剣魂    作:トライアル

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 祝! お気に入り登録100人突破ありがとうございます! 投稿から早一年半……ここまで長かったものです。ちょうど今回の投稿で五十回目を迎えるので、何か特別な企画を作ってみようと思います。仮決定ですが……
 それはさておき、愛チョリスの後半戦をどうぞご覧ください。



第四十五訓 乙女のときめきは分かりづらい

 源外が新開発したカラクリ、ドリームギアV2によって、万事屋一行は強制的にゲーム世界へと飛ばされてしまう。その世界はかつて、新八を夢中にさせた恋愛ゲームの愛チョリスであった。内容を進めなくては現実に戻れないので、一行は代表としてキリトを選び、彼に命運を託している。だが例の如く、愛チョリスは強烈な女性キャラが登場する癖の強い恋愛ゲームであった。

 そんな中で過去の情熱を取り戻した新八は、万事屋一行と敵対して、突如キリトに勝負を申し込んでいる。最愛のパートナーである百々と共に、彼を見返そうと企んでいた。キリトの戸惑った表情から、物語は再び始まっていく……

 

「それで、勝負って一体何をするんだ?」

「愛チョリスならではの方法で、優劣を決めようではないか。如何に彼女と信頼度を高められるか? 当然僕は、この百々さんと一緒に勝利を掴むけどな!」

「そうだよね、新八君!」

 唐突にも新八は勝負内容を告げており、つられて疑似彼女である百々も声を上げていく。互いの仲の良さを強調するように、幸せな微笑みを共に浮かべていた。人一倍優越感に浸っている行動には、仲間達もつい気が引いている。

「おいおい、とうとう調子に乗り出しているぞ! どこまで思い上がってんだよ……」

「イキリトならぬ、イキリメガネの誕生ネ! キリも負けてられないアルナ!」

「その言い方は止めてもらえるかな……? というか、新八とも張り合っているつもりはないんだけどな……」

 長い付き合いのある銀時や神楽は、蔑んだ目つきで激しいツッコミを交わしていく。ところがキリトも、流れ玉で思わぬ被害を受けてしまう。本人が苦笑いで注意を促すと……またも〇×子が話へと割り込んできた。

「イキリトはダメ……ならばイキリカズ〇なんてどうかしら? アナタにはピッタリだと思うわよ」

「いや、〇ズキに変わっただけなんですけど……」

「そう心配しなくても大丈夫。アナタならきっと、立派なエナ〇カズキになれるわよ」

「どこまでエ〇リのことを引っ張っているんだ!? 無理やり入れなくても、十分に分かっていますから!」

 逐一〇ナリに繋げようとする彼女の態度には、キリトも我慢が出来ずにツッコミで反論している。感情を徐に出す行動には、アスナやユイも物珍しさを感じていた。

「パパのツッコミが激しくなっていますね」

「いきなり勝負を申し込まれた上に、パートナーがあの調子じゃ……仕方ないのかもしれないわね」

 現状を悟りつつ、彼の気持ちにも揃って同情を浮かべていく。新八や百々の登場により場の空気は大きく一変していたが、あくまでも万事屋の目的はゲームを進めて現実世界へ戻ることである。にも拘わらず彼は、ただ我欲の為にキリト達の行く道を阻んでいた。

「僕もキリトさんと同じく、立派な彼氏になったんだ! 百々さんとの絆で、今こそ見返してやる! 万事屋にとっての優男を決めようではないか!!」

 自らの想いを叫びつつ、新八は指を「パチン」と鳴らして、勝負に相応しいステージへと場面を変えていく。住宅街近辺にあった向かい合わせの一軒家に表札が加わり、それぞれに「志村家」と「桐ケ谷家」と名が刻まれている。これで全ての準備が整ったようだ。

「えっ? これは一体……」

「彼女との仲を深める絶好の状況とでも言うべきか。ルールは簡単だ! それぞれの家にパートナーを上手く誘って、如何にラブラブな雰囲気でキスが出来るか? 当然信頼度を高めてからが、最大の条件だ!」

 さらに新八は勝負内容を意気揚々と伝えていく。信頼度を高める場面として、家に誘う展開を想定している。中でも仲間達が気になったのは、ラブラブやキスといった単語であった。

「キ、キスって、そこまでいっちゃうの!?」

「完全に新八の願望も混ざっているアルナ」

「お前はそこまでして、好きな人が欲しいのかよ……」

 驚嘆するアスナや、三度呆れる銀時や神楽が印象的であるが、本人はそこまで気にもしていない。

「何とでも言うがいい。今の僕には、キリトさんしか眼中にないからな! さぁ、堂々と勝負をしようではないか!!」

「……分かった。この条件で、俺も受け入れるよ。勝負と言うからには、本気で挑ませてもらうよ!」

「望むところだ!!」

 思い上がってキリトのみをライバル視しており、勝つことしか頭に無かった。一方の本人も、新八を戻すために勝負を受け入れていく。〇×子をどこまで本気にさせられるのか? キリトにとっての不安材料は、未知なる彼女の存在である。

 こうした勢いや流れから、新八とキリトとの勝負が始まろうとしていた……

 

「結局、誰得な勝負が今から始まるってことアルか……」

「ここまで来たら、もう引き下がれないですよね。頑張ってください、パパ!!」

「新八君の目を早く冷ましてあげてね!」

「意外にも二人は乗り気アルか……?」

 男二人の勝負に期待を寄せるアスナやユイとは違い、神楽は薄いリアクションで気持ちが冷めきっている。互いの正反対な表情から、温度差が明らかになっていた。

 女子達のまばらな反応はさておき、いよいよ新八とキリトとの特殊な決闘が幕を開ける。各々の特徴的な彼女と共に、限られた場面や条件から、高い信頼度を得られるかが鍵を握っている。ちなみに審判役として、愛チョリスの体験者である銀時が躍り出ていた。

「よぉし、そんじゃいくぞ。レディーゴー!!」

 彼の掛け声を起点に、勝負は始まりを告げていく。今一度ルールを説明すると、彼女との信頼度をより高めた上で、キスを交わした方に軍配が上がる。その基礎として、家へ入れることが最低限の条件であった。雰囲気次第で持ち越せば、勝利はもう目前である。

 お互いに気を引き締める中で、先に行動へ移したのは新八の方であった。

「最速で決めますよ……!! ねぇ百々さん。折角僕の家の近くまで来たし、良かったら寄っていきませんか?」

「えっ? でも、それじゃお姉さんにご迷惑じゃない?」

「そんなことはないって。僕らのことを許しているんだから、堂々としていればいいんだよ」「それは……そうよね!」

 独自の世界観を作り出し、優しい口調や微笑みで彼女の気持ちを緩めている。表情もかっこよく決めており、早くも勢いに乗っかりつつあった。

 そんな新八のキザっぽいやり方には、仲間内でも大いに賛否が分かれている。

「チッ! 何かムカつくアル!! あのバカップル……完全に舐めプしているアルヨ!」

「もう完全に新八じゃねぇよな。某国民的アニメに出てくる、よしり〇だよ。アレは」

「……例えは分かりませんが、新八さんはそれなりに頑張っているとは思いますよ」

「これくらい吹っ切れていた方が、女子からもモテそうなのにね……」

 さらなる怒りを燃やす銀時や神楽は、身も蓋も無いことを発していた。一方でアスナやユイの二人は、苦い表情をしつつ意外な一面に驚きの声を上げている。絶好調な新八の様子を目にしたところで、続けて一行はキリトと〇×子にも目線を向けていく。

「それじゃ、キリトの方は一体どうなんだよ?」

「えっと……アレは苦戦しているのでしょうか?」

「全然話が噛み合っていないのかしら?」

 ところが、一行の予想通りに彼は苦戦を強いられていた。積極的に会話を仕掛けているが、〇×子は心すら揺さぶられていない。

「えっと……ウチの近くまで来たし、ちょっと寄っていくか? ゲームとかも置いてあるし」

「はぁ……ウチのエナ〇はそんなことは言わないわよ。ゲームと私じゃ、不釣り合いなのは目に見えているじゃない」

「そ、そうか……じゃ、ご飯でも一緒に食べないか? 具なしのペペロンチーノだったら、今からでも作れるし」

「ペペロンチーノ? そんなオシャレな料理より、ラーメンくらいは作れないの? それでもアンタは、中華屋の息子じゃないのかい?」

「……って、完全にエ〇リとごっちゃにされているな」

 興味を惹かせる誘いも全て不発に終わり、仕舞いには〇ナリカズ〇と混合させられてしまう。相手が妙齢の女性であることから、普段よりも調子は中々上がっていない。体も固まってしまい、キリトは口をすくめて反応に困っていた。

「話が噛み合っていないというか、〇×子がエ〇リの件を引きずっているだけアルよ」

「どこまでショックを受けてんだよ……俺の時とは違って、キリトも思わぬ壁にぶつかったってところか?」

 不穏で危機的な状況なのは、離れていてもよく分かる。戸惑い続けている彼の姿に、みなが物珍しさを感じていた。

 開始早々から明暗が分かれているが、その後も二人の態勢は何一つ変わっていない。

「ねぇ、家に入ったら新八君と何をしようかな~?」

「それはもちろん……百々さんから決めていいよ!」

「え~! 悩むよー急に言われても!」

「自分の思ったことで十分だと思うよ!」

 幸せそうにリア充さをアピールする新八や百々に対して、

「だいたい一つ思ったんだが、なんでアンタと疑似恋愛しなきゃいけないんだい? 私とエナ〇が付き合うくらい、無理があるんじゃないかい?」

「とうとう根本から否定されたよ……」

キリトと〇×子は仲良くなるどころか、彼女から説教を受けている。もはや相性云々の話ではなく、心の距離も段々と遠ざかっていく。彼自身も、この勝負には少しずつ無謀さを感じとっていた。

「結構まずい状況よね……」

「パパが〇×子さんに圧倒されています……」

「あんなキリ見たことないね。こりゃ、イキったまま新八のストレート勝ちかもナ」

 見守っていたアスナやユイでさえも、追い込まれた様子から言葉を詰まらせている。仲間内でもキリトの敗北は、薄々と感じ始めていた。

 だがしかし、銀時は〇×子の一連の言動からある勝機を見出している。

(いや、まだだな。キリトには一つだけ、逆転のチャンスが残っているはずだ)

 自分の時とは違い、エナ〇に執着する様子から導き出していたが、その方法は賭けも生じるものであった。柔軟な対応が必要だと、彼は予測している。

 一方で対決しているキリトらにも、ようやく大きな動きがあった。

「それじゃ、暗くならないうちに家に入ろうか」

「そうだね。やることもだいたい決まったし!」

 会話が盛り上がったまま、新八と百々のカップルが遂に家へ足を踏み入れている。最低限の条件を満たして、この勝負に王手をかけていた。

「な、何……新八に先を越されたか……」

 依然として〇×子との距離が縮まっていないキリトから見れば、まさに寝耳に水である。突如として窮地に立たれてしまい、心では僅かに焦りが生まれていた。ここから逆転を狙うには、思い切った行動が必要だと察している。

「まずい……この先の行動で、決着が着くのか……」

 緊張感に包まれた表情で、思わずただれた本音を呟いていく。慎重に今後の作戦について、彼は考え始めていた。

 そんなキリトの姿には、新八も心の中で面白がっている。余裕からか調子に乗っており、玄関前にて挑発気味の発言を繰りだしていく。

「ハハ! キリトさんも年齢差の高い〇×子さん相手では、この体たらくか……? 早く行動を選ばないと、僕が勝利をもらうよ! それでも、いいのかな?」

 露骨にも高らかな自信を見せつけて、より強い焦燥感を与えている。密かに持ち合わせていた屈辱を果たすために、容赦のない追い打ちをかけていた。絶体絶命なキリトサイドであるが、万事屋の仲間達はみな彼の陣営に応援の声をかけていく。

「キリト君、頑張って……!」

「パパ、ファイトです!!」

「あっ、前回の冒頭に戻ってきたアルよ」

「一部を除けば、使いまわしだったけどな……」

 祈りを込めて応援するアスナやユイに対して、銀時や神楽は再びメタ発言を呟いていた。表情から見て、その違いは歴然である。まばらな反応はさておき、二人の勝負も遂に山場へと突入していた。その焦点はキリトと〇×子との行方にかかっているが、信頼度は未だに伸び悩んでいる。新八には先を越されてしまい、当の二人は揃って家の中へ入っていた。決着が着くのも、時間の問題である。

(どうすればいいんだ、俺は……距離をどうやって掴むんだ……?)

 このまま何も出来ずに負けを認めたくないため、最後まで考えを煮詰めていた。行動もままならずに、ひたすら黙り込んでいた――その時である。

(いや、待てよ。年齢差があるってことは……そういうことか? 俺をエ〇リカ〇キって人と照らし合わせているなら、これが特効薬かも――)

 新八のある一言から、解決の糸口を見出していた。高低差のある年齢。エナ〇に執着する姿勢。彼女としての構えを否定する言動……これらの点を結び合わせて、一つの答えに辿り着いている。それはまさしく、銀時と同じような捉え方であった。

(もう迷っている時間はない! 一か八かで、巻き返しを図ってやる!!)

 もちろん同じようにリスクは察しているが、彼に迷っている時間等はもう残っていない。捨て身の覚悟で、〇×子に猛烈なアピールを仕掛けていく。

「どうしたんだい? そこまでして恋仲になりたいなら、話くらいは聞いてやるよ」

「いや、違う。俺が求めているのは……」

 呆れ気味の彼女に向かって、キリトは表情を整えてから、そっと近づき率直な気持ちを声に出してきた。

「アナタの純粋な包容力……母性なんだ! 是非お母さんと呼ばせてください!!」

「えっ!?」

「ん!?」

「はい!?」

 ……まさかの母親呼びが潔く決まっている。急な呼称変えには、場にいた全員が驚嘆していた。何事も動じてなかった〇×子でさえも、これには開いた口が塞がらず、自身のペースも乱されている。

「アンタ……急に何を言い出すんだい! 反応に困るじゃないかい!!」

「いいや。これが俺の気持ちなんだよ! 不器用でもどこか温かく感じる〇×子さんには、つい母親として見てしまうんだ。〇×子さんだって、息子役だった〇ナリカズ〇と俺を照らしあわせているんだろ!?」

「そ、それは……」

「アナタ達との間に何があったのかは、正直分かっていない……でも、俺で良かったらエナ〇と同じように支えることが出来る! だから素直に、母さんとして接したいんだ!!」

 彼女の戸惑いを抑え込むように、持ち前の優しさを振るわせて、距離を急接近させていく。彼女ではなく母親として認識を変えたことで、滞っていた関係性に変化が生じていた。その証拠に〇×子の目線も、キリトの顔をしっかりと向いている。

 一方で観戦していた仲間達は、唐突の息子宣言に困惑が広がっていた。

「ちょっと、どうしたのよキリト君!? 急にお母さん呼びをするなんて……」

「追い詰められた末に、とうとうやっつけになったアルか!?」

 各々が感じたままに呟いていき、中には辛辣な声も飛び交っていく。しかし銀時だけは、キリトの作戦を読み取って納得していた。

「いや、違う。アレはアイツ自身が決めた作戦だな!」

「えっ、作戦ですか?」

「ああ。今まで彼女にしようと接したから、中々上手くいかずにいたんだ。けれども母親として対象を変えれば、進展も大きく一変する。母親ならではの母性もくすぐられて、距離も縮められるからな。エ〇リが不在だからこそ出来た、キリトなりの作戦ってことだな」

 自分の考えを踏まえて、彼は仲間達にも分かりやすく解説している。縛られていた固定概念を払いのけたが故に、現在の行動へ繋がっていた。突発的にも見えるが、それは計算された作戦でもある。恋愛ゲームの常識を覆す、破天荒な手段でもあった。

「随分と回りくどいことを仕掛けたアルナ」

「いざという時のキリト君は、行動力があるからね……」

 妙に説得力がある解説には、女子陣も首を頷かせて、微妙な面持ちで納得している。疑問が次々と浮かぶ中で、ユイは率直な意見を呟いていた。

「でもそれでは、恋愛ゲームとして成り立たないのでは?」

「そこは……気にするな。距離を縮める方法としては、間違ってはいないからな」

「……って、本当にこれで大丈夫なの?」

 確証がない銀時の言い方には、やはり不安を感じさせてしまう。良く言えば大胆な交渉術。悪く言えば本末転倒な方法だからである。いずれにしても、後は〇×子との気持ちの変化に委ねるしかなかった。

「だからその気持ちに、答えてくれないか! 母さん!!」

 キリトも未だにアプローチを続けており、最後の一押しに全力を尽くしている。彼女の心境も変わり始めていた……その時であった。

〈ヒュー!!〉

「うっ!? 風か……?」

 突如として冷たい強風がなびき、一行の元へ襲い掛かってくる。一瞬の出来事だったが、その間に〇×子の付けていた頭巾が飛ばされてしまった。

「ああ、頭巾が……! これじゃ隠せないじゃないかい!」

「――って、えっ!?」

 被り物が無くなり困り果てる彼女だが、キリトは三度目を向けてみると、さらに愕然としてしまう。〇×子の姿が、見違えるほど変化したからだ。

「どうしたんだい? 私の顔に何か付いているのかい?」

「付いているどころか……変わっているんだが!? ま、まさかの義母さん!?」

 そう。頭巾がとれた彼女の姿は、キリトの義母である桐ケ谷翠と酷似していた。後ろ髪を束ねた艶のある黒髪と、優しく微笑む穏やかな表情。服装は割烹着と変わってないが、雰囲気は大幅に一変している。声までも本人そっくりに変わり、思わぬ再会が実現していた。

 当然キリトだけではなく、仲間達にも同じような衝撃が広がっていく。

「母さん?? ってことは、あの人はキリの母親ってことアルか!?」

「正確には義理のお母さんだけどね。でもまたなんで、〇×子さんから急に変わったのかしら?」

 率直に疑問を呟いていると、再び銀時が解説へと回っている。

「俺の時と同じ現象だな。現実と戦うために幻を作り出す覚悟。キリトが〇×子を母親だと仮定したからこそ、自然に自身の母親に姿が変化したんだろうな」

「……つまり、パパの想いが〇×子さんに届いたってことですか?」

「簡単に言うと、その通りだな。さぁこれで、アイツもゴールまであと一歩だぞ」

 覚悟や愛情が伝わった故に起こった変化だと、彼は推測していた。自分にとって馴染みのある母親が、〇×子を介してこの世界に現れている。距離が縮まった今だからこそ、実現した現象であった。そしてこれは、キリトにとって千載一遇の好機でもある。

(と、とりあえず落ち着け俺! ここにいるのは義母さんでも、中身は〇×子さんなんだ。今までどおりに接して、一気に畳みかけよう!!)

 最初こそ動揺したものの、次第に状況を読み込んでいき、本来の目的へ戻していく。調子を落とさずに、〇×子に最後のアプローチを仕掛けてきた。

「あ、あの〇×子さん!」

「な、何よ。また急にかしこまって……」

「……今度こそ、俺の家に寄ってみないか? 愚直に話がしたいんだよ」

 中々上手くいかなかった誘いを、飾りっけのない言葉で伝えていく。表情も優しく微笑み、さり気の無い笑顔を見せている。何度でも諦めずに想いを貫く彼の姿には、〇×子にも十分に伝わっていた。

「――わ、分かったよ! アンタがそこまで言うなら、入ってあげるわよ! 別に……気になっているわけじゃないんだからね」

「って、まさかのツンデレなの……?」

「なんかもう、テンプレ感が半端ないアル」

 容姿が変わったからか、性格にも微妙な補正が入っている。可愛げな素振りやツンデレな性格が、それに当てはまっていた。仲間内ではツッコミもあったが、キリトは大して気にせずに彼女をエスコートしていく。

「それじゃ、早速入ろうか」

「そ、そうだね……」

 照れ気味な〇×子の手を握って、遂に念願だった家へと連れている。そして戸を開けた時であった。

「ありがとうね。アンタ」

 小声で感謝を伝えると――彼女はキリトの頬っぺたに優しくキスを交わしてきた。

「えっ? これは……」

「何でもないよ。母さんからの、有り難いお礼だよ」

「そうか……ありがとうな」

「別にそんな、たいそうなことでもないよ……」

 咄嗟の出来事にも関わらず、彼は気持ちを悟って三度感謝を伝えている。そしてこの瞬間をもって、全ての条件を満たしたキリトがこの勝負での勝利を手にしていた。

〈WINNER! THE KIRITO!!〉

 証拠として頭上には、しっかりと名前も表示されている。新八の進行については不明だが、キリトが先に出ている以上は、勝負は着いたも同然であった。まさに起死回生な逆転により、成し遂げられた勝利である。キリト自身も心の片隅で、達成感を覚えていた。もちろん仲間達も、同じ気持ちで伝わっている。

「やったアル! キリの逆転勝利が決まったネ!!」

「やりましたね、パパ! 新八さんを遂に追い越せましたよ!!」

「アイツは、恋愛ゲームでも無双すんのかよ。でも良かったじゃないか。なぁ、アスナ――って、アレ? どこいったんだ?」

 そんな中で、銀時がアスナの方へ振り返ると、彼女はいつの間にか場から姿を消していた。どこへ行ったのかと思いきや――もちろんキリトと〇×子の元へ足を進めている。

「それで、一体どんな話をするんだい?」

「そうだな――」

「って、ストップ―!!」

 二人の会話を邪魔するようにして、アスナは大声で突然ズカズカと割り込んできた。不機嫌そうな表情となり、自分の気持ちを赤裸々に吐き出していく。

「ア、 アスナ? どうしたんだ、急に……?」

「どうしたもこうしたもないわよ!! もう勝負は着いたんだから、正式にキリト君は返してもらうわよ!!」

「アラ? ちょっかいはかけないでと、言ったわよね? それに彼女じゃなくて、母親として接しているんだから、何も問題は無いでしょ?」

「大問題よ!! 例え義母と同じ姿をしていても、私は容赦なんかしないからね!」

「それなら、私達でも勝負しましょうか?」

「当然よ!!」

 これ以上二人でいるのが我慢できずに、彼女は無理にでも引き離そうとしている。だが〇×子も張り合っており、中々打ち解けあうことは無かった。板挟みにされているキリトが、何とも不憫に感じ取れる。

「お、落ち着けって二人共。ひとまずは……」

「キリト君は黙っていて!!」

「アンタは黙っていなさい!!」

「は、はい……」

 挙句の果てには、口出しまで出来ない始末であった。二人の勢いには恐縮してしまい、今はただ黙っているしかない。

「ママと〇×子さんとの間で、勝負が始まろうとしていますよ!」

「こりゃ、結構時間がかかりそうアルナ」

「誰がここまでやれって、言ったんだよ……」

 もちろん銀時ら万事屋一行も、下手には二人を止められずにいた。熱意が収まるまでは、空気を読んで行動を制限している。

 こうして愛チョリス世界での勝負は、意外な展開で幕を閉じていた。そして家へとこもっていた、新八と百々はというと……

(フフ……どんな雰囲気で、キスをしようか?)

勝負が着いたにも気が付かずに、キスへのこだわりを呑気にも考えている。知らぬが仏とはまさにこのことであった。

 こうしたハプニングもありつつ、万事屋一行は無事にゲームを進めて、現実世界へと戻ることが出来た。強烈なる思い出を引き継いで。




 まさかの〇×子が変わる展開、いかがだったでしょうか? ちなみに今回登場した、兄ヶ崎百々と桐ケ谷翠は中の人ネタです。どちらも系統は違いますが……声が同じなので実現してみました。多分私の作った中では……結構なカオス回が出来上がったと思います(笑)

 残り少ない今年の剣魂の予定ですが、後は一訓分の投稿を目指しています。もし時間に余裕があれば、前置きでも伝えた特別企画も投稿したいです。(年末は忙しくて、もしかすると新年企画になるかもしれませんが……)
それでは、また次回お会いしましょう。





次回予告
ユイ「みんなと一緒にカブト狩りなんて、結構楽しそうですよね!」
いずみ「そ、そうね……って、なんでこの子もいるの!?」
ユイ「どうかしましたか?」
いずみ「いいや、何でもないって!!」
ユイ「次回! 夏の風物詩に乗っかっていけ! ですよ!」
いずみ「乗っかれないんだけどー!!」

新八「って、ちょっと待ってください!! いつの間に、勝負付いていたんですか!?」
銀時「お前、予告で気が付くのかよ」
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