剣魂    作:トライアル

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 お待たせいたしました。以前から予告していた「かぶき町フレンドラリー篇」がいよいよ始まります。今回は題名の通りチーム決めですが、事は簡単に済むはずがありません。(とある男がきっかけで……)それでは、どうぞご覧ください。

2025年4月3日 リメイク版に置き換えました。


第四十七訓 チーム決めなんて、ほぼ運で決まる(新訳)

 彼女達の運命を分けたのは、一か月前の他世界対策交流会議がきっかけである。あの時にリーファは思い付きで、仲間のシリカ、リズベット、シノンを巻き込み、四人揃っての下宿生活を提案した。表向きには仲良く手を取った女子達だが、本音ではキリトへ近づけさせない為のけん制が目的である。当然四人は自力で動くことは無く、寂しさを潰して銀魂の世界で生活を続けていた。しかし、その我慢もいよいよ限界が近づいていた……そんな中で、彼女達の元にあるイベントの情報が舞い込んでくる。果たしてそれは、サブヒロインが抱える希望へと繋がるのだろうか――

 

神楽「なんか壮大な書き出しアルナ」

銀時「書くのが久しぶりすぎて、冒頭に気合が入ったらしいぞ」

新八「こんなにハードル上げて大丈夫なんですか……?」

銀時・神楽「「さぁ?」」

新八「いや、人任せだな!!」

 

 時は真夏日が続いている八月の下旬頃。この日のかぶき町の天気は風通しが良い快晴で、連日の暑さに比べると過ごしやすい気温になっていた。心地の良い風が人々に安らぎを与えて、公園ではつい居眠りにつく人も見られている。

 同じくして万事屋一行も、この涼しげな気温に甘んじていた。今日はちょうど仕事が入っておらず、朝から自由に過ごしていた六人は、正午を過ぎた辺りからみな眠りについている。万事屋内のリビングは静寂に包まれて、各々の寝言や寝息が微かに聞こえていた。

「アァ―ウゥー……」

 机に寄りかかり、力尽きたように眠る銀時。唸り気味の寝言を上げている。

「スゥー」

「ヤァー」

「フゥー」

 ソファーでは互いに寄り添って、幸せそうな表情で寝言を上げるキリト、アスナ、ユイの三人の姿があった。

「ヘヘ……お通ちゃん……」

 一方で向かい側のソファーでは、イヤホンを付けたまま寝転がる新八がおり、にやけた顔で妄想に浸っている。

「グワァ―! ゴォー!」

 そして神楽は押し入れにて、野性的ないびきをかき、本格的に寝込んでいた。十人十色な休憩をとり、英気を養っている万事屋一行だったが――そんな彼らの元に、とある訪問者が近づいてくる。これが騒動の発端になるとはつゆ知らずに……。

〈ピンポーン!〉

「……ん? チャイム?」

 突如として鳴り響いた、玄関先からのチャイム音。これにいち早く気が付いたキリトは、単身起き上がって、欠伸を発しながら玄関まで足を進めていく。

「はーい、どちら様ですか……?」

 腑抜けた声を呟いて戸を開けると、そこに立っていたのは――

「あっ、こんにちはです! キリトさん!」

「えっ、シリカ?」

仲間の一人であるシリカであった。彼女は元気よく挨拶を交わして、屈託のない笑顔のまま、寝ぼけているキリトへ話しかけていく。

「あの突然ですけど、三日後って万事屋さんの仕事は入っていますか?」

「三日後? 確か入ってないはずだけど……」

「そうなんですか! それではアタシと、イベントに参加しま――」

 万事屋での予定の有無を知るや否や、彼女は態度を変えて本題に入ろうとしていた。だがしかし、

「キリト~!!」

「って、キャ!?」

「リ、リズ!?」

タイミングを見計らってさらなる訪問者がやって来る。二人の会話に割り込んできたのは、これまた仲間の一人であるリズベットだった。彼女もシリカ同様に、キリトへとある誘いを勧めていく。

「ねぇ! 今度の日曜日空いていたら、このイベントに参加しない? どうしても男手が必要だからさ、アンタにも来てほしいのよ」

「イ、 イベント……?」

「そうそう! かぶき町フレンドラリーって言うんだけど……」

 意気揚々と会話を進めていき、主導権を握り始める彼女。だがここで、話を横取りされたシリカが、堪らずに反論へと移っている。

「リ、リズさん!! 何で話に割り込んできているんですか!! 横取りは厳禁って、約束したじゃないですか!!」

「って、それを言うならシリカもいけないでしょ!! みんなの目を盗んで抜け駆けするなんて、ルール違反じゃないの!?」

「そ、それは……たまたま万事屋を通りかかったから、ギリギリセーフなんですよ!!」

「いや、絶対確信犯よね!? 確実に万事屋へ向かおうとしていたわよね!?」

 互いに意地を譲ることは無く、激しく感情を露わにする二人の女子。しかめっ面な表情で、自身の主張を続けている。そんな口論の板挟みにされたキリトは、段々と目を覚ましていき、ひとまずは事態の収集を図っていた。

「いや、待って二人共! ここはまず冷静に……」

 彼女達の出方を伺いつつ、冷静な姿勢で相手の気持ちをなだめていく。

 さらにこの騒ぎに気が付き、リビングでは銀時がゆっくりと起き始めていた。

「あん? 一体何を騒いでやがるんだ……?」

 彼も寝起きであり、はっきりと理解していないが、玄関前にいるキリトの姿だけは見えている。自身も気になって、玄関前まで向かおうとした時であった。

〈カン、カン!〉

「あぁ? 何だよ、この音はよ……」

 後ろ側の窓から、強めの物音が聞こえてくる。音に気が付いた彼は、網戸を見開き周辺を眺めていると……

「お邪魔します!!」

「お邪魔するわ!!」

「って、うわぁぁ!?」

何の前触れもなくリーファとシノンが目の前に現れた。彼女達は羽を使って、窓から万事屋へと強制的に侵入している。もちろん物音の正体は二人であり、彼女らもキリトに用があって来ていた。しかも仲間達の行動の裏をかいて、窓から訪れる徹底ぶりである。一方で勢いに押された銀時だが、間一髪で横へ移動して、衝突だけは回避している。ところが、突飛な女子達の行動には怒りを覚えてしまう。

「おい、お前等!! 何勝手に入って来てんだ!! 妖精が不法侵入なんざ、聞いた覚えがねぇぞ!!」

「ごめん銀さん! 訳は後で話すから、今はお兄ちゃんと話させて!」

「あぁ? キリトとか?」

「そう! って、リーファ! あそこにいるわよ!」

「えっ、本当に!?」

 銀時の注意に構っている暇も無く、リーファらはキリトを見つけると、一目散に彼の元まで駆け寄っていく。そして同様に、イベントへの参加を勧めてきたのだ。

「お、おい!? ……何やってんだよ、アイツらは」

 たった一人取り残された銀時は、苦い表情で女子達の行動に唖然としてしまう。その必死さから、幾ら言っても意味が無いと確信したようだ。

 それからはアスナや神楽らも騒ぎに気が付いて、多勢で女子陣を抑え込み、事態の収集を図っている。一行の踏ん張りの末に、騒動は一旦幕を閉じたのであった……。

 

 突然の訪問から、およそ数分が経過した頃。一行の説得もあって四人は、ようやく落ち着きを取り戻していた。彼女達は万事屋内へと入り、リビングにあったソファーに座って静かに待機している。場には昼寝から目覚めたばかりの万事屋一行もおり、ひとまずは事の経緯を聞き出そうとしていた。しかし……

「「「「ぐぬぬ……!!」」」」

依然として四人は対立心を露わにしている。不機嫌な表情で相手を睨みつける者や、頬っぺたを膨らませて威嚇する者など、清々しいくらいに気持ちを態度へと出していた。これには銀時、新八、神楽もツッコミを入れたくなる始末である。

「なんでアイツらは、あそこまで躍起になってんだよ」

「絶対キリ絡みアルよ。吉原に隔離されているのが我慢ならなくて、遂に正妻戦争を仕掛けてきたネ。ヒヒ……」

「いや、神楽ちゃん? 絶対この状況を楽しんでいるよね? 今一瞬だけ、にやけたよね?」

 小声のまま会話をして事態を察している三人だが、神楽のみはおかしく思ったのか、つい笑みを浮かべていた。新八からさり気ない注意が入り、そっと心に抑え込んでいく。それはさておき、場を整えながらようやくアスナから、話が振られてきた。

「それで……私達に何の用があって、万事屋に来たのかしら?」

「実はね、まずはこの紙を見てもらえる?」

「紙? かぶき町フレンドラリー……?」

 するとリズベットから、一枚の広告紙が差し出される。そこにはかぶき町内会主導で行われる、特別イベントの内容が書かれていた。この広告紙に目を通しながら、キリトが代表して朗読していく。

「えっと、『夏休みの終盤を、かぶき町巡りで遊んでみませんか? ミニゲームをクリアしてスタンプを集め、豪華景品と交換しましょう。かぶき町にいる個性豊かな人達がお出迎えしてくれます。ぜひご参加してください。企画者、志村妙より』……って、えっ!?」

「まさかの、お妙さんの企画だったの!?」

 イベント内容よりも目を惹いたのは、企画に関わっていた妙の存在である。これには万事屋一行も、素直に驚嘆してしまう。

「マジアルか……てか、新八もこの企画を知っていたアルか?」

「いや、特別なことをするしか聞いてなかったから……イベントの企画なんて、僕は初耳なんですけど」

 弟の新八にすら、イベントの全貌は明かされてはいない。ちょうどその時だった。

「そりゃ、極秘で進めていた計画だもの」

「ん? 姉御アルか?」

「お妙さん!」

 偶然にも妙も万事屋へ訪れている。彼女は自信満々に、このイベントが自分自身の企画だと宣言していた。

「おい、お妙。また癖のある企画立ち上げやがって。かぶき町の個性豊かな人達って……どんなおぞましい奴等を集めてんだよ」

「そりゃシリカちゃん達がこれまでに会ったことある人や、滅多に姿を現さない激レアさんなど……かぶき町総出で色んな人達が出てくるわよ」

 銀時は思わず妙の人選に警戒心を見せているが、本人は淡々と事を返している。その雰囲気から、皆この企画で待ち構える者が曲者揃いだと確信していた。

「かぶき町も中々ディープな街ですからね」

「もう今更、オカマやヤクザが出ても驚かなくなっちゃったもの」

「たった一ヶ月程度でそこまで慣れるのかよ」

 シリカやシノンの呟きに、リズベットとリーファは深く頷く。新八からはボソッとツッコミが入れられていた。SAOの世界では中々出会うことのない、この銀魂世界の愉快な大人達に、皆感覚が麻痺しているのかもしれない……。

 そんな中、妙はふと神妙な表情で、この企画の真意について話していた。

「まぁ本当はね、みんなにこのかぶき町をもっともっと好きになってほしいのよね。元の世界へ戻れなくて不安かもしれないけど、折角この世界でしばらく過ごすなら、息抜きも必要じゃない? だから本当は、シリカちゃん達の思い出作りの為に、このフレンドラリーを企画したのよね」

 その真意はシリカら達を喜ばせる為。元の世界へ戻れずに不安を抱えるみんなに、せめてもの息抜きを兼ねて、このフレンドラリーを企画していた。言うならば彼女なりの気遣いと言ったところか。

「姉上……」

「お妙さん。そこまでみんなのことを考えて」

「流石姉御アル!」

「フフ。そう言ってもらえると嬉しいわ」

 新八、アスナ、神楽と妙に深々と感心している。それは銀時も同じ想いだった。

「ったく、粋なことするじゃねぇか。分かったよ。俺らも参加するぜ」

 と彼が意思表明をした途端、

「ありがとうね。じゃ、参加費頂戴」

「はぁ?」

妙は顔色を変えて銀時にフレンドラリーの参加費を要求する。突飛な出来事に、銀時本人は思わず目を丸くしていた。

「何を寝ぼけたこと言っているの? 大人は一律五千円徴収するのよ」

「はぁ!? おい、高過ぎだぞ! たかがスタンプラリーに、こんな大金出すのかよ!」

「しょうがねぇだろ。こちとら豪華賞品用意するのに、とんでもない資金かかってんだよ。おらぁ、よこせよ。どこにあるんだ? 金○にでも隠してんのか?」

「お、落ち着け!」

「早く出せオラァ!!」

 妙の口調は段々と荒々しくなり、銀時の胸ぐらを掴み、意地でも参加費を捲し立てていく。さながらヤクザ映画を見ているような一幕に、場にいた全員が反応に困っていた。

「お妙さんが激おこモードに……」

「気にしなくて良いアルよ、ユイ。銀ちゃんにとってはいつものことアル」

 心配するユイを、神楽がさり気なく宥めていく。

 その一方でキリトやアスナは、フレンドラリーの豪華な景品が気になりつつあった。

「というか、そんなに豪華な景品を用意しているのか?」

「裏面に描かれているわね。見て見ましょう」

 試しにポスターの裏側を覗くと、そこには詳しいルールと景品の一覧が載っている。

「えっと……五つのスタンプを集めて、ゴール地点に先着で着いた順から、チームの人数に合わせてダーツが配られ、的に当たった景品をゲットできますと……」

「それで景品は……お通ちゃんの金ピカ色紙サイン!?」

「叙々○十万円分の商品券!?」

 想像以上の豪華な景品に、新八や神楽らは一段と驚嘆していた。

「最新ゲームに最新料理器具に激レアな本って……」

「こんなに商品を用意しているのね」

「皆さんがやる気になるのも、納得の景品です……!」

 キリト、アスナ、ユイの三人も景品の一覧を見て、その豪華さに納得する。ダーツによる運任せな面もあるが、大衆の目を引くには十分すぎる景品の数々だった。

 すると神楽は、リーファ達にも狙っている景品が無いかを聞いている。

「ところでリッフー達は何を狙っているアルか?」

「当然この景品!」

「これは宇宙旅行ペアチケット?」

 それは景品の中でも、一等賞を占める花形。宇宙船に乗って優雅な宇宙旅行を観光できるチケットを女子達は狙っていた。(因みに以前にも神楽が、商店街の福引で当てた事のあるチケットとほぼ同じである)

「この世界でしか体験できないことだし、何より一緒に……」

「同じくです! 絶対にアタシが手に入れるんですから!」

「それを言うならアタシ!」

「アナタ達より先にゴールして、私が一早く射抜くんだから!」

 またしても始まった女子達のバチバチとした対立。キリトと同じチームを狙うだけではなく、宇宙旅行のペアチケットを手に入れて、ちゃっかり彼を誘おうと女子達は企てていた。

 あまりにも欲深い彼女達に、新八や神楽は若干気が引けている。

「争いの原因ってこれですか」

「キッリーもモテ男で困っちゃうアルナ」

「いや……そう言われてもな」

 肝心のキリト本人は、あまり細かいことを気にしてはいなかった。

 そんな中アスナとユイは、未だに景品一覧をじっと眺めている。すると、ある景品が目に止まった。

「あれ。銀さん? 確か結野アナってアナウンサー好きだったわよね?」

「あぁ!? それがどうした?」

「この景品欄に、結野アナの非売品写真集がありますよ!」

「なんだと!?」

 彼女達が発見したのは、結野アナの非売品写真集である。何を隠そう銀時は、この結野アナの大ファンであり、彼女のフィギュアまで買い込むほど心酔しているのだ。

 そんな彼が写真集の存在を知れば、黙っているはずが無い。

「本当だ……おい、妙」

「あら、参加する気になったのかしら」

「当然だ。参加させてもらうぞ! 参加費だって払ってやらぁ!」

「フフ、良いわよ」

 銀時は即座に方針を変えて、フレンドラリーの参加を高らかに決意。例え参加費がかかろうと、結野アナのファングッズの為に、一層のやる気を見せるのであった。

「銀時さんもやる気になってくれたのですね!」

「てか、推しをみつけただけでこの変わり様って」

「新八。お前も人の事言えないアル」

 新八のボヤキに軽くツッコミを入れる神楽。彼女にとっては結野アナに熱中する銀時も、お通ちゃんに熱狂する新八も、同じ穴の狢だと思っている。いずれにしても、豪華な景品たちにより、万事屋一行はより一層フレンドラリーにやる気を燃やすのであった。

「んで、お前は参加するのか?」

「いいえ。私は主催者側だから、ゴール地点でみんなを待っているわよ」

 なお、主催者の為、妙はフレンドラリー自体に参加はしないようだ。

 と話が一旦落ち着きを見せたところで、シリカら女子陣のアピールが再開する。

「だからキリトさん! アタシとチームを組みましょうよ!」

「いいや、私を選んで! 兄妹なんだし、こんな機会ないから私を優先してよ!」

「それだったら、アタシと組んで! 今度お礼として、武器を鍛えてあげるからさ!」

「いや、私にしてよ! こないだ誕生日だったし、記念としてお願い!」

 露骨とも捉えられる伝え方で、必死に当事者のキリトへと訴えかけていく。各々の理由を抱えながら、彼女達はこのイベントに全力をかけていた。率直すぎる想いは、銀時ら三人にも伝わっている。

「……どこまでキリトとチームを組みたいんだよ、アイツらは」

「サブヒロインの不憫さが、ひしひしと伝わってくるネ」

「まさか姉上って、こうなることを予測して、この企画を立てたんじゃ……」

「さぁ、どうかしら。フフ」

 冷めた目つきのまま、揃って淡々と本音を発していた。妙だけは思惑があるようなほくそ笑んだ笑いを浮かべていたが……その真相は不明である。

 その一方で四人同時に誘われたキリトは、真面目にも返答について深く悩んでいた。

「どうしますか、パパ? みなさんからオファーが懸かっていますけど?」

「そう言われてもな……全員と組むわけにもいかないし」

 無自覚な鈍感さを見せて、友達目線から誰と組むべきかを考えていく。するとアスナは、ポスターのある注意書きに注目を寄せていた。

「参加上限は五人まで……あっ、そうだわ!」

 イベントの参加上限を知ると、彼女はとある合理的な方法を閃く。

「みんな、注目!! 私から、一つ提案があるわよ!!」

 早速大声を上げて、仲間からの注目を自分に向けていく。そして自信満々な表情で、立てた方法について話し始めていた。

「参加上限が五人までなら、ここにいる十人で均等に決めちゃいましょう! そうね……私とキリト君とユイちゃんの妖精チームと、銀さん、新八君、神楽ちゃんの万事屋チームに分けて、そこから二人ずつに分けていきましょう!」

 その全貌は、最初からチームを固定するものである。万事屋の六人で二組に分かれて、そこから女子陣二人が別々のチームに加入する策だった。しかもアスナは、ちゃっかりキリトやユイをチームに入れて、損をしない手段を選んでいる。彼女としての自覚を、ここで発揮していた。

「って、しれっとアッスーはキリと同じチームに入っているネ」

「なんか万事屋チームが、外れっぽく見えないか?」

「流石にこんなルールで、リーファさん達が納得する訳が……」

この考えに微妙だと悟った銀時らは、女子達の反応を今一度覗いていると……

「分かったわ。このルールで、決めていきましょう!」

「二人に枠があるなら、まだチャンスがあります!」

「いや、納得するんかい!? 意外にあっさり受け入れるんですね!?」

なんと全会一致で、誰一人不満を発さずに受け入れている。これには新八も、激しくノリツッコミを決めていた。しかし女子陣は、周りの反応は気にせずに、自分達で勝手に話を進めていく。

「どう? ここはじゃんけんで、チーム決めをしてみない?」

「いいわね……運に任せて、勝者を決めようじゃないの!!」

「おい!? 何か別の方向に向かっているぞ! どんだけこのイベントに、全力を懸けているんだよ!? って、聞いてんのか!?」

 妖精チームの枠を決めるため、まさかのじゃんけんで決着を付けるようである。もうこうなれば、銀時らが幾らツッコミを入れようと関係はない。熱気の高まっている女子達は、それぞれ拳を握って集中力を高めていく。ちっぽけな一つのイベントでも、惜しみなく全力を注いでいた。全てはキリトと同じチームになるために……その一点しか見据えていない。

「勝っても負けても、恨みっこなしですよ!」

「そんなこと分かっているわ!」

 少しずつ覚悟を決めていくシリカやリズベットに、

「妖精チームに入るのは、この私よ!」

「いい加減に決着を付けましょうか!」

気持ちを高ぶらせるリーファやシノンなど、女子陣の意気込みが態度へと現れている。この迫力には、キリトらもつい押されかけていた。

「というか、そんなに勢いを込めなくても良いんじゃないか?」

「いや、キリが原因アルよ」

「まぁ、キリト君は大人気だから仕方ないよね」

「やっぱり、お前って無自覚なんだな……」

 呑気にも女子陣の真意に気が付いてないキリトや、こんな状況でも一人余裕なアスナの性格を目の当たりにして、銀時や新八は改めて二人を末恐ろしく感じる。

 そう話しているうちに、じゃんけんが不意にも始まっていた。

「「「「せーの! じゃんけん、ポン!!」」」」

「って、もうやるアルか!?」

「だ、誰が勝ったんですか!?」

 様子を見守っている中で、果たして四人が出したものとは――

 

 チーム決めから約二日後が経った休日の日。天気は期待通りの快晴で、数日前と同じく風が程よくなびく、過ごしやすい気温となっていた。そして、かぶき町フレンドラリーは無事に当日を迎えて、集合場所の公園にはたくさんの人が集まっていた。子供達のみのチームや、家族連れにホームレス集団など、多様なチームが参加する中、キリトは受付を終えてチームメンバーの元へと戻っている。

「お待たせ、みんな」

「あっ、パパが戻ってきましたよ!」

「どうだったの受付は?」

「結構時間がかかったけど、問題なく出来たよ。俺達は二十九番だってさ」

 迎い入れてくれたのは、アスナやユイの面々に加えて……

「まぁとりあえず、今日一日はこのメンツで頑張っていきましょう!」

「一番乗りにゴールして、みんなを驚かせましょうね」

「ああ、もちろん」

幸せそうに笑顔を撒くリズベットとシノンの姿があった。そう、じゃんけんに運勝ちしたのはこの二人である。仲間達(特にキリト)と同じチームに入れて、共に上機嫌な態度で接していく。

 一方でユイは、惜しくも敗北したリーファとシリカに少し気にかけていた。

「それにしても、シリカさんやリーファさんは本当に大丈夫なのでしょうか? 結構落ち込んでいましたし」

「何も心配ないって! 恨みっこなしって約束したから、時間が経てば元気が戻るよ」

「人数制限は仕方ないことだからね」

「まぁ、二人のことだから大丈夫だと思うけどな……」

 長い付き合いの仲間達は、心配せずとも二人のことを信じ切っていた。どこか楽観的に捉えていたが……当の本人達は未だに、じゃんけんの敗北を引きずっている。

「ねぇ、見てください。あそこのチーム、キラキラに輝いていますよ」

「うわぁ~凄い。隣の花は赤いって言うけど、本当だったんだね」

「あぁ、羨ましいです。なんで運負けなんて、したんでしょうか?」

「きっとじゃんけんの女神に見放されたんだよ、私達」

「ハハハ。じゃサザエさ〇を見て、鍛え直さないとですね」

「「ハァー」」

 やつれたような表情で皮肉を呟き、遠くにいる妖精チームに向けて冷たい視線を刺していく。ため息を吐いて、気持ちがどん底に下がっているのは、もちろんシリカとリーファであった。敗北が相当なショックだったようで、数日経った今でも気持ちは立ち直っていない。周りとの距離感も極端に遠ざけている。

 一方でチームメンバーである銀時と神楽だが、彼女達と微妙な距離を保って、呑気に冗談を言い合っていた。

「銀ちゃん、あそこにいる人達は一体誰アルか?」

「あいつらはな……某ラブコメ漫画で敗北が決定したヒロインの悲哀を、味わっている人達だよ」

「そうか。それじゃ、そっとしておいた方が一番アルナ」

「だろうな」

「――じゃねぇだろ!! 僕達同じチームなんですよ!! 初っ端からこんな悲壮感マシマシで、今日一日頑張っていけるんですか!?」

 この空気感に我慢できなくなり、新八が型を外したように激しいツッコミを入れていく。開始早々からチームワークもへったくれも無いのだが、銀時と神楽は半分ほどこのチームに諦めかけていた。

「んなこと言われても、集合場所から既に顔が死んでいたじゃねぇか。アイツら」

「あんな空気だと、こっちも気が引けてしまうアルよ。折角負けヒロインだって、いじろうとしていたのに」

「神楽ちゃん。お願いだから二人に、とどめを刺すのだけは止めてもらえる?」

 ボケる雰囲気ではないと察して、用意していた小ネタも不発に終わってしまう。おかげで銀時や神楽の調子も上がらずじまいであった。この危機的状況を解消するため、新八は覚悟を決めて、落ち込むリーファらへと話しかけていく。

「ほらほら。リーファさんもシリカさんも、気持ちを入れ替えてイベントを楽しみましょうって!」

「……あ、ありがとう新八君。励ましてくれて」

「そうですよね。折角のイベントですし、このメンバーで楽しみましょうね。ハハハ……」

「さっきから棒読みなんですけど? やっぱり気持ちを、引きずっていますよね?」

 目を合わせずに苦い笑みを浮かべて、二人は小声で彼に返答していく。もはや表情や口調も隠しきれてはいない。チームとして早くも、今後の先行きが危うくなっていた……

 その一方で、銀時や神楽は他のチームの様子を眺めている。

「それにしても有象無象の大人達が目立っているな」

「仕方ないアル。きっとみんな、裏の豪華景品につられて、このイベントに参加しているからナ」

「物につられるとは情けないねぇ。ダーツだから必ず当たるわけじゃあるめいし」

「そういうアンタも、モノにつられて参加しているじゃねぇか」

 スタンプラリーと言えば家族連れが多くいる印象だが、このフレンドラリーは強面の男性や屈強なオカマなど、多種多様な大人達が多く参加していた。神楽の読み通り、チラシ裏に書かれていた豪華な景品につられてやってきたのだろうか。いずれにしても、景品はダーツで決まるが、先着順の為早くゴールすれば、狙っている商品を当てやすい。この場にいる全員が、フレンドラリーと言う名のタイムレースにやる気を燃やすのであった。

 そんな中、銀時は落ち込む二人に発破をかけていく。

「おい、お前等。さっさと気を取り直せ。いち早くゴールして、宇宙旅行ペアチケットゲットすれば良い話だろ」

「そ、そうですよね! アタシ達には万事屋が付いているんですから!」

「銀さん達はタフなんだし、きっとすぐにゴール出来るよね! 頼むわよ!」

「おぉ、任せておけよ」

 銀時の掛け声に、シリカやリーファは段々と気持ちを立て直していく。チーム決めからは外れたが、まだ景品次第ではキリトと二人っきりになる可能性が高い。その為にも早くゴールをすると熱意を燃やしていた。

 万事屋チームもフレンドラリー開始に向けて準備を進める中、彼らはとある知り合いと偶然にも遭遇してしまう。

「おや、リーダーではないか」

「ん? ヅラ、お前も来ていたアルか」

「ヅラじゃない桂だ」

 お馴染みの台詞と共に声をかけてきたのは、桂小太郎。所謂桂一派もこのイベントに参加する様子だ。

「桂さんと……クラインさん?」

[俺もいるぞ]

「エリザベスさんも。ていうか、なんですかその恰好?」

彼の左右には、お馴染みの仲間であるクラインとエリザベスが立っていた。だが彼らの恰好は、普段とはまったく違う。

「これはな! 宇宙キャプテンカツーラと宇宙コック長のクラ―イン。それと宇宙生物ステファンの恰好なんだぜ!」

「なんでわざわざ変装しているんだよ」

「いざという時の為だ。真選組がこのイベントに参加しているかもしれないだろ」

 そう。桂は以前にも変装用と愛用している宇宙キャプテンカツーラの恰好。クラインはそのカツーラを支えるコック長のクラ―インの恰好をしていた。桂独特の世界観に、銀時ら万屋の面々はうんざりとした表情を浮かべている。(因みにエリザベスは、まったく恰好が変わっていない)

 すると急に、クラインは万事屋の一風変わったチーム編成に気付いていた。

「というか、お前等の組んでいるメンバーは珍しいな。万事屋にリーファちゃんとシリカちゃんか……あっ! さては、キリト達のメンバーとじゃんけんか何かして負けたんだろ。ちょっと残念だった――」

「ホワチャー!!」

「ぐはぁ!!」

 クラインがリーファらをおちょくろうとしたところ、神楽がカウンターの如く彼の顔面に向かって蹴りを入れる。あまりにも急な不意打ちに、彼はそのまま倒れこんでしまう。

「何するんだよ、神楽ちゃん!!」

「うるせぇ、黙れ髭」

「せめて本名で言ってくれる!?」

 雰囲気から分かる神楽の怒り。クライン自身もただならぬ殺気に、恐怖を覚え始めていた。

「シッリーもリッフーも今、心に傷を負っているネ。例え冗談でも二人を小馬鹿にしたら……テメェの骨、二、三本へし折ってやるネ!!」

「や、止めて神楽ちゃん!! 夜兎が本気出したら、俺の体持たないから!」

 神楽はそのまま倒れているクラインの背後に襲い掛かり、力いっぱい首を羽交い絞めしていく。冗談とも思えない神楽の一方的な攻撃に、彼の顔はみるみる青く変わり始める。思わず仲間達に助けを求めようとするが、

「私達を小馬鹿にした天罰よ!」

「恥を知ってください、クラインさん」

「俺は知らねぇぞ」

「僕もです」

「いや! 銀さんに新八も蔑んだ目で見下さないでくれぇぇぇ!! ひぃぃぃ」

リーファ、シリカ、銀時、新八共に呆れた表情を浮かべて、まったく動かなかった。助けが断たれ絶望するクラインに、神楽の羽交い絞めはさらに強さを増していく。

「リーダー、その辺にしてやれ。騒ぎが大きくなっては困る」

「チッ! 後で覚えておけよ」

 ようやく桂から止められて、クラインは神楽の拘束に無事解放された。彼はゲホゲオと咳が止まらず、若干の後遺症が残っている。これも彼のデリカシーの無い一言が原因なのだが……

 とそんな時である。

「ピンポンパンポン! 大会委員会からのお知らせです。番号が二十八、二十九.三十で参加予定のチームは、至急本部まで来てください」

 会場内に呼び出しのアナウンスが鳴り響いていた。特定の番号が該当するのだが、万事屋チームはその対象に当てはまっている。

「えっ? 三十って僕らのチーム番号じゃないですか?」

「おいおい、マジかよ。こんな状況の中で呼び出しって、一体何用だよ?」

「とりあえず、行ってみた方がいいネ。シッリー、リッフー行くアルよ!」

「分かったわ」

「行きましょう!」

 呼び出された一行は場を離れて、テントの隅っこにある本部へと移動。

 一方で桂のチームはと言うと、

「そういえば俺達の番号って」

「十番だな」

「じゃ、関係ないか……」

ちょうど対象から外れていた。どうやら今回の呼び出しとは、まったく関係が無いらしい。

 

 そして万事屋一行が本部に到着すると、同じくして呼ばれたチームが先に集まっている。

「あぁ、お前らも呼び出されたのか?」

「あっ、銀さん。そっちのチームも呼ばれたのか?」

「そうアルよ。ったく、めんどくさいことさせるアルナ~」

 まさかのキリトら妖精チームも、本部に呼ばれていた。さり気なく会話を交わしていると、キリトは残念ながらチームから外れたシリカとリーファの姿を目撃する。

「ん? シリカ、スグ? 大丈夫か?」

「あっ、キリトさん。だ、大丈夫ですよ! いつまでも落ち込んでいたら、全然楽しめませんからね!」

「それにこっちには万事屋がついているんだから! さっさとゴールして、目玉の景品は先にゲットしちゃうんだから!」

「そっか。そんなにやる気があるなら、大丈夫そうかな」

 元気を取り戻している二人の姿を見て、キリトは一安心していた。少なくとも今日の朝に見かけた死んだような表情からは、無事に立ち直ったと確信している。アスナやユイも彼と同じ思いだった。

 一方でシリカとリーファの元には、じゃんけんの勝者であるリズベットとシノンが、煽るように話しかけている。

「おや~? さっきまでしょんぼりしていたのに、本当に元気になったのかしら~?」

「って、リズさん! 余裕があるからって、アタシ達を煽らないでくださいよ!」

「まぁでも、私達が勝者なのは変わらないけどね」

「う、羨ましい……!!」

 相手からの反応を面白がって、からかい続けている二人。運勝ちしたことを、よっぽど嬉しく思っているようだ。

知り合い同士で場は騒がしくなる一方、ユイは呼び出されたもう一組のチームが気になっている。

「そういえば、もう一つのチームはどこにいるのでしょうか?」

 辺りを軽く見渡していると、そのチームメンバーはようやく本部へ来ていた。

「おや? 騒がしいと思ったら、君達だったのか?」

「えっ? もしかしてこの声は……」

 しかし、声を聞いた瞬間に場の空気は一変してしまう。聞き覚えのある口調で、とある知り合いを連想したからだ。もちろんその予想は、的中しているのだが……。

「やっぱり、真選組のみなさん!?」

 そう、もう一組のチームは真選組の近藤、土方、沖田の三人であった。思わぬ再会を果たして、全員はつい驚嘆としてしまう。だが真選組側は大した反応を見せず、淡々とした態度で万事屋一行に接していく。

「あん? 誰かさんと思ったら、万事屋に妖精ゲーマー達じゃねぇか。まさかテメェらも参加していたとはな」

「それはこっちの台詞よ! というか、みんな揃って真選組の方は大丈夫なの!?」

「そこも問題ねぇですよ。全員有給で来ているんで、江戸の方は二番隊か十番隊の方に任しきっていやすよ」

「そんなアバウトで大丈夫なの……?」

 どうやら沖田ら三人は休みを取って来ているらしく、その証拠に服装も普段の隊士服ではなく、外出用の和服を着こなしていた。江戸の治安を他の隊に任せる様から、リズベットやシノンも少し不安を感じてしまう。

「とりあえず、俺達の目標は一つだ! スタンプラリーを遂行させて、お妙さんという豪華賞品をゲットする!! 待っていろよ、お妙さん!!」

「おい、このゴリラ。とうとう自分から墓穴を掘っているアルよ」

「お妙さんへの愛は、一方的な気もしますが……」

 そんな真選組……いや、リーダーたる近藤の本心はやはり妙が目当てだった。惜しみなく自分の本心を出しているが、彼の恋愛模様はキリトらにとっても周知の事実である。神楽とシリカは冷めた目つきのまま、そっと皮肉を投げかけていた。

 該当する三組のチームが集まったものの、どれも個性が豊かで、一筋縄ではいかない人達が集まってきている。ところが大会本部側の人間は、予想の遥か上を行く容姿をしていた。

「みなさんー! お待たせいたしました!?」

「ん!? えっ!?」

「まさかのオカマ!?」

 野太い声が聞こえた方へ注目を寄せると、そこには女性用の着物を着こなした男性が姿を見せていた。オレンジ髪のおかっぱ頭で、出っ張ったケツアゴが特徴的である。キリトらSAOキャラクターは困惑しているが、銀時らにとっては知り合いと呼べる人物であった。

「あー! お前は……」

「「「かまっ娘のアゴ美!!」」」

「誰がアゴ美だ、コノヤロー!! ちゃんとあずみと呼ばねぇか、てめぇら!!」

 揃って声を上げたものの、やはりお決まりのアダ名を言い当ててしまう。そして彼も反射的に、ノリツッコミで返している。そんなアゴ美……いやあずみは、万事屋とは繋がりの深い人物であった。

「ぎ、銀さん!? もしかして、この人と知り合いなのか?」

「あぁ。アイツは、かまっ娘クラブって言うオカマバーに所属するアゴ……あずみさんだ。あんなアゴをしているが、れっきとした一人の人間だから、モンスターと勘違いするなよ」

「いや、それ以前にだいぶ失礼なことを言っているわよ……」

 悪意を含めた銀時の解説を聞き、アスナは小さくツッコミを入れている。彼の言う通りあずみは、個性的な見た目のオカマ系キャバ嬢なのだが、やはりケツアゴが目立っていて、初対面のユイや沖田からも間違った名称で呼ばれてしまう。

「あの……アゴ美おじさんが、大会のスタッフさんなんですか?」

「色々と間違えているわよ! おじさんじゃなくて、お姉さん! アゴ美じゃなくて、あずみよ!!」

「とりあえずどうでもいいから、さっさと要件を話してくだせぇ。アゴ」

「もはやそのものになっちゃったじゃないの!! ……まぁ、いいわよ。時間も無いから、軽く要件の方を話すわね」

 次々とツッコミを繰り出すあずみであったが、時間の都合によって途中で諦めてしまう。ボケに構っている暇も無く、彼女は本来の要件を手短に説明していく。

「実はね、アナタ達のチームと名前をパソコンで入力した時に、私は誤ってトラブルを起こしてしまったのよ」

「トラブルアルか?」

「そうよ。突然体勢を崩してね、パソコンとアゴがぶつかって、不覚にもエラーを起こしたのよね」

「エラーだけって……よく壊れなかったな。奇跡的じゃねぇか」

「どこが奇跡的よ! おかげで終盤に入力したチーム名とメンバーが、バグで総入れ替えになったていうのに。さらに訂正も出来ないから、少し困っているのよ!」

 話の主な内容は、自身のミスによるパソコンのトラブルだったが……その現状はあまりよろしくはない。場にいた全員も、徐々にこの意味を理解していく。

「えっ? 今なんて……?」

「だから、アナタ達のチームだけが希望通りにならなくなったってことよ!! 再入力も出来ないから、ここで一つお願いがあるの。今から発表するチームで、このイベントに参加してくれないかしら? もしママやお妙さんにバレたら……どんな恐ろしい罰を受けることやら……お願い! 私の保身の為にも、実現してちょうだい!!」

 なんとあずみのミスにより、本来とは別のチームメンバーで、パソコンに登録されてしまったようだ。これを公には出来ない彼女は、別々に記載されたチームで動くように、全員へ嘆願していく。思わぬお願いを受けた一行であったが、この展開に一番心を揺さぶられていたのは、もちろんあの女子陣である。

(ちょっと待って! これってまさか……キリトのチームと引きはがされるってこと!?)

(下手すれば銀さんや真選組の人達とチームを組んじゃうの……?)

 じゃんけんの勝者であるリズベットとシノンは、キリトと離れることに身震いしていく。だが一方で、

(これはチャンスでは!? 運次第ではまだ逆転できますよ!!)

(棚からぼた餅とは、まさにこれね! もうアゴ美さんに感謝するしかない!)

敗者のシリカとリーファはむしろ期待を寄せていた。形勢逆転を狙い、心の中では強く祈り始めている。そして真選組や万事屋もこの発表を聞いて、各々思ったことを呟いていく。

「こいつらとチームを組むんですかい? まぁ土方さんと離れるなら、万々歳ですけどね」

「なんだと、てめぇ! もう一回言ってみろ!?」

「まぁまぁ、落ち着け二人共。俺はチームを離れてもお前達を信じているから、もう心構えは出来ているぞ」

「「はいはい」」

「って、二人共!?」

 目立った動揺を見せない真選組の三人。近藤を除いて、チームとしてのこだわりは特にないようだ。

「そんな……パパやママと離れ離れになるなんて……」

「まぁ、仕方のないことよ。それに私達と別のチームになっても、銀さんや新八君、神楽ちゃんがいれば大丈夫よ」

「そうだな。ユイはしっかりしているから、みんなを引っ張れるように頑張ってくれよ」

「……分かりました。私、頑張ってみます!」

 キリト、アスナ、ユイの三人は家族として思い入れが強く、離れることに強く不安を感じてしまう。それでもすんなりと受け入れて、共に覚悟を決めている。

「これは俺達が良しとしても、あの女子達に関わることじゃねぇのか?」

「絶望と希望が入れ替わったような顔をしているネ」

「これじゃどっちにしろ、波乱なチームになりそうですけどね」

「頼むから、女子のみで固めるのは勘弁してくれや……」

 そして万事屋だが、自分達よりもあの女子陣の様子が気になって仕方が無かった。チームの編成次第では、思わぬとばっちりが来ることが気がかりである。

 一方であずみは一通り様子を見て、新チーム発表への判断を見極めていた。

「アラ? これはもしかして、受け入れてくれる雰囲気なのかしら?」

 そう呟くと同時に、咄嗟に動いたのはもちろん女子陣である。

「そうですよ! だから発表してください、アゴ美さん!!」

「アナタの一言にかかっているんです! お願いだから、お兄ちゃんと一緒のチームに入れさせて!!」

「ちょっとアンタ達!? ここまで来て、往生際が悪いわよ!!」

「こっちだって、心の準備がまだ出来ていな――」

 発表に期待を寄せる敗者の二人と、覚悟の出来てない勝者の二人。共に複雑な心境を抱えながら、互いに言い争いを始めていく。しかし彼女達の事情を知らないあずみは、口論に関係なく発表の準備が出来ていた。

「よし! もう時間も無いから、さっさと発表しちゃうわよ! みんな、覚悟してね!」

「あー! 待ってって!!」

 もうこうなれば、後戻りなどは出来ない。期待と不安の入り混じった新チームの発表が、今ここで言い渡されていた。

「まずは万事屋チーム! 坂田銀時さんに、土方十四郎さん! シノンさんとユイさんの計四人です!」

「「「えっ!?」」」

「銀時さんと土方さんとシノンさんのチーム……ですか?」

「続いて真選組チーム! 近藤勲さんに、志村新八さん! アスナさんとリズベットさんの計四人です!」

「「ん!?」」

「おっ!?」

「……はぁぁぁぁぁ!?」

「最後に妖精チーム! キリトさん、リーファさん、シリカさん! そして神楽さんと沖田総悟さんの計五人です!」

「「何!?」」

「ふーん」

「「や……やったぁぁぁぁ!!」」

「以上です!! ではこのチームで、頑張って来てください!!」

 発表を終えたあずみは、文句を言われる前に足早に場を後にする。トラブルから起きたチーム総入れ替えは、この場にいる全員へとんでもない衝撃を与えていた。仲の悪い者同士の共演。敗者から大逆転勝利を勝ち取った二人。勝者から絶望の淵へと叩き落された二人と、もちろん場は混乱状態に陥っている。新八のツッコミも留まることを知らない。

「ちょっとぉぉぉ!? 何この組み合わせ!? 予想以上の入れ替えだよ! 絶対にまとまらないって!!」

「ねぇ、新八君。早速だけど、トラブル発生よ……」

「えっ、何ですか!?」

「リズが気絶したわ」

「……はい?」

 同じくチームメイトとなったアスナからは、思わぬ報告を受けている。彼女の向けた方向には、笑顔を失い絶望感に浸っているリズベットがいた。勝者からの転落劇は彼女のメンタルを崩壊させて、心の支えすらも奪ってしまう。

「私の青春が……私の勝利が無駄に……」

 さながら廃人のような姿である。これには仲間達も、つい目を背けていた。

「これは重傷ですね……」

「よっぽどキリト君と同じチームになりたかったのね。さっきまでの笑顔とは、もう真逆だもの」

 彼女の気持ちを理解しつつも、二人は話しかけることには抵抗を覚えてしまう。どう接するべきか考えていると、同じくチームメンバーである近藤が、空気を読まずにリズベットへ話しかけてきた。

「ハハハ! まったくみんなは、心が沈みすぎだぞ! でも大丈夫だ! 俺と共に進めば、必ず一番乗りへと連れて行けるぞ! 今日一日、共に頑張ろうではないか!! 新八君にアスナさん! そして……リズベット君!」

 あえて気を遣わずに話しかけているが、もちろん逆効果である。これには彼女も怒りを覚えたようで、

「……じゃ、ないでしょうがぁぁぁぁ!!」

「ブホォォォ!?」

お返しに不意のビンタで近藤を攻撃していく。さらにそのまま彼の胸ぐらを掴むと、自身の気持ちをありのままにさらけ出してきた。

「アタシはね!! 確実にあのチームで行けるはずだったのよ!! なのにどこぞのアゴ男のせいで、勝手にチームを入れ替えたのよ!! この気持ちがアンタに分かるの!? アタシの貴重な青春を返してよぉぉぉ!!」

「そ、そう俺に言われてもだな……」

「あぁぁぁ!! なんでこのチームになったのよ!!」

 感極まって涙を流しながら訴えているが、結局はキリトとチームが別になったことが気に食わないだけである。一度は実現した願いが失われて、悔しさはより一層強まっていた。そんな彼女の悲哀を、いまいち理解していない近藤である。

「……大丈夫かな、このチーム」

「絶対大丈夫じゃないわよ」

「「はぁ……」」

 近くで見守っていた新八とアスナも、このチーム編成に危惧していた。共にため息を吐きながら、今日一日をどう乗り切るか考えていく。新真選組チームは、最初から波乱に満ち溢れていた。

 一方で、同じくキリトと別々のチームになったシノンだが、リズベットほど後悔は感じていない。軽くため息を吐いて、すぐに現状を受け入れている。

「はぁ……。結局嫌な予感が当たってしまったわね」

「大丈夫ですか、シノンさん? やっぱり前のチームが良かったですか?」

 引き続きチームメンバーとなったユイが、心配そうに声をかけてきた。だがしかし、彼女は普段通りに接していく。

「そうだけど、今の問題はそこじゃないわ。あの二人のことよ」

「あの二人……銀時さんと土方さんですか?」

「そう。いかにも仲が悪そうでしょ?」

 冷静にチーム構成を見定めて、いち早く懸念材料を指摘している。シノンが不安視していたのは、同じくチームに入れられた銀時と土方の関係性であった。お互いに顔を合わせた時から、異様な険悪さが滲み出ている。その理由を知らないシノンやユイでさえも、二人の様子から既に察していた。

「おいおい、勘弁してくれよ。なんでてめぇと、チームを組まなきゃいけねぇんだよ」

「それはこっちの台詞だ。こんなところでも一緒にされるなんざ、今日はついてねぇみたいだな」

「うっせーよ!! 仕方なく同じチームになったから、足だけは引っ張るなよ! 多串くん!」

「誰が多串だ!? このネタが分かる奴一部しかいねぇから、今すぐやめろ!」

「やめるか、ボケ!」

 煽りながら会話を交わした直後に、挑発を加えて共に事態をややこしくしている。二人は相手を睨みつけながら、多様な悪口で口喧嘩を始めていく。

 奇しくも予想が的中したシノンは、再びこの状況にため息を吐いていた。

「はぁ……何やっているのよ、銀さんも土方さんも。いい大人なんだから、それらしい振る舞いをすれば良いだけなのに……」

「でもちょっと、兄弟みたいな感じで微笑ましい気はしますけどね」

「フッ……それは分からなくないけど」

 一方でユイは二人を兄弟だと揶揄して、呑気にも温かい目で見ている。子供らしい考え方を聞き、シノンも不意にクスッと笑ってしまう。新万事屋チームは、しっかり者の女子達にかかっているのかもしれない。

 そして唯一の大金星を挙げたのは、紛れもない新妖精チームである。

「やりましたよ、リーファさん!! アタシ達大逆転勝利ですよ!!」

「最後まで希望を信じて、本当に良かったよ!!」

 キリトと同じチームに加入して、歓喜の声を上げるのは、もちろんシリカとリーファだ。運命をひっくり変えたトラブルにより、大逆転勝利を収めている。絶望から希望へと見事にのし上がっていた。ところが……このチームには思わぬ天敵も入っている。

「だけど……不安材料が一人」

「あぁ、沖田さんのことね……」

 そう。リーファに数多の嫌がらせをしてきた男……沖田総悟であった。彼も新妖精チームに入っており、何食わぬ顔でキリトや神楽に向かって煽りを入れていく。

「まぁ、気軽に頑張りやしょうや。中二病主人公と怪力女がいれば、大体のことは乗り越えられるだろうな」

「中二病主人公って、俺のことなのか? 当てはまってない気がするんだが……」

「って、キリはまともに答えちゃ駄目アルよ! アイツは何を企んでいるか、分からないアルから!」

「よく分かっているな。それじゃ改めて、今日一日よろしく頼むぜ」

「チッ! あぁ、こちらこそアル!」

 神楽だけが不機嫌になりつつも、沖田から差し出された手を掴み、手慣れたように固い握手を交わしていく。一見腐れ縁を匂わせている二人だが……その本心は互いに恨みや怒りを溜め込んでいる。

(どう仕掛けるか、しっかり覚悟しとけよ。チャイナ……)

(どう晒すか、油断はするなよ。ドS!)

 表面の態度とは裏腹に、心の中では真っ黒な本音を呟いていく。如何に相手を陥れるか――腹黒な性格が共に現れていた。その殺伐とした雰囲気から、キリト、シリカ、リーファも二人の本心に気付き始めている。

「本当にアレは握手なのでしょうか……」

「悪だくみしているのが、丸わかりな気がするわ……」

「神楽ってもしかして、沖田さんに何か恨みでもあるのか?」

 こちらも一つのチームとして、この先の活動に不穏さを漂わせていた。新妖精チームもこれまた、癖の強い面々が集まっている。

 こうしてチーム決めは思わぬ結末を迎えて、いよいよ本番であるフレンドラリーが幕を開けようとしていた。

「ゴリラ、何とかしてって!!」

「リズ君……落ち着け」

 未だにリズベットは取り乱しているが……




 こんなチームワークバラバラで本当に大丈夫か!? 書き上げた時にふと思ってしまいました。個人的にはリズベットが不憫で仕方ないです……(自分で書いておきながら)
 訳ありなチームで、次回からこのラリーを回っていきます。(「上限五人までならキリトと女子四人で組めるじゃん」と言わないでください。多分アスナが許しませんから……)

 結構久しぶりにコラボ小説を書いたので、中々まだ調子が上がっていません。キャラ描写に気を遣いすぎたせいか、いつもの遅筆に拍車がかかってしまいました。(汗)
どうにか勘を取り戻せるように頑張ります……

追記

ということで、かぶき町フレンドラリーを再度作り直すことにしました。
 今回のお話では、
 万事屋にお妙が訪れる
 桂達のチームを作る
と言ったシーンを加筆しました。

 前回は尺の都合で景品の抽選会を描けなかったので、諸々のリベンジを込めて、作り直すことにしました。
 豪華賞品にみんながつられて、今後どのような展開になるのか。
 是非注目してみてください。

 次回からチームごとにお話を作り直します。
 四十八訓 万事屋チーム(銀時、土方、シノン、ユイ)のスタンプ集め(1、3、5)
 四十九訓 真選組チーム(近藤、新八、アスナ、リズベット)のスタンプ集め(1、2、4)
五十訓  妖精チーム(キリト、神楽、沖田、シリカ、リーファ)のスタンプ集め(1、2、5)
五十一訓 ダーツ抽選会(完全新規)

またスタンプの数は3つ→5つに変更となっておりますが、実際に本編で描くのは5つのうち3つなので、特に本編の尺に影響はございません。


 再編集版をお送りしているので、4月内は毎週投稿していきます。主に火曜日の20時から21時頃を目途に公開していきますので、ぜひお見逃しなく。
 百五訓につきましては上手くいけば、5月上旬には投稿する予定です。

 リメイク前のお話は、4月末に非公開となる予定です。ご了承ください。

一部のスタンプ集めも修正や変更をしてお届けするので、是非最後までご覧ください!

次回予告

銀時「ということで、次回から新訳のかぶき町フレンドラリーを始めるぞ!」

土方「またテメェと組まされるのかよ」

ユイ「豪華賞品の抽選会に向けて、皆さん力を合わせましょう!」

シノン「そうね。宇宙旅行のチケットを手に入れるのは、私よ!」

銀時「ということで次回。呉越同舟なんて実際耐えられない」


教えて! 銀八先生!

銀八「リメイクに伴ってついでにやりますー。ペンネーム、カヤバとカバオって名前が似てませんかさんからの質問。剣魂では後書きの前に「本日の登場キャラクター」をやっておりますが、アレはなぜやっているのですか? 何か意味はあるんですか? ずばりお答えしましょう。アレは投稿者のトライアルの趣味です。きかんし〇トーマスで物語が終わった時、「このお話の出演は……」とそのお話に登場したキャラを森本レ〇が紹介している例に倣って作ったそうです。なんできかん〇ゃトーマスなのかは特に深い意味は無いそうです。ということで、とうとう銀魂世界で幕府に指名手配されたクライン! 真選組に捕まったことを考えて、オーディナルスケールとアリシゼーションの出演は見合わせておけ。以上だ」
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