剣魂    作:トライアル

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前回までのあらすじ
 かぶき町で開催されるイベント、「かぶき町フレンドラリー」のチームを巡って、シリカ、リズベット、リーファ、シノンの女子4人は、キリトと一緒のチームになるべく躍起になっていた。話し合いの末にようやくチームが決まったが……運営側のミスによって、チームは解消されてしまう。それどころか万事屋や真選組も巻き込んで、まとまりそうにないチームへ変えられてしまった。果たして万事屋チーム、真選組チーム、妖精チームは、無事にイベントを乗り切れるのだろうか?

2025年4月8日 リメイク版に置き換えました。


第四十八訓 呉越同舟なんて実際耐えられない(新訳)

「――えー、それではみなさん。今日はしっかりとルールを守って、怪我無くこのラリーを楽しんできてください。では、かぶき町フレンドラリー……これより開幕致します!!」

〈ピー!!〉

 説明を終えた大会のスタッフは、笛をよく鳴らして、参加者にフレンドラリーの開始を告げた。各チームは配布された地図を眺めて、指定された場所まで歩き始めている。

 再度フレンドラリーのルールを確認すると、スタンプを集める場所は各二十五地点あり、そこから五つほど自由に選んで行かなくてはならない。そこで簡単なゲームを達成することでスタンプを獲得できる。それを五つ集めて、ゴール地点まで行けば、チームの人数分ダーツが配られて、豪華な景品と交換できるダーツゲームを行えるのだ。

 およそ五十以上あるチームが動き始める中で、万事屋の六人はチームと再合流する前に、互いに声を掛け合っている。

「それじゃ、銀さん。ユイちゃんのことを頼むわよ!」

「分かってらぁ。お前らもしっかりと頑張れよ」

「任せるネ! キリと一緒にあのドS野郎に、立ち向かってみせるアル!」

「って、神楽さんは趣旨が変わっていますよ!」

「……まぁとにかく、混合チームでも一丸となって頑張ろうな」

「そうですね。では、行きましょうか!」

 一行は覚悟を決めて、二人一組でチームの元に戻っていった。銀時とユイは、土方、シノンのいる万事屋チーム。キリトと神楽は、沖田、リーファ、シリカがいる妖精チーム。新八とアスナは、近藤とリズベットが待つ真選組チームと別れていく。この一癖もあるチームメンバーと共に、フレンドラリーを周回するのだ。

 すると真っ先に、行動を始めたのは万事屋チームからであった。

「よし! 全員集まったし、俺についてこい! 遅れるんじゃねぇぞ!!」

「って、なんでテメェが仕切ってんだよ! そもそもいつリーダーを決めたんだ!?」

「はぁ? チーム名を思い出してみろよ、万事屋チームだろ! だったら自動的に、俺がリーダーに繰り上がるんだよ! 覚えておけよな!」

「どこのルールだ、ソレ!? 勝手に決めつけるな! せめて指図は止めろ!!」

「いいや! 万事屋に入ったからには、てめぇは下っ端から始めろ! もちろんユイやシノンよりも、階位は下だけどな!!」

「意味分からねぇよ!! ていうかシノンは、万事屋にすら入ってねぇじゃねぇか!!」

 しかし早速トラブルが起こってしまう。横暴に振る舞う銀時の態度に対して、土方は不満げに文句をぶつけてきた。元々相性の悪い二人の対立は、ほんの少しのきっかけでも再燃してしまう。新チーム発表後も収まらず、互いに相手を睨みつけて口喧嘩を始めていた。

 そんな二人を目の当たりにして、チームメンバーであるユイとシノンは、苦い表情で呆れかけている。

「また二人共、喧嘩を始めたんですか……」

「もう仕方ないわね……ちょっと荒っぽいけど、止めに行くわ」

「シノンさん……?」

 この事態を解消するべく、シノンが率先して強硬策に出ていた。背中に装備していた弓を構えて、腰元のホルダーから、先端に吸盤の付いたおもちゃ用の弓矢を二本ほど取り出している。そのままそれを弓へ装填して――

「ハァ!」

瞬く間に連続して発射した。彼女が狙った方向は、銀時と土方のおでこへ向けられている。

〈スッ!〉

「「……えっ?」」

 そして綺麗に命中すると、二人は弓矢の存在に気が付き、揃っておでこから引き抜いていた。注意が弓矢に向き、喧嘩も途端に静まると、この隙を狙いシノンは説教を始めていく。

「いい加減落ち着きなさい、二人共。さもないと、本物の矢が飛んでくるわよ……? いいわね?」

「「は、はい……」」

 怒りを織り交ぜながら、にこやかな表情で注意を促してきた。まるで妙や月詠といった銀魂系女子を彷彿とさせる叱り方である。おかげで銀時、土方共に、肝が冷え切って落ち着きを取り戻していた。

「シノンさん、マジかっこいいです!!」

 大人げない男を制裁するシノンの姿に、ユイも目をキラキラとさせて、憧れを抱き始めている。もはや彼女が、万事屋チームのまとめ役に成り代わっていた。

「ふぅ……それじゃ、さっさと出発するわよ!」

「はいです!」

「「お、おう……」」

 さり気なくチームを仕切りつつ、女子を先陣にして公園を出発していく。こうした一悶着も収まり、万事屋チームの長い一日が幕を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 女子陣を先頭にして銀時ら二人がついていく中で、会話では男性陣の仲の悪さに注目が集まっている。

「そもそもなんで、銀時さんと土方さんはとても仲が悪いんですか?」

「そうよ。ちょっとしたことで喧嘩するなんて、むしろ友人っぽく思えるんだけど」

 シノンとユイが不思議そうに質問を投げると、銀時と土方は落ち着いた態度で自分なりの答えを返していた。

「そんなの、相性の問題に決まっているだろ。こいつと出くわす度に、ロクな事しか起きてねぇからな」

「同じくだ。その証拠に今も、同じチームに入れられているからだよ」

 ため息混じりに話して、簡潔に相性の問題だとまとめている。意見の一致した二人の返答を聞き、ユイはすぐに独自の解釈を広げていた。

「えっと、つまり……喧嘩するほど仲が良い兄弟のような関係という事ですね!」

「って、いや全然違ぇよ!?」

「おい、ユイ!? 変な誤解をするなよ!? こいつと兄弟なんて、真っ平ごめんだからな!!」

「それはこっちの台詞だ、バカヤロー!」

 なんと彼女は満面の笑みで、兄弟に似た関係性だと揶揄していく。当然だが銀時と土方は、ムキになって即座に反論している。誤解を与えぬように、共に必死をかいていた。

「フフ……やっぱり似ているわね。二人って」

「「いや似てねぇよ!!」」

「そう否定しなくても、いいんですよ!」

「なんでてめぇらは、温かい目で笑ってんだよ!? そういうからかいは、もう十分なんだよ!!」

 どちらも似たような反応であり、ユイとシノンはおかしさからか、ついクスッと笑みを浮かべている。垣間見えた二人の関係性を、少しずつ察したようだ。銀時や土方は否定しつつ弁解を続けるが、幾ら言おうとも印象は変わらないだろう。

 万事屋チーム全体の距離は、会話を通して徐々に縮まっていく。(銀時と土方を除く)

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな万事屋チームが最初に辿り着いたのは、スタート地点から近い裏路地。銀時はただただ近いという理由から、この場所を選んでいた。

「ここのはずだが」

「本当に合っているのか、ここで?」

「間違いねぇよ。ここしか裏路地への抜け道無いからな」

 土方からは用心深く疑いの目をかけられるが、銀時はこの場所で正しいと断言している。しかし裏路地にはスタンプ設置場所も無ければ、出題者の影もまったく見当たらない。

「でも誰もいませんよ」

「やっぱり場所間違っているんじゃないの?」

 しばらく経っても何も起きず、ユイやシノンからもこの場所で合っているか不安を口にしていた。

 だが、その時。ジャズ風のBGMが不意に流れ、近くにあったビルの戸から一人の男が姿を現す。

「いいや、ここで合っているぜ。久しぶりだな~万事屋」

 そう。現れた男は大きめのグラサン、上品な和服を身に着け、口元には葉巻が銜えられていた。全体的に体格も良く、その様子から硬派な大人と言っても過言ではない彼の正体は、

「って、お前は……小銭形平次!」

銀時とも知り合いであった小銭形平次である。

「小銭形? 銀時さんの知り合いなのですか?」

「まぁな。江戸の岡っ引きをやってるハードボイルドな奴だよ」

「岡っ引き……警察のような人達かしら」

 当然ユイとシノンにとっては初対面の為、その大人っぽいおじさんの雰囲気に圧倒されてしまう。特にシノンは偉人の銭形平次が脳内に思い浮かび、否が応でもそちらが気になっている。

 女子二人が不可思議そうな表情を浮かべる中、銀時と土方はやや嫌そうな表情を浮かべていた。

「ったく、お前が主題者かよ」

「おい、時間のかかる試練じゃないんだろうな?」

 土方らは小銭形の癖のある性格を知っているので、彼の出題する試練が難ありじゃないか不安を覚えている。

 すると、扉から青い甚平を着た小銭形の助手も姿を見せてきた。

「心配しないでください。ハードボイルドを知っていれば、大丈夫ですから!」

「この方は?」

「こいつはハジだ。俺の大切な部下だ。仲良くしてやってくれよ」

 ユイの疑問に、小銭形本人が返答する。ユイと同じくらいの背丈のあるこの女の子はハジ。小銭形の元で働く部下である。今回は小銭形の考えた試練の進行役を務める様子だ。

「それじゃ、オイラから紹介しやすね。今回旦那達が挑むのは、シルエットクイズです!」

「シルエットクイズ?」

「俺が屏風の裏で何をやっているのか当ててみろ。三問正解すればスタンプを獲得だ」

 銀時らが最初に挑む試練は、小銭形のシルエットクイズ。屏風に隠れた小銭形が、どんなことをしているか当てるシンプルなクイズなのだが……銀時や土方は、悪い予感が当たったように苦い表情に移り変わっていた。

「おい……三問もやるのかよ」

「つーか、簡単に答えさせてくれるんだよな?」

「安心しろ。真のハードボイルドなら三十秒で終わる」

「そこが心配なんだよ! つーか、てめぇ! どんだけ低予算でやってんだよ! 深夜番組でももっと凝ったヤツ作るぞ!」

 折角の最初の試練と楽しみたいところだが、小銭形が待機していた場所、はたまた隣にあった安っぽい屏風、試練の内容からかなりの低予算ぶりが伺える。銀時のツッコミもより激しさを増していた。

「まぁまぁ、銀さん。落ち着いて」

「そうですよ! シルエットクイズも楽しそうじゃないですか!」

 そんな彼をシノンとユイはそっと宥めていく。周りの状況はさておき、彼女らは小銭形のシルエットクイズを純粋に楽しもうとしていた。

 とりあえず時間も限られているので、万事屋チーム一行は早速小銭形の出題するシルエットクイズへ望む。

「それじゃ、いきやすよー。よーい、スタート!」

 ハジの掛け声で、屏風にスポットライトの光が当てられた。屏風に浮かんだ影は、ワイングラスを片手に何かを指さす小銭形の姿である。

「グラスを持っているわね」

「どういうシチュエーションなんでしょうか?」

 注意深く小銭形の姿を見るユイとシノン。一方で、

「おーい、土方君はどう思うよ」

「俺に丸投げするなよ。無難に夜の一服じゃないのか?」

「じゃ、俺は朝の一服で」

「お前、答え変えただろ! 絶対に一緒になりたくないから、先に聞いただろ」

銀時と土方は答えを巡ってまたしても言い争っていた。土方と同じ答えになりたくない為か、銀時は後だしじゃんけんのように答えを変更する。

「では、私は寝る前の小銭形さんで!」

「私は……帰宅後にワインを嗜む小銭形さんにしようかしら」

 この流れでユイとシノンも思いついた答えを声に出していた。果たして、この中に正解はあるのだろうか。

「ではいきやすよ。正解は――」

 ハジの掛け声で屏風が外され、小銭形の現在の様子が露わになった。

「正解は、焼酎片手に偉人像の真似をする小銭形平次でした」

「分かるかぁぁ!! もうお前の匙加減で答え決まるようなもんじゃねぇかぁぁ!!」

 その答えは、もはやどうとでも取れるものである。ワイングラスの中に入っていたのは焼酎。さらに小銭形は偉人の石像を模した台座の上に立っていた。的外れ……というよりも、あまりの分かりづらさに銀時らのみならず、シノンやユイも唖然として苦い表情を浮かべている。

「おぃぃぃ!! 俺達ゃ、急いでんだよ! こんな三文芝居のクイズに付き合っている暇、ねぇんだよ!」

「真のハードボイルドなら三十秒で終わると言っただろ。三問正解するまで続けるからな」

「そんな余裕ねぇんだよ! もっと簡単なクイズ出せや!!」

 激しくツッコミを入れ続ける銀時と土方。この時ばかりは、二人の息もばっちりと合っていた。ただでさえいち早いゴールが求められているこのフレンドラリーで、無駄な時間の浪費はあまりにも手痛い。銀時らは薄々とこのエリアが、実は外れの枠なんじゃないかと思い始めていた。

「もしかして、時間のかかるハズレの出題者だったのでしょうか?」

「そうかもしれないわね。でもここは私に任せて頂戴」

「シノンさん?」

 とここで、シノンが動き出す。銀時と土方の間に割って入り、小銭形へ次のクイズを促してきた。

「小銭形さん。次のクイズへ行ってもらえる?」

「おぉ。やる気のある嬢ちゃんだ。次こそ答えてこれよ」

 屏風を戻して、次のクイズのポーズをする小銭形。その隙にシノンは銀時、土方、ユイに、小声で間接的に作戦を伝えてきた。

「良い。私が仕掛けるから、そのまま思ったことを言ってちょうだい」

「仕掛ける?」

「まぁ、見てなさい。ユイも分かった?」

「わ、分かりました!」

 彼女は勝算のある笑みを浮かべた後、後ろに装備していた大きな弓を手に構える。そして弓矢を入れるケースから、一本の弓矢を取り出していた。矢の先が白い小袋と吸盤の付いた、先ほどと同じおもちゃ用の弓矢だが……?

「では、気を取り直して第二問。これは――」

「今よ」

 とその時。目にも止まらぬ速さでシノンは、弓矢を発射。上空から地上へ降下し、その弓の標的は小銭形である。

「えっ? うわぁぁ!!」

 落下する直前、矢に付けられた小袋が爆発。小袋の中から溢れた紙切れを、小銭形は被ってしまった。

「あ、兄貴!?」

「まるでドッキリサプライズのような仕掛けですね!?」

 あまりにも突然の出来事にハジは動揺を隠せていない。一方のユイは、シノンの言う通りに思ったことを発していた。そう。この仕掛けこそ、シノンが考えたとっておきの作戦なのである。

「お前、何したんだ?」

「ポーズが分からないなら、こっちで固定すれば良いのよ。正解は誕生日サプライズにびっくりする小銭形平次さんでどうかしら?」

「というか、そんな弓矢もあるのかよ」

 答えが分からなければ、こちらで思うように動けば良い。一休さんのようなとんちには、チームの土方らのみならず、出題者側の小銭形とハジもより困惑を強めていく。

「兄貴、どうしやす……?」

「……正解にしておこう」

 若干悔しさを滲ませているが、正解と言うことで事が収まっている。このシノンの突飛な行動により、難関そうに見えたシルエットクイズに一筋の光が見え始めていた。

「おっ、そういうことか」

「回りくどいポーズを取る前に、こっちから仕掛けてポーズを固定すりゃ良かったのか!」

「そう。こっちの方が時短でしょ」

 銀時、土方もシノンの考えに納得して、これが最短への攻略法と確信する。

 出題者側の小銭形にとっては、ルール無用な彼らの行動に戦々恐々としていた……。

「いや、時短と言うかルール違反……」

「そんなことルールに書かれてないだろ! はい次!!」

 という万事屋チームの行動力により、小銭形の目論見はことごとく外れ、あっという間にシルエットクイズを三問制覇。小銭形本人は亀甲縛りで体を固められて、身動きが取れない状態になった。(※ほぼ銀時の仕業である)

「兄貴。大丈夫でやすか?」

「どうしてこうなった……でも気持ち良い気が!」

「うるせぇよ。さっさとスタンプよこせよ」

 持ち前のドMさで新しい趣味に目覚めようとする小銭形に、銀時は構うことなくスタンプを要求する。肝心のスタンプはハジから貰い、銀時ら万事屋チームは無事に最初のスタンプを手に入れた。

「はい! 旦那方、頑張ってくださいね!!」

「お前達こそ、真のハードボイルド!!」

「小銭形さん! ありがとうございます!!」

 亀甲縛りのまま体を縛られてもなお、小銭形は威勢よく万事屋チームへエールを送っていた。彼の屈託のない笑顔に、ユイがつられて返している。

 一方でシノンは、ハジにある気になることを聞いていた。

「どうしたでやんすか?」

「いや……小銭形さん大丈夫? 私のせいで酷い目に合ってない?」

「そんな心配、不要ですよ! 兄貴も回りくどいことやったんで、おあいこですよ」

「そう。……なら、良かったわ」

 強制的とはいえ、小銭形に不意打ちを与えたことを、シノンは若干気にしていた様子だ。ハジの返答で、少しは彼女の気は楽になっている。

 こうして万事屋チームは、無事に一つ目のスタンプを獲得。裏路地を離れ、次なるスタンプ設置場所へと移動していく。

「これでやっと一つ目だな」

「こんなこと後、四回も繰り返さなくちゃいけないのかよ……」

「でも、中々に楽しいクイズだったわよ」

「そうですよ! 今回はシノンさんがクイズの突破口を作ってくれましたからね」

「そうね。さぁ、気持ちを切り替えて次行くわよ!」

 四人はゴール先に待つ豪華景品に想いを馳せながら、次なる試練へと望んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は経ち、第一、第二の関門を突破した万事屋チーム。昼休憩を挟んだ後、彼等は中間地点の第三の試練に挑んでいる。

 その試練会場は川辺。スナックお登勢ら率いるお登勢、キャサリン、たま、エギルからの試練は――ピタゴラ装置の完成である。

「あっ。またビー玉が止まってしまいましたね」

「おい、何やってんだ土方! ちゃんと確認しとけよ、バカヤロー」

「うるせぇ! 結構合わせるのが難しいんだよ! しっかり分かれや!!」

 試運転中にまたもミスが発覚してしまい、思わず銀時のヤジが飛んでいく。

 この試練では予め設置されている未完成のピタゴラ装置に、数か所ほど手直しや別のパーツを加えて、完成させていく内容であった。ビー玉を使いゴールまで運ばせれば、晴れてクリアとなる。

 一見すると簡単そうだが、複雑な装置に未完成な個所と難易度はそれなりに高い。万事屋チームは何度も失敗してしまい、数十分ほど時間をかけてしまった。その苛立ちから、男子陣の対立がまたも浮き彫りとなってしまう。

「もう、銀時さんに土方さん! 後少しで完成しますから、喧嘩は止めてくださいよ!」

「そうよ。時間制限はないから、焦らずに見直せばいいのよ。もう少しの辛抱だから!」

 すかさずユイやシノンのフォローが入って、手慣れたように二人を宥めていく。もはやこのチームとしては、お馴染みの光景になっていた。

 そんなやり取りを続けている一方で、キャサリンが厚かましくも二人にちょっかいを入れてくる。

「フン! ソウヤッテフラグヲ立テテイルコトニ、コノ時ノ彼ラハ知ラナイノデス!」

「おい、勝手にナレーションを入れるな!! 余計なお世話だわ!!」

 見下したような態度や表情に、土方のツッコミが激しく決まっていく。彼らの矛先は彼女へと向かい、銀時は皮肉を交えた文句をぶつけてきた。

「って、ウチの女子達とは偉い違いだな。そんなんだから、中々出番が貰えないんだぞ」

「ッテ、ヤカマシイワ! コッチダッテナ、猫耳キャラヲアノ女共ニ取ラレテ困ッテルンダヨ!! アタシノ誕生日回ヲ取ッタノ、今デモ忘レテネェカラナ!!」

「まぁまぁ、落ち着いてくださいキャサリンさん。SAOの猫耳キャラはどれも可愛いので、立ち向かう方が無駄ですから。ねぇ?」

「ネェジャネェヨ! オメェ!!」

 立場が逆転してしまい、彼女はしかめっ面なまま本音を吐き出していく。同じ猫耳キャラであるシリカやシノンを目の敵にしており、それによる出番の少なさを気にしているようだ。見かねていたたまからも、思わず注意が入っている。

 彼女の隠れた想いに対して、ユイは率直に感じたことを呟いていた。

「そうだったんですか。キャサリンさんも、もっと若ければ対抗出来たと思うのですが……」

「って、さり気なく現実を突きつけてくるのね……」

 元も子もない一言を聞き、シノンは控えめな言葉で返している。久しぶりの天然発言が決まっていた。

 そんな中でお登勢は、銀時に向かって声をかけてくる。

「私らに構う前に、さっさと装置を完成させな。じゃないと、今月の家賃は二倍にするよ」

「おい、ババア! なんてこと言うんだよ! どさくさに紛れて、とんでもないこと言うんじゃねぇよ!」

「口を動かさず、手を動かしな」

「うるせぇ! 上手くねぇんだよ!」

 まったく完成しないピタゴラ装置に痺れを切らして、倍の家賃徴収で急かしていた。銀時にとってはただの挑発にしか聞こえていないが……。

 するとエギルは、対照的に万事屋チームへある助け舟を出した。

「ほら、落ち着きな。この箱の中に装置完成の為のパーツが入っているから、うんと探してみな」

「おい、エギル。あんまり優しくするんじゃないよ」

 ピタゴラ装置完成の為のパーツが入った箱を、銀時らへ向けて提供している。エギルなりの優しさだが、お登勢からは彼の甘い対応に苦々しい表情を浮かべていた。

「おいおい、良いのかよ」

「あぁ。見つけるのはお前達次第だからな」

「ありがとうございます、エギルさん!」

 突然訪れた幸運に感謝を噛み締めながら、銀時やユイは早速箱に入っているパーツをかき分けていく。すると、ユイはあるパーツを発見した。

「では、早速……これなんかどうですか?」

「こ、えっ!?」

「どうしましたか、銀時さん」

「いや、なんでも」

 嬉々とした手にしたユイだったが、対照的に銀時は若干苦めの表情を見せている。その理由は――ユイの手にしたパーツが男性の局部にかなり似ていたからだ。

「どうしたの銀さん? そんな深刻そうな顔をして」

「何があったんだ」

「どうしたもこうしたもねぇよ。ユイの持っているアレを見て見ろよ」

 様子の可笑しい銀時に気付き、土方とシノンも彼に駆け寄る。彼が指を指した方向により、二人も彼の思っていた気まずさに気付き始めていた。

「アレ……って、なんて破廉恥なもの持っているのよ!!」

「おい、どういうことだ! 公然わいせつだぞ、アレ!」

「知るか! エギルが持って来た箱に入っていたんだよ! おーい、どう説明する?」

 ピタゴラ装置完成どころではない危機。不可抗力とはいえ、ユイにとっては説明しづらい形に、場にいた大人全員が頭を悩ませていた。

「エギルさん! このパーツはなんでこんな歪な形をしているんですか?」

「いや……これは……」

「おーい、肝心のエギルも困っているぞ。絶対に初見の反応だよ」

 きっかけを作ったエギルでさえも、戸惑いの表情を隠しきれていない。恐らく彼にとっても、青天の霹靂だったのだろう。因みにお登勢らでさえも、気まずさを感じて声が出せずにいた。

 何とも微妙な空気の中、銀時はとある人物の手を借りることにする。

「土方君。任せた」

「はぁ!? なんで俺が説明するんだよ!」

「お前は以前にも新八の文通に手助けしてくれただろ! 頼んだぜ、フォロ方十四フォローくん」

「やかましいわ! 都合の良い時だけ俺を頼るなよ!」

 そう。土方であった。彼は土方のフォロー能力の高さを知っているので、この微妙な雰囲気でも突破してくれると期待している。肝心の本人からすれば、ただの押し付けにも感じ取れるが……。

「あら、そうなのね。なら土方さんに任せるわよ!」

「納得するな! 結局俺に押し付けてるじゃねぇか!!」

 シノンは妙に納得したような表情を見せていた。半日を通して、土方の性格を増々知るようになったからだろうか。

 とツッコミを繰り返しているうちに、

「土方さん!」

「えっ?」

とうとうその時が訪れてしまった。

「たまさんから聞いてきてって言われました! これはなんですか?」

(なんでカラクリが人任せにするんだよ! さっきの会話、絶対聞いていただろ!)

 ユイはにこやかな表情で、土方にパーツの形について聞いている。彼女の期待の眼差しとは裏腹に、彼は慎重に考えを巡らせる。もし一歩でも間違ったことを教えた場合、ユイの保護者(キリトやアスナ)から文句が来ることは簡単に想像が付く。悩みに悩んだ結果、土方の出した結論はと言うと、

「これはな……大根畑の宝物だよ」

「宝物?」

「大根の突然変異で何万分の一でしか出来ない……いわば激レアなモンスターと同じだ! 滅多に見る事の出来ない代物なんだよ」

よくテレビで見かける野菜の珍しい形と教えていた。ユイに分かりやすくゲーム系で例えたり、神経をすり減らして、どうにかぴったりの答えを絞りだしていた。

 この土方の返答にユイはと言うと、

「激レアな大根……なるほどです! ようやく分かりました」

どうやら納得した様子である。疑問が解消されて、晴れ晴れとした表情を浮かべていた。

「これで満足か」

「流石フォロ方十四フォローさんね」

「お前はその言い方気に入っているんじゃねぇよ」

 疲れ切っている土方に、シノンが冗談っぽい軽口を叩く。

 いずれにしても、土方のおかげで微妙な雰囲気は一気に打ち砕かれたと言っても良いだろう。さらに、

「おい、土方君」

「どうしたよ」

「あのパーツでピタゴラ装置完成したぞ」

「……はぁ!?」

あの局部のパーツがピタゴラ装置にスポリと入ってしまった。要するにユイらは、第三の試練をクリアしたのだった。

「わーい! 完成しましたよ、皆さん!」

「おー……」

 難しい試練をクリアして感激に浸るユイと、何とも言えない表情を浮かべる土方ら三人。いずれにしても、難関だった試練をクリアしたことに変わりはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、時刻が夕方に近づいていた頃。万事屋チームは順調にスタンプを集め、第四の試練も突破。いよいよ最後のスタンプ入手へと挑む。

「よしっ。この場所で蹴りを付けるぞ」

「この空き地でですか?」

 彼らが今いるのは何の変哲もない空き地であり、その静けさが漂う怪しげな雰囲気から、みな警戒心を高めていた。

「最後だってのに、やけにしらけてやがるな。本当に合っているのか?」

「間違いないわよ。それにしても……主題者ってどこにいるの?」

 ひとまず辺りを見渡してみるが、主題者と思わしき人物は特に見つかっていない。物静かな様子から、ふと一抹の不安を覚えていた――その時である。

「よくきたわね! 最後の主題者は、この私よ!!」

 遂に噂の主題者が、目の前にて姿を現してきた。空中から舞い降りた正体は、一行がよく知るあの女性である。

「さ、さっちゃんさん!? ですか?」

「まさかこいつが主題者なのかよ!?」

「そうよ! 何か文句でもあるのかしら!」

 テンション高めに現れたのは、さっちゃんこと猿飛あやめであった。満を持しての登場に、彼女は気持ちを舞い上がらせている。その要因は銀時との再会も含まれていたのだが。

「あぁ、銀さんー!! こんなところで出会うなんて、もう運命を通り越して使命ね!! 試練なんてほったらかして、私と恋愛をしましょうー!!」

 彼と目を合わせた瞬間から、咄嗟に態度を豹変させていた。抑え込んでいた想いを爆発させて、勢いのままに飛び掛かっていく。ストーカーとしての片鱗を露わにしている。

 一方の銀時だが、もちろん迷惑にしか思っておらず、手慣れたように彼女を対処していた。

「誰がやるかぁぁ、ボケェェ!!」

「ブホォォォ!!」

 怒りに満ちた表情で、腰に携えた木刀を引き抜き、まるでバットのようにあやめを跳ね返していく。強硬手段を意地でも捻り潰す、銀時ならではの自衛策である。返り討ちにあった彼女は、悲鳴を上げたまま近場の壁へと叩きつけられていた。

「ハァ……結局襲ってきやがったか」

「あやめさんってば……」

「もうお馴染みの光景ですね!」

「よく懲りないな」

 あやめのストーカーぶりには、銀時のみならずシノンと土方も呆れている。ユイも度々あやめの襲撃や、銀時の仕返しを見ていたので、すっかりこの光景も慣れてしまった。

 一方で吹き飛ばされたあやめだが、仕打ちを受けようとも一途な気持ちに変わりは無い。

「パファー! 今日も中々の痛さね……これも銀さんからの愛のムチだと思えば、何も怖くは無いわ!!」

「おめぇのそういう考え方が、一番怖ぇんだよ!!」

 痛めつけられることに興奮を覚えており、まったく反省の色は無かった。何度退けようとも懲りずに繰り返す、負のスパイラルが密かに成り立っている……。

 と一悶着も収まり、あやめは気持ちを入れ替えてから、改めて主題者として話を再開させていた。

「さて……気を取り乱したけど、ここからは試練の説明に入っていくわよ!」

「よくあれだけのことがあって、切り替えられるな」

 何事も無かったかのように進める姿勢に、土方はそっとツッコミを呟いている。彼の小言には気にもくれず、あやめは元気よく試練内容を伝えていた。

「まぁ、それはそれとして……この試練はずばりこれよ!」

「これって、空き缶ですか?」

 自信良く彼女が見せてきたのは、まさかの空き缶である。これを見て銀時や土方はある遊戯を思い出していたが、ユイやシノンはしっくりきていなかった。

「えっと……つまり空き缶をどうするのかしら?」

「もう、察しが悪いわね! 空き缶と来れば缶蹴りって、相場が決まっているでしょ! 子供の頃に遊ばなかったの?」

「いえ……私は初めて聞きますが」

「そんな遊びは、私も聞いた事が無いわよ」

「えっ?」

 そう。試練内容は缶蹴りだと判明したのだが、名前を言われても女子陣は微妙な反応しか見せていない。ユイは仕方ないにしても、シノンでさえも聞き覚えがないようだ。

「う、嘘でしょ……アンタ達の世界に、缶蹴りって浸透していないの!?」

「いや、驚きすぎだろうが。今のガキ達ですら、缶蹴りなんて早々やんねぇぞ」

「いわゆるジェネレーションギャップというヤツか。知らない方が当たり前だろうな」

 思わず衝撃を受けているあやめに対して、銀時ら二人は冷めた表情で辛辣なツッコミを浴びせている。年代による環境の変化や、別世界故の相違。様々な要因が重なり、ジェネレーションギャップは生まれていた。(壮大な気もするが、気にしないでほしい)

 そんな彼女の落ち込み具合を見て、ユイやシノンは心配してしまい、思わず気まで遣い始めている。

「そ、そう落ち込まないでください、さっちゃんさん! 知らないだけで、興味はありますから!」

「むしろ私達に教えてくれないかしら? 今後の人生に役に立つかもしれないし」

「そうですよ! だからお願いしますね!」

 彼女を慰めながら、缶蹴りへの興味を存分に示していた。すると……言葉が効いたのか、あやめはたちまちと元気を取り戻している。

「そ、そう? じゃ、私が一から教えてあげようかしら!」

 あっと言う間に態度を一変させると、早速二人へ向けて缶蹴りへのルールを教えていた。

分かりやすい気持ちの変化に、銀時や土方は一段と冷めた目線で様子を見ている。

「やっと戻りやがったか。なんで今日のアイツは、いちいちせわしないんだよ」

「缶蹴りをよっぽど楽しみたいんだろ。それはそうと一つ思ったんだが……この試練って、地味じゃねぇか?」

「あぁ、俺も思ったわ。でも絶対アイツには言うなよ。これ以上時間を取られたら、ゴールまでに間に合わないからな」

「分かっているよ」

 どさくさに紛れて言えていなかったが、缶蹴りの印象の薄さを共に気にしていた。珍しくも二人の意見は一致しているが、時間を気にしており、あえて指摘は出来ずにいる。今はあやめが説明を終えるのを、ただじっと待ち続けるしかない。

 

 

 

 

 

 

 ここで改めて、この試練における缶蹴りのルールをおさらいしよう。鬼役であるあやめが置いた空き缶を、彼女から捕まらずに跳ね飛ばせばクリアとなる。捕まった場合は捕虜となり、一定の行動制限がかけられてしまう。

 ルールを振り返りつつ、チーム一行は試練が始まる前から対策を話し合っている。

「つまり、あの缶を見つからずに飛ばせばクリアなのですね」

「まぁ、そういうこった。本当にやったことないんだな、お前等」

「いまいち馴染みがないからね。でも聞いた感じは、獲物を狙う銃撃戦と変わらない気がするわ」

「いや、全然違うと思うが……」

 やはり初挑戦のユイやシノンは未だにイメージを掴めず、後者では銃撃戦と捉える始末であった。特に目立ったルールが無い缶蹴りであるが、侮るわけにもいかない。あやめの俊敏な動きを、彼らは特に危惧している。

「でよ、どうやってあの缶を飛ばすんだよ。アイツは一応忍者だから、そう易々と通さない気もするんだが……」

「さっちゃんさんは、結構素早いですからね」

「シンプルだけど一番手強い気がするわ」

 闇雲に向かえば返り討ちに遭う。皆入念にこの缶蹴りをすぐに終わらせる作戦を考え続けていた。

「策を練ってないと、時間がかかるからな。ここは誰かを囮にするのはどうだ?」

「囮?」

「そうだ。お前、アイツに追いかけまわされてただろ。それを利用するのはどうだ?」

「おいおい、土方君。本気で言っているのか、お前。そんなの自分からやるわけないだろ!」

「はぁ!? こちとらさっさとスタンプ貰って、抽選会に行きてぇんだよ!」

 土方は囮作戦を提案し、銀時にその役目を押し付けようとするも、当の本人はもちろんやりたがらなかった。最終局面まで来て、また揉め事が発生してしまうと皆が思い始めていた時である。

「そうです! 囮です!」

「どうした、ユイ?」

 ユイはにこやかな表情で、缶蹴り攻略への作戦を思いついていた。ひとまずはチーム全員が彼女の作戦に耳を傾けていく。

「思ったんですけど、さっちゃんさんは銀時さんとシノンさんに目を付けているんと思うんですよ」

「えっ、私にも?」

「はい! だって、シノンさんの弱点知っているじゃないですか」

 そうユイが発すると、土方はシノン本人に弱点を聞いてきた。

「弱点? こいつにあるのか?」

「まぁ不本意だけど、マタタビに弱いのよね。少し嗅いだだけで、泥酔しちゃうというか……」

 そう。彼女を度々悩まされるのが、猫を酔わせる薬マタタビ。嗅げばあっという間に行動不能となり、酔いを解除するにしてもその手段がまた面倒くさい。この弱点はシノンのみならず、彼女の大半の仲間達が周知している。

「つまりアイツは、シノンを行動不能にする為にマタタビを使う可能性が大と」

「その通りです! それと銀時さんも絶対マークしてくるので、そこに注意を払えばすぐにゲームクリア出来ますよ!」

 ユイはあやめが周到に付け狙うのは、一方的に好意を寄せている銀時と、弱点を事前に知っているシノンと分析。この二人に注意を向けさせれば、速攻で缶蹴りをクリアできると読んでいた。

「なるほどな。ガキのくせに中々良い作戦じゃねぇか」

「えっへんです!」

 土方もユイの考えに賛同する。それを踏まえて、土方にもある作戦が思いついていた。

「だったらこんな作戦はどうだ?」

 四人は慎重に作戦を立て、あやめの缶蹴りを瞬殺すると決めている。

 

 

 

 

 

 

「いつになったら出てくるのよ……」

 一方のあやめは、建物の屋上から万事屋チームが今か今かと出てこないか見張っていた。その手には人を縛る為のロープと、マタタビの入った袋を手にしている。

「悪いけど、シノンちゃんやユイちゃん達には動けないようにして、私は銀さんと……フフフフフフ!!」

 缶蹴りと並行して、彼女は銀時へよからぬことを考えていた。完全に私利私欲の為に動いている。

 とあやめの顔が大いににやけ始めていた時。

「ん!? 来たわね!」

 ようやく万事屋チームが動き出していた。最初に姿を見せたのはユイとシノン。二人は懸命に缶へ向かって突き進んでいる。無我夢中で缶に狙いを定める中、目の前にあやめが割り込んできた。

「はっ! さっちゃんさん!」

「遅いわよ! 忍びの私に勝てると思っているの!」

「キャァァァ!」

 手始めに彼女はユイを網で捕まえ、一瞬にして行動不能にさせる。

「ユイ!」

「次はシノンちゃんね! アナタにはこれを!」

「何……ケホ!」

 さらに攻撃の手を緩めず、シノンに向かってマタタビをばらまいてきた。それを吸った彼女はゆっくりと倒れこんでしまう。

「後は二人……! あっ、アレは銀さん!」

 二人を行動不能にした後に、続いて見かけたのは銀時の姿。着物をなびかせながら、缶に向かって一直線に突き進んでいる。

「逃がさないわよ、銀さん!!」

 とここであやめは忍びとして本領を発揮。とんでもない速度で銀時に近づき、そのまま抱き着こうとする。しかし――

「見つけ――はぁ!?」

「今更気づいても遅いぞ」

彼女が追いかけていたのは銀時ではなく、彼の着物を着た土方であった。そう。この時彼女はようやく理解をした。ユイ、シノン、土方は囮で、その役目は全て銀時がスムーズに決着をつける為だと。

 そして遂に、

「シュート!!」

「あぁぁぁぁぁ!!」

守りが手薄になった缶を銀時が勢いよく蹴る。あやめの用意した缶蹴りは、一瞬にして終了してしまった。

「よしっしゃぁぁ! 最後の試練突破!!」

「やりましたね、銀時さん!」

「私達の完全勝利ね!」

 作戦が成功し、喜び合う万事屋チーム。網を潜り抜けたユイらも、銀時のもとへと駆けつけていく。一方であやめは、何が起きているのかさっぱり分かっていなかった。

「ちょ、ちょっと待ちなさい! 何がどうなっているのよ! そもそもなんで、シノンちゃんは酔っていないのよ!!」

 特にまたたびを吸わせたはずのシノンが、泥酔していないことに驚きを隠しきれない。すると彼女本人から、その種明かしを伝えられる。

「一芝居打たせてもらったわ。マタタビを吸った直後に、銀さんのくれたチョコで酔いを消して、しばらく黙り込んでいたのよ」

「なんですって!?」

 シノンはまたたびを吸った直後に、銀時からもらったチョコを食べて泥酔状態を解除。しばらく倒れたフリをして、あやめの油断を誘っていたのだった。

「んで、野郎から借りた着物でお前の注意を引いて」

「後は銀時さんがとどめを刺すって言った作戦です!」

 土方やユイも次々に作戦の全容を明かす。土方が銀時の着物を着ていたのも、あやめの動揺を誘う為の作戦だったのだ。これらもすべてユイが立ててくれた作戦のおかげである。万事屋チームは手こずることなく、あやめからの試練に打ち勝っていた。すべてはゴール地点で行われる豪華景品の抽選会にいち早く参加する為である。

「こっちは豪華景品がかかっているんだ。最速で行かせてもらったぜ」

 銀時も意気揚々とあやめに話しかけていた。チームワーク抜群の万事屋チームに、あやめの反応はというと、

「……流石は銀さんね。例えいつもの万事屋の六人じゃなくても、十分に強かったわ」

出題者側でありながら強く感心している。このまま素直にスタンプを渡すと思いきや、

「良いわよ。スタンプはあげるわ。その代わり……着物無しの銀さんを、存分に堪能させてもらうわ!!」

結局は欲望を剝き出しにして、銀時へ強制的に抱き着こうとしていた。その表情はおぞましく、もはやなりふり構っていない様子である。

 そんな彼女の横暴に対して、銀時はというと、

「サディスファクション!!」

「ブヒォォォ!!」

普段通りの対策で跳ね返していた。強めのビンタを浴びせると、あやめはそのまま地面に倒れこんでしまう。

「ふぅ……油断も隙もありゃしねぇぜ」

「おい、ちょっと待って。スタンプの在処、どうやって聞くんだよ」

「あっ……おい、さっちゃん!! 目を開けろ!! スタンプどこにあるんだよ! オィッィイ!」

「早くしろ! 折角の時短がパーになるだろうが!!」

 あやめを止められたは良いものの、肝心のスタンプは未だにもらっていない。それに気付いた銀時と土方は、焦ってあやめを起こそうと必死に呼びかける。早めに試練を終わったは良いのだが、肝心なところで下手を打った銀時であった。

「最後の最後まで締まらない男ね」

「でも、良いじゃないですか。それでこそ、銀時さんですよ!」

「確かに……フフ」

 そんな銀時らの様子を見て、ユイとシノンはクスッと笑っている。そして彼女達も一緒になって、あやめを起こそうと呼びかけるのであった。

 こうして万事屋チームは、チームとして仲を深めながら、無事にスタンプをすべて集めきったのである。




 ここで各チームのこだわりについて紹介します。
 まずは万事屋チームから。銀時と土方の鉄板の組み合わせと、シノンとユイの共演数の少ない二人で成り立っています。特に銀時とシノンは前に共演しているので、あえて二人を組ませました(笑) 女子の方が頼りになるチーム編成ですよね。
 続いては真選組チームです。近藤と新八の多少の因縁がある二人と、アスナとリズベットの旧友二人の組み合わせです。リズベットはこのチーム変更で特に被害を受けているので、リアクション重視で描きました。近藤とは意外に相性が良いのかも……いや、気のせいですね。新八とアスナはどちらかというと、ツッコミポジションです。
 最後は妖精チームです。念願が叶ったリーファとシリカに対して、またも対立を露わにする神楽と沖田が特徴的です。キリトはどちらかと言うと、巻き込まれている方ですね。リーファも沖田に因縁があるので、喜んでいる暇は無さそうです。






追記

今回は万事屋チームのスタンプ集めのリメイクです。変更先はこんな感じです。
 お登勢、エギルの試練→小銭形の試練に変更
 たま、キャサリンの試練→お登勢、エギルを加えて加筆
 あやめの試練→決着方法を変更して加筆

元の話と比べたらだいぶ変わっているかと思われます。
見比べてみるのもありかもしれません。




次回予告

近藤「続いては俺達、真選組チームの活躍だ!」

リズ「こうなったら何が何でも一番乗りで、真っ先に景品を手に入れるんだから!」

新八「リズさんのやる気が凄まじい……」

アスナ「本当にこのチームで大丈夫なのかしら……」

近藤「次回! 思わぬところで、絆は芽生えてくる」

リズ「行くわよ! ゴリラ!」

近藤「おう、リズ君!」




教えて! 銀八先生!

銀八「ペンネーム、バレットオブサイコガンさんからの質問。シノンが持っている弓矢って毎回何本所持しているんですか? 気になるので教えてください。ずばりお答えしましょう。五十~百本くらいです。当然元のALOみたく無限に使えるわけじゃないので、百華の女子達とシノン本人が一緒に手作りで作っています。因みにGGO時のアバターが持つヘカートは、近接アクションシーンに不向きだと投稿者は言っているので、つくづくALOのアバターで良かったと言っております。ということで、SAOのGGO編に出てきたモブ共。次の次の長篇に出れるように、スタンバイしておけー」
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