たらないからである。目を閉じて今後の状況を定めていると、ずっと見張っていたいずみは途端に強い動揺を露わにしてきた。

「えっ……? 嘘!?」

「どうしたんだ? 動かぬ証拠でも掴んだのか?」

「お兄ちゃん。ア……アレを見て」

「アレって……えっ!?」

 彼女の驚嘆とした反応に気が付き、兄も目を見開くと、目の前の光景を凝視していく。すると彼も反動で驚いてしまい、表情を一変させていた。彼らが見たものとは――

「あっ、晴太さんだ! おーい!」

「ナー!!」

「ん? もしかして、シリカ姉とピナ?」

晴太が知り合いらしき女子と出会う光景である。彼女の容姿は見慣れないファンタジー風の衣装であり、茶色い猫耳と尻尾を生やした天人のような風貌であった。肩には水色の小さき竜も乗せており、地球人ではないことが遠目からでも理解できる。

おかげでいずみら二人は、早速頭を混乱させていた。

「だ、だ、誰あの女の子!? 晴太君と……ど、どんな関係なの!?」

「お、落ち着けいずみ! まずは大声を出さずに、冷静になれって」

「そ、そう言われても……仕方ないじゃん。猫耳の天人と知り合いなんて、まったく聞かされてなかったから……」

 彼女は分かりやすく心を惑わせており、頭の中では晴太と少女の関係性について考えを煮詰めている。変な詮索まで始めてしまい、中々心を落ち着かせずにいた。一方の兄も、晴太の交友関係には驚きを見せている。

(これは予想外だったな……でも、なんで俺達に黙っておくんだよ。やましいことも無かったら、普通に打ち明けてくれるだろうし……)

 こちらも心の中では、猫耳の少女との関係性について注目を寄せていた。兄妹揃って晴太の彼女疑惑に関心を強めている。

 そんな彼女の正体は、ひのやに下宿している女子の一人シリカであった。晴太からも信頼されており、姉弟のような仲で彼と親睦を深めている。いずみらの眼差しには気が付くことは無く、彼女は晴太と会話を進めていく。

「この時間に会うなんて意外ですね! 晴太さんはもう帰宅時間ですか?」

「今日はそうだよ。終業式だったから、早めに終わったんだ」

「そうだったんですか。では一緒に帰りませんか? アタシも百華のお手伝いが終わって、ひのやに戻る最中だったんですよ!」

「そうなんだ。じゃ、一緒に帰ろうか。シリカ姉やピナと帰るのも、結構新鮮だし」

「ナー!」

 どうやら共に帰宅する途中であり、このまま合流して一緒にひのやへと家路に着くようであった。目的を一致させた二人は互いに微笑んだ後、相手に寄り添いながら横へ並び、歩みを進めていく。この晴太らの後ろ姿を目にして、いずみ達の心はさらにかき乱されている。

「えっ……そのまま一緒に歩いている!? これはどういうこと?」

「おいおい、待てよ。本格的に匂ってきたぞ。まさかあの猫耳女子が、晴太の彼女――」

「そ、そ、そんな訳ないよ!! 晴太君だったら、別の女子と付き合っても秘密にはしないはずだよ! 多分……」

「……とにかく、もっと探ってみるか」

 未だに落ち着けない彼女は、体を震わせて必死に否定を念じていた。兄の方も動揺した気持ちを押し込ませて、妹に説得を加えていく。さらなる事実を得るためにも、二人は三度電柱の影へ渡って移動しながら、晴太の尾行を続けている。その最中には、隙を見て晴太と猫耳少女との会話を盗み聞きしていた。

「それにしても、この世界の女性って比較的に背が高いですよね。お妙さんや月姉とかも高めだし……背が小さいアタシにとっては、羨ましい限りですよ!」

「そんなことはないよ。シリカ姉はまだリズ姉達よりも若いんだし、巻き返すチャンスは幾らでもあると思うよ」

「そう言って晴太さんも、いつかはアタシよりも絶対に大きくなりますよ。男子ってのは、いきなり成長しますからね……!」

「ハハ……そこまで気にしているんだ」

 話題に上がっていたのは身長や容姿に関連することである。シリカが抱えている悩みを晴太が聞き入っているようにも見えていた。高身長に強い憧れを見せる彼女の姿勢には、晴太も苦笑いで接していく。

 その一部を聞いていたいずみらは、普通の会話にすら神経質に考えている。

「猫耳少女は身長を特に気にしている……と言う事は、晴太君よりも年上だよね?」

「そこは別に気にしなくても良いんじゃないのか?」

 兄からはもっともなツッコミを返される始末であった。慎重に晴太達を見張っていると、ある一幕が起こっている。

「ん? シリカ姉の猫耳に、綿がついているよ」

「えっ、本当ですか? ――取れましたか?」

「いいや、全然。オイラが代わりに取ってあげるよ」

 シリカの猫耳に付いている綿埃に気が付くと、晴太は背伸びをして彼女の代わりに綿埃を取っていた。何気ない日常の光景であるが、いずみらにとっては死角になる部分もあり、一連の行動から間違った解釈をしている。

「急な背伸びって、まさか……身長差を利用してキスでもしているの……!?」

「落ち着けって。アイツが堂々とするようなタマじゃないだろ? 早とちりすんなよ」

 過敏にもいずみは、二人がキスしていると思い込み、さらなる困惑に苛まれていた。反応がいちいち忙しい妹の姿に、兄からはまたも冷静になるよう促していく。

 緊迫とした空気が彼女達の間に流れ込む中で、晴太たちの元にはまた新たに知り合いが近づいてくる。

「アレ? 晴太にシリカじゃん! 一緒に帰っているなんて、珍しいわね!」

「って、この声は……リズ姉!?」

「当たり~! ここで会うなんて、奇遇だね!」

 軽く親しげな感じで接してきたのは、シリカと同じくひのやに下宿する女子、リズベットであった。女子メンバーでは意外にも最年長であり、比較的に場を仕切るお姉さん気質な一面を持っている。故に積極性が高く、晴太にはからかい気味に接することも多い。

「というか、リズさんももしかして仕事が終わったんですか?」

「そうそう! 今日は鉄子さんが午後から予定があって、店も早く閉めたのよ。それで帰宅していたら、アンタ達に出会ったってわけ」

「そ、そうだったんだ」

 彼女もまた理由があって、普段よりも早く家路に着いていた。度重なる女子達との遭遇には、晴太もつい不思議さを感じている。

 しかしその遭遇が、いずみらに間違った誤解を与えようとは知る由もないであろう。

「こ、今度は誰……!? また新しい女の子が現れたんだけど……!?」

「なんか雰囲気が猫耳少女と似ているな……彼女の知り合いとか?」

「どっちにしても、気になってしょうがない……!」

 突如として現れたピンク髪の少女に、二人は遠目で注目を寄せている。猫耳少女とはどこか衣装の雰囲気は同じだが、一見すると十代後半にも見えなくはない。益々晴太との関連性が分からなくなっていた。

 するとリズベットはある誘惑を思いつき、早速晴太へ向けて仕掛けてくる。

「それはそうと……晴太もアタシ達に対して、抵抗心が随分と薄れたわよね」

「ええ、そうかな? 半月くらい二人と一緒に暮らしているから、自然に慣れただけだと思うけど……」

「ふーん。だったら……」

 そう言うと彼女は徐に近づき、満面の笑みを見せたところで――

「えい!!」

「ん!? リ、リズ姉!?」

両手を広げて彼をがっちりと抱きしめてきた。彼女の大胆すぎる行動には、晴太や近場にいたシリカも困惑して、顔を赤くしてしまう。驚いた反応を面白がるように、リズベットは無邪気にも笑って状況を楽しんでいた。

「こういうのも、別に問題ないってことでしょ?」

「って、急すぎるってば!! オイラは別に抱きしめてなんて、お願いもしてないよ!!」

「何言ってんの! アタシ達にとって晴太は弟みたいな存在だから、ハグくらいごく普通のスキンシップでしょ?」

「そこまで子供じゃないよ! オイラは!!」

 持論を展開しながら、晴太へ女子らしい挑発を続けている。彼の純朴な性格を利用して、時折悪戯やからかいを仕掛けるのも、もはやお馴染みの場面であった。

「ハハ……リズさんらしいからかいですね」

「ナー……」

 顔を赤くしながらシリカも、苦笑いでそっと呟いている。リズベットのからかうような接し方にどう表現すればいいのか、毎度困っているらしい。もちろんピナも、主人と同じ気持ちを持っている。

 一方でより反応に困っているのは、一斉の事情を知らないいずみら二人である。

「あの女子とも親しい関係みたいだな……ていうか、猫耳女子よりも積極的だよな」

 兄は一段と冷静に対処しており、ピンク髪女子との関連について考察を続けていた。その最中には、いずみの方へと顔を向けている。

「なぁ、いずみ? って、アレ? おい、どうしたんだ!?」

 しかしそこに彼女は立っておらず、なんと兄との距離を置いて地面へと倒れ込んでいた。急いで妹に近づき体を起き上がらせると、彼女はかすれ切った声で現在の気持ちを伝えている。

「お兄ちゃん……私もうダメかも。ショックで立ち直れない……」

「どうして? まさか、過度なスキンシップが原因か……?」

「違うよ。その前に晴太君が言っていたことだよ」

「な、何か言っていたか?」

「うん。半月ほど一緒に暮らしているって……」

「……あっ。そういえば」

 いずみが大きく衝撃を受けたのは、晴太が口にした同居発言であった。彼女疑惑に上がった猫耳女子も、スキンシップの激しいピンク髪女子も、同じ屋根の下で暮らしている事を知ると動揺が抑えきれないのである。兄も聞き逃した部分を知って、妹の心情を悟っていた。どうにもならない虚無感に包まれてしまった彼女は、涙を流して悲壮感に漂っている。

「晴太君もいつの間にか、ハーレム系ラノベ主人公になったってことだね……」

「いや、そこまで言うか。二人だから、ハーレムとは言わないんじゃ……」

 もはや兄が何を言っても、いずみの心には響いていない。普段は明るく振る舞う彼女だが、友達であった晴太の隠された秘密を知ると、精神的なダメージが心を蝕んでしまう。ここまで落ち込むのも、かなり珍しいことであった。冷静さを取り戻すのも、時間がかかりそうである。

 そんな一悶着があったいずみらの元に、通りかかった二人の女子が、心配そうに話しかけてきた。

「ねぇねぇ。何かあったの、君達?」

「ただれているけど、大丈夫?」

「ああ、いやなんでもねぇよ。妹がちょっと転んだだけで……大したケガも無いし、心配をかけるほどでもないよ」

「そう? なら良いんだけど……」

 咄嗟に兄が誤魔化しを加えて、大事には至らずにいる。声をかけてくれた二人の女子も、これまた特徴的な容姿をしていた。妖精のようにとんがった耳を持つ金髪の女子と、水色がかった髪と猫耳が際立つ華奢な女子である。服装からは猫耳女子とピンク髪女子の二人と、どこか同じ雰囲気を醸していた。

(なんだこの胸騒ぎは……まさか、あの女子達もアイツらの仲間と言う事か?)

 兄は心の中で感じたままに呟いているが、その直感は奇しくも当たっている。彼女達は前を振り向くと、偶然にも自身の仲間達と目が合っていた。

「ん? ねぇ、リーファ。あの人達って、シリカやリズじゃない?」

「あっ、本当だ! 晴太君もいるし、一緒に見に行ってみようよ!」

「そうね」

 そう発すると二人は、この場を去って晴太達のいる方面へと向かう。そう、彼女達の正体はシリカやリズベットと同じく、下宿仲間のリーファとシノンである。偶然に引き付けられるように、二人も近場にいた晴太達と合流していく。

 当然ながらいずみらにとっては、さらなる衝撃が襲い掛かっていた。

「えっ、またかよ!? あの女子達も、晴太の知り合いだったのか!?」

「そんな、嘘でしょ! 本当にラノベ主人公っぽくなっているじゃん!!」

「そ、そうだな……」

 いずみが例えたツッコミには、とうとう兄も否定できずに受け入れてしまう。女子達に囲まれる晴太の姿は、俗にいうラノベ主人公を彷彿とさせていた。二人共に心が落ち着かないまま、リーファとシノンが晴太と接する場面を見張っていく。

「みんな! こんなに集まって、一体どうしたの?」

「リーファさんにシノンさん! お二人も手伝いが終わったんですか?」

「まぁ、そうね。私はオフだったけど、たまたま手伝い終わりのリーファと会って、今に至っているってわけ」

「そうだったのね。てことは、今日は偶然の集合って訳ね!」

 滅多には無い昼時の集まりに、リズベットら女子達のテンションも急に高くなっている。場の空気に乗っかって、ここでシリカはある提案を思いついていた。

「中々無い展開ですよ! 折角ですし、これからみなさんで遊びに行きましょうよ!」

「いいわね! でも、まずは晴太の都合も聞いてみないと」

「オイラは大丈夫だよ。この後も予定は無いし、母ちゃんに連絡が取れるなら構わないよ」

「よし! じゃ、みんなで万事屋に行ってみようよ! 久々に、お兄ちゃんやアスナさん達に会いに行きたいし!」

「いいわね。私も賛成するわ!」

 一緒に遊びへ行く方向となり、リーファの希望から行き先が万事屋へと決定する。晴太も了承しており、彼を含めてこれから移動するようだ。

 この急な方向転換には、見張っていたいずみらも動揺を覚えてしまう。

「えっ!? これからどっかに向かうのか……? どうする、いずみ……って、アレ? どこへ行った?」

 妹の反応を伺う兄であったが、顔を振り向かせるとそこに彼女の姿はいなかった。辺りを見渡しても見つからない為、彼は咄嗟に嫌な予感を察している。

 そう彼女は、覚悟を決めて堂々と真正面から立ち向かっていた。

「ちょっと、止まってー!!」

 晴太達の元へ近づくと、ためらいも無く大声を発して彼らの注意を引き付けていく。

反射的に晴太らが後ろを振り向くと、そこにいたのは……紛れもないいずみ本人である。悔しそうな表情を露わにしながら、堂々と場に乱入してきたのだ。

「えっ? いずみちゃん!? どうしてここに?」

 唐突な友人の登場により、晴太は驚きを示している。続くようにして女子四人も、彼の友人らしき人物に注目を寄せていた。

 その一方で兄は、大胆不敵な妹の行動力に嘆きを口にしている。

「アイツ、何やってんだよ……」

 顔に手を当てて、彼女を止められなかった自分に後悔を感じていた。そしていずみの方は、涙を浮かばせながら抱えている疑問をぶつけていく。

「晴太君!! この女の子達って、一体誰なの!? 何で今まで秘密にしていたの!!」

「いや、それはオイラにも言うタイミングがあって……」

「こんなに可愛い子達と友達だったら……一人くらい紹介しても良いんじゃないの!!」

「……はい?」

 しかし未だに気持ちが整理できないのか、本筋を言えずに回りくどく疑問を発している。これには晴太も首を傾げて反応に困ってしまう。

その傍らで見守っていた女子達も、様々な反応を口にしていく。

「おっ、いきなりの大胆発言。晴太の友人も、随分と面白いわね」

「そうみたいだけど、ちょっと話がよじれているのかな……?」

「晴太が私達の事を明かしていないからかしら?」

「驚きです……だから、勘違いしているのでしょうか?」

「ナー?」

 ピナでさえもつい違和感を覚えている。状況を面白がる者もいれば、すれ違いが起きていることに不安を感じる者もいた。だがこうして、いずみとの出会いによって、場の空気はようやく一変していく……

 

 それから数分が経った頃。互いに落ち着きを戻したところで、一行はまず近場にあったベンチ付近へと移動していた。晴太やいずみといった子供達のみがベンチに座ったところで、早速情報交換を始めている。

「えっとつまり……いずみちゃん達は晴太君の友達で、隠し事があると思って尾行していたってことだね」

「そうだな。ウチのいずみがかなり心配していたから、ずっと追っていたんだよ」

 確認がてらにリーファが問いかけると、いずみの兄が返してくれた。彼女達は自身や晴太との関係性や、今日の尾行までに至る経緯を説明している。その甲斐もあって判明したことは、やはり晴太がリズベットらの存在を隠していた事実であった。

「ていうか、晴太ってまだアタシ達の事を話していなかったの?」

「そ、そうだけど、オイラでも言いづらかったんだよ! 姉ちゃん達の事を言うのは、抵抗もあるし……」

「まぁ、気持ちは分からなくはないけど……」

 下宿とはいえ女子達と同居している事実に変わりは無く、彼は打ち明けるのにためらいを感じている。男子ならではの考え方には、シノンも微かに理解を示していた。

 一方でいずみの反応では、彼の事情を考慮しつつも自らの気持ちを交えて、注意を加えていく。

「そういうことだったんだ……でも、こうやって誤解を招くこともあるから、今後はなるべく打ち明かしてほしいよ。晴太君が隠し事をしていたら、私達も心配しちゃうからね!」

「それは本当にごめん! オイラが早めに言うべきだったよね!」

「うん。じゃ、これからは気を付けてよね!」

 一人の友達として信頼する気持ちを、彼女は表していた。優しさ溢れる対応には、晴太も頭が上がらずに早々と謝りを入れてくる。それを聞いたいずみは、安心して笑顔を取り戻していた。こうして二人の間に出来たすれ違いは、ようやく解消されたのである。より仲を深めた二人の光景には、兄だけではなくシリカら女子陣も微笑ましく見守っていた。

「晴太さんといずみさんって、仲睦まじい関係ですよね」

「アレは明らかに、ちょっとだけ気があるわよね」

「これからの関係に期待だね!」

 今後の発展に興味を向けており、女子特有の恋話で徐々に盛り上がりつつある。いずみらの事情を説明したところで、今度はリーファら女子陣の番であった。

「えっと、それでお姉さん達は、晴太君の家で現在は下宿しているんですか?」

「そうだよ。この世界に来てからは、晴太君のお母さんの元でお世話になっているのよ」

「つまり、別の星から来た天人の留学生って事か?」

「天人留学生……そ、そうですね」

「へぇー。だったら、大変だよね。容姿も違うから、慣れないことも多いのに」

「そ、そうね! 文化の面も多少違うからね……」

 下宿している彼女達を留学生と仮定しており、猫耳やとんがった耳から天人だと決めつけている。歯切れの悪い反応であったが、シノンらは肯定して話を通していた。

 もちろんいずみらの予測は外れであり、彼女達にそのような要素はまったく当てはまらない。晴太が彼女達の経緯を説明する傍らで、本人達は小声で密かに本音を呟いている。

「流石に別世界から来た地球人なんて、言えませんよね?」

「言ったところで、信じてもらえないからね……なんせこの容姿だし」

「とんがり耳と猫耳だったら、宇宙人だって誤魔化した方がスムーズに済むからね……」

「これからも説明がややこしくなりそうね……」

 複雑な状況には、みながため息を吐く始末であった。予め事実を言っておくと、彼女達は別世界の人間であり、現在の容姿はゲームのアバタ―と一体化をしている。元の世界へ戻れるまでは、下宿がてらに手伝いを続けている……といった訳ありな事情であった。全てを説明する余裕もないので、これからは留学生の天人として設定を貫くと心に決めている。その覚悟を密かに誓っていた。

 一方で晴太達は、女子達がひのやに来た経緯を説明している。それが終わると同時に、いずみは再び安堵の表情を浮かべていた。

「――という訳なんだよ。シリカ姉達が、ウチにやってきたのは」

「そうだったんだ……でも、良かった。晴太君にやましい事が無くて。てっきり私は、彼女が出来たものだと勘違いしていたんだよ」

「それは絶対にないよ。第一姉ちゃん達には、もう心に決めた相手がいるからさ」

「えっ? そうなの?」

「うん。確か姉ちゃん達と同じ世界――じゃなくて、同じ星から来た男子がいるんだよ」

 途中で誤魔化しを加えながら、話題はシリカ達が恋焦がれている相手へと移り変わっている。いずみも食いつきが良く気になり始めていると、その噂の相手は偶然にも通りすがってきた。

「アレ、みんな? ここに集まって、一体何しているんだ?」

〈〈〈〈ハッ!?〉〉〉〉

 声を聞いた瞬間に、四人の女子は顔色を急変させて、横や後ろへ振り向いていく。もちろんそこにいたのは……仲間でもあるキリトであった。銀時とユイの計三人で行動を共にしている。

「やっぱり、みなさんじゃないですか! ここで会うなんて、奇遇ですね!」

「そうだな。負けヒロイン共が集まっていたら、そりゃレアだよな」

「負けヒロインって……凄い悪口に感じるんだが」

 再会を喜ぶユイらとは異なり、銀時だけはためらいもなく皮肉を口にしていた。これにはキリトも苦笑いで、反応に困惑している。万事屋らしい緩やかな展開が繰り出される中で、対照的に女子陣は気合を込めて、静かに闘志を燃やし始めていた。

「ん? どうした、お前等? まさか冗談を本気にしているんじゃ――」

 と銀時が声をかけてきた時である。

「キリトさーん!!」

「「キリト―!!」」

「お兄ちゃんー!!」

「えっ、何!?」

 四人は一斉に走り出して、キリトに目掛けて勢いよく言い寄ってきた。みなは目を輝かせており、急激にテンションを高めている。近くに銀時がいてもお構いなしに、次々とキリトに話しかけてきた。

「お久しぶりですね、キリトさん!! もしかして、仕事帰りですか!?」

「ああ、久しぶり。というか、今日は仕事じゃなくて、三人で買い物に出かけていたんだが……」

「なるほどね。じゃ、もう帰りって感じ?」

「そうだな。これから万事屋に帰る予定なんだよ」

「じゃあさ、じゃあさ! これから万事屋に遊びに行ってもいいかな? 私達も偶然予定が空いて、久しぶりにお兄ちゃん達と会いたかったのよね!」

「えっ、今日か? まぁ、今日は空いているから大丈夫だけど」

「それじゃ、決定ね! 久しぶりに一杯話そうね!!」

 満足気に四人は笑顔を見せながら、勢いよくキリトへ約束を取り付けている。元気に接していく女子達とは違い、キリトは平然と落ち着いて話していた。有り余る活気を見せる姿には、彼も一安心してそっと微笑んでいる。

 その傍らで銀時は、無我夢中で接する女子達へ向けて、強気にも注意を促してきた。

「おい、てめぇら! 急にキリトへ駆け寄ってくるなよ! ジャニー〇の出待ちでも、ここまで過激な奴はいねぇぞ!」

「って、銀時さんは静かにしてくださいよ! アタシ達はキリトさんと話しているんですから!」

「そうよ! 負けヒロインって言っておいて、逆ギレは無いんじゃないの!?」

「そんなんだから、お兄ちゃんと違って好かれないのよ!」

「少しは肝に銘じておきなさいよね!」

「うるせー! もう踏んだり蹴ったりじゃねぇか!? 同じ主人公なのに、どうしてここまで優劣付けられるんだよ!!」

 一言発しただけで、四人分の文句を食らい、銀時はさらにツッコミを加えていく。明らかなキリトとの待遇の差には、当たり前のように理解していた。好き放題言い張る女子達には、もう勢いで押し切るしか策はない。

 一気に豹変した女子達の行動には、当然いずみらも唖然となり体が固まっている。

「……す、凄まじいね。さっきまでの態度はどこへいったの?」

「オイラの姉ちゃん達は、情熱だけは人一倍強いからな」

「信念が強いというか、往生際が悪いというか……」

 兄からは正論が飛び交う始末であった。だが同時に、女子達に好きな相手がいると分かり、いずみは心の中でそっと一息ついている。

(でも、良かった。この調子だったら、晴太君に好意は向かないよね。これで一安心――)

 心配していた晴太の彼女疑惑が払しょくされた時であった。

「アレ? 晴太さんじゃないですか! お久しぶりですね!」

「あっ、ユイちゃん!」

「……えっ?」

 ここで予想外のダークホースが出現している。ずっとキリトの後ろにいたユイが、晴太に気が付くや否や急に話しかけてきたのだ。以前にも接したことのある二人である、早くも手慣れた様子で会話を進めている。

「ここで会うなんて偶然ですね! 寺子屋はもう終わったんですか?」

「うん! 実は今日が終業式で、これからは夏休みなんだよね」

「そうだったんですか! じゃ、今日からいつでも会えるって事ですね!」

「そ、そうだね!」

 元気よく無邪気に接するユイと比べて、晴太は若干照れながら意識して話を進めていた。仲良き光景であるが、この純朴な雰囲気に我慢できない女子が名乗りを上げてくる。

「ちょっと、待ちなさいってー!!」

 それはもちろん、さっきまで安心感に浸っていたいずみであった。突然現れた同年代の女子に焼きもちを感じており、真っ向から対抗心を露わにしていく。

「ん? どうしたのですか?」

「どうしたもこうしたもないよ! アナタは一体誰なの!?」

「私はユイですよ! 万事屋に所属する立派な従業員です! ところでアナタは――?」

「いずみよ! 晴太君のお友達だって!」

「そうだったんですか! では、私ともお友達になりましょうよ!」

「だから、そういう事じゃなくて!!」

 融和的に接するユイとは相性が合わずに、いずみはついもどかしさを覚えている。優しく接する彼女に対しては、話のテンポすら崩されかねないのだ。

 そんな妹の心境を悟って、兄は深いため息をボソッと吐いていく。

「はぁ……これからアイツも、忙しくなるだろうな」

「えっ? 夏休みなのに?」

「……お前って、意外にも天然なんだな」

「はい?」

 鈍い反応を見せる晴太を見て、彼はこの先に待つ苦労を察している。子供らしい感情や考え方の違いが、にじみ出た瞬間でもあった。

 一連の流れを目の当たりにして、いつの間にか見ていたシリカら女子陣も口々に意見を発していく。

「ユイちゃんが意外にも、場を狂わせている?」

「あの子が入ったら、余計にややこしくなりそうね」

「まるで少女漫画的な展開だよー」

「晴太もこの先苦労するわよね」

 女子陣はみな頷いて、今後の三人の行方を見定めていた。一方で男子陣も、同じように続けて呟いている。

「昼ドラみたいにならなきゃいいけどな……」

「大丈夫だって。ユイの優しさだったら、きっと誰だって友達になれると思うよ」

「……何呑気な事を言ってんだ。おめぇは」

「えっ?」

 こちらでは鈍感かつ親バカなキリトの一面が際立っていた。これには銀時のみならず、近場にいたシリカやリズベットらも微妙な反応を見せている。

 こうして晴太の人間関係が明るみになり、また新しい一歩を踏み出したのであった。

 

 




 いずみちゃんの中の人は、SAOでシウネ―さんを演じたそうですよ。それにしても、いずみちゃん自体「銀魂」本編から見れば、結構なマイナーキャラな気がします……本編で出たのはたったの二回だけで、うち一回はセリフ無し。だからこそ、今回の話では性格の面で苦労しました。ただ元気で活発な女の子だけは印象に残っていたので、今回の話に反映させて描いています。ユイちゃんに対抗心を燃やすのも、女子らしくていいですよね!
 ちなみにいずみの兄は名前が分かっていないので、終始兄と呼称していました。
さて次回も出来れば、早めに上げたい……!





次回予告
シノン「私が公園で出会った男の子は、みんなに隠れてぬいぐるみを縫う、ちょっと不思議な子だった。どうやら一つの目的の為に頑張っているみたいだけど……」
銀時 「次回。サプライズは最後まで貫き通せ」
シノン「って、銀さんも来るの?」




補足 前回の話で書くのを忘れていたので、設定集02に第二章と第三章に登場したキャラクターを提示しておきます。興味があれば、どうぞご覧ください。
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