2025年4月29日 リメイク版に置き換えました。
各チームが死闘を繰り広げたかぶき町のフレンドラリー。自由にスタンプを集め、五つのスタンプを集めきった者に、豪華な景品を獲得できるダーツ抽選会へ参加出来る。スタート地点とは異なるゴール地点の公園で、一足先に辿り着いたのは……
「着いた!!」
「やっと終わった……!」
近藤、新八、アスナ、リズベットの真選組チームだった。
「おめでとう、みんな」
「あっ、お妙さん!」
公園に建てられたゴールのアーチから、ひょっこりと顔を見せたのは、フレンドラリーの主催者の妙だった。穏やかな表情で姿を見せたが、近藤を見た途端その表情は怪訝に移り変わる。
「チッ、ゴリラかよ」
「今露骨に舌打ちしなかった!?」
「うるせぇなぁ。これ以上近づいたらこれよ」
「えっ?」
露骨に態度を悪くして、しまいには親指を下に向けて、地獄に落ちろのポーズを繰り出す妙。コンプライアンスもへったくれもない喧嘩腰で、近藤を黙らせようとしていた。
「お、お妙さんってば……」
「流石ストーカーを跳ねのける程の肝っ玉よね……」
一連の妙の行動には、リズベットやアスナも気を引かせている。同い年とは思えないほど、彼女の根性を図太く感じていた。(そもそもストーカー相手に自ら黙らせに来る辺り、彼女たちにとっては信じられない様子である)
そんな近藤と妙のやり取りはさておき、一行が気になったのは真選組チームの順位である。
「姉上。それで僕らの順位は?」
「ちょうど三組目よ。でも、安心して。まだみんなが狙っている景品は当たっていないから」
「良かったわ。とりあえず一安心ね」
彼らは全体で三番目のゴールだった。やはり吉原での試練で、スタンプを二倍獲得したのが大きかったのだろうか。みな目当ての景品が残っていることを知り、安堵の表情を浮かべている。
一方で妙は、事前に万事屋で聞かされたチームとは異なり、彼らのチーム編成が気になっていた。
「それにしても変わったチームね。あの時話していた時とはだいぶ違うじゃない」
「そ、それは……」
「ごまかさなくても良いのよ。全部わけは知っているから」
「えっ!? じゃ、大会側のトラブルの事も?」
「そうよ。顎を勝ち割ったらすぐあの人が吐いてくれたからね。改めて迷惑をかけてごめんなさいね」
咄嗟に言い訳を言おうとしたところ、妙は全ての事情を知っていた様子である。にこやかな表情で親切丁寧に謝罪したのだが……それよりも皆が気になったのは、あの一言だった。
((((勝ち割る……!?))))
おそらくはあずみのことを指していると思われるが、この勝ち割るという表現に皆引っかかっている。たんなる揶揄なのか、はたまた物理的に割ったのか……どちらにしても、彼女が鉄拳制裁を受けたのは事実だろう。想像するだけで皆痛々しく感じてしまった。
「ウフッ!」
「姉上。怖いですよ……」
とゴールの余韻に浸る間もなく、真選組チームは公園内に設置された特設会場へと移動する。そこには景品名が一部記載されたルーレットがあり、その総数は百個以上。指定された場所からダーツを飛ばし、ルーレットに書かれた的に当てた商品を手にすることが出来るのだ。さながら某フレンドパー〇と同じ仕様である。
「じゃ、ここからが本番ね。この距離からダーツを飛ばして、当たった景品をご褒美にあげるわよ。的に当たらなかったら問答無用でたわしだから、注意してね~」
「そこも本家譲りなんですね……」
妙のルール説明が終わると、全員分のダーツが配られた。ここからが本当の勝負。みな負けられない戦いに闘志を燃やしていく。
因みに新八はお通ちゃんの金ピカ色紙サイン。リズベットと近藤が宇宙旅行ペアチケットを狙っているが、アスナは珍しいものならなんでも良いらしい。
「さて、誰から行きますか?」
「アタシは少し練習するから、みんな先にやって良いわよ」
「俺は全然最後でも良いぞ。残り物には福があるって言うからな」
「私も後からでも良いわよ」
「じゃ、僕から行きます!」
順番決めの結果、新八が先にダーツを投げることに。彼は所定の位置につき、ルーレットに向かって全身の精神を集中させる。
「頑張って新八君!」
「落ち着いてやってね!」
共に苦難を乗り越えたアスナやリズベットからは、心強い声援が飛び交う。近藤もしっかりと彼の行く末を見守っていた。
「狙うはお通ちゃんの金ピカ色紙サイン。ただ一つ!」
狙いの景品に向け、しっかりと強く祈る新八。ルーレットが自動的に回り、彼はある的に狙いを定めた。
「よしっ、はぁ!」
瞬時に彼はダーツを投げて、狙っていた的へ見事射貫いている。
「あら。おめでとう、新ちゃん!」
「えっ、まさか。本当にお通ちゃんのサイン!?」
そう。彼が狙っていたのは、金ピカと書かれた的。金ピカに続く言葉がテープで止められているが、妙の喜びようから、新八は自分の望んだ景品が当たったと確信した。
「そう。金ピカの……」
妙が的に張られたテープを外して、そこから露わになった言葉は……
「あっ、鍋だったみたい」
「えっ?」
金ピカの鍋である。すると彼女は特設会場の裏側へ移動し、新八に当たった景品を贈与していた。
「どうぞ」
「な、なんですか姉上」
「そのまんまの意味よ。金ピカの鍋だなんて、とっても縁起が良くて良かったじゃない」
「いや、僕が欲しかったのは、お通ちゃんの金ピカ色紙サインなんですけど!! とんだ引っ掛け問題だったんですけど!!」
妙が新八にプレゼントしたのは、金色に光る大きめの鍋である。妙は純粋に祝福していたが、新八は想定外の景品に納得がいかず、大いにツッコミを入れていた。新八のチャンスは失敗に終わってしまう……。
「残念だったわね。新八」
「まぁ、そう気にするな。俺が当てたら、その黄金鍋と交換しようぜ! なんせ将来の弟だからな!」
「有難迷惑だよ。こんちきしょ……」
リズベットらも彼を励ますが、中でも近藤は快く交換を提案する。新八本人は乗り気では無かったが……。
と新八に続いて、次はアスナの番になる。
「じゃ、次は私ね」
「頑張ってアスナ―!」
仲間の声援を受け取り、新八と同じ所定の位置へ移動。
「何か激レアな景品が当たりますように……!」
アスナは特に狙っている景品が無いので、何か物珍しいものが当たるように祈っていた。精神を静かに研ぎ澄まして、
「ハァ!」
勢いよくダーツを放つ。そのダーツが当たったのは、新八と同じく金ピカと書かれた的だ。
「あれ? また金ピカ?」
「ってことは、今度こそお通ちゃんのサイン!?」
新八もアスナの当たった的へほのかに期待し、的の伏字がはがされていくのをじっと眺める。すると露わになった文字は、
「おめでとう! これは……金ピカのラグーラビットね」
「えっ?」
「はぁ!?」
またもお通のサインでは無かった。アスナが手に入れたのは、ラグーラビット。所謂兎の肉であるが、金ピカと書かれていることから高級品として見て間違いないだろう。
「別の星のウサギ肉みたい。ちょっと今、取ってくるわね」
妙が嬉々として景品を取りに行く一方で、アスナは何とも表情を浮かべていた。
「この世界にも、ラグーラビットっていたんだね……」
彼女がSAO時代に調理した激レアな食材もラグーラビットだったので、同じ名前の兎肉がこの世界にいることが衝撃的らしい。いずれにしても、彼女の狙い通りに、珍しい景品を手に入れることは出来た。
「黄金の鍋と黄金の兎肉……」
「なら、今夜は鍋パーティーにしようかしら」
「ですね。ハハ」
新八、アスナともに景品のチャレンジは終了し、早くも今日の夕食の事について話し始めている。
さて、残る真選組チームの挑戦者は二人。近藤とリズベットだ。
「よしっ! 行くぞ、リズ君!」
「イメージトレーニングはばっちり掴んだわよ! どっちから行く?」
「そりゃ、リズ君で良いぞ! しっかりチケット手に入れて来いよ!」
「分かっているわよ!」
互いに気合は十分であり、共に宇宙旅行のペアチケット目指して躍起になっている。順番はリズベットが先。近藤は彼女の背中を押して、チケットが当たるように祈っていた。どちらが当たっても恨みっこなしで互いに約束したからである。
リズベットも新八らと同じく所定の位置についた。
「いけぇ、リズ君!」
「頑張ってください、リズさん!」
仲間からの声援を受け取り、リズベットは目を閉じて精神を研ぎ澄ます。
(狙いはペアチケット! このチャンスをものにするわよ!)
目を開くと、遠くにあるルーレットが周り出した。しばらく希望の的を目で追ううちに、
「そこ!」
彼女はダーツを軽やかに投げる。気合を入れたリズベットが射抜いた的は……
「おめでとう、ペアチケットよ!」
「えぇ、本当に!?」
ペアチケットの的だった。彼女は本当に自らの手で幸運を掴んだのである。
「リズさんがペアチケットを……!?」
「嘘!? 本当!?」
この結果には、仲間からも大いに驚きの声が上がった。特に近藤は、リズベットが狙いの景品を当てられたことを、まるで自分ごとのように喜んでいる。
「やったじゃないか、リズ君!」
「めっちゃ嬉しいわよ! でも、近藤さんの方は……」
「何ぃ、気にするな。元の世界へ戻ったら、宇宙旅行なんて中々出来ないだろ。俺はいざとなったらいつでも出来るから、気にするなよ! 君が十分に頑張った証だ! 難なく受け取ってくれよ!」
「もう、近藤さんってば……でも、ありがとう!」
二人の勝敗はリズベットに軍配が上がったが、負けた側の近藤は清々しい表情で変わらずに彼女を祝福していた。近藤の純粋なる優しさに触れて、リズベットもまた彼に感謝するのである。真選組チームを通じて、確かな絆が芽生えた瞬間だった。
そんなリズベットの元に妙が近づき、いよいよペアチケットを渡す。
「はい、これよ」
「やった! これでキリトと……」
――と喜んだのも束の間。リズベットはもらったペアチケットのある部分に気付いた。
「あの、お妙さん?」
「何かしら」
「これ、マグロ漁船って書いているんだけど……間違いじゃない?」
宇宙旅行のペアチケットではなく、マグロ漁船体験のペアチケットを彼女は手にしている。何かの間違いだと妙に訴えかけたのだが、
「間違いじゃないわよ。ほら、見てみなさい」
「えっ……? ペアチケット……マグロ漁船用」
的をよくよく見ると、ペアチケット(マグロ漁船用)と書かれていた。どうやら宇宙旅行以外にも、ペアチケットの景品を数多く用意しているみたいだ。その中でも彼女は、マグロ漁船を当ててしまったらしい。つまり、ただの糠喜びだったということだ。
「ハハハ」
〈バタン!〉
「リズ!?」
「リズさん!?」
この事実にようやく気付いたリズベットは撃沈。後ろから倒れこみ、大きなショックを受けてしまう。
「ア、 アタシの数時間のど、努力が……」
「落ち着いて、リズ! マグロ漁船も中々出来ないレアな体験よ!」
「そうですよ、キリトさんも物珍しさに来るかもですし!」
何とも言えない表情を浮かべ項垂れるリズベットに対し、アスナや新八が必死になって励ましていた。宇宙旅行並みに珍しい体験を出来るチケットだが、今の彼女にとってはただの逆効果でしかない。このショックは当分続きそうである。
「残念だったな、リズ君」
この結果には、近藤も大変残念がっていた。数分前の彼女の喜び様と比べると、見違えるほどの急落ぶりには思わず心配の念を浮かべている。だが一方で、これは自分自身に巡ってきたチャンスとも捉えていた。
「だが、これでまだ俺にもチャンスがある! 行くぞ!!」
こうして彼はダーツを受け取り、即座に所定の位置へ移動。気持ちを切り替えて、こちらも宇宙旅行のペアチケットが当たるように念じていた。
「そこだ!」
回り続けるルーレットに、一本のダーツを打った近藤。彼が当てた景品は、
「あら。またペアチケットね」
「何!?」
「えっ!?」
またしてもペアチケットだった。手ごたえを感じた近藤は小さく喜び、対照的に狙いの景品を外したリズベットは驚きの声を上げている。
「ま、まさか近藤さん……!?」
「フッ、どうやら勝利の女神は俺に微笑んだようだな。これで宇宙旅行のペアチケットは俺のもんだ!」
と彼は振り返りつつも、的に当たった景品名を確認した時だった。
「アレ? カニ漁船?」
そこには宇宙旅行ではなく、カニ漁船の文字が。そう。彼も別のペアチケットを当てていたのだ。
「おめでとう! ゴリラはカニ漁船のペアチケットを手に入れたのね。美味しいカニを取ってきてくださいね~」
妙からは珍しくも優しく祝福されたものの、近藤は思いっきり困惑している。
「えっ? 違うの? まだ別のペアチケットあったの?」
リズベットの時と同じく、今更ぬか喜びしていたことが恥ずかしくなってしまう。結局二人共、別のペアチケットを当てて、共に狙いの景品を外した結果になっていた。
そんな困惑を続ける近藤の元に、リズベットは挙動不審のまま話しかけてくる。
「よ、良かったね! 近藤さん!」
「リ、リズ君!? その笑顔は何!? なんかすっごい不気味なんだけど!?」
「マグロ漁船とカニ漁船……お互い仲間だね!」
「って、大丈夫か!? さっきのショックでおかしくなってないか!」
未だにショックを受け続いており、呂律も回っていない様子だ。悲哀に溢れる彼女を、近藤はツッコミを入れつつ、立ち直らせようとしている。
「景品が当たっただけでも、嬉しいんですけどね」
「そうよね……マグロ漁船もカニ漁船も、中々出来ないよね!」
「そうですよね!」
そしてその様子を見て、新八とアスナは言葉を選びながら気を遣っていた。共に黄金の鍋と黄金の兎肉を持ち、リズベットが落ち着かないかそっと様子を見ている。
((き、気まずい!!))
共に同じ思いであった。
こうして真選組チームの景品獲得チャレンジは終了。皆珍しい景品を手に入れたが、何とも悔いの残る結果になってしまった。
真選組チームのゴール後。次に現れたチームは、
「到着です!」
「まだ、景品残っているよな!」
万事屋チームの銀時、ユイ、土方、シノンの四人である。おおよそ十番目の到着だ。
彼らが公園に着いた後、真っ先に見た光景は、
「えっ? 近藤さん?」
「リズ?」
体育座りするリズベットを必死に立ち直らせようとする近藤の姿だった。
「ほら、買ってきたぞ。こういう時は歩汗里飲んで、元気出せよ」
「ありがとう……近藤さん」
飲み物を渡すも、彼女はまだマグロ漁船のペアチケットの件で、気持ちを引きずっている。近藤も付きっ切りで宥めていた。
「何があったんだアレ?」
「リズさんの狙っていた景品が外れたということでしょうか?」
心配そうに見つめる銀時とユイ。そんな二人に新八とアスナが話しかけてくる。
「銀さんにユイちゃん!」
「あっ、お前らか。もう景品は手に入れたのか?」
「そうね。でも、近藤さんもリズも、狙っていた景品は外れちゃったのよ」
「だからあんなに落ち込んでいるのか」
二人の証言で、リズベットらに何が起きたのか察した一行。土方も気に障らぬように、気を遣おうとする。
そして万事屋チームも、景品獲得チャレンジへと挑戦する。人数分ダーツが配られて、最初は順番決めから始まった。
「そういえば、皆さんが狙っている景品は何ですか?」
ユイが銀時らへ向けて聞くと、三人は各々の狙う景品を言い放つ。
「当然! 結野アナの非売品写真集だ!」
「まだ出ていない宇宙旅行のペアチケットよ!」
「マヨネーズ工場の見学チケット! これしか眼中にねぇよ!」
銀時、シノン、土方と皆自信満々に答える。銀時は結野アナの写真集。シノンは宇宙旅行ペアチケット。土方はマヨネーズ工場の見学チケットを狙っていた。チームメンバーの漲るやる気を目にして、ユイも同じくらいテンションを上げていく。
「なるほどです! では、順番はどうしますか?」
「ユイで良いよ。俺は後でも構わねぇし」
「えっ、良いんですか?」
「ここまで付き合わした詫びだ。先は譲ってやるよ」
「私も同じよ。行ってきなさい、ユイ」
肝心の順番だが、皆ユイに譲っている。このメンバーだと最年少及び唯一の子供なので、最初から譲るつもりだったようだ。
「分かりました! では、私から!」
銀時らへ感謝を伝えた後は、ユイは自信満々の顔で所定の位置に着く。ダーツを手に、ワクワクした気分で回り始めたルーレットに狙いを定めていた。
「ユイちゃん頑張って!」
「ゆっくりでいいから!」
近くにいたアスナや新八からも声援がかかる。ここまで来たからには、外すわけにはいかなかった。
「何か景品が当たりますように!」
最後に豪華な景品が当たるように祈りつつ、勢いよくダーツを投げる。すると当たったのは、アスナ、新八と同じく金ピカと書かれた的だった。
「これは金ピカの……」
「まさか! とうとう来るのか! 金ピカのサイン!?」
新八はお通ちゃんのサインがとうとう当たるかもと期待を寄せる。妙が的を剥がしに行き、露わになった景品はというと――
「当たったのは……金ピカの野菜ね!」
「野菜?」
「えっ!?」
またしても食品系だった。
「はい、どうぞ!」
「うわぁ! 見てください、ママ! こんなに野菜を手に入れちゃいました!」
妙から渡されたかごには、金に輝く数多の野菜たちが詰められている。ユイは豪華な景品が当たったと感じて、アスナや新八に眩い野菜の数々を見せつけていく。
「よ、良かったね。ユイちゃん……」
にんまりと笑うユイに対し、アスナはなんとも言えない表情で事を返していた。そのまま彼女は一旦後ろを振り向き、新八にある確認を取っている。
「金ピカの野菜って食べても大丈夫よね?」
「大丈夫だと思いますけど。てか、どんどんと鍋パになってきてませんか?」
「そうね……」
食用であることを新八に再確認していた。嬉しいことだが、色合いが金ピカだと流石に抵抗心があった様子である。アスナ、新八の当たった景品と合わせて、増々鍋用の道具や食材が揃おうとしていた。
一方で、次にダーツを投げるのはシノンである。
「じゃ、次は私よ!」
「おっと、頑張ってこいアーチャー」
「その背中のは使うなよ」
「分かっているわよ! ダーツで正々堂々と手に入れるんだから!」
銀時らの声援を受けながら、彼女は静かに所定の位置につく。例の如くルーレットが回り始めると、シノンは宇宙旅行のペアチケットの的を目掛けて狙いを定めている。
(リズには悪いけど、ペアチケットは当てさせてもらうわ。私の射程力で!)
鍛えられた射撃能力を活かしつつ、的へ当たるタイミングを見計らう。そして、
「ハァ!」
一瞬にしてとある的を射抜いていた。
「これは……非売品の原画集?」
しかし、残念ながら当たったのは宇宙旅行のペアチケットではない。
「はい。シノンちゃんにはこれをプレゼント~」
彼女が反応に困っていると、妙は構うことなくシノンへある本を渡す。それはイラストや設定を詰め込んだとある漫画の原画集なのだが……銀時にはどうやら心当たりがある様子だった。
「何、この本……」
「ちょっと待て! これ俺のネーム本じゃねぇか! なんで景品に紛れているんだよ!」
そう。この本は以前に銀時が、知り合いの受刑者兼漫画家志望の鯱と共同で作成した漫画の試作品だったのだ。どこから流出したかは不明だが、運良く知り合いの手に渡っている。
銀時の驚嘆としたツッコミに対し、シノンは終始驚きの表情を浮かべていた。
「ネーム本? って、銀さんって結構絵心あったのね」
「それ俺のじゃねぇよ! 俺の友人の絵だよ!」
「じゃ、後ろの方の絵なの?」
「そうだぜ! ジャンプをこよなく愛する俺の自信作だ。女子には分かりづらいと思うが、中々の力作だろ?」
彼女は本をパラパラとめくり、その内容を確認していた。監獄系のラブコメっぽい内容だが、前半が鯱の作画。後半が銀時の作画になっている。絵の出来は鯱の方が上手で、銀時の絵はやや汚く内容も分かりづらい。
当の銀時本人は自信満々に絵を自画自賛していたが、シノンの反応はというと、
「……下手くそ」
「おい、今なんて言ったテメェ! 少なくとも友人のよりはいいだろ?」
「逆よ! こっちの方が可愛くて、女子受けも良いと思うわよ!」
辛辣な評価を口にしている。彼女は鯱の書いた絵柄を気に入っていた。互いに意見が食い違い、どちらとも納得のいかない表情を浮かべている。
「これだからジャンプ慣れしてないガキは……」
「ふんだり蹴ったりだな。ちゃんとものを管理しとかねぇから、こんなことになるんだよ」
「やかましいわ! なんでテメェは嬉しそうなんだよ!」
そんな二人の様子を、土方は蚊帳の外から見ていた。彼は自堕落で物の管理がなっていない銀時に、つい釘を刺している。身から出た錆、自業自得と内心では見下していた。
「次はお前で良いよ。とっととやってこい」
「命令口調にするな! ったく、やってきてやるよ」
土方はそのまま銀時にダーツの順番を譲った。銀時は苛々を募らせながらも、ダーツを手に所定の位置へ移動。狙う結野アナの非売品写真集を目掛けて、精神を集中させていく。
「銀時さん、頑張ってください!」
「しっかり狙った獲物を当てなさい!」
「分かっているから!」
チームメンバーであるユイやシノンからも応援が上がる。彼は気を落ち着かせつつ、回り続けるルーレットの狙うべき的を目で追い続け、
「とりあえずそこだ!」
勢いよくダーツを投げた。当たった的は写真集……ではなく、シノンと同じく非売品の原画集である。
「えっ? 原画集?」
「おめでとう。銀さんにはこれを」
と妙から手渡されたのは、とある一冊の本。しかも先ほどの原画集と比べると、品質はかなり落ちている。落書きともいえる本を銀時は手にしたのだが……実はこの本、彼にはある心当たりがあった。
「ちょっと待て。これ……」
「おぃぃぃぃ! なんでこんなもんが、景品に紛れてんだよ!! 俺のやつじゃねぇか!」
そう。これは以前土方が、トッシーになるアニメオタクの別人格に乗っ取られた際に作成したTOLOVE〇の同人本である。まさかの再登場に銀時はおろか、土方も大きく動揺していた。
「これ、土方さんの絵なの?」
「子供の時の落書きでしょうか?」
思わぬ景品に、シノンやユイもこの同人本に注目を寄せる。すると銀時が二人に向けて、この本の補足を加えてきた。
「逆だ。逆だ。話は長くなるが、こいつは人格を乗っ取られかけたことがあって、その時にダメなアニメオタクに……」
「おい、こいつらに話すなよ! 俺の黒歴史じゃねぇか!!」
妖刀に乗っ取られかけた経緯まで話す銀時に、土方は焦って止めようとするも……時すでに遅い。
「気になるわね。その話」
「続きを聞かせてください!」
「良いぞ」
「よくねぇよ! つーか、返せ! これ以上話を広げるな!」
シノン、ユイ共にトッシーの話に興味を持ちかけていた。スラスラと話す銀時に対し、土方は意地でも止めようと画策する。物の管理がなってないと銀時に文句を呟いた土方だったが、当の本人も人のことを言えない顛末を迎えていた。
「それはそうと、行ってこい。トッシー」
「その名前で言うなよ! いい加減にしろよ!」
土方がツッコミを入れ続けているうちに、ダーツの順番は土方に回っている。彼は釈然としないまま、みなと同じく所定の位置に着くのだった。
「さて……さっさとやるか」
気持ちを入れ替えつつ、慎重にルーレットにダーツを投げていく。近藤やアスナらがみな土方の動向を静かに見守る中、彼が当てた景品は……
「あっ、ペアチケットだ」
「「えっ!?」」
「「はぁ!?」」
まさかのペアチケットだった。想像もしない展開に、場にいた全員が驚きの声を上げている。
「とうとう出たんですか!?」
「まさか土方さんが……?」
新八やアスナも驚嘆とした表情を浮かべていた。彼が手にしたペアチケットの全貌はというと……
「おめでとう、土方さん。マヨネーズ工場のペアチケットよ」
「本当か!?」
「そっちかよ!!」
マヨネーズ工場の見学だった。リズベットやシノンが狙っていた宇宙旅行のペアチケットではなく、仲間達の驚きも一瞬にして冷めている。
「マジかよ……本当に手に入れたぞ! やった……!」
「おい、あいついつになく喜んでいるぞ! 顔がにやけすぎてるぞ!」
希望の景品が当たり、つい笑顔を浮かべてしまう土方。普段の彼とは思えないほどの浮かれ具合に、銀時は強めのツッコミを入れている。
すると彼は声を弾ませながら、チームメンバー達へマヨネーズ工場の見学を誘っていく。
「どうだ? 同じ死闘を繰り広げたチームの一員として、一緒に行かないか? きっと楽しいぞ」
「パス」
「同じくね」
「お断りします!」
当然、銀時、シノン、ユイの三人は真っ向から断っていた。
「なんだよ。つまんねぇな」
「つーか、お前だけ運が良すぎだろ! どんだけ徳を積んだんだよ!」
「羨ましいわね……!」
「なんだよ、負け惜しみか? そんなの運ゲーだから仕方ないだろ。俺に風が吹いた、それだけのこった」
特に銀時とシノンは、一人だけ良い思いをしている土方に若干不満げである。共に苦い表情を浮かべており、土方をじっと見ていた。そんな二人の反応など気にせず、土方は未だ勝利の余韻に浸っているが……そんな彼に思わぬトラブルが起きてしまう。
「あれ? ママ!」
「どうしたの、ユイちゃん?」
ユイが当たった景品の野菜を確認していたところ、あるものを見つけてアスナに報告していたのだ。
「見つけたんですよ! この野菜の形、激レアモンスターなんですよ!」
「えっ?」
とアスナに見せてきたのは、男性の局部に似た人参である。言葉に詰まる形をしており、アスナ自身も反応に困っていた。
「そんな卑猥な形のものが……って、誰から教わったの?」
「土方さんです!」
「土方さんが?」
そう。ユイは第三の試練で見つけてしまった卑猥な形の部品を、土方から名前や経緯について聞いていたのだ。彼女の穢れを知らない笑顔とは対照的に、アスナは怒りの矛先を土方へと向け始めている。
「へぇー、分かったわ」
「どうしたんですか、ママ?」
「ユイちゃん。ちょっと待っていてね」
そのまま彼女は、浮かれる土方へと歩みを進めた。
「ねぇ、土方さん」
「ん? どうした。まさかマヨネーズ工場に行きた――」
「ちょっとこっちに来てもらえるかしら……!?」
「えっ、おいなんだ! なんで俺なんだ! 何考えているんだ、オメェ!」
アスナは無理やり土方の右上を掴んで、近くの茂みに隠れこむ。そして誰にも見られていないことを確認した後に、
「ユイちゃんにどんな教育したのよ、アナタ!!」
「おい、待て! これには訳があってだな……ぎゃぁぁぁ!!」
土方へ容赦なく鉄拳制裁を繰り出していた。彼が理由を話す暇もなく、アスナへあるがままにボコボコにされてしまう。良いことが起こった彼の元に訪れた不運な悪いことである。
「どうしたんでしょうか、ママ」
「しらね。アイツがなんかいらんこと教えた――って、そういうことかよ……!」
「どうしたんですか、銀時さん! なんで頭を抱えているんですか!?」
銀時もようやくアスナが怒っている理由に気付き、つい頭を抱えてしまった。先ほどまで土方に憎まれ口を叩いていたものの、こればっかりは不可抗力で同情せざるを得ない。そんな項垂れる銀時に、ユイは心配して声をかけていた。
これにて万事屋チームの景品獲得チャレンジは終了。シノンやリズベットが狙う宇宙旅行のペアチケットは、まだ誰も出していなかった。
「結局シノンも当たらず……もしかして、このまま出ずに終わるの?」
「本当に運が絡むからな。ふとした時に当たるかと」
未だに気持ちが立ち直っていないリズベットに、近藤は懸命に宥めていく。二人共、宇宙旅行のペアチケットを誰が手にするのかやきもきしており、他のチームの抽選状況もつい気になってしまう。
そんな中で、状況に変化が起きたのは数分後であった。
「大当たり!! 宇宙旅行のペアチケットよ!」
「「えっ?」」
なんと。とうとう宇宙旅行のペアチケットの当選者が現れたのだ。それを当てたチームは、
「でかしたぞ、クラーイン! よくチケットを当ててくれた!」
「嬉しいぜ! 俺達が宇宙旅行ペアチケットの獲得者だぜ!」
[最高だ!!]
桂一派の変装した宇宙キャプテンチームである。その一員であるクラーインが的を射抜き、景品の花形を獲得している。カツーラ、ステファン共々、みな喜びに浸っていく。
当然近藤らにとっては、信じがたい光景である。
「嘘!? あんな変てこなチームが手に入れちゃったよ! なんか釈然としない気が……って、リズ君!?」
ついついリズベットの心配を浮かべていた近藤が彼女の方を振り向くと、そこには何故か晴れ晴れしい表情を浮かべる彼女の姿を目にした。一瞬にして立ち直ったリズベットだが、彼女にはある気持ちの変化が表れている。
(よしっ! これでシリカやリーファがチケットを獲得するチャンスは無くなった! これだけで十分よ!!)
そう。彼女は仲間が希望の景品を当てて、マウントを取られる可能性がないことを喜んでいた。みみっちく感じるが、それでもリズベットにとっては死活問題だったのかもしれない。今後あの二人がどんな景品を当てようとも、共倒れになるので一安心しているのかもしれない。
「なんで元気出てるの……?」
そんな気持ちの変化などまったく察していなかった近藤は、ただ困惑を深めるばかりであった。いずれにしても、リズベットの元気が戻り、近藤自身も内心では安心している。
万事屋チームのゴールから数十分後。ぞろぞろと他のチームもゴール地点にたどり着き、ゴール内の公園は人込みで賑やかになっていく。そんな中で、ようやくあのチームがゴール地点に着いていた。
「やっとゴールネ……」
「ここまで長かったわね……」
そう。妖精チームのキリト、神楽、リーファ、沖田、シリカの五人である。彼らは最後の長谷川の試練である段ボールの迷路で大きく時間を使ってしまい、真選組や万事屋のチームと比べて、ゴールするまでに大きな差を付けられてしまう。
「おめでとう、みんな」
「あっ、お妙さん!」
「ペアチケットってまだ残っている!?」
「残念だけど、もう当選者が出ちゃったわ」
「そ、そんな……」
声をかけてきた妙に、宇宙旅行ペアチケットの有無を聞くシリカとリーファ。しかし彼女らの願いも虚しく、先ほどカツーラのチームが手に入れてしまった。やはり最後の試練で大きく時間を割いてしまったのが要因であろう。悪い予感が当たり、二人共しょんぼりとしてしまった。
「おい、ドS! お前が変な内輪もめをしなけりゃ、こんなことはならなかったアルよ!」
「なんでい。俺のせいだってのかい」
「落ち着けって二人共。まだ景品は残っているみたいだし、そう諦めるなよ」
一方で神楽は、時間のかかる要因を作った沖田へ対し激高。怒りをぶつけるも、沖田は何一つ動じていなかった。そんな彼らのいがみ合いを、キリトはそっと仲介していく。
キリトが神楽を説得する中で、沖田は近くにいた土方に気付き始める。
「あれ、土方さぁん。なんでそんなボロボロなんですかい。余計に汚くなってやすよ」
「色々あったんだよ、俺も」
彼の頬にはビンタされた跡があり、服装も汚れが目立っていた。何者かから報復を受けたと見られ、沖田自身は土方がボコボコにされるところを見れず、その場に自分がいなかったことを少しだけ後悔している。
その後はみな一旦仲間と合流し、先にゴールしたチームメンバーの景品について話している。
「結構みんな、色々な景品を当てたんだな」
「今日は鍋パですよ、パパ!」
「鍋だの肉だの野菜だの当たったんですよね」
キリトはユイやアスナ、新八が当てた鍋用の食材に興味を持っていた。
「マグロ漁船のペアチケット当てたんですか!?」
「まぁ、レアっちゃレアだけどね」
「やっほい! リズの釣ったマグロで刺身パーティーアル!」
「だから神楽。まだ行ってないから」
シリカや神楽は、リズベットの当てたマグロ漁船のペアチケットが気になっている。神楽は先走って、彼女にマグロを催促する始末だ。
「なんでい。土方さんだけ希望の景品が当たったんですかい。あーあ」
「何を残念がってんだよ! さっきの喜びはどこ行った!」
「まぁまぁ、落ち着けトシ。俺も宇宙旅行のペアチケットは無理だったが、カニ漁船なら当てたぞ」
「さっきのリズベットと同じじゃねぇか」
「違う! 彼女はマグロ! 俺はカニ!」
「同じだろうが」
沖田は土方だけが希望の景品を当てたことに心底がっかりする。一触即発の二人を、近藤は優しく宥めていた。
そんなやり取りがありつつも、妖精チームも景品獲得チャレンジへ挑戦。五人分のダーツが配られ、みなじゃんけんをして順番を決めていた。
「じゃ、じゃんけんの通り、私から行くネ!」
「神楽ちゃん、頑張って!」
最初の挑戦者は神楽である。彼女は所定の位置につき、回り始めたルーレットに標的を定めていく。
(狙うは叙々〇の焼肉券。ただ一択ネ!)
まだ出ていない焼肉券目当てで、神楽は勢いよくダーツを投げた。
「ホワチャ!」
仲間達が固唾を飲んで見守る中、神楽が射抜いた的はというと……
「アレ? 非売品のダシ汁?」
なんとも怪しげな景品である。
「おめでとう、神楽ちゃん。貴方には私お手製のダシパックをあげるわ」
「えっ、姉御特製のダシ汁アルか?」
「そうよ。味噌汁なんかに使うと良いかもしれないわね」
にこやかな表情で妙が神楽に渡したのは、自身の手作りと主張するダシ汁だった。小さめの袋に詰められ、合計で五つほど用意している。妙手作りということもあり、近藤は羨ましがっていたが、神楽自身は希望の景品ではないので、やや不満げであった。
その一方で、話を聞いたシリカにはある心当たりがある。
「お、お妙さん……そのダシってまさか」
「さぁ、次はシリカちゃんでしょ。行ってきなさい」
「って、ごまかさないでくださいよ! 絶対ピナから採ったダシですよね!?」
そう。数か月前にシリカがこの世界へ初めてやってきた時、妙は彼女のペットであるピナを無断で鍋に入れ、ダシを採ろうとした経緯がある。シリカは今回のダシ汁がピナ由来だと察していたが、妙のそそくさと誤魔化す仕草から確信した様子だった。
「もうお妙さんってば……」
と妙に不満を漏らしつつも、シリカは気を取り直してルーレットに挑む。
「頑張るネ、シッリー!」
「落ち着けば大丈夫だよ!」
チームメンバーである神楽やキリトからも声援が飛び交う。宇宙旅行のペアチケットは既に無いが、せめて豪華な景品が当たれば良いと彼女は心に決めていた。
「どうか豪華な景品が当たりますように!」
願いを込めて、彼女は回り続けるルーレットを射抜く。シリカの当てた景品はというと、
「これはペットフード?」
新作のペットフードと書かれた的だった。
「おめでとう、シリカちゃん。貴方には柳生家がプロデュースしているペットフードをプレゼントするわ!」
「柳生家……まさか!?」
妙がペットフードの補足を加えると、シリカは段々と嫌な予感を察していく。柳生家が絡むとなると、あのペットしか思いつかないからだ。
「そうよ。寿限無寿限無ウンコ投げ機一昨日の新ちゃんのパンツ新八の人生バルムンク=フェザリオンアイザック=シュナイダー三分の一の純情な感情の残った三分の二はさかむけが気になる感情裏切りは僕の名前をしっているようでしらないのを僕はしっている留守スルメめだかかずのここえだめめだか……このめだかはさっきと違う奴だから池乃めだかの方だからラー油ゆうていみやおうきむこうぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺおあとがよろしいようでこれにておしまいビチグソ丸用に作られた優しめのペットフードですよ」
「だから長いですよ!! またアタシにツッコミさせるんですか!?」
案の定名前の長い寿限無(略)ビチグソ丸をまた聞かされ、シリカのツッコミは激しさを増していく。数時間前と同じ状況に、彼女は益々辟易していた。このイベントで嫌というほど、寿限無(略)ビチグソ丸のフルネームを聞かされている。
「あら、シリカちゃん。新ちゃん並みにツッコミがうまくなったんじゃない?」
「嫌でもこんな長い名前聞かされたら、突っ込むしか選択肢が無いじゃないですか!」
妙はシリカのツッコミ力の上達を素直に褒めるも、シリカ本人からすれば嬉しくもなんともない。
そんな二人のやり取りが繰り返されているうちに、新八がシリカに話しかけてきた。
「シリカさん……?」
「新八さん、どうしたんですか?」
てっきり彼女は、自分の名前が入っている寿限無(略)ビチグソ丸に苦情を伝えに来たと思いきや……
「君には――ツッコミの才能が十分あると思うよ!」
「何も嬉しくないですよ!! というか、新八さんは自分の名前が雑に扱われていることにツッコミを入れてくださいよ!!」
ただシリカのツッコミを褒めただけである。当然本人にとってはストレスでしか無いので、彼女は怒った表情で新八へ反射的にツッコミを入れていた。寿限無(略)ビチグソ丸により、またしても振り回されたシリカである。
一悶着はあったが、無事にペットフードを手に入れたシリカ。そんな彼女とバトンタッチするように、次はリーファがダーツに挑む。
「じゃ、次は私の番!」
「やるアルよ、リッフー!」
リーファ自身は自信満々な表情でダーツを持ち、所定の位置へ。シリカと同じく、何か豪華な景品が当たるように祈っている。
「スグ! 頑張れよ!」
「リーファさん、頑張ってください!」
「おい、ブラコン。外せ!」
「沖田さんだけ声援じゃ無いんだけど! 止めてよね!」
チームメンバーからも声援が上がるが、沖田だけはただの文句でしかない。折角集中していたリーファも、沖田の声だけはノイズに感じてしまう。
(気にしない、気にしないで。ちゃんと集中しないと!)
彼女は気を取り直しつつも、回り続けるルーレットに狙いを定めていく。静かに呼吸を整えつつ、
「そこ!」
とある的を無事に射抜いていた。リーファが当てたのは、近藤や土方と同じくペアチケットと書かれた的である。
「ペアチケット?」
「アレ? まだ残っていたのか?」
「俺やリズ君と同じで、漁船系のチケットじゃないのか?」
宇宙旅行のチケットは既に出ているので、その線は薄い。場にいた全員がそのチケットの内容に注目する中で、妙はリーファの当てたチケットを手渡していく。
「リーファちゃんが当てたのは……真選組屯所見学のチケットね」
「はぁ!?」
その内容は予想を遥かに下回る結果だった。真選組の屯所を自由に見学できるペアチケットなのだが……既に彼女はこの世界へ初めて来た時に、一回屯所で保護されているので、何の新鮮味もない。
「このチケット、いつでも大丈夫だそうよ」
「もう行ったことあるんだけど、私……」
どんなに説明されても、何の魅力も感じていないリーファ。真選組(主に沖田)に嫌悪感のある彼女にとっては、このチケットはただの紙屑でしか無かった。彼女のテンションが見違えるくらい没落している。
「いつの間にあんなチケットを」
「知らねぇぞ。とっつあんが作ったんじゃないのか?」
「俺も管轄外でさぁ。上の連中の仕業じゃないですかい」
なお、当の土方、近藤、沖田ら真選組は、このチケット自体初耳だった。少なくとも三人には関わりが無いらしい。故に折角の景品獲得チャレンジを無駄にしたリーファには、若干同情していた。沖田以外は。
そんな落ち込むリーファとは打って変わり、次は沖田の番……
「そんじゃ、次は黒剣さんの番でさぁ」
「えっ? 次は沖田さんのはずじゃ」
「気が変わったんでい。俺は最後で良いんで、お先にどうぞでさぁ」
ではなく、キリトに変わっていた。順番通りなら沖田なら、彼は土壇場でキリトへ譲っている。気まぐれな沖田の優しさに困惑しつつも、キリトは「分かった」と呟き、ダーツを持って所定の位置に着いた。
「キリト君、頑張って!」
「パパ、ちゃんと当ててください!」
「焼肉券は任せたアル、キリ!」
アスナ、ユイ、神楽と彼に声援を送る。他にも「頑張れ」や「ファイト」など、仲間達の声援がキリトの元に数多く飛び交っていた。
そんな中で彼は集中し、狙いを最新型ゲーム機の的に捉える。
「この距離なら……そこだ!」
的の動きを予測しながら、瞬時にダーツを投げた。自信満々な表情で彼が射抜いた的はというと、
「おめでとう! キリちゃんには結野アナの非売品写真集をプレゼント!」
「えっ?」
「なんだとぉぉぉ!!」
最新型ゲーム機ではなく、結野アナの非売品写真集である。これには狙いが外れたキリト、写真集を狙っていた銀時共に困惑していた。
すると銀時はキリトの元へ近づき、みんなの目の前で譲渡出来ないか彼と交渉していく。
「頼む、キリト! 俺に譲ってくれ! マヨラーの同人本でも、俺のジャンプでも、なんでも交換していいし、後で好きなもの買ってやるから! 頼む!!」
「ちょっと、銀さん!? そこまでするなよ」
彼はプライドも捨てて、真摯に土下座までする始末だった。仲間達が見られようが、もはや関係ない。そのなりふり構わない姿に、女子達はドン引きしている。
「銀時さんが好きな女子アナってことですか?」
「てか、普通あそこまでやる?」
「非売品だから欲しい気持ちは分からなくないけど……」
「せめて終わった後にやりなさいよ……」
シリカ、リズベット、リーファ、シノンと思ったことを呟いていた。
「何やってんのよ、銀さん……」
「本当ですよ! キリトさんが困ってますから、早く戻ってきてくださいよー」
アスナも頭を抱える中で、新八は戻るように声掛けしている。
「落ち着けって銀さん。交換なら後でやるから戻りなって」
「分かった、約束だからな!」
一応物々交換の約束は済まして、一旦銀時はみんなの元へ戻っていた。
「戻って来たナ、恥知らず」
「なんとでも言いやがれ。俺は交渉しに行っただけだ」
「恥を晒しに行ったの間違いだろうが」
「後でパパにしっかり感謝しなきゃ駄目ですよ!」
神楽や新八からも冷たい目で見られるも、銀時は何一つ気にしていない。彼にとってはもう結野アナの写真集を手に入れることで、頭がいっぱいになっていたからだ。その為ならどんな恥だって受け入れるつもりである。
こうしてキリトは写真集を手に入れて、仲間の元へ戻って来た。そして交代するように、最後の挑戦者である沖田が所定の位置につく。
「最後は沖田さんか……」
「あのドS……外れてたわしでも手に入れるヨロシ!」
「総悟! 気張らずに当てろよ!」
先ほどのキリトとは対照的に、声援は皆無に等しかった。(近藤を除く)しかし沖田自身はまったく気にすることなく、黙々と的に狙いを定めていく。
「そこでさぁ!」
彼は目を見開き、狙っていた窓に見事射抜いていた。彼が当てたのは、
「金ピカか」
「またですか!? どうせまた鍋パ用の食材とかじゃないですか?」
新八、アスナ、ユイと同じく金ピカの的である。鍋、肉、野菜と続いているので、またしても鍋パ関係の景品が当たると皆思っていたのだが……
「あら。沖田さんが当てたのは、金ピカのお通ちゃんの色紙サインみたいね」
「おー」
「はぁぁっぁあ!?」
まったく予想外のものが当たっていた。沖田が手にしたのは、新八が狙っていたお通ちゃんの金ピカ色紙サイン。ここまで運良く残っていたが、まさか沖田に取られるなんて、新八自身ですら想定外だった。動揺する新八とは対照的に、沖田は特に大きなリアクションをとることなく、妙からサインを手にしている。
「どうぞ」
「やった。黄金に光ってらー。って、眼鏡。欲しいのか?」
すると沖田は新八の視線に気づき、彼にこれ見よがしにサインを見せつけてきた。
「ほ、欲しいですよ! お、お、沖田さん、譲ってくれませんか!!」
「おい、新八。さっきの銀ちゃんみたくなってるアル」
彼の挑発にまんまと乗り、本音をさらけ出す新八。数分前に銀時を注意していた時とは思えないほど、自身にブーメランが返ってきている。神楽からも辛辣なツッコミが飛ぶ始末だ。
すると沖田はある提案をしてきた。
「じゃ……旦那の持っている土方さんの同人本と交換なら、手を打ってやっても良いですよ」
「えっ、これかよ」
沖田が指を指したのは、銀時が獲得した景品の同人本。土方もといトッシー自作の同人本を交渉の材料に企てている。
すると新八は有無を言わさず、銀時へ詰め寄って来た。
「銀さん!! 早く渡してください!! 沖田さんが転売する前に!!」
「落ち着け、新八!! 転売なんて一言も出てないだろ!」
「沖田さんのことだから、するにきまってますよ!! さぁ、早く!!」
「そんなせかすんじゃねぇよ! 冷静になれ!!」
妄想も含めつつあるが、相手が沖田の為、冷静さを見失いつつある新八。その変貌ぶりは銀時のみならず、キリトやリーファ達もドン引きしていた。
「新八さんが暴走モードに……」
「推しの為なら、とことん暴走するタイプなんだ……」
シリカやリーファは苦笑いで呟き、
「落ち着けよ、新八」
「そうですよ、沖田さんの思うツボですよ!」
キリトやユイは冷静になるように新八へ訴えかけてきた。
「てか、テメェら。総悟には渡すなよ。聞いてんのか!!」
なお、巻き込まれ気味の土方は沖田への譲渡に反対するも、誰一人として話を聞いていない。声を大きくしながら、新八や銀時へと詰め寄っていく。
最後の最後で沖田の獲得した景品により一変。場は混沌とした事態に変わりつつあった。
因みに沖田の持つサインは銀時の持つ同人本と結局交換。銀時もキリトに今度何か奢る形で、結野アナの写真集を手にしていた。
こうしてかぶき町フレンドラリーは全てのチームがクリア及び景品を獲得し、大きなトラブルもなく無事に終了。死闘を繰り広げたチームは、みなそれぞれ家路につく。
「それにしてもでかしたな、クライン殿。まさか一等賞を当てるとは」
「おうよ! 日々の行いが良いから、当たったんだろうな!」
変装したままアジトへ戻るのは、桂とクライン。彼らのチームは一等賞である宇宙旅行のペアチケットを当てて、共に高くテンションを上げている。
[試練も俺達が力を合わせて、上手くいったからな]
「おうよ! 桂さんとやれて楽しかったぜ、メガドライブ!」
「あぁ。クライン殿も気に入ってくれて嬉しいぞ。まさか試練でメガドライブが出るとは思わなかったがな」
「「ハハ!」」
エリザベスと共に今日の試練を振り返っているが、特に印象が深かったのはメガドライブ。どうやらレトロゲームに挑戦する試練があったらしい。三人は終始メガドライブの件で話が持ちきりになっていた……。
「おい、総悟。覚えてろよ、いつか燃やしてやるからな」
「無駄ですよ。無断転載して、ネットにさらしてやりやすから」
一方で屯所に戻って来た真選組の面々は、早速バチバチと対立心を燃やす。特に沖田はトッシーの同人本を入手し、土方の弱みとして今後有効活用するつもりだ。土方はどう彼から弱みを取り上げるか、頭を悩ませてしまう。
「止めろ、トシに総悟。今日くらいいがみ合いはするな」
そんな一触即発な二人とは打って変わり、近藤は二人の間へ入り、彼らのいがみ合いを仲介していく。
「それはそうと、一緒にカニ漁船に行かないか? カニを手に入れて、お妙さんにプレゼントして……」
「俺はパス」
「俺もでさぁ」
「えっ……」
ついでに二人をカニ漁船の体験ペアチケットに誘うも、やんわりと断られてしまう。近藤の反応をする間もなく、二人はそそくさと場を離れてしまった。
「行っちゃうの?」
「それじゃ、今日一日お疲れさまでした!」
「「「「「「「「「「お疲れさまでした!!」」」」」」」」」」
一方で万事屋銀ちゃんでは、盛大な打ち上げが行われていた。銀時、キリト、新八、アスナ、神楽、ユイ、妙、シリカ、リズベット、リーファ、シノンの計十一人で、今回のフレンドラリーのお疲れ様回を行っている。もちろん景品で手に入れた鍋に黄金の野菜や肉を詰めており、さながら鍋パーティーとしてみな楽しんでいた。なお、ダシはごく一般的に売られているものを使用している。
(ちなみに別室では定春とピナが、シリカが景品で獲得したペットフードを食べており、こちらもささやかながらパーティーを開いている)
「夏に鍋ってのも、中々乙なもんだな」
「そうアル! みんなが頑張った証ネ!」
鍋を目の前にテンションを上げる銀時と神楽。
一方でアスナやリズベットは、準備をしつつ今日のイベントについて振り返っていた。
「本当に今日は大変だったわよ」
「そうそう。チームは変わるし、試練は変てこなのばっかりだし」
思い起こすは大変な出来事の連続。トラブルや想定外の展開はあったものの、皆概ねこのイベントを大いに楽しんでいた。
「でも、普段とは違うチームでスタンプ集めるのも楽しかったですよ」
「そうね。銀さんや土方さんも、いつもよりは頼りがいがあったし」
「最後の最後で台無しだったけどね!」
「一言余計だよ」
シリカ、シノン、リーファも思っていたことを発していた。普段とは違う銀時らの大人の一面が見れたものの、結局いつも通りの情けない場面もあったので、その印象に特に変化は無かった。むしろいつも通りの雰囲気で、安心しているのかもしれないが。
「さぁさぁ、今日はみんなで鍋をつつきましょうね」
「てか、お前も来たのかよ」
「当然よ。あんな豪華な景品用意したの、誰だと思っているの?」
「はいはい。ありがとうござんしたー」
因みにちゃっかり妙も参加している。彼女は黄金の野菜や肉の味が気になり、万事屋一行について来ていた。イベントの撤収も大方済ましているので、仕事を全て片付けた上での参加である。
「まぁまぁ、今日は皆さんで楽しく鍋を楽しましょうよ」
「そうだな。食材も十分にあるし」
「野菜もまだまだたくさんありますよ!」
新八、キリト、ユイも楽しそうな表情を浮かべながら、この鍋パーティーを楽しんでいた。仲間達と大勢で食事するのも久しぶりであり、やはり皆テンションが上がっている。
「まぁな。じゃ、いただくか」
「おうネ!」
こうして十一人はお互いの苦労をねぎらいながら、夜遅くまで鍋パを大いに楽しむのであった……
「ワン!」
「ナー!」
定春とピナも大いに楽しんでいる。
後書き
これにてかぶき町フレンドラリー篇は終了致します。まずは長い事間延びしてしまって、すいませんでした。今年に入ってから投稿ペースが落ちてしまい、何度も遅れを取り戻そうとしましたが、余計に上手くいかず、月目標の三回も達成出来ずじまいです。現在はそれの打開策を模索しているので、どうか投稿頻度が上がるまでお待ちしてください。
今回のかぶき町フレンドラリー篇は、真選組とSAO女子陣の距離を縮めるために話を作っていました。彼らがこの世界へ来て二ヵ月くらい経つので、一つの区切りとして真選組との信頼を深め合いました。まぁ、彼女達は見直す程度で、根本にある嫌悪感は変わっていませんが……
さて続けて、今後の剣魂の流れをお伝えいたします。現在は長篇の設定を考えているのですが、もう少し設定を手直ししたいので、次の回からも日常回を続けていきます。フレンドラリー篇でも出てこられなかったキャラクターや、銀魂×SAOキャラの意外な組み合わせを、今後もやっていきたいからです。
また次回からモチベ向上のために、ある思い切ったことをします。それはトップページに今後投稿する予定の作品タイトルを貼っておきます。銀魂特有の複雑なタイトルなので、予想しながら出来上がるのを待っていただけるとありがたいです。次々回のタイトル横には回りくどいヒントも付けるので、是非予想してみてください。
それでは最後になりましたが、ここまで見て頂きありがとうございます。世間はウイルスで大変ですが、皆さんも気を付けてください! 今後とも剣魂をよろしくお願いいたします!
追記
ということで、リメイクしたかぶき町フレンドラリー篇はいかがでしたでしょうか。
前回描けなかった部分や流用した部分を含めて、新規さんやかつて読んでくれた方にも楽しめるように作成致しました。
特に抽選会は尺の都合で描けなかったので、そのリベンジが果たせただけでもとても嬉しく感じます。最後も幸せなまま終わったので、万々歳じゃないでしょうか笑
次回予告
ユイ「私が出会った男の人はとても怖い方でした。でも何かに囚われている……そんな気がしました。どこかで会ったことがある気が……」
キリト「次回。迷子になったら交番へ向かえ」
「ガキのくせにしっかりしてるじゃねぇか――」