剣魂    作:トライアル

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 ここで改めて、これまでの時系列をまとめていきます。

第一章 万事との出会い篇 七月上旬
第二章 盛夏の日常回篇 主に七月中旬
第三章 夢幻解放篇 七月下旬
第四章 真夏の日常回篇 八月全般

 という訳で、今回より後半戦の九月上旬へとスタートを切ります。今回の話は次回の長篇にも関わってくるので、是非そこにも注目してください! では、どうぞ。



第五十二訓 迷子になったら交番へ向かえ

「おい、アイツは見つかったのか?」

「いいや。この近くにいるはずなんだが……」

 標的の相手が見つからずに、困り果てているのは二人の男達。共にとんがった耳や騎士然とした風貌が特徴的で、いわゆる宇宙人――天人であった。

「何としても見つけ出すぞ! 我が一派にとって妨げとなるからな!」

「あぁ、分かっているよ。いざとなれば、コイツらを呼び出すか……」

 そう言い伝えると二人は、再び標的を探し始めている。彼らは陽の光が届かない地下都市アキバにて、ある総督を狙っていた。

 その人物はたった今、同じ場所で人目を避けて歩いている。

「ふっ……そろそろか」

 ふと彼は不敵な笑みを浮かべていた……

 

 時期はちょうど九月を迎えていた日のこと。夏らしい暑さは未だに続き、残暑の目立つ季節へと変わっている。

 そんな最中、江戸に近い地下都市アキバでは、昼時に多くの人々で賑わっていた。イベントが相次いで行われており、尋常ではない熱気が辺りから巻き起こっている。

 そしてその場所には、現在キリトとユイがある目的で訪れていた。辺りの様子を見渡しながら、二人はゆっくりと町並みを楽しんでいる。

「おぉ……ここがこの世界の秋葉なのですね!」

「オタク文化なのは変わらないけど、地下に建ててあるんだな。結構マニアックな専門店も多くあるし」

「パパの言っていた面白い刀専門店も、ここにあるんですよね!」

「沖田さんからの情報だけどな」

 未知なる町並みに圧倒されており、共にテンションも上がっていた。そんな彼らが目指す場所は、アキバにあると言われている刀の専門店である。以前に行われたフレンドラリーにて、沖田から伝えられた情報であり、そこから興味を持ち現在に至っていた。

 期待を膨らませながら通りを進むと、ユイはある種族を見かけていく。

「あっ、見てくださいパパ! 同じ妖精耳の天人さんがいますよ!」

 それはキリトと同じとんがった耳の天人である。ファンタジーっぽい服装を着た少女で、二人の世界で言うALO系のアバターに容姿が酷似していた。

「ん? 本当だ。妙に服装もALOに似ているし、結構親近感を覚えるな」

「もしかすると、アルブヘイムに似た星がこの世界にあるのかもしれませんね!」

「ハハ。そうだと面白いかもな」

 ほんのりと冗談を交えつつ、彼らは笑みを浮かべている。この世界で長く暮らすうちに、宇宙人及び天人の抵抗心はほぼ無くなっていた。

 楽観的に談笑を交わして、歩き続けていると――あるトラブルに巻き込まれてしまう。

「どいた、どいた!!」

「さっさとどきな!!」

「えっ、キャ!?」

「ユイ!? うわぁ!?」

 後ろから迫ってきたのは、大荷物を持った団体の観光客。ガイドに連れられて移動をしており、横柄な態度で走っている。その大群により、キリトは横道に突き飛ばされてしまい、ユイは団体客の波へ飲み込まれてしまった。

「痛ぁ……何だったんだ、今の。って、アレ? ユイは!?」

 気が付いた時にはもう遅く、キリトが周りを見てもユイの姿はどこにもいない。焦燥感に駆られていき、思わず愕然としてしまった。

 一方のユイは、大群の中から力づくで抜け出して、人気のない小道へと倒れ込んでいる。

「ふぅ……やっと抜け出せました。でも……ここは一体?」

 危機を脱してもなお、彼女にはまだ困難が待ち構えていた。キリトともはぐれてしまい、右も左も分からないアキバの町中で、ただひたすらに戸惑い続けている。俗に言う迷子となってしまった。

「パパとはぐれちゃったんでしょうか?」

 不安な気持ちが収まらずに、表情もどこか悲しく変わってしまう。ひとまずは歩かないことに事態は動かないので、辿ってきた道を戻り始めている。いざという時は、周りの大人に頼ると心に決めていた。

「早く見つかるといいんですが……うわぁ!?」

 そう呟いていた直後である。不運にも一人の男性と衝突してしまった。

「おい、気を付けろ――って、ガキか?」

 男は後ろへ振り返って、ユイの存在に気が付いている。鋭い目つきを向けて、そっと彼女へと近づいてきた。

(こ、怖い人に当たっちゃいました……アレ? この人って……)

 一時は男性に恐怖を覚えたユイだったが、彼の顔を見た瞬間にある人を思い出している。かつて夢世界で起きた戦いにて、出会ったことのある人物だった。もちろん彼とは別人だが、その男の正体は――

「ふっ、迷子かお前? だったら俺が連れて行ってやろうか?」

鬼兵隊の総督高杉晋助である。不敵な笑みを浮かべて、ユイへと話しかけてきた。

 紛れもない現実世界の本人であり、この出会いに彼女は驚きを隠しきれていない。

(やっぱり……本物の高杉さん!)

 彼と目を合わせると、次第に緊張感が高まって、無意識に体が震え始めている。経験したことのない恐怖心を感じて、つい頭が真っ白になってしまう。

「ん? どうしたんだ? 迷子じゃねぇか?」

「えっ、あっ!? その……」

「……ふっ、分かったよ。ついていくならついてこい。テメェの自由に動きな」

 戸惑い続けているユイに何かを察したのか、高杉はあまり干渉せず、素っ気の無い態度で接していく。その突き放したような姿勢に、彼女は恐怖心と共に違和感も覚え始めている。

(なんでしょう、この気持ちは……あの人からは何か独特な雰囲気が伝わってきます……)

 表現しにくいモヤモヤとした気持ちが心を覆っていた。いずれにしても、只者ではない人物だと仮定している。怖く感じてしまう反面、興味も沸いており、彼女は自分から高杉との行動を決意していた。肝心の本人は大して気にもしていないが……

 こうして思わぬ形でユイは、高杉と出会うことになった。

 

 

 

 

 

 

 

「おーい! どこへ行ったんだ、ユイ!」

 その一方でキリトは、懸命にもユイの捜索に奔走している。羽を広げて上空から探したり、建物に挟まれた小道を覗いたりしたが、一向に見つかる気配はない。彼は一旦地上に戻ると、改めて情報を整理していく。

(近くにはいなかったし、やっぱりあの団体客に巻き込まれたのか? もっと奥まで探した方がいいのか……)

 数分前の出来事を思い出しながら、彼女の行方を模索している。あらぬ不安が募り始めており、表情もやや強張ってしまう。一刻も早く再会をしたい……その気持ちがキリトをより焦らせている。

(早く……早く見つけないと!)

 一心不乱に再び捜索を始めていた……その時だった。

「おい、貴様動くな!」

「えっ!?」

 ちょうど横の細道から、怒号に近い男性の声が聞こえてくる。その声に反応してしまい、キリトが横を向くとそこには……とんがった耳を持つ二人の若い男達が立ち並んでいた。

「って、アンタ達は誰だ?」

「とぼけるな! 貴様のその黒い羽……さてはスプリガンの女の仲間だな!」

 初対面早々に男の一人が、キリトへ怒鳴り散らしていく。どうやら彼に疑いをかけているようだが……

「はい? 何を言ってんだ?」

キリト自身は表情を崩さず、とぼけた返答をしている。ところが内心では、図星を突かれてやや動揺をしていた。

(スプリガンって……何でこいつら、俺の種族を知っているんだ?)

 ALOにおける種族の一つ、スプリガンを当てられたことに、強い違和感を覚えている。

じっくりと男達の容姿を見ると、サラマンダーやノームの初期アバターとだいぶ似通っていた。喧嘩腰の男が赤髪に細身の体型、その後ろにいるのが茶髪に大柄な体格と、種族の特徴とも一致している。

(まさか俺達の世界から来た、別のプレイヤーか!?)

 仕舞いには、飛躍した深読みまでする始末であった。

 そうキリトが考え込む中で、男達は予測とは的外れだと察している。様子を見ていたノームらしき男が、相方にそう吹き込んでいく。

「おい、アイツ。やっぱり俺達の星とは無関係じゃないのか?」

「チッ……ただの見当違いか。まぁ、いい。聞きたいことはもう一つあるからな。お前……高杉晋助について何か心当たりはあるか?」

 話を替えて続けざまに、サラマンダーっぽい男が高杉へ関する質問を発している。これにキリトは、不意にも動揺を表に出してしまった。

「た、高杉!? って、あの……」

「何か知っているのか、お前!?」

「おい、教えやがれ! 俺達に!!」

 たじろいだ様子に男達は食いつき、まくしたてるように問い詰めてくる。しかしキリトが知っているのは、銀時から聞いた話や夢世界での高杉だけだった。本人への面識はもちろん皆無である。

「いやいや、待ってくれ! 俺はただ聞き覚えがあるだけで、何も知らないよ! だいたいなんで、その高杉さんをアンタ達が探しているんだよ?」

 強く否定した上で今度は、キリトから質問をかけてきた。彼らの高杉への異様な執着心に、ふと疑問を悟ったからである。

「フッ……アイツとは一悶着あってだな。消えてもらわないと、こっちが困るんだよ」

「一刻も早く、口封じをしなければな」

 すると返ってきたのは、何とも物騒な返答だった。

「口封じに消すって……アンタら、何を企んでいるんだよ!?」

「アン? ガキのくせに強気に出るじゃないか。お前とは無関係な話だ! 何も知らないならとっと去りな!」

「そうだぞ。子供が突っ込んでいい話でもないからな……」

 詳しく事情を問い直しても、男達は適当にあしらって、キリトをすぐに追い払おうとしている。自分達から話かけておきながら、この態度はあまりにも失礼極まりなかった。

(何だこいつら……! さっきから消すだの口封じだの、気分の良い口調じゃないな……)

 温厚な性格のキリトだが、彼らの不誠実さには自然と怒りが溜まってしまう。訳があったにせよ、二人への印象は最悪に等しかった。男達の注意から反抗するように、徹底的な姿勢で真意を見出そうとしたその時である。

〈ピー!〉

「おーい。何やってるんでい」

 思わぬ介入者がこちらへと近づいてきた。笛を吹きながら現れたのは、真選組の一番隊隊長沖田総悟である。

「やべぇ! 真選組だ!」

「見つかったら不味い! とっとと逃げるぞ!」

「あっ、待て! お前等!」

 彼を見かけるや否や、二人の男達はこの場からすぐに逃げ出していく。咄嗟に見せた不審さにより、彼らへの疑惑はより強まっていた。何か不都合な事実でも隠しているのか……?

 沖田が到着した頃には、時すでに遅しである。

「あー行っちゃいやしたか。てか、黒剣さんもいたんですねぇ」

「沖田さん! なんでここに?」

「ただのパトロールですよ。にしても、アイツら。あの星にいる一派みたいですねぇ」

「あの星? 沖田さんは知っているのか、アイツらのことが?」

 どうやら沖田には、男達への心当たりがあるらしい。気になったキリトが何気なく聞くと……伝えられたのは意外すぎる新情報である。

「アイツらならALO星の天人ですかねぇ。妖精っぽい見た目もしてやしたし」

「ALO星か……って、はい!? そんな星があるのか!?」

「おや、初耳でしたかい。ここ最近ターミナルから直通で行けるようになった星で、注目度も上がっているんですよ。アルヴヘイムっていう文字通り、妖精達の住む星でさぁ」

 この情報にはキリトも、思わず耳を疑ってしまった。冗談で呟いたことが、まさか本当にあったとは思いもしていない。彼によると、ALOに似た星はこの宇宙に実在するようだ。

「本当にそんな星があったのか……じゃ、アイツらが言っていた種族も納得だな」

「まぁ、そっちの事情は知りやせんが、覚えておいて損はねぇですよ。それよりもあの男達なんですが、上の情報だと相当ヤバいらしいですねぇ。なんでも、高杉率いる鬼兵隊と関係があるんだとか」

「また高杉か……」

 さらに沖田からは、男達の詳細までも明かされている。彼らの主張通りに、高杉との関係が噂されているが……断片的なためか、増々謎は深まるばかりだった。

「どっちにしろ、アイツらを見つけないことには分かりやせんよ。こっちも気になる情報があるんでねぇ……」

「まだ情報があるのか?」

「えぇ……最後まで聞いてくれやしたし、一言だけ言っておきやすよ」

 そして去り際に沖田は、キリトの耳元へ近づくと、ある不穏な噂を吹き込んでいく。

「その一派は近々、母国でクーデターを企てているらしいですよ」

「えっ!? それって……」

「これ以上は言えやせん。こっちも未確定なことばかりなんでねぇ……」

 意味深に呟いた後、彼は何事も無かったかのように場を跡にしている。曖昧な情報ばかりであったが、キリトにとっては衝撃の連続であった。

「高杉さんに妖精の星……クーデターなんて、一体全体何が起こっているんだ?」

 神妙な表情となって、これまでのことを思い起こしていく。ひょっとすると自分は、とんでもないことに巻き込まれたかもしれない……その考えが脳裏へとよぎっていた。

「分かんないな……って、そういえば! ユイを探さないと!!」

 すると彼は突然、ユイの捜索についても思い出している。一旦はこの情報を保留にして、再び捜索へと駆けだしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 その一方でユイは、高杉を追いかける提で道を歩いている。近くに彼がいるおかげか、先ほどよりも不安はさほど感じていない。恐怖心も段々と薄れ始めている。

 彼女は今一度、高杉の容姿を確認していた。編み笠を被り、髪色は黒っぽい紫、左目を包帯が覆っており、服装では同じく紫の和服を着こなしている。足元は素足に草履と、涼し気な印象であった。さらには腰元に、鞘で納めた刀を装備している。傍から見た雰囲気もどこか独特で、話しづらい印象を持ち始めていた。

(少し気まずいです……アレ以来、一斉話していませんし)

 気を遣いすぎているせいか、しばらくは沈黙が続いてしまう。話しかけようとしても内心で抑止力が働き、仕方なく諦めている。

 そんな彼女の様子を察したのか、ここで高杉からそっと話しかけてきた。

「ふっ……やけに黙っているな。もっと無邪気に振る舞っても、別に構わねぇよ」

「いや、あの……それは空気を読んで」

「へぇ。ガキのくせにしっかりしてるじゃねぇか。どっかのじゃじゃ馬姫とは偉い違いだな」

「じゃじゃ馬姫?」

 ユイの大人びた対応には、高杉も率直に感心をしている。小難しい例えも発したが、残念ながら彼女には上手く伝わっていない。

 それはさておき、彼は続けざまに会話を進めていく。

「少し俺と話すか? 何か聞きたいもんはねぇのかよ?」

(突然の質問タイム!? ここは話題を作って、少しでも話を続けないと……)

 絶好の機会だと察したユイは、必死に質問を頭に思い浮かばせている。短い時間の中で考え付いたのは、実直な疑問であった。

「じゃ……高杉さんってどんな仕事をしているんですか?」

 不思議そうに聞いてみると、高杉は即座に答えを返していく。

「仕事か。分かりやすく言うなら、世界をぶっ壊すことだな。この天人に迎合する腐った国もろとも、俺の手で破壊すんのが目的だ……」

 ニヤリと笑みを含ませて、平気で恐ろし気なことを発していた。彼の返答に間違いはないのだが……回りくどく言ったせいか、ユイには肝心な部分が伝わっていない。

(いまいち分かりませんが、もしかすると今は爆破解体を仕事にしているのでしょうか?)

 内心では勝手に、土木関係の仕事だと解釈していた。純朴な心構えが、意外な結果を生み出している。

 そう長々と続かない会話の中で、ユイには一つだけ気がかりなことがあった。

(アレ? 今一瞬だけ、悲しそうな眼をした気が……)

 ほんの一瞬だけ見せた高杉の悲しげな目つき。どうしても気になった彼女は、そこから感情の起伏を読み取っていた。想像力を膨らませて、彼の本質を理解しようとしている。と深く考えているうちに、二人はより大きい通りへと到着していた。すると途端に、聞き慣れた声が響いていく。

「おーい、ユイ! どこだ!!」

 それは精力的にユイを探し続けるキリトの声だった。

「あっ、パパの声です!」

「パパ? ようやく見つかったのか?」

 当てが見つかったことで、彼女は思わず心から安心している。一方の高杉も、迷子の親が見つかったことだけは、ユイと同じ気持ちであった。

 声の聞こえた方角へ振り返ると、キリトが走りながらこちらへと向かってくる。

「こっちですよ! パパ!」

「ユイ! 良かった……ようやく見つかって!」

 はぐれてから約数分後。再会を果たした二人は、ぎゅっと強く抱きしめ合っていた。その様子を目にした高杉は、小さく鼻息を吐いた後、何も言わずにこの場を去っている。

「大丈夫だったか?」

「はい、もちろんです! さっきまで助けられて……アレ?」

 ユイも彼のことを紹介しようとしたが、もう既にいなくなっていた。これにはつい戸惑いを覚えてしまう。

「高杉さんがいない……?」

「高杉? って、ユイ!? まさか高杉晋助と会ったのか!?」

「は、はい。先程まで一緒に行動をしていたのですが……」

 高杉と聞いてキリトも、別の意味で動揺を広げていく。彼を狙う一派の男達を思い起こし、まるで何かが繋がったように悟っていた。

「まさか本当に……」

「どうしたんですか、パパ? 何かあったのですか?」

「あぁ、実はなこんなことがあって――」

 そしてユイにも、数分前に起きた出来事を手短に話している。ALO星の存在や高杉絡みの一派などを彼女に教えていた。

「そうでしたか。高杉さんを狙っている怪しい天人さんと会ったんですね」

「あぁ。沖田さんによると、クーデターを企てている噂もあるしな……」

 特に二人が気にしていたのは、一派と高杉の関係性である。なにせ今このアキバに、両方とも来ているからだ。いつ不吉なことが起きても、おかしくない現状である。

 この一件に巻き込まれたキリトだが、傍から見れば自分達にとっては関係のない話かもしれない。だが同時に、真実を知りたい気持ちも少なからず心にはあった。

 キリトは腕を組んで深々と考え込む中で、ユイが彼に向かって、率直な助言を言い伝えていく。

「それで……パパは本当のことを知りたいんですよね?」

「あぁ、そうだが……」

「だったらその気持ちに従うべきですよ! 私も高杉さんと行動して、いくつか分かったことがあるんです。怖い見た目の人だけど、どこか悲しげな眼をしている……完全な悪人ではないと思うんですよ!」

「そ、そうなのか?」

「はいです! 私だって、もっと高杉さんのことが知りたいです! どんな事実だったとしても……知らないより知る方が良いと思いますよ!」

 彼女なりに伝えてきた精一杯の後押し。高杉と共にいたからこその気持ちを、ここで発している。彼をより知りたい想いや、一派との関係を知りたいキリトを、全力で肯定していた。

 この助言によって、キリトにも踏ん切りがついたようで、同時にある強い想いが芽生え始めている。

「そっか……分かったよ。あんなに馬鹿にされて黙る訳にもいかないし、ここは俺達なりに進んでいこう! あの二人と高杉さんを探そう!!」

 そう高らかに決意をして、ぐっと右手を握っていた。釈然としなかった気持ちを晴らすためにも、真実を知りたい想いを優先している。ユイが強調した通りに、自分の素直な気持ちに従っていた。

「それでこそパパですよ! 私も出来る限り手伝いますね!」

「ありがとう、ユイ。でも危険が絡むかもしれないから、いざという時は逃げるんだぞ」

「分かっていますよ!」

 生き生きとした表情へと戻って、ユイも思わず一安心している。しっかりと注意も聞き入れて、二人は揃って高杉らの捜索に目的を変更していた。

 するとユイは、あるとっておきの情報を彼へと教えている。

「それと……高杉さんはもしかすると、廃墟にいるかもしれません」

「えっ? そんなことが分かるのか?」

「はい。あの人の仕事は恐らく、爆破解体ですから!」

「……えっ? 本当に?」

 会話から読み取った重要なヒントだが、これはただの勘違いでしかない。それでも彼女は満面の笑みで伝えており、キリトも正直疑いにくかった。

 

 

 

 

 

 その情報も踏まえつつ二人は、右往左往にアキバを捜索していく。ユイのヒントでもある廃墟も視野に入れながら捜していると……ある天人から有力な情報を得ていた。

「あのとんがった男達なら、取り壊し予定の博物館に向かったよ。ついでに紫髪の男もいたはずだ」

「って、本当に廃墟にいたんだ……」

「これはチャンスですよ! 早速向かいましょう!」

 どうやらユイの読み通りに、廃墟と化した博物館に高杉や一派の男達が来ているらしい。偶然の産物とはまさにこのことだろう。

 とりあえずはこの情報を頼りにして、キリトらも博物館へと向かっていく。その建物が近づくにつれて、とある人影を見かけていた。

「アレです! あの紫の服の人が高杉さんです!!」

「あの人か……ようやく見つけた!」

 後ろ姿からもはっきりと見える紫色の着物。間違いなくユイが見かけていた高杉の姿だ。息を切らしながら入り口前へ辿り着くと、二人は勢いよく高杉へ話しかけている。

「ハァ……高杉さん!」

「あなたに……聞きたいことがあって」

 そう呼ばれた彼はゆっくりと後ろを振り向く。苦労の末にキリトらが目にしたのは――

「おや、私に何か用でしょうか?」

「「えっ?」」

高杉ではない謎のおっさんだった。服装や髪形は本人と同じだが、顔はまったく異なっている老け顔である。

 この予想外の展開は、キリトやユイも唖然としていた。

「高杉さんじゃない!?」

「おっさんだれだ?」

 正直戸惑うのも無理はない。彼の正体は鬼兵隊の参謀、武市変平太である。高杉の仲間の一人で、作戦の中枢を担う年長者だ。時に見せる奇抜な行動から、ボケ要員としても確立をしている……その証拠に高杉の格好でもなんら動じていない。

「何を言っておるのでしょうか。私こそが高杉晋助です。この紫の髪と眼帯を見れば、本物だと分かるでしょ?」

「いや別人さんですよ」

「だよな。ちょっと匂いもするし……」

 意地でも本人だと主張しているが、キリトやユイには伝わっていなかった。冷めた表情のまま、彼の言葉を受け流している。

 だが一方で武市は、ユイを見かけると即座に態度を切り替えていた。

「それはそうと、アナタの妹さんは随分と可愛らしいですねぇ」

「えっ、私のことですか?」

「その通りです。光沢のある長い黒髪に、清楚さを醸すワンピース。それに華奢な体つきは完璧の一言です……あなたなら絶対三、四年も経てば、すんごいことに――」

 垣間見えたロリコンへの片鱗。ユイを目の前にして、密かに彼女へ興味を募らせている。目つきを変えることなく、ゆっくりと近づこうとした時であった。

〈シュ!〉

「えっ?」

 突然にもキリトはエクスキャリバーを引き抜き、武市の首元すれすれに差し出している。彼のことを危険人物だと判断して、存分に敵意を露わにしていた。

「おい! これ以上ユイにふざけたことを言いふらすなら、この俺が容赦しないぞ……!」

 あまり見せない鋭い目つきで、睨みを利かせていく。忠告にしては大胆だが、ユイを守る為ならば容赦は無かった。

「いやいや、冗談じゃないですか! ただのロリコンジョークじゃないですか!」

「今ロリコンって言ったな! アンタ絶対危ない人じゃないか!」

「ロリコンって何ですか?」

「ユイは知らなくていいぞ! まだ覚えるには早い事だから!!」

 暴露をしたり誤魔化したりと、武市との邂逅は思わぬ時間が費やされてしまう。結局は本名を聞かないまま、キリトはロリコンの危ないおっさん、ユイは高杉の格好をした変なおじさんだと印象付けていた。

 そんなグダグダさでも、武市は何事も無かったかのように仕切り直す。

「というか、お二方はもしや高杉さんに用があるのですか?」

「そ、そうですよ! この中に高杉さんはいるんですか!?」

 ユイが即座に反応すると、彼は当然のように誤魔化しを加える。

「いいや。それを教えることは出来ません。なにせ彼は今大事な話の最中ですから、絶対にここを通すわけにはいかないのです」

 はずだったが、あっさりと墓穴を掘ってしまった。高杉の居場所を公言してしまい、キリトやユイもこれを察して、素直に信じ込んでいく。

「やっぱりこの場所ですよ! 行きましょう!」

「あぁ! 強行突入だ!!」

「ちょっと!? なんでバレているの!? 止まりなさい! 無垢なロリ少女!!」

 バレる前に二人は、武市を振り切って博物館へと逃げ込んでいた。未だ失態に気が付かない彼は、驚嘆しつつも止めようとする。しかし、

〈ガシャーン!〉

「あっ、痛い!?」

不運にも付近に放置していた丸型ポストが、足元に倒れ込んでしまう。その重さも結構あり、文字通り足止めをくらってしまった。

「なんでこのタイミングでポスト!? しかも重くて抜けない……!?」

 思わぬトラブルが起きたことで、キリト達は彼の追跡を撒くことが出来ている。

 

 

 

 

 そして二人の行方だが、現在は博物館館内を慎重に進んでいく。道行く先には飾られていた展示物が、どれも埃を被って無造作に放置されていた。

「なんだかレトロなものばかり置かれていますね」

「随分と年月が経っているんだろうな……ケホ」

 以上の状態から長年放置された廃墟だと彼らは予測している。清潔とは言えない環境からか、軽く咳までしてしまう。

 そしてさらに奥へ進むと、とある広場の入り口に行きついていた。そこには、

「あっ、いました。あの人です」

「アレが今の高杉さんか……それにアイツらもいるな」

目当てであった高杉とALO星の天人二人が、ちょうど相対している。キリトとユイは気配がバレないように小声で交わして、入り口前へと立ち止まっていた。適度に距離を置いて、高杉らの様子を伺っていく。

 すると聞こえてきたのは、男三人の怪しげな会話である。

「よぉ! ようやく出会えたな……高杉さんよ!」

「こっちはお前のことを、懸命に探したんだぞ」

 天人達は挑発気味に、高杉へ話しかけてきた。しかし本人はこれに乗らず、冷静な口調で返していく。

「そりゃ、奇遇だな。俺もテメェらのことを探していたんだ。こっちは金や技術を提供してやったのに、何の音沙汰もないとは……お前さん達のリーダーは随分と傲慢なこった」

「やかましい! 我々にとってあのお方こそが、国の頂点に相応しいのだ! その為にも現状を捻り潰す力が必要なのだ!」

「鬼兵隊及び海賊組織からの支援は大変ありがたい。おかげで我が一派には、多大な戦力を得ることが出来た。だが……あのお方は恩を返すつもりはないようだ。この戦力を独り占めしたいようでな」

 彼から核心を突かれたのか、一派の男達は多少だけ取り乱している。

 次から次へと明かされる新しい情報。会話を断片的に聞くと、高杉と一派との繋がりは、ある時を境に見切りがついたらしい。一派の連中は身勝手な理由で、これまで受けていた恩を仇で返している。

 何一つ悪びれない二人の態度には、盗み聞きしていたキリトらも怒りを露わにした。

「あの人達は最初から、高杉さん達を利用するだけだったんですね……」

「なんて奴等だな……恥も外聞もないな」

 一連の被害者が高杉だと知り、共に彼への同情を見せている。しかし同時に怪しげな関係も判明しており、やや感情移入はしづらかった。

 一方の本人は、彼らの裏切りにも動じてはいない。むしろ強気な姿勢で、さらなる挑発を続けていく。

「そうかい。金の横領に力の独占とは……絵にかいたような自己中主義者だな。聞く度に呆れるぜ」

「ハン! なんとでも言うがいい! 偉い口を聞けるのも今の内だからな!」

「あのお方が国の頂点となれば、やがては全てがひっくり返るだろう」

「そうだ! その力の一端をここで見せつけてやらぁ!」

「「エック・カッラ・スヴァルト……」」

 幾ら罵られようとも、男達は一斉引き下がらない。依然として強硬姿勢を続ける最中で、突然呪文を唱え始めている。

 するとどうだろうか。高杉の周りに次々と敵兵が現れており、瞬く間に彼を取り囲んでしまった。

「あ、あれって?」

「世界樹にいたガーディアンか? それともう一体はなんだ?」

 この光景はキリトやユイにも見覚えがある。敵兵の風貌がかつて、ALOの世界樹攻略で対峙した人型の鎧、ガーディアンと瓜二つだったからだ。全ての個体に大剣が装備されて、高杉への戦闘態勢を整えている。

 さらには、異なる風貌の敵兵も現れていた。三つ槍を武器にした金色の鎧の怪人だったが、キリトらには見覚えがない。

 いずれにしても共に多数の個体が現れて、今にも高杉へ襲い掛かろうとしている。もはや彼に、逃げ道など存在していないが――本人はいたって冷静なままだった。

「ほぉー。こいつらがお前らの作り上げた操り人形か?」

「操り人形? 実に面白い例えだ! こいつらは我が戦力のほんの一部に過ぎない! あのお方は次々と、他世界の化け物を復元しているぞ!」

「こいつらの力を使えば、もうじき妖精の国はひっくり返るだろうな……その為にもまず、不要となったお前を抹消させてやる!」

 組織が持つ技術力を見せ詰めて、男達は満足気に秘密を明かしていく。やはり彼らの目的は噂通り、国家転覆のようである。その片棒を担いだ鬼兵隊及び高杉すらも、不要な存在だと割り切り、仕舞いには数の暴力で消し去ろうと企んでいた。

 身の危険が高杉に迫る一方で、隠れたままのキリトやユイは、今後の状況判断を見極めている。

「あの数だと高杉さんが……パパも行った方が――」

「いや、待つんだユイ。まだ高杉さんの様子を見よう……」

 むやみにツッコむべきではないと、キリトは冷静に踏み切っていた。自分が駆けつけなくても、高杉ならば大丈夫――そんな根拠もない勘を悟っている。

 敵兵の大群がゆっくり近づいていくと、ここで高杉はボソッとため息を吐いて、静かに口を開いてきた。

「御託は聞き飽きた……」

「何?」

 この一言により、場の雰囲気は急に変わっていく。

「要するにこの操り人形で、俺を殺すつもりだろ? だったら二つだけ最初に言っておく……一つは喧嘩するなら、テメェの拳でやれ。もう一つは……俺に喧嘩を売るなんざ、まだ早ぇんだよ!」

 そう言い放った直後だった――高杉は咄嗟に刀を抜いて、周りにいた敵兵を片っ端から切り裂いている。途端に数十体が行動不能となり、その場に倒れ込んでしまった。

「何……!?」

「こんなもんか? テメェら自慢の操り人形はよ!!」

 そう彼にとっては、多数の敵兵がいようが関係ない。ただひたすらに斬り続けて、自身の道筋を作ろうとしている。その表情は戦いを楽しむように笑い、鋭い目つきで相手を次々と仕留めていく。真っ向から切り刻み、時に突き刺し、時に相手を攻守として利用する。ありとあらゆる手段を用いて、この戦闘を駆け抜けていた。

 僅か二分にも満たない時間で、敵兵の半数を彼によって破壊されてしまう。

「な、なんだコイツ!? あの数でもやり合っているだと!?」

「えい、構うな! ひるまずに叩き潰せ!!」

 この強さは男達にも予想外だったようで、思いっきり動揺を露わにしていた。彼らが慌てふためくうちに、敵兵は瞬く間に倒され続けている。

「つ、強い……」

「あの数を平然と相手するなんて……やっぱりあの人も、攘夷志士なんだ……」

 この戦い方は、キリトやユイも大いに衝撃を受けていた。高杉個人としての強さを、改めて思い知らされている。

 だがしかし、そんな彼にも背後に危機が訪れていた。倒し損ねた敵兵の一体が、ぎこちない動きで高杉の背中を狙っている。

「あっ! 高杉さんの後ろに」

「くっ……もう行くしか! ユイはここから動くなよ!」

 この危機をキリトがすぐに察しており、彼は何のためらいもなく、広場へ走り出していた。そして、

「ハァァァ!!」

背中に装備した二本の長剣を抜いて、その個体へとどめを刺していく。ここでようやく高杉も、彼らの存在に気が付いていた。

「あん? お前は……」

「高杉さん! 話は後だ! こっちの敵兵は任せてくれ!」

 有無を言わさずにキリトは残った敵兵を、自慢の二刀流で倒している。もはや遠慮などは無く、本気で戦いを補佐していた。

「ハン……あのガキの保護者かい。まぁ、精々くたばるなよ……!」

 彼の乱入にも高杉は寛容に受け入れている。同時にこちらも戦闘を再開して、残りの敵兵を倒し続けていった。

 キリトの介入により敵兵は増々破壊されてしまい、気が付けばもう数体しか残されていない。あっと言う間に立場が逆転してしまった。

「おい、ここはもう無理だ! 一旦星に戻るぞ!」

「クソ……覚えておけよ!!」

 分が悪いと察した一派の二人は、捨て台詞を吐き捨てて博物館を逃げ出している。

一方の高杉とキリトは、

「ハァ!」

「セイ!」

同時に敵兵を切り刻んだところで、ようやく全個体を行動不能にしていた。文字通りに殲滅した瞬間、倒されていた全ての個体が急に輝きだして、跡形もなく消え去ってしまう。

「き、消えた?」

「証拠隠滅ってところか。まったく厄介なもんだぜ……アイツらも逃げたし、元の木阿弥だな」

 高杉曰く、ただの仕様だと予測をしている。何にせよこれで、一時の危機は回避することが出来た。肝心の相手方は逃がしてしまったが……特に気にする素振りも無い。

「それより……中々やるじゃねぇかよ。テメェの剣裁き」

「えっ、俺のことか?」

「お前以外に誰がいるんだよ。一応礼だけは言っておくさ。あんがとよ」

 戦闘を終えてから高杉は、キリトの剣の腕前を褒め称えている。真正面から言われた賞賛に、当の本人は若干照れ臭く感じてしまう。

(なんだろう……すごく複雑な気分だな。素直に喜んでいいのか?)

 戸惑いつつもそっと、心の中で呟いていた。

 そんな最中で高杉の方は、要件を終えており、このまま去ろうとしている。

「まぁ、それだけさ。誰だが知らんが、これ以上はこの件に関わるなよ。今度はテメェらが、狙われるかもしれないからな……むやみに言いふらすなよ」

 一言だけ注意を添えると、刀を鞘へと戻して、一人出口に向かう。無意識に背中を見せるその姿は、どこか哀愁を漂わせていた。

 しかしキリトには、まだ言い残していることがある。これでは納得がいかないので、強引にも伝えようとしていた。

「あの……!」

 即座に大声を発すると、高杉はぴたりと足を止めている。決して振り返ろうとはしないが、それでもキリトは言葉を続けていった。

「俺はキリトって言うから、覚えてくれよ! それと、ユイを連れてきてありがとうな!」

 自己紹介及びユイへのお礼を、爽やかな笑顔で伝えていく。この愚直な気持ちは高杉にもちゃんと伝わり、一瞬だけ小さく笑っている。結局は振り向かずに場を去ったが、キリトには何も後悔は残っていない。

 そして頃合いを見て、ユイも彼の元へ駆けつけてくる。

「パパ! ……これで良かったんですか?」

「あぁ。大体のことは理解出来たからな。あの人は、強い信念を持って戦っている……そう俺は感じたよ」

 キリト曰く、本当の高杉の姿を知れて大方満足はしていた。何よりも高杉との共闘は、彼自身もポジティブに捉えている。

 しかし同時に、怪しげな一面も知ることとなった。

「でも……あの一派と組んでいたのは正直驚いたな」

「相対的には被害者ですが、やはり高杉さんも悪人なのでしょうか……?」

「そこはまだ分からない。だけど、これからも自分の眼で見たものを信じてみるよ」

「そうですね。考えたって分からないこともありますし、ここは時間を置きましょう」

 未だにあの一派との関係性は謎が多いが、現状で分かることは僅かである。これ以上は考えても仕方がないと察して、踏ん切りをつけていた。ユイも優しく彼のことをフォローしていく。

「だな。それじゃ、気を取り直して観光に戻るか」

「もちろんです!」

 こうして二人は、気持ちを入れ替えて再びアキバ観光へと目的を戻している。仲良く手を繋いでいき、アキバの大通りへ戻っていった。

 偶然から起きた高杉との出会いは、キリトらにとっても大きな影響を与えている。

(俺達から見た高杉さんは、怖くて強い人だった。だからこそ、彼が何者なのかまだ分からない。でも俺達は、あの人を信じたいと感じていた……)

 どんな事実があっても、彼のことを信じたい。そんな淡い期待を共に浮かべていく――

 

 

 

 

 

 

 

 その一方で……高杉と武市は、一度仲間達の元へと戻っていた。帰路の中で二人は、今後の鬼兵隊の方針について固めている。(武市は普段の袴姿へとすでに着直していた)

「どうでしたか、晋助さん? なにかあの男達からは聞き出せましたか?」

「あぁ、聞き出せたよ。条約をあっちから破り、喧嘩を売られたなら、こっちが黙っているわけがないだろ。あの星へ殴りに行くぞ」

「やはりそうでしたか。でしたら、私達もついていくしかありませんね」

 相手から裏切りを受け入れて、全面的に争うと覚悟を決めていた。武市もこれには異論がない。鬼兵隊として黙っているわけにもいかないからである。

 さらに高杉は、今日出会ったあの二人にも少し注目を寄せていた。

「ふっ……面白れぇガキ達だったな」

「おや? 随分とあの子らを気になっているようですねぇ」

「あの強さは只者じゃねぇよ。見た目は小っこいのに、戦い方は一筋通っている。あの年であそこまで戦えりゃ、将来は安泰だろうな。貸を作ったのは尺だが」

「仕方がありません。私も参戦出来れば良かったのですが、何せトラブルがあったので……」

 キリトの戦い方を評価して、次第に興味を持ち始めている。心の中ではそっと、再会を心待ちにはしていた。

(キリトにユイ……貸はいつか返すからな……)

 彼らが万事屋の一員であることに、この時の高杉はまだ気が付いていない。

 

 そして二人が到着した先は、鬼兵隊御用達の船が泊まっている一つの港である。

「おっ、やっと来たでござる」

「おーい、晋助様!! こっちの準備は完璧っすよ!!」

 そこには同じ鬼兵隊の重要人物、河上万斉と来島また子が帰りを待っていた。彼らも今後の方針を聞いており、他の構成員と共に船へと乗り込んでいく。

 全会一致でALO星へ向かうと決意をしていた。

「よし、これで大丈夫っす! それにしても……あの妖精王とか言う奴、やってくれましたね!! あんなの晋助様に声が似ているだけの、アンポンタンですよ!!」

「我々にとっては一つの賭けでしたが、見事に外れてしまいましたね。恩を仇で返す輩には、何倍にもして返さなければ……」

 出航前にも来島や武市らは、一派に関する文句を吐き出している。彼らの裏切り行為には、憤りを感じていた。そして彼らが呟く妖精王とは?

「目指すは妖精の国……ALO星でござる」

「ハハ! 首を長くして待っていろよ……オベイロン」

 こうして高杉ら鬼兵隊の一行も、喧嘩を続けるためにALO星へと船を飛ばす。高杉が最後に発していたオベイロンとは誰なのか? この一件はまだ終わらない……




 高杉晋助が剣魂初登場! いかがでしたでしょうか?

 今回では多くの事実が判明しました。
・謎の星 ALO星の存在
・その星で国家転覆を目論む謎の一派
・一派の敵兵の存在
・鬼兵隊も関与していたが、これを機に交渉決裂。敵陣へと乗り込もうとしている。
・そして……高杉の呟いたオベイロンという男。

実はこの一連の出来事は、次回の長篇にも大きく関係していきます! そしてここからはその長篇の予告をお見せいたします……では、どうぞ!












特報!

 数多の戦いを乗り越え、想いを守り続けた江戸の侍達

 信念を貫き、困難を乗り越えてきた令和のゲーマー達

 彼らの元にまた異世界からの使者が襲い掛かってくる

 戦いは次なる舞台……妖精の星へと移り変わる

 剣魂 新長篇 次元遺跡篇&妖国動乱篇 製作開始

 江戸の侍×令和のゲーマー×平成の――

 今度は全員が出演だ! 続報を待て!


 ――という訳で次回の長篇が決まりました! 現在の章が終われば、随時こちらへ移ろうと思っています。
 ちなみに……何故この日に上げたのか分かりますか? 今後の重要なヒントなのかもしれません。
 それではまた次回、お会いしましょう。





次回予告
エギル「たまさんにお願いされて、中古品の店番を頼まれた俺だったが、何故こうも珍客ばかり来るのだろうか……」
たま「仕方がありません。運が悪かっただけです」
エギル「そこはストレートに言うんだな……」
たま「次回は留守番中に限って、鬱陶しい電話がかかってくる」
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