剣魂    作:トライアル

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 祝! 番外編を除いて、五十訓目を迎えました!! ここまで続けられたのも、皆さんのおかげです! 本当にありがとうございます!

 さて、三日分遅れてしまいましたが……続きをどうぞご覧ください。

2025年4月22日 リメイク版に置き換えました。



第五十訓 ラストスパートにOPが流れるのは当たり前!(新訳)

 今回は妖精チームの活躍にフォーカスを当てよう。

「それじゃ出発する前に、まずはリーダーを決めておきたいんだが……手短に多数決でいいか?」

 キリトが場を仕切りつつ、チームメイト達にリーダー決めを呼び掛けている。すると早速、女子陣が堂々と声を上げてきた。

「はい、はーい! リーダーはキリトさんでお願いします!!」

「私も賛成よ! よろしくね、お兄ちゃん!」

「じゃ私も乗っかるネ。ドS野郎よりも、キリの方が安定しているからナ!」

 シリカとリーファは喜んでキリトを推薦して、神楽も二人の意見につられていく。この結果には当の本人も、若干驚いていた。

「えっと……沖田さんはどうなんだ?」

「俺も同意見ですよ。どうせこんな票数になると、思っていやしたから。リーダーの座は黒剣さんに任せやすよ」

「さっきから、呼び方が安定してないんだが……」

 沖田も場の空気を察して、すんなりとキリトを指名している。

 一方で彼だけは、キリトへの呼び方が一斉定まっていなかった。さらには、シリカらにもその傾向がみられている。

「よし、だったらもう行きやすよ。発情妖精にチビ猫耳に焼きチャイナも、ついてきてくだせぇよ」

「って、沖田さん!? 発情妖精って私の事!?」

「チビ猫耳って、そんなにアタシ幼くないですよ!!」

「おい、てめぇ! 焼きチャイナってなんだぁ!? 完全に適当に付けやがったナ!!」

 確信犯の如く小馬鹿にした呼び方に、女子達は揃って文句を発していく。特に沖田へ警戒心を高めるリーファや神楽は、人一倍怒りを露わにしていた。ほんの一瞬で一触即発な雰囲気となり、キリトは慌てて仲間達をなだめていく。

「まぁまぁ、みんな落ち着いて。沖田さんも挑発は止めとけって。同じチームメンバーなんだから」

「はいはい、分かりやしたよ。それじゃ、気を取り直して行きやしょうや」

 事は大きくならずに済んだが、やはりシリカらの沖田に対する敵意は高まっている。

「まったく……沖田さんってば!」

「これだから、あの人は好きにならないのよ! お兄ちゃんの前で発情だなんて……」

「妙に合っているところが、ムカつくアルナ……」

 折角キリトと同じチームになったシリカ達も、沖田の存在によって、喜んだままではいられなかった。一層警戒心を高めて、今後の動きにも注視していく。

 

 

 

 

 

 

 

「「ぬぬ」」

 最初の試練会場へ向かう最中、妖精チームにはある対立が浮き彫りとなっている。

 シリカとリーファが睨みつける先には、キリトと仲良く話す沖田の姿が見えていた。

「いやーそれでですね。大量の隊士が歯向かってきたんで、一発で全て蹴散らしてやったんですよ。あの時は結構ギリギリでしたねぇ……」

「壮絶な経験が沖田さんにあったのか……俺も多人数を相手に戦ったことなら、何度でもあるよ」

「アレは何回斬っても、キリがないですけどね」

「その気持ちは少し分かるな」

 二人の話はかなり盛り上がっており、共にこれまでの自分の戦いの経験を元に、話を弾ませている。共に楽しそうに話しており、女子陣が割り込める様子がまるで無かった。

「まさかのキリトさんが、沖田さんと話を弾ませています……!?」

「会話のジャンルは違うけど、戦闘スタイルで結構盛り上がっているの?」

「案外相性が良いアルかもナ。年も近いから、すぐに距離を縮めているアル」

 沖田への若干の羨ましさを感じるシリカとリーファ。一方で沖田の楽しそうな表情が気に食わず、ただただ恨みを重ねる神楽。

 彼女たちは諦めずに、男子達の会話を盗み聞きして様子を見たが――

「最近だと音楽プレイヤー入りの刀が、値段を落としているんですよ。もっと挙げるなら、掃除用具付きとか孫の手付きとか」

「そんな刀があるのか!? 一体どこで売っているんだ?」

「あんまり大きい声で言えやせんが、地下都市アキバでね――」

マニアックな刀の話に移り、余計に介入するタイミングを失ってしまった。

「全然会話に入れる隙がないんだけど……!」

「そもそも何の話をしているんですか!?」

「まったく分からないネ……」

 思わぬ沖田からの妨害を受けて、中々イベントを楽しめていないリーファらである。

 数々の変化をもたらして、一行はいよいよ第一地点へと到着していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 キリト率いる妖精チームの面々は、地図に記載された二十五地点の試練から、気まぐれで選んだ場所にようやく到着。その場所は高層のビルが周りに立ち並ぶ、比較的都市部に近いエリアである。現在五人は歩道の脇におり、改めて場所の確認を行っていた。

「えっと、ここで合っているのか?」

「恐らくそうですねぇ。後は近くにいる主題者を、探し出せばいいんだが……」

「一体どこにいるアルか?」

 すると彼らは、このまま試練の説明役である主題者を探していく。だがしかし、辺りを見渡しても、それらしき人物は見つけられなかった。

「まったくいる気配が無いんですけど」

「この場所で本当に合っているのね?」

 事が上手くいかずに、シリカやリーファは早くも不安を悟ってしまう。もどかしさを感じながら、チーム内でも焦りが生まれていた――そんな時である。

「フッ、大丈夫よ。間違いないわ」

 ビル同士の隙間に繋がっていた裏路地から、唐突に野太い男性の声が聞こえてきた。乙女口調が特徴的であり、一行は咄嗟に気配を察していく。

「えっ、今の声って……」

「まさか後ろから?」

「この奥に主題者がいるのか?」

 特にキリト、シリカ、リーファのSAO組三人は、聞き慣れていない声に警戒心を高めている。

 一方で神楽と沖田は、声を聞いた瞬間にある知り合いを頭に思い浮かばせていた。

「おいドS。この声って……」

「間違いなくアイツでっせ」

 共に一人だけ心当たりがあり、自信良く断言までしている。神楽だけは複雑そうな表情を浮かべていたが。

 それはさておき、遂に噂の人物が一行の前に姿を現してきた。

「あら、いらっしゃい。この私が、たっぶりと教えてあげるわ……!」

 裏路地からゆっくりと姿を見せたその正体に、キリトら三人は思わず体が固まり、驚嘆としてしまう。何故なら……目の前にいるのはゴリゴリの女装男性だからだ。

 大柄な体型を包み込む赤い着物に、しっかり整えられた銀髪の髪結い。口元には濃い髭を残しつつ、薄く赤い口紅を塗っている。一言では語れない個性の塊のような人間であった。

 この強烈な見た目には、三人も恐れおののいた反応を露わにしていく。

「キャャャャャ! 変態!!」

「どうしよう、完全に不審者だよ! お兄ちゃん、助けてって!!」

「お、落ち着けって! 俺もこの類を見たのは初めてで、どうすればいいのか分からないのだが……」

「って、アンタ達失礼ね! 私はれっきとした乙女よ! 勝手に変態扱いしないでちょうだい!!」

「乙女……あぁ、そういう設定か」

「おい、小僧! 茶化すのも大概にしろや!!」

 大袈裟に拒絶したキリトらの応対に、女装男性の方も我慢が出来ず、一瞬だけ素に戻ってしまう。場は悲鳴や怒号が飛び交う、ちょっとした混乱状態へと陥ってしまった。

 そんな中で女装男性は、キリトらの後ろにいた神楽や沖田の存在に気付き始めている。

「ん……? なんだ、アンタ達もいるのか。と言うことは、この妖精みたいな天人も連れってことかい?」

「そうアルよ。右からキリにシリ、リッフーって言うアル。かぶき町に来たばっかりの妖精ゲーマーネ! 覚えておくアル、西郷のおっさん!」

「おっさんじゃねぇ! 綺麗なお姉さんと呼びな!」

 彼女は手慣れたように、神楽と冗談を交えて会話を交わしていく。その親しげな様子から、シリカらには再び衝撃が走っていた。

「えっ? 神楽さんって、もしかしてあの人と知り合いなのですか?」

「うん、そうネ。あのおっ……お姉さんは、西郷特盛って言うオカマクラブのオーナーアル。結構万事屋でもお世話になっている、かぶき町の重鎮アルよ!」

「西郷特盛……隆盛じゃないんだな」

 神楽からの返答で、ようやく明かされた女装男性の正体。それは、かぶき町四天王の一角である西郷特盛であった。多くのオカマ達を配下に従えているクラブのオーナーで、かぶき町における重要人物でもある。まさかラリーの主題者として現れるとは、沖田らも予想はしていなかった。

 もちろんキリトらとはこれが初対面だが……詳しい人物紹介をされても、近寄りがたい印象に変わりは無い。むしろ本名を知ったことで、より深い衝撃を受けている。

「あの人がこの世界の西郷隆盛なのですか……」

「信じられないわ……真選組よりも原型がないじゃん!」

「お前等ショック受けすぎだろ。というか、俺達の方が原型あったのかよ」

 偉人特有の印象が覆って、何とも言えない気持ちに苛まれてしまう。ショックを受ける女子陣だが、キリトも同じような想いを感じている。

「やはりこの世界の人達は、一癖も二癖もありすぎるな……」

「そんなのはもう当たり前アル。私みたいな宇宙人がいる時点で、ぶっ飛んだ世界に変わりは無いからナ!」

「そ、そうだよな……」

 自信満々な神楽の一言を聞き、彼もつい返す言葉を見失ってしまう。ここ最近は意識していなかったが、別世界故の相違を改めて思い知っていた。

 そんなSAOメンバーに強烈な印象を与えた西郷本人は、彼らの反応を一斉気にせず、本題である試練の説明に入ろうとしている。

「ふん。いつの間にかかぶき町にも、ファンシーな奴等が住み着いていたとはねぇ……まぁ、いいさ。色々と言いたいこともあるが、まずは試練の方からさっさと始めようか。私の説明をよーく聞きな!」

 チームに呼びかけていき、自身の注目が集まると話を始めてきた。

「いいかい、ここで図るのは着こなしだよ! この裏路地に試着室があるから、私と同じようにとびっきりの和服姿に着替えてきなさい! ただし……女装した男に限るよ! 女共はメイクなりでサポートして、男を上玉美人に染め上げてきなさい!」

「着こなしか……って、えっ!? 女装!?」

「そうきやしたか……」

 意気揚々と伝えた試練内容を聞き、男子陣は思わず耳を疑ってしまう。そうこれは、西郷の趣味を意識した女装がテーマの試練であった。当然妖精チームではキリトと沖田の二人が該当する為、とんでもないとばっちりを彼らは受けている。共に苦い表情となって、この事態を受け入れられずにいた。

 一方で女子陣の三人は、発表と同時にある作戦を思いつき、小声のまま揃って話し合いを始めていく。

「あの二人の女装なら、美少女くらいには出来そうじゃない?」

「キリもドSも、顔だけは中性的アルからナ」

「ここはアタシ達の出番ですよ。存分に二人を可愛く見せましょう」

 意外にもこの試練に肯定的であり、男子陣を可愛く仕立てることに心を一致させていた。思わぬところで団結力を高めている女子陣。その表情もやる気に満ち溢れている。

 特に神楽は、一段とそのやる気を高めるのであった。

(へへ。これはあいつを女装させるチャンスアル。リメイク前でも女装させたし、あられもない姿を見せて、シッリーとリッフーに散々いじられるヨロシ)

 内心ではにやけ顔のまま、沖田を合法的に女装させるのを楽しみにしている。リメイク前と同じく、沖田を辱めようとした――その時だった。

「あっ、すいやせん。俺、メイクアップの資格持っているんで、メイク側に回っても良いですかい」

「あら、そうなの。じゃ、いいわよ」

「はぁ!?」

 事態は一変してしまう。沖田は本当かどうか分からないメイクアップの資格持ちと自己申告し、この試練の女装の対象からあっさりと逃れていた。神楽の思惑通りにはいかず、彼女本人は愕然としてしまう。

「おい、てめぇ!! リメイク前はテメェも女装する流れじゃなかったアルか!!」

「いやぁ~、折角作り直すんなら逃れたいと思いやしてね。ぶっちゃけ黒剣さんだけを女装させた方が面白くないですかい」

「私はおめぇが女装させられる姿を見て、笑いたかったアル! キッリーの女装なんて、やろうと思えばいつでも出来るアル!!」

「ちょっと、ちょっと! 落ち着いて二人共!」

 沖田を問い詰める神楽だが、当の本人は淡々とした態度で、女装対象をキリトへ全て押し付けようとする。彼女の思惑通りにはいかず、神楽ただただ嘆くしかなかった。そんな二人の一悶着を、キリトは慌てて止めに入る。

「神楽さんの思った通りにはいかないですね」

「沖田さんも、こういうことには頭が回るから……」

 シリカ、リーファ共に、沖田の狡猾さには、苦笑いしながら納得していた。彼ならばやりかねないと思ってしまう。

 そんな沖田の事はさておき、シリカら二人は早速キリトを女装させることに期待を膨らませていく。

「でも、キリトさんを女装させるのは楽しみですよ!」

「そうね。お兄ちゃんをしっかり可愛くしなくちゃ!」

「お、おう……」

 機体のまなざしを見せる二人に対し、キリトは苦い表情で渋々了承する。沖田が一抜けした今、もう自分しか女装する対象がいない。思わぬプレッシャーを抱えながら、この女装の試練に挑もうとしていた。

「じゃ、そんなこんなで始めるわよ!」

 西郷の合図により、一行は揃って簡易的に建てられた小屋に移動。ここがメイク室となっており、女装の衣装も一式用意している。なお、制限時間は十五分。それまでに完璧な女装をしなくてはならない。

「おい、メイクアックアーティスト。早くお手本を見せるヨロシ」

「へいへい。こういうのは、目ん玉を大きくするところから始めるんでねい」

 神楽にせかされて、早速沖田はキリトにアイライナーで軽くメイクアップをする。ほんの数秒で、女子っぽさが残る目つきに変わっていた。

「どうですかい」

「あら、意外とかわいいんじゃない?」

「そうなのか? 俺には違いが分からないが」

「でも、女の子っぽさが増して、思わずナンパしたくなる顔になりましたよ!」

「それは褒めているのか……?」

 沖田の施したメイクは好評で、シリカ、リーファ共にまずまずの出来と気に入っている。彼が申告したメイクアップの資格は、強ち間違いではないのかもしれない。

「中々やるアルナ。次はどうやるネ」

「口だけ言ってないで、お前もやるんでさぁ。さて、次は……」

 不機嫌そうな態度で沖田を急かそうとする神楽。そんな彼女の挑発に乗っかることなく、沖田は今後のメイクアップの展望について話し始めていた。

「眉毛を太くした上で、全部白く塗るぞ」

「ふむふむ。それで」

「オレンジの着物とちょんまげを付ければ完璧でさぁ」

「ちょっと待つアル!!」

 すると神楽は、最後に言い放った沖田の一言が気になり、勢いに任してツッコミを入れる。某有名なお笑いタレントの一衣装を思い浮かべてたからだ。

「おめぇ、まさかバカ殿メイクしようしているんじゃないアルか!」

「よく見抜きやしたね。最近じゃSNSとかでもやっているやついるんで、ぜひ参考になるかと」

「古いアルよ! 流行とっくに過ぎているアルよ!!」

 そう。沖田は女装どころか、バカ殿様の格好をキリトにさせようと企てていた。受けを狙ったのか、はたまた自分のメイクアップの持ちネタがバカ殿しか無かったのか分からないが、いずれにしてもこの試練に不向きなことは確かである。

「バカ殿って……」

「なんかそんな番組があったような」

「今でもやっているんじゃなかったか?」

 一方のリーファ、シリカ、キリトは、バカ殿と聞き、微妙にその存在を思い出せずにいた。彼らにとっては馴染みが無かったのかもしれないが、銀魂の世界並びに現実では絶大な人気を博したお笑い時代劇である。

 そんな一悶着がありつつも、制限時間は刻一刻と過ぎ去っていく。

「って、言っているうちにもう十分しかないですよ!」

「意外と時間が無いわね……早く仕上げないと!」

 シリカやリーファが時計を確認し、あと十分弱だと仲間達に伝えていた。まだ女装の方向性が定まっていない中、ここで沖田がリーダーシップを発揮させる。

「しゃあねぇ。こうなったら最終手段だ。おい、ヒロイン共。俺の言ったものを用意してくれやすかい」

「わ、分かりました!」

「今度こそボケ無しでやれアルよ!」

「へいへい、分かってやすから」

 お手軽な女装を重視し、女子たちには着付けを。自身はキリトのメイクアップに集中。役割を分担させて、制限時間内に終わらせようとしていた。

「そんじゃ、黒剣さん。目を瞑ってくだせぇ」

「わ、分かった……」

 キリトも沖田の腕を信じて、彼の思うがままに身を委ねていく。

「色や髪飾りは、アタシ達の好みで選んで良いですか?」

「構わないでさぁ」

「これって似合うと思うかな?」

「おぉ、良いアルよ!」

 こうして妖精チームは短い時間の中で、キリトを見違えるくらい可愛い女の子に仕立てていった。

 そしてあっという間に制限時間を迎える。

「はい、終了。それじゃ、出てきなさい。カモン!」

 西郷は時計で制限時間が過ぎたことを確認し、小屋にいるキリトらへ出てくるように促した。すると、西郷の目の前には女装したキリト……いや、キリコが姿を現す。

「ど、どうでしょうか……?」

 女装したキリトの容姿は、それはそれは綺麗な佇まいだった。赤い着物を着こなし、女子達が手入れしてくれた髪飾りが、黒く長い髪に備えられている。顔も真っ白く塗られており、さながら京都の舞子さんを彷彿とさせていた。(なお、黒く長い髪はカツラである)

「黒髪の似合う和装美人に仕上げましたよ!」

「舞子さんみたいに、白塗りにしたんですが、どうですか西郷さん?」

 リーファ、シリカ共に自信満々とした態度で、キリトの女装姿を西郷に勧める。どうやら白粉を行ったのはこの二人で、舞子さんをイメージした様子なのだが……神楽と沖田だけはある別のモノを浮かべていた。

(いや、これ……)

(よくよく見たら小梅〇夫にしか見えないアル……)

 そう。赤い着物と言い、髪飾りと言い、某「チキショー」と叫ぶピン芸人の姿を二人は思い起こしている。この時だけは考えていたことが同じ様子だ。なお雰囲気を崩したくない為、共に心の中で留めている。

 一方で西郷の反応はというと、

「あら、良いじゃないの。問答無用で合格よ」

即答でキリトの女装姿を気に入っていた。

「やった!」

「よしっ、まずは一個目のスタンプゲットね!」

 手堅く最初のスタンプを獲得し、喜びに浸るシリカとリーファ。一方で、

「なんとか乗り切ったな」

「本当ネ。まぁ、オメェの女装も見たかったアルけどナ」

「嫌ですよ、そりゃ。没シーンだけで勘弁でさぁ」

生意気に本音をぶつけ合うは神楽と沖田。特に神楽は小馬鹿に出来る話のネタが一つ減り、やや不満げである。

 たった一人の女装ということで、ただならぬプレッシャーを感じていたキリトだが、無事にスタンプを手に入れて彼も一安心していた。そんなキリトの元に、西郷がスッと近づく。

「どう? 今度ウチの店で働いてみない?」

「いや、遠慮しておきますよ」

「そんなのはダメよ。なんせパー子もパチ恵も助けに来てくれたんだから、いずれ依頼はかけるからね……フフ」

「パー子にパチ恵……まさか、銀さんと新八のことか!?」

 かまっ娘クラブのヘルプをちらつかせて、彼はにんまりとキリトに満面の笑みを浮かべていた。対照的にキリトはまた女装させられるかもしれない予感を察して、さらなる不安に苛まれてしまう。

(万事屋って、おかまバーのヘルプにも入っていたのか……仕事の幅広くないか!?)

 特に銀時や新八も、女装してかまっ娘クラブに働いていたことが何よりも衝撃的だった。いずれ万事屋へまたヘルプの依頼が来る可能性があり、キリトは益々西郷との再会が怖くなってしまう。

(これは良いことを聞きましたね……!)

(万事屋がヘルプに入る時は、お兄ちゃんの女装を合法的に見られるのね!!)

 その様子を盗み聞きしていたシリカとリーファは、キリトの女装姿が見たい為に、かまっ娘クラブでのヘルプにそっと期待を寄せるのであった。顔もにんまりとにやついている。

「そういうことなら、俺も客としてかまっ娘クラブに行きやしょうかね」

「オメェは来るなよ。ドS」

 沖田の一言に、神楽が反射的にツッコミを入れた。彼だけは明らかに、キリトを小馬鹿にする目的が見え見えだったからである。リーファらとは異なる蔑んだ笑みを浮かべており、神楽は彼の変わらないドSぶりにため息を吐くのであった。

 こうして妖精チームは、無事に一つ目のスタンプをゲット。キリトを元の姿に戻した上で、彼らは次なる試練会場へと向かうのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 続いて第二の試練。妖精チームの五人は柳生家にて試練を行っていた。主題者である九兵衛や東城の元で、次々とあるモノを斬りまくっている。

「ハァ!」

「セイヤ!」

「ホワチャ!!」

 キリトや沖田らは揃って竹刀を手に持ち、ワラで出来た的を狙い打ちにしていく。彼らのいる広大な庭園には、無数のワラの的が配置しており、これが試練にて大いに関係していた。

「さぁ、まだ当たりは出ていないぞ! 気を抜かずに次々と斬り続けてくれ!」

「そうですぞ! 勢いのまま行ってくだされ! 私のあの時の体験のように――」

「東城……!?」

「ヒィ!? な、なんでもありませぬ!!」

 不適切なネタを言いかけた東城に対して、九兵衛は睨みを利かせながら、威圧的に抑え込んでいく。

 そんな柳生家の一幕はさておき、ここでの試練は竹刀を使った当たりワラ探しである。庭一面に設置された約五百個あるワラのうち、たった一つだけ入っている「当たり」と書かれた札を探さなくてはならない。その為にチーム一行は、一丸となってワラを斬り続けている。ところが――

「って、全然出ないんだけど!?」

「この試練、数が多すぎますよ!!」

「なんでこうも出ないアルか!! ソシャゲのガチャじゃねぇんだよ!!」

数の多さから中々当たりを見つけられずにいた。先行きが見えない中、女子陣は早くも弱音を口にしてしまう。

 だが一方で、相対的にやる気が上がっていたのは、沖田とキリトである。共に竹刀を使いこなしつつ、互いを競うようにしてワラを斬り続けていく。

「ハァ! トワァ!」

「ヘイ、ハァ!」

 キリトは背中の翼を生かしたスピードのある技を。沖田は竹刀を身軽に使用して、ワラを仕留めていく技で挑んでいる。その様子はまさに、人間離れと言うに相応しいだろう。

「中々やるじゃねぇか。黒剣さんよ」

「そういう沖田さんもな!」

 一瞬の隙から生まれた会話でも、二人が互いを意識していることが伺える。表情はどちらとも、生き生きと爽快感に満ち溢れていた。体勢を整え直してから、三度彼らは行動を再開していく。

「何かあっちはあっちで、楽しそうにやっているネ」

「戦いってわけじゃないけど、お兄ちゃんと沖田さんって、共闘したら強いタイプなのかな……?」

「やっぱり意外すぎますって……」

 一連の様子を見ていた女子陣からも、つい驚きの声が上がっている。独自に距離を縮めていたことから、意外な相性の良さを察していた。折角の共闘する機会を彼に取られてしまい、シリカやリーファは少しだけ不満そうではあるが。

 そう懸命に皆がワラを斬っていた時だ。

「沖田さん! 避けろ!」

「おっと?」

 二人の快進撃を邪魔する想定外の乱入者が姿を見せる。それは小さくて素早い猿だった。

「なんだこの猿!?」

「糞を投げてくることは、中々好戦的ですねぇ」

 二人の注意が乱入した猿に向けられる中、異変に気付いた三人がワラ斬りを止めて、キリトらの元へ駆け寄ってくる。

「どうしたアルか、キッリ―」

「あぁ、ちょっと猿が柳生家に入ってきていてな」

 キリトが猿のいる方向に指を向けると、リーファは早速その猿の正体を察した。

「あっ、この猿。九兵衛さんのペットだよ!」

「ペット!? 九兵衛さんもテイマーだったってことですか?」

 そう。この猿は柳生家で買っているペットである。リーファや神楽は知っているものの、シリカだけは初めてこの猿の存在を知っていた。自身もピナをペットとして可愛がっている分、九兵衛が同じペット仲間だったことが衝撃的のようである。

 そしてこの猿にはある特徴があった。

「確か名前が長かったんだよ。えっと……」

「私知っているアルよ、確か……」

 異様に長い名前である。リーファも九兵衛から聞かされており、彼女は神楽と一緒に覚えている限りの名前を言い放った。

「「寿限無寿限無ウンコ投げ機一昨日の新ちゃんのパンツ新八の人生バルムンク=フェザリオンアイザック=シュナイダー三分の一の純情な感情の残った三分の二はさかむけが気になる感情裏切りは僕の名前をしっているようでしらないのを僕はしっている留守スルメめだかかずのここえだめめだか……このめだかはさっきと違う奴だから池乃めだかの方だからラー油ゆうていみやおうきむこうぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺおあとがよろしいようでこれにておしまいビチグソ丸だったはず!(アル!)」」

「長すぎですよ!?」

 想像を絶する長さ……おおよそ二百九文字にも匹敵する猿の名前は、ツッコミどころしか無かった。シリカも新八並みの強めのツッコミをしてしまう。

「まさかの寿限無方式だったんですか!! ていうか、変な言葉も入っていませんでしたか!?」

「おっ、シッリー! 新八並みの鋭いツッコミアルナ!」

「色々おかしいからツッコミを入れているんですよ! って、リーファさんはなんで一度も噛まずに言えてるんですか!!」

「最初は変だなって思ったけど、柳生家の皆さんがスラスラ言えていたから、すっかり慣れちゃってさ」

「どこに慣れる要素があるんですか! 本家の寿限無より、絶対難解でしたよ!」

 神楽はともかく、リーファですら噛まずに言えているのが信じられないらしい。柳生家で手伝いするうちに慣れたと彼女は言うが……

 そんなシリカのツッコミはまだ収まらない。

「なんでい。寿限無寿限無ウンコ投げ機一昨日の新ちゃんのパンツ新八の人生バルムンク=フェザリオンアイザック=シュナイダー三分の一の純情な感情の残った三分の二はさかむけが気になる感情裏切りは僕の名前をしっているようでしらないのを僕はしっている留守スルメめだかかずのここえだめめだか……このめだかはさっきと違う奴だから池乃めだかの方だからラー油ゆうていみやおうきむこうぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺおあとがよろしいようでこれにておしまいビチグソ丸だったんですかい」

「沖田さんも、丁寧に全部言わなくて良いですから! アタシ達、試練の途中なんですよ!」

「えっと、寿限無フェザリオンさんが乱入して……」

「キリトさんはなんですぐ諦めて、省略しちゃうんですか! ていうか、今日のアタシ、ほぼ新八さんになっているじゃないですか!!」

 ご丁寧に全て噛まずに言う沖田と、覚えていたことを困惑気味に言うキリトにも、彼女はツッコミを入れてしまう。リーファもボケ役に回った今、彼女しかツッコミ役をやれる人がいなかった。

 そして猿を探していた九兵衛も合流する。

「おっ、ここにいたのか! 寿限無寿限無ウンコ投げ機一昨日の新ちゃんのパンツ新八の人生バルムンク=フェザリオンアイザック=シュナイダー三分の一の純情な感情の残った三分の二はさかむけが気になる感情裏切りは僕の名前をしっているようでしらないのを僕はしっている留守スルメめだかかずのここえだめめだか……このめだかはさっきと違う奴だから池乃めだかの方だからラー油ゆうていみやおうきむこうぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺおあとがよろしいようでこれにておしまいビチグソ丸!」

「もう良いですから! 丁寧に全部言わなくて! ゲシュタルト崩壊が起こりそうですよ!」

 試練のそっちのけで、話題が寿限無…ピチグソ丸一色に染まっていた。シリカの無情なツッコミだけが、柳生家に響き渡る……

「よしっ! これで六百二十七文字分稼げたアル!」

「何を言っているんですか!!」

 なお、試練は数分後に、ようやく目的のワラを斬れたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 妖精チームはその後も順調に試練をクリアしていき、昼休憩を挟み、第三、第四の試練をクリア。気づけばもうあと一回でスタンプを全て集め終わる。

 そんな彼らが最後に選んだ試練会場は、なんの変哲もない空き地だった。

「いよいよ最後ネ」

「ここまで色々ありましたが、ようやく終わるんですね!」

「寂しいような、嬉しいような……」

 長かったフレンドラリーも終わりが近づき、感慨深くなる神楽、リーファ、シリカの三人。思い起こせば今日繰り広げた激闘が脳裏に浮かんでいる。

「やっとですかい。さっさと抽選会場に行きたいんですけどねぇ」

「俺もだな。さっきと同じく、最速攻略で終わらせるぞみんな!」

「「「おー!!」」」

 沖田やキリトも同じ思いだった。皆気持ちはゴール地点の抽選会場に向いている。各々が欲しい景品に想いを馳せながら、最後の試練に向けて一致団結していた。

 すると、この空き地での試練の出題者が姿を現す。

「おっ、次はお前らが挑戦者か?」

「あっ、マダオだ!」

 神楽が指を指した方角には、マダオこと長谷川が立っていた。妖精チームの最後の試練は、長谷川による出題らしい。

 一方で長谷川本人は、神楽らを見ると途端にやる気が下がってしまう。

「なんだよ、毒舌チャイナ娘とドSの警察がチームかよ」

「おい、てめぇのグラサン、粉々にするぞ」

「いや、それだけは止めて」

 ありのままに言ったところ、沖田から脅される始末であった。

「因みに長谷川さんの試練っていうのは」

「あぁ、これだよ」

 キリトに聞かれて、長谷川は試練の会場まで皆を案内する。空き地の奥にあったのは、

「名付けて段ボール迷路!」

「えっ!? これ、長谷川さんが作ったんですか?」

「そうだぜ。このイベントの為にな!」

段ボールで出来た巨大な迷路だった。どうやらこの迷路を攻略するのが、試練の内容らしい。

「所謂ダンジョンクエストか」

「そうそう。この迷路を抜け出せたら、スタンプを獲得できるぜ。ただし、中には仕掛けがあるから、気を付けて進みな」

「仕掛けですか……」

 長谷川の言う仕掛けが気になり、つい身構えてしまうシリカ。そんな大層なものじゃないと信じたいところだが、何が起きるか分からずについ不安に駆られてしまう。

「大丈夫アルよ、シッリー。マダオの仕掛けなんてそんな大掛かりなものじゃないアル」

「そうだよ。家族連れもこのイベントに参加しているんだし、きっとびっくり系とかだよ」

「そうでしょうか?」

 シリカを励ますように、神楽やリーファが彼女の背中を押していく。長谷川の仕掛けなんて大層なものじゃないと括っている様子だが。二人に元気づけられてもなお、シリカの不安はまだ解消していなかった。

(なんとなく、嫌な予感がするのはアタシだけでしょうか?)

 なお、シリカが感じていた不安は、沖田も勘で察している。

「黒剣さん。一応身構えておいた方が良いですねぇ」

「沖田さん?」

 彼は近くにいたキリトへ向けて、一応警告した。キリト自身も沖田のただならぬ顔つきから、何か理由があると感じ始めている。

 そんなチーム内でも反応に落差がある中、段ボール迷路は開始された。

「よしっ、スタートだ!」

 長谷川の合図と同時に、迷路の扉が開く。中に入ると早速分かれ道に直面した。

「よし。シッリー、私らはこっちの通路に行くアルよ!」

「はい、神楽さん!」

 神楽は直感から左側の道へ。シリカと共に進むことに。

「じゃ、私たちは右側の……」

「いや、ちょっとついてきてくだせぇ」

「沖田さん?」

 神楽らとは正反対の方角に行こうとしたリーファらだったが、沖田により止められてしまう。彼の嫌な予感に気付き、沖田、キリト、リーファの三人は、先に行った神楽らの跡を追いかけることに。

 一方で肝心の神楽らはというと、

「まだ先は続いているようアルナ」

「そうです――キャ!」

「シッリー!? 何が……ギャア!」

早速長谷川の仕掛けに翻弄されてしまう。彼女らは床に仕掛けられた紫色の沼に、すっぽりとハマっていた。しかもその沼からは、

〈俺を……俺を永遠の夏休みから解放させてくれぇ!!〉

長谷川の妬みや僻みが野太い声で何度も繰り返されている。

「ぎゃぁぁぁ! マダオの呪いアル!!」

「一体なんなんですか、これは!!」

 二人は紫色の沼に恐怖を感じて、必死に抜け出そうとするも、何故か負荷がかかって中々抜け出せなかった。

 一方沖田ら三人は、ようやく神楽らの異変に気付いている。

「な、なにこれ?」

「多分あのグラサンが仕掛けたトラップでさぁ」

 キリト、リーファが紫色の沼に恐怖を感じる中、沖田だけはある心当たりがあり、それを二人に向けて話していた。

「俺も昔、土方を亡き者にする為に、外法で妖魔を呼び出そうとしたことがあったんで、多分その類でさぁ」

「そうなんだ……って、沖田さん!?」

「アンタ何を考えているのよ!?」

 沖田の経験談を聞き、ドン引きするキリトら。前々から感じていたが、とても警察が言っていいセリフではなかった。そんな沖田曰く、紫色の沼の正体は妖術的なものらしい。

「えっ、お前ら兄妹はそんな経験無いんですかい?」

「無いに決まっているだろ!」

「無いに決まっているでしょ!」

 沖田はさも当たり前のように飄々と話しているが、対照的にキリトやリーファは苦い表情のまま、激しくツッコミを入れている。益々沖田の底知れぬ腹黒さに気を引かせていた。

「まぁ、とりあえずチャイナと猫耳は助けやしょうや。おい、テメェら生きてるか」

「生きてるアルよ! さっさと助けろ、ドS!」

「お願いします、沖田さん!」

 沖田ら三人は、沼にハマったシリカや神楽を力づくで救い出し、彼女達の様子を確認している。

「大丈夫だったか、二人共?」

 キリトも心配して二人に声をかけた。

「なんとかネ……」

「嫌な予感が当たっちゃいましたよ!」

 呼吸を整えつつ、自身の無事を確認する二人。沼にハマっただけで、身体的な異常は特に感じられなかった。

「やれやれ。とりまこの迷路は、あの紫色の沼にハマった時点で、時間がかかるって認識ですかね」

「てか、長谷川さんは、なんでこんな恐ろしい仕掛け作ってんのよ!」

「アイツは無職なんで、どこにもぶつけようもない怒りや僻みを、このイベントにぶつけてるんじゃないですかい」

「これスタンプラリーだよ!? 親子連れも参加するのに、やけに生々しくない!?」

 冷静に分析する沖田に対して、リーファのツッコミが激しく繰り出される。場合によっては人にトラウマを与えかねない長谷川の仕掛けが、どうも信じがたい様子だ。

「黒剣さん。ここは全員行動に変更しましょうや。誰か欠けたままじゃゴール出来ないんで、沼に警戒しつつ進みましょうや」

「わ、分かった!」

 仕掛けの内容を知り、妖精チームは全員行動で作戦を変更する。さっきの分かれ道までみな一旦戻り、沼に警戒しつつ、ゴールまで手探り状態で続いていく。

 そしてゴール手前まで近づいた時だった。

「えっ、これって……」

「どっちにも沼がアルネ!」

 一行の目の前には二つの分かれ道があったが、どちらとも紫色の沼が仕掛けられていた。ゴール目前でのこの仕掛け。今まで沼のある道は極力避けていたのだが、今回はそうは行かなかった。

「あっ、どっちにも扉がアルネ!」

「この沼を潜り抜けないと行けないってことですか?」

「しかもどっちに行けば良いか分からない中で……」

 一行が目にしたのは、沼の先にある通路。どちらにも段ボールで出来た扉があり、恐らくどちらかがゴールと思われる。その為にはこの沼を潜り抜けなくてはならない。どちらを選ぶべきか皆が頭を悩ませる中、ここで沖田がとある提案をチームに向けて言う。

「しゃあねな。じゃ、俺が橋役になりやすよ」

「お、沖田さんが!?」

 なんとそれは自分が沼に入り、皆の橋役としてアシストする提案だった。沖田らしからぬ積極的な行動には、場にいた全員が驚きを見せている。

「何を驚いているんでい。こうでもしなきゃ、ゴールなんて遠のくだけでさぁ」

「いや、でも……流石に厳しくない?」

「だとしても、リスクをとった方が良いんでさぁ。なんせ俺らの目的はスタンプを集めることじゃなく、最後の抽選会が本命なんじゃないですかい。うかうかしていると、他のチームに狙っていた景品取られやすよ」

「それは……」

 沖田の説得により、皆徐々に考えを改めていく。彼の言った通り、チームとしての本命はゴール会場の抽選会。宇宙旅行のペアチケットや焼肉屋の食事券等を手に入れる為に、みなここまで頑張り続けていたのだ。その努力を無駄にしない為にも、沖田は率先して自ら体を張る選択肢をしている。

 時刻は夕方過ぎ。徐々に他のチームがゴールをする瀬戸際で、妖精チームに残された時間はほぼ無かった。そして、

「分かったわ! 沖田さんが体を張るなら」

「私達がそのバトンを繋ぐだけネ!」

妖精チームは沖田の橋役を受け入れることにする。

「本当に大丈夫なのか、沖田さん」

「心配しなくても大丈夫でさぁ。俺はチームを優先にしたまでなんで」

 キリトに心配されてもなお、沖田の意思は揺らがない。珍しくも男気ある一面を見て、キリトも沖田の事を素直に見直そうとしていた。

「じゃ、行きやすよ」

 と彼が沼に自らハマろうとした――その時である。

「はぁあ!!」

「「ふっ!!」」

 急に振り返り伸ばしてきた沖田の手を、神楽とリーファが一瞬にして避けて、反射的に彼の手首を強く掴んできた。

「えっ?」

「何が起きたんですか……?」

 一瞬の出来事に何が起きたか分からず、困惑するキリトとシリカ。一方で神楽とリーファは、急に仕掛けてきた沖田に向けて、怒りの表情を滲ませていた。

「おい、チャイナにブラコン。急にどうしたんでさぁ……」

「読めているネ、お前の行動なんか!」

「アンタ、私達を身代わりにしようとしているでしょ!」

「へぇ~。よくご存じで」

「ふざけるな、ドS!」

「そうよ! アンタが代わりになりなさいよ!!」

 そう。沖田はさらさら自ら囮になる気なんて無い。安心させたと思い込ませて、近くにいた神楽とリーファを沼に落とし、彼女達を橋代わりにしようと企てていたのだ。肝心の不意打ちだがこれが不発に終わる。二人はとっくに沖田の次の行動を予測し、思いっきり警戒していたのだ。

 さっきまでの、結束さはどこへやら。今は文字通り、一触即発のバチバチした雰囲気がこの迷路内に流れてしまう。

「ちょっと、みんな落ち付けよ!」

「そうですよ! ここで争っても、何も進展し……」

 三人の言い争いを見てられず、キリトやシリカが思わず止めようとした時だった。

「キャ!」

「シリカ!?」

 なんとシリカが足を滑らせて、沖田らのいる方向へ転んでしまう。

「「「えっ?」」」

 突然の出来事に一瞬理解が追い付かず、神楽達の喧嘩は止まったものの……

「うわぁ!」

「「「きゃぁっぁあ!!」」」

「み、みんな!?」

シリカの衝突によって、想定外のトラブルが起きてしまった。なんと左側の沼に神楽とシリカ、右側の沼にリーファと沖田が抱き合う形でハマり、沼のぬかるみに囚われてしまう。

「うわぁ~捕まったアル!! シッリーが目の前に!」

「ちょっと、神楽さん! 近づかないでくださいよ! なんかこのままだと、キスしそうなんですよ!!」

 互いの顔の距離が近く、キスされないよう必死に抵抗する神楽やシリカ。

「ぎゃぁぁぁ!! 沖田さんが睨みつけてくる!!」

「騒ぐな、ブラコン。顔近づけたらキスすることになるぞ」

「やだぁぁ!! 沖田さんとキスなんてまっぴらごめんよ!」

「こっちもでさぁ」

 同じく沖田と顔の距離が近く、悲鳴を上げ続けるリーファ。喚く彼女に対して、沖田は不満げに自分が橋役になったことが不満で仕方なかった。自業自得ではあるが……

 そして唯一巻き込まれなかったキリトだが。彼はこの惨状を目の当たりにして、困惑めいた表情を浮かばせている。

「ど、ど、どういうことだぁぁあぁ!!」

 彼はただただ無情にもツッコミを入れるしか無かった。こうして妖精チームは沼からの救出に時間がかかったものの、無事にゴール地点までたどり着いたはずである……!




今回は妖精チームのスタンプ集めのリメイクです。変更先はこんな感じです。
 西郷特盛の試練→女装をキリトのみにして、沖田はメイク側へ移動。加筆。
 九兵衛の試練→続きを加筆
 小銭形の試練→出題者を長谷川さんにして新規作成

ここだけの話なのですが、リメイクを作るきっかけになったのも「沖田だったら女装させられる前に策を講じて、自分は逃れるんじゃないのか?」って思ったのがきっかけで、今回は思う存分に彼の狡猾さを描けたと思います。その分、キリト一人に負担がかかったのも事実ですが……。沖田の女装を期待していた方は、申し訳ないです……。
 個人的には最後の試練で共倒れになる沖田とリーファ、神楽とシリカが好きです笑

 あと、寿限無寿限無ウンコ投げ機一昨日の新ちゃんのパンツ新八の人生バルムンク=フェザリオンアイザック=シュナイダー三分の一の純情な感情の残った三分の二はさかむけが気になる感情裏切りは僕の名前をしっているようでしらないのを僕はしっている留守スルメめだかかずのここえだめめだか……このめだかはさっきと違う奴だから池乃めだかの方だからラー油ゆうていみやおうきむこうぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺおあとがよろしいようでこれにておしまいビチグソ丸の登場で、新八並みにツッコミをするシリカの姿も好きです笑

 ということで、とうとう次回がラスト! ここまでリメイク作を読んでいただき、ありがとうございます。最後は完全新規で、各チームのダーツ抽選会の模様をお届けします。






次回予告
銀時「結野アナの非売品写真集は俺のモンだ!」

神楽「叙々〇のお食事券は私のモノね!」

キリト「みんな気合が入っているな……」

アスナ「それより、先にゴールするチームは誰なのよ!?」

ユイ「その答えは次週の剣魂で!」

新八「次回! ラストスパートにEDが流れるのも当たり前!」






次々回予告
 全ての準備は整った……いよいよあの男が剣魂にやって来る!
「俺はただ壊すだけだ……」
 続報を待て!!






教えて! 銀八先生!

銀八「ペンネーム、赤髪繋がりでティーゼと神楽を出会わせたいさんからの質問。シリカって、この世界に来てからどれくらい強くなりましたか? 気になるので教えてください。ずばりお答えましょう。新八並みに強くなりました。これは小馬鹿にしているわけじゃなく、ガチでそれくらい強くなっています。そもそもシリカに限らずSAOの女子共は、日々腕っぷしの強い銀魂女子の面々に囲まれて稽古しているから、めちゃくちゃ強くなっていると思います、多分。ということで、MOREDEBANとして出番の少なさを自虐ネタにしている綾野珪子(シリカ)と篠崎里香(リズベット)。初登場から五年も大した出番が無かった銀魂の陸奥に詫びでも入れておけー」
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